2013年12月14日

春香「レイニードライブ」

春香「おはようございます、プロデューサーさん!」

P「おはよう春香、濡れなかったか?」

春香「はい、大丈夫です!」


P「お、今日は制服か」

春香「はい、学校から直接来ちゃいました!」

そういうなり少し考え込むプロデューサーさん。

も、もしかしてそれだけ大変だって言いたい、
とか思われちゃってるのかな?

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春香「あの、プロデューサーさん!
私全然お仕事が大変だとか言いたいわけじゃなくて!」

P「ん?いや、そういうことを考えてたんじゃなくて」

春香「?じゃあ何考えてたんですか?」

P「いや…」

制服姿の私をひとしきり見てから言葉を続ける。

P「春香って学校でモテそうだなぁって」

春香「えっ!?」

P「だってかわいいし、頑張り屋だし、それでいてどこか抜けてるし」

春香「…」

本当ならここで照れたりするのがかわいいんでしょうね。

でも、正直言って、
『かわいい』って言われることに少し慣れちゃいました。

それにプロデューサーさん、
うちのアイドルみんなにそう言ってそうですし。


…でもやっぱりちょっと嬉しいかな。
P「春香、どうした?」

春香「え!?あ、はい、ありがとうございます!」

P「よし。そんな春香ちゃんにはこれをあげよう!」

ふざけたように言うと、プロデューサーさんは缶珈琲を差し出してきました。

春香「缶珈琲、ですか?」

P「うん、俺とお揃い」

そういって楽しそうにもう1本同じ缶珈琲を見せてきます。
春香「同じの2本買ったんですか?」

P「いや、自販で買ったら珍しくあたりが出てさ。
アレだよ、幸せのおすそ分けってやつ」

春香「それってただの余り物の処理なんじゃ…」

そんなことないよってそっぽ向くプロデューサーさん。
…絶対嘘だ。

春香「小鳥さんにあげなかったんですか?」

誰もいない小鳥さんの机を見ながら言う。

だって一番近くにいたはずですしね。

P「それが…気が付いたら音無さん帰ってたんだよなぁ…」

春香「…じゃあ、しょうがないから、もらってあげますね」

そういうと私に缶珈琲が1本手渡されました。

春香「微糖、なんですか?」

P「うん」

春香「確か珈琲はブラック派だとか言ってたような…」

P「いや、缶珈琲はだいたい微糖だな」

春香「へぇ、なんでですか?」

P「うーん、ブラックの缶珈琲ってなんとなく味気ない気がして」

春香「そうなんですかぁ」

適当な返事を返すけど、
缶珈琲なんて買ったことないからわかりません。

たまーに事務所で淹れてもらっても、
ミルクとお砂糖をたっぷり入れないと飲めないですし、ね。

P「でさぁ春香」

春香「はい?」

P「今日なんで事務所来たの?」

春香「え?」

いきなりの質問に混乱してしまいます。

ひょっとして私、来ちゃいけなかったとか?

それともプロデューサーさんに
顔も見たくないとか思われてるのかな…?

でもプレゼントもらったし…余り物だけど。
そんなことを考える私に構わず、
プロデューサーさんは話を続けました。

P「いや、今日春香オフじゃん」

春香「えっ?確か今日は雑誌の取材があったんじゃ…」

P「…それ、先週別の日になったって言ったと思うんだけど…」

そういわれるや否やシステム手帳を確認します。

あ、このシステム手帳、千早ちゃんとお揃いなんです。

春香にしてはシンプルな手帳だね、ってよく言われるけど
使い勝手がいいので気に入ってるんですよ!
春香「ホントだ…」

今日の日付の欄に書かれた『取材』の文字は
見事に赤い二重線でかき消されています。

あーあ、またやってしまいました…。

P「春香らしいな」

そう笑って缶珈琲のプルタブを開けます。
…ドジな子って思われて呆れちゃってるのかな。

今更だけど…
だったら、ちょっと悲しいな。
P「で、どうするんだ?」

春香「え?」

P「いや、せっかく時間かけてここまで来たのに
このまま帰るのもなんかつまらないじゃん」

春香「…つまらない、ですか?」

P「だって2時間くらいかけてきたんだろ?」

春香「まぁそうですけど…」

そう言うとなにか思いついたような顔をして
ホワイトボードの方へ向かうプロデューサーさん。

何か書くのかな?
P「いいこと思いついたぞ」

そういって右手に持っていた缶珈琲を
左手に持ち替え、右手でペンを走らせた。

『天海、取材』とホワイトボードのわずかな隙間に書き込む。

P「これでよし、と」

春香「ぷ、プロデューサーさん?」

P「俺が春香の取材の送迎をしたってことにすればいいはずだ」

春香「…つまり、どういうことですか?」

P「家まで車で送ってくよってこと」

春香「ええ!?そんな、悪いですよぉ!」

P「いやー、最近ドライブしてなくてさぁ」

そういってプロデューサーさんは缶を机に置いて大きく伸びをしました。

春香「それに、車だとガソリン代とかいろいろありますし…」

そんなの経費で落ちるよ、なんて笑いますけど
たぶん無理だと思いますよ?

小鳥さんが怒るのが容易に想像できます。
P「それに、外、雨降ってるじゃん」

春香「そう、ですね」

さっきまでそうでもなかったのに…。

P「たぶん車の方が早くつくだろうし、濡れずに済むんじゃないか?」

そういって机に戻るプロデューサーさん。

春香「そうかもしれないですけど…。でも…!」

P「いいっていいって」

そうして私の言葉は遮られました。

本当にいいのかな…。

P「それにしても、結構降ってるな」

結局、今作ってる書類が終われば、
ということだったのでそれを待つことにしました。

P「そういえばさ」

春香「はい?」

P「やっぱり下駄箱にラブレターとか入ってたりするの?」

春香「…」

いきなりさっきの話の続きを持ち出されて、つい黙りこんでしまいます。

実は、全く知らない男子からの
そういう手紙が入っていることは、
少なからずありました。

でも返事をしようにも知らない人に何と言っていいのか。

それが全然わからなくて、結局そのままにしちゃってます…。

やっぱり何かお返事した方がいいのかなぁ…。

P「ああいうのってさ、丁寧にお断りの返事出された方がよっぽどへこむよな」

だからその気がないならほっとけばいいよ、って苦笑いするプロデューサーさん。

案外そういうものかもしれないと思って納得しちゃいました。

っていうか…
春香「プロデューサーさん、ラブレター書いたことあるんですか?」

P「え?…まぁ、ちょっと昔に…」

そう歯切れ悪そうに答えました。

ひょっとして地雷だったとか?

そうですか、とだけ言ってそれ以上聞かないことにしてあげました。


…でも、気になっちゃうな。

   ***

P「…よし、終わりだ!」

春香「はい!…じゃあ、行きましょうか?」

P「ん〜、その前に晩飯だな」

春香は食べたいものあるか?
ってようやく書類から目を離して尋ねてきます。

そういえば晩ごはんのこと、全く考えてませんでした…。

それを伝えると

P「なら、しょうがないな。」

とだけ言って車のキーを取り出しました。

P「じゃあ車の中で考えるとしますか」

そう言って扉を開けるプロデューサーさんに続いて事務所を後にしました。
バタン

車のドアを閉める音が雨音の中で響く。

P「シートベルトしめたかー?」

春香「はーい!」

P「じゃあ、晩飯どうするか考えよう」

春香「あれ?走らせながら考えるんじゃないんですか?」

P「そんなことしてたら決まらないうちに春香の家についちゃうよ」

なるほど。走り出すと止まるのは難しいですもんね。

車が私みたいに転んじゃったりすると、
危ないどころの騒ぎじゃないですし、ね…。

P「食べたいものとか何もないのか?」

春香「急に言われるとなかなか思いつきませんよね」

P「それもそうだな…」

うーん、と一回唸った後にこう続けました。

P「じゃあ、近くのファミレスでいいか?」

春香「はい!私ファミレス好きです!」

ならよかった、と言ってキーを回してエンジンをかけます。

運転席と助手席の間にはほとんど空になった缶と、
まだ開いてない缶が2本ならんでいました。
ファミレスの駐車場に車をとめて、店内へと向かいます。

ここも24時間営業なのを見て何となく嬉しくなっちゃいます。

というのも、私の町に24時間営業のファミレスがようやくできたからなんです!

でも、こういうのが普通にあるあたり、やっぱり都会だな〜って感じちゃいました。

P「最近のファミレスって色々あるよな」

二人掛けのテーブルに通されて、二人で一つのメニューとにらめっこします。

春香「ですよね〜。これだけあると、何食べようか迷っちゃいます!」

二枚出てこなかったのはちょっとラッキーなんて思っちゃったり。

プロデューサーさんと二人で入ったファミレス。

私たちって周りから見たらどんな風に見えるのかな?

なーんてくだらないことを考えるとなんだか恥ずかしくなってきます。

P「春香は決まったのか?」

春香「え、えぇ?」

P「呼び出しボタン、押していい?」

春香「あ、すいません!もうちょっと、待ってもらえますか?」

そういって必死に一つのメニューをめくりました。

雪歩じゃないけどなんか今日はダメダメかも…。
注文をした後、店内を軽く見渡します。

こんな天気だからか、お客さんはあまりいません。

そんななかで近くのテーブルに座った幼稚園くらいの女の子が
お子様ランチのチキンライスの中からグリーンピースを取り出していました。

…なんだか晩御飯にランチっておかしいですね。

そのことをこっそりプロデューサーさんに伝えると、
それもそうだな、って言われて二人で笑っちゃいました。

赤いほっぺたをした女の子は、赤一色になったチキンライスを
カチャカチャと音を立てながらかきこんでいます。
P「春香のハンバーグ、うまそうだな」

届いた料理を食べながらそういいました。

春香「プロデューサーさんのカルボナーラもおいしそうですね」

P「じゃあ少し交換するか」

春香「いいですね!!」

そういうとプロデューサーさんは
上手にフォークでスパゲティを巻きつけました。

そのフォークを使う、大き目だけどあまりごつごつしていない手に見入ってしまいます。

そのせいか、私はナイフとフォークをうまく扱えずに、
なかなか上手に切り分けられませんでした。

春香「ごめんなさい、ちょっとうまくいかなくて…」

P「あぁ。ナイフって久しぶりに使うとなかなかうまく切れないもんな」

いつもはもうちょっとうまくできるのになんでかなぁ…。
P「やっぱこれうまいなぁ」

そういって不恰好に切られたハンバーグを食べるプロデューサーさん。

なんだか自分が作ったものを食べてもらってる気がして、
ちょっといいなぁ、って思ったのは内緒です。

P「さて、食べ終わったら出るか」

春香「もう、ですか?せっかくだからもっとゆっくり…」

P「おいおい、ゆっくりし過ぎて家につくのが明日になったらどうするんだ」

別にそれでもいいんだけどな、なんて。

こうして久しぶりのファミレスを後にします。

…せっかくならドリンクバー混ぜたりして遊びたかったかも。
『明日になればまた晴れるでしょう』

エンジンをかけるとともに流れ始めたカーラジオが響く。

P「こんなに降ってるのに明日は晴れるのか」

そういいながらミントのガムを一枚くわえます。

春香「どうなんですかね」

私もそれを一枚もらって適当な返事をしました。

…ちょっとミントが強目に感じます。
P「さて、安全運転で行きますか」

春香「はい、よろしくお願いします!」

P「高速でいいか?」

そっちの方が早くつくだろうし、とつけたしました。

春香「でも、そうすると高くつくんじゃないですか?」

P「いいんだよ、経費だから」

それは無理なはずってわかってて言ってるのか、
それともわからず本気で言ってるのか。

私にはわかりませんでした。
ETCのバーを潜り抜け高速道路に乗ります。

フロントガラスの雨粒はライトに照らされていて、
それをワイパーがリズムを刻みながら一気に掻き消しています。

私たちを乗せた車は、
そんな雨の中をひたすら走っていきました。

雨音の中で流れるカーラジオはなんとなくぼんやりしてて…。

でも、それ以外の音はなくて、
私とプロデューサーさんの間には沈黙が流れます。

それも悪くないかな、
なんて思えるのは雨のおかげなのかもしれませんね。

ETCのバーを潜り抜け高速道路に乗ります。

フロントガラスの雨粒はライトに照らされていて、
それをワイパーがリズムを刻みながら一気に掻き消しています。

私たちを乗せた車は、
そんな雨の中をひたすら走っていきました。

雨音の中で流れるカーラジオはぼんやりしてて…。

でも、それ以外の音はなくて、
私とプロデューサーさんの間には沈黙が流れます。

それも悪くないかな、
なんて思えるのは雨のおかげなのかもしれません。
今抱き着いちゃったらどうなるんだろう、
とかおかしな考えが頭をよぎりました。

さっきから馬鹿なことばっかり考えてるなぁ私…。

そんな危ないことはできないので、
その代わりに横顔をじっと見つめてみます。

プロデューサーさんは前ばっかり見ているので
それに気付かれることも…多分、ないはずです。

目線が合わないのも、たまにはいいですね。
P「…2時間も使って事務所まで来るの疲れるよな、寝ててもいいぞ」

沈黙を先に破ったのはプロデューサーさんでした。

春香「いえ、大丈夫です。それに慣れてますんで!」

素っ気ない返事を返してしまいました。

こういう時、気の利いた返事ができればいいのに。

P「そっか」

そして、また訪れる沈黙。

何か話そうにしてもこういう時に限って何も思い浮かびません。

ダメな日だなぁ…。

P「ごめんな、ちゃんと確認しないで。」

春香「え?」

P「俺がしっかり確認しておけばこんなことにはならなかっただろ?」

春香「そんなこと…!そんなことないです!!」

強く言い放った後こう続けます。

春香「そんなことより…プロデューサーさんはいいんですか?」

P「何が?」

春香「明日もあるのにわざわざ送ってもらっちゃって…」

P「いえ、俺の方こそ大丈夫です」

それにアイドルとドライブなんて役得だろ?
なんて嬉しそうに言うプロデューサーさん。

さっきの私のマネをしたことは特別に許してあげますけど…。
次やったら怒っちゃいますよ?
P「でも2時間って結構な時間だよな」

春香「そうですね…でも、大丈夫ですよ!」

バックミラー越しにプロデューサーさんと目を合わせて言う。

春香「だって、お仕事楽しいですし!」

私がそういうとプロデューサーさんは、
目線をそこからずらしてウィンカーを出しました。

春香「あとあと、みんなもいるから大丈夫です!」

必死に続けて少しでも心配をかけまいとします。

余計な心配させちゃったら、きっと迷惑ですしね…。

P「そうならいいんだけどさ」
P「でもすぐ無理しそうだからさ、」

車線変更をしながら続けます。


P「心配だよ、春香」


思わずバックミラーから目をそらしてうつむいてしまいます。

私の目のふちには、
こぼれそうなくらいの涙が急にたまってきていました。

車はトンネルへと入る。

P「だから、無理かもしれないけど、できるだけ無理するなよ?」

視界の上の方で歪んでいたフロントガラスがさらに揺れ動きます。

こらえていた涙が一気にあふれ出しました。

わかりました、とか
できるだけそうするようにしますね、とか。

いくらでも言葉は浮かんだのに、
私は、何も言うことができませんでした。

私がすすり泣きする音は
トンネルの反響音にかき消されているように思いました。

でも、プロデューサーさんは、それ以上何も言いません。

私の顔なんかはっきり見えないはずなのに…。

ひょっとすると雰囲気とかでばれちゃってるのかも。


だめだなあ。また余計な迷惑かけちゃってるなあ。


長い長いトンネルを抜けるまで、
私は洋服の袖をずっと目に押し当てていました。

トンネルを出た後、
こちらをみないまま空の缶を振ってプロデューサーさんが言います。

P「缶珈琲、空になっちゃったからパーキングエリア寄ってもいい?」

私は何も言えないから、ただ首を縦に振りました。

それをバックミラー越しなのか、直接見たのかわかりませんでしたが
プロデューサーさんは、何も言わずに車線を変えて速度を落としていきます。

このまま帰ったら、
目の腫れがひかないまま家に帰ることになるかも…。

そんなことを考えていた私には、ありがたい提案でした。
P「何買ってこようか?」

春香「…えっと、じゃあお茶を…」

P「はいよ」

じゃあ行ってくると言って傘も持たずに車から飛び出しました。

人影まばらな夜のパーキングエリアで自販機へと走る背中を見ます。

私が買いに行けばよかったかな、とも思いましたけど
そんなこと言ったら絶対に反対されたんだろうな。

私って本当に役に立たないなぁ…。

そんなことを考えていると
缶珈琲が一本だけ、運転席と助手席の間で立っていることに気付きました。

まだあるのに、なんで私の分まで買いに行ったんだろ?
P「おまたせ!」

春香「びしょ濡れじゃないですか!」

P「はい、お茶」

私の指摘を気にせず小さいお茶のペットボトルを渡してくる。

P「あ、そうだ春香」

春香「なんですか?」

P「…さっき言ったこと、絶対守れよ?」

春香「…はい!」

P「…返事だけはいいんだけどなぁ」

と苦笑しながら言います。

それを聞いて思わず私も苦笑いしてしまいました。

『それでは今夜も安全運転を』

エンジンをかけるとともに、
今度はラジオパーソナリティらしき人の声が響く。

春香「プロデューサーさん?」

P「なんだ?」

春香「安全運転で、お願いしますね?」

P「…もちろん!」

そういって車を加速させながらまた、高速道路へと入っていきます。
P「もうあと8キロか」

そういう標識が見えたのか、
プロデューサーさんはこうつぶやきました。

春香「残念なんですか?プロデューサーさん?」

P「そりゃそうさ。ドライブだって一人より二人の方が楽しいもんだ」

じゃあ、といってシフトレバーに置かれた手に自分の手を重ねる。

春香「…あと8キロで、私たち、おしまいなんですね」

残念です、と続けて
できるだけ真剣な眼差しを作ってプロデューサーさんを見つめます。

一瞬の沈黙のあと、お前はいきなりなに言い出すんだ、って大笑いされちゃいました。

今の演技、うまくなかったですか?ってつられて私も笑いながら言う。

やっぱり今日は悪いことばかりじゃないかもしれません。

でも、私も残念なのは本当ですよ?
高速を降りるとそこからはあっという間でした。

P「思ってたより降られなかったな。」

春香「よかったですね!」

P「これなら電車が動き出すのを待った方が楽だったかもな」

そうかもしれませんね、って笑って答える。

周りも見慣れた風景になってきちゃったんだから、
黙ってちゃもったいないですよね。


P「ここでいいか?」

春香「はい!わざわざ家まで送ってくれてありがとうございました!」

P「こちらこそ。久しぶりのドライブで楽しかったよ」

じゃあ失礼しますね、と言って車を降りようとすると

P「まった、忘れ物」

と言われて、まだ開いてない缶珈琲を差し出されました。

春香「あ、ありがとうございます」

P「それじゃ、また明日な!」

プロデューサーさんがそういうと、車は今来た道をまた戻っていきました。

…なんでわざわざ私の分のお茶を買いに行ったのか、聞きそびれちゃったなぁ。
自分の部屋に戻って先ほど受け取った缶珈琲を開けてみます。

すっかりぬるくなった微糖の缶珈琲は思っていた以上に甘くて、
少し気に入っちゃいました。

俺とお揃い、って言われた缶に口をつけながら
今日の出来事を思い返します。

ラブレターの話だったり、
手を見たり、
横顔を見たり、
…あとちょっと泣いちゃったりとか。

短い間にいろんなことがありました。

なんだか覚えてるのってプロデューサーさんのことばかりだなぁ。


…ってことはやっぱり、そういうこと、なんですよね。

今更だけど、ようやく気が付いたっていうか。

あの手に重ねた手をじっと見つめると顔が熱くなってきます。

春香「また、ドライブ連れて行ってくれないかなぁ…」

今回のことにすっかり味をしめてしまった私は、
次はどんな手を使えば車に乗せてもらえるかばっかり考えていました。

…やっぱり、終電を乗り過ごす、とかかな?

でもまた迷惑かけちゃうしなぁ…。

なかなかいい手は思い浮かびません。

でも、もし次があれば、いろいろ聞いちゃおっかな。

ラブレターや余計に買ったお茶のことも、
ひょっとしたら、教えてくれるかもしれませんからね!

結局いい方法を思いつかないまま次の日を迎えました。

いつものように事務所に行くと、
そこには案の定小鳥さんに怒られているプロデューサーさんがいました。

っていうか無理ってわからずに言ってたんですか…。

小鳥「これは経費じゃ落ちませんよ?」

P「そこを何とか…」

そういって懇願するプロデューサーさんと目が合う。

助けてくれーっていう目をしてましたけど、
ごめんなさいってって手を合わせちゃいました。

だってフォローできる気がしませんし、ね。

…ちょっと意地悪すぎるかな?

それを見て観念したのかがっくりとうなだれるプロデューサーさん。

これはあとで何かお返ししなきゃだなぁ。

小鳥さんにもフォロー入れておかないと、ですしね。

でも、ドライブのことはできるだけ内緒にしたいし…どうしよ。

そんなことを考えつつも、
怒られているプロデューサーさんがおかしくて
つい吹き出してしまいます。

それを見たのかソファで
我関せずで雑誌を読んでいた真が声をかけてきました。

真「どうしたの春香?」

春香「ん〜…、なんでもない!」

真「ほんと〜?怪しいなぁ」

春香「ホントだってば!」

教えてよ〜って飛びついてきた真をやり過ごしながら、
どんなお返しをすればいいか考えます。

缶珈琲をもらったから飲み物をあげればいいのかな、とか。

ファミレスでごちそうになっちゃったから
何か作ってくればいいのかな、とか。

楽しかったよって言ってくれたから、
またドライブ行きたいって言ってみる、とか。

私ができることを、してあげられたらいいのかな。

真「春香?」

春香「へっ、何?」

真「いますっっっごい、にやついてたよ?」

春香「ええっ!?」

真「やっぱり何かあったんだ?」

春香「ち、違うもん!!」

そんなやり取りをしていると小鳥さんの視線が、
プロデューサーさんから私たちへと移ったのがわかりました。

当のプロデューサーさんは
小鳥さん越しに私の方を見て手を合わせています。

…私、何かいいことしたんですかね?
でも、ひょっとしたらプロデューサーさんに
少しでもお返しができたのかもしれません。

そう思うとまた頬が緩んじゃって、
それを真にまた指摘されてしまいました。

もう小鳥さんの注意は完全にこちらに向けられちゃってるし、
真の追及はより一層厳しくなるしで、
どうやったらこの場を切り抜けられるか必死に考えます。

こんなことになっちゃったの、
完全にプロデューサーさんのせいですよ?

だから、またドライブ、お願いしてもいいですよね?
ね?プロデューサーさん!
おわり
春香さんの歌う「大スキ!」も素晴らしいね

18:30│天海春香 
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