2014年12月17日

塩見周子「色んな希望が混ざった虹」




沈んでる







足掻くことを諦めて、冷たい水の底に沈んでいる





水面から差し込む日の光は無くなっていって





怖くなって、私は目を閉じる





瞼の後ろは真っ暗で





光なんて無くって、もう一度目を開けてみる











………





……………





やっぱり、光何て見えなかった







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どうしてこうなったんだろう





考えてみる





夢?どっかで寝ちゃったかな





それとも……気が付かないうちに世界がこんなになんちゃった!





なんて訳ないやんね





もう一度、瞼を閉じる





もう一度、瞼を開く





……?





そこは薄暗い水の中じゃなくって、真昼の無人島だった









でも、何だかおかしいよ





空には雲がいっぱいで





お日様は見えなくって





木にも草にも、海にも砂にも、色が無くって、つまらない





それに、この無人島も沈んでる









気が付くと、ほとんど沈んでるみたいな無人島





ここは何処なんだろう





どうやって来たんだろう?





これは夢?





地球儀にのってない、名前もない





無人島





私はそこに一人でいる





ぽつん





















寂しいな









一日…二日……三日………それより後は、もう覚えていない











………





……………





Pさん、何処にいるんだろう





皆、何処にいるんだろう





一人はヤだよ









もう、何日が経ったのだろうか





そういえば、昨日は近くまで希望の船が来たけど





僕らを迎えに来たんじゃない





船はその姿だけ見せて、ささっと帰っちゃった





………あれ?





『僕ら』って、誰だろう





私しか、いないはずなのになぁ









……あっ





雲が晴れる





うわっ……





眩しいな





久しぶりのお日様だ





凄い、輝いてるなぁ





それでも、お日様以外に色は無いんだ











むっ





太陽に見惚れて、少しこげちゃった





……日焼けしたら、Pさんに怒られるなぁ









プリズムをはさんで手を振ったけど





うーん





特に何も起こんないや





つまんないなぁ





レッスンでもしてた方がマシだよ





うん、レッスン





……前の私なら、こんな事思わなかったなぁ









また、目を開けたら場所が変わってないかな





何て思いながら、瞼を落としてみる











………





……………





出来たら、いつもの事務所がいいな









………?





あ、ホンマに変わってる





何だろう?これ





……飛行船?





ほとんどしぼんでる、僕らの飛行船





うーん……まただ





『僕ら』って、誰なんだろう









わっ





この飛行船





地面をスレスレに浮かんでる





危ないなぁ





ちゃんと操縦してほしいなぁ





でも、誰が操縦してるんだろう









ん?





何だろう、あれ





とても表現できないような





呼び方もとまどう色の姿





そんな『色』が、飛行船の周りを漂っている





綺麗



醜い



優しい



怖い



好き



嫌い





どれにも当てはまらない、そんな色









気が付くと、周りにはいろんな動物がいる





とても飛べそうにはない、緑のゾウ



長い首からみんなを見下ろす、黄色いキリン



鬣を奮わす、灰色のライオン



必死に走る紅い犬、それを追う蒼い猫



空を泳ぐ銀色の魚に、尻尾を振る金色の猿



その上を翔ける、虹色の鳥





皆、飛んでいる





………?





奥に、人の影が見える











………





……………





あ、私だ









幼い頃の私





何も知らなかった頃の私





まぁ、今もそんなに変わらないのかもしれないけれど





今でも、何も知らないのかもしれないけれど





危ないよ





そんな所に居たら、鳥達に容赦なくつつかれる



















あぁ、そういう事ね









あれは、私だ





そう





だって私の姿をしているんだもん





当たり前だよね





何も知らなかった頃





といっても、ほんの数年前の私だ





まだ、アイドルになる前の私









社会の事なんて知らなくて





高校卒業してどうするか、何て考えて無くて





親と喧嘩して家出して





道端で半べそになってて





Pさんにスカウトされた





あの日の私だ









あの鳥は、私自身だ





私の、私に対する、私のプレッシャーだ





高校を卒業したら実家を継げばいいかな





なんて、考えていて





進路の事なんて考えずに卒業して





いざやるぞ、となったら





私の両親は、想像には及ばない程の努力をしていて





必死に店を護っていたのを





初めて知って









私だって、実家の事について何にも勉強していなかった訳じゃないけど





それでも、二人の努力には到底及ばなくって





それで、悔しくって





何回も教えてもらったけど、何回も助けてもらったけど





それでも失敗ばっかりして





上手くいかなくって、喧嘩して





だけど、お父さんお母さんは私を心配して





探し出したと思ったら、知らない男の人と一緒にいて





いっぱい怒られたなぁ





Pさん、必死に説明してたなぁ









あの船を操縦していたのは、お父さんとお母さんだ





何も考えないで海から上がり





何にも無い無人島に、一人ぽつんと佇む私を





助けに来てくれた二人





それでも私は家出なんてして









『僕ら』は……私達、アイドルだ





そして、この飛行船を操縦しているのは……Pさんだ





アイドルの卵を引き連れて





飛行船を飛ばしている





船長のPさん









気が付くと





スレスレの地面は遥か下にある





操縦室へ行こう





―――――――――――――――

――――――――――

―――――





「ねぇ、Pさん」





―――――………





「これから、この船は何処にいくの?」





―――――――…………





「――向こう側?」









そうだ





この『色』は虹だ





努力をし、実る事への希望



失敗せず、成功する事への希望



後悔しないで、やり遂げる事への希望



私達の、意志が届くことへの希望



今までの私達の、色んな希望が混ざった虹









これから、私達はその向こう側に行くんだ





導いてくれるのは自分じゃない





周りの皆





親に助けられて



Pさんが引っ張ってくれて



仲間同士助け合って





でも、踏み出すのは自分だ





飛行船や船が連れてってくれるのはここまで





ここから飛んで、虹を超える









虹の向こうには、何があるのかな?









―――――――――――――――

――――――――――

―――――





「周子」





「……ん…」





「周子ー」





「………んー…」





「起きろ―」





「…………ん?」









「………あれ」





「おはよう」





「……おはよう」





「よだれ垂れてる……ほら、拭け」





「ん……」





「どうした?」





「…何か、夢見てた気がするんだけど……思い出せない」





「よくある」





「うーん……」





「まぁ、思い出すのは後にして……もうこんな時間だ」





「え?あ、ほんまや」





「あと」





「んー?」









どんな人にでも、明日は待ってるんだよね。





それがどんなに辛いものでも、嫌なものでも、逃げ出したくても。





きっとそれを乗り越えたら、素敵なものが待っているから。





失敗するのが怖くって、評価されないのが辛くって、努力するのが嫌になって、希望何て捨てちゃって。





希望何て持てなくて、光が見えない人にも。



光は見えたけど、その先には影しか無くっても。



影に隠れたくって、必死に逃げていても。



私みたいに、光に怯えて明日から逃げていた人も。



昨日まで、選ばれなかった僕らでも。









「明日を持ってる」





おわり





21:30│塩見周子 
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