2013年12月18日

瑞樹「片桐早苗はシメられない」

「タコわさとホッケとナンコツになります」


早苗「店員の子も略してるわねー」


瑞樹「うっさい」


早苗「かんぱいっ!」

瑞樹「かんぱい♪」


ガチャンッ


早苗「……んぐんぐ、ぷっはぁあああ!! あ゛ぁ゛〜〜生き返る! あたしの棺桶にはコレ入れといて!」

瑞樹「毎回それがなければまだマシだと思うわ」


早苗「にしても、もう十三回目かぁ。……早いわねぇ、月日が経つのは」

瑞樹「ほんとにそうね……」ゴクゴク
早苗「ねえ、覚えてる?」ポリポリ

早苗「あのお祭りの時は、まだあんたも『早苗さん』だなんて呼んでてさ……今考えると鳥肌モンだわね」

瑞樹「介抱した相手と意気投合するなんてこともあるのね。世界は広いわ」

早苗「あっれー? ほたるちゃん病気だったっけ?」

瑞樹「さなえちゃんがこっぴどく催しちゃって」

早苗「そうそう、あたしってばおびただしい……吐いてないわ!」

瑞樹「……」

早苗「……吐いてないわよね? ね?」

瑞樹「シモの方よ」

早苗「それは嘘でしょ!?」
瑞樹「あーウソウソ。ただぐでんぐでんに酔っ払って道端で焼きイカ片手にごろごろしてただけ」

早苗「よかったわ」ポリポリ

瑞樹「全然よくないわよ……あと何でさっきから私のナンコツ食べてるのよ!」

早苗「あまねく飲みのテーブルに載ったものは等しく分け与えられるべきなのだ。早苗の書・第四節より」

瑞樹「一番楽しみにしてたのにっ……」

早苗「まだ残ってるってぇ。追加で頼んだげるし。みずきっちゃんて唐揚げにレモンかけたら怒るタイプ?」

瑞樹「そういうわけじゃないけど……あなたに横取りされるのが一番むかつくっ」

早苗「強いて言うなら、アンチ・アンチエイジングかしらねぇ」

瑞樹「……互いに足ひっぱってもむなしいだけよ」

早苗「……それもそうだわね」


早苗「お詫びに焼きイカあげる」

瑞樹「いらない」
瑞樹「それと言い忘れてたけど……『みずきっちゃん』っていうのはやめなさい」

早苗「えぇ〜? いいじゃないの、かわいい〜」

瑞樹「……」

早苗「あ、わかった! 小学校の頃そう呼ばれて男子にからかわれてたとかでしょ! 当たった!」

早苗「今思えばあの頃がみずきっちゃんのピークだったのねぇ」

瑞樹「思い出しちゃうの」

早苗「ん?」

瑞樹「局にいた頃は、周りからよくそう呼ばれてたから」

早苗「………」

瑞樹「『みずきっちゃん』はもう、捨てたのよ」
早苗「……捨てるってのはさ、なんか違くない?」

瑞樹「まあ、そうかもしれないわね。あの頃のことは間違いなく私の中で糧になってるし」

瑞樹「例えようもなく、かけがえのない想い出。だから言葉の綾よ」

早苗「……うん」

瑞樹「でも、私のピークは今だから」

早苗「……」

瑞樹「今、私は本当のわたしでいられてる気がする。過去はやっぱり、過去なのよ」

早苗「……そして未来は確実に足音を立ててやってくる、と。ナンコツあげる」

瑞樹「そうよ。だからこうしてそれに向けて対策を」ポリポリ


瑞樹「余計なお世話よ。おいひい」ポリポリ
瑞樹「それで?」

早苗「へっ?」


瑞樹「早苗が急に呼び出すなんてめったにないことじゃない」

瑞樹「何か話があるんじゃないの?」

早苗「瑞樹……」

瑞樹「『苗樹の会』はいつも事前予約制だもの」

早苗「……」

瑞樹「笑わないの?」

早苗「人の図星ついて、笑えないのわかってるくせに。タチが悪いわね」

瑞樹「うふふ、よく言われるわ。最近は言われないけど」
早苗「こういうこと、というか、私が気軽に相談とかできるのって瑞樹くらいだし……」

瑞樹「そうかしら? まあ、そういう相手に選んでもらえたのは素直に……ちょっと、うれしいわね」

瑞樹「ふふっ」

早苗「まあ安パイっていうか」

瑞樹「ぶん殴るぞ♪」

早苗「話すからタコわさも食べていい?」

瑞樹「立場考えなさいよ!」

早苗「もぐっ」

瑞樹「食べてるし……」
早苗「あたしってこのままアイドル続けてていいのかなぁって」



早苗「……」モグモグ

瑞樹「……」


瑞樹「思いのほかヘビーじゃないの……」
早苗「相談って言ったじゃない」

瑞樹「そ、そうだったわね、ちょっとビール飲むわね」



瑞樹「ぷはっ」

瑞樹「……ふぅ、アイドルを、ねぇ」


早苗「……」モグ

瑞樹「先が見えない? 楽しくない?」

早苗「う〜ん、あいにくどっちもノーなのよね。どこまでも行けそうだし、めちゃめちゃ楽しいわ」

早苗「あたしにこの世界を見せてくれたP君には、ほんと何て言ったらいいかわかんない」

瑞樹「……へぇ」
早苗「運命って言葉はあんまり信じないけど、P君と出会えたことは世界中に感謝したくなる」

瑞樹「……」

早苗「やっぱり飛び入り参加みたいなもんだし、いろいろ辛いことや慣れないこともあったけど」

早苗「ガラにもなく緊張で身体が震えることもあったけど」

早苗「あたしの後ろにP君がいるって思ったら、頑張れた。あとでP君が笑ってくれるって思ったら」

瑞樹「……ええ」

早苗「うふふっ、瑞樹には話したっけ? 最初はあたしが見回りしてたらいきなり声かけてきてさ?」

早苗「あの時はヘンな子だなーとしか思わなかったけど、今じゃこんなに胸の中いっぱいでさ」

早苗「仕事が取れたらP君と一緒に喜んじゃうし、失敗してもP君に励まされたら何でもできちゃうし」

瑞樹「……いや、あの」

早苗「なんか最近は話してるだけでふわふわして、目が合うととろけちゃう感じがするのよね」

早苗「P君と一緒に仕事するの楽しいんだけどけっこう切なくて」


瑞樹「ちょっ、待って!!!」
早苗「えぇなによぉ? 今からイケイケでドンドン盛り上がってくとこだったのにぃ」グデン

瑞樹「……」

早苗「まぁとにかく、楽しいしガンガンやれてるんだけど、なんか不思議な罪悪感みたいなのがあって」

早苗「このまま続けてていいのかなぁって漠然と思っちゃうのよねぇ」ダラーン


瑞樹「あ、P君」


ガタッ!! ガタタァンッッッ!!! 

サッサッ ピッシィイイイイ!!!!


瑞樹「………」

早苗「………」


瑞樹「ちょっと前までは彼が来たってダラけたままだったわよね」

早苗「えっ、え、そう? かしら? えっ、ていうか嘘?」アセアセ
早苗「やっ、もっ、なによ? うそ? ウソだったの? ちょっともうやだぁ〜」

瑞樹「ええ」

早苗「急にダマすとかひどいじゃないのよっ。こほっ、げほっ、ま、まあね、その」

瑞樹「そうね」

早苗「あたしも淑女のたしなみとやらを身につけたってワケよ? 女としての矜持っていうか」

瑞樹「私ももっと早く気づくべきだったわね」

早苗「オトコのそばでもダラけたままだったら終わってるでしょ! でしょ!?」

瑞樹「あなたは毎回呑んだくれてて覚えてないかもしれないけど」

瑞樹「もう五回目くらいなのよね、『P君との出会いの話』」

早苗「………」



瑞樹「P君のこと好きなの?」


早苗「わぁああーーーーっっっわぁああああああーーーーーっっ!!!!」
「どうかなさいましたか!?」


瑞樹「ほんっっとにもう信じられへん大声出すなドアホ!!! ……あ、うふふ♪ 何でもないですわっ、すみませ〜ん」

早苗「ぅなゅぅう……にぃいい……」

瑞樹「二十八歳の大人が座布団に顔うずめてんじゃないわよ」

早苗「むりむり心臓やばいはずかしい無理」

瑞樹「謝れ」

早苗「すみません……」

瑞樹「私じゃない。店員さんに」

瑞樹「もうしません」

早苗「もうしません……」
早苗「……」

瑞樹「まったく……せっかく良い感じのお店なのに早くも出禁食らいたいの?」

早苗「……おみず」

瑞樹「仮にもアイドルなんだし目立たないように努力はしてよね、もう」ヒョイ

早苗「あ、あんがと」

瑞樹「顔真っ赤になったままよ」

早苗「照れてない!」

瑞樹「お酒のせいでしょ?」

早苗「そ、そうよっ」

瑞樹「どうして頭をおさえてるの?」

早苗「さっきぶつけたのよぉ……ど、動揺してるわけじゃないのよ……もぐっ」

瑞樹「あ、ごめんなさいナンコツ渡してたわ。まさかそのまま食べるとは思わなくて」

早苗「……」

瑞樹「……」
早苗「」バクバクバクバリムシャモグ


瑞樹「きゃぁああちょっ!! なんで全部食べるのよ信じられない警察呼んで!!!」

早苗「ちひょふほははふふれ!!」

瑞樹「誰が『地方のアナ崩れ』よイテもうたるぞこのセルライトめぇえええ」ググググ

早苗「ぬぎぎぎぎぃいっ」グググググ
「ほかのお客様のご迷惑となりますので……」


瑞樹「……」

早苗「……」
早苗「あはっ、あっははははは!」

瑞樹「ふふっ、うふふっ!」



早苗「あ〜あ……ほんっと……最高だわね……」

瑞樹「……」


瑞樹「……ねえ、早苗」

早苗「うん?」



瑞樹「顔グッチャグチャだから化粧直してきたほうがいいわよ」

早苗「このタイミングでそういうこと言う!?」
早苗「あんたねぇ空気読みなさいよ!! 今のはこれからあたしが良い感じのこと言ってしみじみする場面でしょうが!」

瑞樹「事実を指摘しただけでしょうが」

早苗「なんなのその言い草! ムキーッ!! いいわよそっちがその気ならっ……せっかくあんたを感動させること言うつもりだったのに!」

瑞樹「あー結構」

早苗「きらい! 瑞樹キライ! んべー!!」

瑞樹「そうね」

早苗「どっかいけ! じゃなきゃあたしが行くわよ化粧室! バーカ! アホ瑞樹!!」

早苗「言っとくけどさっきのだって泣いてなんかないんだからね!!」ガタッ!

瑞樹「わかるわ」

早苗「バーカ! アホ瑞樹!!」
早苗「………」


早苗「……でも」



早苗「ありがと」




瑞樹「……」


瑞樹「どういたしまして」


タッタッタッ




瑞樹「……」


瑞樹「………ふぅ」


瑞樹「……」
瑞樹「ようやく、一仕事終わったわ……ここまで随分かかっちゃったわね」


瑞樹「ほんと、あたしって何なのかしらね……」


瑞樹「こんなに苦労させられちゃって」


瑞樹「ねぇ、見てる? P君……」



 ――ねえねえP君? お願いがあるのだけれど!


 ――うんうん、ちょっと聞いてくれるかしら?



 ――……どう? オッケーよね?


 ――え〜いいじゃないのぉ、さっきみんなで撮ったじゃない、だったら私と二人で撮るのも一緒でしょう?


 ――全然違う? もう、細かいこと気にしないの! 私とだったら平気でしょ?



 ――……早苗じゃないんだし
 ――ふふっ、気づいてないと思った?


 ――でもP君、賢明な判断かもね。日頃のふるまいでバレちゃうくらいなんだし


 ――早苗と一緒に写真なんか撮ったらどんな表情になることやら。それが怖かったんでしょ?


 ――潔癖症ね。慎重すぎるくらい


 ――……でも、早苗にはそれくらいがいいのかもね
 ――ねえ、私に少し任せてくれない?


 ――何って、悪いようにはしないわ。すこ〜し策を凝らすだけよ♪ 

 
 ――ほらほらっ、もっと近くに寄って? この写真を道具に使って、色々してみちゃうだけだから♪


 ――ほぉらぁ、そんなに恥ずかしがらなくたって! 私がセクシーなのはわかるけど!



 ――え? 恥ずかしがってない?

 

 ――真顔で言われると……微妙に傷つくのだけど……


 ――……P君って、ロリコン?


瑞樹「ほんと、私にとって実入りなんてあったもんじゃないわ……まったくぅ……」


瑞樹「んっ、んっ……」


瑞樹「ぷはぁっ」



瑞樹「……」


瑞樹「『私って何なのかしら』……?」


瑞樹「決まってるじゃない、アイツの親友よ」
『やっぱりあたし』

『あんたのこと……みずきっちゃんって呼びたい』



瑞樹「あんな一言くらいで、どうしようもなく嬉しくなって……」



『いいこと? みずきっちゃん』



瑞樹「背中がむずがゆくなるくらい、温かい気持ちにさせられて」



『いいじゃないの、かわいい〜』



瑞樹「過去のことを持ち出してまで、照れ隠しして……」
『……でも』



『ありがと』



瑞樹「……本音を見せられれば、それはまぁ、やった甲斐もあったかなぁって……」


瑞樹「……」

瑞樹「これって、ツンデレってやつなのかしらね」



瑞樹「アイドルミズキ、新境地……」



――――――――――――――――――

―――――――――――

―――――




タッタッタッタッ!!



早苗「おぉ〜い! みずきっちゃーーーーん!! お待たせーーー!!」

瑞樹「うるさぁい! そんなに叫ばなくたって聞こえてるわよ!」


瑞樹「あんまりそう呼ばれるとありがたみがなくなるじゃない……」

早苗「は? 何の話よ」

瑞樹「こ、こっちの話っ」


早苗「ふぃー食った食った、呑んだ呑んだ〜♪」

瑞樹「ふぅ……外、けっこう冷えるわね。早く行きましょうか」
トコトコトコ


瑞樹「……あぁ、そうだ、会計任せちゃって悪かったわね」

早苗「いいってことよ。こんなのどうってことないわ。新生『片桐早苗』は細かいこたぁ気にしないんだから!」

瑞樹「生まれ変わる前からそうだったような気がするけれど……」

早苗「聞こえないわ〜〜細かいこと気にしないから聞こえないわぁ〜〜」

瑞樹「もう……」


早苗「……まぁ、今日くらいは受け取っといてよ」

瑞樹「……はいはい」

早苗「あたしにも一応メンツってものはあるんだから、その……ね?」

瑞樹「そうね」

早苗「ふ、二人だけの秘密ってやつよ、親友、二人だけの」
瑞樹「もちろん言いふらしたりなんかしないわ。それに、取り立てて気にするようなこと?」

早苗「みずき……」

瑞樹「私はあなたに幻滅しないって言ったじゃない。何を今さら」

早苗「そ、そうよねっ」

早苗「あんたは……そういうやつよね!」

早苗「んふふっ、あたしってば、ホント良いダチ持ったもんだわ! サイコーの気分! これからも順風満帆ね!」


瑞樹「たとえ私との呑み比べに負けたとしても」


早苗「」
早苗「……ちょっと待ちなさい、あれって言い合ってるうちにうやむやになった感じだったじゃ」

瑞樹「なにバカなこと言ってるの。私はちゃんと数えてたわよ。私が[ピー]杯であなたが[ピー]杯」

早苗「ちょっ……そんな出し抜くみたいなマネっ、無効に決まってるでしょ無効!」

瑞樹「私の勝ちってことでいいじゃない」

早苗「ありえない! どんな勝負事でも負けるのだけはイヤ!」

早苗「だいたいねぇ、あたしは勝負する前から杯数あったんだからハンデ背負ってたようなもので」

瑞樹「敗者の言い訳ね」

早苗「こんの女ぁああーーっ!! もう一軒よもう一軒っ、そこでケリつけようじゃない!」

瑞樹「イヤよ」

早苗「なぁっ!?」

瑞樹「私は今そんな気分じゃない」
早苗「……な、なにかあったの?」

瑞樹「……」

瑞樹「さっきのお店」


瑞樹「合コンやってたんですって」


早苗「………」
瑞樹「どうして気づかないのよ!! どうりで若い人が多いわけだわ! いつもはもっと落ち着いた雰囲気だもの!」

瑞樹「しくじったわ私としたことがっ……!!」

早苗「あ、うん」

瑞樹「早苗ぇっ、あなたも言いなさいよ気づいてたんでしょ!?」

瑞樹「あんな若い子たちなんて『ウェーイ』とか『チョベリグー!』とかハシャいでたはずよ目につくでしょ!?」

早苗「こっちもうるさくしてたし……」

瑞樹「こんなこと今までなかったのよ!? だから私マスターを問い詰めたの!」

瑞樹「『店員も客も若いのを取り入れる』? 『新陳代謝』? 『広い層を獲得しなきゃ生き残れない』!?」

瑞樹「こだわりを持ち続けるのがこの時代大事なんでしょうが!!」ムキーッ!

早苗「そ、そうね」

瑞樹「だから私だってずっとフレッシュな女の子アイドルをっ」

早苗「それはどうかと思うわ……」
早苗「というかあんたねえ」

瑞樹「もうあの店アウトね。用無しだわ。十四回目からは別の場所よ」

早苗「『この場所を指定した時点で、私のフィールドだったってこと。キリッ!』とか言ってたじゃない」

瑞樹「うるさいうるさい! 変えるったら変えるの!」

早苗「そもそもさー、合コンがあったからって反発するようなこと?」

瑞樹「あー!! 今言っちゃいけないこと言ったわね! 一番デリケートな部分に土足で踏み込んだわね!!」

瑞樹「くぅううっ、これがカップル目前の女の余裕ってやつなの? 恋愛強者? リア充ってやつなの!?」

瑞樹「ツンデレミズキくやしい!!」 

早苗「あんたおかしなことになってるわよ!」
瑞樹「ふん、いいわよいいわよっ、今は余裕でもそのうち足をすくわれるわ」

早苗「助けてくれたのあんたでしょ……」

瑞樹「あなたなんて……さっきの店でネタをつかんだ若い小僧どもにP君とのこと言いふらされて」

瑞樹「世間に広まって邪魔されて、そのまま破局を迎えるといいわっ……」

早苗「………」


早苗「上等じゃない。来るなら来いってのよ」
早苗「だって、あたしにはそんなもの関係ない」


瑞樹「……」


早苗「あたしの道を邪魔するってんなら、全力でねじ伏せてやるだけよ」


瑞樹「……」

瑞樹「……ふふっ」
瑞樹「……あ〜あ、とんだ化け物を育てちゃったみたいね」

早苗「それでもいいわ。ファンの子たちと……それとP君にさえ良く見えてればね」

瑞樹「はいはい、こっちがお腹一杯よもう……ふん、いいわいいわ」

瑞樹「私はアイドル一直線、アイドルはみんなの恋人、だから独り身でいたって許されるんだから〜!」クルクルー!

早苗「何なのその理屈……あっははは!」


瑞樹「ねえ早苗ー」

早苗「なによぉ」


瑞樹「今夜はー……飲み明かすわよー」

早苗「……」


早苗「最初っからそのつもりだっつーの! うっひっひ!」


瑞樹「あ、P君だ」


早苗「はぁ? なによ、もうその手は食らわない、ん、だから……」




早苗「………………」


瑞樹「うふふっ、P君、今来たところ? そう、よかった♪」

早苗「……」


早苗「ってちょぉおおおおっっっと待ちなさいよどうしてホントにP君がここにいるのよなんでやだちょっとぉ!!!」


瑞樹「ごめんね〜、こんな夜遅くに急に呼び出しちゃって。でも、話した通り大切な用事があってね」

瑞樹「だからあなたも急いで来てくれたのよね? あーはいはい、わかってるわ」


早苗「は? ……は?」

瑞樹「んー、なぁに早苗?」


早苗「あんた……あんたっ……まさか……まさかまさか……」

瑞樹「ほぉらぁ、せっかくP君が来てくれたのよ? いつもは慎重な彼も今日限りは覚悟を決めて、ね?」

早苗「いいい、い、いつの間にっ……!!」

瑞樹「さっきあなたが化粧しに行ってた間に」

早苗「連絡したのぉ!? どうしてっ」

瑞樹「どうしてって、決まってるじゃない」
瑞樹「P君〜? わかってると思うけど用事っていうのは私じゃなくて」


早苗「今まで外でしゃべってたのも……P君を待つための時間稼ぎっっ……」


瑞樹「そうそう! もう今夜バシっと決めちゃって! 良い感じの雰囲気になったら私は退散するから〜♪」


早苗「瑞樹っ……あんたって奴はぁああっ……」


瑞樹「え? お見合いのおばさんみたい? P君相変わらず私には厳しいのね!」
早苗「こぉらぁあああ瑞樹ぃいい!! あたしに黙って毎度毎度許さないわよあんたぁああ!!!」

瑞樹「お、きたわね新生『早苗』♪ ガツンと言っちゃえっ♪」

早苗「シメるっ!! シメる!! あんただけはもぉおおーーーっっ!!!」

瑞樹「あら、目の前にP君がいるけど平気?」



早苗「っ!? いやだわP君見ないでっ、ていうかもう今さらっていうか、大好きなのよばかやろーー!!!」


早苗「あーっうるさいうるさい! 人に聞かれようが何だろうがいいのっ、あたしがそうしたいんだから!!」


早苗「P君っ、大好きよぉーーーーっ!!!」


早苗「んもう止めるなっ、愛してるんだからばかぁあああーーーっ!!」




瑞樹「……ふふっ」




瑞樹「がんばれ……早苗」


  



                                      おしまい
イジられ早苗さんとイジる瑞樹お姉さんが書きたかった
と思ったら予想以上に長くなってしまった。読んでくださった方ありがとうございました

12:30│川島瑞樹 
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