2014年09月10日

佐久間まゆ「初恋の思い出」

まゆ「初恋……ですか?」



P「覚えてたら話してもらえないかな。俺と会う前のまゆのこと知りたくなってさ」



まゆ「ふふ、分かりました。良いですよ」





まゆ「初恋は確か……小学校低学年の頃です。6〜7歳くらいですね」



まゆ「パパとママと3人でお祭りに行って、迷子になってしまって……」









まゆ「パパ……ママ……どこ?」キョロキョロ



まゆ「……」



まゆ「…………」



まゆ「あっ……パパ? パパ、待ってぇー」トテトテ



まゆ「パパー」ギュッ



少年「ん?」



まゆ(パパじゃない……)





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少年「僕に何か用?」



まゆ「あっ、あの……パパと間違えました。ごめんなさい」



少年「パパを探してるの?」



まゆ「うん。ママも」



少年「一緒に探そうか?」



まゆ「ほんとー?」



少年「ほんとほんと」



少年「そうだ、綿菓子あるんだけど食べない?」



まゆ「ママが、知らない人から物をもらっちゃいけませんって……」



少年「じゃあ……僕の名前は――っていうんだ。君は?」



まゆ「まゆ」



少年「まゆちゃん、よろしく。はい、握手」

少年「これでもう知らない人じゃないよね? 一緒に綿菓子食べよう?」



まゆ「……うんっ」



少年「やっと笑ったね」





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

パパと間違えて声をかけた男の子が、一緒に両親を探してくれることになったんです。



多分中学生くらいですね。



今思えば、身長や体格も違ったんでしょうけど……



見た目じゃなくて雰囲気や歩き方が似てたのかもしれません。



残念ながら顔や名前は覚えてないんです。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





少年「まゆちゃんのお父さん、いませんかー?」



まゆ「パパー」



少年「まゆちゃんのお母さん、いませんかー?」



まゆ「ママー」

少年「……なかなか見つからないねぇ」



少年「この辺りまでは一緒にいたんだよね?」



まゆ「うん。まゆね、金魚すくい見てたの」



まゆ「すごく上手な人がいて、金魚をどんどんつかまえてて……」



まゆ「うわーすごーいーって見てて」



まゆ「ねーパパ、すごいね〜って言おうとしたら、パパもママもいなくなっちゃってた……」



少年「うーん、そっか。手はつないでなかったの?」



まゆ「最初はつないでたけど……あれー? いつ離しちゃったんだろ?」



少年「なにか夢中になって離しちゃったのかな」



まゆ「……お兄ちゃん、まゆ疲れちゃった」



少年「歩き疲れた? じゃあ……ここじゃ休憩も出来ないね。人の少ないところまで行こう」



少年「おんぶしてあげる。ほら、乗って」



まゆ「ありがとう、お兄ちゃん」

まゆ「ねえ……お兄ちゃんはどうしてまゆに優しくしてくれるの?」



少年「困ってる人は助けてあげなきゃ。まゆちゃんだってそうするでしょ?」



まゆ「まゆは……恥ずかしくてそういうの出来ないよぉ」



少年「そっかー、恥ずかしいかー」



少年「でもさ、もし今僕が一緒にいなかったら寂しくない?」



まゆ「……寂しい」



少年「一人でパパとママ探せる?」



まゆ「ううん、まゆどうしていいか分からないと思う」



少年「ほらね? 困ってる人を助けるって、一緒にいるだけでもいいんだよ」



まゆ「あ……うんっ」



少年「よしっ、ここならゆっくりできるかな。下ろすよ」



まゆ「はい」



少年「実は僕も、一人ぼっちで寂しかったんだ。だからまゆちゃんと一緒で、今嬉しいよ」



まゆ「本当? まゆ、お兄ちゃんを助けられてる?」



少年「ああ、もちろん」



まゆ「良かったぁ……えへへ」



まゆ「でも一緒にいるだけじゃダメなときもあるよね? そういうときはどうすれば良いの?」



少年「そのときまゆちゃんにできることならなんでも良いと思うよ」



少年「例えばそうだな……まゆちゃんはどんなことしてるときが楽しい?」



まゆ「楽しいのは……日高舞ちゃんのお歌聞いてるとき!」



少年「日高舞か、デビューしたばっかりなのにすごい人気だよね」



少年「歌を聞くと元気になったり勇気をもらえたりするよね」



少年「元気のない人がいたら元気が出る歌を歌ってあげるといいよ」



まゆ「まゆも日高舞ちゃんみたいに出来る?」



少年「ああ、まゆちゃんの歌を聞いたら絶対元気になるよ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

歌うことの素晴らしさをその人に教えてもらって……



もしかしたらしばらく忘れていたかもしれません。



でもPさんと出会って、小さい頃の憧れを思い出したんです。



それからは……言うまでもないですよね?

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





まゆ「……ねえ、お兄ちゃん」



少年「どうしたの?」



まゆ「このままパパママに会えなかったら……」



少年「大丈夫、絶対会えるよ」



まゆ「うん……」



『迷子のお知らせをします……』



少年「あっ……そうか、放送してもらえばよかったんだ! なんで気づかなかったんだ!」



少年「まゆちゃん、もうすぐパパとママに会えるよ」



まゆ「ほんとっ?」



少年「えーと、どこで頼めばいいんだ? ちょっと聞いてくるからまゆちゃんはここにいて」



少年「すぐ戻るからね」



まゆ「うんっ」



まゆ「……」



まゆ「…………」



まゆパパ「……まゆ!」



まゆ「え? あ……パパ、ママ〜!」タタタ



ギュッ

まゆママ「もうっ、心配させて。もしはぐれたらそこでじっとしてなさいって言ったでしょう?」



まゆ「ごめんなさい……」



まゆパパ「見つかったから良いじゃないか。さあ、もう遅いからな、すぐ帰ろう」



まゆ「あ、でも……」



まゆ(お兄ちゃんが……)



まゆママ「まだ遊びたいの? ダメよ、明日学校あるでしょう?」



まゆ(あっ、お兄ちゃん戻ってきた……まゆのこと探してる?)



まゆパパ「また別のお祭り連れて行ってあげるからな」



まゆママ「まゆ、どこ見てるの?」



まゆ(お兄ちゃん、まゆに手を振ってる……気付いてくれたんだ)



まゆ(えへへ、ありがとうー。また会おうね〜)フリフリ

まゆ「一緒に探してもらったんですけど、最後はお別れも出来ないままになってしまって……」



まゆ「また会いたいなぁって、しばらく思ってました」



まゆ「それだけ、なんですけどね。あとから思うと、あれが初恋だったのかなぁって」



P「そのお祭って、ひょっとして藻羽鱒神社の夏祭りじゃない?」



まゆ「あっ、そうです。どうして分かったんですか?」



P「今の話の中学生って俺だから」



まゆ「えっ!?」



P「まゆの話と俺の記憶がほぼ一致するから間違いないと思う」



まゆ「ほ、本当に……? まゆを驚かせようと思って冗談言ってるんじゃないですよね?」



P「うーん……証拠話そうか?」



P「両親を探してるうちにまゆがトイレに行きたくなって」

P「でも公衆トイレが混んでたから、我慢できなくて茂みで……」



まゆ「わーっ! わーっ!」



まゆ「うう、すっかり忘れてたのに思い出しちゃいました……」///



まゆ「なんでそんなこと覚えてるんですかぁ……」



P「いやー、忘れてたんだけどまゆの話聞いてるうちに思い出したんだ」



まゆ「ヤブヘビでした……」



P「藻羽鱒神社か、懐かしいなー。俺、まゆと出会ったあのときしか夏祭り行ったことないんだよな」



まゆ「次の年もその次の年も、まゆは行ったんですよ」



まゆ「また会えないかと思って……お礼も言えずに別れてしまったから」



P「感動の再会に水を差すのも悪いかと思ってさ」



P「それに結局大したことしてないし」

まゆ「そんなことないですよ。Pさんが一緒でどれほど心強かったか」



まゆ「……あらためて、その節はお世話になりました」ペコリ



P「いえいえ」



まゆ「本当に……あのときのお兄ちゃんが、Pさんなんですね」ウルッ



P「え、ちょ、なんで泣くの」



まゆ「だって初恋の人と再会出来たんですよ。しかもそれが、大好きなPさんだなんて……」



まゆ「だんだん実感がこみ上げてきて……こんなに嬉しいことないです、ぐすっ」



P「あのときは一人ぼっちでも泣いてなかったのに」



P「泣き虫になったんじゃないか?」



まゆ「むっ、そんなことないですよぉ。これは嬉し泣きですから」



P「そうか」



まゆ「そうです」

P「……」



まゆ「ひょっとして納得できませんか?」



P「いや、正直言うと……あのときの女の子がまゆだったって、実感がわかなくて」



まゆ「……じゃあ思い出させてあげます。ちょっと向こう向いてください」



P「こう?」



まゆ「……お兄ちゃん」←背中にぴとっ



P「おうっ!?」



まゆ「どうですか、あのときのおんぶと同じでしょう? これで実感わきましたよね?」



P「あー……」



P「……いや、ダメだな。だってあのときは無かった膨らみがある」



まゆ「も、もうっ、えっち!」///

まゆ「じゃあいいですよ、ちゃんと実感わくまでお兄ちゃんって呼びますから」



P「その必要はないよ、完全に実感わいた」



まゆ「えぇー……」



P「なんでがっかりするんだよ」



まゆ「お兄ちゃんって呼ばれるの嫌ですか?」



P「変な誤解を招きそうな気がする……」



P「あ、でも実感わいたのは本当だから」



P「その柔らかい言い方、まさしくあのときの子だって分かったよ」



P「大きくなったなぁ」



まゆ「ふふ、おじいさんみたいですよ?」



P「あれ? ってことは……まゆにアイドル目指すきっかけ与えたのって俺なのか?」



まゆ「あ……そうですね。なんだかスゴイです」



まゆ「実は小さい頃からプロデュースされてたなんて……」



まゆ「やっぱりPさんは、まゆだけのプロデューサーさんですね」



まゆ「あーあ、もっと早く分かってたら思い出の夏祭りに行けたのに」



P「今年はもう終わってるか……来年は絶対一緒に行こう」



まゆ「本当ですか!? 約束ですよ?」



P「ああ、約束する」



まゆ「Pさんと一緒に……ふふ」



まゆ「そういえば……Pさんはあの日、家族と一緒に?」



P「いや……友達と」



まゆ「……本当に友達ですか?」



P「なんで?」

まゆ「特に理由は無いです。しいて言えば女の勘です」



P「女の勘すごいな……まあ、友達で間違いはないんだけど」



P「正確に言うと、特に仲の良かった女の子だったんだ」



まゆ「まゆと会ったときは、その人いなかったですよね?」



まゆ「恋人……だったんですか?」



P「だから友達だって。祭りの最中に告白したけど振られたんだ」



P「仲は良かったんだけど、ほかに好きな人がいたらしい」



P「そのまま一緒にも居づらくて、一人帰る途中でまゆに会ったんだよ」



まゆ「当時のPさんには悪いですけど、そのとき振られなかったら、今こうしていなかったかもしれませんね」



まゆ「Pさんを初めて見かけたとき……あっ、小学生の頃じゃなくて、ですよ?」



まゆ「初めてのような気がしなくて、これが運命の出会いなのかも、って思ったんです」

まゆ「実際初めてじゃなかったわけですけど……」



まゆ「やっぱり小さい頃の出会いがあったからこそ、運命を感じたんだと思います」



P「まゆは運命って好きだよなぁ」



まゆ「ふふ、だって素敵じゃないですか。運命の出会いって」



まゆ「初恋の人が今大好きな人で」



まゆ「アイドルを目指すきっかけを与えてくれた人が今私をプロデュースしている」



まゆ「どう考えても運命ですよ」



まゆ「そのお話をまゆの誕生日に聞けたのも、きっと運命です」



まゆ「とっても素敵な誕生日プレゼントになりました」



P「あっ、そう? じゃあせっかく用意したけどプレゼントいらない?」



まゆ「ええっ、そんな!?」



P「ははは、冗談だよ」

まゆ「むぅ……開けていいですか?」



P「どうぞ」



まゆ「わあ、ネックレス。綺麗……」



まゆ「この宝石2つって……」



P「まゆと俺の誕生石だよ」



まゆ「じゃあこっちがPさんですね」



P「ひょっとして誕生石知ってた?」



まゆ「知りませんけど、上に配置されてますから」



P「……なんで上だと俺なんだ? 単純に年上だから?」



まゆ「いえ。だってPさん……」









まゆ「上になる方が好きでしょ?」///



おわり



08:30│佐久間まゆ 
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