2014年08月06日

P「俺……もう春香のプロデュース辞めようかなって」


小鳥「……えっ?」



P「もう春香の担当を辞めようかなって……」





小鳥「な、なんでですか?」



P「辛いんですよ。正直言って」



小鳥「し、仕事が辛いなら事務的な部分くらいなら」



P「そうじゃなくて」



P「もっと根本的な部分が辛いんです」



小鳥「根本的な部分?」



P「ええ。オーディションやライブ、フェスや営業で成功するたび」



P「春香は嬉しそうに幸せそうに」



P「時には涙をこぼしながら大喜びするじゃないですか」



小鳥「そうですね……」



P「それを見るのが辛いんですよ」



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小鳥「仕事云々以前に春香ちゃんの笑顔が見たくないってことですか?」



P「正確に言うと、仕事の成功で喜ぶ姿……ですかね」



小鳥「どうしてまたそんなことに?」



P「どうしてもこうしてもないですよ」



P「このまま順調に行けばトップアイドルだって夢じゃないと思うんです」



小鳥「春香ちゃん頑張ってますからね」



P「だからこそ」



P「もうプロデュースは辞めるべきなんだと思って」



小鳥「はい?」



P「どうかしたんですか?」



小鳥「いえ……ごめんなさい」



小鳥「私が馬鹿なのかもしれないんですが」



小鳥「そこでなんで辞める必要があるのか解らないんですけど……」



小鳥「別にアメリカに1年間行かなくちゃいけないわけじゃないですし」



小鳥「そのままトップアイドルになって」



小鳥「2人で栄光を勝ち取れば良いじゃないですか」



P「初めはそれでいいって思ってたんですよ」



P「でも最近、それじゃダメなんじゃないかって不安になってきて……」



小鳥「どうしてですか?」



P「トップアイドルになって、はい終わり」



P「そんな簡単なものじゃないじゃないですか」



P「芸能界はもちろん、アイドルっていう職業は」



小鳥「それはまぁ……当たり前ですよね」



P「だから春香をトップアイドルにはしないほうが良いんじゃないかって思うんです」



小鳥「春香ちゃんの将来のため……ですか?」



P「そんな感じです」



小鳥「でも、春香ちゃんの為を思うなら」



小鳥「それこそトップアイドルにしてあげるべきでは?」



P「………………」



小鳥「プロデューサーさんと一緒にトップアイドルになりたい」



小鳥「春香ちゃん……そう言ってたじゃないですか」



P「それは今でも覚えてますよ」



P「可愛い笑顔で……嬉しそうに宣言してましたから」



小鳥「だったら――」



P「でも!」



小鳥「!」



P「でも……もう限界なんですよ」



P「春香の嬉しそうで、幸せそうで、楽しそうな姿を見るのは」



P「それを……自分で作り上げていく今のこの生活が!」



小鳥「プロデューサーさんは馬鹿ですね……」



P「え?」



小鳥「春香ちゃんが上に行くことで芸能界の荒波にもまれて」



小鳥「春香ちゃんの春香ちゃんらしさが損なわれるかもしれない」



小鳥「でも」



小鳥「そうならないように、貴方がいるんじゃないですか」



P「…………………」



小鳥「春香ちゃんが変わろうとしているなら」



小鳥「貴方がその先を見極めて、正しい変化を促す」



P「…………………」



小鳥「春香ちゃんが壊れるのも」



小鳥「春香ちゃんが春香ちゃんのまま輝き続けるのかも」



小鳥「全ては貴方次第なんですよ。プロデューサーさん」



小鳥「ただの事務員が口を出せるようなことじゃないかもしれないですけど」



小鳥「私はやっぱり、プロデューサーさんと春香ちゃん」



小鳥「この2人でトップアイドルを目指して貰いたいです」



P「小鳥さん……」



小鳥「将来のことだってそうですよ」



小鳥「ほかのみんなにはアイドル以外の目標があって」



小鳥「トップアイドルは通過点程度かもしれない」



小鳥「その一方で、春香ちゃんはトップアイドルがゴールなのかもしれません」



P「………………」



小鳥「でも、それでいいじゃないですか」



小鳥「先の先まで見通すなんて天才だけがしてればいいんです」



P「………………」



小鳥「普通の人は、一つ一つの短いゴールを刻んで」



小鳥「一歩一歩の成長を大切に大事に積み重ねて行けばいい」



P「小鳥さん……」



小鳥「ゴールに着いたら次のゴールを目指して行く」



小鳥「もしも先が見つからなくなったら」



小鳥「そこでやっぱりプロデューサーさんが――」



P「あの、小鳥さん」



小鳥「どうかしました?」



P「……すみません」



P「急に何語りだしてるんです?」



小鳥「えっ」



P「そういうのは全部わかってますよ。プロデューサーですからね」



小鳥「私のイイ話がーっ!」



小鳥「そういう悩みなんじゃないんですか!?」



小鳥「すっごく深刻な顔して」



小鳥「今にも死にそうな雰囲気かもし出して!」



小鳥「だから私……」



P「春香の将来についてって言うから」



P「俺はてっきり解ってくれているものとばかり……」



小鳥「じゃぁどういう悩みなんですか?」



小鳥「今の春香ちゃんの喜んでる姿を見るのが辛い」



小鳥「トップアイドルになったあとの将来の不安」



小鳥「ちゃんと回収してくれるんですよね?」ムスッ



P「……怒ってます?」



小鳥「怒ってませんよ」プイッ



P「ちゃんと話しますから怒らないでくださいよ。小鳥さん」



小鳥「別に怒ってないですけど」



P「ほんとに?」



小鳥「ほんとです」



P「じゃぁとりあえず話します」



P「と言っても、長々と話すようなことじゃないって言うか」



P「ほんの一言で済むんですよ。俺が辞めたい理由は」



小鳥「そんな簡単な事なんですか?」



P「簡単じゃないですよ。言うは易しってやつです」



小鳥「なるほど……それで?」



P「ええ。俺は気づいたんですよ」



P「春香がトップアイドルになると、俺と結婚しづらくなるじゃないか。と」



小鳥「……………………」



P「……………………」



小鳥「……はぃ?」



P「ですから」



P「春香がトップアイドルにまで至ると」



P「結婚しづらくなるんですよ!」



小鳥「はぁ」



P「その長く険しい道のりの成功と失敗に限らず」



P「俺達が積み上げるわけで」



P「結婚して専業主婦とかになったら」



P「その積み上げたもの崩すみたいでなんかもったいないっていうか」



P「しかも今までの笑顔とかを崩すって考えると気が引けるっていうか……」



小鳥「さーて仕事しますか」



小鳥「私仕事溜まってるので話しかけないでくださいね」



P「ちょっ、小鳥さん!」



小鳥「そんなこと知らないですよ」



小鳥「大体、積み上げた触れ合いがあるからこそ」



小鳥「春香ちゃんと親密になれたわけで」



小鳥「つまり、今までの積み上げたものなんて全然崩してないですから」



P「あ……た、たしかに……」



P「っていうことは」



P「俺と結婚するために仕事を辞めるとしても」



P「春香は悲しんだりしない……?」



小鳥「……そもそもなんで結婚前提なんです?」



P「それはもちろん、したいからですよ」



小鳥「いや……そういうことじゃなくてですね……」



小鳥「というか別に今すぐとかいうわけでもないですし」



小鳥「しばらくアイドルとして活動させてあげたらどうです?」



P「嫌です」



小鳥「そ、即答ですか……」



P「今でこそまだそんなことはありませんが」



P「いずれキスシーンだの露出だの」



P「だんだんハードなものが出てく……いや」



P「春香は着ていてこその色気……脱がせるのはナンセンス」



P「そもそもそんな仕事なんて俺に回った時点でカットしてしまえば……」



小鳥「あのー……プロデューサーさん?」



P「小鳥さん!」



小鳥「はい?」



P「春香をアイドルとして続けさせることも不可能じゃないかもしれません!」



小鳥「そうですか」



P「……なんか素っ気なくありません?」



小鳥「気のせいじゃないですか?」



P「春香の事なんですよ!?」



P「もっと真面目に聞いてくださいよ」



小鳥「いや、共働きっていう手もありますし」



小鳥「まだ結婚しないっていう手もありますし」



小鳥「そもそもファーストキスだって済んでるでしょうに」



P「済んでるからってキスシーン許せるとかそんなオカルトありえません」



小鳥「そうですか」



P「やっぱり適当だ……春香のことを俺に取られたからですか?」



小鳥「それは関係なく」



小鳥「相手のいない私へのあて付けにしか感じないんですよ」



P「なんと」



小鳥「!?」



小鳥「ま、まさか」



小鳥「まさかとは思いますけど!」



小鳥「そういうことだった……なんてありませんよね?」



P「………のワの」ダッ



小鳥「似てない――じゃなくて!」



小鳥「プロデューサーさんッ!」ダッ





――ガチャッ





小鳥「あっ」



律子「………………」



P「営業いってきまーす」ガチャッ



小鳥「」



律子「………………」



小鳥「っ……ぷ、プロデューサーさんの分だけ全部残してやるんだからーッ!」



――スパーンッ











P「……まさか律子が来るとはなぁ。何か買っていって謝ろう」



春香「あっ、プロデューサーさん!」



P「春香? 今日はオフだろ?」



春香「そうなんですけど」



春香「いつも忙しいと、こういう時に何して良いのか解らなくなっちゃって……えへへっ」



P「春香……」



春香「だからお菓子作ってきたんです。プロデューサーさんのサポートになればなって」



P「おお!」



春香「これから営業ですか?」



P「いや、そんなことはないけど」



春香「そ、それなら!」



P「ん?」



春香「それなら……その」



春香「オフの過ごし方を思いつけたかなって……」



P「は、春香」



春香「ダメ、ですか?」



P「そんなことはないさ」



P「買い物もしたいし、一緒に行くか」



春香「何買うんですか?」



P「小鳥さんへのプレゼント」



春香「……はい?」



春香「どーいうことか詳しく聞いても?」



P「は、春香?」



春香「彼女との買い物なのに他の人のプレゼントを買わないといけない理由を」



春香「詳しく聞かせて欲しいかなーって」



P「い、いや、その……なんだ」



P「実はさっきまで小鳥さんをからかってたんだが……律子が来てさ」



春香「それで?」



P「それでその……お詫びの品を」



春香「……………………」



P「………………………」



春香「……もうっ」



春香「帰ったらごめんなさいですよ?」



P「ああ、悪いな。春香」



春香「本当ですよ。私にも何か買ってくれないと許しませんよーだ」



P「そうだな……時間はあるし、ゆっくり買い物するか」



春香「えへへっ、はいっ!」



終わり



ごめん全然終わってない。いろいろ抜けてた





P「なぁ、春香」



春香「なんですか?」



P「春香はトップアイドルになりたいんだよな」



春香「もちろんですよ」



春香「プロデューサーさんと約束だってしましたし」



P「……………………」



春香「……プロデューサーさん?」



P「……………………」



P「……そっか」



春香「どうかしたんですか?」



P「いや、別に……」



春香「……………………」クスッ



春香「……大丈夫ですよ。プロデューサーさん」



P「春香?」



春香「私はプロデューサーさんが好きだから」ギュッ



P「っ! は、春香!?」



春香「だからトップアイドルになっても、なれなくても」



春香「なったあとだってずっと……私はプロデューサーさんと一緒ですよ」



P「…………………」



春香「………………」



P「……焦らなくていいってことか」



春香「そうとも言いますね」



P「じゃぁ、もう少し待つよ」



春香「はい」



P「だから必ず……トップアイドルになろうな。春香」



春香「はいっ!」





俺達は手を固く結び、デパートまでの道を二人並んで歩いて行った



これで本当の終わり







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