2013年11月13日

あずさ「私にも、白馬の王子様が現れたときがあったんですよ」

P「へぇ、初耳ですね。どんな人だったんですか」

あずさ「とっても格好良い人で、困ってる私に手を差し伸べてくれました」


P「あ、もしかして俺ですか!?」

あずさ「うふふ、プロデューサーさんも良い人ですけど、その人には敵いませんよ」

P(……失恋した)



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P「残念です。――あ、注ぎましょうか」

あずさ「お願いします。……あの人こそ、運命の人なのかもしれませんね」

P「あずささんにそこまで言われるなんて、羨ましい人だ」

あずさ「あら、嫉妬してくれるんですか」

P「それはもう! 腹の中が煮えくり返りますよ」

P「それで、その人とはどんな関係なので?」

あずさ「大人の関係、ですよ」

P(死にたい)


P「ええー、スキャンダルは勘弁してくださいよ……」

あずさ「冗談です。……本当は一度しか会ったことないんですよ」

P「心臓に悪いなぁ。ということは一目惚れですか」

あずさ「惚れちゃいました」

P「よっぽど格好良かったんですね」

あずさ「いえいえ、実は顔もよく憶えてないんです」

P「さっき俺より格好良いって言ったじゃないですか」

あずさ「それは立ち振舞いのことですよ。……詳しく聞きます?」

P「酒の肴としてならぜひとも」

P(聞かなきゃ諦めつかんし)


あずさ「あらあら、ならまた今度にしましょ」

P「え、ここまできてそれは無いですよ!」

あずさ「もう随分飲んだじゃないですか。そろそろお開きにしないと、明日に響きますよ?」

P「くっ……分かりました。でも今度飲むときは話してくださいね?」

あずさ「もちろんです。私だって思い出を語りたいですから」

P「楽しみにしてますよ」


〜別れてから〜

P(あずささん、好きな人いたのか)

P(ああ、好かれてるとか思ってた自分が恥ずかしい)

P「……一人で飲み直そうかな」


P(ん? 携帯が震えてる。着信は――小鳥さんからだ)

P「もしもし、どうしたんですか」

小鳥『あ、プロデューサーさん。唐突ですけど飲みに行きません?』

P「本当に唐突ですね。……良いですよ。一人で飲もうかと思ってたので」

小鳥『やりぃ! 今どこにいます? すぐ行きますから』

P「えっと、×××の前です」

小鳥『おお、入店前でギリギリセーフだったんですね』

P「実はあずささんと飲んでたんですよ。なので出店直後です」

小鳥『へぇ、あずささんと……まあ良いでしょう。今から行きますね』

P「分かりました。待ってますよ」


小鳥「それで酷いんですよ、私が独身なのを知ってるくせに……」

P(飲み始めると同時に愚痴が始まってしまった)

P(というかこの人こんなんばっかだな)

P「小鳥さんにも良い人ができますって」

小鳥「こんな妄想女もらってくれる人なんて……あ、プロデューサーさんが」

P「俺はあずささん一筋ですんで」

小鳥「ピヨ……ならあずささんと飲んでれば良かったじゃないですか!」

P「俺だってそうしたかったんですよ」

小鳥「うう、酷いです。私とあずささんの何が違うって言うんです……」

P「……言って良いんですか」


小鳥「言わないでください。分かってますから。……ああ、プロデューサーさんに振られちゃった」

P「俺もあずささんに振られたんで、お互い様ですよ」

小鳥「え、マジですか!」

P「急に元気になりやがって、この鳥は……」

小鳥「ともかくご愁傷様です。でも、プロデューサーさんとあずささんって、なかなか良い雰囲気でしたけど」

P「なんでも、白馬の王子様がいたらしいですよ」

小鳥「王子様――つまり真ちゃん、まこあず、いやあずまこ? ……盲点だったわ」

P「おいこら音無」

小鳥「え、あ、冗談ですよぉ!」


P「はぁ、やっぱり仕事仲間としてしか見られてなかったのか……」

小鳥「どんまい、どんまい。私がいますって」

P「小鳥さんがいてもな……」

小鳥「そんなこと言ってると後悔しますよ! ああ、あの時小鳥さんに優しくしておけば――みたいな」

P「それじゃ優しくしますんで、あずささんから何か聞いたりしてませんか。運命の人について」

小鳥「おざなりな反省ですねぇ。んー……、ダメですね。どれもお酒の席の話で、記憶が曖昧です」

P「優しくするんじゃなかった」

小鳥「まだ一回もしてないでしょう!?」


小鳥「そういうプロデューサーさんは何かないんですか」

P「何か、とは?」

小鳥「白馬の王子様に対抗できる話ですよ」

P「白馬……あ、ありました」

小鳥「あるんですか」

P「プロデューサーになる数年前の話なんですけどね」

小鳥「興味深いですよ。お注ぎします」

P「これはどうも。――その頃の俺は大学生でした」



P「ある日、暇を持て余して突発的に旅行に行ったんです」

P「旅行先で特に目的なく歩いていると、道端で無料乗馬体験なる看板を提げた男が二三人がいたんですよ。気になって近づいてみたら、ちょっとくすんだ白色の馬が見えまして」

P「人も疎らだったので、なんの気もなしに乗らせてもらったんです。そしたら突然馬が暴れだして、俺を乗せたまま走り出したんです」

小鳥「そんな怪しげなのに関わるからですよ」

P「今となってはそう思いますよ。で、走り出した馬に必死でしがみついてると、何かにぶつかったのか馬が体を上下に揺らして、とうとう振り落とされちゃいまして」

小鳥「えらくハードな話ですね」

P「それで地面に転げたら、凄い可愛い女子高生に助け起こされたんです」

小鳥「……なんですか、自慢ですか」

P「そんなことはありませんよ? その時はもう恥ずかしくて恥ずかしくて……。周りに人も集まってきてたので、なんか格好つけて適当なこと喋ったあと、走って逃げちゃいましたよ」


小鳥「それはキツイ……あー、お酒注ぎましょうか」

P「いただきます。――まあ、俺じゃあ白馬の王子様は無理ってことですよ」

小鳥「プロデューサーさんには、一番プロデューサーが似合ってますよ」

P「違いないです。天職だと思ってますからね!」

小鳥「その意気ですよ、私だって仕事が楽しいから独身なんです!」

P「ですよね。仕事人間万歳!」

小鳥「独身万歳!」

P・小鳥「独身最高!」

ワハハハハハ……


小鳥「んん……頭痛い……。いつの間に家に帰ってたんだろ……」

小鳥(そうえば、プロデューサーさんの話、なんか似たような話をどこかで聞いたような)

小鳥(どこで聞いたんだっけ? 同じくお酒を飲みながら聞いた気が)

小鳥「あー……駄目だ、頭が痛い。もう寝よ」

小鳥「ピヨピヨ……」


P「うげぇ……頭が痛い……」

P(小鳥さんは遅れてくるらしい。あの鳥め……)

あずさ「あらあら、プロデューサーさん。私と別れた後も飲んだんですか」

P「ちょっと小鳥さんと……」

あずさ「もう、ほどほどにしないとメッですよ」

P「へへえ、肝に銘じます」

P(天使だなぁ)


数週間後

あずさ「白馬の王子様の話、ですか」

P「ええ、こんどこそ聞かせてくださいよ」

P(ハートブレイクの準備はできてる。骨は小鳥さんに拾ってもらおう)

あずさ「ふふ、良いですよ。あれは私が高校生の頃、修学旅行中の話です――」


あずさ「自由行動中に班の皆とはぐれてしまって、途方に暮れてたんです。そうしたら、突然私に話しかけてきた人がいて」

P「その人が白馬の?」

あずさ「いえ、違います。その人はなんというか、服を凄く着崩してる不良さんでした」

あずさ「内容はいまいち憶えていないんですけど、たぶんナンパされてたんでしょうね。困っちゃいました」

P「俺がその場にいれば、きっとその不良をボコボコに」

あずさ「してくれました?」

P「……する前に警察を呼びましたね」

あずさ「うふふ、それでも充分嬉しいですよ」


あずさ「それで、助けを呼ぼうにも人通りが少ない道なのか、全然人がいないんです」

あずさ「とうとう不良さんは痺れを切らして私の手首を掴んできて……」

あずさ「そこで王子様の登場ですよ」

P「ドラマみたいな話だ」

あずさ「だからこそ、運命の人かもって思ってるんです」

P「くそ……俺がその場にいれば」

あずさ「あらあら、先着順ですよ?」

P「繰り上げの予定は」

あずさ「今のところありませんね」



あずさ「私がもう泣きそうになったとき、目の前を白馬が通ったんです」

P「え?」

あずさ「白馬です」

P「比喩とかじゃなくて、本当に白馬に乗った王子様なんですか!」

あずさ「最初からそう言ってるじゃないですか、もう」


あずさ「不良さんは白馬に轢かれて気を失ってました。そして私の足元に、いつの間にか人が転がってたんです」

あずさ「私が声をかけると、その人はすぐに立ち上がって『大丈夫』と答えてくれたんです」

あずさ「それで『怪我は無いですか、美しいお嬢さん』って」

P「こう言ったらなんですけど、キザな台詞ですね」

あずさ「その時の私には、とっても格好良く聞こえたんですよ」

あずさ「それから少し話すと、その人は走ってどこかに行っちゃいました。それで気づいたら、人通りが少なかったはずなのに、人がいっぱい集まってきてて」

あずさ「その人だかりのおかげで、班の人にも見つけてもらえたんですよ」

P「……な、なんだか現実味の無い話ですね」

P(釈然としない……。なんか、小鳥さんの妄想癖を知ったときと同じ気持ちが湧いてくる)


あずさ「うふふ、信じれませんか。でも本当のことなんですよ?」

P「ノーコメントでお願いします」

あずさ「あらあら」

P「まあ、俺はあずささんとその人が、また会えることを願ってますよ」

あずさ「嫉妬してくれないんですね」

P「しまくりです。いやぁ、今日も小鳥さんと飲んじゃいそうですよ」

あずさ「それなら私も混ぜてください」

P「あずささんが来るなら小鳥さんはいらないです」

あずさ「小鳥さんに言いつけちゃいますよ」

P「どうぞどうぞ。きっとピヨピヨ言うだけですから」

あずさ「酷い人ですね」

P「心外です。愛情の裏返しですよ」

あずさ「あら、でしたら私には?」

P「裏返す必要がないので」

あずさ「嬉しいですねー」

P(ああ、俺がその場にいたらなぁ……はぁ)



小鳥(そうだ、プロデューサーさんの話、どこかで聞いたことあると思ったら、あずささんから聞いた話に繋がるじゃない!)

小鳥(ということは、プロデューサーさんとあずささんは相思相愛……)

小鳥(言った方が良いのかしら)

小鳥「――さすがに当人が気づくか。言わなくていいや」


                          おわり

小鳥さんが嫌いなわけじゃない。あずささんが好きなだけなんだ

もっとPとピヨとあずささんのSS増えろ

蛇足

P「ちなみに、修学旅行ってどこに行ったんです?」

あずさ「確か……×××です」

P「あ、そこ俺も行ったことありますよ」

あずさ「そうなんですか。プロデューサーさんも修学旅行で?」

P「いえ、俺は個人的な旅行でして。まあ、散々でしたけどね」

あずさ「あらあら、何があったんですか」

P「ともかく恥をかいただけですよ。……馬に乗って街中走って、挙句に落馬して女子高生にそれを見られて」

あずさ「――あの、プロデューサーさん。それっていつ頃の話なんです?」

P「え? だいたい四五年前ですけど」

あずさ「プロデューサーさんの見た女子高生って、どんな人でした?」

P「えー……そうですね、よく憶えてませんけど、落ち着いてて美人さんでしたよ。だからこそ余計に恥ずかしくて」

あずさ「……えっと、その子に話しかけたりしました?」

P「やっぱりよく憶えてないですけど、少しだけ話した気がしますね。野次馬が集まってきたので、すぐ逃げましたけど」

あずさ「あ、あの、プロデューサーさん。もしかしてそれって――」


                       おすまい

08:38│三浦あずさ 
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