2014年11月04日

双葉杏「夢のおはなし」


双葉杏「ねぇ、プロデューサー」





P「どうした?」







杏「ちょっと聞いてほしいんだけどさ」





杏「夢を見たんだよ」





P「……?」





P「あんずのうたか?」





杏「違うよ、本当に夢の話」





杏「なんかね、海にいたの」





杏「浮き輪でぷかーって浮いてる感じ」





P「へぇ」





杏「そしたらね、どんどん流されちゃって」





杏「気付いたらさ、みんながちっちゃく見えるくらいになっちゃってたの」





P「それは怖いな」





杏「でしょ?」







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杏「そしたらさ、誰かが『こっちじゃないよ』って言ったんだ」





杏「近くに誰も居ないのにね」





P「そして、どうなったんだ?」





杏「誰かがさ、杏の浮き輪にロープ付けてたの」





杏「そのまま引っ張ってもらって、助かったんだ」





P「そうか」





杏「でもね、なんか怖くなかった」





P「流されたのに?」





杏「うん。助けてもらえるって、最初から分かってたから」





P「へぇ」





杏「それで、海岸に戻ってきたら目が覚めたの」





P「そうか」





杏「変な夢だよねー」





P「まあ、夢だからなぁ」







――――



杏「ねぇ、プロデューサー」





杏「今日も夢を見たんだよ」





P「今日はどんなだったんだ?」





杏「ずーっと空を見てたの」





杏「青くて綺麗だなーって」





P「へぇ」





杏「そのままぼーっとしてたら、ふわーって身体が浮かんでさ」





杏「空を飛んでるわけじゃないけど、宙に浮いてたの」





P「なんだかいつも浮かんでないか?」





杏「あ、確かに」





杏「それでさ、杏は歩かなくてもいいから楽だなーって思ったんだ」







杏「そしたらさ、浮かんだのはいいんだけど降りられなかったんだよね」





P「ああ」





杏「困ったなーって思ってたら、きらりが来てくれたの」





杏「遠くからだとあんま分かんなかったけど、空飛んでる杏よりもおっきくてさ」





杏「そのままきらりが捕まえてくれて、肩に乗せてくれたんだ」





P「きらり凄いな」





杏「だよね」





杏「きらりもさ、『杏ちゃん、飴食べゆー?』っていつも通りなの」





P「今の似てたな」





杏「えー、そうかなぁ」





杏「……でさ、飴貰ったんだけど」





P「貰ったけど?」





杏「飴もきらりサイズだったんだ」





P「そりゃ残念だったなぁ」





杏「うん。杏より大きいんだもん」







――――





杏「ねぇ、プロデューサー」





P「どうした?」





杏「なんか変な夢を見たんだけどさ……ちょっと聞いてよ」





杏「気付いたらさ、身体が縛られてて動けなかったの」





P「へぇ」





杏「頑張っても全然だったから、もういいやーって諦めたんだ」





P「夢の中でも杏らしいな」





杏「褒めてるの?」





P「さあ?」





杏「……そう」





杏「そしたら、何かがほっぺに落ちてきたの」







杏「上を見たらさ、天井の隙間から水が垂れてて」





杏「そのまま部屋に水が溜まって溺れる!って思ったの」





P「……怖いな」





杏「でしょ?ほっぺに水が落ちてくるし、動けないしでどうしようもなくて」





杏「どうしよーって思ってたら、いきなり身体が軽くなったんだ」





P「軽くなった?」





杏「うん、それで目が覚めたんだけど……」





杏「杏、仮眠室で寝てたんだ」





P「?」





杏「ヒョウくんがさ、杏の上に乗ってたみたいで」





杏「小春に謝られたよ。ヒョウくんがぺろぺろしてごめんなさいって」





P「あー……。そりゃ身体も動かないよな」





杏「うんうん」







――――





杏「プロデューサー」





P「どうした、杏?」





杏「杏、夢を見たんだよ」





P「そうか。どんな夢だったんだ?」





杏「覚えてない」





P「そっか」





杏「うん……それだけ」





P「……杏、コーヒーでも飲むか」





杏「うん。あと飴」





P「今舐めたら、コーヒー苦くなるぞ?」





杏「いいよ別に。それより飴」





P「はいはい」







――――





杏「ねぇ、プロデューサー」





P「どうした」





杏「ちょっといい?」





P「ああ」





杏「じゃ、ちょっと失礼……よいしょっと」





P「……?」





P「どうした?俺の膝なんか座って」





杏「……別に?」





P「そうか」





杏「だめ?」





P「いいけどさ」





杏「……ありがと、プロデューサー」







P「悪い夢でも見たのか」





杏「……」





P「図星だな」





杏「……夢の中で起きたらさ、誰もいなくなってたの」





杏「事務所にいるのに、プロデューサーもきらりも、誰もいなくて」





杏「怖くなって、ずっとソファで寝てたんだ」





P「……そうか」





杏「うん」





P「飴、食べるか」





杏「……ありがと」





P「今日はいい夢見れるといいな」





杏「……そうだね」







―――――





杏「今日はね、楽しい夢だったよ」





P「そうか。良かったじゃないか」





杏「うん」





杏「なんかね、プロデューサーとドライブしてた」





杏「都会だったり、森の中だったり、色んな所を走ってたね」





P「へぇ」





杏「どこ向かってるの、って聞いてもさ」





杏「『どこだろうな』って、プロデューサー教えてくれなかったよ」





P「そうか」





杏「夢の中でまでプロデューサーしなくていいよ、ほんとに」





P「そう言われてもなぁ……杏の夢の中だぞ?」





杏「勝手に入ってこないでよ」





P「勝手に俺を夢に出すなよ」







杏「……まあ、それでさ。途中まで二人きりだったんだけど」





杏「いつの間にか隣にきらりが座ってて、助手席にちひろさんがいて」





杏「ぼやーっとしか分かんなかったけど、みんなで出掛けてるんだなって思ったの」





P「楽しそうだな」





杏「……たまには悪くないかなって思うよ」





P「……珍しいな、杏がそう言うの」





杏「プロデューサーがおぶってくれるならねー。もしくはきらり」





P「はいはい」







P「ああ、そろそろレッスンの時間だな」





杏「えー……もう少しゆっくりしてようよ」





P「はいはい。そうだ、帰りどこか連れてってもいいぞ」





杏「……そう?」





杏「……じゃあ、プロデューサーに任せる」







――――





杏「ねぇ、プロデューサー」





P「どうした?」





杏「杏、夢を見たんだけどさ……」





P「?」





杏「由愛が出てきたんだ」





P「由愛か」





杏「うん。由愛だった」





P「……」





杏「……」





杏「それだけだよ」





P「そうか」









――――





杏「プロデューサーはさ、夢見ないの?」





P「俺か?」





杏「うん。いつも杏ばっかり話してるし」





P「そうだな……でも、あんまり覚えてないぞ」





杏「そっか」





P「気になるのか?」





杏「まあね」





P「……分かった。明日覚えてたらな」





杏「うんうん。いい夢見てね」





P「どうだろうなぁ」





杏「今すぐ寝てもいいんだよ?仕事置いといてさ」





P「それは駄目だ」







杏「……で、どうだったの?」





P「ああ。杏が出てきた」





杏「……どんな夢だったの?」





P「舞台裏でさ、だるそうな顔しながら衣装着てて」





P「やる気なさそうにステージに向かうんだ」





杏「へぇー……」





P「でも、スポットが当たったら、ちゃんとみんなの前でアイドルしててさ」





P「ライブの最後の方なんか、ファンと一緒に楽しそうに笑ってるんだ」





杏「……」





P「そんな風になってほしいって思った」





杏「……あれ、夢の話だよね?」





P「……夢の話だぞ?」





杏「そっちの夢じゃないよ」





P「まあ、まあ。思い出せなかっただけだよ」





杏「まったくもう……」







――――





杏「今日は事務所で寝てたら、プロデューサーがやってきて」





杏「レッスン休みにしたぞーって言ってくれてさ」





杏「ラッキーって思ってたら、仕事が入ったんだ」





杏「お仕事やだなーって思ってたら、それがゲームの先行プレイのお仕事でさ」





杏「カメラで撮られてる以外は自由にゲームしてていいって言われて」





杏「スタッフさんから飴も貰って、ほんとにやったーって思ってたんだよ」







P「ほう?」





杏「……という、夢を見たんだ」





P「他に言うことは?」





杏「……寝坊してごめんなさい」





P「今日がレッスンだけの日で良かったな。ちゃんとトレーナーさんにも謝るんだぞ」





杏「……本当にごめん、プロデューサー」





P「過ぎたことは仕方ないさ。次から気を付けような」







――――





杏「……っ!」ガバッ







杏「あ……」





杏「うわ、汗びっしょり」





杏「……はぁ」









P「またか」





杏「うん」





P「意外と寂しがり屋なんだな」





杏「杏は一人じゃ生きていけないからね」





P「人としてどうなんだそれ」





杏「養ってもらうからいいよ……プロデューサー、飴」





P「はいはい」







――――





ガチャッ





P「お疲れ様です……って、誰も居ないな」





杏「あれ、ちひろさんは休みだっけ」





P「そうだけど……誰かしらアイドルいると思ったんだがなぁ」





杏「そんなこともあるよね……ふわぁ」





P「眠いのか」





杏「……今日はいっぱい働いたからね。しばらくは休ませてもらうよ」





P「明日からレッスンだけどな」





杏「えー……」





P「まあ、まあ。将来のためだ」





杏「明日より今日だよ」





P「はいはい」







P「コーヒー淹れたけど飲むか?」





杏「今日はいらない……それよりほら、座って座って」





P「ん、ああ」





P「どうした、杏?」





杏「よいしょ」ゴロンッ





杏「……プロデューサーの膝、固いね。枕失格だ」





P「じゃあどけてくれ。仕事するから」





杏「えー……せっかく杏が膝枕させてあげてるんだから、もう少し喜ぼうよ」





P「枕失格なのにか」





杏「そこはほら、努力してよ」





P「無茶言うな」





杏「……仕方ないなぁ。杏が折れてあげよう」







杏「それじゃ、おやすみ……」





P「おい、ちょっと待てって……」





P「……杏?」





杏「……んぅ」スゥ





P「おいおい……いくらなんでも、早すぎだろ」







P「はぁ……仕方ないか」





P「……にしても」





杏「ふふ……」





P「いい寝顔だな。一枚失礼して……」パシャッ





P「……いい夢見れるといいな、杏」





杏「んー……」スヤスヤ







――――





P「んー……もう少しで終わるかな……」カタカタカタ……





杏「……あのさ、プロデューサー」





P「……どうした、杏?」





杏「この前、プロデューサーの膝枕で寝てたじゃん」





P「ああ、あれか」





杏「……なんかね、あんまり覚えてないんだけど」





杏「すっごくいい夢だったんだ」





P「へぇ」





杏「なんとなく思ったんだけどさ」





杏「プロデューサーと一緒だったら、いい夢が見れるかもしれないって思ったの」





P「……はい?」





杏「だから、プロデューサーと一緒だったら」





P「いや、聞こえてるから」







P「杏が俺と一緒に寝るといい夢見れる?」





杏「うん。多分」





P「……気のせいじゃないか?」





杏「確かめてみようよ。本当に杏がいい夢見れるかどうか」





杏「という訳でさ。今日泊めてよ、プロデューサー」





P「……はい?」





杏「プロデューサー、今何時か知ってる?」





P「何時って……おい、もう日が変わって……」





杏「杏さー、門限の時間破っちゃってるんだよね」





P「どうしてそれを早く言わない?」





杏「だって、言ったら確かめられないじゃん」





P「全く……早く準備しろ、送ってくから」





杏「いいよ別に。帰っても帰らなくても、どうせ怒られるんだし」







杏「待っててあげるからさ、早く仕事終わらせなよ」





P「杏」





杏「ほら、帰るの遅くなっちゃうよ」





P「……はぁ」





P「もういい、分かったから」





杏「泊めてくれるの?」





P「……今回だけだからな」





杏「やった!」





杏「……ありがと、プロデューサー」





P「親御さんにどう説明すりゃいいんだよ……全く」





杏「その時はその時だよ」





杏「……大丈夫、まだプロデューサーにはプロデューサーでいてほしいからね」





P「頼むぞ、本当に」







――――





杏「……へー、意外と片付いてるんだね」





P「酷い言い様だな……ほら、ベッド使っていいぞ」





杏「あれ、プロデューサーはどこで寝るの?」





P「どこって、少なくともベッドで一緒には寝れないだろ……」





杏「えー……それじゃ何のために来たのか分からないじゃん」





杏「それにプロデューサーのこと信用してるから、こんなこと言ってるんだよ」





P「杏……」





杏「……ほら。プロデューサーは明日も早いんだし、早く寝ようよ」





杏「杏からは何もしないし、プロデューサーも杏に何もしないって、信じてるから」





P「……何が杏をここまで突き動かすんだ」





杏「いい夢のためだよ」





杏「……たぶん」







パチッ





杏「……おやすみ、プロデューサー」





P「ああ。おやすみ」







杏「……」





杏「ん……」







杏「ねぇ、プロデューサー」





P「どうした」





杏「あのさ……手、握っていい?」





P「……好きにしろ。ほら」





杏「えへへ……ありがと」







杏「プロデューサーの手、あったかいね」





P「そうか?」





杏「うん……なんか、落ち着く」





P「そりゃどうも」









P「……いい夢見ろよ、杏」





杏「うん。プロデューサーこそ、いい夢見なよ」









杏「それじゃ……おやすみなさい、プロデューサー」









――――





杏「……んっ」パチッ





杏「あれ……そっか、プロデューサーの家だっけ……」





杏「……ふふ」







杏「ねぇ、プロデュー……」





杏「あれ……?」キョロキョロ





杏「……プロデューサー?」







P「どうした、杏?」





杏「わっ!?」





杏「あ、えっと……おはよう、プロデューサー?」





P「おはよう、杏」





杏「……いなくなったかと思ったんだけど」





P「起きるのが遅いだけだぞ……ほら、飯食うか」





杏「……うん」







杏「……ねぇ、プロデューサー」





P「どうした?」





杏「……杏さ、今日はいい夢見たよ」





P「……良かったな」





杏「うん」





P「どんな夢だったんだ?」





杏「えっとね……」ジーッ





P「……?」





杏「プロデューサーがね、ずっと甘やかしてくれる夢」





杏「ちゃんと杏のわがまま聞いてくれるんだ」





P「へぇ、どんなわがまま言ったんだ?」





杏「……それは、内緒」





P「そうか」







杏「やっぱり、プロデューサーと一緒だといい夢見れるみたい」





P「そんなまさか」





杏「でも、本当だったもん」







杏「……ねぇ、プロデューサー?」





P「なんだ?」





杏「……いつもとは言わないからさ、また怖い夢見たら……いい?」





P「……」







P「次からは、ちゃんと泊まるって言うんだぞ」





P「……電話、掛かってきてたからな。ちゃんと理由を話して謝ること」





杏「……うん」







杏「ありがと、プロデューサー」





P「俺は何もしてないけどな」





杏「……ううん。そんなこと、ないよ」





P「……はぁ」







P「これは、お互いの夢のためだからな」





杏「……うん」





杏「夢のため、だからね」





終わり



20:30│双葉杏 
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