2014年08月13日

雪歩「よろしくお願いしますプロデューサー」

「もしかして……ナンパ屋さん?」



それが初めて彼女と会った時に言われた言葉だった



ナンパ師に間違われるなんて人生で初めてのことだった





もちろん俺はナンパ師等ではない、生憎自分にそこまでの自信はもちあわせていない



俺は彼女のプロデューサーだ



そのことを伝えると彼女はとてもうれしそうだった



その姿はとても魅力的で彼女はきっとトップアイドルになれるだろうと俺は確信した



それが俺と雪歩の出会いだった



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1396440777



デビューしてからというもの全てが順調に進んだ



ファンがどんどん増えていき、俺も雪歩も嬉しかった



これも一重に雪歩の魅力のおかげだろう



そんなことを言うと彼女はすぐに否定するがそれもまた魅力の一つと言えるだろう



俺は完璧に雪歩に惚れ込んでいた



もちろん性的な意味ではない



プロデューサーとアイドルが恋愛なんてこの業界じゃご法度だ



例えるならば親が子に対して抱く愛情とも言うべきだろうか



とにかく俺はそれほど雪歩に入れ込んでいた

全てが上手くいっている



そんな時だった



俺は社長からある提案を受けた



「アイドルアルティメイトに出てみないかね?」



アイドルアルティメイト……新人のアイドル達が競い合う大会



勝てば一躍トップアイドルになるチャンスでもある一方負けるとトップアイドルになれる可能性はほぼ無くなるだろう



噂によるとアイドルアルティメイトに敗れそのまま引退してしまったアイドルもいるらしい



勝てば一躍トップアイドル しかし負ければそこで夢は終わる



かなりの賭けだが俺は出てみることにした



雪歩ならいける 俺はそう確信していた

最初の予選では驚くほど楽に勝てた



こんなに簡単に勝てていいのだろうかという疑問を抱く程であった



最近は雪歩も自信をつけてきたようだ



この調子なら次の予選も余裕で突破できるだろう



負けた



雪歩は……いや俺はアイドルアルティメイトの予選に敗れた



雪歩のせいではない



彼女の能力を引き出せなかった俺のせいである



「……おつかれさまでした」



そういい雪歩は事務所から出ていった



きっと雪歩のことだから自分に責任があると思っているのだろう



「IUについては残念だったね……今後の方針はまた明日話すとしよう」



社長からそう言われても俺は返事をする気にもならなかった



もし俺がこの記憶を引き継げるならどうするだろうか



そんなくだらないことを考えていた

気がつくと俺はベットの上で寝ていた



あれからの記憶が一切ない よほどショックだったのだろう



会社には行きたくないが雪歩のこれからを考えなければならないだろう



俺の責任であるので行かないというのはあまりにも無責任だ



重い気持ちを引きずりながら俺は家を出た

「おーい君ィ。君だよ君ィ」



いつも通り会社に行こうとするといきなり声をかけられた



「うむ、ティンときた。君プロデューサーになってみないかね?」



「社長……何してるんですか?」



それは誰でもなく我が765プロの社長であった



「ん?私が社長とよくわかったね!ますます見込みのある男だ!ささ、こっちにきたまえ」



わけもわからず俺は自分の会社に案内された

単純に言うと俺はループ現象というのを体験していた



あのあと俺は雪歩に会いまたナンパ屋と間違われた



どうやらこの現象は俺がアイドルアルティメイトに敗れると発生するらしい



つまり俺は雪歩をアイドルアルティメイトに優勝するまで面倒を見れるということだ



これほど嬉しいことはない



そんなことを気楽に思えたのは最初だけだった

ループ現象と聞くと自分の納得のいくまで何度でも繰り返せるという良い面しか見えないかもしれない



しかしそれは上手くいった時の結果論にすぎない



俺は最初に雪歩と会った時を1周目とすると現在13週目の世界にいる



3週目辺りまでは順調に前の週までに負けていた予選を突破することができた



問題はそこからだった



4週目からは段々と失速していき7週目になるとついには6週目には突破できていたはずの予選にまで落ちていた



雪歩のせいではないことは確かだ



雪歩の能力自体は1周目と全く変わっていない



紛れもなく俺のせいだ

そんなことはわかっているのに俺は遂にやってはいけないことをした



16週目雪歩にあたりちらしてしまった



普通の俺ならそんなことは一切しないだろう



なんといっても雪歩とはかなりの時間を過ごしている



例え雪歩にその記憶がなくても



そこまでわかっているのに俺は雪歩に怒鳴った



あの時の雪歩の顔は忘れることができない



今までに見たことがない顔だった



もう俺はダメなのかもしれない



そう客観的に認識した



その次の週で俺は……

「……ただいま」



誰もいない部屋に語りかける



そしてテレビを点ける



この一連の動作は俺の癖になっていた



点けたテレビを見ると雪歩が楽しそうに歌っていた



あのループ現象が終わってから1年がたった



といっても俺と雪歩が上手くいっているわけではない



もしもまだ俺が雪歩のプロデューサーを続けていたとしたらのんきに家に帰ってきてる場合ではないだろう



最後の週であろう17週目の世界で俺はいつものように社長に声をかけられたが



「お、おい、どこに行くんだね?」



社長の声を無視するのはつらかったがこれも雪歩のためだと思い必死に耐えた



それから俺は普通の会社に入社し今に至る



あれからループ現象は起こっていない



俺が社長の勧誘を断ってから半年程経つと雪歩がテレビによくでてくるようになった



俺の後に入ったプロデューサーが有能だったのだろう



これでよかったんだ



俺がプロデューサーを続けていたとしても雪歩は延々とループを繰り返しトップアイドルになれなかっただろう



これでよかった

「……ごめんな」



画面に映る雪歩を見ながら俺はつぶやいた



俺は誰に謝ったのだろうか



誰にも迷惑はかけていない



むしろループしないほうが良いことだらけだ



「ごめんな……」



それでも俺は止められなかった



暗い部屋の中、画面に映る雪歩だけが笑っていた



おわり



17:30│萩原雪歩 
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