2013年12月19日

高峯のあ「銀河通信」

モバP「……珍しいですね、貴方が飲みに誘うなんて」



※モバマスSS短編、のあさんメイン


※のあさんコレジャナイ感抱くかもしれません
※二次創作です(いろいろとアイドルの過去なり関係性なりが捏造されています)
※過去作と同じ世界線ですがここから読み始めても差し支えありません
※さくさく投下します

過去作
並木芽衣子「休暇旅行」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1386279990

高峯のあ「……気まぐれ、というものかしら」

のあ「貴方と二人、こうしてテーブルに相対してひと時を過ごす……」

のあ「そういう夜は……P、苦手だったかしら」

P「いえ、ここんとこ酒を飲む時といえば事務所の酒豪や酒乱たちとの宴会で……」

P「こうして落ち着いた環境で、自分のペースで飲めるというのは好きですよ」

のあ「………そう」
P「それに、このお店の雰囲気……」

P「吹き抜けのガラス天井で店内の照明を極力落としてる……だから、空がよく見える」

P「店の装飾もよくよく見ると星の意匠をこらしてたりちっちゃな望遠鏡や天体儀なんかがありますね」

P「のあさんが好きそうなお店ですね」

のあ「……Pと出会う前から……この店のことは知っていた」

のあ「今でも、一人になりたい時にはよく来ているわ」

のあ「いわばここは……私の、秘密の場所」

のあ「誰かと共に訪れたのは……そうね、今日が初めて」

P「そうなんですか……。でも、俺なんかに教えちゃって良かったんですか?」

のあ「………?」

P「こんな素敵な店を知っちゃったら、俺も常連になっちゃって」

P「のあさんが一人になりたい時間に、俺がこの店に来ちゃうかもしれませんよ?」

P「それに、うっかり誰かに喋っちゃうかもしれませんし」
のあ「…………P」

P「はい?」

のあ「貴方は、私をプロデュースすることで、私の力を存分に引き出してくれたわ」

のあ「そして、私が知らなかった私の一面も……貴方に気付かされてしまった」

のあ「今の私が、これくらいの秘密を貴方に打ち明けても……」

のあ「貴方が……私の時間に入り込んでも……構わないわ」

P「のあさん……」
のあ「それに、貴方はそう簡単にこの秘密を言いふらしたりしないわ」

P「……どうして、そう思うんです?」

のあ「私も……貴方と共に過ごしていることで、貴方を知っていったわ」

のあ「口では軽い冗談を飛ばしていても、貴方は人を裏切るようなまねをしない」

のあ「そう確信しているわ」

P「……ありがとうございます」

のあ「……………」

P「……………」
ピアノのしっとりとした旋律が流れる店内……

私と貴方との間に、多くの言葉はいらない

百億光年よりはるか彼方まで広がる数多の星々と

意識を蕩けさせるわずかなカクテルさえあればいい

少し体が火照ってくれば……

自然と……必然の言の葉が紡がれていくのだから……
P「……………」

のあ「………P」

P「なんです?のあさん」

のあ「………少し、昔話をするわ」

のあ「私が……Pと出会う少し前の話……」

のあ「P……聞いてくれる?」

P「……もちろんです」

のあ「………そう」


………そうね、どこから話せばいいのかしら……
これは、私が経験した不思議な話……

貴方と出会う半年ほど前、私は故郷から東京に来たの

この地で私の可能性を求めて……私の力を発揮できる場を探していたわ

でも、望みのものがそう簡単に巡りあえるものでもないってことは……貴方も知っているわね
ひと月、ふた月と、私は不慣れなこの地であてもない探し物をしていた

三か月が過ぎても、望むものは見つからず……

慰めとなるようなものは、ここや私の家から見る……きらめく星空だけだった

……そう、あの頃にこのお店を知ったの

ここにいれば……心が安らいだ

都会の喧騒を避けて、私が私であることを思い返すことが出来たの

………

……
のあ「……………」

P「……ど、どうしたんです?急に押し黙っちゃって」

のあ「………意外?」

P「えっ」

のあ「私が……貴方を前にこんな話をするなんて……」

のあ「……いえ、きっと貴方は意外に思っているわ」

P「………やっぱりわかっちゃいますか?」

のあ「言ったでしょう?私は、貴方を知っている」
P「……そうですね。いつもののあさんとは違う印象を受けました」

P「いつもは……のあさん、自分の身の上のことをあまり話さないから……」

のあ「……きっと、貴方と飲んでいるこのカクテルのせい……」

のあ「そして……あの時と同じ……あの、星空のせい」

P(……のあさん、いつもはお酒を飲んでも酔った印象がないのに……)

P(いつもはまっ白い肌も赤みを帯びていて……)

P(今日は、まるで人が変わったように饒舌だ)

P(……………)
そう、今日と同じ……満天の星空が見える夜だったわ

私はその時、自宅で一人夢想していたの

……急に、電話が鳴った

電話の主は知らない番号だった

いつもなら、黙ってやり過ごすはずの電話だったけれど……

その日は、何故だか受信ボタンを押していたわ
スピーカーから声が聞こえる

『もしもし』

その声は……どこかで聞いたことのあるような……声だった

電話の主はこう続けたわ

『淋しくは ありませんか』

そうしてぷつりと、電話は切れた

たったそれだけ……
一体誰からの電話なのか、どうして私に電話をしたのかわからない

私は窓から外を見上げた

星たちが煌めいている……あの星の下に、きっと電話の主はいるのだろうか

そんなことを思ったわ
P「………なんだか夢のような話ですね」

のあ「………ええ、これは夢の話よ」

P「えっ」

のあ「あの頃、一度だけ……そう、たった一度だけだったけど、そんな夢を見たわ」

のあ「この店から見える星空が……それを思い出させたの」

P「………もしかして、からかってます?」

のあ「………そうね、ある意味では……」

のあ「……でも、もしかしたら……あの時本当に電話がかかってきていたのかもしれない」
P「……どういうことですか?」

のあ「……あの頃の私は……行き詰まりを感じていた」

のあ「私一人の力をもってしても、私の在るべき場所が定まらず……」

のあ「このまま一人孤独にいるくらいなら……ここを去ろうとすら考えていた」

P「……………」

のあ「……そう、あれはきっと……私の中にいる私でない誰か」

のあ「私というひとつの小宇宙の彼方にいる誰かからの……」
P「……ああ、そうでしたね」

のあ「…………?」

P「のあさん、この前のお仕事でも言ってましたね」

P「『孤独とは相容れないから、兎にはなれない』って」

P「一人になりたい時はあっても、本当に一人にはなりたくない」

P「普段は気丈に振る舞っていますけど、こういうのあさんも確かにいるんですね」
のあ「………そう、そうね。それも……私」

のあ「私は……孤独な兎には……なりたく……ない」

P「……のあさん、ちょっと酔い過ぎてません?」

のあ「………今は……」

P「?」

のあ「この一瞬間だけは……貴方の前で、ありのままの私を知ってほしいの」

のあ「私がちゃんと……貴方と共に歩いて…いるということを……わかっていて……ほしい………」

P「……の、のあさん?」

のあ「……………」

P「………あののあさんが、酔いつぶれた……?」
P(その後、俺はのあさんを背負い、店を後にした)

P(タクシーを呼び、女子寮の大人組にのあさんの介抱を電話越しに頼んだ)

P(のあさんが酔いつぶれたと聞き、みんな一様に驚きの声をあげていた)

P(早苗さんに至っては俺が飲ませすぎたのではないかと疑っていたくらいだ)

P(……いつも俺に飲ませているのは早苗さんの方じゃないかとは決して言わなかった)

P(タクシーが来るまでの間、俺はのあさんをおぶったまま澄み渡る夜空の下で立ち尽くしていた)

P(かすかに寝息を立てているのあさんの体は、いつもより小さく感じて)

P(彼女の寝顔が……とても安らいでいるように見えた)


      ”もしもし 見知らぬ わたしの友だち”

       ”わたしはちゃんと 歩いています”
翌日・事務所

片桐早苗「のあちゃん、体は大丈夫?」

のあ「……心配をかけたわ……もう、動けるわ」

早苗「いい?『酒は飲んでも飲まれるな!』」

早苗「P君に飲まれそうになったら容赦なくシメてあげちゃいなさい」

P「早苗さん……だから違うんですって」

のあ「……………フッ」

P「のあさんもきちんと言ってくださいよ……」
のあ「…………P」

P「……なんですか?」

のあ「昨夜……眠ってしまった私を送ってくれたのね」

のあ「……ありがとう」

P「……いえいえ、のあさんにはお世話になりっぱなしですからね」

のあ「お礼に……また一つ、私の秘密を教えるわ」

P「秘密……ですか」

のあ「私……思い出したの」

P「何をです?」

のあ「あの夢……どうしてあの夢を見たのか……」

P「夢を見た理由?どういうことです?」
のあ「昔、そう、私がまだ学生だった頃……」

のあ「真夜中、一人で星を見るときにはいつもラジオを手元に置いていたの」

のあ「ラジオを聴きながら……星を眺めていた……」

P「ラジオ、ですか……」

のあ「懐かしいわ……。そしてあの夜、空を埋め尽くすように広がる星たちの下で……ラジオから流れたあの歌……」

のあ「私の見た夢は、あの歌の歌詞そのものだったの」

のあ「私の好きな歌……そう、その曲の名は……」
おわり



SSのモチーフは谷山浩子「銀河通信」(冷たい水の中を君と歩いていく・他)です
本編の一部に歌詞を引用しています
のあさんが歌っていたとしても何らおかしくはないくらいステキな曲です
彼女は午前二時望遠鏡かついで踏切に行くよりもラジオ片隅に自宅屋上で星を眺めるタイプだと思います
のあさんの語りがのあさんらしくできない病はどうしたら治りますかおしえてちひろさん!

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18:30│高峯のあ 
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