2014年12月04日

あい「なあ」 木場「なんだい?」

あい「今日暇なら少し付き合わないか?」



木場「ほう、君から誘いとは珍しいな。オフに事務所にいるくらいだし構わないが、どこへ行くつもりなんだい?」



あい「なに、ライブのチケットを取ったんだがペア席しか取れなくてね。せっかくなら一緒にどうかと思っただけさ」







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木場「ライブか・・・アイドル活動にも良いアクセントになりそうだし、そういう事なら喜んで随伴に預からせてもらおうかな」



あい「そこまで深い意味は無いんだがね。来てくれるなら助かるよ。ペア席に一人というのも少し心細いものだ」



木場「意外なことを言うものだな、君ならパートナーには事欠かないだろうに」



あい「ま、色々と事情があってね。それにプライベートくらいは見知った相手と過ごしたいと思うものだろう?」



木場「嬉しいことを言ってくれるね。なら精々不足の無いよう務めるとするよ」



あい「ふ、ではそのように頼もうかな。・・・と、そろそろ時間だな。私はここで待っているから支度が整ったら声をかけてくれ」



木場「私はこのままで構わないぞ。ただ、何かライブに持っていくべきものがあれば今のうちに言ってくれ」



あい「いや、特にないよ。では行こうか」



木場「ああ」



  ―――道中―――



女A「ちょっと見てイケメン!イケメンよ!」



女B「ちょ、あんた何街中でふざけ・・・が、ガチのやつじゃないの!二人!ふたりいるわよ!」



女C「!ふ、二人ですって・・・どういう事よ、どういう関係なの!?」



女D「ちょっと待って胸があるわよ!?女よあの二人!」



女C「なんですって!?・・・いや、それはそれで」



男「なるほど、これはなかなか・・・」



「「「「男は引っ込んでろ!!」」」」



木場「・・・随分目立ってしまっているな」



あい「ふ、何を今更。アイドルなら慣れたものだろう?こういう時はこうしてやればいいのさ」



ニコッ



「「「「「キャアアアアアアアアア」」」」」





木場「悪化させてどうするんだ」



あい「まあ落ち着いて。こうして黄色い声援を浴びるのも悪くないだろう?」



木場「・・・まあそうだな」(どうもおかしいな。もしかしてそっちの気が?・・・誘われたりしないだろうな)



あい「だろう?さて、そろそろ目的地だな」

  ―――ライブ会場―――



あい「この席で良いだろう。開始までは少し時間があるから、ゆっくりしていると良い」



木場「・・・意外だったな」



あい「何がだい?」



木場「おっと、聞こえていたか。いや何、ライブと言うからてっきり大掛かりなものを想像していたのだが」



あい「こじんまりしたライブハウスでは不満、と?」

木場「そうは言わないが、ね。下世話な事を言うようだが、こう、イメージと合わない感じではある」



あい「ふ、まあイメージに関しては認めるがね。ライブの方は見て損はさせないよ、私が保証しよう」



木場「ほう、それは楽しみだな。・・・しかしなるほど」



あい「何か気づいたことでも?」



木場「いや、君も意外と可愛いところがある、とね」



あい「・・・それはどういう意味だい?」



木場「要はファンを増やしたかったんだろう?何でも駆け出しアイドルのライブだそうじゃないか」



あい「うっ・・・」



木場「ははぁ、私を誘ったのもそのためか。アイドルではなく一ファンとして見に来るためには、ね」



あい「・・・っ、し、しかし同じアイドルとしてライブを見ればいい刺激にも」



木場「ペアチケットも誘うつもりで取ったんだろう?わざわざ下手な芝居まで打って」



あい「ぐ・・・ま、まあ自分でも態とらしかった気がしないでもなかったんだ」



木場「くく、まあ私の方も騙されてしまった訳だし、芝居の方は言う程悪くはなかったかな」



あい「・・・それはどうも」



木場「来る途中のあれも気分が乗りすぎた結果という訳か。なるほど憧れの人に会えるとあってはな」



あい「・・・・・・随分と意地が悪いものだな。弱みを握った途端にそれかい?」



木場「いやいや、すまなかった。つい嬉しくてね。おまけの身は以後大人しくしておこう」



あい「そうしてくれるよう願うよ。お、そろそろ開演だな」



 ―――ライブ終了後―――



あい「ふう・・・どうだい、良いライブだったろう」



木場「まあ君が勧めるだけのことはあったかな。あの声量だけは勘弁して欲しいものだが」



あい「聞いていくうちに慣れるさ。それに最初の頃に比べれば抑え目にはなっているしね」



木場「あれで抑え目・・・?ま、まあ成長を見るためにもこれからはちょくちょく見に来させてもらおうかな」



あい「ふふ、そうだろう、愛ちゃんのあの元気な声を聞くだけで力が湧いてくるようだろう?」



木場「そんな事は一言も言ってないが・・・しかし、くくっ」



あい「そうそう、そのように自然に笑顔に・・・」



あい「・・・・・・何やら、含みがあるようだが?」



木場「い、いや・・・し、かし、いつもクールな君が・・・あ、愛ちゃんって・・・ブフッ」



あい「ーーーっっ、も、もういい!二度と君は誘わない!」



木場「すまなかった、そんなつもりじゃないんだ。しかし・・・くく、愛ちゃん」



あい「言ってればいいさ。トップアイドルになった時にでも笑ってやる」



木場「愛ちゃんが?」



あい「・・・そうだ、愛ちゃんがだ!」



木場「ほう、すると何だな。こんなところで長話していても邪魔だろう」



あい「?まあ、そうだが・・・」



木場「せっかくだから未来のトップアイドルにお目見えといこうじゃないか」



あい「な、何を馬鹿な・・・愛ちゃんはライブ後で疲れているんだぞ!それに部外者が楽屋に入れる訳が無いだろう」



木場「そこはほら、相手は駆け出しアイドルだろう?」



あい「?」



木場「そして我々はその先輩に当たるわけだ」



あい「まさか・・・」



木場「そのまさか、さ。明日の身も知れぬ芸能界、少しでも得るものがあれば、と思うのが自然だろう?」



あい「し、しかし何の準備もしてないし、会っても何を話せばいいのか・・・」



木場「何を内気な青年みたいなことを・・・ほら、とにかく行くぞ。彼女にもプラスになるなら君も依存はないだろう?」



あい「わ、分かったからそう引っ張らないでくれ!心の準備が・・・」



 ―――楽屋前の廊下―――



あい「それ見ろ、断られてしまったじゃないか!」



木場「まあまあ、予想の範囲内だ。ところで楽屋前に立ってるのは女性だろう?」



あい「その女性に断られたんだからな。それが何だと言うんだ」



木場「何って君の得意技じゃないか」



あい「・・・何だ得意技とは」



木場「女性の相手はお手の物だろう?」



あい「誤解を招くような言い方をするな!それに誰がそんなことするか、愛ちゃんが聞いてるかもしれないのに」



木場「全く仕方がないな。ならば私が行くとしよう」



あい「お、おい本当にやるつもりなのか?やめようそんなみっともない・・・」



木場「・・・どうにもファンとしての君は臆病が過ぎるようだな。向こうだって会いたいと思ってるさ、ライブ中もチラチラ君を気にしてたろう」



あい「な、ば、馬鹿なことを・・・もう騙されないぞ」



木場「君もしっかり笑い返していたじゃないか。案外君がアイドルって事も知ってるのかもしれないぞ」



あい「い、いやそれはライブ中だったし、でもそんな、しかし・・・」



木場(何とも俗っぽくなるものだな。ファンが見たら何と言うか・・・しかし今のうちだな)



あい「笑い返したりしてもしかして悪い印象を・・・」



木場「やあお嬢さん」



女性「あ、さっきの・・・すみません、ファンの方は楽屋まではご遠慮下さい」



木場「いや、それはもういいんだ。それより貴女の名前を聞かせてもらえないかな」



まなみ「え、私ですか?私は岡本まなみと言いまして、愛ちゃんのマネージャーをやらせてもらってます」



木場「ほう、それは奇遇だね。私の名前も真奈美と言うんだ。どうだい縁のある同士少し話でも」



まなみ「へえ、偶然ですね・・・でもあの、楽屋にお通しすることは」



木場「それはいいと言ったろう?実はファンなのはさっきの連れの方でね、私はというとライブを見るのは今日が初めてなんだ」



まなみ「そうなんですか・・・あ!ライブどうでしたか?愛ちゃん、頑張ってるんですけどなかなか芽が出なくて」



木場「上々だったよ。ま、気になったのは声量くらいかな」



まなみ「あ、やっぱり・・・本人も気をつけてはいるんですけど、なかなか上手くいかないみたいで」



木場「ふむ」



あい「やはりアイドルとファンは一定の距離を置くべきで・・・あれ、いない?って・・・」





木場「まあ彼女はまだ若い。まだまだこれからで・・・ん?」



あい「な、何をやってるんだ!迷惑をかけるなと言ったろう!」



木場「聞いていないが・・・君も話に混ざるかい?」



あい「何を呑気な・・・」



まなみ「あ、さっきはすみませんでした。なんでも熱心なファンの方だそうで・・・良かったらこれからも贔屓にしてあげてくださいね」



あい「え、あ、いやその、こちらこそ」



木場(ホントにまるで別人のようだ)「くっく・・・お?」



ガチャッ



愛「あ、あのまなみさん今の声って・・・!!」



あい「え?」



愛「やっぱり!!!来てくれたんですね!!!」



木場(く、この声量・・・)



まなみ「あ、愛ちゃん出てきちゃダメだったら!」



愛「う、ごめんなさい・・・でも、どうしても会いたくって」



あい「あ、会いたいって、何故私なんかに」



木場「私かも知れんぞ」



あい「黙れ!」



まなみ「お知り合いだったんですか?なら言ってくれれば・・・」



愛「あ、あの、違うんです。私が勝手に知ってたってだけで直接会うのは初めてで」



あい「か、勝手になんてそんな私の方こそ・・・」



木場「大ファンだものな」



あい「だ、黙れ黙れ!」



まなみ「ま、まあまあ落ち着いて。とにかく楽屋で話しませんか?」



木場「うむ、それが良いだろう」



  ―――楽屋内―――



あい「・・・・・・」



愛「・・・・・・」





木場「何やら気まずい空気だな。あ、ポッ○ーいるかい?」



まなみ「あ、じゃあおひとつ・・・」(この人なんで普通にしてられるんだろう)



木場「しかし何だな、双方無言では見ているこちらも面白みがないな」



まなみ「別に面白がるために見てるわけじゃ」



木場「やはりここらで何かしら変化が欲しいものだな」



まなみ「・・・こっちからアシストしてあげたらどうです?」



木場「いい考えだね。ならば頼むよ」



まなみ(そこ私に振るんだ・・・)



愛「・・・」



まなみ「あ、あの、愛ちゃん?」



愛「わ!!!!な、何ですかまなみさんどうかしましたか!!??」



木場(く、頭が・・・)



まなみ「えっと・・・ほ、ほら。あいさんも困ってるみたいだし、愛ちゃんから何か話しかけてあげたらどうかしら」



あい「あ、そ、そんな困ってるなんてことは・・・!」



愛「・・・うぅ」



まなみ「そ、そうですか」(止められた・・・思ったより手ごわい)



木場(・・・少し聴覚が戻ってきた。しかし何故この2人は平気なんだ?)



まなみ「あの、あいさん」



あい「は、はい、何でしょ・・・あ!ふ、な、何か用かな?」「ブフォッ」



まなみ(・・・カッコつけたいけど緊張してるから黙ってるのね)「愛ちゃんのファンになったきっかけは何ですか?」



愛「!!」



木場(よし、その質問だ!)グッ



あい「きき、きっかけ?きっかけは、そ、その・・・」「クッフ、ハフゥ」



まなみ(黙り込んじゃった・・・これも失敗かぁ)



木場「ふぅ」(面白いが流石に哀れになってきたな。どれ助け舟でも・・・)



愛「あ、あの!」



木場(お?)



愛「あの・・・あいさん、無理しなくってもいいです」



あい「い、いや無理なんて私は・・・」



愛「いいんです。私、こうやって会えたってだけでもう、充分ですから」



まなみ「愛ちゃん・・・」



愛「・・・私、知ってたんです。あいさんの事。ずっと前から」



あい「え?」



愛「まだ、アイドル始めたばっかりの時。自分と同じ名前のアイドルがいるって聞いて、最初は興味本位でライブに行って」



あい「あ・・・」(みみ、見られていたのか?愛ちゃんの目の前で私はなんて恥ずかしいことを!)



愛「でも、今は違うんです!あいさん、いつでも自信満々で、カッコよくって。見てるうちどんどん元気が出てきて、私ももっと頑張ろうって」



木場(なるほど、双方のファン同士だったのか。・・・会話が捗らん訳だ)



愛「そしたらあいさんがライブ見に来てくれて、私夢なんじゃないかって、だから、だから私、嬉しくって・・・」



あい「あ、愛ちゃん、泣いて・・・」



木場(あ、指摘する馬鹿がいるか!)



愛「え・・・?あれ、おかしいな。えへへ、なんでだろ止まんない。あの私、違うんです、違うから・・・」



まなみ「愛ちゃん落ち着いて?ほらハンカチ。大丈夫よ、大丈夫だから」



愛「まなみさぁん・・・どうしよう、せっかく会えたのにこんなカッコわるいの、絶対嫌われちゃったよぉ。やっぱり私アイドルなんて無理なんだ・・・」



まなみ「愛ちゃん泣かないで、そんな事無いから。最近ずっと頑張ってたじゃない。あいさんだっていつも来てくれてたんでしょう?」



愛「そんなの、ゲンメツして来なくなるかも知れないもん。来なく・・・う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!」



木場(ぐ、こ、これしきの・・・事・・・で・・・)



まなみ「愛ちゃんお願い泣き止んで、そんな心配ないから。私も、あいさんだってここにいるから、ね?」



愛「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!」



まなみ(ダメ・・・私じゃ宥められない)「あいさん!お願いです何か・・・言ってあげてください」



あい「・・・」(何をやってるんだ私は。おどおどして無様を晒して、愛ちゃんの笑顔まで曇らせて・・・ファンもアイドルも失格じゃないか!)





あい「愛ちゃん!」ガシッ



愛「・・・!」

あい「聞いてくれ愛cガチャッ「愛ちゃんどうしたの!?」



涼「泣き声が聞こえたから心配で見に・・・え!?」



絵理「襲われて・・・る!?」



あい「え、ち、違・・・」



涼「あ、愛ちゃんから離れろぉー!」ポカポカ



あい「よ、よすんだ!」



まなみ「・・・ということなんです」



涼「そ、そうだったんですか。私てっきり暴漢に襲われてるかと」



絵理「いきなりだったから、勘違い?・・・ごめんなさい」



涼「私も早とちりしちゃってすみませんでした」



あい「い、いや私は構わないよ。しかしさすがはアイドル、必死の動作も可愛らしかったね」



涼「え・・・」



愛「私が泣いたりしたから・・・ごめんなさい」シュン



あい「あ、愛ちゃんのせいじゃない!私がいつまでも煮え切らなかったから」



愛「あいさん・・・」



あい「ゴホン、それでだ。その、さっき言いたかった事なんだけれど」



愛「あ・・・は、はい!あの・・・どうぞ」



あい「私は、一人のファンとして愛ちゃんを応援してるし、愛ちゃんも同じ気持ちだと思う」



愛「はい!私も応援してます!」



あい「でも私達は2人ともアイドルだ。今後お互い争い合う事もあるかもしれない」



愛「・・・はい」



あい「ただ、だからこそ、そうなった時には手加減なんてしない。全力を出し切って戦うつもりだし、愛ちゃんにもそうしてほしいと思ってる」



愛「・・・」



あい「でもそれは単にライバルだからって訳じゃない。私は一人のアイドルとしても、愛ちゃんの実力を認めて、信頼してるからだ」



愛「あいさん・・・!」



あい「だから、これからもお互い頑張っていこう。私もライブには毎回行くよ」



愛「はい!!私も、あいさんのライブにまた行きます!!!」



まなみ「青春、ですね」ホロリ





愛「ところでなにか忘れてるような・・・」



まなみ「何かしら、私も」



涼「そこで寝てる人の事ですか?」



絵理「さっきから気になってた?」



木場「」



あい「あ」



あい「ま、真奈美さん・・・?」ペタペタ



木場「」シーン



絵理「死ん・・・でる?」



涼「絵理ちゃんやめてよ!」



絵理「でも、現実から目を背けても何も解決しないと思う」



涼「う、うあああああ!」



愛「あ、あいさん・・・」



あい「大丈夫だ愛ちゃん。いや全然大丈夫じゃないけど・・・と、とにかく大丈夫だ!」



まなみ「い、一体どうしたら・・・愛ちゃんのためを思うなら、ここは私が・・・?」



涼「は、はやまらないでまなみさん!」



絵理「とにかく救急車を!」



  ―――病室―――



あい「それにしても一時はどうなる事かと思ったよ」



木場「私じゃなければ死んでいたな」ハハハ



涼「いやハハハじゃ・・・」



P「死・・・え?ちょ、いや何が起きたの?聞いてないんすけど」



まなみ「実はかくかくしかじかで・・・」



愛「ねえまなみさん誤魔化そうとしてますよ鹿がどうとかって。いいのかなあ」ヒソヒソ



絵理「それは様式美?あと、そんなに大きな声で言わなくていいと思う」ヒソヒソ



P「なるほどそんなことが・・・ん?いや待てよその状況で木場さんだけ倒れるのっておかしくないか?」



あい「我々ファンは日頃から鍛えているからな」



まなみ「私も最近慣れてきたみたいで」



木場「あの声には三半規管を強化する作用でもあるのか?」



あい「まあ細かい事はいいじゃないか。医者の話では数日で退院できるそうだし」



涼(それにしても、改めて見るとこの2人女の人なのにカッコいいなあ)



P「・・・まあみんな無事だったならいいか。細かい事は気にしないことにしよう」



愛「そうですよね!!!ママも言ってました小さい事は気にするなって!!!!」



涼(そうだ!この2人を見習えば僕もイケメンになれるかも)



絵理「―――っっ、愛ちゃんうるさい!めっ!ハウス!おすわり!」



愛「くぅ〜ん」



あい「そ、そんな飼い犬じゃないんだから」



木場「反応を見る限り同じようなものだと思うが」



P「それじゃ俺はちょっと送迎あるんで、あいさん後お願いできますか?すぐ戻りますから」



あい「ん、了解した。責任の一端は私にもある事だし、退院までは面倒見るよ」



木場「ほう、では折角だし存分にこき使ってやろう」



涼(チャ、チャンスだ!)「あの!」



木場「なんだい?」



涼「ぼ、わ、私も一緒に看病します!愛ちゃんはこの後仕事だし、勘違いしたお詫びもしたいですから!」



木場「まあ有り難いし断る理由も無いが、勘違い・・・?」



あい「い、良いじゃないか細かい事は!それよりこき使う気なんだろう?」



木場「そうだった。取りあえず雑誌と飲み物でも買ってきてもらおうか」



あい「なんだ意外と普通だな。そのくらいならすぐに買ってこよう」



涼「あの、私は何をしたら・・・?」



木場「ん?そうだな・・・まずは添い寝でもしてもらおうか」



涼「添い・・・え?あ、あのそれにどんな意味が」



木場「意味はない。でも絵になるだろう?」



涼「絵にって、そんな安易な」



愛「あ、それじゃあ私たちも仕事なのでもう行きますね!!」



絵理「ハウス!」



愛「くぅ〜ん」



まなみ「ま、まあとにかく行きましょう。木場さん今度のことはすみませんでした」ペコリ



木場「いや構わないよ。おかげで快適だ」



愛「んむむむむーむー!(涼さんばいばーい!!)」



絵理「持っててよかったガムテープ?」



まなみ「やりすぎなんじゃ・・・では失礼しますね」



涼「はーい、2人ともお仕事がんばってね」



涼「ふう、取りあえずこれで落ち着きましたね」



木場「そうだな。それより早く来てくれ」ポンポン



涼(覚えてた・・・)「あ、あのさすがにそれは」



木場「なに大丈夫、このベッドは広いから2人でも狭くはない」



涼「そういう問題じゃ・・・」(いや、でもこれだってイケメンになるには必要な事かも)



木場「はやく!急がないとあい君が帰ってきてしまうぞ」



涼「は、はい!それじゃ失礼します」



看護師(巡回もラクじゃないわ・・・)「木場さ〜・・・!?」



 〜看護師ビジョン〜



イケメン『はやく・・・あの子が帰ってくる前に』



いたいけな少女『は、はい///あの、優しくお願いします』



看護師(何なのこれは・・・ちゅ、注意を・・・注意をしなきゃ)



男『もっとこっちに来て。ほら、恥ずかしがらないで』



少女『でもあの、私・・・はじめてで・・・』



看護師(注意・・・注・・・)



男『大丈夫、僕が優しくリードするから』ズイ



少女『あ・・・や、やっぱり私・・・!』バッ



看護師(ヒイイイイイイイ言ってやるゥゥゥゥおれは新米の看護師だァァァァァ)



男『フフ、今更逃げられると思うのかい』ガシッ



少女『や、は、離して!』



看護師(注意をするぞォォ〜〜っ)



男『逃がすくらいなら無理やりでもやってやる!君もその方が良いんだろう・・・?』ガバッ



少女『やぁ・・・やめてぇ・・・』ウル



看護師(だ・・・ダメだ・・・声が出ない・・・み・・・見入っちまって)



男『これは・・・ふふ。なかなか良かったよ、キミのは』



少女『うぅ、もう・・・お嫁にいけない』



看護師(こ・・・声が出ない・・・い・・・息がッ!息がヒッ ヒック ククク)



あい「空いてはいたが品揃えがイマイチだったな。まあ雑誌としか言われてないし少女漫画でも・・・ん?」



看護師「・・・」



あい「?」(何を病室前で突っ立ってるんだこの人は)ヒョイ



木場「ほら布団が掛かるようこっちに寄って。別に恥ずかしがるようなこともないだろう」



涼「いやその・・・そ、それよりはじめてですけど病院のベッドって寝心地良いんですね」



あい(何をやってるんだあの二人は・・・)



木場「む、話を逸らす気だな。仕方がないから私がそっちに寄ってやろう」ズイ



涼(わわわ当たって・・・!)「わ、ちょ、ちょっと・・・寄りすぎですってば!」バッ



あい(何やら怪しい雰囲気にも見えるが・・・せっかくだしもう少し見ておくか)



木場「逃がすか!ここは是が非でもあい君へのドッキリに協力してもらうぞ」ガシッ



涼「は、離して!ドッキリなんてする必要がないじゃないですかぁ!」



あい(やはり見ていて正解だった。バカめよりにもよって本人の目の前でネタ晴らしするとは)



木場「ええい往生際の悪い!ならばもっと衝撃的な演出にしてやる!」ガバッ



涼(う、馬乗りに・・・これじゃ逃げれないよぉ)「うぅ〜やめてくださいってばぁ」ウル



あい(真奈美さんの奴なんてことを・・・この看護師も何故注意せんのだ)



木場「ん、これはまさか・・・」



涼「もうおムコに行けないよぉ〜」



あい「君、見てないでいい加減注意を・・・」



看護師「」



あい「こ・・・この女」



あい「し・・・白目をむいている・・・



ヒィィィィィ立ったまんま気を失っているゥゥゥゥ!」



涼「ひっ」ビクッ



木場「あ、あい君どうした・・・?」



婦長「さっきから騒いでるのはあなた達ですか!?」



涼「わわわ」



木場「やばい婦長だ!」



あい「ゴホン」(中学生の不良かこいつは・・・)



木場「全く・・・君のせいで病室を変えられてしまったじゃないか」



あい「自業自得だ!」



涼「ま、まあまあ良いじゃないですか。他の病室と離れてるだけで前よりいい部屋みたいですし」



木場「まあな」



あい「・・・それにしても今日は普段と随分違うようだが、それが素なのか?」



木場「変貌ぶりなら君には負けるがね。ほら、事務所では最年長だろう?頼れる姉としては妹の憧れでありたいわけだ」



あい「何があこがれだ・・・第一その理屈だと私もその妹になるんじゃないのか?」



木場「君はいまいち男と見分けがつかんからなあ」



あい「何を貴様・・・!」



涼「あ、あのここは抑えて・・・!相手は病人ですから」



あい「ぐ・・・」



あい「ま、まあいい。しかしそれならここにいる涼はどうなる。さっきはおもちゃにしていたようだぞ?」



木場「涼ちゃんか」



涼「りょ、涼ちゃん?」



木場「おっと間違えた涼『君』か」



涼「!!」



あい「?何だ涼君とは」



木場「うむさっき気付いたんだが実はな・・・」



涼「わーーーーっ!な、何も!何にもないですから!」



あい「ほう・・・つまり何かある訳だ」



涼「!?」



木場「実はそこの涼君はな・・・」



涼「ぎゃぉぉぉん!い、言っちゃダメぇーー!」バッ



木場「おっと、力では私に敵わんことを忘れてしまったようだな」ガシッ



涼「あ!は、離してぇ!」



木場「ふふ、諦めろ。この病室は完全防音らしいから叫んでも聞こえん」



涼「ひぃぃん」



木場「よし見てろよあい君、面白いものを見せてやる」



あい「犯罪の現場の事ならもう見えてる」



涼「そう思うんなら助けてよぉ」



あい「しかしながら君の秘密とやらも気になる訳だ」



涼「そんなぁ・・・」



木場「ふふ、君が話の分かる男で助かるよ」「誰が男だ!」



涼(まずいよぉ、何とかして逃げないと)



木場「ではあい君、この子の股間を触ってみたまえ」



あい「頭がおかしいのか?」



木場「違う!通報される前に言うがこの涼君はおと「わーーーーー!」



あい「何だというんだ」



木場「少し黙っていてもらおうか」ガシッ「むぐっ」



あい「余計危ない構図になったぞ?」



木場「まあ聞きたまえ。この涼君はな、男なんだよ」



涼「むーーーーっ!」



あい「何を言うかと思えば・・・さっき言ってたドッキリとやらの続きか?」



木場「違う!私も俄かには信じられんが、さっき馬乗りになった時確かに感触があったんだ」



あい「馬鹿な事を・・・妄想も大概にしておけよ。どうせ体温計か何かでも挟まってたんだろう」



木場「かも知れん。それを確かめるためにこうして羽交い絞めにしている」



あい「ならば勝手に確かめればよかろう」



木場「そう隠さずとも。君へのご褒美のようなものだよ」



あい「断る。貴女と違って私は変態ではないからな」



木場「違ったのか?ん、お、あ、あい君ほら見てみろほらここ!」



あい「本格的に狂ったらしいな。何を見ろと言・・・!?」



涼(わぅ・・・ずっと胸押し付けるからぁ・・・)カァァァ



あい「まさか・・・こんな事が」



木場「見ろ、やはり男だったろう!」



あい「い、いや信じられん。風船か何かが中に・・・」



木場「そう思うなら確かめてみればいい!」



あい「く・・・已むを得ん。私が正気だと証明してやる」スッ



ギュッ



涼「ぁんっ」



木場「ど、どうだ・・・?」



あい(これは現実か?)



涼「その前にいい加減離してよぉ。気は済んだでしょ?」グス



木場「あ、ああ」パッ



あい「・・・何が起きてるか全くわからん。わ、私の理解の範疇を超えた出来事だ」



涼「そ、そこまで驚くの・・・?」



あい「手術したとかではないのか?」



涼「してません!だ、だってちょっとはおかしいって思ったでしょ?」



あい「全く思わん」



木場「君を見て男だと分かるには視覚以外に訴えるしかないだろうな」



涼「そ、そんなぁ・・・最近ちょっとはイケメンになれたかなって思ってたのに」



あい「い、イケメンだと・・・正気か?」



木場「あい君そこまで言っては失礼だよ。なあ涼君、つまり君は男らしくなりたいわけだな?」



あい「男・・・らしく・・・」



涼「は、はい・・・アイドルだって初めは女装する気なんて」



木場「ふむふむ」



涼「わた・・・じゃなかった僕、ほんとはこんな事続けたくないんです。ファンの皆のことだって騙してるみたいで」



あい「ば、馬鹿な・・・ありえないことだ」



木場「なるほど。まあ私も割と男役にされがちだし、気持ちは分からんでもない」



涼「そうなんです。木場さんの看病を申し出たのだって、あの、失礼ですけどカッコいいとこを見習いたくて・・・」



木場「君なりに悩んでいたわけだ。まあ役に立てるかは分からんが私で良ければ見本にしてくれ。あい君も良いだろう?」



あい「い、いい加減にしないか!」



木場「え?」



あい「もう一度落ち着いてこの子を見てみろ、この可愛らしさをドブに捨てるつもりか!?」



木場「やはりその気があったようだ」



涼「え・・・あ、あの、僕そういう趣味は」



あい「く・・・分かってないようだから言っておくぞ、涼・・・いや涼ちゃん!」



涼「へ?は、はい!」



木場「真似っこは良くないぞ」



あい「ええい黙れ!ならば涼、私、いや真奈美さんでもいい。とにかく見てみろ!」



涼「はあ・・・あの、さっきから見てますけど」



あい「どう思う」



涼「まあ、クールと言うか、凛々しいというか」



あい「そうだ!」バン



木場「」ビク



涼「あ、あの・・・?」



あい「では涼。聞くが、今我々2人がフリルやレース満載のピンクピンクしいファッションに着替えてきたらどうだ?」



木場「そ、そんな趣味まであるのか・・・?」



あい「違う!とにかくどうだ、どう思う!」



涼「どうって・・・あまり似合わないとは思いますけど」



あい「その通りよ。ではもう一つ聞いてもよろしいかしら」



木場「ひっ・・・や、やめないか気味が悪い!」



涼「答えますから喋り方戻してくださいよぉ!」



あい「・・・ふん、どうだ涼。これが答えだ」



涼「は・・・?」



木場「遂におかしくなったか?」



あい「遂にとは何だ貴様・・・とにかくそういう事だ」



涼「だからどういう・・・」



あい「分からんか?逆にして考えてみろ」



涼「?」



木場「なるほどな。つまり涼君、君は男、いや女版?・・・まあともかく私やあい君の男女逆転バージョンというわけだ」



涼「!」



あい「分かったか?さっきの私と同じことだ。君が今男らしく振舞ってみせたところで可愛いだけか、最悪さっきのように引かれてしまうわけだ」



涼「そんな・・・なら私どうしたら」



「女になればいい」



涼「え、だ、誰!?」



木場「その声は・・・」



P「そう、俺だ」



あい「またどこかから借りてきたようなセリフを・・・しかしいつからいたんだ?」



P「あいさんが涼ちゃんの股をまさぐってた辺りかな」



涼「それって一番まずいとこじゃ・・・あ!じゃ、じゃあ何で助けてくれなかったの!?」



P「いやあまりの事に体が硬直して・・・通報しようかとも思ったけど話がいい方向に進んだみたいだったし」



木場「うーむ見られていたとは不覚だった」



あい「・・・まあともかく捕まらなくて良かった」



涼「あ、あのそれにしても女にって・・・?」



P「うん。今の話を聞いていて思ったんだが、もう女になるしかないと思うんだ」



涼「いやだからその理由を」



あい「これまで通りにしろって事じゃないか?」



木場「何だそれなら簡単だな。良かったじゃないか」



涼「この人たち人の話聞いてるの?」



P「・・・まずはそうだな。これはあるアイドルの起こした放送事故の場面なんだが、タブレットの画面見てくれるか」



涼「は、はい・・・」



???『きゃっぴぴ〜ん!みんなのアイドル、[ピーーーー]ナリよぉ〜!』



木場「こ、これは・・・事故という事はまさか全国に流れたのか?」



あい「正気とは思えん」



涼「ていうかこれ真さんじゃ」



P「涼ちゃん、今これを見てどう感じた?素直に答えてほしい」



涼「素直にって・・・まあ、やりすぎだとは思いますけど」



P「違うな、もっと他の気持ちがあるはずだ。見た直後素直に感じた気持ちが」



涼「・・・!い、いやそんなのは」



あい「いいのか?」



涼「え?」



あい「このままずっと自分を偽ったままでいいのか?」



涼「それは・・・」



木場「君は男らしくありたいと言ったな。ならばたとえ女々しい本心であっても、それから目を背けて胸を張って言えるのか?自分は男だと」



涼「でも・・・」



P「・・・確かに君は今男らしくないし、今の想いを言葉にすればそれを認めることになるのかもしれない」



P「でもな、自分の気持ちに正直になれないってのは、自分と向き合う事が出来ないって事でもあるはずだ」



涼「・・・」



P「君は本心から男になりたいのか、それとも周りから見た『男』というキャラクターになりたいのか」



涼「な、そ、そんなの・・・!」



あい「・・・こう考えてみないか?理想を追うための過程だと」



涼「・・・過程?」



あい「ああ、さっきのを見たろう。確かに見るに堪えなかったが、だが彼女は君と違って自分の力で女の子になろうとしていたぞ」



涼「女の子・・・真さんが」



あい「そうだ。今の君は自ら男らしくあろうというより、人を真似てそう見せようとしているように見える。P君が言うのもそういうところだろう」



涼「でも・・・でもおかしいじゃないですか!だって僕は男なんですよ!?」



木場「それを言うなら私も女だ。あい君や、先程の真君にしてもな。でも女性から好かれている。要は逆転させればいいという事さ」



涼「逆転って・・・だからそれをするために僕は!」



木場「見てくれの話じゃない。頭の中をさ」



涼「あ、頭?」



木場「2人の話を思い出してみろ。君は意識するあまり逆転してしまってるんだ。それを元に戻すだけだ」



涼「話が分かりません!男らしくなんて無理だって言うならはっきり言ってよ!」



木場「そうじゃない。だが今のままでは無理だ。男らしさを演じようとしてしまっている今の君のままではな」



涼「・・・!」



P「俺達も強制はしないし、涼ちゃんを女の子にしたいわけでもない」



P「ただ、事を焦って空回りするなら、一度落ち着いて今の自分と向き合ってみたらどうか、って提案してるだけだ」



涼「今の・・・僕と・・・」



あい「・・・私とて女性らしくありたいと思った事はある。実行に移したことだってね」



涼「!それで、結果は・・・?」



あい「ふ、分かるだろう?さっき女性口調で話した時と同じさ」



涼「あ・・・」



あい「ま、この性格も二十歳を過ぎると板についてきて、今は開き直って楽しんでるがね」



木場「握手会では耳元で歯の浮く台詞まで吐いて回るくらいだからな」



あい「き、貴様こんな時まで・・・ほっとけそんなことは!」



涼「あの・・・ごめんなさい、僕・・・」



あい「あ、ああ謝る事でもないさ。でもま、なんだ。君はまだ子どもだろう?今道を逸れたって理想には辿り着けるさ」



涼「あいさん・・・」



P「まあこれは極論だけどさ。女らしさってのが理解できたら、男らしさの方にもスムーズに移行できるんじゃないか?」



涼「・・・そう、なのかな」



木場「まあ私なんかは度胸がなくて変わろうともしなかったクチだがな。それでも男性ファンがいないわけじゃないぞ」



あい「一言多い口先だけは変わった方が良いんじゃないのか」



木場「そしてこのあい君みたく焦って突っ走ると元の木阿弥になるわけだ。失敗例が二つ見れただけで参考になったろう?」



あい「ぐぐ・・・」



涼「ふふっ」



あい「な、何がおかしい!私も好きでやりこめられてる訳ではないぞ!」



涼「あ、ご、ごめんなさい。・・・それと、ありがとうございます。お二人を見てたら決心がつきました。それにPさんも」



P「!・・・じゃあ」



涼「はい、言います。さっき感じたこと」



あい「な、何はともあれそれならよかった」



木場「今日は恥をかく日だな?」



あい「く・・・」(何故この人には勝てんのだ)



P「それで・・・?」



涼「はい。あの、その前に、もう一回だけさっきの見せてもらってもいいですか?」



P「ああ、構わないけど」スッ



真『きゃっぴぴ(以下略



P「・・・で、どうだい?」



涼「・・・」



木場「」ジー



あい「」ゴクリ



涼「・・・完全にふざけてますよね」



木場「!?」



涼「もう何もかもが酷いです。こんな事やって他のアイドルまで同じように見られたらどうするつもりですか?」



あい「い、いや私に言われても」



涼「台詞や衣装のレベルの低さもそうですけど、もう可愛さってものを根本から勘違いしちゃってるんですよね」



P「あ、あのちょっと言い過ぎなんじゃ」



涼「うるさいです!」パァン



P「いっ・・・!ちょ、暴力は」



涼「黙って!」ゴスゥ



P「おっほぉ・・・く、い、いい加減に・・・!」



涼「そこの二人」



あい「え?」



木場「わ、私達か?」



涼「他にいないでしょうが!見てなさい、これから私が本当の可愛さと言うものを見せてあげます」



木場「りょ、了解です」



あい「我々は押してはいけないスイッチを押してしまったのか・・・?」



『その時の涼の仕草は、まさに”完璧”と言う他なかった』





涼「あの・・・」モジ



『まずは遠慮がちに内股で俯き』



P「絶対許さ・・・!」



涼「」キュッ



P「!?」



『ギュッと目を閉じると同時にPの裾を指先で摘んだ。左手は自分の腰を抱きしめ身を細めつつである』



涼「許して・・・くれますか・・・?」ウルッ



『そして次の瞬間には摘んだ裾を僅かに引き、涙が流れださない程度に絶妙に潤んだ瞳を上目遣いにして哀願したのだ』



P「うんいいよ」



あい「顔の角度から瞼と瞳の動かし方、直前で胸に手を当てたタイミングに至るまで全てが完璧だった」



木場「・・・」

涼「ごめんなさいPさん(あと真さんも)、あんなことしてしまって。でも分かったでしょう?僕、いや私が一番可愛くできるんです」



P「はは、いいって。・・・何だろう、さっきまでの怒りが嘘のようにすがすがしい気分だ」サワヤカー



あい「まさに空前絶後というべきか。貴女もそう思うだろう?」



木場「結婚してくれ」



あい「は・・・?」



あい「な、何をいきなりトチ狂ってる!」



木場「君じゃない、涼君に言ってる」



あい「そんな事は分かってる!女同士ではできんと言ってるんだ!」



P「馬鹿め俺なら合法・・・涼ちゃん俺と結婚しようぜ!」



木場「馬鹿を言うな!君にはまゆがいるだろう、婚約してると言ってたぞ!」



涼「え、え?」



あい「ん?待てよまてまて・・・そ、そうだ涼は男だ!さっき確かめたじゃないか!」



木場「チッ」



P「そんな・・・馬鹿な・・・」



涼「はわわ、ど、どうしよう・・・」



あい「涼、私と結婚しよう!」



コンコン



木場「こんな女ったらしと付き合うことはない、私の方が良いはずだ!」



ガチャ



P「ん?」



まゆ「Pさんここですかぁ?えへへ、待ちくたびれてきちゃいました」



P「おーまゆか。ごめんな遅くなって。一緒に来たらよかったな」



まゆ「そんなのはいいですけど、どうしたんですか?上向いて呆けちゃって」



P「いや何、ちょっとな」



木場「いい加減にしろスケコマシが!涼が迷惑しているのが分からんのか!」



あい「ふざけるなよ長舌女!貴様は自宅に帰って筋肉でも鍛えていろ!」



涼「うぅ〜」



ギャーギャー



まゆ「あの人たちは何を?」



P「さあ、何かな。俺が女に生まれてきてたら分かったのかも」



まゆ「え、じゃ、じゃあまゆも男になります!」



P「まゆはかわいいなあ」ハハハ



まゆ「えへへ」



あい「よーしそこまで言うなら本人に聞いてみようじゃないか!」



木場「いい度胸だその方が手っ取り早い!」



涼「あわわどうすれば」



あい「涼、正直に答えてくれて良いぞ」



木場「なにも選んだ方と今すぐどうこうしろという訳じゃないんだ」



涼「そ、そんなこと言われても」



あい「さあ、どっちだ!?」



涼「うぅ・・・」(これは答えなきゃおさまらないぞ)



涼「まあ、どっちかって言ったら・・・あいさんかなぁ」



あい「ッシャオラァ!!」



木場「くっそぉぉぉぉぉ!!!」



まゆ「あの人が木場さんだとしたら病人のはずですよねぇ?」



P「病人じゃないなら違うんじゃないか?とにかくいったん出よう。息が詰まってきた」



まゆ「はぁい」



ガチャ



木場「なんの諦めんぞ!私の良さを教えてやる!」ガバッ



あい「大概にしろよ変態女!ここで引導を渡してやる!」ガシッ



涼「もーいい加減にして!そんなにしたけりゃ二人で勝手に結婚してよぉ!」



バタン



P「さてコーヒーでも飲むか。まゆはどうする?」



まゆ「えっと、じゃあこのジュースにします」



P「おっけー、そこのベンチで飲もうぜ」



まゆ「はい!」



P「ふぅ〜落ち着くわ。このベンチ背中のとこが柔らかくって・・・ん、これベンチじゃなくてソファーだな」



まゆ「コクコク」チビチビ



P「なんだまゆそれおいしくなかったか?」



まゆ「これ酸っぱいやつでした。オレンジジュースかと思ったのに」チビチビ



P「酸っぱいやつだったか。どうする違うの買うか?」



まゆ「いいです。Pさんに買ってもらったから、ちゃんと全部飲みます」チビチビ



P「ははは」



ジャー



P「いまいち残尿感がなぁ」フキフキ



スタスタ



まゆ「あ、Pさん!」



P「おーまゆお待たせ」



まゆ「見てください全部飲みましたぁ!」



P「えらいなまゆは」



まゆ「えへへ」



P「じゃあぼちぼち戻ってみるか」



まゆ「はぁい」



コンコン



P「木場さん入りますよー?」



ガチャ



木場「ふふ、随分可愛く鳴くじゃないか」



あい「ん、や、優しくするなぁ・・・」



涼「他でやってよぉ・・・」カァァァ



バタン

P「間違えた」



まゆ「あ、あれ?あの、ここで合って」



P「間違えた」



まゆ「あの・・・でも今木場さんとあいさんが」



P「多分別の人だよそれは。とにかくまゆにはまだ早い、うん。帰ろう」



まゆ「は、はい」



『その後・・・』



愛「よぉ〜し今日もがんば・・・あ!!!今日も頑張るぞ!!」



絵理「!がひとつ減ったけど・・・まだうるさい?お仕置き決定ね」



涼「え、絵理ちゃんもう許してあげたら?改善の意思が見られただけでも随分・・・」



絵理「甘やかすのはよくないから」



愛「わ〜んまなみさん助けてぇ!また鼻こちょこちょされるー!」



絵理「そのくらいの大きさだと文句なし?」コチョコチョ



愛「ふぇ・・・ふぇっくし!」



絵理「愛ちゃんくしゃみは普通だね」



涼「・・・あ、そうだ!まなみさん」



まなみ「はい?」



涼「まなみさん私気付いた事があるんです」



まなみ「何ですいきなり?」



涼「社長も律子姉ちゃんもそういう事が言いたかったのかも」



まなみ「・・・?」



涼「そうだよ、カッコよくなんてならなくたって」



まなみ「涼さんまさか・・・」





涼「可愛くたってちゃんと女の子に好かれるんだよ?」



あい「なあ」



木場「なんだい?」



P「・・・」



あい「あの、今日・・・」



木場「随分と歯切れが悪いようだなあ、はっきり言わんと分らんぞ?ん?」



あい「く・・・じ、事務所で言うようなことでも無いだろう」



P「・・・」



木場「ふふ、まあいい。君が縮こまる姿もこんな時しか見れないからな」



あい「じゃ、じゃあ・・・!」



木場「ああ。その続きは帰ってからじっくり聞くことにしよう」



あい「・・・でもあまり無茶はするなよ」



木場「そんな事をしたことがあったか?」



P(俺の存在に気付いてないのか?)



あい「まあいいが、そろそろ行かないか?あまり立ち話しているのも」



木場「ん、ああそうだな。行こうか」



ガチャ



木場「おっとP君、我々はこれで失礼するよ」



あい「あまり無理はしないようにな」



P「おう・・・」(気付いてた)



バタン



P「・・・あいつら完全に付き合ってるだろ。少しは隠そうという努力をしろよ」



P「まゆにしてもだ。木場さんの言葉・・・あの時は聞き流してたが、俺と婚約してるとか何とか」



P「そんな事言ってたとは・・・。でも、確かにまゆの奴俺にちょこちょこ付いてきて可愛いんだけど、たまに含みのある表情するんだよな」



P「・・・そういや今もいるんだよな。何か作ってくれるとかで」



P「・・・」



まゆ「Pさんできましたよー!」



P「!」



まゆ「はやくはやく!」



P「おー今行く!」(・・・考え過ぎか。『おとーたんとけっこんすゆ〜!』みたいな感じだろ多分)



P「ところで今日って何かの記念日だっけ?」



まゆ「もーPさん忘れちゃったんですかぁ?」プクー



P「スマンスマン」



まゆ「忘れっぽいのはキライです!今日はですねぇ」



P「うんうん」







まゆ「今日はまゆの16歳の誕生日ですよぉ」



















end

OMAKE



木場「ふふ、どうしたもう終わりか?」



あい「くぅ・・・ば、馬鹿にするな。まだいける」



木場「ほぉ」



木場「だがやめておいた方がいいんじゃないのか?煽っておいてなんだが、酒というのはいきなり強くなれるものでは」



あい「だ、だまれわたしはできるんだ!」



木場「まったくこの程度で悪酔いするとは・・・酒など過剰に飲まん方がむしろ良かろう」



あい「うるさい!うるさい!」



木場「分かった分かった。この缶チューハイのジュース割りをやるから落ち着け」



あい「・・・はじめから素直にしてたらいいんだ」



あい「うぅ〜・・・」



木場「・・・弱い人とはいるものだな。甘酒でも酔うんじゃないのかこの子は」



あい「わたしはこどもじゃないぞ」



木場「なんだ起きてたのか。しかし酒に弱いのがコンプレックスとはな」



あい「ほかにもあるぞ。女にばっかりもてたりとかだ」



木場「そんな事は今更言っても仕方があるまい。開き直って気を引いた時点で終わりだ」



あい「くそぉ〜なまいきだぞわたしの彼氏のくせに」



木場「まったく、あれは一夜の事だと決めたろうが。だいたい私こそ女性なんだぞ?」



あい「ちくしょー女め。こんな事ならおとこに生まれてくればよかった」



木場「はいはい。分かったからもう寝なさい。明日はオフだからゆっくり休んでおくといい」



あい「・・・わかった」



木場「ほら行くぞ」(心を開いたら開いたでなかなか面倒くさい奴だな)





木場(・・・でもまあ、つまらなくはないし、こういうのも悪くないか)

















END



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