2013年12月10日

涼「ぎゃおおおん!」

涼「ぎゅいいいん!」

愛「……」

涼「どかあああん!」


絵理「……」

涼「ばりばりいいい!!」

愛「どうしてこうなっちゃったんでしょう……」

絵理「……私に聞かれても」

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愛「涼さん……大丈夫でしょうか」

絵理「……大丈夫に見える?」

絵理「……何故か楽屋に置いてあった飛行機のおもちゃと怪獣のフィギュア」

絵理「……それを両手に独り遊びしてるのよ?」

絵理「……いわゆる、幼児退行状態?」

愛「そんな冷静に言われても……」

絵理「これでも相当焦ってるつもりなんだけど」
【数十分前】

愛「いよいよ明日ですね! 876プロ初めてのオールスターライブ!!」

絵理「……普段は別々で活動してるから、何だか新鮮?」

涼「そういえば、765の皆さんがスターへ駆け上がるきっかけになったのも、合同ライブを成功させてからだしね」

愛「はいっ! 私たちもちょっとずつランクも上がって来た今、このチャンスは逃せませんよね!!」

絵理「会社としても社運がかかってるって」

涼「それじゃあ、今日も頑張ってリハーサルしようか」
〜♪

涼(まだ早いかもしれない……けど、もうこれ以上みんなを騙し続けられないよ……)

涼(明日は重大発表、ってことで僕が実は男だってことを言わないと……)

涼(その発表がうまい方向に傾くように、今日も社長たちは駆けずり回ってくれてる……)

絵理「……なんだか、今日の涼さんは集中力を欠いてる? ダンスにいつものキレが無いような……」

涼(そのためにも、明日のライブでみんなを黙らせられるくらいのものを……)

愛「あっ! 涼さん危ないです!!」

涼「え?」 グラッ

ドンガラガッシャーン
---

愛「ステージから落ちて頭を強く打っちゃった涼さん……」

絵理「……命に別状は無さそうだけど、それ以来ずっとこの調子」

涼「ぶうううん!! がおおおん!!」

愛「絵理さん……やっぱり救急車を呼びましょう!」

絵理「……だからダメだって、そう社長からも言われてるんだから」

絵理「大事なライブの前日に、主役の一人が病院に担ぎ込まれたなんてなった日には事務所の信頼はガタ落ち」

絵理「……せっかくAランクが見えるところまで頑張って来た努力も全部水の泡?」

愛「……でも! これじゃ涼さんがかわいそうですよ! 社長は涼さんがこのままでもいいって言ってるんですか!?」

絵理「……そういうわけじゃないと思う? 今は外出先から、信頼できる人を連れて急いで戻ってくる、って」

絵理「それまでの間は私たちに涼さんを見ていてほしい、って」
愛「でも、ちゃんと事故だって説明すればきっとみんなだって納得して……」

絵理「……社長はこうも言ってた。今回のライブは私たち3人が揃うことに意味があるんだ、って」

涼「ぶいいいん!!」

絵理「愛ちゃんも、私も……もちろん涼さんも、誰一人欠けてもこのライブは成功しない」

涼「ぎゅんぎゅううううん!!」

絵理「……だから、何とか出来るように今走り回ってるみたい?」

涼「ひゅうううん!」

絵理「社長が何を考えているかは分からないけど……そこまで言うなら信じるしかないじゃない?」

涼「ぐおおおん!!」

愛「絵理さん……」

涼「ちゅどおおおん!」

絵理・愛(イラッ)
涼「びええええん!!」

愛「うぅ……思わず怒っちゃいました」

絵理「……愛ちゃんも私も、とりあえず落ち着くべき? 子供?のやることだし」

愛「はい……こんなことになっちゃって焦ってたのかもしれません」

絵理「ごめんなさい、涼さん」 ナデナデ

涼「ぐすん」
絵理「……でも、ちょっと意外?」

愛「何がですか?」

絵理「涼さんって、料理も上手だしもっと女の子女の子した趣味してるのかと」

愛「あぁ、確かに! 涼さんだったら小さい頃からもっとりゅんりゅんした感じだと思ってました!」

絵理「……でしょう? 私たちも小さい頃はお人形やぬいぐるみで遊んでたけど」

愛「今の涼さんはちょっと違う感じ、ですよね」

涼「ぶーん、ぶーん」
絵理「……もしかして?」

愛「? 何か分かったんですか、絵理さん!?」

絵理「……涼さんって実は男……」










絵理「……の子みたいに育てられたのかも?」

愛「ど、どういうことですか?」

絵理「実は親御さんは男の子が欲しかったけど生まれたのは女の子だった、って話は世間でも時々聞くし」

愛「あぁ! それなら分かります!」



---

?「ックシュン!」

??「真ちゃん……風邪?」

?「大丈夫だよ、雪歩……誰か噂してるのかなぁ」

---
愛「それにしても……社長たち、遅いですね」

涼「ぎゅんぎゅんぎゅーん」

絵理「見ていて、とは言われたけど……このままにしておくのは心配?」

愛「そうだ! 私たちの力で涼さんを治してあげればいいんですよ!」

愛「同じ事務所の仲間なんですから、こんな時に力になれないなんて、私嫌です!」

絵理「それは私もイヤだけれど……どうするの?」
愛「ママがよく言ってます! 調子の悪くなった機械とか、斜め45度から思いっきり引っ叩けばすぐに直るって!!」

絵理「でも、それと涼さんを一緒にするのは……」

愛「大丈夫です! ママはパソコンだってそれで一発で直しちゃうんですから!!」

絵理「なにそれこわい」

愛「ものは試しですっ! 涼さん、ごめんなさいっ!!」

涼「?」



ドゴッ
        グキッ
絵理「……今、聞こえちゃいけない音が聞こえたような?」

愛「大丈夫です! 手応えはありました!!」

絵理「いや、『グキッ』って……もしかしたら事態がより悪化するかも?」





涼「うわああああん!!」

絵理「……よかった? 無事だったけど、無事じゃないみたい」

愛「そんなぁ……」

絵理「治らなくて残念だけど、無事でホッとしたような複雑な気持ち」
絵理「……でも、愛ちゃんのやり方はいい線を突いていると思う?」

愛「う〜ん、何でダメだったんだろう?」

絵理「……きっと衝撃が足りなかった?」

絵理「『バック・トゥ・○・フューチャー』とかでも、過去に行くのと未来に戻るのに同じだけのエネルギーが必要だった」

絵理「……だから、きっと同じ衝撃を与えないと涼さんも元に戻れない?」

愛「同じ、ってまさか……」
【ステージ】

涼「キャッキャ」

絵理「……というわけで、事故のあったステージに涼さんを連れてきた?」

絵理「……ここからもう一度落とせば、涼さんも元に戻れるかも?」

愛「だ、ダメですって!! そんなことしたら今度は死んじゃうかもしれませんよ!?」

絵理「愛ちゃんも言ってた、『ものは試し』……涼さん、ごめんなさい?」



ドンッ
        ドンガラガッシャーン
涼「びゃあああああ!!」

絵理「……失敗?」

愛「当たり前じゃないですか! りょ、涼さん大丈夫ですか!」

涼「うわああああん!!」

愛「ど、どうしよう……泣き止みませんよ!」

絵理「え、えーと、えーと……こういう時には……」

愛「そ、そうだ! い、いたいのいたいの、とんでけー!!」

涼「ふ、ふぇぇ……」

絵理「……効果あり? 少し治まってきたような」

愛「やりましたっ! ほら、絵理さんもやってあげてください!」

絵理「……え? い……いたいのいたいのとんでけ?」

涼「ひっく、ぐすん……」

愛「よ、よかったぁ……なんとか泣き止んでくれました」
【楽屋】

涼「ぎゃおおおん! ぶううううん!」

愛「結局、何も出来ませんでしたね……」

絵理「……やっぱり、社長たちに任せるしかない?」

愛「いつ頃こっちに着くんですか?」

絵理「さっき電話があった……もうちょっとだけかかるって」

愛「そうですか……」

涼「きゅいいいん!」
絵理「……それにしても」

愛「どうしたんですか?」

涼「ぎゅぅぅううん……びゅぅぅううん」

絵理「ああやって無邪気に遊んでいる涼さんの姿を見るのも何だか新鮮」

愛「ですね、きっと小さかった頃も可愛かったんでしょうね!」

絵理「愛ちゃん、涼さんの小さかった頃の写真を見たことは……」

愛「それが無いんですよね……あぁ、でもいいなぁ……子供って可愛いですもんね」

絵理「……私たちもまだまだ子供だけどね? でも、今の涼さん見てると、私もいつかは子供が欲しいなぁ、って」

愛「私もです! 大変だろうけど、それ以上にやりがいありそうですもんね、子育てって!」

絵理「……でも、さすがにまだ早すぎる?」

愛「ですよね! 3年くらいは早いですよね!!」

絵理「えっ」

愛「えっ」
愛「あ、ああっ、ごめんなさい! 絵理さんだと1年くらいですもんね!」

絵理「いや、そういうことじゃなくて……」

愛「? ……あっ! そ、そういうことでしたか!」

愛「ごめんなさい、つい……ウチ、ママが私を16歳の時に産んでたので……」

絵理「……世間一般じゃそれでも十二分に早いからね?」
絵理「……そういえば、涼さんがおとなしくなってる?」

愛「確かに……さっきは私たちの会話にも割り込むくらいの勢いで遊んでたのに」

絵理「……もしかして、遊び疲れて寝ちゃった?」

愛「そうかもしれませんね……涼さ〜ん」 チラッ





涼「……」 モジモジ

愛「あっ」

絵理「あっ」
愛「たたた大変ですっ!! あ、ああああれってまさか……」

絵理「おおお落ち着いてちょうだい愛ちゃん、そそそ素数を数えて落ち着きましょう……2、4、6、8……」

愛「絵理さんも落ち着いてください! と、とにかく早く涼さんをトイレに連れて行かないと……」





涼「ふぇぇ……」 ジワァ ピチャン

絵理「……手遅れ?」
涼「ふええぇぇん……」 ピチャン ピチャン

愛「ど、どうしましょう……間に合いませんでした」

絵理「……とにかくこのままにしておくわけにはいかない?」

絵理「楽屋も掃除しなくちゃいけないけど、それより何より涼さんを何とかしないと」

愛「あ、あのままじゃかわいそうですもんね……」

絵理「……近所のコンビニで代えの下着を買ってこないと?」

愛「あ! じゃあ私が行ってきます!!」

ガチャ バタン
絵理「……買い物の方は愛ちゃんに任せておくとして」

絵理「帰ってくるまでぼーっと待ってるだけってわけにもいかないよね」

涼「ヒック、グスン……」

絵理「ご、ごめんなさい……このままじゃ気持ち悪いわよね……」

絵理「待ってて……今脱がせてあげるから」
---

ガチャッ

愛「ただいま帰りましたっ!!」





涼「ふええぇぇ……」

絵理「えーん、えーん……」

愛「え? え? ど、どうしたんですか絵理さん……?」

絵理「うわああぁぁん……」

愛「どっ、どっ、どうしましょう! 涼さんに続いて絵理さんまで子供みたいになっちゃいました!」
涼「ふ、ふえぇん……」

愛「あっ、ああっ、そうでした! 涼さんの代えの下着を買ってきたんでした!」

愛「絵理さんも心配だけど、まずは涼さんを何とかしないと……!」

愛「待っててくださいね! 今着替えさせてあげますから!!」










ω「やあ」

愛「」
---

ガチャッ

石川「ごめんなさいっ! 待たせちゃっ……」





涼「ふええええん」

絵理「えーん」

愛「ぴええええん」



まなみ「……え? な、なんなんですかこの地獄絵図は」
石川「……まさか」



ω「やあ」



まなみ「ふ、二人にバレちゃったんですか!?」

石川「強烈な精神的ショックで二人とも幼児退行した、ってところね」

まなみ「冷静に言ってる場合じゃないですよ! 一人だけでも大事なのに三人全員だなんて……」

石川「慌てないの。こんなこともあろうと、必要な人材はみんな集めてきたのよ」





律子「ご迷惑をおかけします……」

尾崎「まったく、しょうがないんだから……」

舞「そんな軟弱な子に育てたつもりはないんだけどねぇ」



  _r-、 |   )´                              ゝ-‐‐‐=ニ二__,.-‐‐ \   / /ヽ \ ̄`ヾ   ノ
  }ヽ y'  / ヽr‐、_r 、                          `ー-----‐'''"     \ヽ  ! !  ヽ  丶  '<て´。
 /  {  |   }  {`                                    ___    _r‐、 | |   {ヽ  ト、___ >o
 ヽ-ュ‐`ハ`ー-く、_,r'     ノ`ー-、                           i' l `ヽr-' / ̄フ、__> ゝハノ_) >゚。
 j⌒´ ノo。゚o}   ヽ   〈 ̄`ヽ  /⌒ヽ                          {   〈 /   i'´| `'‐-ー´\,ゝ `o゚
ノ  /  ∞ {  ヽ丿 ノ-ヽ   }ノ_ノ  }                         ヽo ゜。∨  r-'ヽ |
`ー} ____ノ i `ー<ノ  )`ー  >  /ハ -‐ァ´                        _,r'`ー8 o{ ノ、__ } |
    `ー、__ト、ノ| |  ト、_r'`ー-< o゚8, o                         { /  |´ lヽ!  ∨ l
    _______  | |  ヽソ   / ヽ゚。、 ヽ                            ヽ{  ハ、i  ゝー、ノ| |
  / ----- ヽ //   \ー- ' ___/  }_/                              `ー'  ` ̄     | |
 ´ ̄ ̄ ̄ ̄`//   //`ヽ/, ハノ      しばらくお待ち下さい
/ゝ、  _,.--‐ 、ニヽ / /   ゝ_/ レ'
`}   ̄r´ ̄//| \ヽl
 フ>'    / /  ! !
o( {   __,ノ ノ   | |
。゚く( _ノハ /__,,.  | |
 ゚o´ //`ー-‐'´ | |  ヾ

涼「こ、この度は申し訳ありませんでした……」 ボロッ

石川「頭を下げるのは後にしなさい、まずは明日のライブ、そして重大発表を無事に終わらせること」

石川「それで返してくれれば、私から何も言うことはないわよ」

まなみ「あの……大丈夫なんですか? 明らかに放送コードに引っかかるような惨劇が目の前で繰り広げられたんですが」

石川「時間もなかったから荒療治するしかなかったのよ」

愛「」

絵理「」

涼「あ、あの二人は……?」

石川「大丈夫だから心配しないの」

まなみ(しゃ、社長……事の顛末を説明しないんですか?) ヒソヒソ

石川(ここで二人に男だってバレたなんて知られたら、また元通りになっちゃうわよ) ヒソヒソ

石川(二人には明日の発表まではくれぐれも気取られないように言い聞かせておくから、いいわね?)

涼「?」
【翌日】

涼「じ、実は私……本当は男だったんです!」





ファンA「知ってたー!!」

涼「へ?」

ファンB「こんな可愛い子が女の子のわけないもんな!」

ファンC「涼ちーん! 俺はどっちでも行けるからなー!!」

涼「え、ええー……」
涼「な、なんか悩んでたのがバカらしかったのかな……」

涼「驚いていたのも愛ちゃんと絵理ちゃんの二人だけだったような気がするし……」

愛「ホ、ホントウニビックリシマシタヨー、アハハ……」

絵理「……マ、マサカリョウサンガオトコノコダッタナンテー」

涼「……なんだか顔がすんごい引きつってるんだけど」

絵理「……ソンナコトナイデスヨー」

愛「デ、デスヨネー」
涼「なんだか腑に落ちないけど……とにかく、今まで騙していてごめんね」

愛「だ、騙すなんてそんな!」

絵理「……さっき社長からも聞いたけど、社長からの命令のようなものだった? なら、涼さんは別に悪くない?」

絵理(……というより、怒りとかそんなの昨日のショックで全部吹き飛んだというか)

愛(元々怒るなんてことも考えなかったですけど)

涼「……何はともあれ、これからもわた……いや」

涼「僕をよろしくね」



 おわれ



01:30│松永涼 
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