2014年07月22日

あずさ「夏祭」


小鳥「あずささん、今度の日曜日って何か予定入ってますか?」



週の半ばに、お仕事から帰ってきたら、音無さんから突然そんな事を言われました。





あずさ「日曜日ですか? 久々のお休みなので、のんびり過ごそうかと思っています〜」



プロデューサーさんのお陰でお仕事が沢山来るようになって、お休みも中々無いくらい。

けれど、そんな毎日がとっても充実しています。



小鳥「実は日曜日の夕方から近くの公園で夏祭りがあるんです。良かったら一緒に行きませんか?



   花火もあがるんですよ!」



あずさ「まぁ、お祭りですか〜。楽しそうですね〜」



最近はそういうイベントとかも中々予定が合わなくて行けなかったから、こういう風に誘ってもらえると凄く嬉しいです。





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小鳥「あ、もし疲れてたりとかしたら全然大丈夫なんですけど……」



あずさ「うふふ、大丈夫ですよ〜。お気遣いありがとうございます」



小鳥「それじゃあ日曜日、あずささんの家まで迎えに行きますね!」



お休みが不規則な中、こうやって誰かと約束して遊びに行くのは凄く久々な気がします。

学生時代の友人は就職してたりして時間が合わなかったりするので……。





それから毎日お仕事を頑張って、ついに日曜日を迎えました。

天気は晴れ。

雲ひとつありません。



音無さんは、15時頃来てくれると言っていたので、13時半位になったら着替えましょう。



溜まっていた洗濯物を片付けて、あとは時間までのんびり。

お昼ご飯を食べたらあっという間に時間になったので着替えましょう。



軽くシャワーを浴びて着替えも終わりました。

お化粧もバッチリです。



準備が終わった頃、インターフォンが来客を告げました。





あずさ「は〜い」



カメラ付きなので姿を確認すると、音無さんでした。

なんと浴衣です。



あずさ「今開けますね〜」



扉を開けて、音無さんを中へ案内します。

音無さんは大きなキャリーバッグを持っていました。





あずさ「熱い中わざわざすみません〜。今お茶お持ちしますね」



小鳥「あ、そんなお構いなく」



わざわざ来て頂いたのにおもてなししないなんてありえません。



リビングで所在なげに座っている音無さんに、冷たい麦茶とお菓子を持っていきます。



小鳥「あ、ありがとうございます。いただきます」





あずさ「浴衣、素敵ですね」



小鳥「え、えへへ、照れますね……」



綺麗な緑の浴衣が音無さんにとても良く似合っています。



小鳥「そうだ!実はですね……」



突然声を上げた音無さんが、持ってきたキャリーバッグを開け始めました。



一体何を……?





小鳥「じゃ〜ん!あずささんの浴衣を持ってきました!」



あずさ「え、えぇぇ!?」



なんと私の分の浴衣を用意してくれたみたいです。

何だか悪いですね……。



小鳥「早速着替えましょう!着付けは私がやりますから!」



音無さんの目が輝いています。



あずさ「こ、これ、どうしたんですか?」



小鳥「テレビ局が衣装として使ったやつを安く譲ってくれたんです」



あずさ「まぁ、そうなんですか……あ、確かに見た事があるような……」





いつだったか、お仕事で着た浴衣が目の前にあります。

薄紫の生地にお花の意匠が凝らしてあって、とても上品な仕上がりの浴衣です。



小鳥「さぁ、お着替えしましょ!そうしましょう!」



あずさ「お、音無さん、落ち着いて……!」



鼻息荒く着替えを迫ってきます。

ちょっと怖いです……。



あずさ「も、もう!ちゃんと着ますから!」



小鳥「ハッ!? し、失礼しました……ちょっと取り乱しました」



ちょっと……?



小鳥「さぁ、着替えましょう」











〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜









小鳥「ふう、着付け完了!」



あずさ「ありがとうございます〜」



音無さんの着付けはとっても手際が良くて、事務員さんってそんなことまで出来るんですね。

流石は音無さんです。



小鳥「さて、着替えも終わったしそろそろ行きますか」



あずさ「は〜い」





音無さんと並んで駅まで歩きます。

キャリーバッグは持って行くと荷物になってしまうので、家に置いてきました。



駅までは10分もかかりません。

よく迷子になるから、駅は近い方が良いだろうって、進学する時両親が選んでくれました。

それ以来、ずっとそこに住んでいます。



定期で改札内に入り、事務所方面へ向かう電車に乗ります。

よく見ると、電車内には私達以外にも浴衣姿の人がちらほらと。

事務所の最寄り駅に着くと、その浴衣姿の人達も電車を降りました。

どうやら同じお祭りに行くみたいです。





通い慣れた事務所までの道を音無さんと歩きます。

時刻は16時を少し過ぎたくらい。

日も長くなって、まだまだとっても明るいです。



小鳥「確か事務所にプロデューサーさんがいたはずなので、浴衣姿見せびらかしに行きますか!」



あずさ「ええぇ!? そ、そんな、恥ずかしいわ〜」



小鳥「ふふっ、仕事で今着てる浴衣見られてるじゃないですか〜。さ、行きましょう!」



言われるままに事務所までやって来ました。

扉を開けると音無さんがずんずん中へ進んでいきます。





小鳥「お疲れ様です、プロデューサーさん!」



P「お、音無さん!? どうしたんですか!?」



小鳥「む〜、プロデューサーさん。折角浴衣美女を連れて来たのに、その反応はあんまりじゃないですか?」



P「あ、す、すいません……。良く似合ってますよ、お二人共」



あずさ「あ、あらあら……」



一度見られているとはいえ、恥ずかしい物は恥ずかしいですね……。





P「あれ、あずささんのその浴衣……」



小鳥「流石はプロデューサーさん!ちゃんと気が付きましたね」



P「いつだったか撮影で着たやつですよね? どうして」



あずさ「音無さんが、譲っていただいたそうで……」



P「へぇ、そうなんですか。うん、さっきも言いましたけど良く似合ってます」



ど、どうしましょう。

そんな風に言われたらまともに顔が見れません……。





P「ところで、どうして急に浴衣に?」



小鳥「ふふっ、実はすぐそこの公園でお祭りがあるんですよ」



あずさ「これから二人で行ってくるんです〜」



P「そうだったんですか」



小鳥「プロデューサーさんも一緒に来れたら良かったんですけどね」



P「ははは、俺も行ったら事務所が空っぽになっちゃいますから」



お仕事熱心なのはいい事なんですけど、あまり根を詰めすぎて体を壊さないか心配です……。





小鳥「それじゃあ私達はこれで」



P「楽しんできてくださいね」



浴衣を見せに来ただけの私達を笑顔で送り出してくれました。



事務所を出たら公園まではすぐです。

同じようにお祭りに向かう人達に紛れて、はぐれないように音無さんと手を繋いで歩きます。

公園に着くと、出店が沢山並んでいました。

たこ焼き、焼きそば、りんご飴。

行き交う人で、活気にあふれています。





小鳥「は〜、こういうの見るとお祭りに来た〜! って実感しますね!」



あずさ「本当に。ウキウキしてきました」



子供から大人まで、皆楽しそうな笑顔で、見ている私まで楽しくなってきますね。



小鳥「適当に見て回りましょうか」



両脇に出店がズラリと並んだ通りを歩いて、途中気になった物を見ていきます。





小鳥「あ、射的がありますよ!」



テキ屋「いらっしゃい!」



小鳥「ちょっとやっていきましょうか」



音無さんが射的に挑戦です。

コルクの弾を射的用の銃の先端に入れたらお目当ての賞品に狙いを定めます。



弾数は5発。

真剣な音無さんの表情に、私まで緊張してきました……。





ぱんっという音が弾けて、コルクの弾丸がまっすぐ飛んでいきます。

惜しくも賞品の横を通り抜けて行きました。

狙っていたのはお菓子の箱でした。



小鳥「もうちょっと右か〜」



再び銃を構えた音無さんはもう一度狙いを定めています。

次こそ当たるでしょうか?



もう一度発射音がすると、今度は賞品に当たりました!





あずさ「まぁ、音無さんすごいです!」



小鳥「あぁ、ダメか〜」



あずさ「え?」



折角弾が当たったのに音無さんは悔しそうにしています。



一体どうして……?



小鳥「当たっても下に落ちなかったらダメなんですよ」



あずさ「えぇ!?」



知りませんでした……。





小鳥「まぁ、また当てたら良いんですよ」



そう言って残る3発中2発を連続で当てちゃいました。

2回も当てられた賞品は下に落っこちて、見事賞品獲得です。



小鳥「1発余りましたね。あずささん、どうです?」



あずさ「え? わ、私には無理じゃないかしら……?」



小鳥「大丈夫ですって、弾込めて引き金引くだけですから」



言われるままに銃に弾を込めて構えます。





あんまり重くなさそうなお菓子の箱に銃口を向けて引き金を引くと、乾いた音の後にコルクの弾丸が飛んでいきました。

まっすぐに飛んだそれはお目当ての賞品……では無く、3つ隣の小さな猫の置物に命中して、落下。

見事賞品を獲得しました。



でも、どうして狙いとこんなにズレてしまったのかしら?

もしかして、弾丸も迷子になったのかしら……って、私が下手なだけよね。



小鳥「あずささん、おめでとうございます!あんなに小さいのによく当てましたね!」



あずさ「本当は違うものを狙っていたんですけれど、運が良かったんですかね〜」



袋に入れてもらった賞品を持ってまた色々見て回ります。

金魚すくいやお面屋さん。

何だか前にお仕事で行ったふるさと村のお祭りを思い出します。





皆さん、お元気にしているかしら?



小鳥「それじゃあ、何か食べるものを買いましょうか!」



あずさ「うふふ、そうですね〜」



焼きそばやたこ焼き屋さんはとっても人気があるので人だかりが出来ていますが、その分出店の数も多いですね。



一緒にお店に並んで色々買いました。

意外と時間がかかってしまったので、辺りはもう薄暗くなっています。

別々に並べばもっと早く買えたんじゃないかと音無さんに聞いてみると。





小鳥「目を離したら、あずささんすぐどこかに行っちゃいますから」



微笑みながらそう言われちゃいました。



返す言葉もありません……。



花火に備えて原っぱに移動して、座る場所を探そうと思いましたが人がいっぱいで座る場所がありませんでした。

折角買った食べ物も食べることができず、二人で園内をウロウロするばかり。





小鳥「う〜ん、すみませんあずささん……」



あずさ「そ、そんな……! 音無さんが謝ることじゃないでしょう?」



歩きながら、音無さんが申し訳無さそうに頭を下げてきました。



小鳥「いえ、私から誘ったのに、満足に座る場所も無いなんて……」



こんなに落ち込んでる音無さん、初めて見ました……。



あずさ「……そうだわ!」



小鳥「え?」



あずさ「音無さん、花火まではもうちょっと時間がありますよね?」



小鳥「え、えぇ……」



あずさ「うふふ、それじゃあ……」



思いついた事を音無さんに告げると、二つ返事で了承を得られました。





公園を出て、目的地まで歩きます。

途中コンビニに寄って、缶ビールを買いました。

6本セットなんて、初めて買った気がします。



コンビニから数分歩いて、無事目的地に到着しました。



私達が来たのは、事務所です。



公園からすぐ近くなら、ここは花火が見える絶好のスポット。

そう思ってやって来ました。



すぐに階段を登って屋上へ。





扉を開けたら、ちょうど最初の花火が打ち上がっていました。



小鳥「わぁ〜!綺麗ですね〜!」



赤い花火の明かりを受けて、音無さんの顔が赤く染まっていました。



大分近いのか、花火の弾ける大きな音がお腹に響きます。

近すぎて首が痛くなりそうなので、ちょっとはしたないけれど、地べたにレジャーシートを敷いてその上に寝っ転がりました。



大きな花火を、私と音無さんで独占している気分です。



P「あれ?」



声がしたので、声の方向を振り向くとプロデューサーさんが立っていました。





あずさ「ぷ、プロデューサーさん!?」



P「二人とも、公園に行ってたんじゃ……?」



小鳥「それが凄く混んでいて、座る場所がなかったんです」



あずさ「それで私が事務所の屋上なら綺麗に見れるんじゃないかって……」



P「なるほど」





小鳥「プロデューサーさんもどうですか? ビールもありますよ〜?」



音無さんが悪い顔をしています。



P「……良いんですかね?」



小鳥「大丈夫ですよ!今日は律子さんもいませんし!」



P「それじゃあお言葉に甘えて!」



あずさ「あんまり飲み過ぎちゃダメですよ?」



P「それは勿論、一応仕事中なんで一杯だけにしておきますよ」



小鳥「え〜? もっと飲みましょうよ〜」



あずさ「ダメですよ〜、音無さん」



小鳥「残念です……」





夜空に咲く大輪の花を見ながら、地上ではお酒を飲みながらおしゃべりに花が咲きます。



あずさ「音無さん」



小鳥「はい?」



あずさ「今日は、誘っていただいてありがとうございます」



小鳥「えへへ、楽しんでもらえましたか?」



あずさ「はい、とっても!」



心の底からそう思います。

また明日からのお仕事も、もっと頑張れる。

そんな素敵な休日になりました。





おわり







20:30│三浦あずさ 
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