2013年12月04日
モバP「クライシスイーツ」
法子「あたしにとって……ううん。あたし達にとっては、忘れられない日がある」
法子「……それは、プロデューサーからスイーツ禁止令が出された日」
法子「……それは、プロデューサーからスイーツ禁止令が出された日」
法子「事務所で、スイーツ狩りが始まった日」
法子「でも、一番忘れられないのは……あたしのドーナツが、取り上げられた日」
法子「そう、あれは確か……6月の終わり頃――」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1372416676
〜女子寮〜
法子「………」キョロキョロ
法子「……よし、誰もいない」
コンコン
『……めでたいものは、なんですぞ?』
法子「………」
『めでたいものは、なんですぞ?』
法子「『それはおめぇの頭の中だ』」
ガチャッ
かな子「ようこそ、“ミス・ドーナツ”」
杏「ふわぁ〜……これで最後?」
法子「遅くなっちゃってごめんなさい。“KNK”、“ドロップス”」
かな子「“パルフェ”さん、『スイーツクラブ』のメンバーは全員集まったみたいです」
志保「……そうみたいね」
法子「あれ?……ちょ、ちょっと待って!」
志保「どうしました?」
法子「“女子力”さんが見当たらないんですけど……どこに?」
かな子「………」
志保「残念だけど……“女子力”さんは今朝、プロデューサーさんに“摘発”されました」
法子「!」
杏「助手席にいたきらりに、ルームミラーでばっちし☆うきゃー☆」
杏「迂闊だよね〜。後部座席でこっそり頬張るとか、そらバレるっての……あむっ」パクッ
かな子「で、でも“女子力”さんは、スイーツの隠し場所を話すような真似、しないと思うんです。きっと」
法子「確かに軽いところはあったけど……このクラブを一番気に入ってた人だしね」
杏「ポロッと口を滑らせないことを祈るばかりだよ、まったく」モゴモゴ
志保「それで、予定を変更して一時的に私の部屋に集まってもらったんだけど……」
法子「……会合場所の変更、ですね?」
志保「えぇ」
かな子「今回は、どこに?」
志保「“女子力”さんと懇意にしていた紅茶会の会長が、特別に場所を提供してくれたの。そこで……」
法子「紅茶会……」
杏「うわぁ……これは絶対めんどくさい事になるね。絶対にだ」
志保「“女子力”さんの件について色々聞かれると思うけど、そこは我慢してね」
かな子「わ、分かりました!」
〜会合場所〜
ブロロン ブロロン
杏「……流石にリムジンで送迎されるとは思わなかった。その発想はなかった」
かな子「わ、私も、あんな車初めて乗りました……」
志保「紅茶会の会長なら、造作も無いことみたいね」
法子「それにしても大きな倉庫ですね……」
周子「あ、スイーツクラブだ」
かな子「周子さん!?何故ここに……」
周子「どーもどーも。実はさ、シューコ達も紅茶会に呼ばれてるんだよねー」
杏「ふーん……和菓子連合が、ねぇ」
周子「結構需要あるんだよ、ウチも……あ、聞いたよー?美紗希さんの件」
法子「ぐっ……」
周子「あんまりプロデューサーとちひろさん、怒らせないでよね?」
周子「とばっちりで監視強化されたらたまんないし……」
菜帆「周子ちゃ〜ん?」
志保「……!」
法子「な、菜帆さん……!?」
菜帆「わざわざ文句を言いに、ここまで来たわけじゃないでしょ〜?」
周子「それは、そうだけど……」
菜帆「皆〜、元気してる?そうそう、この間良いお店見つけたんだけどね〜」
志保「……ちょっと、海老原さん。勧誘はやめてくれません?」
菜帆「あら、ご挨拶ね〜。ちょっと誘っただけじゃない」
志保「………」ギリッ
「両者、そこまでですわ!」
雪乃「まさか、この場で縄張り争いを始めるおつもり?何て身勝手な……」
桃華「これでは何のための連絡会なのか、分かりませんわね」ヤレヤレ
琴歌「ええと……皆様、仲良くいたしましょう?」ニコッ
杏「(ようやくお出ましか〜)」
かな子「(そうそうたる面々ですね……)」
志保「(スイーツの知識を提供する代わりに、こちらには物資を……)」
周子「(相互利益を保障する、あたし達最大のスイーツ供給元……紅茶会)」
菜帆「(いつもながら、お嬢様ばかりね〜)」
雪乃「それでは、本日の議題を。スイーツクラブさん、お願いしますわ」
志保「“ミス・ドーナツ”、例のアレを」
法子「はい」ゴソゴソ
志保「……最近事務所内で、秘密裏にこのようなものが配られているようです」
周子「?何この……お菓子?」
菜帆「一口サイズで、黄色い……見たことないお菓子ね〜。何かしら?」
桃華「お答えしますわ。それはポン・デ・ケイジョ……ブラジル語で」
杏「ポルトガル語ね」
桃華「………」
雪乃「………」
琴歌「?」ニコニコ
かな子「……え、えっと、あの」
桃華「ポルトガル語で!チーズパンと言う意味の!パンですわっ!!」
周子「パン?」
志保「外はパリッと堅く、中はふんわり柔らかい……と、藍子ちゃんも絶賛していました」
菜帆「……もしかしてこれ、みちるちゃんが?」
法子「ナターリアからレシピを聞き出して、自分で作ったみたいです」
周子「あぁ、あの子リオ出身だから……そっかぁ、ふーん」
志保「これは紛れも無く、お菓子です。パンと言う名のスイーツに他なりません」
志保「私達を差し置き、彼女は無許可で、スイーツを配っているのです……!」
菜帆「……それは由々しき問題ね〜」
かな子「このパンは確かに美味しくて、やみつきになりそうなんですけど……」
かな子「みちるちゃんはつい最近入ってきたばかりで、ウチのルールを知らないんです」
志保「排除か、懐柔か。プロデューサーさん達に気付かれる前に、早急に対処すべきかと」
雪乃「……そういう事でしたら、ご心配なく。既に対処は為されていますわ」
杏「へぇ〜……一体、どんな対処を?」
琴歌「“私達”にとって、最善の手を打たせて頂きました」ニコッ
ちひろ『……えー、マイクテス、マイクテス』キィーン
法子「!」
ちひろ『ゴホン……スイーツの不正摂取で輪郭が丸くなった、スイーツ系アイドルさん達に告ぎまーす』
かな子「えっ!?」
周子「なっ……!」
ちひろ『この倉庫は包囲されています。大人しく出てきなさーい』
菜帆「……これは、どういう事かしら〜?」
雪乃「紅茶にはスコーン、スコーンには紅茶。そういう事ですわ」
桃華「ふふっ……みちるさんからいただいたスコーン、絶品ですのよ?」
法子「まさかあの子、既に紅茶会に手を回して……!?」
志保「っ……琴歌さん!一体どうしてこんな、血迷った真似……」
スカッ
志保「!?」
杏「……あー、ホログラムね。流石セレブ」
琴歌「渡りに船、と申しましょうか」ザザッ
琴歌「私も糖分の取り過ぎは、身体に良くないと思っていたところですので……」
琴歌「それでは皆様、ごきげんよう」ニコッ
ブツン
かな子「た、炭水化物の取り過ぎだって、身体によくないですよぉ!」
周子「菜帆ちゃん!裏口、誰もいないみたいだよ!」
菜帆「三十六計逃げるにしかずね〜」スタタタ
志保「み、皆も、早く逃げ……!」
バターン
茜「大人しくするんだー!!!」
真尋「だーっしゅ!!!」ダダダッ
かな子「きゃああああああっ!」ドテッ
杏「……体力バカ二人とか、無理ゲーでしょこれ」
真尋「んー……すいません!何人か、取り逃がしちゃいましたっ」
ちひろ「いえいえ。スイーツクラブはほとんど捕まえましたし、今回はそれで良しとしましょう」
茜「隠し持っているお菓子は、全部出そう!!さぁ!さぁ!!さぁぁぁぁ!!!」ゴソゴソ
かな子「え、あ、ちょ……ひゃぁぁぁっ!」ガタガタ
ポロッ
真尋「ちひろさん!服の下から、ビニールに包まれたエクレアを発見しましたっ!」
ちひろ「これは重要な証拠品ですね。没収します」
かな子「あ、ぁ……さ、最後の、エクレアが……」ヘナヘナ
志保「わ、私達は……あなた達には、決して屈しません!」
茜「だったらこっちも全身全霊、全力全身で探します!!!!」ゴソゴソ
志保「や、やぁっ!……あ、ダメ、そこ……そこはダメぇぇぇぇ!!」プルプル
ポロッ
真尋「ちひろさん!キンキンに冷えた、チョコレートサンデーがっ……大物ですね!」
ちひろ「一体どこに隠し持っていたんでしょうね」
志保「や、やだぁ……返してぇ……」プルプル
杏「えいっ」ヒョイパク
茜「!……あぁぁぁぁ!!!」
杏「ふふーん。もう飴ちゃんは、杏のお口の中だから。残念でしたー」モゴモゴ
ちひろ「では、仕方ありませんね。実力行使です」
杏「……は?」
きらり「杏ちゃーん♪」ニョワー
杏「……お、おいおいおい、おい馬鹿待てやめろ、それ以上近」
\ ア ッ ー ! /
きらり「んふっ……甘ーい☆」ペロッ
杏「ふぇぇ……」グスッ
ちひろ「納得がいかない顔をしていますね」
かな子「酷い……こ、こんなの、いくらなんでも酷すぎます……!」
ちひろ「……日頃ドリンクをがぶ飲みして仕事をしているのに、その上間食までしたらどうなるか……」
ちひろ「これは皆さんが不摂生な生活で体調、健康を損なわないための、配慮なんですよ?」
真尋「一日三食のご飯で十分ですよねっ。皆、ちょっと食べ過ぎだと思う!」
茜「激しく同意します!!!!!」コクコクコクコクコク
志保「わ、私達から没収したスイーツは、どうするつもりなんですか……!?」
ちひろ「もちろん、処分しますよ」
かな子「そんな……もったいない!」
ちひろ「いいえ、捨てはしません。この場で処分します」
かな子「!?」
志保「や、やめて!……やめてください!」ガシッ
ちひろ「………」
志保「お願いです、どうか!どうか、そのサンデーだけはっ!!」グスッ
ちひろ「……それは、かな子ちゃんのエクレアなら、食べられてもよいと?」
志保「!?ち、違っ……!」
ちひろ「ご心配なく。どのスイーツも、平等に、処分しますので♪」ニコォ
ムシャムシャ モリモリ バクバク ゴクン
かな子「あ、あぁぁぁぁ……!」ガクッ
志保「私の……太陽……」ポロポロ
ちひろ「……とは言え、流石に食べかけはいただけませんけど」ゲフー
〜西園寺琴歌の部屋〜
雪乃「……これで、よろしくて?」
みちる「あはは……ライバルが一掃されて、あたしも満足ですよ」モグモグ
桃華「それではスコーンの件、考えていただけますのね?」
みちる「そうですねぇ、こっちとしてはもう少しパンの宣伝が欲しいんですけど」ムシャムシャ
琴歌「……お膳立てを欲しているのですか?」
みちる「そりゃそうですよ。あたし、まだこの事務所に来て日も浅いんですから」フゴフゴ
みちる「皆にパンの素晴らしさを理解させるためには、まだまだ……」バクバク
バターン
みちる「んがんぐっ!?」フゴゴゴ
桃華「だ、誰ですの!ノックもせずに……」
琴歌「あら……」
「神はおっしゃいました。スイーツがなければ、ご飯を食べればよいと」
「神はおっしゃいました。パンがなければ、ご飯を食べればよいと」
雪乃「あ、あなたは……!」ガタガタ
クラリス「……そして神は、おっしゃいました。飽食とは、大罪であると」
カッ
法子「――うん。全部、お見通しだったみたい」
法子「禁止されてても、隠れてスイーツを食べてたあたし達」
法子「それに気付いてたちひろさんは、プロデューサーをそそのかして……」
法子「茜さん、真尋さんを率いるクラリスさんのごはん帝国……通称、“米帝”を動かしたの」
法子「スイーツクラブは壊滅、紅茶会も解散。和菓子連合も地下に潜っちゃった」
法子「あたしは何とか逃げおおせたけれど……」
法子「戻った自分の部屋には一個たりとも、ドーナツは残ってなかった」
法子「好きなものが、食べられない。あたしにとって、それ以上の苦痛はない」ゴソゴソ
法子「明日から始まる地獄の日々に、それはもう絶望したな〜」ムシャムシャ
法子「……変化が訪れたのは、それから数日後だったかな」モリモリ
ちひろ『おはようございます、プロデューサーさん』
P『おはようございます。ちひろさん、最近太りました?』
ちひろ『……はい?』
P『かなりむっちりしてきましたよね。今度の水着、楽しみにしてますよ』キリッ
法子「スイーツの処分、全部ちひろさんが担当してたの。タダで食べられるからってさ」ペロリ
法子「もうね、その時だけはプロデューサーのデブ専……」
法子「じゃなかった、ぽっちゃり好きとデリカシーの無さに、初めて感謝したよ〜」
法子「陣頭に立ってたちひろさんが降りた事で、処分もできなくなっちゃったから……」
法子「結局取り止めにするしかなくなったわけ。祝・規制解除!」
法子「いやぁ、ホント良かった良かった。かな子ちゃんなんか、もうゾンビ状態だったしね〜」
法子「もうみちるちゃんや和菓子連合とも和解したし、これで元の平和な事務所に……」
法子「戻れば、良かったんだけどね〜」
ちひろ「今朝発売された、ゴシップ雑誌の記事です」パサッ
『酒乱のダブルピース!某有名アイドル二人組が、○○町で朝までレッツパーリィ!』
P「………」
ちひろ「目線で隠されてはいますけど、これ……楓さんと、志乃さんですよね」
P「……参ったなぁ」
P「隠し撮りされたなら、まだ分かるんですけど……」
P「ここまでカメラ目線で、ダブルピースだと……うーん」
ちひろ「どうします?」
P「……禁酒令もやむなし、か……」
ちひろ「まずは寮の家宅捜索ですね!スケジュール調整、お手伝いしますよ」ニコォ
法子「(……規制の嵐は、まだ止みそうに無い)」モグモグ
おわり
もらったスイーツをゴミ箱に捨てずに
ちゃんと食べてくれるちひろさんは天使
法子「でも、一番忘れられないのは……あたしのドーナツが、取り上げられた日」
法子「そう、あれは確か……6月の終わり頃――」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1372416676
〜女子寮〜
法子「………」キョロキョロ
法子「……よし、誰もいない」
コンコン
『……めでたいものは、なんですぞ?』
法子「………」
『めでたいものは、なんですぞ?』
法子「『それはおめぇの頭の中だ』」
ガチャッ
かな子「ようこそ、“ミス・ドーナツ”」
杏「ふわぁ〜……これで最後?」
法子「遅くなっちゃってごめんなさい。“KNK”、“ドロップス”」
かな子「“パルフェ”さん、『スイーツクラブ』のメンバーは全員集まったみたいです」
志保「……そうみたいね」
法子「あれ?……ちょ、ちょっと待って!」
志保「どうしました?」
法子「“女子力”さんが見当たらないんですけど……どこに?」
かな子「………」
志保「残念だけど……“女子力”さんは今朝、プロデューサーさんに“摘発”されました」
法子「!」
杏「助手席にいたきらりに、ルームミラーでばっちし☆うきゃー☆」
杏「迂闊だよね〜。後部座席でこっそり頬張るとか、そらバレるっての……あむっ」パクッ
かな子「で、でも“女子力”さんは、スイーツの隠し場所を話すような真似、しないと思うんです。きっと」
法子「確かに軽いところはあったけど……このクラブを一番気に入ってた人だしね」
杏「ポロッと口を滑らせないことを祈るばかりだよ、まったく」モゴモゴ
志保「それで、予定を変更して一時的に私の部屋に集まってもらったんだけど……」
法子「……会合場所の変更、ですね?」
志保「えぇ」
かな子「今回は、どこに?」
志保「“女子力”さんと懇意にしていた紅茶会の会長が、特別に場所を提供してくれたの。そこで……」
法子「紅茶会……」
杏「うわぁ……これは絶対めんどくさい事になるね。絶対にだ」
志保「“女子力”さんの件について色々聞かれると思うけど、そこは我慢してね」
かな子「わ、分かりました!」
〜会合場所〜
ブロロン ブロロン
杏「……流石にリムジンで送迎されるとは思わなかった。その発想はなかった」
かな子「わ、私も、あんな車初めて乗りました……」
志保「紅茶会の会長なら、造作も無いことみたいね」
法子「それにしても大きな倉庫ですね……」
周子「あ、スイーツクラブだ」
かな子「周子さん!?何故ここに……」
周子「どーもどーも。実はさ、シューコ達も紅茶会に呼ばれてるんだよねー」
杏「ふーん……和菓子連合が、ねぇ」
周子「結構需要あるんだよ、ウチも……あ、聞いたよー?美紗希さんの件」
法子「ぐっ……」
周子「あんまりプロデューサーとちひろさん、怒らせないでよね?」
周子「とばっちりで監視強化されたらたまんないし……」
菜帆「周子ちゃ〜ん?」
志保「……!」
法子「な、菜帆さん……!?」
菜帆「わざわざ文句を言いに、ここまで来たわけじゃないでしょ〜?」
周子「それは、そうだけど……」
菜帆「皆〜、元気してる?そうそう、この間良いお店見つけたんだけどね〜」
志保「……ちょっと、海老原さん。勧誘はやめてくれません?」
菜帆「あら、ご挨拶ね〜。ちょっと誘っただけじゃない」
志保「………」ギリッ
「両者、そこまでですわ!」
雪乃「まさか、この場で縄張り争いを始めるおつもり?何て身勝手な……」
桃華「これでは何のための連絡会なのか、分かりませんわね」ヤレヤレ
琴歌「ええと……皆様、仲良くいたしましょう?」ニコッ
杏「(ようやくお出ましか〜)」
かな子「(そうそうたる面々ですね……)」
志保「(スイーツの知識を提供する代わりに、こちらには物資を……)」
周子「(相互利益を保障する、あたし達最大のスイーツ供給元……紅茶会)」
菜帆「(いつもながら、お嬢様ばかりね〜)」
雪乃「それでは、本日の議題を。スイーツクラブさん、お願いしますわ」
志保「“ミス・ドーナツ”、例のアレを」
法子「はい」ゴソゴソ
志保「……最近事務所内で、秘密裏にこのようなものが配られているようです」
周子「?何この……お菓子?」
菜帆「一口サイズで、黄色い……見たことないお菓子ね〜。何かしら?」
桃華「お答えしますわ。それはポン・デ・ケイジョ……ブラジル語で」
杏「ポルトガル語ね」
桃華「………」
雪乃「………」
琴歌「?」ニコニコ
かな子「……え、えっと、あの」
桃華「ポルトガル語で!チーズパンと言う意味の!パンですわっ!!」
周子「パン?」
志保「外はパリッと堅く、中はふんわり柔らかい……と、藍子ちゃんも絶賛していました」
菜帆「……もしかしてこれ、みちるちゃんが?」
法子「ナターリアからレシピを聞き出して、自分で作ったみたいです」
周子「あぁ、あの子リオ出身だから……そっかぁ、ふーん」
志保「これは紛れも無く、お菓子です。パンと言う名のスイーツに他なりません」
志保「私達を差し置き、彼女は無許可で、スイーツを配っているのです……!」
菜帆「……それは由々しき問題ね〜」
かな子「このパンは確かに美味しくて、やみつきになりそうなんですけど……」
かな子「みちるちゃんはつい最近入ってきたばかりで、ウチのルールを知らないんです」
志保「排除か、懐柔か。プロデューサーさん達に気付かれる前に、早急に対処すべきかと」
雪乃「……そういう事でしたら、ご心配なく。既に対処は為されていますわ」
杏「へぇ〜……一体、どんな対処を?」
琴歌「“私達”にとって、最善の手を打たせて頂きました」ニコッ
ちひろ『……えー、マイクテス、マイクテス』キィーン
法子「!」
ちひろ『ゴホン……スイーツの不正摂取で輪郭が丸くなった、スイーツ系アイドルさん達に告ぎまーす』
かな子「えっ!?」
周子「なっ……!」
ちひろ『この倉庫は包囲されています。大人しく出てきなさーい』
菜帆「……これは、どういう事かしら〜?」
雪乃「紅茶にはスコーン、スコーンには紅茶。そういう事ですわ」
桃華「ふふっ……みちるさんからいただいたスコーン、絶品ですのよ?」
法子「まさかあの子、既に紅茶会に手を回して……!?」
志保「っ……琴歌さん!一体どうしてこんな、血迷った真似……」
スカッ
志保「!?」
杏「……あー、ホログラムね。流石セレブ」
琴歌「渡りに船、と申しましょうか」ザザッ
琴歌「私も糖分の取り過ぎは、身体に良くないと思っていたところですので……」
琴歌「それでは皆様、ごきげんよう」ニコッ
ブツン
かな子「た、炭水化物の取り過ぎだって、身体によくないですよぉ!」
周子「菜帆ちゃん!裏口、誰もいないみたいだよ!」
菜帆「三十六計逃げるにしかずね〜」スタタタ
志保「み、皆も、早く逃げ……!」
バターン
茜「大人しくするんだー!!!」
真尋「だーっしゅ!!!」ダダダッ
かな子「きゃああああああっ!」ドテッ
杏「……体力バカ二人とか、無理ゲーでしょこれ」
真尋「んー……すいません!何人か、取り逃がしちゃいましたっ」
ちひろ「いえいえ。スイーツクラブはほとんど捕まえましたし、今回はそれで良しとしましょう」
茜「隠し持っているお菓子は、全部出そう!!さぁ!さぁ!!さぁぁぁぁ!!!」ゴソゴソ
かな子「え、あ、ちょ……ひゃぁぁぁっ!」ガタガタ
ポロッ
真尋「ちひろさん!服の下から、ビニールに包まれたエクレアを発見しましたっ!」
ちひろ「これは重要な証拠品ですね。没収します」
かな子「あ、ぁ……さ、最後の、エクレアが……」ヘナヘナ
志保「わ、私達は……あなた達には、決して屈しません!」
茜「だったらこっちも全身全霊、全力全身で探します!!!!」ゴソゴソ
志保「や、やぁっ!……あ、ダメ、そこ……そこはダメぇぇぇぇ!!」プルプル
ポロッ
真尋「ちひろさん!キンキンに冷えた、チョコレートサンデーがっ……大物ですね!」
ちひろ「一体どこに隠し持っていたんでしょうね」
志保「や、やだぁ……返してぇ……」プルプル
杏「えいっ」ヒョイパク
茜「!……あぁぁぁぁ!!!」
杏「ふふーん。もう飴ちゃんは、杏のお口の中だから。残念でしたー」モゴモゴ
ちひろ「では、仕方ありませんね。実力行使です」
杏「……は?」
きらり「杏ちゃーん♪」ニョワー
杏「……お、おいおいおい、おい馬鹿待てやめろ、それ以上近」
\ ア ッ ー ! /
きらり「んふっ……甘ーい☆」ペロッ
杏「ふぇぇ……」グスッ
ちひろ「納得がいかない顔をしていますね」
かな子「酷い……こ、こんなの、いくらなんでも酷すぎます……!」
ちひろ「……日頃ドリンクをがぶ飲みして仕事をしているのに、その上間食までしたらどうなるか……」
ちひろ「これは皆さんが不摂生な生活で体調、健康を損なわないための、配慮なんですよ?」
真尋「一日三食のご飯で十分ですよねっ。皆、ちょっと食べ過ぎだと思う!」
茜「激しく同意します!!!!!」コクコクコクコクコク
志保「わ、私達から没収したスイーツは、どうするつもりなんですか……!?」
ちひろ「もちろん、処分しますよ」
かな子「そんな……もったいない!」
ちひろ「いいえ、捨てはしません。この場で処分します」
かな子「!?」
志保「や、やめて!……やめてください!」ガシッ
ちひろ「………」
志保「お願いです、どうか!どうか、そのサンデーだけはっ!!」グスッ
ちひろ「……それは、かな子ちゃんのエクレアなら、食べられてもよいと?」
志保「!?ち、違っ……!」
ちひろ「ご心配なく。どのスイーツも、平等に、処分しますので♪」ニコォ
ムシャムシャ モリモリ バクバク ゴクン
かな子「あ、あぁぁぁぁ……!」ガクッ
志保「私の……太陽……」ポロポロ
ちひろ「……とは言え、流石に食べかけはいただけませんけど」ゲフー
〜西園寺琴歌の部屋〜
雪乃「……これで、よろしくて?」
みちる「あはは……ライバルが一掃されて、あたしも満足ですよ」モグモグ
桃華「それではスコーンの件、考えていただけますのね?」
みちる「そうですねぇ、こっちとしてはもう少しパンの宣伝が欲しいんですけど」ムシャムシャ
琴歌「……お膳立てを欲しているのですか?」
みちる「そりゃそうですよ。あたし、まだこの事務所に来て日も浅いんですから」フゴフゴ
みちる「皆にパンの素晴らしさを理解させるためには、まだまだ……」バクバク
バターン
みちる「んがんぐっ!?」フゴゴゴ
桃華「だ、誰ですの!ノックもせずに……」
琴歌「あら……」
「神はおっしゃいました。スイーツがなければ、ご飯を食べればよいと」
「神はおっしゃいました。パンがなければ、ご飯を食べればよいと」
雪乃「あ、あなたは……!」ガタガタ
クラリス「……そして神は、おっしゃいました。飽食とは、大罪であると」
カッ
法子「――うん。全部、お見通しだったみたい」
法子「禁止されてても、隠れてスイーツを食べてたあたし達」
法子「それに気付いてたちひろさんは、プロデューサーをそそのかして……」
法子「茜さん、真尋さんを率いるクラリスさんのごはん帝国……通称、“米帝”を動かしたの」
法子「スイーツクラブは壊滅、紅茶会も解散。和菓子連合も地下に潜っちゃった」
法子「あたしは何とか逃げおおせたけれど……」
法子「戻った自分の部屋には一個たりとも、ドーナツは残ってなかった」
法子「好きなものが、食べられない。あたしにとって、それ以上の苦痛はない」ゴソゴソ
法子「明日から始まる地獄の日々に、それはもう絶望したな〜」ムシャムシャ
法子「……変化が訪れたのは、それから数日後だったかな」モリモリ
ちひろ『おはようございます、プロデューサーさん』
P『おはようございます。ちひろさん、最近太りました?』
ちひろ『……はい?』
P『かなりむっちりしてきましたよね。今度の水着、楽しみにしてますよ』キリッ
法子「スイーツの処分、全部ちひろさんが担当してたの。タダで食べられるからってさ」ペロリ
法子「もうね、その時だけはプロデューサーのデブ専……」
法子「じゃなかった、ぽっちゃり好きとデリカシーの無さに、初めて感謝したよ〜」
法子「陣頭に立ってたちひろさんが降りた事で、処分もできなくなっちゃったから……」
法子「結局取り止めにするしかなくなったわけ。祝・規制解除!」
法子「いやぁ、ホント良かった良かった。かな子ちゃんなんか、もうゾンビ状態だったしね〜」
法子「もうみちるちゃんや和菓子連合とも和解したし、これで元の平和な事務所に……」
法子「戻れば、良かったんだけどね〜」
ちひろ「今朝発売された、ゴシップ雑誌の記事です」パサッ
『酒乱のダブルピース!某有名アイドル二人組が、○○町で朝までレッツパーリィ!』
P「………」
ちひろ「目線で隠されてはいますけど、これ……楓さんと、志乃さんですよね」
P「……参ったなぁ」
P「隠し撮りされたなら、まだ分かるんですけど……」
P「ここまでカメラ目線で、ダブルピースだと……うーん」
ちひろ「どうします?」
P「……禁酒令もやむなし、か……」
ちひろ「まずは寮の家宅捜索ですね!スケジュール調整、お手伝いしますよ」ニコォ
法子「(……規制の嵐は、まだ止みそうに無い)」モグモグ
おわり
もらったスイーツをゴミ箱に捨てずに
ちゃんと食べてくれるちひろさんは天使
08:30│椎名法子