2014年07月28日

あずさ「私たちの隠れ家」

日常の階段を下りて、非日常の世界へ。



友達に教えてもらった、ご飯とお酒が美味しいイギリス風のお店。



この店は地下にあって、隠れ家みたいな雰囲気がして、凄く面白いんです。





でも今日は土曜日の夜だから、お客さんは沢山入ってます。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1406476880



天井からつり下がったテレビは、今日のスポーツを中継していて、その内容にみんな一喜一憂。



私は空いている事を願いつつ、混雑したお店の中を歩いて席を探します。



店内をぐるりと回って、どうやら椅子は空いてないようなので、カウンターにするしかないかなと思っていると、隣から腕を突かれました。



振り向くと、そこにはとてもよく見知った顔が。音無さんです。

「あずささん、こんな所で会うなんて偶然ですね」



「音無さん!えっと、音無さんは、ここで一杯ですか?」



「いえ……、実は、晩ご飯を食べに来たんです」



いつもこういう所ではお酒を飲んでいるイメージの音無さんですが、今日はご飯を食べるだけのようでした。

「晩ご飯ですか〜」



「はい、ここのフィッシュアンドチップスがとても好きで、良く来てるんですけど……」



「けど?」



「今日は普段食べないサラダとカレーだけ食べようかなって」

「なるほど、お酒を飲むとどうしてもおつまみ系に走っちゃいますからね〜」



「そうなんですよ……、ソーセージとか、フライドチキンとか……」



他愛もない会話で盛り上がっていると、音無さんが頼んだ食べ物が運ばれてきました。



「美味しそうですね〜」

「ええ、あっ、あずささんは何か頼まれましたか?」



「いえ、まだなんです」



「じゃあ、席取っときますから行ってきてください」



「は〜い、行ってきますね〜」

席を立って、カウンターで料理を注文しに行きます。



今日は、折角だから一緒に食べられるように、フィッシュアンドチップスと野菜スティックを頼む事にしました。



番号札を受け取って、席へと戻ると、音無さんは美味しそうにカレーを食べていました。



「音無さんは食べている所が絵になりますね〜」

「んっ!!……、ぷはっ、あずささん、ビックリさせないでください!」



「あら、ごめんなさい」



少しだけ赤くなった音無さんは、恨めしそうな顔でこちらを見てきました。



それが何故か色っぽくて、少しだけドキッとします。

少しだけ変な空気が漂った所で、私の注文した食べ物が届きました。



「あずささん、フィッシュアンドチップスにしたんですね」



「はい、実は食べた事無いんですよね〜」



「あれっ、そうなんですか?」

「ここに来る時はいつもピザとかばっかりだったので……」



「それじゃあ、まずは何もつけないで一口どうぞ」



音無さんに言われるがまま一口サイズの物をぱくりと食べてみます。



すると、途端に口の中にじゅわっとしたジューシーな味が広がって、ほっぺたが落ちるような、そんな感覚を覚えました。

モグモグと食べると、魚のお肉の柔らかさと衣のジューシーさがそれぞれ主張を繰り広げてきます。



ですが、それが喧嘩することなく、見事に調和したこのおいしさは、やみつきになりますね。



「おいしい〜!」



飲み込んだ後、思わず声を上げると、音無さんはニコニコ笑って、タルタルソースにディップするように勧めてきました。

言われたとおりに付けてみて、もう一口食べると、今度はタルタルソースの濃厚な味わいが二つの主張を引き立ててくれます。



二つの顔を持っているなんて、凄いわね〜。



と、思っていたら、おもむろに音無さんが一緒に運ばれてきた瓶の蓋をあけて、中身を少しだけ垂らしました。



「今度はビネガーでもどうぞ、気に入ったら食べる分だけ掛けるといいですよ。」

「はい、ありがとうございます〜」



ビネガーを掛けたフィッシュアンドチップスを食べると、今度はビネガーのツンとした香りが鼻を抜けて、口の中に酸味が広がっていきました。



それがまた食欲をかき立てて、もう一個と私はビネガーを掛けて、更に欲張ってタルタルソースにディップします。



「う〜ん、すっごく美味しいです!」

「あずささんが喜んでくれてよかったです」



私は、お礼にと音無さんにもフィッシュアンドチップスを勧めて、二人で食べ物に舌鼓を打ちます。



やがて、私が頼んだ食べ物も全てなくなり、私たちは食器を下げて、非日常の階段を登って日常へ帰ります。



「美味しかったですね、音無さん」

「はい、今度は是非一緒に来ましょう!」



「その時は、お酒もですね?」



「そうですね、お酒も美味しいので、飲みましょう、あずささん♪」



二人で笑いあいながらお店を出て、駅へと向かいます。

この隠れ家を分かち合える人が居ると言う事は、とっても嬉しい事です。



次来る時は、音無さんの為にちょっと高いけど、美味しいお酒でも頼んじゃいましょう。





おわり



22:30│三浦あずさ 
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