2014年12月15日

「ウサミンロボ郵便局」


 池袋晶葉により開発された安部菜々専用バックダンサー、ウサちゃんロボ。

 ウサちゃんロボは団子を作りかつ踊る優れものである。



 しかし、異星のウサミン科学によって強化改良された一部のウサちゃんロボはウサミンロボと呼称されるのである。





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1416843426



 うさうさ



 今日もウサミンロボはシンデレラプロ事務所でお仕事です。



 事務所に届けられたお手紙をアイドルごとに分別しているのです。



 うさ



 これは、諸星きらり

 これは、双葉杏

 これは、渋谷凜

 これは、川島瑞樹

 これは、ヘレン

 これは、難波笑美

 これは、棟方愛海



 などなど



 アイドルへのファンレターがいっぱい来ます。



 アイドルだけではありません。



 千川ちひろ宛のお手紙もあります。

 スイス銀行から一枚。

 萬田銀次郎さんからも一枚。

 帝愛グループからも一枚。

 

 ちひろさんも人気者のようです。



 カウカウファイナンスから……これはプロデューサー宛のようです。

 うさ〜



 今日もウサミンロボは分別を始めました。



 うさうさ



 それぞれのお手紙を、待機しているウサちゃんロボに渡します。

 ウサちゃんロボにはそれぞれ担当があって、アイドルたちに直接お手紙を渡します。

 ただし、危険物が発見されたときはお手紙を別口で保管します。



 保管したお手紙は鑑識に回されます。

 そして鑑識結果によっては、ウサミンロボお仕置き部隊が変なお手紙を送ってきた犯人へと向かいます。

 ウサミンロボお仕置き部隊。それは不可能を可能にし、巨大な悪に敢然と立ち向かうロボたち特攻野郎です。



 犯人には、ウサミン竹槍とウサミンの赤い雨が炸裂します。

 BGMは「レーザーブレードのテーマ」です。

 時々、状況によっては仕方なく飛び道具を使います。そのときはBGMが「ハカイダーのテーマ」になります。



 だけど、そんなことは滅多にありません。たまにあります。

 普段はウサミンロボがお手紙をウサちゃんロボに渡し、ウサちゃんロボが担当アイドルの元へ配達します。



 そんなある日のことでした。



 うさ?



 いつものようにお手紙を分別していたウサミンロボを訪れる影、影、影。



 うさ?



 ヒョウくんです。ブリッツェンもいます。ペロもアッキーも。

 ロボはお手紙を配る手を休めて考えました。



 一体、皆はどうしたウサ?



 皆はいい子なので、ウサミンロボのお仕事の邪魔をすることはありません。



 ウサミンロボは考えます、そして、思い出しました。



 お手紙を直接アイドルに渡す役目はウサちゃんロボたちの誇り高き使命です。だけど、例外もあります。

 それは、博士と菜々ママです。二人には、ウサミンロボが直接持って行きます。

 なぜなら、二人の喜ぶ顔を見るのがウサミンロボは大好きだからです。



 うさ!



 ウサミンロボは気づきました。

 皆は、皆のご主人様のところへお手紙を届けたいのではないだろうか、と。

 きっと皆も、ご主人様の喜ぶ顔が見たいのです。



 うさうさ



 そうとわかれば早速実行です。ウサミンロボは皆に渡すお手紙を分別しました。



 まずはここに来ている皆のご主人様たち。

 古賀小春

 イヴ・サンタクロース

 佐城雪美

 太田優



 それぞれをヒョウくん、ブリッツェン、ペロ、アッキーに渡します。



 一応渋谷凜へのお手紙も分別しましたが、今日はハナコは来ていないようです。



 財前時子にもペットの豚がいるはずですが、ウサミンロボはまだ見たことがありません。

 いつもいつも豚豚と言っているので、必ずいるはずです。

 一度、プロデューサーに豚と言っているところを見たことがありますが、ウサミンロボは賢いので騙されません。

 プロデューサーは人間です。豚じゃありません。多分、きっと。

 いつか財前時子のペットの豚ちゃんが事務所にやって来るときを、ウサミンロボは楽しみに待つことにしました。



 うさうさ



 皆は毎日毎日お手紙を運びました。



 ペットたちの運んでくるお手紙に、アイドルたちも大喜びです。



「ヒョウくん偉いです〜。ご褒美のぺろぺろです〜」



「うふふ。ブリッツェンご苦労様ですね〜♪」



「……ペロ……偉い」



「アッキーすごーい、ほらほら、次は小包にチャレンジ?」



 喜ぶアイドルたちに、皆も大満足です。

 ウサミンロボは、皆に郵便配達を手伝ってもらって良かったと思いました。



 そしてまた、ある日のことでした。



 お手紙を配り終えた皆が休憩していると、ブリッツェンが言いました。

 

 自分とイヴの師匠も、世界中からお手紙をもらっているよ、と。



 おおう、と皆が驚きました。



 イヴの師匠は多分人間ですから大丈夫です。お手紙をもらうこともあるでしょう。

 しかし、ブリッツェンの師匠とは一体。

 やっぱり、トナカイなのでしょうか。



 ぶもっ



 どうやらそのようです。トナカイなのに手紙を――それも世界中から――もらっているというのです。

 

 ぶもっぶもっ



 凄いなぁ、とウサミンロボは思いました。アッキーたちも同じ意見のようです。



 だけど、ブリッツェン自身がもらっているわけではありません。

 凄いのは自分じゃなくて師匠だよ、とブリッツェンは続けました。



 それでも、師匠がちょっと羨ましいね、とペロが言いました。



 お手紙をもらうってどんな気持ちなんだろう? ウサミンロボは少し疑問に思いました。



 お話をしているうちに、また新しいお手紙が届きます。

 ウサミンロボたちは、また手分けして配り始めるのでした。



 ――その夜。



 古賀小春がお仕事で遅くなるので、ヒョウくんはおとなしく待っています。

 お腹がすいたけれど、小春ちゃんが帰ってくるまでは我慢です。



 うさ



 ウサミンロボも菜々ママの帰りを待っています。今日は菜々ママと一緒にウサミン星に帰るのです。



 お手紙をもらうってどんな気持ちなんだろうね?



 ヒョウくんがウサミンロボに尋ねますが、ウサミンロボにもわかりません。

 ロボも、お手紙をもらったことはないのです。

 だけど、お手紙をもらったアイドルの様子を見ているとわかります。

 お手紙をもらうことは、とても嬉しいことのようです。

 おかしなお手紙は別として、ちゃんとしたファンレターを読むアイドルはとても嬉しそうです。



 うさうさ



 きっと、幸せな気持ちになるウサ。とロボはヒョウくんに教えます。



 おおう、とヒョウくんは唸りました。だったら、自分たちはご主人様に幸せを運んでいるんだ、と。

 こんなに嬉しいことはない、とヒョウくんは笑います。



 うさうさ



 ウサミンロボも心から賛成しました。

 

 二人でお話をしていると、小春ちゃんと菜々ママが戻ってきたので、二人はさよならをしました。

 

 ウサミンロボは菜々ママと一緒に京葉線でウサミン星へ向かいながら考えます。

 ヒョウくんやアッキー、ペロやブリッツェンも、お手紙をもらったら幸せになるのでしょうか?



 うさうさ



「ん? どうしたの? ロボ」



 ウサミンロボは珍しいことに、菜々ママにおねだりをすることにしました。



「うん。いいよ。どんなのがいいかな」



 菜々ママは、すぐにおねだりを聞いてくれたのです。



 翌日、ウサミンロボはお手紙セットを持って、事務所に行きました。

 ウサちゃんロボたちを率いて事務所の掃除を済ませると、早速お手紙が届きます。

 お手紙を分配して、時間が空いたところでロボはお手紙セットを取り出します。

 四通分のお手紙セット。

 ロボは、博士にインストールしてもらったワープロソフトを起動します。一太郎です。



 ハンドメイドプリントアウトモジュール起動!



 お手紙を書き始めます。



 ……

 ヒョウくんへ

 いつもお手紙配りを手伝ってくれてロボは嬉しいウサ。

 きっと、小春ちゃんも喜んでいるウサ。

 これからも、小春ちゃんのために手伝って欲しいウサ。



 ……

 ブリッツェンへ

 いつもお手紙配りを手伝ってくれてロボは嬉しいウサ。

 きっと、イヴちゃんも喜んでいるウサ。

 これからも、イヴちゃんのために手伝って欲しいウサ。

 ……

 ペロへ

 いつもお手紙配りを手伝ってくれてロボは嬉しいウサ。

 きっと、雪美ちゃんも喜んでいるウサ。

 これからも、雪美ちゃんのために手伝って欲しいウサ。



 ……

 アッキーへ

 いつもお手紙配りを手伝ってくれてロボは嬉しいウサ。

 きっと、優さんも喜んでいるウサ。

 これからも、優さんのために手伝って欲しいウサ。



 書いたお手紙は封筒の中へ。



 作業が終わった頃に、ヒョウくんたちがやってきました。



 うさ、うさ



 おはようございまウサ。今日もがんばって配るウサ。



 いつものようにお手紙を配り終えたところで、ロボは四つの手紙を取り出しました。



 うさ



 皆にお手紙が届いたウサ。



 ニャー?

 ぶもっ?

 キャン?



 お手紙を配られたヒョウくんたちは最初驚いていましたが、中身を見ると大喜びです。

 口々に、ロボありがとう、と言います。



 ウサミンロボはなんだか恥ずかしくなってしまいました。

 それどころか、帰り際にそれぞれのご主人様からもお礼を言われました。

 やっぱり恥ずかしかったけれど、それでも手紙を書いて良かったと、ウサミンロボは思いました。



 だけど、ウサミンロボは気づきませんでした。

 ご主人様たちとそのペットたちの密かな企みに。



 その二日後です。



 ウサミンロボがいつものように事務所にやってくると、夜間当直のウサちゃんロボが届け物を持ってきました。

 夜の内にウサミンロボ宛に届いたもののようです。



 ウサミンロボは何だろうと思って受け取りました。

 なんと、それはお手紙です。

 宛名は「ウサミンロボ様へ」となっています。



 ウサミンロボは驚きました。そして、慌てて手紙の中の便せんを取り出します。

 そこには……



 いくつものハンコ……いや、これは何かにインクをつけて押し当てたものです。



 メカニックスイッチオン、センサーライト



 わかりました。

 これは、ヒョウくんの鱗模様、ペロとアッキーの肉球跡、ブリッツェンの蹄鉄跡です。

 皆から、ウサミンロボへのお手紙なのです。

 

 何が書いてあるかはわかりませんけれど、初めてもらったお手紙にウサミンロボはとても嬉しくて、くるくる回ってしまいました。



 ウサミンロボの宝物が、また一つ増えた日でした。



おわり



20:30│モバマス 
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