2015年01月26日

前川みく「お別れの日……?」


――――



――――――――







みく「ねえねえPチャン」



P「あー、なんだ? 手短に頼めるか」カタカタ



みく「なんか今日ずーっと忙しそうにゃ。かまってよー」



P「悪い、今日はずっと忙しいぞ。色々手続きがあってな」カタカタ



みく「むー……」



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みく「そもそも、ずーっと何の手続きしてるの」



P「うーん……移籍、かねえ」カタカタ



みく「え? い、移籍……?」



P「いや、まあ……移籍と言えばいいのか、何と言っていいのか……」カタカタ





ガチャ





晶葉「やあP、どの程度まとまった?」

P「あ、ああ晶葉か。うーん、こんな作業やったことないからなあ……俺より適任いるんじゃあないか?」カタカタ



晶葉「この私の助手と見込んでのことだ。こんな事はPにしか頼めないんだよ」



みく「え、あの、Pチャン?」



P「ん?」カタカタ



みく「移籍って、まさか……」



P「ああいや、たぶんみくが考えていることとは違うと思う」カタカタ



晶葉「移籍? なあP、何の話だ?」

P「いや、こんな状況どう説明しろってんだ……。一番近い状況は移籍じゃあないかと思ってな」カタカタ



晶葉「『移籍』、か……。それならまだ良かったんだろうがな」



みく「いい加減教えてほしいにゃ。Pチャン達何やってるの?」



晶葉「なあP。こういう事は、早めに伝えておくべきなのかもしれないぞ」



P「ううむ……」カタ・・・



みく「Pチャン?」

P「なあ、みく」



みく「にゃ?」



P「ドラマ、順調か?」



みく「ああ、あの『シンデレラプロジェクト』の? うん、今のところ快調にゃ」



P「そうか。……アーニャとは仲良くやってるか?」



みく「もっちろん! ドラマでも一緒で嬉しいにゃ!」

P「そりゃ何よりだ。……『あーにゃんみくにゃん』、だったな」



みく「うん! でもそれだけじゃにゃいよ? みく達はずっと――」











P「お前達は、あーにゃんみくにゃんだ」











みく「え、Pチャン……?」

みく「何言ってるのPチャン? みくとあーにゃんは『にゃんにゃんにゃん』で一緒になって……」



P「ああ、そうだな」



みく「もー、物忘れ? みく達のあにゃんともずーっと一緒で――」



P「のあにゃん、か……」



みく「あの、Pチャン?」



P「のあさんな――」











P「もう、お別れなんだ」











みく「P、チャン…………?」



P「どう説明していいのか、自分でも悩んでてな」



みく「嘘、だよね?」



P「遠くに行く、というか……いや、それならまだよかったのかもしれない」



みく「ねえPチャン」



P「とにかく、事態が複雑すぎて――」



みく「Pチャン!!」

みく「何を言ってるの!? のあにゃんはいなくならないにゃ!」



P「みく」



みく「のあにゃんはこの事務所のアイドルで! みくやあーにゃんの大事な友達なの!」



P「おい」



みく「お別れなんて意味がわかんない!! のあにゃん何か失敗した!?」



P「なあ、みく」



みく「そんなワケない!! だってのあにゃんはすごいアイドルなんだから!!」



P「みく!」



みく「うるさいうるさーいっ!! その書類早く見せて!!」ガバッ

みく「なに、これ…………」



P「見ても分かるワケないだろう……俺だって困ってる」



みく「数字や記号……見たこと無い言葉がいっぱい……」



P「はあ……何度も言ってるが、どこから説明したらいいのか……」



晶葉「…………」



みく「ねえ……これとのあにゃんに何の関係があるっていうの……?」



P「えっと……」



みく「ねえ……ねえってば」

晶葉「ログを整理していたんだ」



P「晶葉……」



みく「ログ……?」



晶葉「あまりにも特殊なコード故に、メモリーのバックアップをとれない。そんなケースは私も初めて見たが」



みく「コード? メモリー? バックアップ……? ねえ、何のことなの……?」



晶葉「彼女の記憶さ。のあのな」



みく「晶葉チャン……?」



晶葉「もう、大体分かってきたと思う」



みく「わかんない……みくにはわかんないよ……」



晶葉「なら、はっきりと言ってしまおう」

晶葉「高峯のあは機械だと」











みく「……っ。意味が、分からない……」



晶葉「正式名称は特になし。初めて形になった試作機であることから便宜上『NO.A』と呼称」



みく「そんなの、分かんない……」



晶葉「開発者は私の恩師でもある高峯教授。私は実験への協力を任された」



みく「分かんない」



晶葉「ずばり『極限まで人間に近付いた人工知能』の試験。その為には多くの人と触れ合うことが必要だった」



みく「分かんない」



晶葉「私の知る限り、最も適した道がアイドルだった」







みく「――やめて!!!」

みく「なんで晶葉チャンそんな酷いこというの!? のあにゃんは人間でしょ!!」



晶葉「……」



みく「作り物なワケないの!!」



P「なあ、みく……」



みく「だって! だって!」

みく「のあにゃんはみくの大事な友達で! あーにゃんと一緒に歌って踊って!」



みく「猫チャンの素晴らしさをみんなで広めて、時々何するか分かんなくて……」



みく「何、言ってるか、分かん、グスッ、なくて、でも、すごく、優しくて……グスッ」



みく「それで……それで……」



みく「ずっと……ぐすっ……一緒に……」





みく「……生きてるもん」





みく「だって、だって…………。のあにゃん、すっごく楽しそうだったもん!!」



みく「のあにゃんは生きてるもん! 人間だもん!!」

みく「ぐしゅっ……」



みく「うう……うわあああ……」



みく「うわあああああああ……!」



晶葉「…………」



晶葉「……P」



P「いいのか?」



晶葉「ああ、どうせもう最後なんだ」

P「誰にも気付かれないように、するのが正解だと思ったんだがな……」





カタカタッ







ウィーン・・・











みく「ぐすっ……ひっく……」





「……みく」

みく「……のあ、にゃん」



のあ「分かって。沈黙が最も正しいことだってある」



みく「ウソ、だよね……?」



のあ「…………」



みく「ねえ……ねえってば……」



のあ「…………」



のあ「……………………偽りよ」



みく「…………!」







のあ「……私は、偽り」

みく「のあ、チャン……?」



のあ「どうしたの、のあにゃんでしょう?」



みく「ウソ、だもんね」



のあ「そう……私という人間は嘘」



みく「違う! それがウソなんでしょ!?」



のあ「…………」フルフル



みく「違うよね!! のあチャンは人間でしょ!?」





ギュッ





みく「だって……のあにゃんあったかいもん……」



のあ「熱は生物だけのものじゃないわ」



みく「違うもん……」



のあ「みく……」



みく「落ち着くもん……あったかいのあチャン、好きだもん……」

のあ「…………」



のあ「みく、放して」



みく「…………」



のあ「一度、放して」



みく「…………」





パッ





みく「……認めたくないよ」

のあ「私はまだ未完成……」



みく「そんなこと、ないよ」



のあ「コミュニケーションは難しく、語彙の選択が未熟……」



のあ「表情のコントロールが正常に機能していない……」



のあ「総合的なチェックが必要」



みく「違う……違うよ」





みく「人間って、完成とかそういうのじゃないよ……みくだってダメダメだもん」



のあ「……そんなことは」



みく「ねえ……チェックとか必要ないよ」



みく「みんな違うし、みんな欠点を抱えてるの。だから……のあチャンもそういうヒトでいいの」



みく「みんな一緒だよ……『ちょっと変わった人』。だからアイドルとして輝けるの」



のあ「…………でも、私は」



みく「のあチャンは人間だよ。人間で、みんなのアイドルで、みくの友達だよ」

のあ「みく……」



みく「ね、どっか行っちゃやだよ。お別れなんて必要ないもん」



のあ「みく……」



みく「ずっと、ここにいようよ。どこも直す所なんてないもん」



のあ「…………」



みく「いや、だ……。いやだよ……」

のあ「みく、顔をあげて」



みく「いや……。アイドルは笑顔じゃなきゃいけないの……泣いてるみくは、顔をあげちゃダメなの」



のあ「みく」



みく「うう……ぐすっ」



のあ「私は、微笑むことは出来ても……笑えはしなかった」



みく「ぐすっ……ひっく……」



のあ「アイドル失格よ。どちらにせよ、ここは出なきゃならない」



みく「ぐすっ……みくには分かるもん……のあチャンは笑ってるもん……」

のあ「みく」



みく「のあ、チャン……?」







ツウ・・・







みく「ねえ、それ……」



のあ「泣くことはできたわ」

P「おい、ありゃどういうことだ……?」



晶葉「分からん……あんな機能は無いはず……!」











みく「あ、あはは……のあチャン泣いてる……。ほらやっぱり人間だ……」



のあ「ええ、一歩近付くことができた。……だから」



みく「のあチャン……泣けるのは人間だけだよ」





のあ「…………笑えるようになったら、また戻ってくるわ」





みく「ねえ……のあチャン……」

のあ「P、再開して」



P「え!? え、あーっと……」



晶葉「うむむ……」



のあ「早く……」







のあ「…………――――」







ウィーン・・・







みく「のあチャン……」









――――――――



――――





チュンチュン





チュンチュン・・・







みく「…………」ボーッ







みく「え、夢……?」





みく「うわ、枕びしょ濡れだ……」



――――





P「ふぁあ……ねみ」



ちひろ「ほら、シャンとする!」



P「なんでこんな早朝から出勤なんです……?」



ちひろ「仕方ないでしょ、ドラマの方の反響が凄くてもう時間がカケラもないんです」



P「こんなんじゃまともに働けもしないですって……ふぁあ」









PPP...

P「あ、電話……? みくからだ」



ちひろ「こんな朝から連絡?」



P「はい、もしもし」





みく『あ、Pチャン?』



P「おうどうした、こんな時間に」



みく『あのね、ちょっとどうしても今言いたくなって……』



P「おう、何か大事な話っぽいな……わかった、言ってみろ」



みく『ひとつお願いなんだけど……』











みく『今からでも、のあにゃん何とかドラマに出せない?』















20:30│前川みく 
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