2013年11月21日

幸子「思い通りに」

◆更新頻度不明
◆先行き不透明
◆書き溜めなし
◆酔った勢い
◆シンデマスSS


◆GO

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1363099036


母「あら、良い香り」

幸子「ラベンダーですよ、ふふふ」

母「ありがとね、さっちゃん……お母さん、ラベンダーの香り大好きなのよ」

幸子「取ってから一晩経ってますけど、まだまだ香りは持ちそうですね」

母「うんうん……あ〜、癒されるぅ」

幸子「ふふふ、ボクのラベンダーでどんどん癒されちゃってください」


幸子「……あ、そろそろ時間だ」

母「あら、本当ね」

幸子「じゃあ、行ってきますね!お母さん!」

母「うん、いってらっしゃい、さっちゃん」


ギュッ


幸子「……むふぅ」

母「ん〜……さっちゃんはいくつになっても可愛いわねぇ……」

幸子「お、お母さん、遅刻しちゃいますって……」

母「あら、ごめんなさい、うふふ」


幸子「じゃあ、ボクは学校に行ってきますので!」

母「車と自転車には気をつけてね〜?」

幸子「はい、大丈夫ですよ!左右の確認を怠ったことはありませんからね!」

母「うんうん、良い子」


幸子「お母さんもお大事に!それでは!」

母「いってらっしゃ〜い」


ガララ


幸子「おはようございます」

「輿水さん、おはよ」

幸子「はい、おはようございます」

「あ!輿水さん、昨日の数学のノート書いた?」

幸子「書いてますけど……」

「ごめん、一時間目だけ貸してくれない?」

幸子「ええ、良いですよ、えっと……はい、これですね」

「ありがとー」


キィ


幸子(……さて)

幸子(勉強、頑張ろう!)


≪本日のゲストはこちら! 今もっとも輝く中華風アイドル、羽田みーちゃんでーす!≫

≪えへへ〜! こんばんはですぅ〜!≫


父「……うまい」

幸子「ありがとうございます」


≪TOP10入り、おめでとうございます!≫

≪ありがとうございますぅ〜≫


父「学校、どうだ」

幸子「いつも通りですよ、お父さん」

父「そうか」


≪では早速、スタンバイの方よろしくお願いします!≫

≪はぁ〜い!≫


幸子「……あ、今日」

父「まったく、浮ついた番組だな」ピッ

幸子「え?」


≪……では、紅葉の見ごろがピークを迎え、大勢の観光客が……≫


父「今日、どうした」

幸子「あ、別に大したことじゃないんです」


幸子「お母さん、ボクが集めたラベンダー、すごい気に入ってくれましたよ」

父「……そうか、良かったな」

幸子「ふふ」


幸子(……アイドルかぁ)


幸子(全然、別世界すぎますよ)

幸子(だってボクは将来、ちゃんと学校を卒業して……)

幸子(お父さんと一緒に、お母さんを支えていかなきゃいけないもの)


幸子(……お父さんの言うとおり、ちょっと、浮ついてますよ)

幸子(……アイドルなんて)



幸子「お母さん」

母「あら、幸子」

幸子「今日も来ましたよ、具合はどうです?」

母「おかげさまで、良いみたい」

幸子「ふふ、それは良かったです。……タオル、新しいのここに入れておきますからね」

母「いつもありがとう」

幸子「他に持ってきてほしいものがあれば言ってくださいね!」

母「うーん、今は特にないかな」


母「……暖かい陽射し。良い朝ねぇ」


コトッ


幸子「水、替えましたからね」

母「あら、さっちゃんありが……」

幸子「?」

母「そのまま、ちょっと動かないで、そのままでいて?」

幸子「……?」


母「……花瓶と幸子、よく似合ってるわ」

幸子「えっ? そう、ですかね」

母「ええ、とっても可愛いわ〜」

幸子「……お母さん、ボク、そんな可愛いですか?」

母「うん、とっても!」

幸子「……えへ、えへへっ」


幸子(今までそこまで意識していなかったけど、ボクって本当に、可愛いのかな……)


ガララ


幸子「おはようござ……」

「えーっ!ありあねっちダメだったのー!?」

幸子(すごい盛り上がってる……)


「ええ、そのアイドル事務所の人を見つけたので、直接お話をしようと思って……」

「それで……」

「困ったような顔をされて……断られてしまいました」

「ありあねっちを振るなんて! こんな綺麗なのに!」

「あーあ、大学なんて行かずにアイドルやりたいなぁ〜!」


幸子(……)

幸子(あの人……学年でもかなり綺麗って評判なのに、それでも断られちゃうんだ)

幸子(誰にでも声をかけてるわけじゃあ無いってこと、なんですね……)


「輿水さん、ごめん!現国のノート見せてくれる!?」

幸子「あ、良いですよ」


トントントン・・・


幸子「……」


トン・・・


幸子「…………」

幸子「……」


幸子「……よし」


トントントン・・・


幸子「もうすぐ出来ますからねー」

「ん」


《……市の公道で、謎の白い物体が飛び跳ねているとの通報を受けた警察が駆けつけ……》


父「うまい」

幸子「ありがとうございます」


《……食品の組織と思しき物体が残され、生物と関連があるとして調査……》

《次のニュースは、交流戦で見事優勝をおさめたキャッツの監督……》


幸子(……)

父「幸子」

幸子「っ、は、はい」

父「学校、どうだ」

幸子「うん、いつも通りですよ、お父さん」

父「そうか」


幸子「……お父さん、あの、ボク」

父「なんだ」

幸子「……ちょっとだけ気になる部活、見つけたんです」

父「速記部はどうした」

幸子「あ、速記もちゃんとやってます、けど、活動が疎らなので、今は……」

父「新しい部活か」

幸子「……」


幸子「その部活にも掛け持ちで入部すると、その、帰りが遅くなっちゃうし、大変なんですよね」

父「うむ」

幸子「……」


幸子(お父さん、厳しい人だし、無理だよ)

幸子(お母さんもいる、ご飯の支度も、家事だって……)

幸子(……ボク、何してるんだろ、正気じゃないですよ)


幸子「……経験者じゃないと難しいところもあるみたいで」

父「そうなのか」

幸子「ええ、それに、ちょっと苦手な先輩もいて、怖くてやめました」

父「そうか……」


幸子「……」

幸子(寝れない……)


幸子(早く寝なきゃいけないのに……)

幸子(これじゃ、あと5時間しか眠れない……)


幸子(……)


幸子(羊が一匹、羊が二匹……)


幸子(羊が五十二匹……羊が五十三匹……)


幸子(……羊が……えっと、三百……えっと)

幸子(あれ? 今何匹だっけ……あれ……)


幸子(……寝よう)


( *・∀・) ( みくちゃんのファンやめます >


( *・∀・)ナンデヤ・・・

幸子「お母さん、おはようございます」

母「あら、さっちゃーん……って、どうしたの?」

幸子「へ?」

母「さては昨日、夜更かししてたわね?」

幸子「え?わわ、か、顔に出てますか!?」

母「鏡をごらんなさ〜い」


幸子「……あ〜」

母「だめよー、ちゃんと美容も気にしないと」

幸子「……そうですね、見た目には……」


幸子「……」

母「? どうしたの?」

幸子「ふふ、ボクはアイドルじゃあないんですから、そんなに神経質にならなくても大丈夫ですよ」

母「あらっ、そんなことないわよ? さっちゃんは十分、アイドルになれる素質を持ってるわよ」


幸子「……アイドルって……」

母「私の子なんだもの! 世界一可愛い幸子が、アイドルになれないわけがないわ!」

幸子「世界一って……」

母「世界一よっ」


母「優しくて、かわいくて、勉強もできる。こんな完璧な子、どこを探したっていないわよ〜?」

幸子「……ふふ、もう、そんな風におだてられたって、無駄ですからね」

母「そう?残念……」


幸子(……大学を出ないと、どうしようもないですからね)

幸子(お父さんに楽をさせるためにも、お母さんに心配を掛けさせないためにも、それが一番なんです)


幸子「はっ、はっ、はっ……!」


タタタタ・・・


幸子「ち、遅刻するぅ〜……!」


幸子(眠気もあるせいか、ぼーっとしたままお母さんと話し込んじゃった!)

幸子(急がないと、朝のHR間に合わない!)


タタタタ・・・


ガラララッ


幸子(間に合った!?)

幸子(……良かった! まだ先生は来てない……)


「……」

「……」

「……」


幸子(みたい……だけど……)

幸子(……なんでしょう、やけに教室が、静かな感じ……)


ガタッ


幸子(……間に合ったは良いけれど)

幸子(みんな、いつになく静かで……)


「……あねっち、どうする」

「……いいんです、私は……」


幸子(それに、なんとなく、みんな……ボクのほうを見てる気がする?)

幸子(鈍いボクにでもわかる。すっごく冷めた視線)


幸子(……ボク、何か目をつけられるような事した?)

幸子(してないよね?……してないはず、ですけど)


幸子(……居心地悪いよぉ)


「ここで代入するのが――」


幸子「……」


幸子(胃がキリキリする)

幸子(先生の話すことが、頭に入ってこない)


幸子(……きっと、次の休み時間)

幸子(そうでもなければ……お昼休み)

幸子(ボクは、みんなから何かを言われる、そんな気がする)


幸子(なんて言われるんだろう……怒られるのかな)

幸子(それとも、ただの無視とか……イジメ、とか……)


幸子(どっちもいやだけど……)

幸子(私は何もしていないよね? 悪いことはしていないですよね?)


幸子(それだけが、今は心配……)


キーンコーン カーンコーン


たびたび“ボク”が“私”になってしまうのは
愛の足りなさゆえ

(*・∀・) ヾ(・∀・* )一発芸 ヤルデナ


(*・∀・) ∈(・∀・∈*)ニョキッ


(*・∀・) ∈(・∀・∈*)クルト


幸子(あれから、日々がぎこちない)

幸子(学校が、息苦しい場所になってしまいました)


幸子(二日に一回以上はノートを借りに来ていたあの人も、ボクに話しかけなくなりました)

幸子(それはそれで、いいんですけど……)


幸子(今まで一人でいた時とは、全く違う孤独)

幸子(寂しいとか、心細いとか、そういう孤独じゃない)


幸子(……何のミスもできない)

幸子(誰からも頼られない、つまり、誰にも頼れない……そんな空気が、ボクの周りに出来てしまった)


幸子(……辛いなあ)


《今朝七時頃に起きた御沓線人身事故による遅延の影響は正午まで続き……》


父「幸子」

幸子「はい」

父「学校、どうだ」

幸子「大丈夫ですよ、お父さん」

父「そうか」



幸子(……ちょっと、顔色悪いかな)

幸子(最近、ほんと、よく眠れないから……)


幸子(……)

幸子(こんな顔じゃだめですね)


幸子(全然カワイくないです)

幸子(ダメダメです)


幸子(……)

幸子(可愛くなくたっていい)

幸子(もっと、高等部に入った時のために、もっともっと勉強しよう)

幸子(それが一番なんです)


幸子(お父さんにとっても、お母さんにとっても)

幸子(もちろん、ボクにとっても……)


(*・∀・) ヾ(・∀・* )モッカイ ミシタルデナ


(*・∀・) ((*・∀・*) スッ


(*・∀・)  (*・∀・*)イイ!


幸子「おはようございます、お母さん」

母「あら、さっちゃんおはよ……」

幸子「今、お花のお水、替えますからね」

母「……うん、ありがと」


ジョボボ・・・


母「ねえ、さっちゃん、どう?」

幸子「ん?なんですか?お母さん」

母「最近」

幸子「最近? ボクですか?」

母「うん」



幸子「んー」

母「うん」



幸子「別に、大丈夫ですよ?」

母「ん、そう」


キーンコーン カーンコーン


幸子「……」ガタッ


「……ぁ」

「あねっち?」

「あっ、はい、あの……」


幸子「……」

ガラララ



「……」

「どうしたのあねっち?」

「……いえ、なんでもありません」


「あねっち、もしかしてさ」

「……?」


《今朝八時頃に起きた、御沓線への謎の白い置石による遅延により、最大三万人以上の利用者に影響が……》


父「幸子」

幸子「はい」


《武藤鉄道では白い置石に関する調査が行われ、一時間にも及ぶ……》


父「最近、どうだ」

幸子「大丈夫ですよ、お父さん」

父「そうか」


《続いてはスポーツです》

《クリケットの世界大会予選Bブロックが日本で行われ――》

《結果は惜しくも2位となり――》


父「幸子」

幸子「はい?」

父「幸子、箸を置きなさい」

幸子「……?」

父「いいから置きなさい」

幸子「は、はい」


カタッ


幸子「……あの、なんでしょう、お父さん」

父「……」

幸子「……お父さん?」


父「幸子」

(*・∀・)<おわり

08:12│輿水幸子 
相互RSS
Twitter
更新情報をつぶやきます。
記事検索
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計: