2013年11月28日

みく「織姫様と彦星様」

P「ちひろさーん、ドア開けて下さーい」

事務所の外から、プロデューサーの声が聞こえる。どうやら、結構大きなものを持っているようだ。

ちひろ「今手が放せないんで自分でなんとかしてください」


杏「そーだよ、ちゃんと仕事しなよプロデューサー」

P「はいはいわかりましたよ、これ置けば開けられるもん。わかってたよ、誰も手伝ってくれないって……」

ドアを開け事務所内に入るプロデューサーは、大きな箱を抱えていた。
その箱には、「七夕用竹」と書かれている。

P「よいしょっと……これ、割と重いんですよ? ドア開けるくらいしてくれてもいいじゃないですかー」

ちひろ「えーっと、それどうしたんですか?」

P「近くのホームセンターに行ったら売ってましてね、せっかくだしと思って買っちゃいました」

ちひろ「何がせっかくなんですか……言っときますけど経費じゃ落ちませんからね」

P「ですよねー。この竹は人工の奴ですけど、雰囲気出るかなーっと思いまして」

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杏「何? 短冊でもぶら下げんの?」

P「そうだぞ杏! せっかくだからな!」

ちひろ「だから、何がせっかくなんですか……まあいいですけどね、面白そうですし」

P「でしょう? こんなことするの何年ぶりかなー」

杏「杏は小学校のころやったっきりだね。短冊に願い事書けって言われたけどテキトーに書いたよ」

P「お前は昔っからそうなのなー」

杏「まあね」

ちひろ「で、それはどこに飾るんです? と言っても、その辺しかないですけど」

ちひろさんが入口の辺りを指差す。確かに、あの辺なら目立つし、いいんじゃないかな。

P「ちひろさんは目の付け所がシャープですね」

ちひろ「誰かさんが片付けしないから、そこしか置くスペースがないんですよ」

P「スミマセン」

杏「ほらプロデューサー、さっさと飾って飾って。その後に短冊も作らないと」

P「おお、そうだな! よーし俺頑張っちゃうぞー」

ちひろ「プロデューサーさんは本当にちょろいですねえ」

杏「まあ楽できていいんじゃないの? プロデューサーと言うよりただの雑用係だよね、あれ」

うきうきしながら準備するプロデューサーを見て、呆れる二人なのであった。
―Case 1 ちひろ、杏の願い事―
P「よーし、短冊できたー」

プロデューサーの机の上には、たくさんの短冊が出来上がっていた。

杏「……ねえ、何でこんなに作ったの?」

P「いや、少ないよりは多いほうがいいかと」

ちひろ「使わなかった分はメモ帳代わりにしましょう。そのままゴミにしちゃうのはもったいないですからね」

P「そ、そそそうなんですよ! 俺もそうやって使おうと」

杏「思ってなかったよね?」

P「ハイ、スミマセン」

P「じゃあ二人とも、これにお願い事書いてくださいね」

そう言って二人に短冊を渡すプロデューサー。二人とも、きょとんとしている。
ちひろ「……いや、わかってましたけど」

杏「やっぱり、これ書かないと駄目なの?」

P「え、嫌なの? こういう楽しいことはみんなでやったほうがいいかなーと思ったんだけど」

ちひろ「別に、嫌じゃないですけど」

杏「プロデューサーって本当に突然こういうことしたがるよね」

P「だって楽しそうなんだもーん。あ、書き終わったらくださいね、ぶら下げますんで」

杏「いーよ、それは自分でやるから」

ちひろ「んー、願い事、ですかー」

ちひろ「特にこれといって願い事なんてないんですよねえ」

杏「杏もないなー」

P「そこをなんとか! 他のみんなにも書いてもらうから!」ゲザァ

ちひろ「そこで土下座します? もっとタイミング考えましょうよ」

P「なんとか! お願いします!」

杏「できたよプロデューサー。紐ちょーだい」

P「おお! 早いな杏!」
杏「まーねー、杏の才能をなめないでほしいよ」

P「これ書くのに才能っているのか? ……ちょっと何書いたか見せてくれないか?」

杏「いいよ? ほら」ドヤァ

杏がドヤ顔で見せてきた短冊の内容が、こちら。
『働かなくてよくなりますように  杏』

P「はいボツ。やり直し」

杏「何でさ!? いいじゃん杏らしくてー」

P「駄目なものは駄目です! ほらさっさと書きなおす!」

杏「うえー、いい出来だったのになー」

P「はあ、全く……『もっと働けますように  杏』なら許したのに」

杏「杏はそんなこと絶対書かないからね!」

ちひろ「プロデューサーさん、私もできましたー」

P「おお、出来ましたか! ……一応、確認しても?」

ちひろ「いいですよー」

ちひろさんの書いた短冊、それがこちら。
『今年こそ搾り取れますように  ちひろ』
P「あの、何を搾り取るおつもりで?」

悪魔ちひろ「プロデューサーさん! 今日はスタドリ10+4セットがお安いですよ!」

P「はい却下ー! ちひろさんもやり直し!」

ちひろ「えー、そんなー」

P「駄目ですそんなの! 絶対認めませんからね!」

ちひろ「じゃあスタドリ10+4セットに、おまけでエナドリ5つつけますからー」

P「ぐ……絶対買いませんよ! というかそういう問題じゃありません!」

ちひろ「あー、今揺れましたね? お得って思いましたね?」

P「だああああ! さっさと書きなおしてください!」

ちひろ「そこまで言うなら仕方ないですね、じゃあこっちにします」

杏「プロデューサー、出来たよ」

ちひろ「出来ました」

P「おお、出来たか……ちひろさん早っ!」

『いっぱいレアドロしますよーに  杏』
『プロデューサーさんがスタドリとか買ってくれますように  ちひろ』

P「」

あんちひ(ニヤニヤ)

P「お前ら真面目に書けええええええ!」
―Case 2 幸子、菜々の願い事―
幸子「そんなに叫んでどうしたんですかプロデューサーさん、もしかしてボクがいないから情緒不安定になったんですか?」

菜々「おっはよーございます☆ そこで幸子ちゃんと会ったので一緒に来ましたー……おや? こんな所に笹が」

P「あー、今みんなに短冊にお願い事書いてもらってたんですよ」

菜々「そうなんですか、ナナはてっきりうちの事務所にカンカンとランランが」

P「菜々さんそれ以上いけない」

幸子「ふーん……プロデューサーさん、これに書けばいいんですか?」

P「おーそうだぞ。そこの二人は真面目に書いてくれなかったからなあ、今となっては幸子だけが頼りだ」

杏「失礼なこと言うなあプロデューサー」

ちひろ「私たちは真面目にお願い事書きましたよ?」

あんちひ「「ねー」」

P「そこの二人はさっさとまともなお願いを書きなさい!」

菜々「あのー、プロデューサー? ナナもいますよー?」
幸子「こんなの、迷うまでもないですね。プロデューサーさん、これってどうやってぶら下げるんです?」

P「おー、早いな幸子。えっとな、この紐で……おい、なんだこれは」

幸子が一瞬にして書き上げた短冊が、こちら。
『特になし  幸子』

幸子「何を言ってるんですかプロデューサーさん? こんなにカワイイボクに願い事なんてあるわけ無いでしょう?」

P「……あの、幸子さん、せめて何かしら願い事を書いて欲しいんですけど」

幸子「それは難しいですね。こんなにも完璧なボクに願い事なんて」

ちひろ(幸子ちゃん、ちょっとちょっと)

幸子(なんですかちひろさん? ボクには願うようなことは)

ちひろ(あれ、あれ見てください) ユビサシ

幸子(あれ?)

P「ウッ、ウッ、グスッ、ナナザァン、ヒック」

菜々「よーしよーし、泣かなくても大丈夫ですよー」
ちひろさんの指差した方を見ると、泣いているプロデューサーさんを菜々さんが慰めていた。
……なんですかこの状況は?

幸子(い、いったい何が起こって……)

ちひろ(プロデューサーさんがすっごく張り切って楽しくやろうとしてたものを、幸子ちゃんが蹴りつけて踏みつけてぐちゃぐちゃの粉々にした結果があれです)

幸子(ボクそんなに酷いことしました!?)

ちひろ(おとなしく願い事を書いて、プロデューサーさんに見せたほうがいいと思いますよ)

幸子(……はあ、本当にしょうがないですね、プロデューサーさんは)

P「ウッグ、ウェッ、ヒッグ」

菜々「幸子ちゃんは照れてるだけですから、ちゃんと書いてくれますよ。だから、泣かないでください、ね?」

P「ナナザァン……ヒッグ」

杏「幸子ー早く書きなよー」

幸子「そんなこと言ったって、急に思いつきませ……あ」
幸子(さっきのプロデューサーさんの発言から察するに、”あの二人は真面目に書かなかった”。どうせからかって遊んでいたのだろう)

幸子(じゃあここでボクが適当に書いても、きっとプロデューサーさんは泣き止まないだろう)

幸子(この状況をどうにかするには、それなりに真面目な願い事で、かつプロデューサーさんが納得するような願い事を書かないといけない)

幸子(不本意ですけど、仕方ないですね。元はといえばボクが招いた事ですし)

P「ウッ……ウッ……」

幸子「プロデューサーさん、書きましたよ。これで満足ですか?」

P「ウッ……エッ?」

その時、プロデューサーの視界に入ったものがこちら。
『トップアイドルになれますように  幸子』

菜々「あら」

ちひろ「まあ」

杏「なんと」
幸子「ボ、ボクに願い事なんてありません! ボクのカワイさならすぐにトップアイドルにだってなれちゃいます」

幸子「でも、万が一ってこともありますからね、保険ですよ保険」

P「幸子……」

幸子「せっかくの機会ですから、利用しない手はありませんよね? 神様もボクの願い事ならまっさきに叶えてくれるはずですし」

幸子「なんといっても、ボクはカワイイですからね!」

菜々(やさしい)

ちひろ(かわいい)

杏(すげえ)

P「幸子おおおおおおお!」

幸子「うわっ!」

プロデューサーさんが、すごい勢いでボクに近づいてきた。
その後、これまたすごい勢いで頭を撫でられた。
P「やっぱり幸子は真面目だなあ! かわいいなあ!」

幸子「な、何ですかいきなり! やめてくださいよ!」

ちひろ「でも、すごく嬉しそうですよね」

杏「全く、幸子は素直じゃないなあ。最初っからあーやって書いておけば、こんなことにならなかったのにねえ」

菜々「あのー、ナナも一応書いたんですけど、紐ってこれですか?」

ちひろ「はい、それ……あの、菜々ちゃん、いえ、菜々さん?」

菜々「何です?」

『もっと体力が付きますように  菜々』

ちひろ「それはちょっとどうかと……」

菜々「えー、現役JKアイドルのナナの切実な願い事ですよ? 最近レッスンについていけなくって……そろそろ体にガタがきて」

ちひろ「菜々さんそれ以上いけない」
―Case 3 かな子の願い事―
かな子「おはようございま……!?」

みく「かな子チャン、にゃんでそんな所で止ま……うわあ、Pチャン何してんの……?」

事務所に入った二人の目に飛び込んできたのは、幸子の頭を物凄い勢いで撫でるプロデューサーの姿だった。

P「おー二人とも、いいところに」

幸子「かな子さんみくさん助けて下さい! ボクの頭が! ボクの頭が!」

みく「Pチャン、そんな勢いでなでなでしてるとさっちんの可愛い頭がすり減っちゃうにゃあ」

P「はっ! 盲点だった……」

かな子「とりあえずその手を止めましょう? そして幸子ちゃんを離してあげてください……」

P「お、おう。すまん幸子、つい嬉しくてな」

幸子「ふ、ふふん! まあボクは心が広いですから、今回は許してあげます!」

みく「うちに用事があってきた人が引いちゃうから、次からはよく考えて行動するように! わかったかにゃ?」

P「はい、わかりました」
かな子「それで、『いいところに』って何ですか? まさかさっきのあれを見せるために」

P「違う違う! これ、書いてくれないか」

かな子「へえ、短冊ですかー」

みく「あにゃ、こんな所に笹が」

ちひろ「みんな書いたんですよー、プロデューサーさんがうるさくてまだ飾れませんけど」

P「やり直し組は黙って書いててください!」

みく「ねえPチャン、さっちん以外みんなやり直し組に見えるんだけど」

P「ん? そうだけど」

かな子「どれだけチェック厳しいんですか! いったい何を書けば……」

P「ちゃんとした真面目なお願い事なら大丈夫だぞ」

杏「プロデューサー基準でね」

菜々「ナナのはちひろさんに止められました」

ちひろ「さすがにあれは駄目ですよ……」
みく「むー、ストッパーが二人もいるにゃんて」

かな子「えーっと、じゃあこういうのはどうでしょうか、プロデューサーさん」

そう言ったかな子の書いた短冊が、こちら。
『お菓子のレパートリーをもっと増やしたい  かな子』

P「」

かな子「あ、やっぱりアイドルのことじゃないと駄目ですか? それなら書き直しますよ?」

P「」ブワッ

みくかなちひなな(!?)

かな子「どど、どうしたんですか!? どうしていきなり泣いたり」

P「マトモ……イッパツデ……マトモ……」

P「かな子よ」キリッ

かな子「は、はい!」

P「これからも精進するのだ」

かな子「は、はい! ……はい?」
P「君たちもかな子くんを見習って書くんだ。わかったかい?」

杏「あー、変なスイッチ入っちゃった」

かな子「ど、どうしましょう」

ちひろ「静かでいいじゃないですか、放っておけばいいと思いますよ」

みく(よーし、この隙に書いてPチャンのチェックを回避するにゃ)

P「みくは何を書くんだ?」

みく「にゃあああああああ! お、驚かさないでほしいにゃあ!」

ちひろ(復活の速度に定評のあるプロデューサーさんです)

菜々(プロデューサーはいつも通りですねえ)

みく「あ、あっちいくにゃあ! 見られてると書けないにゃあ!」

P「ねえねえ何書くの? みくにゃん何書くの? ねえねえ」

杏「ていっ」

P「オボフッ」

杏チャンの一撃をくらい、どさりと倒れるPチャン。
Pチャンが暴走した時に杏チャンがいると、とっても安心だ。
杏「プロデューサー、うっさい」

みく「杏チャン、ありがとにゃあ」

ちひろ「これで本当に静かになりましたね」

かな子「いつも思うんですけど、これ大丈夫なんですかね?」

白目をむいてぴくぴくと痙攣しながら気絶しているPチャンを見ながら、かな子チャンは言う。

杏「大丈夫でしょ、そのうち復活するから」

かな子「そ、そうですね! 幸子ちゃん、お菓子作るの手伝ってくれないかな?」

幸子「いいですよ。今日は何を作るんです?」

かな子「今日は七夕だから、それにちなんだものを、と思って。ちょっと人手が欲しいの」

二人は、半ば調理場と化した給湯室へ行ってしまった。
うちの事務所の給湯室は、かな子チャンが持ってきた調理器具でいっぱいなのだ。
かな子チャンが作るお菓子は美味しいし、お菓子代が浮いてちひろさんも嬉しいみたいだし、いいことだらけにゃ。

みく「そーいえば、菜々チャンは何を書いて駄目って止められたのにゃ?」

菜々「はい、これなんですけど」

みく「『体力が付きますように』かあ。いいんじゃにゃいの? みくももっと体力付けたいにゃ」
ちひろ「うーん、私の考えすぎですかねえ」

菜々「考えすぎですよ、考えすぎ。そういうことにしましょう! じゃあこれ飾っちゃおうかなー」

杏「菜々ーこれもおねがーい」

菜々「はーい☆ ……これは……杏ちゃんらしいですね」

杏「でしょ? これで駄目っていうんだからさ、そこの気絶中の人は」

ちひろ「私のもお願いしますー」

菜々「はーい、ちひろさんは何を書いて……あっ……」

ちひろ「そ、れ、で! みくちゃんは何をお願いするんです?」

みく「んー……どうしようかにゃあ」

杏「てきとーでいいんじゃないのー? どうせ叶わないんだしー」

みく「そ、それも、そうだにゃ……叶わない、叶わない……」

ちひろ「何言ってるんですか杏ちゃん! 思い続ければいつか必ず叶いますよ!」

みく「……いつか必ず、叶う……」

杏「ちひろさんはそろそろドリンクの押し売りをやめるべきだよ、うん」

ちひろ「プロデューサーさんが買ってくれるまで売るのをやめませんよ!」

杏「ああ、何言っても無駄か。知ってた」

みく「……願い事、か」
―Case 4 プロデューサーの願い事―
あれから一時間とちょっとして、Pチャンが復活した。
みんなの短冊を飾った笹を見て、少し怒ってたのは面白かった。

P「うぐぐ、飾ってしまったのを取るわけにもいかないし……くそう何で気絶してたんだ俺は」

菜々「プロデューサーがみくちゃんに変に絡むのが悪いんですよ?」

杏「人に迷惑かけちゃいけないって教わらなかったの?」

P「教わってないぞ」

ちひろ「じゃあ今、その体に刻みつけてあげましょうか?」

P「ごめんなさいもうしません」

ちひろ「はあ、まったく」

かな子「みんなー、出来ましたよー」

幸子「ちょ、かな子さん、これ割と重い……」

かな子チャンとさっちんが大きなものを持ってきた。何あれ、すっごくおっきいんだけど?
二人は、持ってきたものを机の上に置いた。うーん、何でできてるんだろうこれ。
菜々「うわあ、すごいですねー」

かな子「あはは、手抜きですけどね」

P「ほう、これは」

ちひろ「知っているんですかプロデューサーさん」

P「これはあれか、天の川か」

かな子「そうです!」

杏「まー見りゃわかるよねー。星いっぱいだし、七夕だし」

かな子「周りの黒いところはコーヒーゼリーです。そこにある白い星はミルクシャーベットで、星空をイメージしてみました」

かな子「真ん中を流れてるのはソーダ味のゼリーでできた天の川です。黄色い星はパインジュースのシャーベットですよ」

かな子「今年も天気が悪いので、夜には天気が良くなりますようにと願いを込めて作りました」

幸子「割と大変でしたよ。まあこんなにカワイイボクが手伝ったんですから失敗なんてありえませんけどね」

うーん、うちの冷蔵庫ってこんなに大きいもの入ったっけ? 確かスタドリとエナドリがいっぱい入ってたような……うん、気にしたら負けだにゃ。
P「うまそう」ジュルリ

杏「早く食べようよー、そこの人が暴走する前にさ」

みんなで取り分けて食べる。お店で売ってるのと同じくらい美味しいにゃあ!
お菓子代が浮く上にこんなに美味しいものが食べられるんだから、ここはとってもいいところだにゃ。

P「んあ、何この青い星。食べていい?」

みく「にゃにゃっ、ピンク色の星発見! いただきにゃあ!」モグッ

かな子「ああ、それは織姫と彦星をイメージしてみました。一つずつしか入れてませんよ」

みく「!? ゴホッゴホッ」

菜々「みくちゃん、大丈夫ですか?」

みく「ゴホッ、だ、大丈夫にゃ」

P「これうめえわ」モグモグ

ちひろ「ところでプロデューサーさん? プロデューサーさんは短冊書かないんですか?」

P「あー、そーですねー。なんか書かないとなあ」
杏「あんだけ言ったんだから、すごく良い事書いてくれるんだよねえ?」

P「そりゃあもちろん。今の俺の願い事は、これっと」

プロデューサーは、短冊にこう書いた。
『みんながトップアイドルになれますように  P』

P「どうよ?」

P以外の人たち((うわあ、すごくまとも)だにゃ)

P「え、何みんな固まって……そんなに酷かったかこれ」

ちひろ「いえいえ、すごくいいと思いますよ」

杏「さすがプロデューサー! 杏たちに書けないことを平気で書いてのけるッ!」

菜々「そこに痺れる! 憧れるゥ!」

幸子「ボクはそれと同じ事書いたんですけどね」

P「それと、こんなのも書いてみました」

『杏が働いてくれますように  P』
『ちひろさんがドリンクの押し売りをやめてくれますように  P』

あんちひ「「却下」」ビリビリ

P「ちくしょう」
―Case 5 みくの願い事―
P「ありゃ、もうこんな時間かー」

ちひろ「あら、雨降って来ちゃいましたね」

楽しい時間を過ごしていると、窓の外はすっかり暗くなっていて、ぽつりぽつりと雨も降りだしていた。
ほんと、七夕っていつもこんな天気な気がするにゃあ。

幸子「参りましたね、今日は傘持ってきてないです。完璧なボクとしては致命的なミスですね」

菜々「ナナもですー」

杏「杏も持ってきてなーい」

みく「みくもだにゃあ」

P「今日の予報は曇りだったしなあ。じゃあ帰り支度しろよー、送ってくから」

P以外の人たち「「はーい」」

P「ただしみく、お前は駄目だ」

みく「えっ、ひどくない?」
P「今日は短冊書くまで返しませんからね!」

かな子「小学校の先生みたいなこと言わないでくださいよ」

P「やだやだ、みんなかかないとだめなのー!」

かな子「はいはい、わがまま言わないでください」

P「やーだー!」

みく「……まあいいにゃ。すぐ帰る用事もないし」

P「わあい! ほらみんな、車持ってくるから玄関で待ってろよー」

ちひろ「みくちゃん、いいんですか?」

みく「うん、もう少し残ってくにゃ」

じゃあね、またねー、なんて言いながらみんなが帰っていく。
事務所に残ったのはみくだけ。ようやく一人になれたにゃ……

みく「うーん、どうしようかにゃあ。これ書きたいけど、短冊ってみんな見るだろうし……」

せっかくだし、書いてみたい。でも、みんなに見られるのは恥ずかしい。でも、今しかチャンスは……
なんてぐるぐる考えていると、どんどん時間は過ぎていって。
P「おう、書き終わったかー」

みく「うわ、もう帰ってきたのかにゃあ」

P「何その言い方ひどい」

ああ、さっさと書いて飾っておけば良かったかにゃあ? これじゃPチャンに見られちゃう……一番見られたくない人に、見られちゃう。

P「はーあ、七夕っていつも天気悪いよなー。そう思わないか? ――前川さんよお!」カパッ

前川「わっ! 何するんですかプロデューサーさん! 返して、私のねこみみ返してください!」

P「はっはっは、早く書かないお前が悪いのだー」

前川「もう、プロデューサーさんったら……みんなの前でやらないだけ、いいですけど」

P「俺だってさすがにTPOくらいまも……えーっと、Time、Place、えーっと」

前川「Occasionです。Opportunityという場合もありますが」

P「みくは物知りだなあ。前川さん流石っす」

前川「その呼び方はやめてください……でも、七夕って毎年天気悪いですよね」

P「だよなー。神様がいじわるしてるんだっけ?」

前川「そうですね。七夕に雨が降ると天の川の水かさが増して、二人は会えなくなると言われてますね」

前川「プロデューサーさん。中国の神話の『牛郎織女』って知ってますか?」

P「なにそれ?」
前川「現在の七夕の伝説の元になったお話なんですけど」

  迢迢牽牛星  迢迢たる牽牛星
  皎皎河漢女  皎皎たる河漢の女
  纖纖擢素手  纖纖として素手を擢(あ)げ
  ??弄機杼  ??として機杼を弄す
  終日不成章  終日 章を成さず
  泣涕零如雨  泣涕 零ちて雨の如し
  河漢清且淺  河漢 清く且つ淺し
  相去複幾許  相去ること複た幾許ぞ
  盈盈一水間  盈盈たる一水の間
  脈脈不得語  脈脈として語るを得ず

前川「という感じで」

P「日本語でお願いします」
前川「――遙かなる牽牛の星、白く輝く天の河の女。ほっそりと白い手をあげ、サッサッと機織りの杼を操る」

前川「一日かけても模様は織りあがらず、涙は雨のごとく流れ落ちる」

前川「天の河は清らかでしかも浅い。二人の距離もいったいどれほどのものか」

前川「端麗な織女は一筋の河に隔てられ、言葉を交わせずじっと見つめているばかり――」

P「あの、呪文唱えるのやめてもらえませんかね」

前川「……日本語なんですけどこれ。まあいいです。簡単に言うと、二人は会えなくて辛いということです」

P「じゃあ最初からそう言えよ、もう」

前川「あれ、私悪くない……よね?」

前川「それで、その時に織姫様と彦星様が流す涙が、私たちの世界で雨になるんです。これを催涙雨って言います」

前川「さっき『七夕に雨が降ると天の川の水かさが増して、二人は会えなくなる』って言いましたけど」

前川「『水かさが増して会えないから二人は涙を流し、私たちの世界で雨が降る』んじゃないか、と私は思うんです」

P「ふむふむ。なんで二人は会えなくなったんだ?」
前川「二人は結婚してから全く働かなくなってしまったんです。それで神様が怒ってしまって、二人を天の川を隔てて引き離したんです」

前川「二人とも真面目に働いていれば、こんなに悲しむことはなかったんですけどね」

P「働かなくなったら、そりゃ神様だって怒るわ」

前川「……私とプロデューサーさんは、ちゃんと働いてるから、大丈夫だよね……」

P「んあ? みく、今なんか言ったか」

前川「いえ、何も。……プロデューサーさん、そろそろねこみみ返してくれませんか」

P「お、おう」

前川「もうこんなことしないでくださいね」カポッ

みく「ふう、ようやく落ち着いたにゃあ」

P「おお、いつものみくだ」

みく「みくをおもちゃにしないで欲しいのにゃ!」

P「してないしてない」

みく「したにゃ!」
P「しーてーなーいー」

みく「しーたーにゃー!」

みくとPチャンは、こんなにくだらない事を言い合い、笑い合える。織姫様と彦星様も、こんな感じだったのかな……

P「ところで、短冊書いたの?」

みく「まだにゃ」

P「早く書けよー、そろそろ帰ろうぜー」

みく「急かすの禁止! ゆっくり書かせてほしいにゃあ」

P「はーい……お! みくー、外見てみろー」

みく「なんだにゃ、ゆっくり書かせてって……わあ」

外を見ると雨が上がっていて、空を覆う雲も晴れていて。そこには、とても綺麗な天の川があった。

P「織姫と彦星も、これでようやく会えるな」

みく「そうだね、Pチャン」

きっといつか願いは叶う。それがいつかはわからないし、叶うかどうかもわからないけれど。

みく「……よーし」
短冊に、願い事を書いて、飾る。こんなに悩む必要なんてなかったにゃあ。
だって、自分の願い事を書いて、飾るだけなんだからね!

『ずっとアイドルを続けられますように  みく』

それと、もう一枚。こっちは、目立たないような所に飾って、と。
にゃはは、これ、書いてある事ほとんど一緒だにゃあ。

みく「Pチャーン、書き終わったにゃあー」

P「おお、出来たか。じゃあ帰るかー」

みく「あれ、みくのはみにゃいの?」

P「どーせ『猫にまみれたい』とかそういう感じだろ」

みく「ふしゃー! 失礼しちゃうにゃ!」

P「はっはっは、さー帰るぞー」

みく「はーい。あ、Pチャン! みく、お腹すいたにゃ!」

P「お前と二人で帰るときって、いっつも何かおごらされてるような気がする! 不思議!」

みく「それくらいいーじゃにゃい。こんにゃに可愛いみくと一緒にいられるんだから、感謝するにゃ」

P「幸子みたいなこと言うなよ。ハンバーガーでいいか? 今日はお金なくって」

みく「あー、あの笹Pチャンの自腹なんだ」

P「そゆこと……ハンバーガーだったら好きなもんおごって、あ!」

みく「まさか、ハンバーガーすら買えないレベルのお金しか持ってないとか」

P「いや、いい事を思いついてな。すげえうまいハンバーガーをご馳走してやろう」

みく「えっ、ほんと? わーい、やったにゃあ」

P「フィッシュバーガーっていうんだけど」

みく「にゃあああああああああああああ!(激怒)」
----翌日----
ちひろ「おはようございまーす」

P「おはようございます」

ちひろ「あら、早いですね。何か変なものでも食べました?」

P「失敬な、昨日の夜ご飯はハンバーガーですよ? 流石に俺だってたまには早く来て」

ちひろ「ゲームしてるんですか、そうですか」

P「そうなんですよ、こいつ強くて。後で杏に手伝ってもらおうと……あ」

ちひろ「プーローデューサーさーん?」

P「ひええ、仕事します! 仕事しますう!」

ちひろ「はあ、この人はいつになったら真面目に働いてくれるんでしょうかねえ」

P「ほら、今仕事してますよ」

ちひろ「はいはいそうですねー。あ、みくちゃんもちゃんと書いたんですね」

P「そうなんですよ! 猫関連かと思いきや実はなんと! 『ずっとアイドルを続けられますように』ですって!」

ちひろ「ふふふ、うちは真面目な子が多いですねえ……あら、これは」
ちひろさんが見つけた、目立たないところにあった短冊。それには、こんなことが書かれていた。
『Pチャンとずっと一緒にいられますように  みく』

ちひろ「あらあら、みくちゃんは大胆ですねえ」

P「真面目な子は多いですけど真面目な事務員は一人もいな……何してんです、短冊見て」

ちひろ「いえ、どうやってプロデューサーさんにスタドリを売りつけようかと考えてました」

P「アーアーキコエナーイ」

みく「おっはにゃー!」

P「おお、早いな。レッスンまでまだ結構時間あるのに」

みく「今日は早く来たい気分だったのにゃー」

P「そうか、それはいいことだ」

ちひろ(みくちゃんみくちゃん)

みく(……? どしたのちひろさん)

ちひろ(頑 張 っ て く だ さ い ね)

みく「も、もしかしてみくの短冊、み、み、み」

ちひろ「うふふふふ」

みく「にゃああああああああああああああああ!」
P「みくは毎日元気だなあ」

ちひろ「ほーらちゃんとお仕事しないと会えなくなりますよー? 織姫と彦星みたいに」

みく「やめるにゃ! やめて!」

P「ほーらねこみみ攻撃をくらえー」カパッ

前川「あああああ! ねこみみ取らないでくださいって昨日も言ったじゃないですかああああああ!」

前川「返してください! お願いですから!」

P「はいちひろさんパース」

ちひろ「そしてみくちゃんにダイレクトアタック」カポッ

みく「ふしゃー! もう怒ったにゃあ! くらえひっかき攻撃!」

P「ひいい! 痛い痛い! ごめんなさいもうしません!」

こんな馬鹿みたいな事をしていても、ちゃんとお仕事をしているから問題ない。
もしお仕事がなくなったとしても、きっといつまでも一緒にいられる。
みくは、そんな気がした。

みく「Pチャンのばかあああああああ!」

P「ぎゃああああああああああああ!」

今日も、事務所は平和である。


みく「織姫様と彦星様」 END
以上で、終了となります。いかがでしたでしょうか。
楽しんでいただけたのならば幸いです。

今回、Wikipedia先生にご協力いただきました。本当にありがとうございます。
……文字化けしちゃいましたけど。

それでは、またどこかでお会いしましょう。
ありがとうございました。

10:30│前川みく 
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