2014年12月22日

モバP「工藤忍の独白」

最初はさ、え?大丈夫なのこの子って思ったんだよね。



うん、ユニットの結成したばっかりの頃。まだ私とあの子の2人だけだった頃ね。



ユニット組むってなってはじめて話したんだけどさ、ほんと何にも知らないの。





最近の流行とかはもちろん、この辺でお買い物する所とか、カラオケとかゲームセンターとかみたいな遊べる所とか、

あとはテレビもあんまり見ないって言うし、話題が全然続かなくて困っちゃったもん。



一応さ、私もあの子もアイドルになってそこそこたってたわけじゃない?



なのにアイドルっていうか、そもそも可愛い女の子ってものに必要そうなことについてほんとに知らなそうだったんだ。



そりゃあさ、よし、私が教えてあげなきゃってなるでしょ?



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1418134319



…あとちょっとだけ告白するとさ、やっぱり汚い心もあったんだよね。



アイドルになるために昔から色々と努力してきたけど、結局の所、私って田舎娘でさ。



事務所の周りのみんながずっとキラキラしてるように感じてた所にそんな子と引き合わされたから、この子と比べれば、私もまだマ



シかな、とかさ。



あとはユニット組むからには足を引っ張られるわけにはいかないから、とかさ。



…あー自分で言っててなんだけど、やっぱり嫌な子だなぁ。



やっぱ口に出すとちょっと罪悪感すごいね。

…それで、なんの話だっけ?



そうそう、色々教えてあげなきゃって思ったって話。



だからまぁ、最初っからどんどん引っ張って色んな遊び方教えてあげてたんだよね。



例えば、ウィンドウショッピングのやり方とか、カラオケのリモコンの操作の仕方とか、

プリクラの取り方とか、あと流行りの服とかドラマとかも教えて…。



ぴにゃこら太とか出回りはじめたのもあの頃だよね。正直あんなに流行ると思わなかったけど、あのブサイク。



…まぁそれは全然関係なくて、まぁ今よりずっとヒマだったのもあって、ユニットの関係を深めるって名目で遊びまくってたの。



でもね、余裕があったのはこの辺まで。

2人でちゃんとしたレッスンが始まってから思い知ったんだけどさ、あの子ほんとすごい。



なんていうかな、表現に対する真面目さ?ストイックさ?うまく言えないけど。



とにかく自分が周りにどう見えてるか、世界にどう感じられてるかっていうのをすっごく重く見てて、

少しでも、ほんのちょっとでも表現を伝えられるようにって全力なの。



私、芸術家ってこういう人のことを言うんだってその時初めてわかったもん。



おかげで私のプライドはもうボロボロ。



直前までなんとなく下に見てた子がずっとずっとすごい人だったんだもん。



もうなんか、自分がどんだけ驕ってたかとかまじまじと考えちゃって、後悔して、私って嫌な子だなって自己嫌悪。

でもそんな風になっても、残ってたんだよね、意地が。ちょっとだけ。こんなことで挫けてたまるかって。



だれかと勝負して負けたわけでもなんでもないのに、リタイアしてたまるかって。



…いやいやほんと、アイドル諦めるか否かの瀬戸際だったんだよ?あの時の私。



でも頑張って奮い立てて、今までの努力とか、実家飛び出した時の気持ちとか、

もう全部思い出して総動員して、なんとか逃げ出さないでいられたんだ。

それからはもう必死だよ。



あの子のパフォーマンスにちょっとでも追いつけるように、今までよりも何倍も集中してレッスンしたり、

こっそり居残りで練習したり、寮の部屋でも何度も何度も復習したりさ。



腕なんてもうなんど壁にぶつけたか。



…実は部屋の壁に穴とかあいちゃってたり…ごめんなさい。



いやまぁそれは置いといて。うん?置いとけない?まぁまぁ後で後で…。



で、そんなあの子に追いつけ頑張れって時期があったわけだけどさ、これが全然追いつけないの。



むしろあの子の方がますます成長していって、背中がどんどんどんどんちーちゃくなってく感じ。



軽く絶望だったよね。

初めのころはそれでもまだ希望があったんだ。



あの子のこと芸術家って、さっき言ったけど、芸術的な美しさっていうのかな。



それってなんだかお堅くて冷たい感じもしてたの。



だから私なりの魅力でなら勝てるかもって。



…甘かった。



ずっと、ずっと一緒にレッスンしてるとさ、わかるんだ。



そのお堅さがくずれる?いや違うかな。緩む?…うんそんな感じ。



とにかく、芸術的な綺麗さはそのまんまで、楽しいとか、嬉しいとか、そういう暖かい気持ちがどんどん伝わるようになってきて…



…どんな反則だよ!って、思ったよね。

悔しかったなぁ。あの子と私では、その分野は私の方がずっとずっと先に行ってたはずなのに、

あっという間に追い越されて、もっともっと遠くに行っちゃうの。



ただでさえ全体的にはボロ負けなのにさ。



バレエで培った地力の差なのか、才能の差なのかわかんないけど、負けてるなって思ってた。



それで、もうちょっとやけになってさ、聞いてみたんだ。最近ダンスがあったかくなったねって。



…今、思い出すとなんか変な日本語だね。



でもそんな変な日本語にさ、あの子は返してくれたの。「あなたのおかげです」って。満面の笑顔で。

もう衝撃だったね。



私がどんなに頑張って、自業自得な惨めな思いして、それでも心に鞭打って、必死に戦い続けたのに、それが私のおかげ?って。



え?って思わずこぼしたらさ、「ユニット組んでから、色々なことを教えてもらって、新しい思い出がたくさん増えて、

今まで出来なかった表現が体から溢れ出てきます!本当にありがとうございます!」だって。



私、口ぱくぱく。金魚みたい。



あの時の私、はたから見たら絶対ブサイクだったもん。



それからあの子、事あるごとにありがとうありがとうって。



…当て付けか!って叫びたくなったよね。ほんと。

…でもさ、ある日ふっと、気づいたんだ。



あの子の中の私ってさ、初めて会った時から今の今までずっと変わらず、

元気で明るくて生真面目な子でも気さくに誘って一緒に遊んでくれる優しいいい子、なんだなって。



…閃いた瞬間うわぁって思ったよ。



それって私が張り切った結果なんだよね。



…うん、確かに私は元気で明るくて生真面目な子でも気さくに誘って一緒に遊んでくれる優しいいい子だったよ。



人様に見せられない気持ちがあったとはいえ。



作ってたんだ。いい子の性格をさ。

…でもそれってアイドルと活動と似てると思わない?



ファンにとってのアイドルってさ、まさに完璧な、暗いことなんてなんにも考えない聖人なわけで。



あの子にとっての私もそんななんだって、わかっちゃった。



少なくとも私はそう感じたの。



気づいちゃったらさ、頑張らなきゃ。



どんなに後ろ暗い理由があったって、どんなにドロドロした気持ちを隠してたって、あの子にとっての私は掛け替えのない友達なんだ。



アイドルなんだ。



それは絶対に裏切っちゃいけない。



私にアイドルであるっていう矜恃があったなら、絶対、絶対。

そんな感じで吹っ切れてからはだいぶ楽になったかな。



あの子の友達でいられるために…ううん、いるために、毎日がむしゃらだもん。



あの子がどんなことに新しさを感じてるのかとか、どんな景色のどこを取り入れて、表現力に変換してるのかとか、もうガン見だよね。



そんなことしてるとますます、すごいなこの子とか、うわぁピュアい、とか感じるのが日常茶飯事なわけで。



…うんまぁ、やれやれとかまったくこの子はもう…とかもちょくちょく思うけどね?



前だったらあわよくば見返してやろうとか、打ち勝ってやろうとか考えながら努力してたけど、その頃に比べて毎日の楽しさが月とスッポン!



気の持ちようってほんと大事。

あれからユニットのメンバーも増えて、それにつれてあの子ももっとおっきくなって、私ももっともっと努力しなきゃいけなくなって。



なーんてわちゃわちゃしてたらいつの間にかこんなに人気出ちゃった。



もうびっくり!言うことなしだね!



…欲を言えばまだまだ人気は欲しいけど。



…とにかく!あの子とユニットにならなかったらきっと、こんなにうまくいかなかっただろうなぁって、思うの。

…もしかして、わかってて組ませたの?こうなるって。



ははっ、そんなわけないか。



だけど、ま、ありがとう、ってこと。偶然でもね。



あの子のおかげで今の私があるんだ。



あの子となら、あの子のためなら、私はどれだけだって努力できるよ!



…でもって、あなたもあの子に、そこそこ、ほんとそこそこ信頼されてるらしいじゃん?



知ってるよ?こないだのハロウィン!



クロネコのコスプレ!あれ絶対Pさんの趣味でしょ!

…わからいでか!



あの子が無茶ぶりされて一番最初に相談するのだれだと思ってるの!?



ほっぺたひくひくさせちゃった私の気持ちわかる!?



…はぁ、可愛がりたくなるのもわかるけど、ほどほどにね。あの子のこと泣かせたら、絶対許さないから。私。



わかった?



…もう、調子いいんだから。



…さ、て、と、言いたいことは全部言ったし、今日はもうおしまい!



ずいぶんだらだらしちゃったな。早くしないと、寮母さんに怒られちゃう。



ごめんね、こんな気まぐれに付き合わせて。

それじゃPさん、明日からもまたよろしくお願いします!



…くれぐれも今日の話、忘れないように!



…あの子のこと、あと、私のことも、ね?



ばいばい。

おわり!



22:30│工藤忍 
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