2014年10月08日

松永涼「モバPとロックフェス」

――――――――――――前日の夕方、松永涼の部屋





涼「明日は久々のオフだ……なにすっかな?」





http://i.imgur.com/uXvYFeQ.jpg

松永涼(18)



涼「そうだ! 公開したホラー映画の前売り券買ってたんだっけ。小梅誘ってみよう」





ぴっ





ぷるるるるるる





小梅『……はい』



涼「おーっす、小梅。お前さ、この間公開したホラー映画知ってる?」



小梅『し、しってる……見ようと思ってた』



涼「じゃあ、ちょうど良かった。明日行こうぜ」



小梅『……あっ……あ、あした』



涼「どうかしたのか?」



小梅『……ご、ごめん、涼さん……も、もう…予定がある』



涼「あー、そうなのか。じゃあ、仕方ないよな」



小梅『ほ、本当に……ごめんなさい』



涼「いいって、別に。前売り券だからいつでも行けるんだしさ」



小梅『う、うん……次は必ず……』



涼「おう、じゃあな」





ぴっ



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1412168322



涼「うーん……一気に暇になったな」



涼「そうだ! 拓海誘ってビビらせてやる」





ぴっ





ぷるるるるるる ぷるるるるるる ぷるるるるるる





『おかけになった電話番号は、現在電波の届かない場所にあるか、電源が入ってないたm』





ぴっ





涼「ちぇ。いないのか……」



ぷるるるるるるる





涼「おわっ!? 誰? 李衣菜?」





ぴっ





涼「もしもし?」



李衣菜『あ、涼ちゃん?』



涼「どうしたんだ?」



李衣菜『そこに、なつきちいる?』



涼「夏樹? いないよ。今アタシの部屋だし」



李衣菜『そっか。なつきちどこにいるか知らない?』



涼「知らないよ。昼過ぎに練習で別れてそれっきりさ」



李衣菜『そうなんだ……わかった。ありがと』





ぴっ





涼「なんだ? あいつ?」



涼「大人しくギターの練習でもすっかな」



涼「あれ……? どこだ……?」ゴソゴソ



涼「げっ! スコア忘れてんじゃん! たぶん事務所だ……アタシのバカ」



涼「しょうがない……取りに戻るか。誰かいるだろ」



――――――――――――事務所





涼「電気ついてるな……ちひろさんかな?」





がちゃ





P「あ、うん……なるほど……それじゃ仕方ないな」



涼(Pサンか……電話中みたいだな)



P「いや、いいよ……俺の方で声かけるから……」



P「ば、バカ! そんなんじゃなくって……と、とにかく!」



P「うん、うん……それじゃあな」





ぴっ





P「ったく……」



涼「……」



P「うおっ!? 涼! ど、どうした?」



涼「ん? ちょっと忘れ物をね」



P「そ、そうか……」



涼「えっと、どこにやったっけな」



P「…………」



涼「あれ?……うーん……」



P「な、なあ……涼?」



涼「ん?」



P「え、えっとな……」



涼「うん」



P「その……」



涼「なんなのさ? アタシ、探しものあるんだけど?」



P「す、すまん。あのな……」



涼「うん」



P「お前、明日……暇か?」



涼「オフだし予定はないよ。どうして?」



P「明日、ロックフェスやってるの知ってるか?」



涼「そりゃ、知ってるよ。今年も争奪戦だったんだけど、さすがに無理だったな」



P「そうなのか……」



涼「誰かさんは去年、夏樹と行ったみたいだけどさ」



P「そう責めるなよ。お前だってその時、小梅と予定あったんだろ?」



涼「まあ、そうだけどさ……」



P「それで……今年もレコード会社の人からチケットもらってさ」



涼「マジで!!?」



P「お前、明日空いてる?」



涼「空いてるけど……いいの? 夏樹や拓海は?」



P「夏樹はさっき予定が入ったって断られた」



涼「…………そう」



P「あと、拓海は仕事だ」



涼「仕事?」



P「あいつがバイクの仕事を取って来いと言ってたから取ってきたんだ」



涼「バイクの仕事なんかよくあったね」



P「ああ、モーターショーのコンパニオンだ」



涼「まあ、一応バイクの仕事……かな?」



P「今度は、ライオンをイメージしたコスプレなんだ」



http://i.imgur.com/fGplCvx.jpg

向井拓海(18)



涼「……バイク全然関係ないじゃん。あんた本当にいつか殴られるぞ」



P「会場でたくみんコールが起こって真っ赤になってたらしい」



涼(あいつ事務所に戻ったら暴れるな……)

P「それでお前一緒に行かないかなと思って……俺も入場しないとダメらしいんだけど」



涼「つまり、拓海や夏樹がいないから仕方なく誘ってみたと……」



P「ち、ち、違うっ!! 俺はお前と……」



涼「アタシと? 何?」



P「もういい……悪かったよ。これ返してくる」



涼「待ちなって。誰も行かないなんて言ってないだろ?」



P「じゃあ……いいのか?」



涼「もちろん! ロックフェスなんて久しぶりだよ……何着て行こうかな」







涼(二人だけで外を歩くなんて、テーマパーク以来だな……楽しみだ)



――――――――――――ロックフェス当日、駅前





P「ふう、なんとか間に合った。涼は……まだ来てないみたいだな?」



P「今朝、急遽、現場にアイドルを送る事になったもんな」



P「そのままスーツで来ちゃったけど……まあ、いいか」



涼「おはよー、Pサン」



http://i.imgur.com/WGfhU7e.jpg



P「おう、おは……」



涼「どうしたのさ、目を丸くして?」



P「いや……なんかその……初めて見る格好だな」



涼「気づいた? 買ってまだ下ろしたてなんだよね」



P「髪型もいつもと違うな」



涼「ああ、これ? 暑いしさ、それに、ノリまくるんなら髪が邪魔だし」



P「うん。いいな。似合ってるぞ」



涼「ば、バカ! 別にあんたに見せたくてした訳じゃないからな!!」



P「わ、わかってるよ」





涼(……なにムキになってんだよ、アタシ?)

涼「Pサンはいつも通りスーツか」



P「変かな?」



涼「別に……どうでもいいや」



P「そ、そうか」





涼(一人だけお洒落したアタシがバカみたいじゃん……ムカつく)



――――――――――――列車内





ガタンゴトン





涼「……」ムスッ



P「……なぁ?」



涼「なに?」



P「なんで、そんなにむくれてるんだよ?」



涼「別に」



P「どこか痛むのか?」



涼「全然」



P「列車に酔ったのか?」



涼「まったく」



P「お前今日変だぞ? 朝は機嫌が良かったみたいなのに、真っ赤になったり怒ったりブスっとしたり」



涼「ほっといてよ」



P「なんなんだよ……」





ぷるるるるるるる





P「おっと電話だ……ちょっと席を外すぞ」



涼「……」



P「……もしもし……あ、はい。いつもお世話になっております。ああ、その件ですね……でしたら……」







涼(これで五回目だよ。ゆっくり話もできないじゃん……バカ)



――――――――――――会場前





涼「やっとついた……いいね! この緊張感! たまんないね!」



P「去年よりさらに増えてるな」



涼「そりゃ、今回は目玉になる招待アーティストが多いからさ。海外からも来客が多いって言うし」



P「へえ、日本のこんな片田舎でも充分、お客は呼べるってことか」



涼「ロックに国境も田舎も都会もないよ」



P「そりゃそうか」



涼「早速、最初のステージ始まるな」



P「ふむ、この構成は参考になるな。忘れないように写真を……」





ばっ





P「あ、何するんだ! スマホ返せ!」



涼「この後はスマホも電話も禁止な」



P「えー」



涼「ロックは五感で楽しむもんだぜ。写真なんかで残すのは野暮ってもんさ」



P「でもなあ……」



涼「アーティストは魂込めてステージに立ってるんだよ。目と耳、全身で刻み込まなきゃ失礼だろ?」



P「わ、わかったよ……」



涼「それでよし!」





P(急にニコニコしだしたな?)





――――――――――――ステージ終了





涼「かーっ! やっぱ屋外で聞くのは最高だよなっ! この熱さがたまんないよっ!!」



P「涼、はしゃぐのいいけどこれを塗っておけよ」



涼「なにこれ?」



P「日焼け止め。仕事も明日からあるんだから」



涼「いいよ、元々地黒なんだし」



P「ダメだ。ちゃんとスキンケアも仕事の……」



涼「わかったわかった。塗るよ。テンション下がるだろ?」



P「あと水分補給もな。熱射病になるぞ?」



涼「Pサンもこの熱さをわかってほしいよ」

男「おい、あれ……松永涼じゃね?」



女「え? マジ? 今日ステージに出る予定あんの?」



男「去年のクリスマス以来じゃん? あれ熱かったもんな」





ざわざわ





P(ヤバい……観客が涼に気づき始めてる……)



P「涼」



涼「ん?」



P「ここは一旦退散するぞ」



涼「どうしてさ? 盛り上がるのはこれからだろ?」



P「観客がお前に気づいた。無用な混乱は招きたくはない」



涼「へ?」





ざわざわ ざわざわ





涼「なんだ、そんなことか」



P「そんなことって……」



涼「みんなーーーーっ!! 盛り上がってるかーーーーーっ!!」





おおおおおおおーーーーっ





P「バカ! 客を煽ってどうすんだ! 余計混乱するだろ!!」



涼「まあ、見てなって」







涼「フェスはこっからが本番だぞっ!! ぶっ倒れずについてこれんのかーーーっ??」







うおおおおおおおおーーーーー





涼「ステージの連中をアタシらの熱で圧倒してやろうぜ!!!!!」





おおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーっ







P(すげえ……観客を一気に引き込みやがった)



涼「よし、これでいいだろ。アタシらもしっかりやるよ!」



P「涼……お前……」



涼「ん?」



P「こうなることを予測してたのか?」



涼「まさか。そこまで考えてないよ」



P「じゃあ、どうして?」



涼「バレたからってコソコソするのは性に合わないし、それに」



P「それに?」



涼「ここにいる連中、みんなロックを楽しみに来てるんだ。アタシと同じ気持さ。それを代弁しただけ」



P「……」



涼「さ! あんなデカイことブチ上げたんだ。アタシらもボーっとしてないでノリまくるよ!」



P「お、おう!」

――――――――――――次のステージ終了





涼「うんうん! やっぱサイコーだったな!!」



P「も、もう……喉が……ガラガラ……」



涼「なんだよ、だらしないなー。そんなんじゃいくつもステージこなせないよ?」



P「お、俺が歌うわけじゃないから……」



涼「さあ、次はあっちのステージだ! ちょっと遠いけど走るよ!!」



P「えええ……ちょ、ちょっと休憩を……」



涼「ん?」



P「どした?」



涼「あそこにいる奴……あれって……?」



――――――――――――舞台裏



???「……りょうかーい。ハイハイ、わかってるって……じゃあな」







涼「おーい? もしかして……ジュリア?」



http://i.imgur.com/RjZ44Jq.jpg

ジュリア(16)



ジュリア「ん? あっ! 涼だ!! 久しぶりだな!!」



涼「ホントだよ。何してんだ? こんなところで?」



ジュリア「まあ、ちょっとね」



涼「アンタも見に来てたの?」



ジュリア「んー、ちょっと違うかな? 今回は出る方」



涼「マジで?!」



ジュリア「といっても知り合いのサポートメンバーの代理だけどさ」



涼「アンタ、ギターうまかったもんな。羨ましいよ」



P「……」



涼「……ああ、そうだ。紹介するよ。こいつはジュリア。よく対バンとかで顔合わせててさ」



P「そうですか。初めまして、Pと申します」



ジュリア「よろしくー!」



涼「ジュリア、そんでな、この人がアタシの……」



ジュリア「みなまで言うなって。わかってるよ」



涼「は?」



ジュリア「しかし、あれだな。原宿のロッキンガールも、年貢の納め時か」



涼「は?? ちょ、何言ってんだよ!! 勘違いs」



ジュリア「まあまあ、こいついいヤツなんで幸せにしないとダメっすよ」



P「へ?……は、はあ」



涼「返事するなよっ!! ジュリア、てんめえ……」





???「おーい、ジュリアー! そろそろ行くぞー!」



P(あれ? あの人たしか……)





ジュリア「はーい、今行くよー! そんじゃ涼、仲良くやんなよ」



涼「さっさと行け!! ったく……」



P「……」



涼「あ、ち、違うからな! あいつすぐ勘違いするから! 本気にしちゃダメだぞ!!」



P「ん?……あ、ああ……」



涼「……」



涼(……ああってなんだよ?……少しは慌ててくれてもいいだろ)





P(あの男の人……確か、前にテレビ局で会ったような……他事務所のプロデューサー?)

――――――――――――一時間後



涼「ふうう。やっぱりいいね。フェスは。汗びっしょりだよ」



P「涼、ほら」



涼「ん? タオル? どうしたの、これ?」



P「そこで売ってたから買ってきた。しっかり汗は拭いとけよ? 夏だからといって汗をそのまま……」



涼「はいはい、わかったって。タオルは一枚?」



P「ん? どうしてだ?」



涼「いやー、Pサンのことだから、アタシの汗拭いたタオル使うのかなって?」



P「そ、そこまで変態じゃない!!」



涼「あははは、わかってるって。Pサンも汗かいてるな?」



P「ああ、そうだな……俺のことはいいからお前が…」



涼「そりゃっ」





ばさっ





P「うわっ! なにすんだよ!」



涼「遠慮すんなよ、アタシが汗拭いてやるから」



P「い、いいよ! 自分でタオル買うから」



涼「いいからいいから」



P「ちょ、ちょっと涼!!」



涼「あははは」



P「……」



涼「なんなんだよ、辛気くさい顔して? どうかした?」



P「涼」



涼「なにさ?」



P「すまんな……」



涼「なんだよ? 急に?……さっきのことなら……」



P「そうじゃない……その……やっぱりお前もこのステージに立ちたかったのかなって……」



涼「そりゃ、立ちたいさ。なんだ? そんなこと考えてたの?」



P「俺にもう少し力があれば、さっきの子みたいに……」



涼「やれやれ……ほら、返すよ。スマホ」



P「えっ?」



涼「せっかく一緒に楽しもうと思ってたのにさ。Pサン、仕事のことばかりだもんな」



P「あ……わ、悪い」

涼「別にいいよ。そうやってる方が、やっぱりPサンらしいもんな」



P「そ、そうか?」



涼「さっ、次のステージは……かなり距離あるね」



P「ほんとだ。こりゃ一苦労だな」



涼「じゃあ、ドリンク飲んだら走るよ」



P「えっ? このドリンクどうしたんだ?」



涼「ちひろさんがくれたんだよ。Pさんのおごりだってさ」



P「あの人は……」



涼「じゃあ、行こっか」



P「ま、待て涼! 引っ張るなよ!!」





涼(この人は本当に仕事バカだけど……あたしのこといつも考えてくれてんだよな)



涼(今は期待にこたえないとね。デートはその後でいいや)



――――――――――――同時刻、テーマパーク





夏樹(……涼のヤツ、楽しんでるかな?)



夏樹(今年はあいつの番にしてやらないとな)





小梅「な、夏樹さん……こ、こっち」



http://i.imgur.com/JB2uURo.jpg

白坂小梅(13)



夏樹「おう」



http://i.imgur.com/b8WM9BO.jpg

木村夏樹(18)



小梅「な、夏樹さんと……来れて……うれしい」



夏樹「まあ、たまにはね。映画じゃなくて悪いけどさ」



小梅「え、映画……また、今度で」





夏樹(悪いな、小梅。あたし、ホラー苦手なのさ)



夏樹(ここならあたしも行けそうだしな)





小梅「つ、つぎ……ここ……ホラーハウス……たのしみ……」





夏樹「」







おわり



21:30│松永涼 
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