2013年11月10日

雪歩「帝拳高校の人は怖いですぅ…」

先日、同名のSSをニュー速VIPに投下していましたが、規制が厳しくなったため、
こちらにて最初から投下し直します。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1330948012(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)


スタッフ「カット!オッケーでーす!」


P「雪歩、お疲れ様!良くやったな」

雪歩「プロデューサー……私、上手くできてましたか?」

P「もちろんだ。お人形セットのCMなんて、雪歩のイメージにピッタリだったな」

P「スタッフの人達も皆、人形より雪歩の方に釘付けだったぞ」

雪歩「えっ?そ、そんなこと…」

P「雪歩のかわいさを存分に活かせるCMだったってことだ。
  何度も言うが、良くできていたぞ」

雪歩(か、かわ……///)カァーッ…

雪歩「あ……ありがとうございますぅ」ペコリ
P「送らなくて大丈夫か?」

雪歩「はい、大丈夫ですぅ。ちょっと寄りたい所もあるので」

P「そうか、それじゃあ俺は事務所に戻るよ。これからも頑張ろうな」

雪歩「はい。それじゃあ、失礼しますぅ」


テクテク…

雪歩「えへへ……今日はプロデューサーに褒められちゃった」

雪歩「ちょっとずつお仕事も増えてきたし、もっと頑張らなきゃ」
雪歩「あれ?」


ガヤガヤ…

雪歩(この辺りの高校生かな……私も帰って勉強しなきゃなぁ……)



前田「……………」

勝嗣「何ボーっとしてんだよ前田さん」

前田「あん?」

米示「カッカッカッ、今度の期末テスト乗り切る方法考えてんだろ?協力するぜ」

勝嗣「前田さんがテストのこと考えるわけねーよ。
   どーせ千秋ちゃんのことで頭が一杯なんだろ?」

ゴンッ

勝嗣「ぐわっ!」

前田「米示、択一が当たるコツを教えてくれ」

米示「カッカッカッ」
千秋「あれ?」

和美「あっ、勝嗣くん達だ!ねぇーーっ!」フリフリ


勝嗣「あ、和美!」

和美「三人で何してたの?」

米示「いや、これから喫茶店でも行こうかなーなんて」

和美「あっ、じゃあさ!カラオケにしない!?皆で行こうよ!ねっ、千秋?」

千秋「えっ?私は別にいいけど…」
勝嗣「いや、カラオケは止めた方が…」

和美「えっ、何で?」

勝嗣「だって、前田さんすげーオンチだし…」

ゴンッ

勝嗣「ぐわっ!」

和美「勝嗣くん!」

前田「かったりーな……帰るわ、テストベンキョーしなきゃなんねーし」

米示「良い心がけじゃねーか」


和美「えー、オンチでもいいじゃん!行こうよー」

千秋「ちょっと、和美」

前田「じゃあな」


千秋「前田くん……」
勝嗣「本当に行っちまいやがった……殴るだけ殴っといて、何てヤローだ」

米示「お前が悪いんじゃねーか」


和美「あ、そうだ!ねぇねぇ聞いて!凄いんだよ!?」

勝嗣「うるせーな、何だよ」

和美「さっきね、萩原雪歩ちゃんに会っちゃった!そこの通りで!」

米示「萩原雪歩?……ああ、765プロの雪歩ちゃんか」

和美「そうそう!この辺に住んでるのかなー、ビックリしちゃった」

千秋「会ったというか、歩いているのを見かけただけなんだけどね」

勝嗣「へぇー、俺も見たかったな」

和美「あーっ、勝嗣くんそれどういう意味!?」ポカポカ

勝嗣「いてて、てめーが話振ったんじゃねーか」
米示「さっき前田さんボーッとしてたのも、雪歩ちゃんを見かけたからかな」

勝嗣「それはねーだろ。前田さん全然知らねーもん、アイドル」

米示「あぁ、確かに」


和美「かわいかったなー、雪歩ちゃん」

千秋「お人形さんみたいだったね」

勝嗣「追いかけてきゃ、まだ間に合うかな」

米示「おい止めとけって」

和美「勝嗣くん!」ポカポカ

勝嗣「あだだだ!」

米示「ほれ見ろ」
〜駅近くのコンビニ〜

「ありがとうございましたー」

ウィーン

雪歩(えへへ……こうして皆が写ってる雑誌を買い揃えるの、好きなんだぁ)ニコニコ

雪歩(美希ちゃん凄いなぁ……またファッション誌の表紙飾ってる)

雪歩「電車の中で読もうっと」


ドンッ

雪歩「きゃっ」

中年男「おっとと……大丈夫かい、お嬢さん」

雪歩「ひっ!……す、すみません!ボーッとし…」

中年男「ん?……ねぇ、ひょっとして君、萩原雪歩さんじゃないかい?」

雪歩「えっ?」
中年男「あー、やっぱりそうだ。おじさんファンなんだよ」

雪歩「えっ、あ、あの……ありがとうござい…」

中年男「ちょっとそこでお茶でもどうだい?奢るからさ」

雪歩「ええっ?い、いや、あの……これから帰らなきゃ…」

中年男「ちょっとだけでいいから!ねっ、お願いだよ」

雪歩「いや……こ、困りますぅ…」

中年男「いやいや、ほんの5分で良いからさ、頼むから…」


前田「おいオッサン」

中年男「ん?」

雪歩「ひっ!」ビクッ
中年男「何だ君は」

前田「俺の原付の前で揉めるのは止めろよ、どけ」

中年男「原付?……あぁ、これか。いつもコンビニに停めてるのか?」

前田「うるせーな」

雪歩(ひぃーん……怖そうな人…)


中年男「誤解だが、私達は揉めてなどいないぞ。ちょっとお願いをしていただけだ」

前田「知ったこっちゃねーけどな。見苦しいんだよ」

中年男「な、何っ!?」
前田「イライラしてんだ。頼むからどっか行ってくれ」

中年男「こ、このガキ…!」


前田「…………」ギロッ

中年男「ぐっ………」


中年男「くっ……覚えてろよ。せいぜいイキがっているんだな」ダッ

タタタ…


前田「…………」

雪歩「あっ………あわわ……」ガタガタガタ…
前田「何見てんだよ」

雪歩「ひっ!す、すみません!ごめんなさい!!」

前田「テメェも行きたくなきゃハッキリ言えばいいじゃねーか」

雪歩「す、すみません〜〜!!」

前田「チッ」


バルン バルン ドッドッドッドッ…

前田「次からは気をつけろよ」

雪歩「あっ、えぅ…」

ブカカカカカ…


雪歩「い、行っちゃった……怖かったぁ………」ヘタッ…


雪歩「あっ……お礼、言うの忘れちゃった」
〜翌朝、765プロ事務所〜

雪歩「〜〜〜♪」ニコニコ


亜美「ねー、ゆきぴょん何見てんの?」

雪歩「あっ、これはね……ほら」

真美「あー!亜美スゴイ、雑誌にでっかく写ってるじゃん!」

亜美「おー!んっふっふ→、亜美も竜宮小町の一員だもんねー!」


真美「いいなー!ねーねー、真美は写ってないの?」

雪歩「ちょっと待ってね、真美ちゃんは……」パラパラ…

雪歩「ほら、これ」

真美「げぇー!小さいー!」ガーン
春香「どうしたの皆?楽しそうだね」

真美「あっ、はるるん!ゆきぴょんが、皆が写ってる雑誌を持ってきてんの!」

真「えぇ、いいなーそれ!ボク達にも見せてよ!」


雪歩「いいよ。真ちゃんは、この雑誌にスポーツ飲料の広告があって……あった、これ」

美希「わー!真君すっごいスポーティーなの!」

雪歩「美希ちゃんはファッション誌の表紙……響ちゃんは、えっと……」パラパラ…

雪歩「そうだ、このテレビ雑誌の……この番組紹介のワンシーンの、ここ」

響「うー……小さくてあまり見えないぞ」

春香「レギュラー番組があるだけ良いじゃん!ねー雪歩、私や千早ちゃんのある?」

雪歩「ええと……春香ちゃんは今回無いみたい……ごめん」

春香「ズコーッ!」

雪歩「千早ちゃんは、この音楽雑誌の……これ」

千早「新曲出したものね。取り上げられて良かったわ」
真「しかしマメだなー、雪歩。皆のチェックしてるの?」

雪歩「えへへ」ニコニコ

響「偉いなー、自分はできる気しないぞ」

美希「ミキの出てるのを毎回チェックしてたら、大変だと思うなー」ドヤッ

春香「ぐぬぬ……私だって、この間雑誌のインタビューを…」

千早「見苦しいわよ、春香」


P「そろそろ時間だな……おーい、レッスン行く奴は俺の車に乗れー」

春香・千早・美希・響「はーい!」


P「雪歩は……今日も昨日と同じスタジオだな、吉祥寺の方の」

雪歩「き、昨日と同じ……」ゾッ…

雪歩(あの怖そうな人がいた所…)
P「?……どうした?」

雪歩「い、いえ……あの、プロデューサーは、今日は一緒に…?」

P「いや、皆をレッスンに送った後は、俺は貴音のいる現場に行かなきゃならん」

雪歩「え、えぇぇぇぇ……」

P「そ、そんな顔するなよ……今日は真も一緒だからさ」

雪歩「えっ?」


真「そういうこと。さぁ、早く行こう、雪歩!」

雪歩「ま、真ちゃん……!」ジィーン…


真美「ねーピヨちゃん、真美達とゲームして遊ぼうよ→」

小鳥「いやいや、私はほら、仕事があるしねぇ」

律子「はいはい、余計な茶菓子はほどほどに、仕事しましょうねー」ボッシュート

小鳥「ピヨ……」
〜某スタジオ〜

スタッフ「カット!オッケーでーす!」


真「雪歩、お疲れ様!上手くいったんじゃない!?」

雪歩「うん!真ちゃんも、カードゲームのイメージに合ってたよ」

真「へへっ、やっりぃ〜!」


真「次の収録まで時間が空くなぁ……どこかお昼食べに行こうか」

雪歩「うん、そうだね」


真「すみませーん、お昼食べに行ってきまーす」

スタッフ「あ、了解でーす!次の収録は15時半スタートでお願いしまーす!」

雪歩「分かりましたぁ」
テクテク…

真「雪歩は何か食べたいのある?」

雪歩「うーん……実は、あまりお腹減ってないかも…」

真「えっ、そうなの?じゃあ、軽めの食事がいいね」


真「それだと、喫茶店がいいかな。長居もしやすいだろうし」

雪歩「うん、そうだね」


『CAFE 6 MARU 8』


真「ここでいい?」

雪歩「うん……ごめんね。真ちゃん、きっとたくさん食べたかったよね」

真「うっ……いやいや!ダイエットになるし!」
〜店内〜

勝嗣「もう一回やれ、もう一回」

米示「こんなのえれー昔に流行ったんだぜ」

前田「いいからやれよ、もう一回。ほら、ゆっくり」


米示「まずマッチ箱をこうやって持って…」

米示「はじいて倒して…」パチッ

米示「中指はじいて…」パチッ

米示「親指ひねって…」パチッ

米示「挟んでビッと出す」パァン


米示「続けて早くやるとカッコいい」パチパチパチパチ

勝嗣「おお〜〜〜っ」

前田「……………」
米示「最後にはじく時、いい音鳴らすとサマになるぞ」

勝嗣「よし貸せ」

前田「……………」パチパチパチパチ

前田「できた!!」


前田「できたぞ、見ろほら!」パチパチパチパチ

勝嗣「ほ…ほんとだ!何で前田さんにできるんだ!?」

米示「簡単だろ」


キィ… カラン カラン

マスター「いらっしゃいませー」


米示「ん?」
真「あ、2人で」

マスター「2人ね、じゃああっちの席へどうぞー」


米示「……男女二人組か。この辺じゃ見ねぇ顔だな」

前田「ぎゃはははは、おもしれ〜」パチパチパチパチ

勝嗣「く…くそっ、どうして…」
真「何を食べようかなー」

雪歩「あ……私これにしようかな、サンドイッチ」

真「そんなんじゃ足りないよ、ボクはえーっと……これ大盛りってできるのかな?」


雪歩「……ッ!!」ギクッ!


前田「ぎゃっはっはっ」パチパチパチパチ


雪歩(ひぃ〜ん!あの人がいるぅー!)ガタガタガタ…
真「すみませーん、これって大盛りにできるんですか?」

マスター「あ、はい、できますよー」

真「それじゃあ、ナポリタンの大盛りと……雪歩はこれだっけ?」

雪歩「は、はいっ!?」ビクッ!

真「お、驚きすぎだよ……えぇと、このミックスサンドっていうのを下さい」

マスター「はーい、ちょっと待って下さいねー」


雪歩「あ、あのぅ……真ちゃん」

真「何、雪歩?」

雪歩「あの……やっぱり、違うお店にしない?」オドオド…

真「ど、どうしたの?……何だか顔色悪いけど」

雪歩「やっぱ、ちょっと注文下げてもらうこと、できるかなぁ、なんて……」カタカタ…

真「ちょっ、落ち着いて雪歩、どうしたんだよ?」
前田「………?」


雪歩(!……ひ、ひぃ〜ん!気づかれたぁー!)ガタガタ…


前田「………………………」

前田「……チッ」


前田「…………」ガタッ

雪歩(ひぃ〜!どうしよう、こっちに来るのかも!!)ガタガタガタガタ…


前田「おい、出るぞ」

米示「あん?」

前田「……」キィ… カラン カラン

勝嗣「あっ、ちょ……待てよ前田さん」

カラン カラン


雪歩(?……い、行っちゃった……)
米示「どうしたんだよ前田さん」

勝嗣「はしゃいだり無口になったり、忙しいヤローだな」

前田「うるせぇ」


勝嗣「しかし、さっきのあの子……どこかで見たような…」

米示「あぁ、俺も気になっていたんだが……」


勝嗣・米示「!!」
米示「思い出した!あれ、765プロの萩原雪歩ちゃんだ!」

勝嗣「何でさっさと言わねーんだ!」

米示「うるせぇ!お前らがマッチ箱のカッコいいはじき方を教えろって!」


前田「………………」

勝嗣「ぐわー、もったいねぇー!もっと良く見とくんだった!」

米示「お前らがマッチ箱の話題で盛り上げなければ!」

勝嗣「うるせーな!前田さん、知ってたかよ!?」

前田「……いいや、知らなかったぜ」
真「気分は落ち着いた、雪歩?」

雪歩「う、うん……ごめんね、真ちゃん」

真「いや、いいんだけど……さっきの男連中のこと?」

雪歩「うん……」

真「確かに、いかにも不良って感じだったし、雪歩が怖がるのも無理は無いか」

雪歩「あ、あのね………実は、あの中の一人の人と、昨日会ってて…」

真「ええぇっ!?……ほ、ホントに?」

雪歩「うん……困ってる所を、助けてもらったんだけど…」
真「そうだったんだ……意外と良い人なのかもね」

雪歩「うん………あっ」

真「ん?」

雪歩「お礼……言えば良かったなぁ」

真「あぁ……むしろ、助けてくれたんなら怖がることないのに」

雪歩「そ、それはそうだけど……あまりにも怖くて、周りの人達も」


雪歩「ダメダメだなぁ、私……お礼もロクに言えないなんて」

真「あー、またそうやって自分を卑下する!雪歩の悪い癖だよ!」

雪歩「ご、ごめんなさい…」

真「とにかく!また今度頑張ろう!ねっ?」

雪歩「う、うん」
〜某スタジオ〜

スタッフ「カット!オッケーでーす!」


真「ふぅー、疲れたー!」

雪歩「真ちゃん……ごめんね、私、いっぱいNG出しちゃって…」

真「だからー、止めなよ雪歩!雪歩だけじゃないじゃん、NG出したのは!」

雪歩「で、でも私の方が…」


真「もっと堂々としていいんだよ、雪歩は十分かわいいんだから」

雪歩「か、かわ……///」カァーッ…

真「よし、じゃあ帰ろっか?」

雪歩「う、うん……」
テクテク…

真「えぇっと、吉祥寺駅は…」

雪歩「こっちだよ、真ちゃん」

真「あぁそうか、雪歩は昨日来たんだよね」

雪歩「うん、だからちょっとだけ覚えてるんだ……えへへ」


真「とにかく、雪歩はもっと自分に自信を持つべきだよ」

雪歩「う、うん……そう言われても……」

真「そりゃあ、人気モデルの美希や、レギュラー番組持ってる響…」

真「あと、竜宮小町の皆の方が、今は人気が上なのかも知れないけどさ」

雪歩「CDの売り上げが好調な千早ちゃんに、グルメレポートに定評のある四条さんも…」

真「あぁそうだね……いや、そんなことはどうだっていいんだよ!」
真「雪歩だって、皆が持ってない魅力を持ってるんだから」

真「そもそも、今はボクより雪歩の方がランクも知名度も上だし」

雪歩「そ、そうかなぁ……?」

真「そうだよ、むしろ頑張らなきゃいけないのはボクの方だよ」

雪歩「う〜〜ん……」



不良A「あれ?……おい」

不良B「あん?」

不良A「見てみろよ、あれ」

不良C「……うぉやっべ!765プロのアイドルじゃん!」
真「雪歩が気づかなくても、皆やファンの人達は気づいているんだよ」

雪歩「う……うーん…」

真「昨日だって、プロデューサーに褒められたんでしょ?」

真「ボクもその理由分かるもん。もっと自信を持って良いんだよ」

雪歩「う、うん……分かった、頑張るね」

真「あーーっ!分かってない、それ絶対分かってな…」



不良A「ねぇねぇ、ちょっといいかな」

真「ん?」

雪歩「ひっ!?」ビクッ
不良B「765プロの萩原雪歩ちゃんだよね?」

雪歩(ひぃ〜ん……)カタカタカタ…

真(雪歩が怯えているな……早めに切り上げないと)

真「えぇ、そうですけど」

不良C「やっぱそうだったんだ!いやー、俺らファンなんスよ」

不良A「握手してよ、握手」

真「いやぁ、ちょっとこれからすぐに仕事行かなきゃいけなくて…」

不良B「ちょっとくらいいいじゃん、お茶でもどう?」

真「困ります、ボク達もう行きますね」


グイッ

真「!」

不良B「お前には話してねぇんだよ、俺達は雪歩ちゃんに用があんの」

真「………!」イラッ…
不良A「でさ、どうなのよ雪歩ちゃん」

不良C「一緒にお話しようよ、楽しいからさ」

雪歩「ひ……い、イヤ……」

真「嫌がってます、もう止めて下さい」

不良C「うるせぇな、すっこんでろ…」

不良C「よっ!!」ブオッ


バシッ!

不良C「!?」ギリギリ…

真「暴力振るう人、雪歩もボクも嫌いですよ」ギリギリ…
雪歩「ま、真ちゃん…」

不良C「くっ……コイツ…!」

不良A「せっかくの楽しい時間を、てめぇ…」ジャッ…

不良B「やるかオラ」ジャッ…


真(騒ぎを起こす訳にはいかない、どうしよう…)



米示「ん……あれ?」

勝嗣「………あぁ〜〜〜〜〜〜!!」


雪歩・真・不良「!?」ビクッ
米示「やっぱりそうだ!雪歩ちゃんだ!」

勝嗣「でかした米示!ちょっとー!」タタタ…


雪歩「ま、また来るぅ〜!」ガーン

真「あ、あれって……さっき喫茶店にいた人達じゃ…」


勝嗣「いやぁ、は、初めまして……俺、山下勝嗣っていいます」

米示「自己紹介してどうすんだてめーわ。あ、握手いいですか?」

雪歩「ひ、ひぃぃ……」ガタガタガタ…


不良A「おい」

勝嗣「ん?」

不良B「順番守れよ、俺らが先に来てたんだぞ」

米示「何だぁてめぇら」
不良C「嫌がってんじゃねぇかよ、さっさと消えろ」

勝嗣「そーいうお前らも、さっきまで雪歩ちゃんに嫌がられてたみてーだけどな」

不良C「な、何だと!?」

米示「カッカッカッ」


雪歩「ひ……うぅ……」ガタガタガタ…

真(落ち着いて、雪歩……あの連中が争っているスキに逃げよう)

雪歩(ま、真ちゃん……?)


米示「おい、雪歩ちゃん……とそこのお前」

雪歩「は、はいぃっ!?」ビクッ!

真(“そこのお前”?)ピクッ

米示「俺達が適当にコイツらの面倒見てっから、逃げてていいよ」


雪歩・真「……えっ?」
不良A「何だとてめぇオイ…」

勝嗣「まぁまぁ怒るなよ、タバコ咥えてても怖くないぜ?」

不良A「なっ…!」

勝嗣「お前らに必要なのはニコチンより乳酸菌じゃねーの?」


米示「……たぶん、お前それ乳酸菌じゃなくてカルシウムだろ」

勝嗣「あっ…」

米示「頭わりークセに難しいこと言おうとしてんじゃねーよ」

勝嗣「ぐっ……おのれ貴様……!」
米示「ほら、早くしな」

真「う、うん!……さぁ、雪歩!」グイッ

雪歩「きゃっ!」

タタタ…


不良B「あぁー!くそ、てめぇら何しやがる!」

勝嗣「あーあ、行っちまったか……寂しいなぁ」

米示「まぁそう言うな、こんなヤロー共と付き合うよりかはマシだろ」

勝嗣「確かに」
不良C「貴様ら……タダじゃおかねぇぞ!」

勝嗣「どうタダじゃおかねーんだよ、堀口学園のボンボンが」

不良A「うるせぇ!そういうてめぇらはどこのモンだ!?」グアッ

バシッ!

米示「帝拳だよ。文句あっか」

不良A「げっ!?……な…て、帝拳…」

ゴッ!

不良A「ぐわっ!」ドドォッ

不良C「あっ、A!」


米示「おい勝嗣、コイツらみてーなお坊ちゃんに必要なモンがもう一コあるぞ」

勝嗣「あぁ、そうだな……オシオキをくれてやるぜ」
タタタ…

真「はぁ、はぁ……ここまでくれば大丈夫かな…」

雪歩「ま、真ちゃん……はぁ、はぁ……ちょ、ちょっと休ませて…」

真「あぁ、雪歩!ごめん」

真「怖い所だね、吉祥寺って」

雪歩「うん……ちょっとだけ、ね……」


真「でも失礼しちゃうなぁ、今の男達!」

真「ボクの事を知らないだけならまだしも、男と間違えるなんて!」プンスカ!

雪歩「あはは……そ、そうだね」
真「でもさ、これで分かったでしょ?」

真「男の人にとっては、雪歩はすごく魅力的なんだよ。ちょっと今日の連中はアレだけど」

雪歩「う、うん……自信、持ってみ…」


雪歩「あっ!」ギクッ

真「?」

雪歩「こ、このコンビニ……そしてあそこに置いてあるスクーターは……」ワナワナ…

真「ど、どうしたの雪歩?……大丈夫だよ、もう不良は…」


ジャッ…

前田「ん……」

雪歩「ひぃ〜〜〜!!」

真「あーっ!さっきの連中の!」
前田「またてめーか、どけ」

雪歩「ひ、ひぃ〜〜!!」ズザザザザ!

真「雪歩、いくらなんでもどきすぎ!」


雪歩(真ちゃん、あの人!あの人だよぅ、さっき言ってた…)

真(えっ、あの人って……あ、この間助けてくれたって人?)

真(だったらお礼言わないと!さっきも言ってたじゃん、頑張るって!)

雪歩(う、うぅぅ……!)ガタガタ…


チャリンチャリン ピッ ウィーン ガコン

前田「………チッ、間違えて加糖にしちまった」


真(ほら、今のうちに早く!)ドンッ

雪歩「うわぁっ!」ヨロッ…
雪歩「と、とと……」ヨロヨロ…

前田「……何だよ」

雪歩「ひっ!す、すみません!あの、その、あの……」ドギマギ…


雪歩「こ、この間は、その!……困ってるのをた、助けて、くれ、くれて……」

雪歩「あ……ありがとうございましたぁ!」ペコリ


前田「………」パコッ

前田「グビグビグビ」
雪歩「………えぇと…」

前田「お前何歳?」

雪歩「へっ?」

前田「いや、だから年齢」

真「し、失礼ですよ!女性の年齢を聞くなんて!」

前田「うるせーな」


雪歩「あ、あの……じゅ、17歳ですぅ……高校2年生」

前田「じゃあ俺とタメじゃねーか。お前もか?」

真「え、あの……そう、だけど」


前田「ならいちいち敬語使ってんじゃねー、ムズムズする」

雪歩「えっ…?」
前田「昨日からお前の喋り方にムカついてたんだ。まず敬語を止めろ」

雪歩「えっ、あの、でも……」オドオド…


前田「〜〜〜〜〜〜!」イライライラ…

雪歩「やっぱり、初対面の人とかには…」


前田「いいからとっとと喋っちゃられら!!」

雪歩「ひっ、ひぃっ!?」ビクッ!


雪歩「ご、ごめんなさ…」

前田「……」ギロッ

雪歩「ひ……ご、ごめん」

前田「………チッ」
前田「ったく……アイドルやってんなら、もっとビッとしやがれ」

雪歩「えっ?」

真「雪歩のことを知って…?」

前田「今日知った」


雪歩「あ、あの……名前は、何て?」

前田「あ?……帝拳高校の前田だ」


バルン バルン ドッドッドッドッ…

前田「次にそんなトロい喋り方してたら[ピーーー]」

雪歩「え、えぇぇ!?」

ブカカカカカ…


真「な、何なんだよアイツ……」

雪歩「………前田君って言うんだ……」
ブカカカカカ…

前田「………………」

プスン プスン

前田「!?」ガクン


ドッドッドッドッ… プスン プスン

ガチャッ

前田「おい、どうしたチャベス号!?」


前田「チッ……勝嗣のヤロー、適当なメンテしやがって」
中年男「おっと」ドンッ

前田「うおっ」ドンッ

グラッ… ガシャンッ!

前田「あ、ああぁっ、チャベス号!!」


中年男「あぁ、すまないね」

前田「てめぇ、何しやが……あっ、てめーは!」

中年男「奇遇だね、二日連続で会うとは」

前田「昨日のオヤジ……今、ワザと押したろ」

中年男「あぁいやいや、不慮の事故だよ、悪かった」
前田「このやろ…」ジャッ

中年男「おっと、私を殴ってはマズイと思うよ」

前田「んだと?」

中年男「私はこれでもジャーナリストでね……名刺をどうぞ」


前田「………渋澤マタイチ……」

渋澤「ふふ、まぁ書いてある通りだ」
前田「てめーを殴ったら俺を訴えるってか?」

渋澤「いやいや、訴えるだなんてとんでもない」

渋澤「ただ、確かに君の社会的地位は地に落ちるだろうね」

渋澤「もっとも、既に落ちてるのかも知れんが」

前田「てめっ……!」ガシッ

渋澤「はっはっはっ」


米示「あっ、おーい前田さん」

前田「おっ」


勝嗣「何してんだよ、オッサン相手に」

前田「別に……」

渋澤「くっくっく……」
渋澤「では私はこれで」スッ

前田「あっ」


米示「何なんだアイツ?」

前田「知らねぇ。ジャーナリストだってよ」


勝嗣「………あ、ああぁぁ〜〜〜〜〜〜!!げ、原付が!?」

米示「何だ……うおっ、倒れてやがる」

勝嗣「うわー、サイドミラーもカウルもグシャグシャだ!何やってんだよ前田さん!!」

前田「うるせー!俺が倒したんじゃねぇ!!」

前田「つーか、そもそもお前のメンテが……!!」


前田・勝嗣・米示「………!」「……………!!」
不良A「うっ………」

不良B「うぐぐ…」

不良C「アイツら……つえぇ……」


ジャッ…

男「何寝てんだよお前ら」

不良A「あっ……し、シブちゃん!」


シブ「情けねー奴らだな」

不良B「ぐっ……て、帝拳の奴らだ…」

不良C「アイツら、無茶苦茶しやがる……」
シブ「馬鹿かお前ら、正面から帝拳の奴らに挑むなよ」

不良B「そ、そう言われても、見た目じゃ分から…」

シブ「学ランで判断しろよ、それくらい」

不良C「アイツら、せっかく雪歩ちゃんと俺達が楽しく話してたのに…」


シブ「雪歩?……あの、765プロのアイドルか?」

不良B「どうやら、何かの仕事で来てたらしいぜ」

シブ「………なるほどな、アイツらのお目当ても雪歩ちゃんだったんだろ?」

不良A「あぁ……アイツら、舐めたマネしやがって」


シブ「くっくっく……いいじゃねぇか、仕返ししてやろうぜ」

不良A「えっ?でも、アイツら本当に強い…」


シブ「何も腕っ節だけでやるモンじゃないんだぜ、ケンカはよぉ」
〜三日後の朝、765プロ事務所〜

雪歩「〜〜〜♪」ニコニコ


亜美「あー、ゆきぴょんまた見てる→!」

雪歩「あっ、亜美ちゃん、真美ちゃん」

真美「見して!真美は今日こそデカデカと載ってるよね!?」

雪歩「うん、えっとね……ほら、このゲームの広告」

真美「やったぁー!ポケ毛ンの最新作だもんね→!」

亜美「おー!でかした真美!」


あずさ「あらあら〜、楽しそうねぇ」

真美「あっ、あずさお姉ちゃん見て!真美、でっかく写ってるでしょ!?」

あずさ「まぁ、本当。すごいわぁ真美ちゃん、うふふ」
雪歩「あずささんも載ってますよ、えっと……」パラパラ…

雪歩「ほら、この化粧品の」

あずさ「あら〜、ちょっとおばちゃん臭く見えないかしら〜」

雪歩「ぜ、全然そんなこと無いですよ!ねっ、真ちゃん!?」

真「いやいや、それはもちろん!」


ガチャッ

伊織「………」

亜美「いおりん、おっはよ→!」

律子「遅かったわね、伊織。それじゃあ、そろそろ出発するわよ」
伊織「………………」

真美「?……いおりんどったの?」

伊織「…………」ツカツカツカ…


雪歩「………え?」

伊織「……雪歩、あんたとんでもないことになってるわよ」

バサッ


雪歩「……!?」


『765プロ萩原雪歩 不良学生との黒い繋がり』


真「なっ……何だよこの雑誌!?」

雪歩「えっ……え…………」
P「何だ、どうした?」

美希「何かあったの?」

ワイワイ ガヤガヤ…


真「こんな悪質な記事って無いですよっ!!」ドンッ!

貴音「お気を確かに、真」

千早「もちろん、萩原さんにはそんなこと無いのよね?」

真「当たり前だろ!!」

春香「お、落ち着いて真……千早ちゃんも、ほら」

千早「えぇ……悪かったわ、ごめんなさい」

雪歩「い、いや………」
『仕事の帰り際、地元の学生数名に話しかけられた765プロの萩原雪歩(17)。
 しかし、そこで学生らは萩原の驚くべき行動を目の当たりにする。』

『何と、萩原はK市内で有数の不良高校であるT高の生徒を呼び出し、
 学生らを半殺しにするよう命じたというのだ。』

『「僕達、ちょっと萩原さんと一緒に話をしたかっただけなんです。
 それなのに、いきなり怖い人達を呼び出して……
 必死に逃げたんですけど、間に合いませんでした。」
 九死に一生を得た学生の一人はこう語っている。』

『事の真相は定かではないが、半殺しにされた罪無き学生がいたのは
 紛れも無い事実である。』



伊織「記事には、こう書いてあるわね」

雪歩「そ、そんな……」
小鳥「3ちゃんのスレの伸びがスゴイです。
   あ、でもほとんどが雪歩ちゃんを擁護する意見ですよ?」

律子「小鳥さん、仕事中にネットは…」

P「いや、今は許してやれ。ある意味では、最も生々しい世論を聞ける場だ」

律子「そ、そうですね……確かに、この雑誌は根拠の無いゴシップ記事で有名ですから」


響「当たり前さー!雪歩がそんなひどいことできる訳ないぞ!」

やよい「うっうー!気にしちゃダメです、雪歩さん!」

雪歩「う、うん……ありがとう、やよいちゃん」


P「しかし、何でこんなデタラメな記事が……心当たりはあるか、雪歩?」

雪歩「えっ、あぅ………」ドキッ
真「ボクが代わりに説明します」

雪歩「真ちゃん……」


真「むしろ絡まれたのはボク達の方です。一緒にお茶しようって、何度断っても聞かなくて」

真「すると、後から別の不良っぽい学生が来て……二言三言、どうでもいい話をしました」

真「自己紹介してきたり、握手して下さいとか…」

真「その後、突然その学生が、俺達に任せて逃げろって……それで、ボク達は逃げました」

真「ただそれだけなんです。半殺しとか、ボク達全然知りません!」


P「面識も無いんだな?」

真「無いって言ってるじゃないですか!!」

P「す、すまない……だが、俺はプロデューサーとして、
  事実関係を把握しておく必要があるんだ」

真「………すみません、大声出して」
貴音「しかし、面妖な…」

響「何が?」

貴音「半殺しに来たという学生は、高校の“いにしゃる”も記載されてあります」

貴音「しかし何故、被害者側の学生は、ただ“地元の学生”としか紹介されないのでしょう?」

千早「確かに……」

春香「ひょっとして、この記事を書いた人と、半殺しにされたっていう学生に、
   何か関係があるのかなぁ」

伊織「ただ半殺しをした方を目立たせたいだけなんじゃないの?」
律子「考えててもしょうがないわ。各自、いつも通り自分の仕事に行ってちょうだい」

一同「はーい」


雪歩「あ、あのぅ……私、今日は自粛した方が良いですか…?」

P「う、う〜ん……そうだなぁ…」


小鳥「プロデューサーさん!雪歩ちゃんが行ってるスタジオさんから電話です!」

P「あ、はいっ!」

雪歩「!………」ドキッ
P「はい、はい………えぇ………」

P「いえ、そうなんです………えぇ、ご迷惑をおかけします……はい……」


雪歩「………………」カタカタカタ…

真「雪歩、大丈夫……心配しないで」

雪歩「真ちゃん…」

真「こんな嘘っぱちな記事、すぐに皆忘れるよ」

雪歩「うん……」


P「はい………あぁ、すみません……えぇ………ではそのように……」

P「……いえ、こちらこそ本当にありがとうございます……えぇ、お願い致します…」

ガチャッ…
P「雪歩……今日の仕事なんだが…」

P「どうしても先方さんは、今日のうちにカットを撮っておきたいそうだ」

雪歩「えっ……そ、それじゃあ……」


P「すまない……今日の夕方、この間と同じスタジオに行ってもらえるか?」

雪歩「い、いえそんな!……プロデューサーが謝ることなんてないですぅ」

P「いや……本来であれば、今のお前にまた吉祥寺に行ってもらうのは、良くないと思う」

P「ましてや、俺は今日も同行できない。お前を余計不安にさせることになるが…」


真「その点は大丈夫です!ボク、今日オフなので、一緒に付き添いで行ってきます!」

雪歩「ま、真ちゃん……!」

P「真……そうか、すまない。雪歩を支えてやってくれるか?」

真「もちろんです!頑張ろうね、雪歩!」

雪歩「う、うん…!」
〜帝拳高校 教室〜

勝嗣「何だこの雑誌はぁ!?」バサッ

米示「チッ……よくもまぁこんなくだらねー記事書けるもんだぜ」

前田「どうした」

勝嗣「どうしたもこうしたもあるか!俺達が体を張って雪歩ちゃんを守ってだな!!」

前田「あん?」

米示「かくかくしかじか」


前田「よーするに、お前らが出しゃばったお陰で、困ってるヤツがいんのか」

勝嗣「困らせてねーよ!!」

米示「……ま、ゴシップで有名な雑誌だから、誰も相手にしねーと思うけど」
前田「ならほっとけよ、メンドくせぇ」

勝嗣「で、でもよ…」

米示「いいんだよ。ここで俺達がヘタに動いたら、この記事書いたヤツの思うツボだ」

勝嗣「ぐぬぬ…」


米示「それより前田さん大丈夫かよ?」

前田「何が?」

米示「いや、期末テスト……明日からだぜ?」

前田「期末テスト……?……………………」


前田「げっ!!」

勝嗣「テストベンキョーしてたんじゃねーのかよ、てめーわ!!」


ガララッ

井岡「はっはっはっ、そのとーり!」

勝嗣「げっ、井岡だ」
前田「何しに来やがった、英語は5時間目だぞ」

井岡「ふっふっふ、期末テストを明日に備え、ウズウズしてきてな」


井岡「前田よ……明日のテストで、貴様を血祭りに上げてくれるわ!」

前田「テストでどう血祭りに上げるんだよハゲ」

米示「帰れハゲ」

勝嗣「うさぎさんのぬいぐるみ抱きながら寝てろハゲ」

井岡「ぐぬぬ……まぁいい」


井岡「おい前田。英語の追試は来週火曜の放課後、1組の教室で行う。忘れるなよ」

前田「く……ま、まだ始まってもねぇのに…!」

井岡「はっはっはっ」


米示「ただ前田さんを煽りに来ただけか」

勝嗣「何てヒマなヤローだ」
〜堀口学園〜

不良A「すげぇよシブちゃん!本当に記事になってるし!」

不良B「あはは!帝拳の野郎、良い気味だぜ!」


シブ「はしゃいでんじゃねーよ。こんなのただのゴシップ記事じゃねーか」

不良C「えっ?でも、この記事シブちゃんの親父さんが…」

シブ「誰もこんな記事を世間が信じるなんて思っちゃいねーよ」


シブ「いいかお前ら。ゴシップっつーのはな、信じさせることが目的じゃねぇ」

シブ「騒がして、獲物を引っ掛ければ十分なんだよ」

シブ「うまくいきゃあ、嘘も本当になるってもんだぜ。くっくっく……」
〜夕方前、某スタジオ〜

監督「ごめんねー、雪歩ちゃん。どうしても納期が迫ってるもんだから…」

雪歩「いえ、とんでもないですぅ!あの、精一杯やらせてもらいます!」

監督「ありがとうね。ウチのスタッフは皆、雪歩ちゃんを信じてるからね」

雪歩「は、はい……ありがとうございますぅ!」


真「ボクはここにいるよ。頑張ってきてね」

雪歩「うん!じゃあ、行ってくるね」


スタッフ「萩原雪歩さん入りまーす!」

スタッフ「おなーしゃーす!!」

雪歩「お、お願いしますぅ!」
〜2時間後〜

スタッフ「カット!オッケーでーす!」

雪歩「あ、ありがとうございましたぁ」


真「お疲れ様!すごく良かったよ!」

雪歩「うん!スタッフの人達も、皆良い人達だったよ」

真「見てて伝わったよ。良かったね、良く出来てたと思う」

雪歩「うん、ありがとう」


真「さて、それじゃあ帰ろうか」

雪歩「うん」
テクテク…

真「ちょっと暗くなってきたね」

雪歩「う、うん……」

真「どっかご飯……は、吉祥寺じゃなくても良いか」


雪歩「……………」ギュッ…

真「雪歩……大丈夫、ボクが付いてるよ」

雪歩「うん……ありがとう、真ちゃん」


雪歩「ねぇ、真ちゃん…」

真「ん?」

雪歩「ありがとう……今朝、あんなに大声で記事を否定してくれて」
真「え……い、いや……別にいいよあれは」

雪歩「ううん……凄く、嬉しかったんだ」ニコニコ


真「……本当に、そんなんじゃないんだよ、雪歩」

雪歩「えっ?」

真「もちろん、雪歩のことを悪く書くデタラメな記事にも怒ったけどさ……」



真「何と言うか……ボクがついていながら、何であんなことになったんだろうって……」

真「そっちの怒りも……つまり、自分への怒りもあって……」

真「自分が情けなくてさ……それを誤魔化すための大声だったんだ」


雪歩「………………」

真「ごめん、雪歩……ガッカリしたよね?」
雪歩「真ちゃん……それって、真ちゃんが自分を責めてるってこと?」

真「えっ?」


雪歩「ダメだよそんなんじゃ……私みたいになっちゃイヤだよ」

雪歩「真ちゃんだって、自分の魅力に気づいていないよ」


雪歩「真ちゃんはいつだって自分に自信を持ってて……私に勇気をくれて……」

雪歩「いつも元気づけてくれるんだ……そういう人なんだよ、真ちゃんは」
真「ゆ、雪歩………」


雪歩「これは私の問題だよ、真ちゃん」

雪歩「と言っても、無視すれば良いだけ!……だよね?」ニコッ

真「雪歩……そうだね」


雪歩・真「ふふふ……」


雪歩・真「あははは」
ジャッ…

雪歩「!?」ビクッ

真「!」


不良A「よぉ」

不良B「また会ったね、雪歩ちゃん」

雪歩「ひっ……」

不良C「へへへ…」


真「何の用だよ!ボク達はこれから帰るところなんだ!」

不良A「野郎にゃ用はねーんだよ、引っ込んでろ」

真「〜〜〜〜〜〜〜!!」ワシャワシャ
勝嗣「チッ……だぁー、くそ!」


米示「いつまでイラついてんだ、いい加減ほっとけ」

勝嗣「てめぇはくやしくねーのか!あんだけ好き勝手書かれてよ!」

米示「本当のことじゃねーんだし、ほっときゃあんなデタラメ記事すぐに忘れられるよ」

勝嗣「けっ……ケツの穴の小せぇヤローだぜ」


前田「それより勝嗣、俺のチャベス号を何とかしろ」ギーコ ギーコ…

勝嗣「あん?知るか、前田さんが無茶な運転したんだろ」

前田「だから壊したのは俺じゃねぇ」ギーコ ギーコ…


米示「渋澤とかいうジャーナリストだっけか?そいつも良く分かんねぇヤローだな」

前田「俺に嫌われる愚か者なのは間違いねぇ」ギーコ ギーコ…

勝嗣「俺は堀口学園の奴らが嫌いだ」
米示「……ん?」

前田「どうした?」

米示「いや、ほらあそこ…」

勝嗣「あ、おい……あれって…」


雪歩「や、止めて下さい……!」

真「雪歩を離せ!警察を呼ぶぞ!」

不良B「うるせーよ、さっさとどっか行こーぜ」


前田「ん?」

米示「堀口学園!」

勝嗣「アイツら、性懲りも無く…!」ダッ!
真「いい加減にしろ!」

不良C「いい加減にすんのはテメェだよっ!!」シュッ

パシッ!

不良C「くっ!?」ギリギリ…

真「ボクとの握手だって、ちょっとは嬉しがって欲しいな」ギリギリ…

不良B「このヤロ…!」


ダッ!

勝嗣「おらぁー!何してやがるー!」

米示「あー、お前らはあの時の奴らだなー!?」

前田「おいコラ、待てって」ギーコ ギーコ…


不良A「!」

不良B(来た……!)

不良C(しかもあいつは……前田か!?)
不良A「へへへ……またお前らか」

勝嗣「まーた雪歩ちゃんを捕まえてたか」

米示「熱心なこったぜ」


雪歩「こ、この間の人達……!」

雪歩(それに、前田君まで…)

真「皆、来ちゃダメだ!コイツらロクなこと考えてないぞ!」


不良C「うるっせぇんだよ!!」ブンッ

サッ

雪歩「真ちゃん、危ない!」

真「くっ!」


前田「…………」

バルン バルン ドッドッドッドッ…
米示「!?……おい前田さん!?」

勝嗣「えっ!?ちょ……おいっ!!」


ブオォォォォ!!

不良A・C「うお!?」「危ねぇ!!」サッ


ガシッ!

雪歩「えっ、きゃあっ!?」グイッ

真「雪歩!!」
前田「乗れ!」

真「……くっ!」


タタタタタッ… ガシッ!

前田「よしっ!」


ブカカカカカ…


不良B「なっ!?……さ、さらっていきやがった…」

勝嗣「……誘拐、だな」

米示「あぁ……」
不良C「おい、お前ら誘拐なんてして許されると思ってんのかよ」

不良A「ましてやアイドルだぜ、何てヤローだ」


勝嗣「……何だとこの野郎」

米示「おい、止めとけ勝嗣」


シブ(くっくっく、そうだ……もっと煽れ)

シブ(ぶちキレて手を出した時がてめーらの最後だぜ、帝拳よぉ)
不良B「やっぱ帝拳っつーのは、下品なヤローが群がるトコらしいな」

不良A「昨日だって、まさか俺達“半殺し”にされるなんて思わなかったよなぁ」

不良C「“怖い人達に追いかけられて、僕達必死に逃げたんですぅ〜”」

不良A・B・C「あっはっはっはっはっ!」


勝嗣「うるせぇんだよ……どうせてめーらがあの記事捏造したんだろうが!!」

米示「勝嗣、待て!」

勝嗣「うるせぇ!もうコイツら許しちゃおけねー!!」ダッ!


シブ(くっくっく……嘘が本当になる瞬間だぜぇ)ニヤァ…

シブ(シャッターチャンスはもらった)スチャッ
不良A「くくく、来いよ」

勝嗣「うおらぁあーー!!」グアッ

不良A「おっ?」スッ


バキッ!

不良A「あっ」

勝嗣「ぐっ……ぐわぁっ!」ドサッ

米示「勝嗣っ!!」


シブ(!?)
米示「てめぇ、やりやがったな!」ダッ

不良B「おい、何やってんだ」

不良A「い、いや違う。コイツが勝手に俺の拳に…」


米示「何をデタラメ言ってやがる!うおおぉー!!」グオッ

不良C「うお、来やがった」スッ


ドンッ!

米示「ガハッ!」ドドォッ

不良B「なっ……!?」

不良C「じ、自分から俺の肩にぶつかっておいて……」
勝嗣「ぐっ……あぐぐ…!」

米示「いてぇ……いてぇよぉ…」

不良A「何だぁこいつら?何のつもりだ」


ヒソヒソ… ヒソヒソ…

不良C「ん?」


チョット ナニアレ… ケンカヨ ケンカ… ドコノ コウコウカシラ… ヒドイ…
勝嗣「か、勘弁してくれ……許してくれ……」

米示「もうイヤだ………殴らないでくれよぉ……」

不良A「お、おい……」

不良B「チッ……何見てんだよ!あっち行けや!」

マァ ランボウネ… アブナイ ヤツラダナ… ヒソヒソ…


シブ(やられた……馬鹿野郎共が、煽るな!逃げろ!)


不良C「な、何かまずい……ズラかろうぜ!」

不良A・B「お、おう…!」ダッ!

タタタ…


シブ(ふぅ……くそっ)
勝嗣「……行ったか?」

米示「あぁ………よいしょっと」

勝嗣「しかし、大した猿芝居だったな」

米示「お前は熱演しすぎだ」


シブ(まさか、俺らを逆に嵌めにきただと……!?)

シブ(野郎……ナメやがって)


トントン

シブ「ん?」

シブ「……!!」


誠二「お前さっきから何してんの?」

ジョー「盗み見は良くねーぜ」
シブ「な……何だてめぇら、離せ!」


米示「お、何だ?」

ジョー「おう、面白そうな事してんな」

勝嗣「ジョー、誠二!何してんだそんなとこで」

誠二「こっちが聞きたいッスよ」


米示「コイツが堀口学園のリーダー格か」

誠二「性格悪そーなツラしてんな」

シブ「……………」


米示「さてと……てめーには聞きたいことがある。場所変えるぞ」
米示「……なるほど。つまり、お前達の狙いは雪歩ちゃんじゃなくて、
   ハナから俺達を陥れることだったんだな?」

ジョー「それで、雪歩ちゃんの仕事先と、米示達の帰宅ルートを事前に調べて、
    上手く罠に嵌めれる場所を選んだわけか」

勝嗣「まわりくどい」

誠二「確かに」


シブ「……逆に聞くが、何で俺が隠れていると分かった?」

米示「それは俺も聞きたいな。何してたんだよお前ら」


誠二「いや、たまたま雪歩ちゃんを見かけたから、後を追いかけてて…」

ジョー「で、雪歩ちゃんが堀口学園のヤツらとトラブッてるうちに、お前らが来たからよ」

ジョー「傍から見物していたら、コソコソしてるコイツを見つけたってわけ」

勝嗣「ストーカーかよ、てめーらわ」
シブ「今日、俺達と会う前から、俺達に手を出さない事は決めてたのか?」

米示「ああいうゴシップ書くようなヤツらの考えなんざ、知れてんだよ」

シブ「……くそ」


ジョー「で、どうすんだよコイツ?」

勝嗣「コイツらのお望みどおり、半殺しにしてやろうか」

米示「まぁ待て。下手に禍根を残すとメンドくさそうだぜ、コイツ」

シブ「………………」
米示「というわけでだ……今日のところは開放してやるよ」

米示「だが、今度俺らに関わったら、分かってんだろうな?」

勝嗣「納得いかねぇ」


シブ「……見逃すってのか?」

米示「見逃すよ……だが、タダじゃ見逃さねぇ」


米示「お前がさっきから大事そうに持ってる、そのカメラ」

シブ「おっ?」

米示「それを渡せ」
シブ「……これを…………」

勝嗣「さっさとしろよ、クソが」

シブ「…………ぐっ」スッ


米示「勝嗣、コレで我慢しとけ」スッ

勝嗣「こんなんで俺の気は収まらねーよ」

勝嗣「まぁいいや」ブンッ

シブ「あっ、おい……!」


バキャッ!


シブ「!!」
誠二「うわー、ハデにぶっ壊しましたねー」

米示「俺達を嵌めようとした悪いカメラはこうなるってこった」

勝嗣「カッカッカッ、いい気味だぜ」


シブ「あっ、あぁ……」

ジョー「おいおい、泣くなよ」


シブ「………………………」
米示「さてと、いいぞ帰って」

勝嗣「もう二度と俺達の前にツラ見せんじゃねーぞ」


シブ「………………………………」

トボトボ…


米示「……で、前田さんはどこまで行ったんだ?」

勝嗣「知るか、雪歩ちゃんを連れやがって。千秋ちゃんに言いつけてやる」

誠二「勝嗣さんだって、雪歩ちゃんの話ばっかしてると、和美さんに怒られますよ」

勝嗣「うるせーバカ」

ジョー「カッカッカッ」
ブカカカカカ…

雪歩「ひぃ〜〜!怖いよぉ!!」ジタバタ

前田「だぁー、暴れんじゃねぇ!!」

真「ムチャだよ!こんな小さい原付に三人乗りなんて!」

前田「うるせー!!黙って乗っちゃられ!!」


前田「うぐぐ、前が見えねぇ!邪魔だ、降りろ!!」

雪歩「ええぇぇぇぇぇ!?」

真「どっちだよ!!」


プスン プスン

前田「うおっ!?」ガクン
ドッドッドッドッ… プスン プスン


前田「チッ……完全にイカれちまいやがった」

雪歩「こ、壊れちゃったの……?」

真「あれだけムチャな運転してたらねぇ」


雪歩「ご、ごめんね……私、重かったよね…」

真「雪歩が謝ることなんて無いよ!ていうか重くないよ!」
雪歩「ううん、でも……ありがとう、前田君」

前田「あん?」

雪歩「私と真ちゃんのこと、助けてくれて」


真「そうだね……えぇと、前田君って、下の名前何て言うの?」

前田「あ?……太尊」

真「へぇー、変な名前……じゃあ太尊だね!ありがとう、太尊!」


前田「そんなんじゃねーよ」

雪歩「えへへ」ニコニコ

真「へへっ」
前田「それより、俺のツレが余計なお節介しちまったみてーだな」

前田「そのお陰で、雑誌とかでデタラメ書かれたそうじゃねーか」

雪歩「あぅ……」

真「え、えぇと……そんなことはいいよ、悪気は無かったんでしょ?」


ガッ! グイッ

雪歩「えっ?きゃっ…!」

真「雪歩!な……?」


真「太尊、何をするんだ!雪歩から手を離せ!」

前田「黙ってろ」
雪歩「ま、前田君……?」ドキドキ…


前田「こうして胸倉掴んでりゃ、誰も俺達が仲間同士とは思わねーだろ」

前田「どっからどう見ても、不良の男が女を脅してるようにしか見えねぇ」

雪歩「えっ……」

前田「俺らみてーなヤツらと一緒にいると、アイドルなんつーのは騒がれて当たりめーだ」


ヒソヒソ… ヒソヒソ…

真「ちょ、ちょっと……太尊、止めろよ、皆が見てるよ」

前田「いいんだよ、見られて。あの記事で勘違いしてるヤツがいたら教えといてやるぜ」

前田「萩原雪歩っつーヤツは、俺達帝拳の連中とはナカヨシでも何でもねーってな」


雪歩「そ、そんな……」
前田「手を出したのは俺のツレだけどよ、俺達も迷惑してんだよ」

前田「もっとも、迷惑に思ってるのはお前らの方だろうけどな」


ドンッ

雪歩「きゃっ」

前田「もう吉祥寺には来んな。それだけは言っておくぜ」


真「そ、そんな事……ボク達は太尊達に助けられて…!」

雪歩「……ううん、いいの、真ちゃん…」

真「ゆ、雪歩…?」
雪歩「前田君、ありがとね……さようなら」ペコリ

テクテク…


真「あ、ちょっ…雪歩!」ダッ!

タタタ…


前田「………チッ、メンドくせーな全く」


ザッ

渋澤「ふふ……面白いものを見せてもらったよ」

前田「!……てめー、渋澤!」
前田「いつからそこにいやがった?」

渋澤「いや、ついさっきさ。残念ながら、君が雪歩ちゃんの胸倉を掴んでいる所しか
   撮影できなかったけどね」

前田「勝手に撮ってんじゃねぇよ」

渋澤「ハハハ。スクープ写真を撮る機会を奪われては、ジャーナリストは飯を食えんよ」

渋澤「息子に新しいカメラも買い与えてやれんしな、ハハハ」


渋澤「もっとも、こんな写真ではスクープにもならんがね」

渋澤「載せたところで、興味を持つ者などそう多く現れない。
   せいぜい、君を退学に追い込むことくらいしかできんだろう」

渋澤「だから、こんな写真のネガは君にあげるとしよう」

カチャッ スッ
前田「何のマネだ」

渋澤「私に必要が無いから、君にあげるだけさ」

渋澤「アイドルとの記念写真だぞ。せいぜい大事に取っておくがいい」

前田「………………」


渋澤「次は良い写真が撮れるといいな」

テクテク…


前田「……チッ、何なんだあのヤローは」
ガタン ゴトン…

真「ねぇ、雪歩……あんな別れ方で良かったのかな」

雪歩「……どうかな………私にも、良く分かんないや」


雪歩「でもね……私、前田君は、私達のことを迷惑だなんて、本当は思ってないと思う」

雪歩「きっと、自分達と関わったら、また変な人達に狙われるって…」

雪歩「そう思って、あんな事を……だから、前田君なりの優しさなんだと思う」


真「そりゃあ、ボクだってそう思うけどさぁ…」

真「スッキリしないよねぇ……ボクはあれで良かったとは思えないな」
雪歩「じゃあ、真ちゃんはどうすれば良いと思ったの?」

真「えっ……えぇと………うーん……」


雪歩「………ごめんね」

真「えっ、いや、何を謝るんだよ!雪歩は何も悪く無いよ!」

真「ボクの方こそ、あまり考え無しに言いたい事ばっか言って、ごめん……」


ガタン ゴトン…

雪歩「……………………」

真「……………………」
雪歩「……一旦、忘れようかな」

真「えっ?」

雪歩「あそこのスタジオでのお仕事も終わって……しばらくは、吉祥寺に行くことも無いし」

雪歩「前田君にも……一応、お礼は言えたしね」

真「う、うん…」
真「あと心配なのは、あのゴシップを載せた雑誌の出版社がどう出るかだけど……」

雪歩「それは……うん………きっと、そのうち無くなるよ」

真「そうだね……その通りだよ!無視すればいいさ!」

雪歩「うん」


雪歩「でも………しばらくは、雑誌買いに行くの、止めとこうかな……えへへ」

真「雪歩……」
ガタン ゴトン

プシュー…

雪歩「じゃあ、私この駅だから……またね、真ちゃん」

真「あ、あぁ……お疲れ様、明日からも頑張ろうね!」

雪歩「うん」


プシュー…

ガタン ゴトン


真「…………う〜〜〜〜ん」
テクテク…

真「……あーもう!釈然としない〜〜!!」ワシャワシャ

真「大体、何で雪歩があんな苦しい思いしなきゃなんないんだよ!」

真「雪歩もボクも、何も悪いことしてないのに!!」


真「元はと言えば、吉祥寺で絡んできた男達や、ゴシップ載せた雑誌が悪いんじゃん!」



真「本当に……このままでいいのかなぁ」

真「もう会わない方が良い、か……そりゃそうだよな、不良だもんね」

真「太尊も、他の男達も危なっかしそうだし……雪歩の言うとおり、忘れよう」


真「……うん」
>>48
saga忘れました。>>48を下記の通り修正致します。


前田「ったく……アイドルやってんなら、もっとビッとしやがれ」

雪歩「えっ?」

真「雪歩のことを知って…?」

前田「今日知った」


雪歩「あ、あの……名前は、何て?」

前田「あ?……帝拳高校の前田だ」


バルン バルン ドッドッドッドッ…

前田「次にそんなトロい喋り方してたら殺す」

雪歩「え、えぇぇ!?」

ブカカカカカ…


真「な、何なんだよアイツ……」

雪歩「………前田君って言うんだ……」
〜翌朝、765プロ事務所〜

P「そうか、そんなことがあったのか……すまなかった」

真「いえ、ボクはいいんです。雪歩を慰めてあげて下さい」


響「何回もしつこくナンパしてくるなんて、東京の学生は怖いさー」

千早「東京の学生が皆そうとは限らないわ」

貴音「しかし、この一件で萩原雪歩の男性恐怖症が悪化しなければ良いのですが…」

律子「悪化する可能性は高いでしょうね…」

春香「雪歩……」


ガチャッ

雪歩「おはようございますぅ」
真「あ、雪歩……おはよう!」

雪歩「うん、おはよう真ちゃん」


亜美「ねーねーゆきぴょん!今日のは無いの→?」

雪歩「えっ、何が?」

亜美「だーかーらー!雑誌だよう、亜美達が写ってる雑誌!」

雪歩「えっ………」ドキッ
真美「亜美、ちょっと…!」

亜美「えっ、あっ……!」


雪歩「……ごめん、今日は何も買ってないや……ごめんね」

亜美「あぅ……ご、ごめんなさい」


雪歩「えへへ、変な亜美ちゃん。何で謝るの?」

亜美「えっ?だ、だって亜美、悪いこと言っちゃったから…」

雪歩「何も悪いことなんて言ってないよ。うん、今日も頑張ろうね?」ニコッ

亜美「うん……」
あずさ「あらあら〜、お仕事前に暗くなるのは良くないわぁ」

春香「そ、そうですよ!皆で今日も頑張ろう!う〜、わっほい!!」


亜美「わ、わっほい…」

春香「あー!ダメだよ亜美、そんなんじゃ!」

あずさ「そうよぉ〜、せっかくお姉さん達が盛り上げてるのに」


ボフッ

亜美「ウプッ!?」

あずさ「お姉さんに抱かれてリラックスしましょうね〜」ギュー

亜美「く、くるひぃ!死ぬっ!!おっぱいの中で死ぬ〜!!」ジタバタ!

アハハハハ…


P(羨ましい……男の夢だ)
律子「さぁさ!今日も張り切って自分の仕事をこなしましょうね」

一同「はーい!」


P「亜美と真美、あずささんは同じ現場だな。俺の車に乗って下さい」

亜美・真美・あずさ「はーい!」


律子「雪歩は、今日は地方ロケね。私の車に乗って」

雪歩「分かりましたぁ」


美希「えー!?ミキ、ハニーの車じゃなきゃイヤなの!」

P「文句を言うな、業務の都合を考えてくれ」

貴音「そういうことです。さぁ美希、私と共に現地へ参りましょう」

美希「ムー……分かったの」
響「春香と一緒の営業なんて、久しぶりな気がするぞ!頑張ろうね!」

春香「うん!」

千早「私は……伊織と高槻さんとのロケね。二人は現地集合か」


真「ボクは……あ、今日もボク吉祥寺か」

真「まぁいいか、ボク自身はあまり不良に絡まれないし」

真「……アイドルとして見られないのは不満だけど」


雪歩「真ちゃん、気をつけてね」

真「うん!じゃあ行ってきまーす!」

ガチャッ
律子「さて、そろそろ私達も行きましょうか」

雪歩「はいっ!」

律子「うむ、良い返事ね」


律子「あ、私ちょっと書類の整理をしていくから、先に車の中で待っててもらえる?
   これ、鍵ね」

雪歩「あ、はい、分かりましたぁ」
雪歩「えぇと、律子さんの車は……っと」

ピッ ガチャッ バタン


雪歩「うーんと……今日のお仕事は……」ペラッ…

雪歩「ひえぇぇ、女優さん達と一緒にご当地食材探しの旅かぁ…」

雪歩「どうしよう、上手く出来るかなぁ……」ドキドキ…



ガチャッ

雪歩「あっ、律子さ…」

ガバッ!

雪歩「!?……えっ、ウグッ!!?」







律子「ふぅ〜……皆の仕事が増えてきたのは喜ばしいことだけど…」

律子「業務量も増えてきたし……やはり人手不足は否めないわね」


ガチャッ

律子「雪歩お待たせ。ごめんね、遅く…」





律子「……雪歩?」
亜美「出発進行→!!」ドタバタ

真美「ほらー、兄ちゃんも早く→!」

P「こらこら、待てっての」

あずさ「亜美ちゃん、元気になって良かったですねぇ、うふふ」

P「えぇ、ありがとうございます、あずささん」

P(やはり、おっぱいは世界を救う…)


P「ん?」


P「律子だ……何やってんだろう、自分の車の前で」
律子「あ、プロデューサー!」

P「律子、どうかしたのか?」

律子「雪歩が……雪歩がどこにもいないんです!」


P「……何だって?」

律子「車の鍵は開きっぱなしで……携帯に何度電話しても繋がらなくて…!」

P「トイレにもいないのか?と、とにかく皆で探そう!」


あずさ「ゆ、雪歩ちゃんが……」オロオロ…

真美「ま、真美、トイレの中探してくる!亜美は更衣室ね!」ダッ!

亜美「う、うん!」ダッ!
〜帝拳高校 教室〜

勝嗣「何だとォー!?雪歩ちゃんに、もう吉祥寺来るなって!?」

前田「な、何だよ…」

勝嗣「何だよじゃねー!何してくれてんだてめーわ!!」

米示「いいんじゃねぇか、元々俺達とは関わっちゃいけねぇ人種だとは思うぜ」

勝嗣「そうは言ってもだな……あぁ、雪歩ちゃん……」
和美「もう!勝嗣くんったら、また雪歩ちゃんの話ばかり!」ポカポカ

勝嗣「イテテ!いちいち叩くんじゃねーよ」


千秋「私も、前田くんの言った事は正しいと思うよ」

千秋「雪歩ちゃんを守ろうとしたんでしょう?」

前田「……ケッ」

米示「相変わらず素直じゃねーな、前田さん」
〜校舎裏〜

小兵二「ブフォッ!!」

小兵二「な、なぁにぃ〜〜!?今日から期末テストだとォ〜〜!!」

大友「兵ちゃん、鼻からカップラーメン出てるよ」

小見山「前々から先生言ってたじゃん」


小兵二「ぐぬぬ……小兵二軍団員の勧誘に意識を傾けすぎたか」

小兵二「おのれぇ〜!何としても追試は避けなければならん!」

大友「兵ちゃん、鼻からラーメン…」


小兵二「こうしちゃおれん!先生にテスト範囲を聞かねば!」

大友「兵ちゃん、鼻が…」
小見山「でも良かったよ、予め言っておいて」

大友「確かに。まさかと思ったけど、本当に覚えていなかったとは」


小見山「てことで、俺達先に教室行ってるね」

大友「兵ちゃん、鼻かんどいた方が良いよ」


小兵二「あ、おい……くそ、行っちまいやがった」

小兵二「うーむ、しかし本当にまずいな。早く行動を起こさねば」


ジャッ…

シブ「よぉ、アンタ」

小兵二「むっ?」
小兵二「何だお前は、この学校の生徒じゃないな。堀口学園か」

シブ「な、何だっていうか……あんたも鼻からラーメン出てっけど…」


シブ「まぁいいや。この学校にさ、前田ってヤツいるよな?」

小兵二「前田?バカでどーしようもないあのアワレな前田か?」

シブ「分かんねーけど、軽くリーゼントにしてるヤツだ。いつも二人くらいツレがいるだろ?」

小兵二「あぁ、やはりその前田か」


シブ「実はよ、今日ちょっとしたパーティーを企画してるんだ」

小兵二「パーティー?」


シブ「765プロの萩原雪歩ちゃんって、知ってるだろ?あの子を呼ぶことになってる」
小兵二「な、何だと!雪歩ちゃんって、あの雪歩ちゃんが!?」

シブ「今、ツレが雪歩ちゃんを連れて来てる所だ。
   ほら、こうしてツレが一緒に撮った写メも送ってもらってる」ピッ

小兵二「こ、これは紛れも無く雪歩ちゃん!ちょっと眠たそうだが」


シブ「本当は前田のツレに世話んなったから、そいつら呼びたかったんだけどな」

シブ「生憎名前知らねぇからよ、前田を呼べばそいつらも来るだろうと思ってさ」


小兵二「前田達のことはどうでもいい!ぜひ、この中田小兵二も招待してくれ!」

小兵二「いや、確かに君達の世話はしてないけど!これからする!むしろ今する!」

シブ「あぁ、あんたも来たいの?」


シブ「まぁ、帝拳高生ならこの際誰でもいいか。くくく…」
小兵二「ん、どうした?」

シブ「いや別に……いいよ、来ても」

小兵二「ほ、本当か!?やった!!」


シブ「堀口学園の近くに廃工場があるの知ってるか?12時からそこでやる」

シブ「前田達にも、遅れずに来いって伝えといてくれ。じゃあな」


小兵二「おおー、本当にありがとう!名も知らぬ恩人よ!」

小兵二「いや、名も知らないのはまずいな!君、名は何と言うのだ!?」

シブ「俺?渋澤」

小兵二「そーかそーか!渋澤くんか!俺は帝拳高校番長の中田小兵二だ!」

シブ「中田くんね……じゃ、待ってるぜ」

ジャッ…

小兵二「おう!絶対行くぞー!」
小兵二「ふっふっふ、こうしてはおれんな。早速出かける準備を…」


マサさん「おーい、中田そこで何してる?もうテスト始めるぞー」

小兵二「げっ、近藤先生!しまった、今日は期末テストだった!!」

マサさん「遅れたら0点だからな」


小兵二「ぐっ、くそ……ぱ、パーティーは諦めるしかないのか……」

小兵二「しかし、俺を出し抜いて雪歩ちゃんとのパーティーに招待された前田達め…」

小兵二「え〜い、許さん!!アイツらもパーティーに行かせん!
    いや、むしろパーティーの存在自体知らせるもんか!!」


小兵二「ハッハッハッ、前田達め。実に良い気味だ」
〜廃工場〜

不良A「へへ……ゾクゾクするな」

不良C「ああ、あともう少ししたらアイツらも来る」

不良A「それで、雪歩ちゃんもな……」


ギィ…

シブ「よう」

不良A「あ、シブちゃん!帝拳のヤツらどうだった?」

シブ「いや、生憎ソイツらには会えなかったが、適当なヤツに言伝をお願いしといた」

シブ「12時にパーティーやるから、遅れずに来いってな」

不良C「“パーティー”ね……へへへ」
ブロロロロ… キキィッ

シブ「おっ、来たか?」


ギィ…

不良B「おう、お疲れさん」

不良A「お疲れさん、早かったな」

不良D「こんな楽しいイベント用意してくれるなんて、お前ら優しいな」

不良E「俺達も参加していいんだろ?」

シブ「あぁ、もちろんだ。で……ゲストはどうした」

不良F「あぁ、今連れてきてる」
不良G「よいしょっと……お前らも手伝えよ」

不良C「ハッハッハッ、女の子捕まえといて重いってのは失礼だろが」

不良H「気失ってるから余計に重いんだよ、よっと」



雪歩「………………」スヤスヤ…

不良A「へへ……寝顔もかわいいぜ」

不良D「しかし、シブちゃんよくクロロホルムなんて持ってたな」

不良E「本当だぜ、俺ドラマの中とかでしか見たことねぇよ」

シブ「学校の実験室から盗んできた」

不良F「ほぉ〜、勇気あるねぇ」
雪歩「………………」スヤスヤ…

不良G「良く寝てるな」

シブ「見とれてんじゃねーよ、今のうちに逃げられないよう縛っとけ」

不良H「お、おう」


不良B「お……俺達がツバつけるのはダメなんだよな?」

シブ「当たりめーだ、少なくとも今はな」

不良B「うん……しかし、シブちゃんも考えることがえげつねーぜ」


雪歩「…………う、ん……」

シブ「お、起きたか」
雪歩「……ん………あ……えっ?」

シブ「よう……俺はあんたとは初めましてだったよな?」


雪歩「ひ、ひっ!?」

グッ… グイッ

雪歩「あ、あれ?……えっ、うそ…」

シブ「悪いな、なるべく傷つけねーように縛ってるからさ」


雪歩「な、何なんですかコレ!?あ、あなた達は…」

雪歩「!!……き、昨日までの…!」


不良A・B・C「へへへ…」
雪歩「イヤ……帰して……ここはどこ…?」ガタガタガタ…

シブ「堀口学園近くの廃工場さ。おとなしくしてれば、悪いようにはしねぇよ」


雪歩「うそ……だったら早く帰して……お願い…」グスッ…

シブ「恨むんなら帝拳のヤツらを恨むんだな」

雪歩「て、帝拳……?」


シブ「せいぜいアイツらへの復讐に利用させてもらうぜ、くっくっく……」


雪歩(ど、どうしよう……本当にどうしよう……!)
〜某スタジオ〜

真「おはようございまーす!」

監督「おはようー。君、以前雪歩ちゃんと一緒に来てたよね?」

真「そうです!今日も精一杯頑張りますね!」ガッツ!

監督「うんうん、この間のカードゲームの宣伝良く撮れてたよ。今日もあんな感じでお願いね」

真「はいっ!」


スタッフ「撮影は10時半スタートでお願いしまーす」

真「あ、はーい!着替えてきまーす!」
真「えぇっと、更衣室はあっちか」

ガチャッ パタン

真「ふぅ……」


真「……あーダメだダメだ、余計なことは考えるな」

真「たまたま吉祥寺に来てお仕事して帰るだけさ、何も問題ない」

真「さて、着替えないと…」


ヴィー!… ヴィー!… 『モット! ターカメテ ハテナク コーコローノー オークマーデー♪』

真「うおっ!携帯が……誰だろう?」

パカッ


真「……雪歩からだ」
ピッ

真「もしもし、雪歩?」

『……………………』

真「………もしもし?」


『……な、なんで、こんなことするんですか?』

真「!?」


『堀口学園のあなた達が……学校近くの廃工場に……』

『私を……ヒック……連れてきて………』


真「雪歩……何だ、何を言ってるんだ!?」
『何で…ヒック……堀口学園………廃工場……』

『うえぇぇ……助けて……誰か助けてよぅ………』

真「雪歩っ!!しっかり、落ち着いて!今どこにいるんだ!?」


『イヤ……来ないで…』

『きゃっ!』

『あっ!お前、誰かに電話してやがったな!』

『こんの…!』

ブツッ!

ツー ツー ツー


真「……………………!!」ギリギリギリギリ…
真「誰だ、今の男……!?どちらにせよ、放っちゃおけない!!」

真「堀口学園………廃工場………」



コンコン

スタッフ「真さーん、そろそろスタンバイお願いしまーす」


スタッフ「真さーん?……すみませーん、そろそろ…」

バタン!

スタッフ「うわっ!」

真「すみませんっ!!」

タタタ…


スタッフ「あ、あれ?……あのー、真さーん?」
〜765プロ事務所〜

P「くそっ、ダメだ!何度かけても雪歩に繋がらない!」


社長「あぁ、何と言うことだ……」オロオロ…

律子「私のせいです……!私の監督不行き届きです!申し訳ございません!」

P「今は責任について考えている場合じゃない。落ち着くんだ、律子」

P「ちょっと迷子になってて、携帯もどこかに落としただけかも知れないだろ?」

律子「事務室から私の車までの経路で、迷子になるとは思えません…」

P「いや、そりゃそうなんだけど……」
あずさ「プロデューサーさん……私達、どうしたら良いでしょう?」

亜美「お仕事、行かなきゃダメ……?」

P「う、うん……仕事に穴を開けるわけにはいかない。先方にも迷惑になるしな」


P「すみません、あずささん。亜美と真美を連れて、現場へ行ってもらえますか?」

あずさ「は、はい…」

真美「ちょ、ちょっと待ってよ兄ちゃん!真美達、こんな不安な気持ちでお仕事できないよ!」

亜美「ゆきぴょんが見つかるまで待って…!」

P「お前達もプロだろう?……大丈夫だ、雪歩は俺と律子が何とかしておくから」

律子「そうよ、皆。不安にさせてごめんね……でも、きっと大丈夫だから」
あずさ「……亜美ちゃん真美ちゃん、プロデューサーさん達をこれ以上困らせてはいけないわ」

亜美「あずさお姉ちゃん…」

あずさ「……お仕事、行ってきますね」

P「えぇ、お願いします」


真美「見つかったら電話してね…」

律子「もちろん、約束よ」


ガチャッ パタン…
P「しかし……本当にどこ行ったんだアイツ…」


小鳥「プロデューサーさん!真ちゃんが行ってるスタジオさんから電話です!」

P「真が行ってる?あの吉祥寺のスタジオか……また?」


P「お電話代わりました、いつもお世話になっております」

P「はい……えぇ、はい…………えっ?」


P「真が急に外へ出て行った?」
律子「………ダメです、真の携帯にも繋がりません」

P「くそ……何だってんだ、どうしたんだよ……!」


P「社長、すみません……俺達、プロデューサーとして失格です」

社長「う、ウーム……警察に捜索願を出すのも、考えた方が良いのかも知れんなぁ」

律子「け、警察……確かに、そうですね」

社長「大事にならなければ良いのだが……あとは、それを祈るしかあるまい」


P「……くそっ!!」
キーン コーン カーン コーン…

勝嗣「ぐあ〜〜!!全っ然できねぇ!」

前田「ぎゃはは、アワレな男だな」

米示「人のこと言えるのかよ、前田さん」

前田「ギクッ」


和美「ねーねー、今のテスト皆出来たー?私全然ダメだったんだけどー」

千秋「米示くんは、いつも時間に余裕を持って終わらせてるよね」

米示「ん、あぁ……まぁな」


前田「裏切り者め」

勝嗣「これで点数良かったら鼻の穴に指突っ込んでやる」

米示「逆恨みかよ」
米示「次は英語か」

勝嗣「チッ、井岡のヤローひねくれた問題出すからな」

米示「てめーじゃ問題がひねくれてるかどうかすら分からねーだろ」

勝嗣「何だとこの…!」


前田「はぁ〜あ、トイレ行ってこよ」

米示「あ、俺も」

勝嗣「逃げんじゃねぇ!」
ガララッ

前田「ん?」

小兵二「むっ?」


小兵二「うおぉっ!ま、前田……!」

前田「人の顔見て何うろたえてんだ、てめーわ」

小兵二「い、いや、別に…」


小兵二(い、言うもんか……絶対にパーティーのことは言わないぞ)

前田「パーティー?」

小兵二「うおぉ!な、何で分かったんだ!?」

前田「いや、お前が小声で言ってたんじゃねーか」
勝嗣「パーティーだぁ?」

米示「おい小兵二、面白そうな話じゃねぇか。詳しく聞かせてくれよ」

小兵二「あう、いや、その……」


小兵二(だ、誰が言うかってんだ愚か者共が!)

小兵二(堀口学園のナイスガイが765プロの萩原雪歩ちゃんを招いて堀口学園近くの
    廃工場で12時からパーティーをやるだなんて、こいつらに知られてなるものか)

勝嗣「何だとォー!?」

米示「てめーわ何でそんな事を内緒にしてんだ!!」

小兵二「エスパーか、おのれらわー!!」
米示「やべぇぞ前田さん……アイツらの性格からして、言葉通りの
   パーティーをやるとは到底思えねぇ」

勝嗣「雪歩ちゃんを嫌々連れ込んだに違いねぇよ!」


小兵二「チッ、しょうがねぇ……堀口学園の彼は、前田達を呼べってよ」

前田「俺達を?」

小兵二「時間通りに来いとのことだ……ケッ、もうどうにでもなりやがれ」

米示「拗ねてんじゃねぇよ」
ジャッ…

勝嗣「お、おい前田さんどこ行くんだ?」

前田「トイレ」

勝嗣・米示「はぁっ!?」


勝嗣「前田さん、さっきの話聞いてなかったのかよ!?
   やべぇことになってるかも知んねーんだぞ!!」

前田「だからどーしたっつんだよ。元々俺達とアイツには何も関わりはねぇ」

米示「い、いやそうだけどよ……ソレとコレとは、今回は話が…」


勝嗣「もういい!俺だけでも行く!!」ダッ!

米示「あ、おい勝嗣!!」
前田「ほっとけよ、俺トイレ行ってくるわ」

米示「ま、前田さん…」


和美「あー!ちょっと勝嗣くんどこ行くの!?もうテスト始まるよー!?」

勝嗣「うるせぇ!!」ダッ!

和美「ねー!ちょっとー!?」


米示「……そういや小兵二、一応聞いとくけど」

米示「お前を誘いに来たっていう、堀口学園のヤツの名前は何て言うんだ?」

小兵二「えっ?あぁもちろん覚えてるぞ。確か、渋澤とかいったな」


米示「渋澤……!?」
米示「前田さん!ちょっと聞いてくれ!」

前田「何だよ、俺は行かねぇからな」

米示「いや、そうじゃねぇ!聞けっ!」


米示「今日、“パーティー”をやるとかいう連中の中に、渋澤ってヤツがいるらしい!」

前田「……!」

米示「見た目の特徴とか細かく聞いたが、十中八九俺と勝嗣が会ったことあるヤツだ!」

米示「ソイツの持ってたカメラは昨日、俺達がゴシップ記事の仕返しに叩き割ってやった!」

米示「もしかしたら、それの逆恨みで計画してんのかも知れねぇ!」


前田「渋澤……カメラ…?」
前田「そういやアイツ、息子にカメラを買い与えてるとか言ってやがったな」

米示「アイツって、ジャーナリストの渋澤か?」

米示「たぶん、ソイツの息子だぜきっと」


前田「うおおおお、許さーん!!俺のチャベス号を傷モノにしやがったヤツの息子!!」

米示「ま、前田さん!?」


前田「うおおおおーーー!!」ダッ!

米示「おい前田さん、行くのか!?何か罠があるかも知れねぇ、もっと対策を…」

前田「知るか!!チャベス号の仇打ちだ!!」
タタタッ…

千秋「あ、前田くん…」

前田「うおおおおーー!!」ダッ!

千秋「えっ……?」ポカーン


井岡「あ、おい前田!廊下は走るな!」

井岡「というか、テストを放ってどこ行く気だ!俺の英語の単位を無視できるなど…!」

前田「追試がある!!」


勝嗣「あ、前田さん!」

前田「勝嗣、場所を教えろ!!」

勝嗣「前田さん……おうっ!!」

米示「前田さん、そんなにチャベス号を大事にしてたっけ…?」
〜廃工場〜

雪歩「ヒック……グスッ………」


不良A「あーあ……雪歩ちゃん泣いちゃったよ」

不良B「顔を叩いちゃったのはアレだったよな」

シブ「仕方ねーだろ。警察なんて呼ばれてみろ、シャレになんねぇぞ」

不良C「もうシャレになんねぇことしてると思うけど」

不良D「くっくっくっ」


雪歩「どうして……私がいる意味は無いんじゃ…」

シブ「それがあるんだよ、重要な役回りだ。そろそろ教えといてやるか」
シブ「そろそろ帝拳のヤツらがここに来る」

雪歩「!……帝拳、って……前田君達が……?」

シブ「お、知ってるんだな。なら話は早ぇ」


シブ「狙い通り、もしアイツらがこの廃工場へ雪歩ちゃんを助けに来たとする」

シブ「そん時に、雪歩ちゃんには悪いがよ……アイツらの前で服を脱いでもらう」


雪歩「!?」

シブ「安心しろ、何も素っ裸になれってわけじゃねぇ」

シブ「だがまぁ、下着姿にはなってもらうかな」

雪歩「そ、そんな……何で…」
シブ「下着姿の雪歩ちゃんと、帝拳のヤツらのツーショット…」

シブ「その写真が世に出回れば、コイツはちょっと面白いことになるぜ」


雪歩「や、止めて!そんなの絶対イヤ!!」

シブ「安心しろって。アンタは一連の被害者だ、終始被害者ヅラをしてればいいよ」

シブ「悪いのは全部アイツらさ……そう雑誌の出版社共に吹き込むつもりだ」

シブ「アンタに対しては、世間からは同情と擁護、応援の声しか集まらないだろうよ」
雪歩「で、でもそれじゃあ前田君達が…!」

シブ「どうせアイツらはろくでなしさ。いずれは退学になってもおかしくない」

シブ「その機会が、たまたま今回訪れるってだけだぜ。くっくっく……」


雪歩「そ、そんな…!」

シブ「おっと、協力しないってのは考えない方がいいぜ」

シブ「もしアンタが、765プロの人間がマスメディアからの謂れの無い誹謗中傷で
   苦しもうと構わないってんなら、話は別だがな」

雪歩「!?」

シブ「その苦しみは、アンタも良く分かってんだろ?くっくっく……」

雪歩「い、イヤ………」ガタガタガタガタ…
不良D「俺達は、雪歩ちゃんが帝拳のヤツらに襲われた現場の目撃者ってわけだよな」

不良E「雪歩ちゃんの下着姿見れて、こっちに火の粉は飛んでこねぇ……上手い話だぜ」


シブ「そうこうしてる内に、良い時間になってきたな」

不良F「雪歩ちゃんの服脱がすってもよ、このまま縛ってちゃ脱がせらんねーぜ」

シブ「それもそうだな……紐を解いて、後はお前らで押さえつけとけ」

シブ「それと、何ボサッとしてやがる。見張りはどうした?」

不良D「あぁ、すまねぇ。行ってくる」


雪歩「………………」

不良G「へへ、雪歩ちゃんごめんねー、痛かったね」

不良H「今度は、俺達が痛くないようにちゃんと捕まえといてあげるね」
雪歩「うぅ……!」ダッ!


不良A「おっとと、逃がさねぇよ」ガシッ

雪歩「いや……やだぁ!!」ジタバタ

不良B「泣き顔もソソるね〜、マジかわいい」

雪歩「う、うええぇぇぇぇ……」ボロボロ…



ドガッ!

不良D「ぐわぁっ!」ドドォッ


シブ「!?」



真「はぁ……はぁ……はぁ……」
雪歩「ま、真ちゃんっ!!」

真「雪歩っ!!」


不良B「アイツは……いつも雪歩ちゃんと一緒にいたヤツだ!」

不良E「何ぃ!?そ、それってつまり、彼氏か!?」

真「〜〜〜〜!!!」ワシャワシャ


真「雪歩、今助けるからね!」

真「もう許さないぞ、お前達!!色々と許すもんかっ!!」
不良A「チッ……とんだ邪魔が入ったぜ」

不良C「いい暇つぶしだ!やっちまえ!」

不良一同「うおおぉぉぉ!!」


真「ハッ!!」バキッ!

不良E「ぐはぁっ!」ドサッ


真「セイヤァッ!!」ドゴッ!

不良F「ぶへっ!」ドドォッ


不良B「な、何だ!?コイツ何かやってやがるぜ!」

シブ「空手か」
真「どうした、かかってこい!!」

不良A「な、ナメやがってぇ〜!」


タタタッ… バッ

真「ダリャァッ!!」バコォッ!

不良A「うがぁっ!」ドドォッ


真「はぁ、はぁ……次は誰だ!!」

他不良「うっ……」タジタジ…


シブ「ハッハッハッ、見事なローリングソバットだぜ」スッ

真「……!」
シブ「空手やってるみてぇだな」

真「そうさ……お前にもお見舞いしてやる、行くぞ!!」


ダッ!

真「オリャアッ!!」ブンッ!

バシィッ!

真「ぐっ!?」

シブ「俺も実践空手やっててよ、多少はヤレるんだぜ?」


シブ「シッ!」シュッ!

真「うおっと!」サッ
シブ「そらっ!」バッ!

真「くっ!」サッ


真「へへっ、そんな蹴り当たるもんか!腰が入ってないよ!」

真「うおぉぉ!!」ダッ!


シブ「くくく……」スッ

ブオッ!


バキィッ!

真「がぁっ!」ドサッ


雪歩「真ちゃんっ!!」
シブ「忠告ありがとよ、今のはちゃんと腰を入れて打ってやったぜ」

シブ「見せかけの蹴りをばら撒いた後でな」


不良B「決まったな。シブちゃんお得意の上段後ろ回し蹴りだ」

不良C「カッコイイ〜」ヒューッ


真「う、うぐぐ……」

雪歩「真ちゃん、しっかりして!!」


シブ「くくく……ところでよぉ、一つ気になってんだが…」

シブ「どこかで見た事あると思ったぜ……アンタ、菊地真ちゃんかい?」
真「!」

不良G「えっ、シブちゃん知ってんの?」

シブ「逆に何で知らねーんだよてめーら。765プロのアイドルだぞ」

シブ「確かに、雪歩ちゃんよりは知名度低いけども」

不良H「てことは、コイツ……いや、この子?」


ジャッ…

シブ「くくく……」

真「うっ……な、何を…」


バッ!

真「!!?」

シブ「ヒュー、結構かわいいブラしてんじゃん」
雪歩「真ちゃん!!……イヤ、ひどい事しないで!!」

不良G「おっ、ちょっと待ってよシブちゃん」

不良C「俺らも混ぜて」


真「う、うっ……止めろ…!」ドカッ! ドカッ!

シブ「ハッハッハッ。効かねぇなぁ、腰の入ってねぇ女のパンチなんぞ」

真「うあぁぁ…!!」ドカッ! ドカッ!


不良B「俺達は手足押さえとけばいいよね?」

シブ「分かってんじゃねーか」

不良H「シブちゃんこそ、後で俺らにもお楽しみくれよ?」
真「うあぁぁ…!!止めろ!離せぇ!!」ジタバタ


シブ「あっはっはっ、まぁまぁ落ちつけよ。明日からは雪歩ちゃんより有名になれるぜ?」

真「!?」

シブ「“帝拳高生にマワされた悲劇のアイドル”ってなぁ!」

真「………ッ!!!」


シブ「アンタが女っぽくねぇのは、女としての悦びを感じた事がねぇからだろ?」

シブ「俺達が一皮剥けさせてやるってんだよ!」


真「……ウワアアアァァァァァァァッ!!!」ジタバタ!
不良E「う、ウーム……何だ?」

不良F「えっ……おい、何やってんの?」

真「ウオアアアァァァァァァァッ!!!」ジタバタ!


シブ「目ぇ覚ますの遅かったな。お前らはせいぜい後ろで写メ撮ってろよ」

不良A「えっ、女の子だったの?」

不良D「765プロのアイドルだってよ」

不良C「シブちゃん、次俺ね」


真「止めろ、止めろぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」ジタバタ!
シブ「暴れるなー。お前らしっかり押さえとけよ」

シブ「さて、そんじゃ早速かわいいブラを御開帳〜…」


ズズッ…

シブ「ん?」



ズズッ…

不良G「あれ……雪歩ちゃん?」


雪歩「………………」
不良H「ちょっ、雪歩ちゃんどうしたの、そんな角材持って」

不良F「怪我したら危ないよ、さぁ俺に渡して」


雪歩「……うぎっ…!」プルプル…

ブンッ

不良F「うおっと」サッ


シブ「マトモに振れてねーじゃねーか」

雪歩「………うううぅぅ……」ボロボロ…

真「ゆ、雪歩……」
シブ「どうするの?コイツを助けたい?」

雪歩「……!」

シブ「いとしの真ちゃんを助けたいかって聞いてんの」

雪歩「………………」コクン


シブ「じゃあ俺にキスしてくれればいいよ」

雪歩「!!」


真「なっ……!?」

真「ふざけるな、何がキスだよ!!お前達いい加減…」ジタバタ

不良C「あーごめんごめん、もう少しおとなしくしてろよな」
不良B「ていうかシブちゃんずるいよ、何を勝手に決めて…」

シブ「お前らが真ちゃんにノされてピンチだったのを、俺が打破したんじゃねーか」

シブ「それに、今回のパーティーの発案者は俺だぜ?」

不良E「いや、そりゃそうだけど…」


シブ「なぁ雪歩ちゃん、今回のパーティーの主旨からすりゃあよ」

シブ「この真ちゃんをヤろうがヤるまいが、俺達にとっちゃどうだっていいんだわ」

シブ「だから、雪歩ちゃんに任せるよ」


雪歩「………………うぅ」ボロボロ…

シブ「どうする?キスする?……それともしない?」
雪歩「………します」

シブ「ん?聞こえない」


雪歩「キスします………だから、真ちゃんにひどい事しないで下さい……」ボロボロ…

真「雪歩っ!!」


不良F「ヒューッ!」

シブ「オーケー。そうか、そんなに俺とキスしたいなら仕方ねーな」

不良A「写メは撮ってあげるよ」

シブ「おう、サンキュー。じゃ、雪歩ちゃんこっちおいで」


雪歩「……ヒック………グスッ…」
シブ「憧れの雪歩ちゃんとキスできるなんて嬉しいよ」

雪歩「…………」

真「ゆ、雪歩ぉ……!」ボロボロ…


雪歩(真ちゃん、泣いてるの?……泣くことなんて、ないのに)

雪歩(ごめんね……私、もうどうでもいいや)
シブ「んじゃ、失礼しまーす」


雪歩(いいよ……これで、真ちゃんが助かるなら…)



バァン!

シブ「!?」


シブ「誰だっ!!」



前田「てめーらが呼んだんじゃねーのかよ」
不良C「ま、前田っ!!」


米示「俺達は外で待ってりゃいいんだろ?」

前田「むしろ入って来たら殺す」

勝嗣「カッカッカッ、前田さんもすっかりお年頃だぜ」

ゴンッ

勝嗣「いちいち殴るこたねーだろが!」

前田「てめーわくだらねーこといちいち言っちゃっちゃ!!」

米示「カッカッカッ」
米示「んじゃ、外で待ってるぜ」

勝嗣「俺達が殺す分も残しとけよ」

ギィ… バタン


前田「………………」

雪歩「ま、前田君…!」

真「太尊……」


シブ「へへ……待ってたぜ前田ぁ」

不良一同「へっへっへ……」
前田「あまり面白くなさそーなパーティーだな」

シブ「これから面白くなるんだ、まぁこっち来いよ」


シブ「雪歩ちゃんは知ってるよな?こっちの子は誰か知ってるか?」

シブ「765プロアイドルの菊地真ちゃんだ。今、この子で遊ぼうとしてたとこだよ」

真「……くっ!!」ジタバタ

不良G「おうおう、暴れるなって」


前田「……………」

シブ「面白そうだろ?ほら、もっとこっち来て見てみろよ」
前田「……………」

ジャッ…

雪歩「前田君、来ちゃダメ!この人達、前田君達を…」

不良F「おっとと、それ以上はダメだよ雪歩ちゃん」ガバッ

雪歩「ウググ…!」


シブ(くくく……さぁ来いよ、もっと近くに)

シブ(真ちゃんとのツーショットが撮れた瞬間、貴様ら帝拳の負けだぜ!)
ジャッ…

不良D「そうそう、もっと近くに…」


ガンッ!

不良D「ぐおぁっ!」ビタァン!

シブ「!?」

不良E「なっ……いきなり殴りやがった!」


グイッ

前田「てめーが渋澤か?」

不良D「………うぐ……ち、ちが…」
前田「チッ……何だちげーのか」

前田「じゃあ、こん中のどれかが渋澤だな」

シブ「?」


真「に、逃げて太尊!ボク達のことは構わなくていいから!」

雪歩「そ……そうだよ!私達のことを助けようなんて考えないで…」


前田「バカ」

雪歩・真「!?」


前田「てめーらがどーなろーが知ったこっちゃねーんだよ」

前田「くだらねー事グダグダ言ってんじゃねー」

雪歩「えっ……あぅ……」
シブ「おい……渋澤は俺だけど」


前田「おう、てめーか……なるほど、性格悪そーな顔だぜ」

シブ「あ?」

前田「まぁいいや。で、お前の親父はジャーナリストか?」

シブ「何でそんなこと知ってんだよ」

前田「勝嗣達に壊されたカメラも、親父から買い与えられたんだってな」

シブ「だからそれがどうした!」


前田「お前の親父にチャベス号をぶっ壊されてんだよ、こっちは」

前田「てめーが責任取って死ね」
シブ「な……何を言ってんだコイツは」

不良E「それよりもお前!よくもDのヤツをぶん殴り…」


ドゴッ!

不良E「ぐほっ!」ドドォッ


前田「渋澤以外に興味はねー。だが死にたいヤツは殺す」


不良F「な、ナメやがって…!!」

不良A「一度にかかればなんてこたねぇ!やるぞ!!」
不良A・F「うおらあぁぁぁぁっ!!」


バキッ!

不良F「ぐわぁっ!」ドサッ

ゴッ!

不良A「うがぁっ!」ドウッ


前田「話にならねーな」

雪歩「す、すごい……」


シブ「くっ………」ギリギリ…
シブ「待ちな、前田!」

雪歩「えっ?きゃあっ!!」グイッ

前田「ん?」


シブ「動くんじゃねぇ!それ以上動くと雪歩ちゃんを…」

シュッ!

バキィッ!

シブ「がぁっ!?」ドサッ


真「どうだ!さっきのお返しだ!!」

雪歩「ま、真ちゃん…!」

真「ボクも回し蹴りは得意なんだ、へへっ」


不良C「し、しまった!いつの間に!」

不良G「バカ野郎!何で押さえるの忘れてんだ!」
前田「ほぉ、やるじゃねぇか」

真「へへっ、まぁね」


不良B「あぁ、し、シブちゃん…」

不良C「う、うおぉ……」

不良G「怯むな、やっちまうぞ!!」

不良H「おう……うおらぁぁ!!」


ドカッ! バキッ! ガンッ! マコッ!


不良一同「うげえぇぇっ!!」ドサドサッ
シブ「く、クソッタレ……」ヨロッ…

真「あ、コイツまだ…!」

前田「下がってろ」

真「あっ……ごめんなさい」


シブ「俺の……俺の計画を、コケにしやがって……」

前田「知るか。来いよ」

シブ「てめーが……てめーみたいなクズが…!」


シブ「俺に敵うわきゃねぇ……おあぁぁ…!!」ダッ!
シブ「し、死ねやぁぁぁっ!!」ブオッ!

サッ

シブ「!?」


前田「てめーが死ね」


ゴッ!!  (←見開き一枚画)


      (吹っ飛ぶシブの見開き一枚画)


ドドオッ!


雪歩・真「…………!!」
米示「……じゃあ、携帯に入ってる写メを全消去しろ」

不良一同「え、えぇぇぇっ!?」

不良B「そ、それは勘弁して下さい……彼女との写真も…」

勝嗣「知るかバカ、雪歩ちゃん達との写メを撮ったことがてめーらの罪だ」

シブ「うぅ…」シュン…


ピッ ピッ…


勝嗣「……よし、確かに消したな。メールでも送ったヤツも消えてる、と」

米示「うむ、帰っていいぞ」

不良一同「はい…………」シュン…


トボトボ…
前田「ったく……根性がなっちゃいねーんだよ」

勝嗣「所詮はボンボンのお坊ちゃんだな」


雪歩「ま、前田君……!」

前田「あん?」

雪歩「……ありがとう……本当にありがとね」


前田「あのな、何回言わせんだ、俺はだな…」

雪歩「ううん、いいの……前田君がどうとかじゃなくて」


雪歩「ごめんね……自分勝手だけど、前田君の考えは、その……別にいいの」

前田「何だとォ?」
雪歩「私にとっては、前田君が来てくれたから、私も真ちゃんも助かったんだよ」

雪歩「だから、それにありがとうって言いたいだけ」

雪歩「あ、真ちゃんも、助けに来てくれてありがとうね」

真「……ごめん、結果的には助けられなかったけど」

雪歩「ううん!すごく、嬉しくて……」


真「太尊、ボクからもお礼を言うよ……本当にありがとう」


前田「ケッ……勝手にしろ」

雪歩「えへへ」ニコニコ
勝嗣「本当は前田さん誘ったの、俺達なんだけど」

米示「まぁいいじゃねぇか、出しゃばるなよ」


前田「さて、チャベス号の仇も取ったし……帰るか」

米示「そうだな……あ、ごめんね真ちゃん、この間俺達失礼な事言って」

真「えっ?あぁ、いやいやいや!いいのいいの、別に」

勝嗣「コイツは有名な子しか応援しないミーハーヤローだからな」

米示「何だとぉ!?てめーこそ雪歩ちゃんしか頭に無かったクセしやがって!」

勝嗣・米示「………!」「……………!!」


前田「帰るっつってんだろ、行くぞ」
雪歩「あ、あの……前田君」

前田「何だよ、うっせーな」

雪歩「ひっ!……ご、ごめんね、あの……」

雪歩「その……また会えるかなぁ、なんて……」


前田「会う理由がねーだろ」

雪歩「えっ?」

前田「俺達は不良、てめーらはアイドル。で、問題は全て片付けた」

前田「もうてめーらと会う理由なんてねーよ」

雪歩「あ……えっ、でも……」
勝嗣「ま、前田さんまたそんな事を…!」

米示「いいんだよ、前田さんの言うとおりだ」

勝嗣「米示!お前まで…」

米示「住む世界が違いすぎる。それに、不良とツルんでるアイドル応援する
   ヤツなんて誰もいねーよ」

勝嗣「た、確かにそうだけどよ…」


真「で、でもさ!……会う理由なんて、いくらでも作れば…!」

前田「その度に、今回みてーな問題をいちいち起こしてーのかよ」

雪歩「あ、あぅ……でも…」
前田「じゃあな」

勝嗣「あぁ、せめてサインを…」

米示「女々しいんだよてめーわ。それじゃあ」


雪歩「あ、あのぅ……」


ギィ… バタン


雪歩「………行っちゃった」


真「……ボク達も帰ろう、雪歩」

雪歩「うん……」



渋澤「……………………………くっくっく」
渋澤「……いやいや、良い写真が山ほど撮れたぜ」


渋澤「菊地真の乱交は未遂だったが、記事の中で十分捏造できる写真だし…」

渋澤「潤んだ瞳で男を見つめる萩原雪歩…」

渋澤「罪無き高校生をボコボコにする帝拳高校の不良…」

渋澤「その不良と楽しく談笑する萩原雪歩と菊地真…」


渋澤「くっくっく……どれも週刊誌が喜んで飛びつくネタだぜ」

渋澤「息子には悪いが、学校名は伏せるからな。食い扶持になってもらうぜ」


渋澤「さて、帰るか……くっくっく、どんな原稿を書いてやろうか」
小兵二「よし、見えてきたぞ。あの廃工場だ」

大友「兵ちゃん、何があんだよ?こんな所に」

小見山「テストが終わった途端、あんな廃工場に急いで行こうだなんて」

小兵二「馬鹿者!萩原雪歩ちゃんとのパーティーがあると言っただろ!?」

小見山「そんなのどうせ、前田達をおびき寄せるための向こうの不良のデマだよ」

大友「雪歩ちゃんがこんな所に来るわけないじゃん」


小兵二「お前らが信じようが信じまいがどうでもいい!俺は雪歩ちゃんを軍団に引き入れる!」

大友・小見山「ええぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
大友「兵ちゃん、何言ってんだよ!それこそ絶対無理だって!」

小兵二「やる前から無理だと諦めてどうする!この時のために振り付けも覚えたんだぞ!」

小見山「何の?」

小兵二「いまさら言うまでもなかろう。雪歩ちゃんの持ち歌“First Stage”だ!」

大友「う、歌の!?ていうか、いつ覚えたんだよ」

小兵二「今日だ。テストの合間の休み時間に、携帯のYouTubeで食い入るように見てな」

小見山「その頑張りをテストに向けようよ、兵ちゃん…」


小兵二「ふふふ……道すがらお前らにも見せてやろう、この俺の“First Stage”を!!」

大友・小見山「いい!いらないっ!!」ブンブンブン!
テクテク…

渋澤「くっくっく……この写真も良く撮れてるぜ」


テクテク…

小兵二「ラブユー ラーヴュー あーなーたーへのー あーふぅれーるぅー♪」スッ サッ

大友「だから気持ち悪いって、兵ちゃん!」

小見山「雪歩ちゃん、もしいたとしても絶対喜ばないって!!」
テクテク…

渋澤「……この写真も良いな、目移りしちまう」


テクテク…

小兵二「こんらーん しーたー こーこーろ もーどーかーしくぅーてー♪」スッ サッ

大友「前見て歩いてよ、兵ちゃん!」

小見山「いい加減転ぶって!」
小兵二「何を言う!貴様らもやるんだぞ!」

大友「聞いてねーよ!」

小兵二「それ、行くぞ!大サビだ!!」


小兵二「ラブミー ラーブミー わーたーしに…」

ドンッ!

渋澤・小兵二「おうっ!?」


ヒューン…

渋澤「あぁっ!?お、俺のカメラが!!」
小見山「あっ……」


ガシャンッ!

渋澤「あぁ〜〜っ!!お、俺のカメラがぁ〜!!」

小兵二「あ、あわわわ…」

渋澤「こ、このクソガキ……ああぁぁぁ……!」ダッ!

タタタ…


大友「あっ!そっち、危な…」
渋澤「ああぁぁ……何てこった……せっかくの写真が…!」

大友「そっち、車道ですけど…」


プップー!

渋澤「!?」

小見山「あっ…」


ドゴンッ!

渋澤「」

ゴロゴロゴロ…


シィーーン…
運転手「う、うわ……うわあぁぁぁ!!」


小見山「へ、兵ちゃんコレやばいよ…」

大友「どうしよう……!」

小兵二「………………」


小兵二「逃げろっ!!」ダッ!

小見山「あっ!兵ちゃん!!」ダッ!

大友「待ってよ!いきなり逃げんのは…」


大友「ん?」
大友「何だろ……メモが落ちてる」

パラパラ…


大友「……!?」

大友「こ、これは……この間の、雪歩ちゃんのゴシップ記事の原稿!?」

大友「な、何でこんなものがここに……ん?」

大友「名刺が挟んであるぞ……」


大友「フリージャーナリスト……渋澤……?」
〜夕方、765プロ事務所〜

雪歩「本当に、ごめんなさい……」

律子「いいえ、雪歩が謝ることじゃないわ……私こそ、本当にごめんなさい」

P「お前はちゃんと連絡を入れろよな、せめて携帯を持って行ってくれれば…」

真「はい……ご心配をおかけして、すみませんでした」

P「あぁ、しかし……本当に皆無事で何よりだったよ」


P「で……吉祥寺の学生に助けられたんだったな」

雪歩「はい、そうですぅ」
P「……この一件は、無かった事にしといた方が良いだろうな」

律子「えぇ。不良学生と事を起こしたなんて、この子達のイメージに関わります」

真「……やっぱり、そうですよね」


P「いや、分かってる……お前達がその青年達に恩を感じてるのは良く伝わるよ」

P「でも、助けたのが学生なら、お前らを襲ったのも学生だ」

P「お前達にとっては違くても、世間にとっては同じ不良としてしか見ないだろう」

P「そんな連中とお前達に交流があるなんて知られると、後の信用に関わる……分かるな?」


雪歩「はい……」
P「この一件は、社長と俺達、そしてお前達の間だけの秘密だ」

P「他の子達……春香や美希達にも言わないでおいてくれ。あずささんにもな」

真「み、皆にもですか?」

律子「彼女達にはショックが大きすぎる。余計な心配を与えかねないわ」

律子「ごめんね、大丈夫……これからは何事も、私達が絶対にあなた達を守るから」

雪歩「律子さん……」


P「今日はもう帰った方がいい。明日の仕事も、他の誰かに代わってもらうことにしよう」

P「色々あっただろ?ゆっくり休んどけ。また明後日から、よろしく頼むな」

真「は、はい……今日は本当にすみませんでした」

P「止めろって。俺達こそすまなかった……また今度な」

雪歩「はい……失礼しますぅ」
ガチャッ パタン…


小鳥「……複雑そうな顔をしていましたね、二人とも」

P「えぇ……アイツら自身、色々とショックな事にも直面した訳だし」

P「それに、そうだな……特に雪歩は、あっちで友情を育んできたんじゃないかなぁ」


律子「友情、ですか?」

P「あぁ、全くの勘だけどな」

P「雪歩達は、自分達を助けてくれた学生達と、もっと仲良くなりたかったんだと思う」

P「でも、立場の違いから、それを諦めるように俺達から言われた訳だ」

P「内心、色々と葛藤はあるだろうな」
律子「私達のこと、恨めしく思っているでしょうか」

P「まさか。そんな事で人をいちいち恨むように育てた覚えは無いぞ」


P「ただ、アイツらもプロのアイドルであると同時に、思春期の女の子だからな」

P「どういう風に割り切るか……それはアイツら次第だ」

小鳥「私達は、それを見守ることにしましょう」

P「そうですね」


P「さて、仕事仕事……今日の先方への謝罪文書を作るか」

律子「明日の調整もしなくちゃ。小鳥さんも手伝って下さいね」

小鳥「はいっ」
〜二日後の朝、765プロ事務所〜

伊織「この間のゴシップ記事を書いたヤツの素性が分かったわよ!」

春香「えっ、本当!?」

伊織「この雑誌の……この記事を見て」バサッ

美希「フリージャーナリスト……渋澤マタイチ?」


『事実無根の記事を載せることで、しばしば多方面からの苦情を受けることのある
 某週刊誌。』

『先日、K市で交通事故に遭った被害者は、その週刊誌のお抱えジャーナリストで
 あり、業界では名の知れた有名人でもある。』

『過去に彼が執筆した記事は、芸能界のスキャンダルが主であるが、事実と異なる
 報道内容から争いとなった例を数えると、別表の通り枚挙に暇が無い。』

『怪我の回復を待つベッドの中で、彼は何を思うのか。ひとえに、自身のこれまで
 の行いを振り返る機会となることを願うばかりである。』
亜美「ふーん、やっぱ悪いヤツだったんだー」

響「悪いことばっか考えるから、こんな目に遭うんさー!」

千早「萩原さんにかけられた疑いも、これで晴れるといいわね」


真美「そういや、ゆきぴょんとまこちん今日から来るんだよね?」

貴音「えぇ、元気を取り戻してくれれば良いのですが…」

やよい「うっうー!もう心配無いんですって、お二人に教えてあげたいですぅー!」

あずさ「真ちゃんも、雪歩ちゃんのことを気にかけていたものねぇ〜」


ガチャッ

真「おはようございまーす!」

雪歩「おはようございますぅ」
春香「真!雪歩!」

美希「おっはようなのー!」

響「はいさーい!」

亜美・真美「おっは→!」


真「皆おはよう!心配かけてごめんね」

千早「プロデューサーや律子からは、体調不良と聞いていたわ。具合はどう?」

雪歩「う、うん。すっかり大丈夫、ありがとね」
貴音「やはり誰かが欠けると、この事務所は寂しくなるのだと痛感したものです」

やよい「伊織ちゃんも、ずっとお二人のことを心配してましたー」

伊織「こ、こらやよい!何言ってんのよ!」

あずさ「あらあら〜、恥ずかしがることないじゃないの〜、ねぇプロデューサーさん?」


P「えぇ、そうですね……真、雪歩、おはよう」

真「おはようございます!」

雪歩「お、おはようございますぅ」ペコリ

P「ははは、どうやらもう心配無いみたいだな」
P「今日の仕事は、二人とも午後からだ。ゆっくりしてていいぞ」

雪歩「そ、そうでした……えぇと…」


真「雪歩、どうする?今日行く?」

雪歩「うん……そうだね、行こうか」


雪歩「あのぅ、プロデューサー……私達、ちょっと出かけてきて良いですか?」

P「ん?別に構わないが、時間かかりそうか?」

真「たぶんかからないので、すぐ事務所に戻ります。心配要りません」


P「ん、そうか。気をつけてな」

真「はい。じゃあ、雪歩」

雪歩「うん。それじゃあ、行ってきますぅ」
ガチャッ パタン


春香「……何だろう?二人で大事な用事があるのかなぁ」

亜美「二人でお忍びラブラブデートかもよ→?」

響「でっ、で、デートだって!?女の子同士だぞ!?」

千早「我那覇さん、動揺しすぎよ」

貴音「しかし、先ほどの二人からは、確かな決意が感じられました」

美希「んー、どこか行きたいお店があるんだって、ミキは思うな」



P「……けじめをつけに行ったかな」

律子「そうかも知れませんね」
〜帝拳高校 校舎裏〜

大橋「ケッ、沼田のヤロー……いちいち癪に障ること言いやがって」

武藤「何言われたんだよ」

大橋「クズにも答えられるテストを作ったんだから感謝しろってよ」

武藤「で、お前の出来はどうだったんだ?」

大橋「お前はどうだったんだよ」


武藤「何だよ」

大橋「あ?」


大橋・武藤「………………!!」
武藤「止めよう、俺が悪かった…」

大橋「いや、いい…」


輪島「何だてめーら、いまさらテストの心配してんのか」

武藤「あ、輪島さん」

大橋「どうだ?今度こそ無事に卒業できそうなのかよ」

輪島「てめーらとはキャリアがちげーんだよ」

武藤「さすが21歳…」

ゴンッ

武藤「ぐわっ!」
輪島「ぶっ殺されてーのか、てめぇらぁ!!」

大橋「やべぇ、怒ったぞ」ダッ

武藤「す、すいませーん」ダッ

輪島「あっ」


輪島「チッ、ったく……」


コソコソ…


輪島「むっ?」



コソコソ…
不審者A「うぅぅ……どうしよう、どうやって渡せば…」

不審者B「だ、大丈夫だよ!とにかく、誰か知ってる人に頼んで…」


輪島「おい、そこのお前ら」

不審者A「ひっ!?ひいいいぃぃぃぃぃっ!!」ビクッ!

不審者B「げっ!で、でかっ!」ギクッ


輪島「そこで何してる。校内は関係者以外立ち入り禁止だぜ」
不審者A「うっ、え、えぇと、あの……そのぅ……」モジモジ…

不審者B「何やってんだよ!ほら、聞かないと…」

不審者A「あうぅ…あの……」モジモジ…

輪島「?」


不審者A「あの……こ、これを!」バッ

輪島「?……何だこれ、手紙か?」

不審者A「これを、あの……前田君って人に、渡してもらえますか?」

輪島「前田?」

不審者A「あの、喧嘩が強くって……いや、あのぅ…」

不審者B「前田太尊です!ちょっと背が高くて、リーゼントっぽい髪型の」

輪島「あぁ、やっぱり前田さんのことか」
輪島「で、お前らは何者だ?」

不審者B「い、いえ!ボク達、決して怪しい者では…!」

輪島「コート着て帽子にグラサン、マスクしてるヤツらのどこが怪しくねーんだよ」

不審者A「うぅ……いえ、あの……」


不審者B「し、失礼しましたぁー!!」ダッ!

不審者A「あっ!ちょ、まこ……待ってぇー!!」ダッ!

タタタ…


輪島「……行っちまいやがった。何だってんだ、一体」
〜教室〜

米示「渋澤が別の週刊誌で叩かれたらしいな」

勝嗣「カッカッカッ、いい気味だぜ。俺達を陥れようとした報いだ」

和美「ネットでもすごい騒ぎだったんだよ!
   だってね、渋澤って人の自宅まで探し当てられてたんだから」

千秋「えっ、本当?」

米示「一体誰がそこまで……」


中島「フッ……それは……」

中島「僕の仕業さ」バッ
中島「3ちゃんのスレに、たまたま渋澤の内情を告発した人物が現れたんだ」

中島「小出しにされたヒントを手がかりに、僕が土地に関する知識や
   GoogleMapのストリートビューを駆使して、見事探し当ててね」

中島「その時の祭りの盛り上がりたるや、何事にも耐え難い達成感を覚えたものさ」


和美「うん、それでね?でもやっぱりちょっと可哀想かもって思っちゃった」

勝嗣「ちっとも思わねーよ、今まで何人にも迷惑かけてきた男だろが」

米示「勝嗣の言う事ももっともだ。まぁ、渋澤も息子もしばらくはおとなしくなるだろ」


中島「………………」
前田「………………」

千秋「前田くん、どうしたの?頭抱えて…」

前田「今俺に話しかけるな…」


米示「前田さん、この間の期末がほぼ全滅だったらしくてさ」

和美「えー、そうなの!?だったら全部ボイコットしてても同じだったんだね!」

勝嗣「ば、バカ!そういう問題じゃねぇ!」


ガララッ

輪島「前田さん、いるか?」
米示「あれ?輪島さん」

和美「お疲れー!」フリフリ

勝嗣「どうしたんスか?いきなり」

輪島「どうしたもこうしたも……俺にも分かんねぇよ、いきなりで」


前田「ぐむむ……」

輪島「おい前田さん」

前田「うるせぇ!黙ってろっつってんのが聞こえ…!」

前田「あれ?お前いつの間に来てたんだ」

輪島「気づけよ」
輪島「とりあえず、ほらよ」

前田「あん?……何だこれ、手紙か?」

輪島「俺も中身は見てねぇから、何も知らねぇぞ」

勝嗣「堀口学園のヤツらからの果たし状じゃねーだろうな」

米示「勘弁してくれよ、面倒ったらありゃしねぇぜ」


前田「…………?」


ビリッ





『前田君へ』



『あのままお別れをするのはちょっと寂しいと思ったので、
 お手紙を書くことにしました。』

『何を書くのか決めないまま書いているので、良く分かんなくなっちゃうかも
 知れません。ごめんね。』

『まず、私と真ちゃんを助けてくれて本当にありがとう。本当に、言葉では
 言い尽くせないほど感謝しています。』

『前田君は、私達のためじゃないと言っていたよね?』

『でも、真ちゃんは、たぶん前田君は照れ隠しでそう言っていただけで、
 本当は私達のために来てくれたんじゃないかなぁ、って言っています。』

『私は、それは自意識過剰じゃないかなぁ、って思ったんだけど、
 ちょっと同意できる部分もあったりするかも。ごめんね。』
『でも、私は、そんなことはどうでも良くて……って書くと変な風に思われるかも
 知れないけれど、あまり重要では無いと思っています。』

『だって、どんな理由であれ、前田君は、私達の危ない時に来てくれて、
 結果的に私達を助けてくれました。』

『それに対して、ただありがとうと言うのは、私達のワガママかも知れないけれど、
 勝手に思うだけなら良いよね?ごめんね。』

『あと、あの後、私達もよく考えたんだけれど、前田君の言う通り、あまり私達が
 お互い直接会うと、ちょっと色々大変になるっていうのは分かりました。』

『だから、もしかしたら、もうあまり会えなくなるんだと思います。』

『でも、寂しくはありません。』

『それは、前田君に会いたくないとか、嫌いとか思っているのではないです。
 確かに、初めて会った時は、怖くてまともに喋れなかったけれど……』

『私は前田君に会えなくなるかも知れないけれど、前田君は私に会えると思うからです。』
『言っている意味が分からない?……そうだよね、ごめんね。』

『つまり、何と言うか、私は、これからも一生懸命頑張って、もっと皆から
 応援されるアイドルになりたいと思います。』

『そうすることで、きっと雑誌やテレビにも出る機会が多くなるだろうし、
 その雑誌やテレビを通して、前田君は私に会えるって思うんです。』

『私は前田君に会えないけれど、今あるお仕事を通して、“もしかしたら前田君が
 見てくれるかも”って思うと、すごく勇気が沸いてきます。』

『前田君に助けてもらった分、今度は私が、もっと輝ける私になって、前田君の前に
 現れたいって、そう思うんです。』

『……これも自分勝手だよね?ごめんね。でも、どうか許して下さい。』
『私を助けてくれた人に、だらしない姿は見せられない。』

『きっとどこかで、前田君が見てくれていると思い、胸を張ってアイドルを
 続けたいと思います。』

『あ、見てねって言ってるわけじゃないよ?見てくれてなくてもいいの。
 私が勝手に思ってるだけだからね。ごめんね。』

『前田君に出会えて本当に良かったです。それじゃあ、また会う日まで。』

                           Y・H



前田「………………」チラッ
雪歩「………………………」


真「行こうか、雪歩」

雪歩「うん、行こう」


雪歩「……………」ペコリ


テクテク…



前田「……ヘッ、普段からこれくらいハキハキ喋れってんだ」

勝嗣「何が?」

前田「何でもねーよ」


〜おしまい〜
以前、内Pをお題にしたアイマスSSを書いたのですが、その際、雪歩の出番が
序盤の一瞬で終わったため、雪歩を主役にして書きたいと思ったのが発端です。

何かお題が欲しいと思い、手に取った漫画がろくでなしBLUESでした。
作中の時系列としては、浜田の退学〜鬼塚戦の前(11〜13巻)くらいを想定
しています。

ぶるーちゅ並みにアッサリなSSにしたかったのに、気づいたらシリアス長編
になってしまい、すみません。

これから、小兵二軍団員の勧誘に行かなければならないので、失礼致します。

16:38│萩原雪歩 
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