2014年12月08日

モバP「大人組と同じ高校だったら、か」

アイドルマスターシンデレラガールズのSSスレです。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1416753198



――――だらしない後輩 荒木比奈編







ピンポーン



P「おーい、比奈」





……しーん





P「あいつまた寝過ごしてるな……」



ピンポーン、ピンポーン



比奈「んうふむにゃぬにゃ……出るっス、出るっス……」





ガチャッ





比奈「宅配便のおにーさ……ってセンパイ? ……あっ」



P「てい」ビシッ



比奈「はうっ!」ジーン



P「お前は平日の朝時間に宅配を指定するのか?」



比奈「あいてて、いやマジ、スイマセン……漫画、漫画が悪いんっス」



P「はあ……さっさと支度しないと置いてくぞ?」



比奈「もー見放さないでくださいよー、センパイいないと私ダメなんでスからー」ウリウリ

P(荒木比奈は、俺と同じ高校に通う高校一年生だ)



P(自宅から駅まで自転車で向かい、電車で学校まで行く俺の通学路の途中に彼女は住んでいる)



P(出会ったきっかけは、遅刻ギリギリで家から出たばかりの彼女を自転車の後ろに乗せたことだ)



P(けっこうだらしない性格みたいで、頻繁にそんな状態を見かけては手助けし、いつしか俺たちは友達になった)



P(部活は漫画部に所属しているが、それでも放課後たまに一緒に帰ったり、誘われて画材や漫画を買いに行ったりする)



P(……いいように使われている気もするけど、あの裏表のなさそうなへらへら感を前にするとほっとけない。実はけっこう可愛いし――まあ、役得ということにしている)





P「はあ、だらしない学生を毎朝起こすのは女子の役割だろうに」キコキコ



比奈「えへへー。毎度申し訳ないっス」ギュー



P(いい仕上がりのおっぱいが背中に)



P「親は?」



比奈「まだ夢の中っス」



P「自分で自転車買えば俺が駅まで送らなくてもいいんじゃないのか?」キコキコ



比奈「いやー私運動神経に自信がなくて……それに自転車買うくらいなら漫画買うっスよ」



P「……お前遅刻した原因理解してるのか?」



比奈「それはっ! その……ライフワークと言いますか、それ取ったら私に何も残らなくなっちゃうっていうか」



P「そこまでは言わないが……はあ、せめてちゃんと起きててくれよな」キコキコ



比奈「了解っス〜」ギューー



P(背中にいい塩梅のおっぱいが)



P(コイツ……分かってやって)



比奈「〜♪」



P(……ないよなー、きっと)

〜放課後〜





比奈「おっ、やっぱり教室に残ってた……せ、センパーイ!」



P「ん……? あ、ああ、比奈か……!」



比奈「ど、どど、どうかしたっスか?」モジモジ



P「……っ、ええと……朝は眼鏡だったよな? 教室じゃコンタクトなのか?」



P(ごく自然に可愛いって言いそうになった……危なかった)



比奈「……そ、そーなんスよ〜、まだちょっと慣れないですが……それよりセンパイ、今からちょっと付き合ってもらえないっスか〜?」



P(ちょっと余所に寄ろうかと思ってたんだが……)



比奈「だめスか……?」ショボーン



P「まあ、別に約束がある訳じゃないし、いいぞ?」



比奈「マジスか?!」ピョンッ



P「でもお前は、部活の方はいいのか?」



比奈「ああ、まだ次の期限までふた月くらいありますし、余裕っスよ〜」



P「とか言いながら大体いつもギリギリになって涙目でアシ頼まれるからなー、いまいち信用が……大体俺部員ですらないのに」



比奈「せ、センパイに手伝ってもらった方がやる気でるんスよ! それに大体その時期は他の子も修羅場ですし」



P「後半のが本音っぽいな」



比奈「えへへ〜、もちろん両方ホンネっスよ〜」

〜隣町の書店にて〜





P「まあ、俺はこんなものかな」



P「……さて、アイツは」キョロキョロ



比奈「…………」



P「あっ、あんなところにいた」スタスタ



比奈「……むぅ」



P「…………」スタスタ



比奈「うーん……こっちも中々」



P「…………」



比奈「でも来週白泉も発売日っスね……」



P「てい」ビシッ



比奈「あうっ! っセ、センパイ! もー、ひどいっスよいきなりー」



P「どれだけ悩んでるんだよ……」



比奈「いやー、あんまりチェックしてなかった既刊コーナーに、意外とよさげなのが……」



P「でも新刊も買うんだろ?」



比奈「まーそこそこっスかね」ズッシリ



P「それでそこそこの量かよ……既刊なんて買う金あるのか? 来週もなんか買うんだろ?」



比奈「むぅ……でもセンパイがいないと、中々ココまで買いに来れないし、どうしたもんスかねえ」



比奈「」



比奈「」



比奈「」チラッ



P「……二冊までだぞ」



比奈「やーんもーセンパイ大好きっス!!」ギュー



P「本屋で暴れるな」

〜ゲーセンにて〜





ピコピコ



P「…………」ガチャガチャ



<<ハドーケンハドーケン



比奈「…………」クイクイ



ピコピコ



P「…………」ガチャガチャ



<<ハドーケンハドーケン



比奈「…………」クイクイ



ピコピコ



P「…………」ガチャガチャ



<<ハドーケンハド



比奈「…………」カッ!



比奈「…………」グイバシバシグイバシググッダンダンッ!!





J大K>屈強P>サンキャン>屈強P>EXセイスモ>CHJ強バニ>ウルコン�





P「」(5割強あった体力を削られた音)



<<ウワーウワーウワー





P「いやー何が起こったかさっぱり分からなかったわ」



比奈「字面にするともっと訳分からないっスね」ガチャガチャ



P「てか途中お前ペルソナ発動したろ? 『カッ!』って聞こえたぞ? これそういうゲームじゃねえぞ? いつのまに眼鏡付けた?」



比奈「なんの話でスかねぇ」クイッ

P「……こほん。格ゲーに限らず、こういうのはふつう先輩を立てるもんじゃないのか?」



比奈「……実力の知れてる相手に接待プレイで勝って嬉しいっスか?」ガチャグイ



P「しんらつー」



<<A New Warrior has Entered the Ring!



比奈「おっ、乱入」





P(スーパー比奈タイム)





P(もう九人ぶっこぬいたぞ)



比奈「」ガチャガチャ



P(ヒマだから隣に座っちゃお)



比奈「!」ガチャガ



P(おっ、操作ミス)





〜かえりみち〜





P「惜しかったな、あと一人で十人抜きだったのに」キコキコ



比奈「むー……誰のせいだと思ってるんスか」ギュー

P「プレッシャーに負けた比奈が悪いぞ」キコキコ



比奈「せ、センパイがくるのがいけないんッス!」



P「だって、比奈がゲームに夢中で俺のこと見てくれなくて退屈だったし」



比奈「それはその……スイマセンした」



P「分かればよろしい」キコキコ



比奈「……ごめんなさい、せっかく付き合ってもらったのに」ギュー



P「ははっ、ま、まあデートでもないんだし俺も大人げなかったかな」



比奈「!」ギュギュー



P「おふ……っ」キキーッ!!



比奈「うわわ!」ギュー





……ぴたっ





P「あ、危なかった……おい比奈、怪我してないか?」



比奈「……センパイ」



P「……え?」

比奈「一体いつから――デートではないと錯覚していた?」



P「何……だと……」







P「あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ!」



P『だらしない後輩の面倒を見ていたら デートしていた』



P「な… 何を言っているのか わからねーと思うが おれも 何をされたのか わからなかった…」





比奈「ごちゃまぜっスね」

比奈「んもー……薄々、そんな気はしてたんスよ。私ばっかり意識してたんスね。はあ……」



P「ま、まさか比奈がそういうのに興味あるとは思わなくて」



比奈「……まあ確かに、センパイと会った当初の私は喪女一直線だったっスからね。『そういうの』、漫画でしか、全然わかんなくて」



P(なんとなく……そういう風に比奈を見たらいけないような気がして、必死で目を逸らして来たんだが……)



比奈「でも、私らしいっちゃ、らしいかもしれません」



P(それは比奈に対して、何より不誠実な態度だったのかもしれない)



比奈「センパイ人気あるから……女子と買い物くらい、デートのうちに入んないんスよね? でも私にとっては、とても――」



P「比奈……」



比奈「……ヤバ、スイマセン。わ、わたしいま、ちょっとネガ入って、ヤなこと考えちゃって……ヤだなあ、ホント……っ……」



P「…………」



比奈「コンタクトしてるのに……っ、ああもう」グスッ



P「……比奈」



比奈「いえ、いえ……だいじょぶっス。スイマセン、ホント、すぐ戻しますんで、すぐ……っ、ぅ」



P「……自転車、とばすぞ」



比奈「…………」



P「しっかりつかまってろ」



比奈「………………っ」ギューッ

P「……なあ、比奈」キコキコ



比奈「……なんスか?」



P「今度の日曜、どっか遊びいかないか?」



比奈「……あー、いいっス。家最強っス」



P「テメ……せっかくヒトが気を遣ってだな」



比奈「ぷ……っ、あっはっは! そーゆー気遣いはいらないっスよ」



ぎゅーっ、



比奈「私は、これが好きっス。センパイと……Pさんと、漫画買って読んで好きなこと言い合って、ゲーセンでちょっとケンカして、家で駄弁ってってのが、いちばんっス」



P「そうか……」



比奈「そうっスよ。それでも……誘う時は、毎回なけなしの勇気を振り絞ってたから、そこだけは、分かってくれると嬉しいっス」



P「制服であれだけ漫画買ってゲーセン行って二人乗りで帰るのには勇気いらないのか?」



比奈「センパイ誘うのに比べればなんてことは……あれ、よく考えたらけっこうヤバいっスね」



P「はっはっは、その勇気というか向こう見ずさに免じて、今から比奈の誘いは全部デートの誘いだとちゃんと意識しようかな!」



比奈「うう……今後誘うのに更に勇気が必要になったっス。気付かれてない方がよかったかも……なんて」カァッ





P「さて……比奈、また明日な。ちゃんと、起きろよ」



比奈「…………」ギュー



P「おい比奈? もう着いたぞ? まさか二人乗りで眠るなんてそんな器用なマネ……」



比奈「……センパイ、コレ、デート。分かってるっスよね?」



P「あ、ああ……?」



比奈「…………」ギューッ





比奈「デートのしめくくり……おねがいします、センパイ……っ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――



比奈「…………」



P「……台本はここまで」ペラッ



比奈「…………」



P「…………」



比奈「…………」



P「…………続きは?」



比奈「…………」メソラシ



P「…………」



比奈「…………」





P「『この後滅茶苦茶』」



比奈「『セックスし』うあああああああああああああっ!! してないっス!! そんなもんしてないっス!!! かいてない、持って来てない!!! ないったらないっス!!!!」



P(制服比奈かわいい)

――――麗しの同級生 東郷あい編





あい「さてPくん、そろそろ行こうか。委員会までもう間もない」



P「ちょっと待って……よし」



あい「ふむ……何事も経験だと立候補してみたが、文化祭実行委員というものは中々に骨の折れる仕事だな。そうは思わないか――ああ、君は去年もそうだったかな」



P「そうだったけど……よく覚えてるね」



あい「勿論。去年は随分楽しくやらせてもらったからね。特段お礼は出来ていなかったと思うから、この仕事で君に報いることが出来ればいいな」



P「そんな……やれるだけのことをやっただけだよ」



あい「やれるだけ頑張れる、そういう人間は中々いないものだよ――おっと、話が逸れてしまったな。今日こそ計画書は通せるだろうか」



P「意外と審査が厳しいんだよな……『意義深い文化祭に相応しいかどうか』とかなんとか言って。予算も昨年以上に限られているし」



あい「ああ、華やかに艶やかに開催できればそれでよいと思っていたよ……しかしまあ、これもまた一興だ」



P「制約が多いと、燃えるタイプ?」



あい「ああ――その経験が行く行くは、いぶし銀の素地になる。幸か不幸か、今まで表舞台に押し上げられてばかりだったからね」



P「裏方を知っておけば、またプラスになる、と」



あい「そう。縁の下の力持ち、その世話になるばかりでは、どんな言葉も薄っぺらくなってしまうだろう?」



P「でも、今回も出演(で)ることはでるんでしょう? みんなが期待しているようだし……」



あい「フフッ……となると、君も見たかったのかな? 私の給仕姿を」



P「勿論、見たいよ」



あい「即答か。面映ゆいね」クスッ

P「ははっ、見たくない人なんかいないだろうけどな」



あい「やれやれ、皆物好きなことだよ。それにしても、あれだけダメ出しされた演し物の案なのに、最終的に決定したのがコレとは……因果というものはよくわからないな」



P(クラス内投票で決まったのはメイド喫茶――文化祭のネタとして流行なんだろうか?)



P「それにしたって、あいさんは接客の方に回ってくれって、直接、方々から言われてるんでしょう?」



あい「お察しの通り――しかしね、殆どが、タキシード姿の執事をご希望の様だ」フゥ



P「あー……そんな感じだろうな」



あい「是非出て欲しいという話自体は有難いものだが、今以上女子に囲まれるようになるのもな……さて、急ごう」





P(俺と一緒にクラスの文化祭実行委員となったのは、東郷あいさん。一年次も同じクラスだったが、当初からその存在感は別格と言えるものだった)



P(特に女子からの人気が半端ではなく、あいさんの周りにはいつも二重三重に輪ができて、さながら親衛隊といった様相だ)



P(それも本人が呼び込んでいる訳ではなく、姿を表せば自然と取り巻きが出来てゆくあたり、その人望が窺われる)



P(当人の人柄は飄々としたもので、プライドというか自分への自信は持っていても、人気を鼻にかけたりする様子はない。そういうところがまたいいのだろう)



P(反面、男子との接触はごく限られたもののように見える。それは、野郎が接近することさえ、周辺の女子に阻まれてしまうという事情もあるだろうが――)



P(『彼女の隣で胸を張って立つ自信がない』――情けない話だが、これがほとんどの男子の内心ではなかろうか)



P(俺自身も、委員を一緒にしなければほとんど交わることはなかった仲だ)



P(話してみると成程、多くの女子に崇拝されるのも納得の人格で、俺はたちまち彼女のファンになってしまった)



P(まあ――文化祭の役目が終わるまでは、傍にいられるということで良しとしよう)

―――――――――――――――――





あい「ああ――ようやく1つ目の関門、クリアだな」



P「やっとクラスに具体的な指示を出せる……ふぅ」



P(指示を出した後に上からダメだしされたらたまらないからな)



あい「……もうこんな時間か。陽が落ちるのが早くなっているな」



P「うん。帰ろうか。あいさんは特に、気を付けて帰らないと」



あい「――なぜ、私は特に気を付けないといけないんだ?」キョトン



P「え? だって、女子が放課後気を付けて帰るのは当然だろう?」



あい「…………」



P「不安だったら送って行こうか?」



あい「…………あ、いや、ええと」



P(家、遠いのかな?)



あい「そ、そうだな……せっかくだし、お言葉に甘えようかな。私の家はそう遠くないが、もし君の帰る方向が一緒なら」

―――――――――――――――――





P「…………」



あい「…………」



P(さっきからやけに大人しいな――いつもだったらもっと饒舌なのに)



あい「…………」チラッ



P(余計なお世話だったかな)



あい「…………」



P「…………」



あい「…………」



P「…………」



あい「……じゃあ、私はここで」



P「そっか。じゃあなー」



あい「ああ、また明日」





あい「――ありがとうと、言っていなかったな。言うべき……だっただろうな」



あい「――女子、か」

―――――――――――――――――





〜あくる日の放課後〜





P(その日も、あいさんはいつもと全く変わらない調子で登校した)



P(姦しい女子生徒の輪の中心から、何度か視線を感じたが、気のせいだったかもしれない)



P(そうこうしている内に放課後となり、俺とあいさんは委員の仕事を共同で進めた)





P「――今日はここまでかな」



あい「ふう――戸締りに入ろうか」



――がちゃん、がちゃん



あい「なあ、Pくん」



P「ん?」



あい「今日、のあさんがメイド服を着ていたのは君の説得によるものだと聞いたが――本当かな?」



P「ん〜、そう……なるのかな。確かに見てみたいとは言ったよ。のあさんのメイド姿」



あい「ふふっ、君は噂通りのプレイボーイだな。君はただひとり、あの高峯のあを染めることのできる男なんだろうな」



P「どんな噂だよ……」



あい「知らぬは本人ばかり、か。上級性同級生下級生、君の周りには女生徒の影が絶えないと聞いているけれど」



P「それをいうならあいさんも同じだろう?」

あい「同じ、ね……君は、分かっているのか分かっていないのか、全くわからないな」



P「……なんだかひどくバカにされているような」



あい「おっと失礼。君の気分を害する意図はないんだ。ただ、私と君との違いに、もう少し目を向けてほしいだけだ」



P「というと?」



あい「君は男で――」



ぴしゃっ、



あい「私は女だ」



P「――ああ、そうだね? もちろんだけど」



あい「はあ――どうやら、君はとぼけている訳ではないんだろうな。まあ、無理からんことかもしれないね。私自身、時折自分の性別を忘れそうになるくらいだ」



P(あれだけ女子の求愛を受けているとそうなるのだろうか)



あい「男と喋った記憶が、君以外ではほとんどない。おまけに私を取り巻いているのは無垢なお嬢さんばかりだ。つまり、『女』を期待される機会に乏しいのさ、私は」



こつ、こつ……



あい「美しいものに男女の別は無いとは思うけどね。女に生まれておきながら、いい女の立ち振る舞いを知らぬまま、大人になるのはつまらない」



あい「だから」ズイッ



P(近……)



あい「気を付けて帰れと――君に女子扱いされた時、えも言われぬ気持になった。こんなのは初めてだったよ」



P(自覚しているのだろうか、いないのだろうか――間近で見る彼女の頬は、お酒でも飲んだかのように朱が差していた)



P「女子扱い――されたい?」

あい「さあ、どうだろう」





あい「――確かめてみたら、分かるかもしれないな」





P(その日以降、文化祭実行委員の後始末の時間は、二人にとって秘密の時間となった)



P(クラスメイトも、あいさんの親衛隊も、邪魔する人は誰もいない空間で)





あい「上背も、こうしてみると違うものだな」



P「身長も離れているとあんまり分からないからね」



あい「これでも女子の中では背高な方なのだが」



P「男の平均よりは低いはずだよ。でも――あいさんと背比べ出来るチャンスは、中々ないだろうな」



あい「そうだな――こうも近付いて、隣に立つのは、思えば初めてのことだな」





あい「大きいな……君の手は」



P「あいさんの手が小さいんだよ。女の子だから」



あい「そう、かな……感触も、違うな」ギュッ



P「すべすべしてるね」キュッキュッ



あい「ん……」





あい「…………」



P「……感想は?」



あい「――よくもまあ皆、街中で腕を組んで歩けるものだ」



P「具体的じゃないなあ」



あい「無粋な詮索はよしてくれたまえ……緊張しているのさ。教室から玄関までが、こんなに長く感じるとは思わなかったよ」



P「――俺は、もうすぐ終わっちゃうな、って感じだけど」



あい「ふふ……、私の家まで、こうしているかい?」

P「髪、細いんだね」サラサラ



あい「手入れは入念にしているさ。なにせ――」



P「髪は女の命、だから?」



あい「――丁寧にいじってくれよ」プイッ





あい「……入ってきていい。そして急いで閉めてくれ」



P「……おおっ!」ガラッ



あい「君の趣味に合わせてみたよ……どうかな?」



P「すごくいい……可愛い!」



あい「そうか……本当に、物好きだな。君は」



P「あいさんは、嫌?」



あい「……いいや、嫌いではないよ、決してね。本番で見せられないことが残念だ。もう裁縫の得意な娘が、タキシードを仕上げてしまったようだから」



P「そうか……それじゃ、ありがたく。目に焼き付けておくよ」



あい「ああ。君だけには…………見せておきたかったからな」







あい「ゆっくり片付けが出来るのは、今日までかな」



P「そうだね」



あい「秘密の時間も、今日で最後という訳だ。君には感謝しているよ。経験不足な私の気紛れに付き合ってくれて」



P「…………」



あい「それじゃ、最後の日に相応しいのは……きゃ?!」

ぎゅっ、



P「…………」ギュー



あい「P、Pくんっ、Pく……っ?!」



P「……あいさん」



あい「こ、これは、Pくんっ、そのっ」



P「これがあいさんの、『女』だよ。腕力じゃ、男には勝てないってこと」



あい「そ、そうか……そうだな……ふぅ、はぁ……だ、だめだっ、まだ、まだ私たちには、その……」



P「そして――女の人の『だめ』っていうのは、『もっとして』って意味の時があるらしいんだ」



あい「な……んんっ!」



ぎゅ……っ、



P「あいさんの『だめ』は……どっち?」



あい「ん、あ……んっ!」フルフル



……むにゅぅ、



あい「はぁ……っ、ふぁ……!」



あい(Pくんの胸板、私の胸を、押し潰してる……!)



ぎゅむ……っ!



あい「ん……ぁ!」



とくん、とくん……!



あい(ごつごつした指が、背中を、掻き抱いて、痛いはず、なのに……)

P「ここ最近、あいさんを目一杯女の子扱いしてきてさ、思ったんだ。こんなに女らしい人はいないって」



あい「はーっ、はー、は……ぁ。ふ、ふぅ……ふーっ、ふ…………ぅ」



あい(耳元で囁かれると……少し、冷静になる……静かに燃えるように、昂ぶったままで)



P「だから、ガマン出来なかったんだ。ごめん」ギュッ



あい「私は……はぁっ、いい、オンナだろうか?」



P「保証するよ」ギュー



あい「ふふふっ……この上なく安心、だな……んっ、君からの太鼓判ならね」ギュー



どくん、どくん、



P「でもそれも……今日でおしまい? あいさんは、今日まででいいの?」



あい「君の前では……私は女だ。もう、それ以外に振る舞えそうにはない」



ぎゅう……っ、



あい「その、今日、君が良ければ、私の家に……ああっ?!」



ぷちっ、ぷちんっ、



あい「だめだっ、こんなところで、Pくんっ、ん……あぁ!!」





あい「だめ……っ」

――――――――――――――――――――――――――――





あい「……数年ぶりの制服を改めて着るというのもかなり勇気のいったことだが、掛け値なしの恋愛劇か。これは試練だな……はぁ」



ぺらぺら、



P「でもあいさん酔っぱらった時は、けっこうぐずって甘えてきますよね」



あい「ん?」



P「早苗さんもさることながら、甘えてきたあいさんの可愛らしさたるや」



あい「……参った、頼む、そこまでにしてくれ、お願いだから」

――――――帥帝(スウィーティ―)先輩 佐藤心編





〜登校時間の正門〜





ざわざわ、ざわざわ……



心「…………」スタスタ



ざわざわ、ざわざわ……



心「…………チッ」





P「あー、寝不足だ……」フラフラ



P「シュガーハァトさんの放送おさらいしてたら朝になっちゃってたもんな」フラフラ



P「それにしてもシュガーハァトさん、可愛いな……この前握手させてもらった時の感触も最高だったし……」スリスリ



P「なんとか週末のイベントまでに新しい振りをマスターしないと……っ?!」コケッ



心「っ?!」グラッ





ずてーん、





P「いてて……っ、あ、す、すいません、ついつまずいちゃって……っ?!」



心「…………」



P「ひ……っ?」ビクッ



P(さ、佐藤先輩?!)

P「す、すみませんっ、すみませんっ!! すぐどけますっ、ごめんなさいっ!!!」ガバッ



P(ボーっとしてたから気付かなかった……『あの』佐藤先輩のすぐ後ろを歩いてたなんて!! どうりで周りに人がいないワケだ!!)



心「…………」ジーッ



P(しかも転んで先輩を巻き添えにするとかヤバすぎるっ!!!)



P「ごめんなさいっ、怪我してません?! 慰謝料ですか?! あるだけ、あるだけ払いますから命だけは……!! 」



心「……ごほんごほんっ!! ……オイ」



P「ひいっ?!」



心「……引っ張れよ」スッ



P「……え?」



心「引っ張れっつってんだろ。見えねーのか、この手が」ヒラヒラ



P「は、はいっ!! すみませ……」ガシッ



P(あれ、意外と手、柔か……あれ? この感触、どこかで)



心「ふんっ」グイッ!!



P「うふおっ?!」グルンッ



P(景色が一回転っ)





どてーん、





P「ぐへ……っ!!」



P(合気ッ!!)



ぱらぱら……っ、

P(ああっ、生徒手帳に隠してたはぁとさんのチラ見せ写真が!!)



心「っ!!」ドキッ



P(ヤバいヤバいヤバいこんなの硬派な佐藤先輩の前に散らかしたら俺も写真ごと八つ裂きに……!!)



心「……前見て歩けよっ」スタスタ



P「………え? 俺、助かった? まあ、冷静に考えれば先輩がお金たかりにくるって話は聞かないし、これくらいなら安いもんか……いてて」ムクッ



P「あっ、写真が風で……待て―!!」





心「…………」ドキドキ





P(俺が今朝ぶつかってしまったのは、この学校では名を知らぬ者のいない最強の女生徒、佐藤心)



P(喧嘩百段の異名を持ち、そのせいで登校日数が足りず、干支を二周するくらい留年したという噂がまことしやかにささやかれている)



P(もちろんそんな歳ではないとおもうが、学校に現れる頻度が少ないのも事実だ。だから珍しく登校した時は、混み合う校門付近の人波がサーッと退いていくのだ)



P(そんな風に恐れられている彼女だが、いわゆるイジメにはまったく加担しない)



P(むしろ中途半端な不良が放課後、佐藤先輩の手によってしょっちゅう体育館裏に山積みにされているらしい)



P(このあたりの事情から、良くも悪くも彼女にはうかつに触れる人間がいないということだ)



P(先輩を押し倒して無傷で【無痛とは言っていない】済んだ俺はかなりラッキーなのだろう)



P(決して悪いヒトではないんだろうけど、謎が多いんだよな……)

〜週末 電気街にて〜







シュガーハァト「きらりーん☆くいーん!!」ビシュン



P「うおおおおおおおおおおぉ!!」



シュガーハァト「しゅがーはぁとぉ……あたーっく!! コッチをみろー☆」ギャルギャルギャル!!



P「うおおおおおおおおおおおぉ!!」ブンブン





P(最近、隣町の電気街まで出かけていって、路上パフォーマーのシュガーハァトさんを応援することが楽しみになっている)



P(愛らしい声とルックスと衣装、甘ったるいそれらとは一見相反するような抜群のプロポーション、独特のマイクパフォーマンス……全てがピンポイントで五感を刺激する)



P(ファンサービスも旺盛で、一緒に写真を撮ってくれたり、握手してくれたり、ファンを大事にしようとする姿勢が分かる。まあ、これはまだ彼女が駆け出しだからだろうけど)



P(もう何回も応援に行っているからか、俺のコトは覚えてくれたようで、ライブ場所に俺が来るなりPチャンなんて呼んでくれる)



P(まあ……毎回来ているのが俺ぐらいしかいないっていうのは内緒だ)



P(どうしてもっと人気がでないんだろうって気持ちと、人気が出て遠くに行かれたら寂しいなという気持ちが混じり合ってしまうのが辛いところではある)



P(でもまあ……突然いなくなっちゃうよりは、人気が出てメジャーになってくれた方がまだいいよな)





シュガーハァト「……」チラッ



P(コッチをみた!! たぶんっ!!)



シュガーハァト「みんなありがとーっ!! それじゃー、ラストはこのうたっ! 『ばいちゃ☆らすと!!』」



P「ばいちゃー!!」ブンブン

――――――――――――――――――――――――





P「ああ……最高だった」ホクホク



P(やっぱり一見さんくらいしか今日もいなかったなぁ……シュガーハァトさんあんなに可愛いのに、なんでだろうな……)



P「さて帰るか……ん?」





心「…………」ゴソゴソ





P(あれは、佐藤先輩?! どうして電気街なんかに)



心「…………」ゴソゴソ



ぽてっ、



P(なんか落とした。あっ、気付いてない)



心「…………」スタスタ



P(ああっ、行ってしまう……ちょっと怖いが、仕方ない)



P「先輩、佐藤先輩」タッタッタ



心「ん……?!」ビクッ



P「先輩コレ落としまし……」



P(拾うのに必死でよく見てなかったが……コレ、見覚えが)



P「ん?」



P(……幸せのハート? あれ? 俺がさっきシュガーハァトさんからもらったやつ? いや、それはリュックに)

P「……え?」



心「!!」



P「……っ?!!」ゾクゾクッ



心「……ちょっとツラ貸せ」グイグイ



P「い、いたたっ!! な、何を……」ズルズル



心「…………」グイグイ



P(なんで先輩がコレを?! さっき見物人のなかにはいなかったよね?!)



心「…………」チラッ



P(いったいなにがどうなってるんだ!!)ガーン





――――――――――――――――――――――――





P(ああ……駅の近くにこんなに人通りのないところがあるだなんて……俺ももうおしまいか)



心「…………」ゴゴゴ



P(もうさっきから先輩めっちゃコッチ睨んでるし無言のまま30分くらい経っちゃったし俺はもうどうしたら)



心「…………っ」スッ



P(はは……先輩がポケットから手を出すぞ。きっとメリケンかなんかハメられてるんだ。引き結んでた口が開くぞ。あのピンク色の唇から5センチくらいのキバが)



P(……あれ? あのリップの色って)





心「はぁ〜い♪ アナタのはぁとをシュガシュガスウィート☆ さとうしんことしゅがーはぁとだよぉ☆」リボンスチャッ

P「…………」



P「…………」



P「…………え?」



心「あれぇ、おかしいなぁー? 反応が聞こえないぞ?」



P「……………………え?」



心「もう一回、アナタのはぁとをシュガシ」



P「えええええええええええええええええ?!」ガビーン



心「MCに被せんなよ☆」



P「アッハイ」



P「ってええええええええええええええええええええええええええ?!」ガビーン





――――――――――――――――――――――――





心「…………」ムスー



P(どうしよう……憧れのアイドルに一対一で呼び出されてるのに全然嬉しくない……)



心「…………おい、なんか言えよ」



P「えと、あの……」



心「なんか言えよ☆」



P「宇宙一可愛いよ!!」(脊髄反射)



心「あ、ありがと……☆」カァー

P(いや確かにむすくれた顔も照れた顔ももう死ぬほど可愛いんだけど学校とのギャップに追いつかないというかその辺話題にしていいんだろうか)



心「…………」モジモジ



P(でもこのままっていうのも……よし!!)



P「あ、あの……佐藤先輩」



心「佐藤先輩って呼ぶなぁ☆ うーん、よしっ☆ はぁとでいいぞ☆ シュガーハァトのふぁーすとねーむ、キミだけにトクベツ許可しちゃう☆」



P(そっちの路線で喋るんすね)



P「どうして呼び出したり?」



心「それはぁ、はぁとのげぼ……ゲフンゲフン☆」



P(今下僕って言おうとした……)



心「はぁとのファン第1号で、ず〜っとはぁとのパフォーマンスに来てくれてるから……はぁと、ココロを許しちゃったの☆」



P「本心は?」



心「正体知られちゃったけど顔は知ってるから取り込んで口封じする」



P「すがすがしい……むしろしゅがしゅがしい」



心「キミにははぁとのヒミツ、知られちゃったから……責任とれよ☆」



P「バラしたのそっちですよぬふぉぉぉ?!」モグッ



心「返事ははいかいえすっ! じゃないと、はぁとのハートでお口塞いじゃうから☆ オラオラ☆」グイグイ



P(……驚きはしたけど、確かに佐藤先輩よくよく見れば童顔だし、しかめ面してなければ可愛いんだな。声も学校では無理してドスを利かせてるんだろうな)

心「……ねぇ、聞いていい?」グイグイ



P「ふひふぁはふぇふぉはふぁひへふぁはんひひふぇふらはい」(口から手を離してからにしてください)ジュル



心「え、なんだって☆」



P「ぷほっ……口から手を離してからにしてください」



心「今離してるだろ☆」



P(これはひどい)



心「んじゃ改めて……はぁとのコト、ヘンって思うかな☆」



P「……え?」



心「ガッコじゃあんななのに、ヒミツでこんなカッコしてフリフリしてるのって……おかしい?」



P「おかしくなんてないですよ。女の子なら、好きで当然じゃないんですか?」



心「うん……うん☆」



P「それに俺も……そういうカッコの先輩、好きですけど」



心「!」



P「確かに学校での先輩しか見ていなかったから、驚きました。でも逆に、学校以外での先輩が見れて良かったなって」



心「……良かった? 学校以外での、私を知れて……」



P「学校じゃ睨みをきかせてるからちょっと怖かったですけど、こんな先輩の可愛いところ、知らなきゃ損でしたからね」



心「…………っ!」カァッ



P「だいたい、俺ははぁとさんの第1号のファンなんですよ? アイドルのヒミツを、俺だけが知ってるなんて……ファン冥利に尽きるってやつです」



心「そ、そう……」ドキドキ



P「これからも応援させてくださいね、はぁとさんぬふぉぉぉぉ?!!」モギュッ



心「も、もう黙ってよーしっ☆ 恥ずかしいことばっかり言っちゃいや〜ん♪」グイグイ

――――――――――――――――――――――――





P(その日から、先輩は毎日学校に来るようになった。今までは衣装を作ったり振付を考えるのに忙しくて、学校をサボっていたそうだ)



P(それが、なんで学校に来るようになったかというと……)







心「おい、P、ツラ貸せ」ガラッ



ざわざわ、ざわざわ……



P「…………はい」スタッ





――――ええー? またP君、佐藤先輩に呼び出し?



――――P君、そんなに悪い人間だったの? とてもそうは見えないけれど



――――高峯さん、カレが心配なのは分かるけど落ち着いて?





――――――――――――――――――――――――





心「はぁと的には、ぶぁーってやって、どどーんってノッて、ぎゅわん!! って締めたいなって☆」



P「訳分からないですね☆」



心「ホシ付けとけば何言っても許されると思うなよ☆」





P(ファン第1号の俺が、先輩のアイドル活動のプロデューサー役として、相談にのっているのだ)



P(無論それだけじゃなく、小物作りの手伝いをしたり、ステマしたり、八面六臂に活躍している。いわばはぁとさんのげぼ……欠かせない存在なのだ)

心「それにしてもぉ〜、最近固定のファンが増えたよなぁ☆ はぁとの本領発揮? な〜んて☆」



P「そうですね、遅すぎるくらいだと思いますけど」



心「実はさ、この間芸能プロから声が掛かったの☆ いよいよはぁとの時代がやってくるってコト♪」



P「マジすか?!」



P(やっぱり工夫さえすれば、はぁとさんの魅力はいくらでも引き出せる。思った通り、このヒトは人気者になれるぞ……さみしくはあるけれど)



心「…………」





――――……のおかげだよ





P「え? 今なんて」



心「いよぉ〜し☆ このちょーしでぇ、はぁとの世界征服のやぼー、叶えたるわぁ♪」



P「そんな悪党みたいな野望あったんですか?!」



心「悪党っていうな☆ もーそんなキミにはご褒美として、今後も付き合ってもらうぞ☆ ファン第1号よろこべよな☆」



P「プロデューサーの仕事ってことですよね、それ……はは」



P(まあ実際、喜ばしいことだ……この人が羽ばたけるのなら、お手伝いできるなら)



心「…………」

―――――――――――――――――――――――――――





P「ん……メール。『ほーかご体育館裏倉庫にてまつ☆ 来ないとひどいぞ☆』……ジャイアンみたいな文面だな」



P「でも珍しいな。普段なら問答無用で連れ去られるのに……まあいっか」





―――――――――――――――――――――――――――







P「……先輩、来ましたよ」ガララ



心「…………」



P「ああ、それですね、新しく完成した衣装って。驚きましたよ、俺に手伝わせるのの他にコッソリ作ってたなんて」



心「…………」プチン、プチン



P「おおっ、滅茶苦茶可愛いじゃないですか!! はやくソレ着た先輩見たいなぁ……って、せ、先輩?! なんで制服脱いで……!!」



心「……衣装合わせ、手伝って?」プチン……シュルッ



P「佐藤先輩、えと、ええと……」アセアセ



心「佐藤って呼ばないで」





心「……心って呼んで」ドキドキ

―――――――――――――――――――――――――――





心「……うわぁ、制服キツイわぁ」



P「全然大丈夫じゃないですか」



心「きゃ、女の子の独り言聞いちゃう人には罰が当たるぞ☆」



P「す、すみません……でもスタイル変わってないですよね?」



心「なみなみならぬ努力のたまものなの☆ マジ汗水☆」



P「ところで……設定じゃなくて本物の不良だったんですか? 制服に改造跡がいっぱい」



心「しゅがーはーと・あたーーっく!!!」



P「滅」







END



22:30│モバマス 
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