2013年11月29日

喜多見柚「アイドルになったこと、ちょっと後悔してるかも」

P「……これはまた、恐ろしいことを言ってくれるなぁ袖ちゃんは」

柚「柚ね。袖じゃなくて」

P「冗談だよ。でも急にどうしたんだ? 俺に問題があるなら、今すぐリスカするけど」


柚「じゃあアタシが切ったげるよ♪……じゃなくて! 別にPサンやアイドル業に問題があるわけじゃないんだよね」

P「ほう」

柚「どちらかというと、今がめちゃめちゃ楽し過ぎで……アイドルをやめたら、アタシはどーなるんだろーって」ハァ

P「あー」

柚「分かる?」

P「ほんのちょっとな。でもほら、手が止まってるぞ。さっさと作っちゃおうぜ、鬼のお面」

柚「はーい」

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柚「それでね、いつかアタシも、アイドルやめる時が来るでしょ?」

P「来させないさ!」

柚「来るでしょ?」

P「まぁな」

柚「そりゃあ……アイドルやる前も、もちろん楽しかったよ」

柚「楽しいことがない時も、楽しいことを探してるのが、また楽しかったりさ」

P「何それ、すげーいい幼少時代じゃー……んっと! よぉし二つ目完成! どうよこの鬼」カポッ

柚「……ぷっ、何それ、また全然怖くないよ。30点」

P「えぇ、これはさっきのより怖いだろ。真っ赤な肌に、黄色い角、でかい口と完璧に鬼だ。なぁ杏ぅ? 怖いよなー」ユサユサユサユサ

杏「……ぁー……ぅー……」ユサユサ…カクンッ

P「ほら、気絶するほど怖いって」

柚「一回も目開けてなかったじゃん」
柚「あ、アタシもいっこ完成ー。おら、つけてみろよ鬼!」ビュッ

P「気が早いな。今の俺はまだプロデューサーだ」カポッ

柚「んふっ……か、かけ心地はいかがかな」

P「そうだな……まず目のところに、赤と青のシートが別々に貼ってあって、一昔前の3D体験を頑張ろうとしてたのを思い出す」

柚「今あれ全然ないよね。みんなどこへいった? 見送られることもなく」

P「知らない。あとは鼻の裏側のところに、なにやら湿ったものが当たってるんだけど……何これ?」

柚「朱肉だけど……」

P「……」ポコン

柚「あいたっ! いっひぇひぇひぇ、Pサン鼻がピエロみたいになってるよ!」ケラケラ

P「このやろー、お前がやったんだろ! 何でいちいち仕掛けないと気が済まないんだ」

柚「本能には逆らえないってこと♪」

P「高垣さんが今日参加できればなぁ。ちょうどオッドアイつながりで、これかぶって一緒に鬼やろう! って言えたのに」

柚「楓サンは売れっ子だからね。アタシも早くデパートの屋上を脱したいよ」

P「ごめんなさい……もう……はい、死にます。俺が死にましょう……」シュン…

柚「いや……いいよ。アタシは楽しいって言ってるじゃん……」ズーン…
杏「…………何二人して落ち込んでるんだよ」

柚「……起きたんだ、杏サン」

杏「そこのめんちょが出来てるオッサンに揺さぶられてたの見たでしょ?」

P「めんちょじゃない。これは柚のイタズラだ。そしてオッサンって年でもない、お兄さんと呼べ!」

柚「あ、Pサン戻った」

杏「だいたい柚、人気なんか出ても良いことなんて何もないからな」

柚「そんなことないでしょう」

杏「あるんだよ! 杏は身を以て知ったんだ。巨人にはことあるごとに抱き潰され、やっと入った印税はスタドリに変えられ……」

P「ぷっ、杏まだアレ根に持ってんのかよ。俺大笑いしたっけなー」

杏「プロデューサーが職権濫用して仕入れてくるあの美味い飴がなければ、杏はすでにアイドルなんかやめてるって断言できるよ」

P「職権濫用とは人聞きの悪い」

柚「う〜ん、人気が出るってのも大変なんだね」

杏「人気が出ても良いことはない。アイドルの目的は人気が出ること。あぁ、あぁあ!!」ガクガク

P「最後まで言えよ」
凛「おはよう。ここにいたんだね」ガチャ バタン

柚「あ、凛サンおはよー」

仁奈「仁奈もいるですよ!」

P「あれ、二人とも今日こんな早くに来る必要あったっけ? レッスンは昼からだったろう」

凛「うん。でも、特に予定もなかったし来ちゃった。仁奈ちゃんは途中で拾ったよ」

仁奈「拾われたのは凛おねーさんですよ」

P「だいたい分かったよ。まぁ、まだ俺達ぐらいしか来てないけど、ゆっくりしていけよ」

凛「うん。でも、二人は何してるの? ……あ、杏ちゃんもいるから3人か」

柚「杏サンが何かやってるように見えるのかよう」

P「やだこわーい。あの目は節穴か何かなのかしらー」

杏「杏は飴がないと働かないって知ってるでしょ。よく見ろよ、どこに飴要素があるんだよ、マジで節穴か?」

凛「イラっときた。いつもより喋るね杏ちゃん。鬼のお面作ってるんだね、私にもつくらせてよ」

仁奈「じゃあ仁奈は杏おねーさんと遊んでるです!」トテトテ

杏「ばっやめろっ……寝かせろ……!(無抵抗)」
凛「そういえば柚ちゃんと杏ちゃん、来るの早いね」

柚「ふふん、実はPサンから直々にお呼び出しがかかってね」ウインク☆

凛「どういうこと?」

P「柚ってこういう、作るのとか好きそうだろ? 『お面作るけど来るか』って聞いたら、こうなった」

柚「イタズラするチャンスでがんすよ〜♪」

凛「そういえばプロデューサー、鼻が赤いね。風邪ならいいんだけど」

P「柚がお面に朱肉を仕掛けたんだよ。ていうか風邪ならいいって何、苦しめって?」

柚「信頼関係のなせる辛辣トークってやつだね」

凛「朱肉か……つまり、プロデューサーのお面なら汚れるイタズラをしても」

P「よくない。というか俺のはもうできてるから」

仁奈「杏おねーさんは、仁奈といっしょに鬼役やりやがりますか?」

杏「するわけないよ……めんどくさい」

凛「え、私今杏ちゃんのお面作ってるけど」

杏「勝手なことしないでくれよ凛!」
凛「で、杏ちゃんは? 何で早いの」

柚「あ、実はそれアタシも気になってた! ナチュラルにいるもんだから、逆に聞くようなことじゃないのかなって」

P「何てことはないよ。杏は、ほっといたら来ないから、仕事がある日は俺が迎えに行ってやってるんだ」

凛「おっと」

柚「えー、そうなんだ! えっへへ、そういうアプローチもあるのかー♪」

P「もしお前らが杏の真似してボイコットしたら無視するからな、頼むからやめてくれよ」

凛「それは不公平だよ」

柚「そうだそうだ! このままだと凛サンが杏サンの家で寝泊まりしかねないよ!」

杏「部屋の掃除やってくれるならそれもいいけど」

凛「さすがにそこまではしないよ」

仁奈「仁奈も杏おねーさんの家に行ってみたいですよ!」

杏「その着ぐるみを雑巾にでもするのか? 水拭きするならちゃんとしぼってよね」

P「ひどすぎて逆に笑えてくるわ」
凛「今のところ鬼って何人の予定?」

P「俺」

仁奈「仁奈もやるですよ! 鬼の気持ちにもなってみてーのです!」

凛「じゃあ私は引き続き杏ちゃんの作ってるよ」

杏「いいのかー、ゴミ増えるだけだぞー」

柚「このオッドアイの鬼どうしようかな……」

凛「楓さんは?」

柚「来れないって。お仕事で昨日から明日まで。Pサンまさかの同行せず、大人の楓サン年少組のために渾身の我慢」

凛「残念。でも、それなら今完成してるのって、プロデューサーのお面とオッドアイと、あとひとつその微妙なのぐらいじゃないかな」

P「そうだな。だから柚は次は仁奈ちゃんの作ってやりなよ」

仁奈「とびっきりのをおねげーしますよ! でも怖すぎてはいけねーのです」

柚「はいよ〜♪」ウインク☆

P「これで俺のと、仁奈ちゃんのと、杏のと、あとひとつが用意される予定なわけだが、凛はどうするんだ?」

杏「いらないものが入ってたぞ。杏は鬼なんてしないからな!」

凛「私は普通に投げる側にいとくよ」
P「まぁ柚、確かにこの業界に入って君は、大人と顔を合わせる機会が増えた」

柚「えっ……いきなりなんの話?」

凛「プロデューサーお得意の話題ワープだね」

P「自然、くたびれた表情の大人とも多く出会う。そんな柚が、未来に無刺激を感じるというのも、仕方のないことだろう」

柚「……あ、あー、さっきの話の続きなのね! で、でも今はもうやめてよ、凛サンとか来ちゃってるし」

凛「むっ……さっきの話? 私が来たからやめてほしい?」ピクーン

P「けどな柚、先のことなんて……」

柚「ちょ、もうほんといい加減にしてよPサン! 恥ずかしいから〜!」

凛「恥ずかしい? 何が恥ずかしい……プロデューサー以外に知られるのが恥ずかしい? ……いろこひごと?」

柚「違うから!」

P「……柚がそこまで言うならしかたないな。凛、恋愛要素はありませんから心配しないでいいよ」

凛「怪しい……」

仁奈「きなくせーですよ柚おねーさん!」

柚「せ、責任取ってよねPサンっ……!」
柚「ほ、ほら違う話しようよ! アタシ、今日の豆まきのために、いろいろ計画考えてきてたんだよね〜!」

P「ほう」

杏「豆まきに作戦? …………豆まきに作戦?」

凛「豆まきに作戦かぁ…………豆まきに作戦?」

柚「い、いや……え、あるでしょ!」

杏「ないよ。杏もここ数年やってないけど、『鬼は外、福は内』って豆投げるだけだって記憶してるぞ」

P「俺は好きだぞ、柚のそういうとこ」

凛「どさくさに紛れて何を言ってるのプロデューサー、刺すよ」チョン

P「わき腹はやめてください、しんでしまいます」ビグンビグン

柚「ほら、たとえばコーランにライターの火近づけて、『去れ鬼よ……さもなくば』って」

P「なぜイスラーム教を巻き込んだ」

柚「あとはまぁ、豆に爆竹混ぜたり、鬼の侵攻ルートにあらかじめ豆を撒いておいたり!」

P「豆はまきびしじゃあないぞ」

凛「殺せんせーにとっての特殊素材みたいだね」
ピピピピピ…!

P「むっ」

凛「アラート? 何これ」

柚「ま、まさか……奴が!?」

P「いや、俺のだ。仕事の時間ってやつですよ」ピッ

凛「あ、そういえば話してばっかりで作業全然進んでなかった」

柚「アタシもだ……Pサンが余計なこと言うから〜!」

P「悪いな。じゃあ俺は一足先に事務仕事してくるけど、出る時間になったらまた来るから、それまでには終わっとけよ」

凛「うん、わかった」

杏「ようやく一番うるさいのが消えるね……仁奈、着ぐるみ貸して。寝る」

仁奈「いいですよー。羊がおすすめです! モフモフでごぜーますよ!」

P「本当にもう行くぞ? 寂しいですって泣き出してもすぐには来れないぞ?」

柚「余計なお世話もいいとこだよね」

杏「早く行けよ社畜」

P「杏、あとで無理させる」ガチャ バタン
柚「ふぅ……あぁ〜んもうなんか集中できないよ〜……」

凛「相談に乗ってあげてもいいよ」ニッコリ

柚「いや、ご心配なく」

凛「そう。柚がいいならいいよ」

仁奈「柚おねーさん、疲れてるなら仁奈の羊で眠りやがりますか?」

柚「お面先に作らなきゃいけないから、あとでね仁奈チャン……はぁ」

杏「…………杏は、羨ましいと思うけどな」ボソッ

凛「え?」

柚「杏サン?」

杏「……なんでもない。寝る!」ゴロン

柚「……」

凛「……杏ちゃんが口を出すって……結構深刻なんだね」

仁奈「げ、元気が出る動物の着ぐるみを探してくるですよ!」
――― 一時間後

P「ふぅ、いい締まりだったぜ千ちゃん」ガチャ

凛「そういう人だと分かってはいたけども」

P「冗談だよ、俺はまだ純潔だ。お面作りはもう終わってるか?」

凛「私はね。でも柚がまだ」

柚「う〜……ごめん、Pサン。全然頭が……」

P「マジかよ。でも、もう出る時間だしな」

仁奈「杏おねーさん、起きるですよ」ペチペチ

杏「起きてるから。何でお尻だけ叩くんだよ仁奈……」

P「仕方ない、優先すべきはレッスンと仕事だ。杏立てコラァ! 仕事、仕事、仕事ぉ!!」ガシッ グワァーン

杏「そのまま抱えていてほしいよプロデューサー」

柚「…………」シュン…

P「……あ、そうだ。なぁ柚ちゃん」

柚「……何? Pサン」
―――そして豆まきタイム!

P「トレーナー4姉妹さんが全員風邪引いちゃって、レッスンなくなったんだぜ」

卯月「自主練習もいいですけど、せっかくこういうのに参加できるなら!」

蘭子「昇華は地獄の闇と、天国よりの光の調和によって為される!(みなさんと一緒にイベントに参加するのも大事だと思います!)」

未央「えへへ、私たちも混ぜてね〜!」

杏「……よし、これで杏が動かなくてもよくなったね」テクテク

凛「またまた御冗談を。杏ちゃんは私が作った鬼お面を無駄にするつもりなのかな」ガシッ

杏「鬼? あのどう見てもトーテムキラーな奇面が何って?」

仁奈「何とか仁奈のお面も間に合ってよかったのですよ!」ピョンピョン

卯月「あ、かわいいお面だね〜! 手作り?」

仁奈「作ってくれたのは柚おねーさんですよ!」クルクル〜

卯月「そう、良かったね!」

仁奈「これで仁奈も鬼の気持ちになれるはずです! 鬼畜桃太郎が根城、本土戦線も必・トラトラトラでごぜーますよ!」

卯月「プロデューサーさん!? 仁奈ちゃんに余計なこと教え過ぎだと思いますよ!」
柚「む〜……」ムスッ

P「……どうしたんだ、柚」

柚「どうしたって……Pサンのイジワル。アタシが豆まき作戦練ってたの聞いてたでしょ?」

柚「そりゃあ、レッスンがなくなってなかったら、お面は間に合ってなかったけどさ……」

柚「だからって、アタシを鬼にする必要ないと思うよ!」

P「まぁまぁ、柚のことだし、どうせ今まで鬼役やったことなんてなかっただろ?」

柚「鬼なら来年やるつもりだったよ! 今日ぐらい、何もアタシじゃなくたって……」

P「来年かぁ……来年も豆まきに参加できるかな?」

柚「それは……っ」

P「……できる?」

柚「……わかんない」

P「そうか。俺はできる。……って、思うことにしてるよ」

柚「……あっそ」

P「うん。でもできないかもしれないから、俺は今回をめいっぱい楽しむつもりだ。杏立てやゴラァ!」ガッシィ!

柚「……どういうことなのさ……」
凛「はい動かないで。今つけるからね」カポ

杏「うわ、このお面全然前が見えな……あ、動かなくてもいいよってことか、さすが凛」

凛「あ、これはやっちゃったかな」

P「よいしょっと……柚。俺は結局、何でもそうした方が気が楽だから、そういうものだって思うことにしてる」

P「そして見る限り柚は、俺の考えと相性が良さそうだから。だから、今回はそれが少しでも伝わればいいって思ってるんだ」

柚「ま、ますます意味が分からないんだけど」

P「俺の理想のパターンだと、終わるころには柚には伝わってる。だからさっさと始めよう!」

未央「あ、あの……プロデューサー……」

P「ん、どうした未央?」

未央「こ、これ……私のお面って、このオッドアイのなんですか……?」ガクガク

蘭子「定められし因果の鎖は何人にも断ち切れぬという暗示がごとし!(かっこいい! とっても似合ってますよ未央さん!)」

未央「あ、あはは……(カポ)……目がチカチカするよ〜!」

卯月「なんかすっごく未央ちゃんらしいお面だね、それ!」

未央「ど、どういう意味よそれ!」
―――エントランス

P(鬼)「豆は持ったか〜」

凛「うん、持ったよ」

蘭子「決戦の時!(準備万端です!)」

未央(鬼)「あの、本気で投げちゃダメだよ!」

仁奈(鬼)「仁奈には本気で来てくだせぇ……! 血が滾ってて苦しい……でも同時に気持ち良くもあるんですよ……!」ハァハァ

杏(鬼)「それ以上いけない」

柚(鬼)「は、早く始めた方がいいね」

卯月「ていうか鬼多すぎるでしょう!!」ガーン!

凛「皆いろいろと業が深いからね」

P(鬼)「そうそう、今ふと、アイドルが素手で投げた豆を全身に食らうのか〜とか考えだしたら」

P(鬼)「弾道が1上がったにも関わらずスーツを脱ぎたくなってきた俺だもん。さぁ、早く祓ってくれよ」グッ

凛「そのサムズアップはさすがにキモすぎる」バラァン!

P(鬼)「どわっ!」ペチペチーン

蘭子「! さぁ、狂宴の幕開けよ!」
卯月「てぇい! 広範囲鬼は外ー!」シューン

未央(鬼)「きゃあー! あははは!」バタタタタ

杏(鬼)「……面が全部弾いてくれる」テカカカカーンテトラカーン
                       ・ ・ ・ ・ ・
仁奈(鬼)「本気で来てくだせー! 命、捨てがまるは、今ぞ!!」トテテテー

蘭子「仁奈ちゃん、鬼は外!」ポーイ

仁奈(鬼)「集中砲火! そういうのもありやがるんですねー!」バッシャー!

柚「な、何が何か分からないうちに始まった……」

柚「…………」

ワー キャー   チョ、ホントニイタイ!   カクゴセヨ!
      
    オニハーソトー!      アハハハー!


柚「……出遅れたなぁ……」
柚「…………」

柚(……アイドルの世界は楽しい。アイドルになる前ももそれなりに楽しかったけど、けどやっぱり比べ物にならない)

柚(でもそれもいつか終わる。笑って、怒って、泣いて、でも仲良く、頑張って。こんなに楽しい世界は、他にはきっとないと思う)

柚(私は、アイドルになったことを少し後悔した……こんな楽しい、でも短い世界を知ってしまったから)

柚(Pサンの言うとおり、アイドルをやめたあとは、無刺激で退屈な世界が続くのかなって、思ったから)

柚(そしたらPサンはこう言ってくれた。先のことなんて……って。続くのは、多分『分からない』かな)

柚(さっきも、豆まきは来年もできると思うことにしてるって。でもできないってことも、あり得るから……)

柚(今をめいっぱい楽しむことにしてるって……)

柚(……難しい。頭がこんがらがってきた……)

柚(要するにPサンは、先のことなんて気にせずに生きてるってこと?)

凛「鬼はー外ー」シュッ

柚「え? ―――わひゃあ!?」バッシャーチ
柚「っ……び、ビックリしたー!」

凛「ネガティブ鬼が付いてるね、柚」

柚「え、えぇ?」

凛「らしくないよ。柚ならもっと楽しめるはずだよ」パクッ ポリポリ

凛「しょれにいつもの柚なら……あとになって、もっと楽しんどけばよかったーって思うの、一番嫌だって思うと思う」モグモグ

柚「……あ」

凛「柚が何か悩みにぶつかってるのは分かるよ。詳しくは知らないけどね」

凛「でも、それに流されてこんなイベントに手を抜くっていうのは、柚にはあわなそう」

柚「……そう……だね。……うん、そうだ」

凛「ゴクン……ふふ、落ちてきたね、鬼。もうひといき!」シュッ

柚「よぉー!」バチバチーン!
柚(……そうだ、凛サンの言うとおりだ)

柚(いつものアタシなら、楽しいことを目の前にして、楽しみ切らないのは、一番嫌がること)

柚「……うん、分かったよ。ごめんね、凛サン!」

凛「謝る必要まったくなし。ほら、行こう」シュッ

柚「招いておきながらなんで豆投げるー!」バシャーン!

柚(……うん。目の前にこんな楽しいことがあるんだ。アタシは、それを楽しみ尽くしたい!)


卯月「杏ちゃんには体の中から浄化してあげなきゃね〜!」ガシッ

蘭子「開け、魔界の門よ!(杏さん、口を開けてください!)」

杏(鬼)「し、正気かお前ら! 何で、もう食わせようとしてるんだ! 離せ〜!(無抵抗)」

仁奈(鬼)「ふぅ……さすがに疲れたでごぜーます……」クッタリ

P(鬼)「くたびれるのはまだ早いぞ仁奈ちゃん! 立て、立つんだ!」

未央(鬼)「や、やっぱり鬼の方が人数多いっておかしかったですよね! 何で狙われてない鬼がいるの!?」
凛「やっほ。戻ったよ。壁の方を向いて手をつけなさい」

未央(鬼)「目的が変わってるよねそれ!?」

蘭子「怠惰妖精浄化完了の啓示! 悪鬼よ、常闇に沈めー!(鬼は外)」バッ バララー

柚(鬼)「蘭子チャン、アタシにも撒いて!」

蘭子「ほう……自ら消滅を望むとは、大した根性ね! カタストロフを!」ビャッ

柚(鬼)「うわーやられたー! よし、アタシは改心するよ! 蘭子チャン、交代しよう!」

蘭子「な、何を!?」

柚「ほら、えーっと、アレだよ……堕天! 蘭子チャンは堕天するんだよ! 一方アタシは黄泉返り」

蘭子「! て、天啓を得たか同士よ!(それすごくいい! ナイスアイデアですよ柚さん!)」


凛「お、柚の本領発揮だね」

P(鬼)「ロール交代かよ、意味わかんねー! ……まぁ、吹っ切れたみたいで良かった」

蘭子(鬼)「我は闇……」
未央「じゃあ私も! はい卯月、チェーンジ!」

卯月(鬼)「お? お? ……おおー! 目が眩む……!」

未央「あははは! オッドアイの苦しさを知れー! 鬼は外!」バシャーン

卯月(鬼)「きゃー! 助けて仁奈ちゃーん!」タッタッタ

仁奈「ふっふっふ……仁奈はもう鬼ではねーのですよ! どちらかというと豆まきの鬼でごぜーます!」

凛(鬼)「……(仁奈ちゃんのお面、いいにおい)」

柚「凛サン、さっきはよくも! 鬼は外ー!」バラァン!

凛(鬼)「わー」ペチカカカーン

P(鬼)「おお、なんだか混乱の様相を極めてきたな」

杏(鬼)「の、のどかわいた……杏はまだ還暦を迎えてないってのに馬鹿みたいに食わせやがって……」

蘭子(鬼)「無の静寂を恐れよ……(にぎやかで楽しいです)」

仁奈「そこの鬼たち! 覚悟するです!」ポイポイポーイ

P(鬼)「おう、祓われるぜ」
卯月「はぁ……はぁ……プ、プロデューサーさん! はい、お面!」

P(鬼)「え、何? かぶっていいわけ?」

卯月「違いますよ! えっと……私も改心したので、豆まき側に戻りますってことで……」

凛「あ、じゃあ私も。プロデューサーの背中にかけておこう」ペタペタ

未央「どうなってんのソレ!? スーツに引っ付いてるの!?」

蘭子「我が友よ、背中に任せた」ペタ

P(鬼)「機転利かせるな。っておい、俺はなんでお面を合計4つも身に着けてるんだ?」

柚「あははははは! よっぽどPサンの心が穢れまくってるってことだね!」

仁奈「最低野郎でごぜーますよ!」ケラケラ

卯月「えへへ、じゃあこれでー……鬼はー外ー!」バッ

未央「食らえ、プロデューサー!」ポーン

凛「このまま帰ってこないでいいよ」シャッ

P(鬼)「うおお、なんで俺だけこんな!」バタラッラララタタタタッタ
P(鬼)「仕方ない、俺たち鬼は大人しく逃げるぞ杏鬼」

杏(鬼)「杏は足をやられたよ、担いで行ってほしいな」

P(鬼)「応! あ、お前ら次は屋内に向かって『福は内』だぞ」

柚「分かってるって! 早く退散しやがれー!」

仁奈「しやがれー!」ポイッ

P(鬼)「いてて……ふん、ではさらばだ!」スタコラサッサー


卯月「ふぅ……やっぱり節分はこれをしないとね!」

凛「だね。終わったら掃除ということも残ってるけど」

柚「あ、掃除か! あぁ〜そんなこと全然考えずに撒いちゃったよ〜!」

凛「ふふ……でもそれ。考え無しに豆まき楽しんだこと、後悔してる?」

柚「……ううん、全然!」ニカッ

未央「楽しかったね〜!」
―――夜

P「仁奈ちゃん見送り完了っと」ガチャ バタン

柚「おっつー」

P「それほど仕事も残ってないし、柚も駅までは送ってくよ」

柚「本当? 助かるよ〜」

P「感謝しろよ。めちゃくちゃ感謝しろよ」

柚「はいはい。あ、杏サンは?」

P「杏は帰るのだけは迅速だからな。俺はいらない」

柚「ぷっ、杏サンらしいよ」

P「まったくだ」

柚「…………」

P「…………」
P「……そういえば」

柚「うん?」

P「……ほんのちょっとだけ、吹っ切れた感じじゃないか」

柚「あー」

P「どう、俺の考えは伝わった?」

柚「多分ね。早い話が、先のことなんて考えずに今を生きようぜってことでしょ?」

P「え、えぇ……悪意ある解釈したな。俺のとはちょっと違う気がする」

柚「どういうこと?」

P「先のことを考えないっていうのは全然違う。それは刹那主義って言って、自堕落な感じが強いよ」

P「俺が言いたかったのは、先のことは分からないから、後悔しないように行動してみようってこと」

P「未来を見ないことにしてるどころか、未来のために、今を楽しんでるんだ」

P「もともと楽観的なところのある柚なら、あの時楽しんでおけばーってなるの、嫌いだろ?」

柚「それ凛サンにも言われたよ。アタシってそんなに分かりやすいかな〜?」

P「はは、どうだろ」
P「いずれにせよ今日、柚は、計画が台無しになったあの状況で、なお面白みを求めて」

P「鬼役を交代するって遊びを思いついた。それも、無理なく説得できる蘭子から始めるっていう機転も見せた」

P「きっとこの先、陥ってしまった予想外の、それもつまらない状況だって、柚なら楽しいものに変えられるだろうさ」ポンポン

柚「て、照れちゃうね……ていうか、鬼にしたのにはそういう意図があったんだ」

P「さすがだろ? これはアイドルマスターになれる日も近いな、ははは!」

柚「まずはアタシをデパートの屋上から先に進められるようになってから言ってね」

P「あぁもう、ほんっと……ほんとごめんなさい。あの……め、迷惑かからないように死にますから……」

柚「……えへへ! いい武器見っけたね」

P「あぁもうどうしようほんと……やっぱ練炭かな……飛び降りは論外として……クビ吊っても糞尿やばいし……」

柚「だからー、いちいち落差が激しいんだってば!」

P「電車なんてもう、最後ぐらい迷惑かけまくって死んでやる! レベルの人間嫌いしかしないよな……あ、海に身投げすれば」

柚「……まったくもうっ」

柚(……今やっと、Pサンの言いたかったことを、理解できた気がする)

柚(……結局、先のことなんて誰にも分からない。でも、分からないからって考えるのをやめるんじゃなくて)

柚(たとえば暗い未来になっちゃった時、振り返って、笑顔になれるような過去を持てるように生きよう)

柚(過去に戻りたいってさらにブルーになるかもしれない……でも、あの時のような楽しさを、ここでも味わってやる! ってエネルギー源になるかもしれない)

柚(そういうことだよね? Pサン)
柚「……それなら、アタシは楽しい思い出を持つほうを選ぶかなー」

P「え……何か仰いましたか……?」

柚「何でもないよ! ただ、アタシとPサンは結構相性いいかもね♪って思っただけ!」ウインク☆

P「……それは良かった」

柚「ほら、待ってるから、さっさと仕事終わらせてきなよ♪」

P「お、おう……なんか急に元気になったけど、まだその悩みは解決したことにしておくなよ」

P「思春期なんだから、もっとうんうん悩んでから、自分で答え出すんだぞ? 今回みたいなのは、一日で解決できるような」

柚「分ーかったって! あ〜どんどん帰るのが遅くなりそー!」ジタバタ

P「……まったく。じゃあ30分ぐらい正座して待ってろよ、仕事片付けてくる」ガチャ バタン

柚「へ〜い」ヒラヒラ

柚「……ふ〜」ゴロン

柚(……やっぱり、アイドルになって良かった♪)

柚「……これからもヨロシクね、Pサン」

柚「なぁんて! えへへ〜♪」ゴロゴロー
―――二日後

P「……反省してます」

楓「……私、泣きましたわ」

P「えと……わたし、まき……あれ、回文じゃない」

楓「本当に涙が溢れたんですからね。もう、てぃあーって」

P「ダジャレ交えると本当に怒ってるのか分からないので一思いにビンタしてください」

楓「暴力なんかでこの気持ちを解決したくないです!!」


柚「……あれはいったい何をしてるの?」

凛「プロデューサーが楓さんに、豆まきが楽しかったことを、これでもかというぐらいに誇張してメールしたんだって」

未央「なんか動機聞くと微笑ましいよねー」モフモフ

仁奈「楓おねーさんは、本当はとっても仲間思いでやさしいんでごぜーますよ」

蘭子「星の集いし夜の儀式(今度は全員そろって何かを楽しめたらいいですね)」モフモフ
杏「誰か、どこか静かな場所に連れて行ってくれ……喧嘩がうるさくてかなわない」

凛「眠りに堕ちれば万事解決だよ」

卯月「聞いてたら面白いよね、あの喧嘩。結局、楓さんは私達が羨ましかっただけっていうのが、かわいい!」

柚「あはは……あ、そうだ。羨ましいで思い出したんだけど、杏サン」

杏「なんや?」

柚「アタシがあの日悩んでたの見て、羨ましいって言ったの……あれ何だったの?」

杏「はぁ? そんなこと言っ……! ……てないね、うん。言ってない……」

杏(い、言えるはずがない……Pに後ろ向き発言を真面目に対応してもらえるのが羨ましかっただけだなんて……!)カァー…

柚「え? 言ったでしょ、凛サンも聞いてたよね?」

凛「聞いたね。……うん、言いそうにないなら仕方ない。……吐かせよう」ワキワキ

柚「お! んふふ……さァんせー」ワキワキ

杏「え、ちょ……いやだっ……や、やめろぉー!!」


P「まぁ楓サン、あんなのほとんど誇張ですよ。マメまきに本気になる人なんて、マーメったにいません」

楓「反省してないですよね?」

                            ―――終わり―――
何とか節分に間に合ってよかったです
読んでくれてありがとう

23:30│喜多見柚 
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