2014年12月10日

藤居朋「3周年の陰で」

ガチャッ



笑美「うーさぶさぶ」



朋「おつかれー。あ、コートそこらへんにかけといていいよ。適当にさ」





笑美「おつかれーやあれへんわ。年下パシりおってからに」



朋「まあまあそう言わず。ほら、座って座って」



笑美「ったく…んで、ホレ。出来合いのもん適当に買ってきたけど、こんなもんでええやろ?」



朋「どれどれ〜…おっ、からあげ棒とかわかってるじゃん」



笑美「それウチのや」



朋「あたしのぶんは?」



笑美「ない」



朋「人でなし」



笑美「自分で買え」



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朋「それはいいや、外寒いし。それより、さ」



笑美「ん、まあせやな」



朋「せやせや。ほら、グラスもって」















朋「3周年」



笑美「おめでとうございます」



朋「おめでとうございます」



朋「かんぱーい」

笑美「カンパーイ」



グイッ

朋「3周年…3年かぁ。3年って」



笑美「ほんまになー。なんや3年て。どないやねん」



朋「……」モグモグ



笑美「……」グイッ



朋「きっと今頃は、みんな船の上でパーリーだろうね。おいしいもの食べてビンゴやってさ」



笑美「なんでビンゴやねん」



朋「え?みんなで集まったらビンゴやるでしょ。やらない?」



笑美「いや知らんけども。けどふじともは行くか思っとったわ」



朋「えーなんで?」



笑美「食い意地はっとるし」



朋「そこまでじゃないから!」



朋「ていうか、それ言ったら笑美だってそうじゃん。なんで行かなかったの?」



笑美「んーまあなー。なんちゅーか…こう、わかるやろ?ウチかてそーいうのビミョーなトシゴロなんや」



朋「なにそれ。まぁなんとなくわかるけどさ」



笑美「せやろ?なんか…なあ?」



朋「なんか、ね。なんていうか3周年とか言ってもさ、売れてる人とそうでない人との間で認識の差っていうか…なんかそういうのあるよね。こう…なんていうの?」



笑美「罪悪感?」



朋「ちがう!」



笑美「うしろめたさ?」



朋「そうそれ!同じ感覚で喜べないっていうかさ。あ、そっちのキンピラとって」



笑美「ほい」



朋「サンキュ」モグモグ



笑美「んーまあ、それはあるわな。3周年やったー言うたところで、おまえはそれに貢献したんかいう話やし」



笑美「こっちが勝手に思ってるだけなんやけどな。なんちゅーかこう、せやなぁうしろめたさみたいなもんあるか」



朋「そそ。まあこっちが…」モグモグ



ゴックン



朋「…まあ、こっちが売れればいいだけの話なんだけどさ」



笑美「えらい簡単に言うやないか」



朋「いやあたしもわかんないけどさ、売れるって。どうしたらいいと思う?」



笑美「そんなんウチかて知らんわ。まあでも、ふじともは胸からやろな。そこなんとかせな」



朋「それだとあたしもう伸びしろないんだけど」



笑美「いやないことないやろ」



朋「ないことないったって、いろいろ試したし…それで無理だったし…」



笑美「ホンマか?ほんならウチのとっておき教えたるわ。まず胸の前で手を合わせるやろ?」



朋「うん」グッ



笑美「んで、次に力を入れる。合わせた手の間にスポンジがあって、それを潰すイメージや。これだけで…」



朋「…いや大胸筋鍛えるやつじゃんこれ」



笑美「バストアップにはなるやん」



朋「おういうあれじゃなくて!」



笑美「ええやん鳩胸系アイドル。需要独り占めやで?」ケラケラ



朋「ものすごく狭い需要じゃんそれ!」



朋「もっとこうなんかないの?」



笑美「胸…」



朋「胸以外で!てかそのくだりもういいじゃん!」



笑美「それ以外かぁ。えぇー…」



朋「…そんなに悩むこと?」



笑美「だって実際何があんねん。努力が足りない!とか言われてもちゃうわボケってなるやろ」



朋「それはまあ、そうだけど」



笑美「運とか、それこそウチらじゃなんともしようがないしな。なんやろなぁ」



朋「…オーラ、とか?」



笑美「オーラ?」



朋「そう、オーラ。なんかこの前事務所で美嘉ちゃんとすれ違ったんだけどさ、やっぱ違うもん。オーラみたいのがグワーッて」



笑美「ほーん。んで、オーラを出すにはどうすんねん」



朋「わかんない」モグモグ



笑美「あっコラ!なに人様のからあげ棒食っとんねん!」



朋「食べないんだと思って。めんごめんご」モグモグ



笑美「ちゃんと謝れや!」



朋「いやだ!」



笑美「しばくぞ!」



朋「ごめん!」





‐‐

‐‐‐



朋「……」モグモグ



笑美「……」モグモグ



ゴックン



朋「…まあでも、このままアイドルだらだら続けてていいのかみたいな、ブワッとした不安はあるんだよねー」



笑美「ブワッと」



朋「そうブワッと。笑美はそういうのないの?」



笑美「んー、ウチは不安とかそーいうんはないなぁ。べつに楽しけりゃええし、今楽しいしな」



笑美「ただ、売れれば今よりもっと楽しくなるんやろか、みたいなこと考えるときはあるなぁ」



朋「ねー。むずかしいったら」



笑美「…ふじともは、つまらん思いながらアイドルやっとるんか?」



朋「ん?いやいやそんなことないけど」



笑美「そうか?あんま思いつめるのもアカンで。べつにアイドルで食ってるわけとちゃうし、悩むのは命かけてからでええわ」



朋「まぁわかってはいるんだけどさ。たまーに考えちゃうんだよね。こう、ブワッと」



笑美「ブワッと」



朋「そうそう、ブワッと」



笑美「なに気に入っとんねん」



朋「笑美だって」



笑美「……」グイッ



朋「……」モグモグ















笑美「ブワッと」ボソッ



朋「…!」











笑美「ブワッと」



朋「フフッ」



笑美「ブワッと」



朋「フフッ…やめて…ンフッ」





‐‐

‐‐‐



朋「っと、え!?もうこんな時間!?」



笑美「あ、ほんま…ウチらブワッとにどんだけ時間つことんねん。アホちゃう」



朋「時間だいじょうぶ?笑美たしか寮だったよね?」



笑美「あー…帰るのめんどいし泊まるわ。外寒いし、船の上で騒いでた言えばごまかせるやろ」



朋「宿泊料金のほう、6000円になります」



笑美「からあげ棒で払った」



朋「まいど♪あ、あと片づけ手伝ってね?」



笑美「おう」





おわり





08:30│藤居朋 
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