2013年12月25日

春香「とにかく変な人だったなぁ」

千早「春香?何を見ているの?」

春香「写真だよ」

千早「……写真?家族との?」


春香「んーん、そうだ!千早ちゃんこの人どう思う?」

千早「ん?…なんか、目が死んでるし妙に気だるそうね」

春香「……ぷぷっ」

千早「それに髪もボサボサで不精髭も汚いし服もセンスが無いわ」

春香「そうだよねーとにかく酷いよねぇ」

千早「あれ?その隣って…」

春香「うん、中学生の時の私」

千早「あ、もしかして大事な人?」

春香「うーん、今は…そうかな?」

千早「……恋人?」

春香「違うよ?まぁ、複雑なのです」

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 下校中、いつも通る道が工事してて通れなかったの。
 だから、少し遠回りをして帰ったんだ。


春香「……人が倒れてる」

春香「どうしよ!?どうしよどうしよどうしよどうしよ!」

「そんなに騒がないでくれよ…空きっ腹に響くから…」

春香「……へっ!?」

 その人は、お腹空かせて倒れてたんだ。マンガとかアニメ以外に空腹で倒れてる人がいるなんて思わなかったよ。

春香「あ、あの…給食の余りのパンですけど食べます?」

「あ、食べます…是非いただきます…」

 なんか、徒然なる旅をしてる途中で資金も無く、万策尽きて倒れてたんだって。

「ごちそうさまでした!」

春香「お粗末様でした?」
「君は優しいねぇ…君が来る前に数人通りかかったけどみんなゴミを見る目だったよ…」

春香「えっと…よ、良かったです(どうしよう…知らない人にガッツリ絡んじゃった)」


 若いけど、服もボロボロだし髪もボサボサ、不精髭も汚かったし、明らかに不審者でちょっと後悔してたよ。


「さて、お礼と言っちゃなんだけど一つためになる話をしてあげようかな」

春香「け、けっこうです!」

 早くお家に帰りたかったんだけど、有無を言わさない雰囲気があって…。

「えっと…お嬢さんは中学生?」

春香「……はい」
「中学生かぁ…思春期に入って行く頃だよねぇ…女の子は早いらしいけど君は?」

春香「さ、さぁ(大声で叫んで逃げようかな…)」

「まぁ、思春期の時は思春期って意識しないからな…」

春香「……あ、あの(帰りたいってちゃんと言おう)」

「俺の思春期は陰鬱なものだったよ…」

春香「わ、私…か、帰りたいん…」

「友達が少なかったんだよね〜…一人でさ…部屋を真っ暗にしてベッドの隙間に入ってヘッドホンして音楽聴いてたよアハハ」

春香「わ、私帰りたいんです!」
「Syrup16gって知ってる?もう解散しちゃったバンドなんだけどさ」

春香「知らないです…(話を訊いてくれない)」

「だよねー…聴いてると暗くなる様な曲ばっかりでさ!それが心地よかったんだけどね?」

春香「……はぁ」

「そんな暗い思春期…学校行っても楽しい事はない、家に帰れば勉強しろだの掃除しろだの喧しい親の声、すっかり自分の世界に閉じ籠りつつあった時に一つだけ明るい出来事があったんだ…なんだと思う?」

春香「……さぁ(終わるまで待つしかないのかな)」
「初恋をしたんだ!一個上の図書委員の先輩なんだけどさ?すっごく可愛くて優しくて…一人っきりの暗い世界に一筋の光明が差したように思えてさぁ」

春香(初恋かぁ…そういえば私の初恋いつだっけ?)

「でも、俺の思春期はどこまで突き詰めても陰鬱な思春期だった…」

春香「……え?」

「図書委員の先輩に会いたくて毎日、図書室に通ってたんだけどね?見ちゃったんだ…その先輩が不良で有名な先輩とキスしてるところをさ」

春香「わぁ…」

「こんな事も言ってた『毎日くる根暗くんがキモくてさぁww今度、見においでよwww』って」

春香「……なんか私まで暗くなって来ました」
「あれはキツかった…いや、けっこうマジで…」

春香「やめてくださいよ…恋するのが怖くなりますよ…」

「思春期って要は狭い世界であーでもないこーでもないってもがきながら少しずつ世界を広げる事なんだよね!失敗したり成功したり喜んだり悲しんだりどんな事も糧になって行く…ただ、思春期を変に拗らせるとどんどん…世界の扉を閉じて…内にー…内にー…」

春香「……お兄さんネガティブ過ぎですよ」

「人生の先輩としてアドバイスをするとすれば…引くな、媚びるな、省みるな!どんなに辛くとも未来はかならずあるんだぜ」

春香「……はぁ」

「まぁ、高校もまた…困難の連続なんだけどね…大人に足を踏み入れつつあるから余計に…」

春香「お兄さんもしかして…私でうさを晴らしてます?」
※作者です。ありがとうございます。


 次の日も、工事が終わらなかったから遠回りをして帰ったんだ。正直、気が重いって言うか嫌だったな。

春香「うぅ…倒れてる人は…いないよね?」

 一応、警戒しながら歩いてたんだけど、まさかあんな場所に居るとは思わなかったよ。

春香「はぁ…良かった…今日はいな」

ガチャガチャ

「カァー…世知辛いなぁ…小銭の一つも落ちてないとは」

春香「……居るよ!しかも自販機の小銭が落ちてくるところガチャガチャしてるよ!」

「ん?おぉ!昨日の少女じゃないか」

 世知辛いってこういう事なんだなって思ったよ。
「都合良く小銭って落ちてないんだね…世知辛いわぁ…」

春香「給食の残りですけど…パン…食べます…?」

「良いのかい?お返しできる物なんて与太話くらいしかないんだよ!?」

 嬉しそうに笑ってたよ。かなり苛々して、警察に突き出してやろうかとも思ったよ。

春香「お返しはいらないので…じゃあ…」

「まぁまぁ、急ぐ事はないって!君のためにもなる事だからさ」

春香「あ、いや…お母さんに怒られちゃうから…」

「高校生かぁ…ちょうどこの頃からモラトリアムと言う時期に入ってくるんだよね…」

春香「また、話を訊いてくれない…」
 長いんだよね。しかも、話の大半がこっちまで暗くなる様な内容なんだ。

「あ、モラトリアムって言うのはね?社会に出るまでの猶予期間って意味もあるんだけどもともとは経済用語なんだぜ」

春香「……はぁ(ドヤ顔がウザイよぅ)」

「小中でモラトリアム言うにはちょっと酷な気がするから高校生辺りから言って良いと思うよ?」

春香「……へぇ」

「まぁ、俺にもそのモラトリアム期間に突入する時が来たんですな…陰鬱な思春期からの脱却…希望と言う物は厄介で来て欲しい時にだけチラッと顔を見せるんだ…チラッとだけ…」

春香(来た…だんだん語り口がダウナーに…)
「高校デビューって言葉を知ってるかい?まぁ、君みたいに可愛くて優しい娘には縁遠い言葉だと思うけどさ…」

春香「なんとなく訊いた事はありますけど…(運良くお巡りさんとか通りかからないかなぁ)」

「高校で所謂、陰キャから脱出する事を言うんだけどね?それには4つの大きな壁を乗り越える必要があるんだ」

春香「4つの壁?」

「そう、一つはコミュニティーの壁…如何に交友関係を広めるかが重要になる…次に勉強の壁、勉強に追いつかない様じゃ落ちこぼれのレッテルが貼られてしまう」

春香(あれ?まずった?…でも、もう手遅れか…あーあ、見たい番組あるのになぁ)
春香「……へぇ(ふぅ…お腹いっぱい)」

「人気もうなぎ登り…のはずだった」

春香「だった?」

「あんまり売れなかったんだよねぇ…当時はさ?某歌姫とかが出てきた時でさ…アイドルが廃れて来た時だった…時代がアイドルではなくて歌姫を求めてたわけだね」

春香「……」

「どんなに歌唱力があろうがルックスが良かろうが音無小鳥がアイドルである限りダメだったんだよ…」

春香「そんな…」

「芸能界ってホントにシビアだよね…需要と供給のバランスが取れなくなったらすぐにサヨナラ…諸行無常とは良く言ったものさ」
「どう思った?」

春香「厳しい世界だなって…」

「そう!世の中はシビア…うすーい選択肢と可能性の中であーでもないこーでもないと自分の一生を左右する職業を選んだっていつかは衰退しちゃう…途中で諦めざるをえない事もあるかもしれない」

春香「……」

「そう考えるようになったら何が自分に相応しくて何が自分に相応しくないのか…何をしたら自分は満足して何をしたら不満に思うのか…何をすれば良いのかどんな道を行ったら良いのか分からなくなっちゃってねぇ…」

春香「……それと旅がどんな関係が?」

「なんとなく通ってた大学も嫌になって…もっと見聞を広めたら夢を見れるようになるのかな…って思って旅に出たわけさ」
「実は人間ってアバウトで、理由なんて後付けで良いのかもしれない…それでも俺は理由を求めちゃったわけ」

春香「よく分かんないです…よく分かんないですけど…なんか気分が落ちました」

「ごめんごめん!まぁ、反面教師にしてくれよ…世の中にはこんな人間もいるんだぜ!面倒だよなぁ…」

春香「……」

 私はふと、能天気に生きてきた自分が良かったのか分からなくなった。漠然と未来を夢見て、それで正しいのかなって。
 このお兄さんは、色んな事にこじつけていろいろ言ってたけど、要は真面目に色んな事に向き合ったら分からなくなっちゃったんだね。
 私は、お家に帰ってからボーっといろいろ考えたんだ。

 『私はホントにアイドルになりたいのかな』とか『なんでアイドルになりたいのかな』っていろいろ考えてた。

 まさか、ここまで飛躍するとは思わなかったな。だって、『変な人に絡まれて厄介だな』くらいにしか思ってなかったのに急に将来の夢について気を重くしながら考えこんでるんだもん。

 もちろん、答えは出なかった。お兄さんが、旅に出てまで答えを求めてるのに私が一晩考えたくらいで分かるわけないよね。

春香「どうして…どうしてなんだろう…」
 次の日、私はお兄さんを探してたんだ。モヤモヤした気持ちを自分じゃ抱えきれなくなったの。

 誰かと共有したい、一緒に考えて欲しい。でも、友達に話しても笑われるしお母さんに話してもまともに答えてくれなかった。

 きっと、同じ悩みを持つ人じゃないと分からないんだね。そして、お兄さんが私にいろいろ話してくれたのは、お兄さんも悩みを共有したかったからだって思ったんだ。

「さっぱりしたー4日ぶりの風呂だったからなぁ…」

 お兄さんに会えた時、何故か心のモヤモヤがほんの少しだけ薄れた気がした。

春香「ひっぐ…うぐっ…うわぁあああああん」

「え!?ちょっと!いきなりなに?」
春香「アイドルになりたいよおおおおおお」ポロポロ

「ちょ、ちょっと!いきなりどうしたんだよ!!」

春香「お兄さんがぁ…ひっぐ…暗いことばっかり言うからぁああああうわぁあああああん」ポロポロ

「な、泣くなよ!それになりたいならなったら良いじゃないか」

春香「なりだいげどぉ…どうじでなりだいのがぁ…わだじにふざわじいのがっで考えると…わがらなくなっでぇ」ポロポロ

「うっ…俺のせいか…ごめんよぉ?」

春香「うわぁあああああん」
「落ち着いた?」

春香「…少しだけ」グスン

「ごめんね…まさか君がそんなに思い悩むなんて…配慮が足りなかったな…」

春香「…私まで陰鬱なモラトリアム期間を送りそうです」

「ごめんって…でもさ?」

春香「……ひっぐ」ブワッ

「わー!ごめん!それが現実なんて言わないから」

春香「うわぁあああああん」ポロポロ

「ごめーん!許して!この通り」

春香「……ひっぐ」グスン

「君は…純粋だなぁ…」

春香「お兄さんが…歪んでるんです…」

「やっぱり君…黒いね…」

のヮの「そうですか?」グスン

「ぷっ…泣きべそでそんな顔されてもなぁ」
「俺さ…小さい頃は仮面ライダーになりたかったんだ」

春香「子供らしいですよ」グスン

「でも、ある時見ちゃったんだよね…ヒーローショーの舞台裏をさ」

春香「……うわぁ」

「むさ苦しいおっさんが汗だくでタバコ吸ってんの…ショックだったわマジで」

春香「……また、そんな話ですか?」グスン

「泣いたわ…聞き分けないくらい…でも、親父がさ…父ちゃんがそんなだったらお前は泣くか?って言ったんだ」

春香「なんて答えたんですか?」

「泣くって答えた」

春香「ぷッ…結局なにが言いたいんですか?」クスクス

「分かんない…なんとなく思い出した」クスクス
「あのさ…なんでアイドルになりたいの?」

春香「お兄さんのせいで分からなくなりましたよぅ」ムンス

「いやいや!今は分からなくなったのかも知れないけど明確に『アイドル』と言ったからにはきっかけがあったんでしょ?」

春香「大した事ないですよ…キラキラしててカワイイし歌うのも踊るのも好きだし…何より人を元気にするのが凄いじゃないですか!だからなりたくて…だけど…本当にそれで良いのかなって」

「良いんじゃない?なりなよアイドルに」

春香「……え!?」
春香「い、いきなりなんですか!?無責任ですよぅ…むしろ諦めろ的な感じでアイドル業界の暗い部分を…」

「諦めろなんて言ってないよ?どんな世界でも光と影があるよって一例として言ったまで」

春香「……そうなんですか?」

「うん、それに俺はそういう光と影の差を早いうちに知っちゃったから夢が持てないって悩んでんだよ…だけど君はちゃんと明確な夢があるだろ?目的だって人を元気にする…それで良いじゃん」

春香「お兄さん…もしかして私を励ますために言ってます?」

「いや?」
「それにアイドルになりたいよーーって泣いてたじゃん」

春香「なりたいですよ?なりたいですけど…」

「だったら俺の言うことなんか気にしちゃダメだよ!夢を持てない寂しい人ねふふんくらいに思っておけば良いんだって」

春香「なって良いですかね?漠然とした目的ですよ?アイドルがなんたるかもあまり理解してないし…お兄さんから音無小鳥さんの話を訊いてビビっちゃうくらいですよ?」

「夢を持ってるからの悩みだよ…俺はそんな恐れなんか抱いたことないもん…なんか急に恥ずかしくなってきたなぁ…」

春香「わぁ…遠い目で語り口がダウナーに…」
春香「あ!そろそろ帰らないと」

「もう暗くなったねぇ…君と話してると良い暇潰しになって良いね」

春香「私はなんだか疲れましたけど…」

「そりゃあ…あんだけ泣けばねぇ?」

春香「でも…なんかスッキリしましたよ!」

「それは良かった!あ、そうそう…一緒に写真撮ってくれない?」

春香「写真ですか?…何に使うんですか?」

「別に何にも使わないよ…ただの思い出!今は夢が持てないとか言ってこうやって旅をしてるけどいつかは就職しなきゃいけないしね…後でこういう事もあったと酒の肴にでもなれば良いなってさ」

春香「しょうがないなぁ!良いですよ」
「よし、じゃあ…街灯の下に行こうか」

春香「……今どきインスタントカメラですか?」

「デジカメ持ってないし携帯…止まってるしね…」

春香「あー!もうっ!せっかく写真撮るんだから暗くならないでくださいよぅ」

「そうだね…よし、じゃあっと」

春香「誰かに頼まなくて良いですか?」

「インスタントカメラのセルフタイマー装置みたいなものがあるんだよ」

春香「そうなんですか?すごーい!」

「そ、そうかな?えへへ///」

春香(やっぱりチョロい…あと、お兄さんは誉めてません)

「じゃあ撮るよ」

ジジジジジジ

春香「お兄さん早く早く!」

「よしっ!笑顔笑顔…」

パシャ
「上手く撮れたかな?」

春香「ちょっと心配ですね…」

「まぁ、上手く撮れてなくても思い出になるし良いっか…」

春香「じゃあ、私は帰ります」

「うん、気をつけてね?」

春香「ハーイ!」タッタッタッ

「明るくて良い娘だなぁ…俺なんかあの娘に浄化されて消えてなくなりそうだぜ…」

春香「お兄さーーん!」

「ん?なーにー!?」

春香「私、天海春香って言います!きっとアイドルになりますから覚えておいてくださーい」ブイッ

「わかったーー!」

「きっとアイドルになります…か」

「なれるかなぁ…ならせてあげたいなぁ…良い娘だもんなぁ…でも、自分の事で手一杯の俺じゃ祈るくらいしかしてあげられないしなぁ…はぁ…」

「あの、ちょっと良いかい?」

「ん?なんですか?」
 それから、お兄さんに会うことは無かったよ。

 通学路の工事も終わって、私も真っ直ぐ帰るようになったし、たまに遠回りしてお兄さんが倒れてた辺りを通っても会う事は無かった。

 きっと、自分の答えを探すために新しい場所に行ったんだなって思った。ちょっとだけ、ちょっとだけど寂しかったな。

 卑屈で、ネガティブで、チョロくて、だけど真面目だし、何気に優しかった。とにかく変な人だったけど、あのお兄さんが居たから自分の夢と向き合って真剣にアイドルになるために考えたんだ。
千早「春香にとって良い出会いだったのね」

春香「うーん…多分?」

千早「多分って…」

春香「冗談冗談!確かに良い出会いだった」

P「春香ーライブの打ち合わせ行くぞー」

春香「はーい!千早ちゃんまた後でね」

千早「わかったわ」

P「千早となんの話してたんだ?」

春香「えーっと、とある変人の与太話です」

P「はぁ?」

春香「つまりとっぷしぃくれっと…ですよ!」

P「はぁ…まぁ、いいや」

春香「プロデューサーさん」

P「なんだ?」

春香「プロデューサーさんの夢ってなんですか?」

P「事務所のみんなをトップアイドルにする事だけど…それがどうしたんだ?」

春香「ふふっ…なんでもないです」
 千早ちゃん、実はこの話には続きがあるんだよ。

 お兄さんとの出会いから三年が経って私も高校生になったんだ。そろそろ本格的にアイドルになるために、お父さんとお母さんにもちゃんと話して一歩を踏み出そうと思ってる時だった。

春香「わぁ…工事してる…遠回りしなきゃ」

 通学路は工事してて仕方なく遠回りしたの。お兄さんと出会った場所、実はちょっとだけお兄さんのこと忘れてたんだけど、その場所を通ったら思い出してちょっとビクビクしちゃった。
 また、お兄さんが倒れてるんじゃないかってさ。
春香「……人が、倒れてる」

「うぅ…眠い…眠いよ」

春香「……もしかして、お兄さん?」

「ん?…おぉ、春香ちゃんじゃないか…久しぶり」

春香「久しぶりです…じゃなくてなんでまた倒れてるんですか!?」

「ちょっといろいろ忙しくて二日くらい寝てなかったんだ…」

春香「忙しい?…もしかして就職したんですか!?」

「まぁね…よいしょ」

春香「……本当にお兄さん?」

「うん、そうだけど…あ!あの時は不精髭だし髪ボサボサだし服も汚いしで散々だったもんね」

春香「そうですよ!お兄さんってちゃんとすればイケメンさんなんですねっ!!」

「え?ま、マジで?照れるな…えへへ///」

春香(やっぱりチョロい)
春香「ところで…お兄さんこんなところで何をしてるんですか?」

「そうそう!実は君を探してたんだよ…えっとね」ガサゴソ

春香「……ん?」

「あ、まず…あの時に撮った写真渡すよ」

春香「うわぁ!懐かしいですねぇ…ありがとうございます」

「あとは…えっと…内ポケットに入れたは…あった!ハイこれ」

春香「ん?…名刺?765プロダクションプロデューサーP」

 ビックリだよね。あの変なお兄さんが、プロデューサーさんなんだよ?
 あとから訊いたんだけど、あの時に私が帰ったあとで社長に『ティンと来た!君を我が事務所に迎えてプロデューサーにしたい』ってスカウトされたんだって。

P「天海春香ちゃん!アイドルにはなりたくないかい?」
 しばらく呆然としちゃったんだ。いきなり言われたからね。だけど、答えはあの時、お兄さんにした様なものだったからもちろん首を縦に振ったよ。

 それから、すぐにお父さんとお母さんを説得しにお兄さんが社長と一緒に来たんだ。

 お兄さんが、なんだかかっこよく見えたな。そうそう、なんでプロデューサーになったのかお兄さんに訊いたらさ。

P『君があまりにも良い娘だったから応援したくなったんだ』

 だってさ。お兄さんも、案外あっさり長年の悩みが解決したから逆に悩んじゃったんだって。

春香「ねぇねぇ、お兄さん」

P「懐かしいなぁ…その呼び方…」

春香「一緒に駆け抜けましょうね!トップアイドルまで」

P「おう、もちろん!」

 私だけが知ってるお兄さんが、プロデューサーさんになる前の話。そして、私がアイドルになるまでの話。


おわり
どうも、作者です。ダメな文章と書いて駄文失礼しました。なんとなく思い付いて勢いで書いちゃったんですよね…(遠い目)

読んで下さった方、本当にありがとうございました。レスめちゃくちゃ嬉しかったです。

お疲れさまでした!

14:30│天海春香 
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