2014年11月27日

向井拓海「は? あたしが美優さんの性格を活発に変えろと?」

※アイドルマスターシンデレラガールズのSSです



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1416849464



――――――――――――1時間前、事務所







がちゃ





拓海「ういーす」



http://i.imgur.com/9S3tnfJ.jpg

向井拓海(18)



ちひろ「おはよう拓海ちゃん」



拓海「あれ? Pは?」



ちひろ「涼ちゃん連れてステージの下見に行ったわよ」



拓海「は? そんなん聞いてねえよ?」



ちひろ「でも、Pさんはメールしてるはずだけど……」



拓海「あ……いま見つけた……確認してなかったぜ」



ちひろ「ちゃんと確認しなきゃダメよ」



拓海「わかったよ」



拓海(涼のやつも教えてくれたらいいのによ)



拓海「ちっ、時間余っちまったな……休憩室、空いてる?」



ちひろ「空いてるけど……何するの?」



拓海「暇だから、雑誌でも読んでるよ」



ちひろ「汚しちゃダメよ」



拓海「わーってるよ」



――――――――――――休憩室





拓海「さて、バイク雑誌でも読むか」





がちゃ





美優「あっ……」



http://i.imgur.com/koLrKrJ.jpg

三船美優(26)



拓海「おっ……」



美優「あ、あの……ごめんなさい」



拓海「えっ?」



美優「使ってるんでしょ? 私どこかで……」



拓海「い、いや、いいよ……別にダラダラしてるだけだし」



美優「お邪魔じゃない……かしら……」



拓海「大丈夫だって……なんならあたしが」



美優「そ、そんな! じゃ、じゃあ……お邪魔します……」



拓海「お、おう……」



――――――――――――10分後、休憩室



美優「……」



拓海「……」ペラ



美優「……」



拓海「……」ペラ



美優「……」



拓海「……」ペラ



拓海(なんなんだよ……この空気の重さは……)



拓海(この人苦手なんだよな……)



拓海(ちくしょー、涼、早く来いよ!)



拓海(LINE繋がるかな? 気づけよ……)



――――――――――――LINEでのチャット





 おーい! 今どのへんだよ? >



涼< どうしたのさ?



 まだ時間かかんのか? >



涼< もうちょいだね。一時間はかからないと思うけど



 早く来い。5秒で来い >



涼< 無茶言うな。なんでそんなに焦ってんのさ?



 ヒマなんだよ >



涼< 知るか。アタシはアンタの暇つぶしじゃねーし



 今も美優さんと二人きりで気が重いんだよ >



涼< 話せばいいじゃん



 何をだよ? 話題ねえし >



涼< どうやったらおしとやかになれますかー? みたいな?







拓海「ふっざけんな!!!」



美優「!!!……ご、ごめんなさい!!」



拓海「あ! い、いや!! ち、違うんだ!!」



美優「何か私が怒らせるようなことしたみたい……出たほうがいいかしら」



拓海「だから違うんだって! 涼のバカに言ったんだよ!!」



美優「涼ちゃんに?」



拓海「これだよこれ。LINE」



美優「らいん?」



拓海「あのバカが、美優さんにおしとやかになる方法でも聞けって言ったからさ、つい」



美優「私に……」



拓海「突然大声出して悪かったよ」



美優「た、拓海ちゃん」



拓海「ん?」



美優「あのね……私……拓海ちゃんみたいになれるかな?」



拓海「は? どういうこと?」



美優「私……いつもこんな風だから自分の意見を言えなくて、いつも周りの人の言うとおりに動いて…」



拓海「うん」



美優「いつも周りの人に迷惑をかけて助けてもらってる気がするの」



拓海「そんなもんかねえ?」



美優「それで、このままじゃダメだって。自分の意見をもって行動しないと」



拓海「なるほど。それで、どうしてあたしなんだ?」



美優「前に見たことがあるの。涼ちゃんと練習中に言い合いしてたでしょう?」



拓海「そんなのはしょっちゅうだからな。何時のことか忘れちまったよ」



美優「二人とも取っ組み合いになるんじゃないかとハラハラしてたけど、いざ演奏になるとすごく息がぴったりで本当にいいコンビだと思ったの」



拓海「よしてくれよ。そんなんじゃねえから……」



美優「それを見て私もきちんと自分の意見を言えるようになれたらって」



拓海「うーん……」



美優「でも、私じゃ無理かな……ごめんね、変なこと言って」



拓海「じゃあ……着てみるか?」



美優「え?」



美優「うわあ……本当にいいの?」



http://i.imgur.com/ygBmyBK.jpg

※参考画像



拓海「あたし自慢の特攻服だ。それなりに似合ってんじゃん」



美優「なんか……強くなった気がする。こういう服初めてだから」



拓海「まあ、普通のヤツは着ねえもんだけどさ。どうだ?」



美優「カッコいいけど……胸が苦しいかも……」



拓海「我慢しなよ。それも気合だ」



美優「うん……」



拓海「なんか気合い足んねえな。ちとポーズ取ってみなよ」



美優「え? こ、こうかな?」



拓海「なんでそんな可愛いポーズなんだよ。気合だよ気合」



美優「え、ええー。よくわからないかも」



拓海「とりあえず、地べたに座ってみな」



美優「は、はい」



拓海「だからなんで正座なんだよ! こう両膝を立てて、つま先で座るんだよ」



美優「は、恥ずかしい……」



拓海「そうそう、それでいいんだよ。んで、背中を見せつけるんだよ」



美優「背中?」



拓海「背中の龍の刺繍を見せつけてやるんだ。右の裾の文字も見せる感じでな」



美優「こう……これってなんて書いてあるの?」



拓海「喧嘩上等。気合入ってる奴はいつでもかかってこいって意味だな」



美優「む、無理です……喧嘩なんてとても……」





拓海「うーん。もうちょっと表情何とかなんねえ?」



美優「ど、どうすれば……」



拓海「まず、顎を突き出すような感じで」



美優「こ、こう?」



拓海「眉をハの字にして」



美優「う、うん……」



拓海「そんで、目だけを下に睨みつけるようにするんだよ」



美優「こ、これで……」





拓海(ただ困ってるようにしか見えねえ……これはこれで可愛いけど)





拓海「三船さんはなんでアイドルになろうと思ったんだ?」



美優「私……引込み思案で人見知りだったから……」



拓海「そうなのか」



美優「でもPさんに出会って、自分を少しは変えられるかなと思って」





拓海(ん? もしかしてこの人……)





美優「……それでね、私」



拓海「なあ」



美優「うん?」



拓海「こう言っちゃなんだけど、美優さん……あんた、アイドル目指すの辞めたほうがいいぜ」



美優「……えっ?」



拓海「あんたもわかるだろ? この芸能界ってのがいかにクソな世界か」



美優「……」



拓海「人を追い落とすために手段を選ばねえ他事務所のライバル、金貰って悪い噂を流すマスコミ」



拓海「てめえの出世しか考えねえTV局の連中に、アイドルをホステスか何かと勘違いするスポンサー」



拓海「こんな世界で生き抜くにはあんたはピュアすぎるんだよ」



美優「……でも」



拓海「優しすぎる奴じゃこの世界で生きていけねえ。多少汚くてもやり返すくらいの気がねえとボロボロになっちまう」



拓海「今のあんたにそれができるとは思えねえ」



拓海「故郷の岩手でOLになって、いい相手見つけて結婚するほうが、あんたの幸せにあってんじゃねえのか?」



美優「……そんなのって」



拓海「あたしが言うこと間違ってるか?」



美優「た、拓海ちゃんはどうなの?」



拓海「言ったろ? 喧嘩上等だって。あたしの前は何人たりとも走らせねえ。全員追い抜いてトップに立つだけだ」



拓海「邪魔する連中はまとめてぶっ飛ばしてやる。その覚悟は持ってる」



美優「……」



拓海「その特攻服もそうだ。これを着たから気合が入るんじゃねえ」



美優「この特攻服……?」



拓海「それは代々うちのチームで特攻隊長に受け継がれてきたもんだ」



拓海「前にあたしがアイドルになった時に、この特攻服を返しに行ったんだ」



拓海「だけど、チームのリーダーは受け取らなかった。チームを抜けても特攻隊長はあたしだけって言ってくれた」



拓海「本当にそれを返すのは、アイドルのてっぺんを取った時だってさ」



拓海「だから、あたしはこれを着るたび、その思いに応えるためにも気合入れてアイドルやらなきゃいけねえ」



拓海「ハンパな気持ちじゃ、その服を着る資格がねえんだよ」



美優「……」



拓海「美優さん、あんたは本当にアイドルでいいのか?」



美優「私は……」



美優「まだ……わからない……」



拓海「わからない?」



美優「私がトップアイドルになれるのか……いえ、なりたいのかもよくわからない……」



拓海「……」



美優「私、Pさんにスカウトされて……本当に私でいいのかもわからなかったの」



美優「でも……この人なら私は変れるかもしれない。引込み思案で人見知りな私でも、もっとキラキラできるかもしれないって」



美優「まだ、輝いてるなんていえないけど……でも!」



美優「この事務所に入って……留美さんや礼子さんたちに出会って……ほんの僅かだけど昔よりも笑えるようになったかもしれない」



美優「今はまだ足りないかもだけど……私はもっとアイドルでいたいの」



美優「じゃないと……あの時、変わりたいって思った気持ちが嘘になってしまうようで……」



拓海「……」



美優「拓海ちゃんの言うような気合いや覚悟は、無いかもしれないけど……」



拓海「それでいいんだよ」



美優「え?」





拓海「なんだ、美優さんも十分気合い入ってんじゃんか」



美優「私が……?」



拓海「別にあたしみたいになる必要はねえと思うし、美優さんは今のままでもいいんだよ」



美優「今のままで?」



拓海「あたしはこんな気性だからこういう風にしか表現できねえけど、それは人それぞれだ」



拓海「美優さんにも表には出ない熱いモンあんじゃねえか」



拓海「さっきは本当に気合と覚悟があるか確認したかったんだ」



美優「そうだったの……」



拓海「挑発するようなこと言って悪かった。暴言は取り消すよ。それでも許せねえなら2,3発殴ってもらっても構わねえ」



美優「そ、そんな……」



拓海「だけど、特攻服のくだりは本当の話さ。あんたには聞いてもらって欲しくてさ」



美優「私も……拓海ちゃんに聞いてもらえてよかった。ありがとう」



拓海「まあ、でも…あたしもちっとは美優さんみたいに、おしとやかにした方がいいかもな」



美優「えっ」



拓海「じゃねえと、また涼にバカにされちまう……ん?」



美優「拓海ちゃんが……私みたいに……」



拓海「いや、別に今すぐってワケじゃ」



美優「ダメよ!!」



拓海「うおっ! な、なんだぁ?」



美優「せっかくだから拓海ちゃんも服着ましょう!!」



拓海「服? 誰の?」



美優「私の服! 拓海ちゃんが!!」



拓海「は? いいよ……別に」



美優「ダメッ! 今、私みたいになりたいって言ったじゃない!!」



拓海「いや……言ったけどよ……」



美優「じゃあ、やりましょう! 今やりましょう! ええやりましょう!!」ズイッ



拓海「お、落ち着けって!」



美優「着てくれるでしょう?」ズイズイッ



拓海「着る! 着るから!!」



美優「ふふふ、やった。服と姿見持ってきますね」





拓海(どこが引っ込み思案で人見知りなんだよ……)



――――――――――――30分後





美優「どうですか?」



拓海「なんか……スースーして落ち着かねえな……」



http://i.imgur.com/ayt17kY.jpg

※参考画像



美優「素敵……すごく似合ってる!」



拓海「そ、そうか?」



美優「髪も私がやってるみたいに結んであげる」



拓海「い、いい……」



美優「……」ジー



拓海「お、お願いします……」



美優「はいっ!」



美優「ふふ、楽しいですね」



拓海「もう、疲れたぞ……」



美優「私、お茶いれてきますね」



拓海「ああ、ありがと」





がちゃ





拓海「やれやれ、酷え目にあった」



拓海「服変えたぐらいじゃ、何も起こらねえだろ」



拓海「……でも、似あってんのか? これ?」



拓海「鏡じゃよくわかんねえけど……」



拓海「ポーズ取ったら変わるかな?」



拓海「確か、美優さんはスカートの端を持って……こうやって」



拓海「……ニコッ」





ばあんっ





P「すまん! 拓海! 遅くなっ……た……」



涼「拓海ー?! 寂しくて泣いてない……か……」





拓海「」



P「」



涼「」



拓海「……」



P「……すまん」



涼「失礼しました……」





がちゃり



ばたん





拓海「……」











涼『どどどどどど、どうしようPサン!! 拓海がおかしくなった!!』



P『お、落ち着け涼! こういう時は整数を数えるんだ!』



涼『そ、そうだな! 1,2,3,4……ってこれじゃ意味ないだろ! それなら素数だろ!』



P『と、とにかく深呼吸だ』



涼『どうすればいいんだ……』



P『まずは……そうだ! カメラだ!』



涼『カメラ?』



P『あんなノリノリで可愛い拓海なんて今世紀中は見れないぞ! 写真として後世の歴史に残すんだ!!』



涼『な、なるほど!』



P『頼むぞ! できればHDで動画撮影できるやつな!』



涼『おう!……って、それならiPhoneでいいじゃん!』



P『あ! その手があったか! iPhone……あった。よし! 撮影だ!』





がちゃがちゃ





P『あれ? 鍵が開かない?』





どんどん





P『拓海ー! 開けてくれ!』



拓海「うるせえっ! 入ってくんな!! ぶっ殺すぞ!!!」



涼『たくみーん、あけてよーう! なんにもしないからさ?』



拓海「大ウソぶっこいてんじゃねえ!! 全部聞こえてたんだよ!!」





拓海「ちくしょうっ!!! 二度と変わったりしねえからなっ!!」







おわり







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