2014年08月24日

杏「夏の黄金比」




ジリジリジリジリ







杏「……」



杏「……んー」



杏「……」



杏「ぐああー……」



杏「……」





ジリジリジリジリ





杏「……」



杏「……あつい〜」



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P「おーい」



杏「!」



P「すまん、待たせたな」



杏「もう、遅いよプロデューサー、アイス買いに行くだけでどれだけかかるの」



P「仕方ないだろ、中々売ってるとこが見つからなかったんだから」



杏「杏、もう待たされすぎて疲れたから帰る……」



P「お前が『暑くてアイスないと死ぬ、アイスないともう動けない』とか言うから買ってきたんだろうが」



P「ほら、ちゃんと買ってきたんだからしゃんと動け」



杏「えー」



杏「というかそもそもだよ……杏、夏休み貰えたんだよね?」



P「ああ」



杏「休みって家でゴロゴロ出来るんじゃないの……なんで出掛けないといけないんだ……」



P「破格で休み一週間もやったんだから、一日くらい出掛けるのはいいだろ」



杏「休みは一日足りとも無駄にしたくない、これが杏の矜恃だよ!」



P「お前がそうやって家で腐り切ってそうだからワザワザ誘ったんだ……まぁ、きらりもいるんだからさ、文句言うなよ」



杏「そのきらりに会いに行くのが一番辛いんだけど……なんで歩いていかないといけないんだ……杏、車がいいな〜」



P「……」



P(前、拓海と車乗ってた時に、俺も昔はぶいぶい言わせてたんだって自慢しようとして免停くらったとか言えない……)



P「……だ、黙って歩け、たまには散歩もいいだろ?」



杏「……ぶー」



P「ほら、それよりもアイス溶けるからさっさと食え」



杏「ん、ありがと……これ、何アイス?」



P「普通のアイスキャンディーだ、みかん味のな」



杏「おー、やるじゃんプロデューサー……ご褒美に杏に飴をくれる権利をあげよう!」



P「飴ばっかだなお前は……でもよかったわ、やっぱりキャンディーなら何でも良いみたいで……そんな俺はハーゲンダッツだが」



杏「ちょ……なんだそれ! 差別だ! 訴えてやる!」



P「おうおう、何処へでも訴えてみろ」



杏「……早苗さんにプロデューサーからいじめられたって訴えてやる!」



P「ごめん待ってくれ」





…………







杏「ふぁーふぇんひゃっふひゃんてうふぉいふぁなふぃでふぉ」



P「アイス咥えながら喋るな」



杏「……ん」



杏「ハーゲンダッツ買ってきたなんて嘘、なんで言ったの? 結局プロデューサーもアイスキャンディーじゃん」



P「別にノリだよノリ、高いから買えるわけないだろ?」



杏「……あれ、というかもうアイス食べ終わったんだ」



P「おう」



杏「えー、ソーダ味食べてみたかったのに」



P「お前なぁ……俺の食いかけ食べる気なの? 抵抗とか感じないのかよ」



杏「そんなの気にしない気にしない、変に意識する方があれでしょ?」



P「いや、お前は仮にもアイドルなんだから意識しろよ」



杏「……じゃあプロデューサーは杏の食べかけとか変に意識してるんだ?」



P「変にって……まぁ一応な」



P「でも別にお前のことを意識してるから、とかでは全然ないから安心しろ……アイドルとプロデューサーだからだ」



杏「……ふーん」



P「だいたいお前はいつもそうだ、もっと自覚を……もがっ!」



P「ふぉ、ふぉまえ……プハッ……人が喋ってる時にアイス突っ込んでくるなよ!」



P「しかも言ったそばから人に食いかけを……」



杏「それ、もう飽きちゃった、残り全部プロデューサーにあげる」



P「……」



P「……せっかく買ってきてやったのに」





…………







P「きらりの家、そろそろ着くな」



杏「うう……遠かった……」



P「そこまでじゃなかったろ」



P「だいたい、お前は結構きらりの家遊びに行くこと多いんじゃないか?」



杏「そりゃ、きらりの家にはもう数え切れない程言ってるけど」



P「それなら慣れ親しんだ距離だろ」



杏「……杏、きらりの家行く時はだいたいきらりにおぶられてたからな〜」



P「……」



杏「あ、そうだ、プロデューサー杏のことおぶってくれてもいいんだよ?」



P「お、家見えたな……この調子だと祭りにもゆっくり行けそうだ」



杏「無視するなー!」





………







P「……」ピンポーン



P「……」



杏「……」



P「……」



杏「……出ないね」



P「ああ、もっかい呼び鈴鳴らしてみ……」



きらり「にょわー!!」ガチャン



P「ぶべっ!」ドゴッ



杏「あ」



きらり「杏ちゃんだー! 待ってたよー☆」



きらり「……あれ、Pちゃんは? 一緒じゃ無いのかにぃ?」



杏「一緒だったけど……今亡き者になったところかな……」



きらり「……?」



P「あが……が……」



きらり「……にょわっ!?」



杏「それじゃ、杏はお先におじゃましまーす」



P「いてて……」



きらり「ごめん、ごめんにぃ……きらり、気付かなくて……」



P「い、いや、いいよ……怪我も無かったしな」



きらり「Pちゃんも早くお家入って! きらり、バンソーコー貼るにぃ!」



P「バンソーコーって……血が出たとかいうわけじゃないんだし……」



P「それよりも早く準備済ましてくれよ、俺は外で待ってるから」



きらり「そんなのダメダメー! Pちゃんも入るのー!」



P「お、おわっ……引っ張るな……」



杏「きらりー、杏のってこのピンク色の奴だったよねー?」



きらり「あ……そうだよー、すぐきらりも行くから待っててにぃ!」



P「……ピンク? あいつ、何してるんだ?」



きらり「……」



P「……きらり?」



きらり「にゅふ」



きらり「にゅふふふふふふ……」



きらり「やっぱりPちゃんはちょーっとだけここで待ってて! 傷の手当てはここですゆ!」



P「お、おう……?」



きらり「それが終わったらね……きらりと杏ちゃんは変身してくるのだっ!」



きらり「楽しみにしててねー☆」





…………







杏「……どやっ!」



きらり「うぇへへー☆」



P「……」



杏「……」



きらり「……」



杏「……どや」



きらり「……うぇへへー」



P「……」



杏「……」



きらり「……」



杏「どやぁ……」



きらり「にょわー……」



P「……」



P「……浴衣か」



杏「遅いよっ!」



杏「せっかく杏達が時間かけて着替えて来てあげたって言うのに……なんだその反応……」



P「いや、その、ほら……見惚れてたんだよ」



杏「そんな適当なこと言って杏達が……」



きらり「うきゃー! み、見惚れて……ちょ、ちょっとハズイかもー……きゃー!!」



杏「……」



杏「……まぁいいや」



P「しかし冗談抜きで似合ってるぞお前ら、流石はアイドルだな」



杏「ふふん、飴くれ」



P「なんでだよ」



きらり「きらりも杏ちゃんも楽しみだったんだー、和服なんて初詣以来だにぃ」



P「あー、そういやそうか……だから杏も今日は文句言いながらもちゃんと時間通りに来てたんだな」



P「はは、浴衣が着たかったなんて可愛いとこあるじゃないか」



きらり「……」



きらり「……んー」



P「……? どうしたきらり?」



きらり「……なんでもにゃー☆」



P「そうか?」



杏「というかプロデューサー、まるでいつも杏が可愛くないみたいに言わないでよ」



P「あーはい可愛い可愛い、いつも可愛い」



杏「おざなりだなー……杏はやり直しを要求する!」



P「断る……ん、あれ?」ズイッ



杏「わっ……!」



P「お前、化粧してるの?」



杏「……急に顔近づけないでよ、ビックリしたじゃんか」



P「珍しいなお前が化粧してるなんて」



杏「珍しいってなんだ、一応杏も女の子なんだからなー」



杏「まぁ……殆どきらりにやってもらったけど」



P「いいじゃん、可愛いぞ」



杏「……そう?」



P「おう」



杏「……」



杏「……あ、飴くれ!」



P「お前褒められると飴せびるの……?」



P「さ、それじゃ準備も出来たみたいだし……ほれ」



杏「……ん? 何これ?」



P「お小遣いだ、二人で楽しんでこい」



杏「二人でって……」



きらり「Pちゃん、お祭り行かないの?」



P「いや、俺も途中まで一緒に行くけど……祭りの最中は俺みたいなおっさんがいるより二人で遊んだ方が楽しいだろ」



杏「えー……なにそれ、プロデューサーが誘って来たんでしょー?」



P「お前が家で腐ってるのが心配だっただけだからな、俺の目的はお前を無理矢理外で遊ばすことだったし」



杏「よ、余計なお世話過ぎる……というかプロデューサーがいてもいなくても変わらないって、杏達は気にしないよ?」



きらり「Pちゃんがいないときらり寂しいにぃ……」



P「んー、けどなぁ……いいよ、俺は一人でのんびり酒でも飲んでるから」



杏「……」



杏「……そ、りょーかい」



杏「まぁでも、こんなお金はいらないかな……」



P「いいっていいって、たまには大人らしいことやらせてくれ」



杏「いらないってば」



P「いいから取っとけ、きらりと仲良く分けろよ?」



杏「じゃあきらりに全部あげてよ……杏はいいから」



P「へ……?」



きらり「……にょわ?」



杏「……」



P「……あ、あれだ、別に裏は無くて……受けとったら仕事増やすとかそういうことするつもりもないぞ?」



P「だからほら、普通に貰ってくれればいいんだが……」



杏「……いらないって言ってるじゃんか」



P「……」



杏「……」



P「……杏?」



杏「……」



P「……なんか、怒らしたか?」



杏「……いや、別に」



杏「あー……でもごめん、なんかちょっと変な感じにしちゃったね」



杏「……お祭り、行ってくる……お小遣いはもう返さないからなっ!」



P「お、おう、いや……取り返すつもりないし安心しろ」



きらり「……」



杏「よし、じゃあ行こうよきらり」



きらり「……」



杏「……きらり?」



きらり「……あー!」



杏「わっ……ど、どうしたの?」



きらり「ごめんにぃ、Pちゃん、杏ちゃん……きらり今日、お母さんとお父さんもお祭りに来るって言ってたの今思い出したよ!」



きらり「会うのおひさだし……お父さんにきらりの着物姿見せてあげたいから、ちょっとだけ別行動してもいいかなぁー……?」



杏「えっ……」



P「おま……今更……」



きらり「ほんっとーにごめんにぃ! だからPちゃん……杏ちゃんをおにゃーしゃー!」



P「……」



杏「……」



きらり「……杏ちゃん」



杏「な、何……?」



きらり「にゅふふ……いっぱい、いーっぱいはぴはぴしてね☆」



杏「……」





…………







P「……」テクテク



杏「……」テクテク



P「……」



P(夏祭り……会場にはついたけど……)



P「……」チラッ



杏「ふわぁ……」



P「……い、いやー、お祭りだな……夏って感じだなぁ」



杏「……そうだね」



P「……」



杏「……」



P「……人、多いな」



杏「うん、ちょっと面倒くさい」



P「……お、お面売ってるぞ! 何かいるか?」



杏「んー、ま……別にいいや」



P「そ、そうか……」



杏「……」



P「……」



P「なぁ、杏……」



杏「……ん?」



P「まぁその、落ち込むなよ」



P「きらりの代わりにこんなおっさん同伴で残念かもだけど……ほ、ほら! きらりも親御さんと会うだけなんだから、途中からなら合流出来るだろうし……それまでは俺が何でも買ってやるから!」



杏「……」



杏「……ね、プロデューサー」



P「な、なんだ……何が欲しい? 焼きそばか? たこ焼きか?」



杏「えー……じゃあ杏、プロデューサーに甘える権利が欲しいな〜」



P「へっ……」



杏「……ドキッとした?」



P「え、あ……」



杏「さっきもだけど……プロデューサーは杏達に気を使い過ぎだって」



杏「プロデューサーはこんなにも可愛い着物姿の女の子と二人っきりでお祭り行けるんだから、もっと楽しまないと損だよ?」



P「……」



杏「……えいっ」ガシッ



P「うおっ、手、手を……」



杏「お祭りと言えばまずりんご飴だ! 今日は杏を存分に甘やかしてもらうからなっ!」グイッ



P「……」



杏「……」グイッグイッ



杏「……いや、ここはこう、杏に引っ張られて動いてよ……なんだか杏、凄い馬鹿みたいじゃんか……」





…………







杏「りんご飴うまー」



P「あ、甘すぎるなこれ……昔は好きだったが……」



杏「ん、食べないのそれ? 貰ってもいい?」



P「いや、食いかけだし……というかさっきも言ったけどお前はもっと自覚をだな……」



杏「アイドルのせいでりんご飴貰えないなら杏はアイドルなんて辞める決意だ!」



P「大げさな……」



杏「いいじゃん、プロデューサーだって今日杏の食べかけのアイス食べたでしょ、だからもう気にしないでいいって」



P「あれはお前が無理やり食わせてきたんだろ」



杏「それなら今度は無理矢理奪い取るまで……えいっ!」



P「あっ」



杏「……んー、おいし……これが美味しくないだなんて人生の九割は損してるなぁプロデューサー」



P「ちょ……お前な」



杏「……どうするの? 奪い返す? もう杏が舐めちゃったけどね〜」



杏「だからプロデューサーが奪い返してもプロデューサーはこれを食べれない! どうだこの完璧な作戦!」



P「おらっ」



杏「あっ、と、とるなーっ!」



P「……捨てるかこれ」



杏「……もう! プロデューサーさっきから気にしすぎだって……童貞でしょ!」



P「どどど童貞は関係ないだろうが!」



杏「あ、やっぱりそうなんだ」



P「やっぱりってどういう意味だ!」



P「……」



P(結局……渡してしまった……)



杏「んまー……♪」



P(……)



P(……ま、いいか、気にするのも馬鹿らしくなってきた)



杏「〜♪」



P「……りんご飴両手にもって、幸せそうだな」



杏「まぁねー、杏はりんご飴だけあれば生きていける気が…」





グー





杏「あ……」



P「……」



杏「……」



杏「……てへ?」



P「……なんかそう言っとけばいいみたいなのが腹立つ」



杏「ちゃんとアイドルらしく恥じらってみせたのに……」



P「……適当に飯でも買いに行こう」





…………







杏「ほら、両手ふさがってるから、飴持ってて持ってて」



P「はいはい」



杏「よいしょ……じゃあ早速……」



杏「……はぐ」



杏「……」モグモグ



P「うまいか?」



杏「ん、やっぱりあれだよね、お祭りで食べる焼きそばってなんだか凄く美味しい」



P「あー、確かに分かるかも」



杏「……」モグモグ



P「……」



P「……なぁ」



P「一口くれよそれ」



杏「え」



杏「いいの? 散々食いかけがどうのこうの言ってたくせに……」



P「んー……童貞とか言われたんだ、もう諦めて気にしないことにした」



杏「そ、そんな理由なのか……それは流石にちょっと小さすぎると思うよ……?」



P「い、いいだろ別に、ほら、ちょっとくれ」



杏「ん、いいけど……はい」



P「お、おい……今お前のりんご飴で手がふさがってるんだから食わせろっつの」



杏「……え、それって杏がプロデューサーにあーんさせて食べさせろってこと?」



P「言い方が恥ずかしいが……まぁ……」



杏「……」



杏「じゃあ……だめ」



P「は?」



杏「……この焼きそばは全部杏のものだ、誰にもくれてやらないもんね」



P「え、えぇ……?」





…………







P「焼き鳥うまー」



P「いやぁ、ビールが欲しくなるなぁ」



杏「飲んだら? ほら、あそこ売ってるよ」



P「んー、まぁでも一応お前の付き添いだし……」



杏「だから杏に気を使い過ぎだって……はぁ」



P「けどお前、俺が酔い潰れたりして、帰りに運んでもらうこととかになったらあれだろ?」



杏「いーよいーよ、その時はプロデューサー置いて帰るもん」



P「ひでえな……少しくらい優しいとこ見せろよお前は」



杏「杏は運ばれる側だもんね〜、運ぶなんて杏の辞書には乗ってないよ」



杏「ということでプロデューサー……杏を運んでっ」



P「……足、疲れたのか?」



杏「うん」



P「まぁ嫌だけど……」



杏「え〜、なんならほら、抱っこでもいいから運んでよ……プロデューサーならちょっとくらいサービスで変なとこ触っても許すから、ね?」



P「お前を触るのがどこがサービスになってんだ……早苗さんとかならともかく」



杏「杏がこんなに疲れてるって言ってるのになんて酷……ん?」



杏「……あ、ヨーヨー釣りだ! 行こうプロデューサー!」タタタッ



P「……」



P「……元気じゃねえか」





…………







杏「……」バインバイン



P「……」



杏「……」バインバイン



P「その、なんだ……」



P「……落ち込むなよ」



杏「違うよ……杏の思ってたのとなんか違う……」



P「あれはその、慣れだから……ほら、一個タダで貰えたんだからいいだろ?」



杏「瞬殺されたんだもん……隣で杏より小さい子が杏見て笑ったんだよ? 泣いてもいいの杏?」



P「ヨーヨー釣り失敗したぐらいで泣かないでくれ……ほら、まだまだ射的や輪投げもあるし、色々ゲーム出来るぞ?」



杏「射的、輪投げ……」



P「おう! スーパーボール掬い、金魚掬いだってある!」



杏「お、おお……よし、行こうプロデューサー!」





…………







P「……いやぁ! 楽しいなぁ夏祭り!」



杏「そうだね、楽しいね」



杏「ヨーヨー釣りは完敗、射的でも景品何も取れなくて、輪投げは残念賞のお菓子で、ボールもろくに掬えなくて……金魚は掬えたと思ったら、プロデューサーに育てられないからダメって返されたけど」



P「……」



P「たの、楽しいんだよな」



杏「うん、楽しいよー」



P「……」



杏「……」



P「あ、あれだ……ほら! まだ色々あるぞ! 色々楽しもう!」



杏「色々って……どんな?」



P「それは……」



杏「……んー、夏祭りって思ったよりやることは何もないんだよね」



P「……い、いいや、まだまだ」



P「ほら! あそこに……スーパーボール掬いが!」



杏「さっきやったよ……それよりプロデューサー」



P「な、なんだ? なんかやりたいのあったか?」



杏「杏、杏ね……」



P「うんうん」



杏「もう帰りたい……」



P「……うん?」



杏「帰ってダラダラしたいよ……」



P「……」



P「……うん」



P「……その、もう夏祭りいいの?」



杏「うん」



P「……楽しくなかったか?」



杏「え、いや、楽しかったよ、それは本当」



杏「でも、飴もお菓子も一杯食べて、夏祭りの屋台一通り遊び終わっちゃったから……もう杏的にはいいかなー」



P「まだもう少し待てば花火もあるし、ラムネ早飲み大会とかもあるぞ?」



P「それに、きらりだってそろそろ合流出来るかもだし」



杏「あ、花火はちょっと見たいかも……けど、きらりかぁ……きらりは今日もう夏祭りじゃ会えない気がする……」



P「へ?」



杏「なんだかなぁ……気を遣わせたみたいで悪かったんだけど……きらり、ちょっと勘違いしてる気がするんだよなー」



P「勘違いって……何を?」



杏「んと、あれだよ……杏はね、別にそんなんじゃなくて……プロデューサーときらりと三人が……」



杏「……」



杏「やっぱいいや、なんでもない……とにかく、多分きらりは無理だと思うよ? 一応連絡はしとくけどさ」



P「そうなのか……?」



杏「だからまぁ……杏、早いとこきらりの家に帰ってダラダラときらりを待っときたいかな」



P「きらりの家に戻るにしても……鍵は?」



杏「合鍵はもってる、昔渡された」



P「……ちょっと引くぐらいに仲良いなお前ら」



杏「そんじゃま、案外プロデューサーと二人っきりってのも悪くなかったし……そろそろ帰ろうよ」



P「んー……じゃあ、そうするか」



P「そうだ、帰るついでに最後クジでもひいてこう」



杏「おー、いいね……面白そうなゲームソフト当てれるまでひかせてくれる?」



P「一回だけだボケ……ん?」



P「……あれ、お前そう言えばいつの間にか消えたけど、りんご飴どこやった?」



杏「……食べきれなかったから、保存しといた」



P「保存って……どこに?」



杏「プロデューサーの……いや、なんでもない」



P「……」





…………







杏「う、うう……痛かった……」テクテク



P「いつの間に俺の鞄に入れてやがったんだ全く……」テクテク



杏「いいじゃんか、飴部分は食べきったのに……紙でちゃんとくるんで入れたのに〜」



P「どっちにしろ俺に一声掛けて入れるんだったな」



杏「ぐぅ……体罰で訴えてやる……」



P「体罰って……先生かよ俺は」



杏「プロデューサーが先生か……やだなぁ」



P「俺がお前が生徒なのは嫌だよ、プロデュースするのだけでも辛いのに」



杏「ひどいなーそれ……」



P「酷いのはお前だ」



杏「……やっぱひどい」



P「それよりだな」



杏「ん?」



P「これ、どうする?」



杏「……プロデューサーが無駄なとこで運使うから」



P「俺もまさかこんなでかい花火セット当たるとは思わなくて……」



P「二人でやるには多いし……かといって事務所の皆集めてやる程たいしたもんじゃないし……」



杏「帰って三人でやろうよ、それでいいじゃん」



P「……それでも多いぞ?」



杏「それなら……んーと……」



杏「あれだ、今からどっか近くの公園でも行こう」



P「なんで?」



杏「ほら、帰るついでに二人でちょっとだけ花火しといて、帰った後にきらりと三人でする……そんな風に分けたら丁度いいかもでしょ?」





…………







[公園内での花火禁止]







P「……」



杏「……」



P「……そういうもんだよな」



P「せっかくバケツやライター買って来たのに……」



杏「……」



P「杏、仕方ないがここは……」



杏「……」ゴソゴソ



P「……って、おい! 何で花火出してるんだ!」



杏「いいよちょっとくらい……いや、よくないけど……でも、公園で花火出来ないって、杏達どこでやればいいのさ」



P「そ、それは……けど、違反になるのはダメだろう」



杏「……」



杏「……じゃ、一個だけ……はい」



P「……?」



杏「線香花火一個ずつだけやって帰ろ、なんかこのまま帰るのはやだ」



P「……」



杏「ほんの、ちょっとだけだから……ダメ?」



P「……一個だけだぞ」



杏「りょーかい、りょーかい……それじゃ早く火つけてー」



P「待ってろ……よっと」





パチパチ





杏「……」



P「……」





パチパチ





杏「……しょぼい」



P「……お前は線香花火に何期待してんだ」



杏「いや、でもほら……漫画とかでは凄くバチバチして……線香花火ってこんなだっけ?」



P「何の漫画か知らんが、これはこの儚い感じを楽しむもんだろ?」



杏「……もっと派手でもいいのに」





パチパチ





杏「……」



P「……」



杏「……ね」



P「ん?」



杏「夏の終わりに二人で線香花火って……杏達カップルに見えたりしてるんじゃない?」



P「いや、見えても兄妹かなんかだろ」



杏「えー……なんだよ全く、少しくらい照れてもいいじゃんか」



P「お前に対して勘違いはしねえよ、それっぽいこと言ってからかっても無駄だっての」



杏「……夏だし、ちょっとした勘違いくらいいいんじゃない?」



P「夏関係あるのか?」



杏「まー、きらりも勘違いしてたみたいだし……」



P「……さっきも言ってたけど、きらりの勘違いってなんだよ」



杏「なんだろーね……って、うわっ」





バチバチバチバチ





杏「プ、プロデューサー……! な、なんか急に大きく……!」



P「お、ちょっと派手になってきたか……よかったな」



杏「こ、これ、大丈夫なの? 手に届かないよね?」



P「大丈夫だ、そのまま持ってろ」



杏「持ってろって言っても……なんだか凄いプルプルして……あ」ポトッ



杏「……」



P「……はは、残念だったな」



杏「……えいっ」



P「ちょ……おい、揺らすな……あ」ポトッ



P「……」



P「……おい、お前、何してくれてるんだ」



杏「……」



P「……杏?」



杏「勘違いだと……思うんだけどなぁ」



P「……?」



杏「ま、いっか……んしょっ」



P「ぐおっ、の、乗っかるな馬鹿!」



杏「よし……じゃあ花火も終わったし今度こそ帰ろうプロデューサー」



P「……帰るにしても、ちゃんと水捨てたり後片付けしないといけないだろ……早く降りろ」



杏「えー、杏は一度装備されたら外れないよ? だから杏を背負ったまま頑張ってー」



P「……はぁ、しかし結局、なんだか夏祭りも花火も中途半端感は否めなかったかな」



杏「そう? さっきも言ったけどさ、杏はけっこー楽しめたよ?」



P「それならいいが……」



杏「……」



杏「……プロデューサー」



P「なんだ?」



杏「また来年、二人で夏祭り行こうね」



P「……きらりはどうしたんだ」



杏「きらりとも別で二人で行く」



P「それなら来年こそ、三人で行けばいいだろ?」



杏「んー、そうなんだけど……まぁ、別にいいじゃんか」



杏「とにかく、プロデューサーは来年も二人で杏と夏祭り行く、そして杏にりんご飴買う、そういうことでよろしく」



P「……来年のこの時期に仕事入ってなかったらな」



杏「……」



杏「プロデューサーは優しいから、来年も夏休みくれるはず……くれるんだよね?」



P「そりゃ、どうだろう」



杏「……あ、杏はプロデューサーを信じてるから」



P「俺を信じられてもダメだ、結局お前の勤務態度次第だよ」



P「来年もまた夏祭り行きたかったら少しは真面目に働くんだな、そしたら休みをくれてやる」



杏「ぐっ、いっつも仕事ばっかりなんだからプロデューサー……」



P「だって、おれはお前の担当プロデューサーだし」



杏「はぁ……しょうがないなぁ」



杏「……」



杏「しょうがないから……来年もちょっとだけ、ほんのちょっとだけだけど頑張ろうかな……」



P「お、珍しいな、そんなこと言うなんて……夏休みは偉大だな」



杏「んー……夏休みもそうだけど……」



杏「……りんご飴と花火のためにねー」









おわり



23:30│双葉杏 
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