2014年01月18日
モバP「天の川」
『うちがあいどる……どすか?』
『あぁ、良かったらだけど……話だけでも聞いてもらえるかな?』
『あぁ、良かったらだけど……話だけでも聞いてもらえるかな?』
『そないな事言われても……』
『もちろん今すぐというわけじゃない、じっくり考えて話を聞いてみようと思ったら連絡をくれたら良い』
『うち、連絡しまへんかも知れまへんえ?』
『その時はその時、スッパリと諦めるよ』
『ふふっ、熱心に勧誘しはる割にはえらいあっさりと引きさがりはるんどすなぁ』
『こういうのは相手の事情の方が大事だからね』
『……一つ、聞かせてもろても宜しいどすやろか?』
『あぁ、かまわないよ』
『なんで、うちに声をかけはったんどすか?』
『それは……』
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1373210840
------
P「…………」
小早川紗枝「あっ、Pはん。起きはったんどすか?」
P「寝てたのか、すまないな紗枝」
紗枝「別にかまいまへんえ、Pはんもたまにはゆっくりしはらんと……
P「ははっ、疲れてるとはいえ新幹線で寝るとは思って無かったよ」
紗枝「Pはん、みかん食べはります?」
P「……もらうよ」
紗枝「はい、どうぞ」
P「剥いてくれなくても良かったのに」
紗枝「ふふっ、大した手間やないさかい」
P「美味いね、そういやこうやってミカン食べるのはいつぶりだろうな」
紗枝「あんまり食べへんのどすか?」
P「果物って剥くのがめんどくさいからな」
紗枝「もう、それくらいちゃんとせんとあきまへんえ?」
P「紗枝はしっかりしてるよ」
紗枝「もう、そうやってはぐらかすんやから……」
小早川紗枝(15)
http://i.imgur.com/IB0FPQq.jpg
http://i.imgur.com/9I5Srnc.jpg
http://i.imgur.com/4e1Gqad.jpg
http://i.imgur.com/by5CqOe.jpg
紗枝「もう少しで着きますなぁ」
P「そうだな、東京から京都……わかっちゃいるけど長旅だよな」
紗枝「うちは慣れとるさかい、あんまり何とも思いまへんけどなぁ」
P「俺も慣れとかないといけないんだけどね」
紗枝「ふふっ、それやったらうちが毎月帰る時に一緒に帰りはります?」
P「それも良いかもな……」
紗枝「そないな事言って結局、行かへんつもりですやろ?」
P「んな事ないさ、今回は嘘じゃないよ」
紗枝「それやったら嬉しいんやけど……」
P「……にしても紗枝の両親に会うのも久々だな」
紗枝「前に会ったのお正月でしたやろか?」
P「そうだよ。はぁ……俺こういうの苦手だから……」
紗枝「別にPはんに対して悪う思うてる事なんてあらへんのに……」
P「契約更新か……紗枝を預かってるわけだしちゃんと面と向かって話さないとな……」
紗枝「うちも一緒におるさかい、気楽にしとくれやす」
------ 京都
P「今日は蒸し暑いのにやたらと人が多いな……」
紗枝「ふふっ、七夕の時期の京都も色々いべんとがありますしなぁ」
P「スーツの俺にはきつい場所だよ……」
紗枝「あっ……」
P「どうしたんだ?」
紗枝「Pはん、覚えてますやろか?」
P「なにを……」
紗枝「この橋の上、鴨川がよぉ見えるこの場所でうちら初めておうたんどすえ……」
P「…………」
紗枝「ふふっ、思いだしてくれはりました?」
P「あぁ、あの時も丁度七夕だったな」
紗枝「Pはん、ちょっとここで見ていってもいいですやろか」
P「かまわないよ、でも暑いし日陰にいようか」
紗枝「おおきに……」
紗枝「…………」
P「…………」
紗枝「…………」
P「なぁ、さっきからボーッと空を見てどうしたんだ?」
紗枝「…………」
P「おーい、紗枝」
紗枝「あっ、Pはん……どうしはったんどすか?」
P「いや、紗枝の反応がないから……」
紗枝「そ、そうやったんどすか……すんまへん」
P「いや、別に良いけどどうしたんだ。こんなにボーッとしてるなんて珍しいよな」
紗枝「ふふっ、ちょっとこんな風に京都の空を見るのが懐かしゅうて……」
P「東京とそんなに変わるもんなのか?」
紗枝「んー……故郷の空ゆうのもやっぱり違うもんどすえ」
P「そっか、俺も東京を離れたらそう思うのかね」
紗枝「きっと、Pはんもそう思うようになると思いますわぁ」
P「……うし、そろそろ挨拶を済ませちゃおうか」
紗枝「えぇ、そろそろ行きましょか……」
------ 喫茶店
P「はぁー……終わった終わった……」
紗枝「Pはん、はばかりさんどしたなぁ」
P「これで今日の仕事は半分終わりか……」
紗枝「でも、Pはん。なんでうちで休んでいかへんのどすか?」
P「小市民の俺にはお金持ちの家って落ち着かないんだよ」
P「話ししてた所だって何畳あるんだあれ……」
紗枝「ふふっ、そんなん気にせんでええのに」
P「紗枝じゃなくて俺が気にするんだよ」
紗枝「両親もPはんの事は気に入っとりますし、たまにはゆっくりしていきはったらどうどすか?」
P「俺のハートが鍛えられたらそうするよ」
紗枝「じゃあ、そうなったらうちに教えとくれやす」
P「わかったよ……」
紗枝「Pはん、この後はお仕事どすか?」
P「あぁ、少し後になるけど、イベントにちょっとな」
紗枝「でも、うちなんも用意しとりまへんえ?」
P「そりゃそう言ってたからな。準備はしてくれてるから大丈夫だよ」
紗枝「そうどすか、終わるのは夜になりそうどすなぁ」
P「あぁ、夕方開始のイベントだからな。今日は仕事が終わったら紗枝はそのまま実家に泊って明日に戻ろうか」
紗枝「……Pはん? 仕事までに遊んで行く時間はありますやろか?」
P「ん? 別にかまわないけどどうかしたのか?」
紗枝「ふふっ、それやったらうちに付き合ってもろても宜しいですやろか?」
P「まぁ、良いけど……」
------
紗枝「人がようさんおって、夏の京都いう感じがしますなぁ」
P「今日は混んでる方なのか?」
紗枝「そうどすなぁ、でも祇園祭の時とかはもっとようさんの人が来はりますえ?」
P「これ以上来るなんて想像したくないな……」
紗枝「ふふっ、地元のうちらもその時期はあんまり出かけまへんしな」
P「ふーん、地元の祭りなのに地元の人が見ないってのも変な感じだな」
紗枝「いえ、うちはちゃんと場所をとってもろていつもそこから見てますえ」
P「その方が良いだろうな、あんまり人ごみの中に居るのは良くないしな」
紗枝「そう言えば今日のいべんとは他の方も来られるんどすか?」
P「ん? あぁ、直接は会わないけど何人か他のアイドルも来る予定だよ」
紗枝「そうどすか……」
P「それがどうかしたのか?」
紗枝「いえ、他の人等と比べてうちってどうなんやろなって……」
P「…………」
------
『連絡をくれて嬉しいよ、アイドルについて聞きたいんだよね。何でも聞いてもらって構わないから』
『えぇ、遠いとこわざわざすんまへんなぁ』
『気にしなくて良いよ、これくらいはしないとね』
『あの、うちまだようわかってへんのやけど……あいどるって何をするんですやろか?』
『ん、そうだな……基本的にはテレビで見てるイメージが近いと思うけど』
『あんまりてれびは見いひんから……』
『そうか、簡単に言うならファンのためにステージで歌ったり、色んなイベントに参加したりするんだよ』
『ふぁんどすか?』
『そう、活動を続けていくと君の事を応援してくれる人が増える。その人達の声に答えていくのさ』
『なんや、むずかしそうどすな……うち、歌とかできまへんし……』
『ははっ、今すぐそう言う事を始めるわけじゃないさ。ちゃんとレッスンを受けて、そこからデビューだよ』
『うちにそんなことできますやろか?』
『そうだな、俺はそう思ってるよ』
『……やっぱり少し考えさせてもろても宜しいですやろか?』
『……わかった、また気になる事があったら連絡して欲しい』
------
P(そう言えば、昔も似たような事言ってたな……)
紗枝「Pはん?」
P「……えっ? な、何か用か?」
紗枝「ふふっ、今度はPはんがボーッとしてましたえ?」
P「あぁ、すまないな。ちょっと考え事してたよ」
紗枝「そうどすか、でもちゃんと前を見とかんと危ないどすえ?」
P「ははっ、わかってるって」
紗枝「それやったらええんどすけど……あっ」
ガシッ
P「言ってる方がこけそうになってるなら世話ないよな」
紗枝「す、すんまへんPはん……」
P「かまわないよ、ちょっと歩きづらいしな」
紗枝「…………」
P「どうしたんだ?」
紗枝「あ、あの……はぐれたら危ないですし……」
P「あぁ、怪我しそうになるよな」
紗枝「それにさっきみたいにこけそうになったら……」
P「そうだな、危ないから手を繋いどこうか」
紗枝「は、はいっ……えへへっ……」
------ イベント会場
P「準備はできたか?」
紗枝「Pはん、この衣装って……」
P「ははっ、七夕の織姫の衣装だよ。七夕以外で使ってたのがほとんどだけどな」
紗枝「ふふっ、言われてみればそうどしたなぁ」
P「本来は七夕の夜に着てこそだからな、ここに来る前に運んでおいたんだよ」
紗枝「おおきに、Pはん……」
紗枝「年に一度きり、星の綺麗な綺麗な夜に、ぴったりの一張羅になりそうどす」
P「喜んでもらえて良かったよ」
紗枝「この衣装に負けへんような舞をお披露目いたしますえ」
P「頑張ってこいよ、紗枝の地元でのステージだしな」
紗枝「……Pはん」
P「ん?」
紗枝「うち、Pはんの織姫になれとりますやろか……」
P「……どういうことだ?」
紗枝「や、やっぱり何でもありまへん!」
P「そ、そうか……」
紗枝「ふふっ、うちがんばってくるさかい、よう見とっておくれやす」
------ 帰り道
P「盛況だったな、今日のイベント」
紗枝「地元にあんなに沢山応援してくはる人がおったんどすなぁ」
P「まぁ、東京からじゃ気づきにくいだろうけど出身地の人達って応援してくれる人は多いもんだよ」
紗枝「うち、ちゃんとできてましたやろか……」
P「文句なしさ、流石は紗枝」
紗枝「…………」
P「……どうしたんだ?」
紗枝「うち、しっかりしてる風に見えとるだけどす……」
P「…………」
紗枝「昔からそう、周りにそう言う風に言われてそうせなあかんって思うて……」
紗枝「Pはん、うち失敗するのが凄く怖いんどす……」
P「失敗が怖い?」
紗枝「なんやろ、今まで期待してくれた人等がそんなうちを見て残念に思うんやないかて……」
------
『何度も来てもらってすんまへん……』
『昨日まで普通にしてたのに急にアイドルになるっていうんだ。慎重になるのは仕方ないよ』
『…………』
『それで、今日はどうかしたのかい?』
『……あの時、言うてくれはった言葉はほんまなんですやろか?』
『あの時……あぁ、もちろんだよ』
『ふぅ……』
『それが、なにか?』
『Pはん……立派なあいどる目指して精進しますから、うちの面倒みてくれはりません?』
『えっ……』
『どうぞよろしゅう申しあげます』
『あっ、いや頭は下げなくて良いよ』
『えっ、そうなんどすか?』
『ははっ、でもその気になってくれたんだな』
『えぇ、うち決心がつきましたわぁ』
『こちらこそ宜しく、一緒に頑張っていこう』
------
P(慎重なのは相変わらずなんだな……)
紗枝「きっと、Pはんにも迷惑かけてしまいますし……」
P「はぁ……そんな事考えてたのか」
紗枝「す、すんまへん……わがまま言うて」
P「良いんだよ、そういうのは言ってもらわないと困る」
紗枝「…………」
P「完璧にこなすのもそりゃ大事だけど、だからって失敗しては駄目って事はないさ」
紗枝「そうなんですやろか……」
P「ま、そりゃ人前に出てるんだから完璧を望む人もいるだろうけどな」
紗枝「やっぱり……」
P「でも、俺はそうは思わない。紗枝には紗枝の良さがある。それは失敗しようが変わらないよ」
紗枝「Pはん……」
P「大体15歳なのに考えがしっかりしすぎなんだ、もうちょっとゆるくいっても良いんだぞ」
紗枝「そないな事言われても……」
P「こうして見てると年相応なのにな」 ナデナデ
紗枝「も、もう! 子供扱いせんといておくれやす!!」
P「ははっ、紗枝が怒るのは久しぶりに見たよ」
紗枝「Pはんはいっつもそうやってうちの事を子供扱いするんやから!」
P「そりゃそうだ、年下だしな」
P「ま、ようは気にするなって事だ。自分がやりやすいようにやれば良い。紗枝ならきっと結果はついてくるさ」
紗枝「Pはんはほんまにいけずなんやから……」
P「……元気は出たか?」
紗枝「ふふっ、おおきに、Pはん……」
紗枝「あっ、Pはん……」
P「今度は何だ?」
紗枝「ううん、今日は星の綺麗な夜や思いましてなぁ」
P「あぁ、確かに空が澄んでるからよく見えるな」
紗枝「織姫と彦星は会えたんですやろか?」
P「大丈夫だ、晴れてるから」
紗枝「雨が降ったら会われへんのどすか?」
P「一応そう言われてるよ」
紗枝「それやったら晴れてて良かったどすなぁ……」
P「そうだな、これだけ綺麗なら絶好のデート日和だと思うよ」
紗枝「……Pはん? うちが織姫やったらPはんは彦星になってくれはりますやろか?」
P「……それはちょっと困るな」
紗枝「えっ……」
P「年に一度しか会えないのはごめんだよ」
紗枝「ふふっ、Pはんってちゃんと考えとるんどすなぁ」
P「普段から何も考えてないみたいな言い方だな……」
紗枝「そんな事ありまへんえ、Pはんはうちの事ようわかってくれとるなぁって……」
P「なんだそりゃ……ところで、紗枝はお願いはしてきたのか?」
紗枝「えぇ、ちゃんと笹に括りつけてきましたえ」
P「どんなお願いをしてきたんだ?」
紗枝「気になりますやろか?」
P「そりゃね、人のそういうのって聞きたくなるよな」
紗枝「ほんなら、Pはんにはうちの願い、教えたろかな……?」
------ 翌日……
P「今日も見事に晴れたな」
紗枝「うち、晴れ女なんどす。えへへ」
P「なるほどね、道理で紗枝といると雨が降らないわけだ」
紗枝「今日も晴れといて欲しかったさかい、昨日てるてる坊主を作ってたんどすえ」
P「相変わらず準備が良い事で」
紗枝「Pはん。今日なにしはるんどすか?」
P「特に何もないさ、好きな時に東京に帰るくらいだよ」
紗枝「じゃあ、鴨川の方に寄って行っても宜しいやろか?」
P「えっ? 昨日行ってなかったか?」
紗枝「また少しだけ見てみたくなったんどす」
P「少し離れてるけど、まぁそれくらいなら大丈夫だよ」
紗枝「ほんなら、少し寄って行きましょか」
------ 鴨川
P「着いたけど、ここに何かあるのか?」
紗枝「えへへっ、昨日うちが織姫でPはんが彦星って話しまへんでしたか?」
P「したけど、それがどうかしたのか?」
紗枝「ほんなら、初めて会えたここは天の川なんやなって……」
P「紗枝もロマンチックな事言うな」
紗枝「Pはんはそういうのは嫌いどすか?」
P「そもそも彦星ってガラじゃないからな……」
紗枝「そう言う事やないんやけど……」
P「でも、確かにあれから1年だもんな」
紗枝「なんにしろ、ここで会えたのは運命どすか?」
P「俺はそうだと思ってるよ」
紗枝「ふふ、心がほっこりするわぁ」
P「……あぁ、とびっきり綺麗な織姫に会えたんだから!」
紗枝「あっ……」
------
『……一つ、聞かせてもろても宜しいどすやろか?』
『あぁ、かまわないよ』
『なんで、うちに声をかけはったんどすか?』
『それは……とびっきり綺麗な織姫に会えたんだから!』
『えっ……お、織姫どすか?』
『あぁ……えっと、今日は七夕だからさ、そんな風に感じてね』
『……ふふっ、変なお人ですなぁ』
『ま、まぁそれは否定はできないけど……』
『でも、そう言われると嬉しゅうおすなぁ……』 ニコッ
------
ギュッ
P「あっ、おい! 紗枝!!」
紗枝「Pはん、もっと、お傍に来ておくれやす」
P「これ以上にないくらいに接近してるけど……」
紗枝「やっぱりPはんといると、ほっこりするわぁ」
P「あー、えーっと……そ、そうか……」
紗枝「Pはん……」
P「ん?」
紗枝「うち、あの時Pはんに出会えてほんまに良かったどすわぁ」
紗枝「Pはんには、ぎょーさん感謝しとるでぇ。これからも仲良ぅしてなぁ?」
P「……こちらこそ、宜しくな紗枝」
紗枝「えへへっ……」
------
P「さて、ここからまた長旅だな……」
紗枝「また、明日から忙しゅうなりそうどすなぁ」
P「ははっ、そうだな。仕事もいっぱい入ってきてるしな」
紗枝「心配ありまへん、うちももうあいどるやさかい」
P「期待してるよ」
紗枝「…………」
P「どうしたんだ、俺の顔に何かついてるか?」
紗枝「ふふっ、なんや嬉しそうな顔してはるなぁって……」
P「紗枝の方こそずっと笑ってるけど何かあったのか?」
紗枝「さぁ……ご自分で考えておくれやす」
P「意地悪な事言うね」
ギュッ
紗枝「ちゃんと答えられるまで手繋いでても宜しいやろか?」
P「……まったく」
紗枝「なぁ、Pはん……」
P「ん?」
紗枝「また来年の七夕もうちと一緒に星でも見たってやぁ」 ニコッ
おわり
ここまで読んで下さった方、ありがとうございます
七夕と言えば紗枝なので思いついたまま書きました
時間的に間にあわなかったけど
このスレはHTML化依頼を出しておきます
『もちろん今すぐというわけじゃない、じっくり考えて話を聞いてみようと思ったら連絡をくれたら良い』
『うち、連絡しまへんかも知れまへんえ?』
『その時はその時、スッパリと諦めるよ』
『ふふっ、熱心に勧誘しはる割にはえらいあっさりと引きさがりはるんどすなぁ』
『こういうのは相手の事情の方が大事だからね』
『……一つ、聞かせてもろても宜しいどすやろか?』
『あぁ、かまわないよ』
『なんで、うちに声をかけはったんどすか?』
『それは……』
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1373210840
------
P「…………」
小早川紗枝「あっ、Pはん。起きはったんどすか?」
P「寝てたのか、すまないな紗枝」
紗枝「別にかまいまへんえ、Pはんもたまにはゆっくりしはらんと……
P「ははっ、疲れてるとはいえ新幹線で寝るとは思って無かったよ」
紗枝「Pはん、みかん食べはります?」
P「……もらうよ」
紗枝「はい、どうぞ」
P「剥いてくれなくても良かったのに」
紗枝「ふふっ、大した手間やないさかい」
P「美味いね、そういやこうやってミカン食べるのはいつぶりだろうな」
紗枝「あんまり食べへんのどすか?」
P「果物って剥くのがめんどくさいからな」
紗枝「もう、それくらいちゃんとせんとあきまへんえ?」
P「紗枝はしっかりしてるよ」
紗枝「もう、そうやってはぐらかすんやから……」
小早川紗枝(15)
http://i.imgur.com/IB0FPQq.jpg
http://i.imgur.com/9I5Srnc.jpg
http://i.imgur.com/4e1Gqad.jpg
http://i.imgur.com/by5CqOe.jpg
紗枝「もう少しで着きますなぁ」
P「そうだな、東京から京都……わかっちゃいるけど長旅だよな」
紗枝「うちは慣れとるさかい、あんまり何とも思いまへんけどなぁ」
P「俺も慣れとかないといけないんだけどね」
紗枝「ふふっ、それやったらうちが毎月帰る時に一緒に帰りはります?」
P「それも良いかもな……」
紗枝「そないな事言って結局、行かへんつもりですやろ?」
P「んな事ないさ、今回は嘘じゃないよ」
紗枝「それやったら嬉しいんやけど……」
P「……にしても紗枝の両親に会うのも久々だな」
紗枝「前に会ったのお正月でしたやろか?」
P「そうだよ。はぁ……俺こういうの苦手だから……」
紗枝「別にPはんに対して悪う思うてる事なんてあらへんのに……」
P「契約更新か……紗枝を預かってるわけだしちゃんと面と向かって話さないとな……」
紗枝「うちも一緒におるさかい、気楽にしとくれやす」
------ 京都
P「今日は蒸し暑いのにやたらと人が多いな……」
紗枝「ふふっ、七夕の時期の京都も色々いべんとがありますしなぁ」
P「スーツの俺にはきつい場所だよ……」
紗枝「あっ……」
P「どうしたんだ?」
紗枝「Pはん、覚えてますやろか?」
P「なにを……」
紗枝「この橋の上、鴨川がよぉ見えるこの場所でうちら初めておうたんどすえ……」
P「…………」
紗枝「ふふっ、思いだしてくれはりました?」
P「あぁ、あの時も丁度七夕だったな」
紗枝「Pはん、ちょっとここで見ていってもいいですやろか」
P「かまわないよ、でも暑いし日陰にいようか」
紗枝「おおきに……」
紗枝「…………」
P「…………」
紗枝「…………」
P「なぁ、さっきからボーッと空を見てどうしたんだ?」
紗枝「…………」
P「おーい、紗枝」
紗枝「あっ、Pはん……どうしはったんどすか?」
P「いや、紗枝の反応がないから……」
紗枝「そ、そうやったんどすか……すんまへん」
P「いや、別に良いけどどうしたんだ。こんなにボーッとしてるなんて珍しいよな」
紗枝「ふふっ、ちょっとこんな風に京都の空を見るのが懐かしゅうて……」
P「東京とそんなに変わるもんなのか?」
紗枝「んー……故郷の空ゆうのもやっぱり違うもんどすえ」
P「そっか、俺も東京を離れたらそう思うのかね」
紗枝「きっと、Pはんもそう思うようになると思いますわぁ」
P「……うし、そろそろ挨拶を済ませちゃおうか」
紗枝「えぇ、そろそろ行きましょか……」
------ 喫茶店
P「はぁー……終わった終わった……」
紗枝「Pはん、はばかりさんどしたなぁ」
P「これで今日の仕事は半分終わりか……」
紗枝「でも、Pはん。なんでうちで休んでいかへんのどすか?」
P「小市民の俺にはお金持ちの家って落ち着かないんだよ」
P「話ししてた所だって何畳あるんだあれ……」
紗枝「ふふっ、そんなん気にせんでええのに」
P「紗枝じゃなくて俺が気にするんだよ」
紗枝「両親もPはんの事は気に入っとりますし、たまにはゆっくりしていきはったらどうどすか?」
P「俺のハートが鍛えられたらそうするよ」
紗枝「じゃあ、そうなったらうちに教えとくれやす」
P「わかったよ……」
紗枝「Pはん、この後はお仕事どすか?」
P「あぁ、少し後になるけど、イベントにちょっとな」
紗枝「でも、うちなんも用意しとりまへんえ?」
P「そりゃそう言ってたからな。準備はしてくれてるから大丈夫だよ」
紗枝「そうどすか、終わるのは夜になりそうどすなぁ」
P「あぁ、夕方開始のイベントだからな。今日は仕事が終わったら紗枝はそのまま実家に泊って明日に戻ろうか」
紗枝「……Pはん? 仕事までに遊んで行く時間はありますやろか?」
P「ん? 別にかまわないけどどうかしたのか?」
紗枝「ふふっ、それやったらうちに付き合ってもろても宜しいですやろか?」
P「まぁ、良いけど……」
------
紗枝「人がようさんおって、夏の京都いう感じがしますなぁ」
P「今日は混んでる方なのか?」
紗枝「そうどすなぁ、でも祇園祭の時とかはもっとようさんの人が来はりますえ?」
P「これ以上来るなんて想像したくないな……」
紗枝「ふふっ、地元のうちらもその時期はあんまり出かけまへんしな」
P「ふーん、地元の祭りなのに地元の人が見ないってのも変な感じだな」
紗枝「いえ、うちはちゃんと場所をとってもろていつもそこから見てますえ」
P「その方が良いだろうな、あんまり人ごみの中に居るのは良くないしな」
紗枝「そう言えば今日のいべんとは他の方も来られるんどすか?」
P「ん? あぁ、直接は会わないけど何人か他のアイドルも来る予定だよ」
紗枝「そうどすか……」
P「それがどうかしたのか?」
紗枝「いえ、他の人等と比べてうちってどうなんやろなって……」
P「…………」
------
『連絡をくれて嬉しいよ、アイドルについて聞きたいんだよね。何でも聞いてもらって構わないから』
『えぇ、遠いとこわざわざすんまへんなぁ』
『気にしなくて良いよ、これくらいはしないとね』
『あの、うちまだようわかってへんのやけど……あいどるって何をするんですやろか?』
『ん、そうだな……基本的にはテレビで見てるイメージが近いと思うけど』
『あんまりてれびは見いひんから……』
『そうか、簡単に言うならファンのためにステージで歌ったり、色んなイベントに参加したりするんだよ』
『ふぁんどすか?』
『そう、活動を続けていくと君の事を応援してくれる人が増える。その人達の声に答えていくのさ』
『なんや、むずかしそうどすな……うち、歌とかできまへんし……』
『ははっ、今すぐそう言う事を始めるわけじゃないさ。ちゃんとレッスンを受けて、そこからデビューだよ』
『うちにそんなことできますやろか?』
『そうだな、俺はそう思ってるよ』
『……やっぱり少し考えさせてもろても宜しいですやろか?』
『……わかった、また気になる事があったら連絡して欲しい』
------
P(そう言えば、昔も似たような事言ってたな……)
紗枝「Pはん?」
P「……えっ? な、何か用か?」
紗枝「ふふっ、今度はPはんがボーッとしてましたえ?」
P「あぁ、すまないな。ちょっと考え事してたよ」
紗枝「そうどすか、でもちゃんと前を見とかんと危ないどすえ?」
P「ははっ、わかってるって」
紗枝「それやったらええんどすけど……あっ」
ガシッ
P「言ってる方がこけそうになってるなら世話ないよな」
紗枝「す、すんまへんPはん……」
P「かまわないよ、ちょっと歩きづらいしな」
紗枝「…………」
P「どうしたんだ?」
紗枝「あ、あの……はぐれたら危ないですし……」
P「あぁ、怪我しそうになるよな」
紗枝「それにさっきみたいにこけそうになったら……」
P「そうだな、危ないから手を繋いどこうか」
紗枝「は、はいっ……えへへっ……」
------ イベント会場
P「準備はできたか?」
紗枝「Pはん、この衣装って……」
P「ははっ、七夕の織姫の衣装だよ。七夕以外で使ってたのがほとんどだけどな」
紗枝「ふふっ、言われてみればそうどしたなぁ」
P「本来は七夕の夜に着てこそだからな、ここに来る前に運んでおいたんだよ」
紗枝「おおきに、Pはん……」
紗枝「年に一度きり、星の綺麗な綺麗な夜に、ぴったりの一張羅になりそうどす」
P「喜んでもらえて良かったよ」
紗枝「この衣装に負けへんような舞をお披露目いたしますえ」
P「頑張ってこいよ、紗枝の地元でのステージだしな」
紗枝「……Pはん」
P「ん?」
紗枝「うち、Pはんの織姫になれとりますやろか……」
P「……どういうことだ?」
紗枝「や、やっぱり何でもありまへん!」
P「そ、そうか……」
紗枝「ふふっ、うちがんばってくるさかい、よう見とっておくれやす」
------ 帰り道
P「盛況だったな、今日のイベント」
紗枝「地元にあんなに沢山応援してくはる人がおったんどすなぁ」
P「まぁ、東京からじゃ気づきにくいだろうけど出身地の人達って応援してくれる人は多いもんだよ」
紗枝「うち、ちゃんとできてましたやろか……」
P「文句なしさ、流石は紗枝」
紗枝「…………」
P「……どうしたんだ?」
紗枝「うち、しっかりしてる風に見えとるだけどす……」
P「…………」
紗枝「昔からそう、周りにそう言う風に言われてそうせなあかんって思うて……」
紗枝「Pはん、うち失敗するのが凄く怖いんどす……」
P「失敗が怖い?」
紗枝「なんやろ、今まで期待してくれた人等がそんなうちを見て残念に思うんやないかて……」
------
『何度も来てもらってすんまへん……』
『昨日まで普通にしてたのに急にアイドルになるっていうんだ。慎重になるのは仕方ないよ』
『…………』
『それで、今日はどうかしたのかい?』
『……あの時、言うてくれはった言葉はほんまなんですやろか?』
『あの時……あぁ、もちろんだよ』
『ふぅ……』
『それが、なにか?』
『Pはん……立派なあいどる目指して精進しますから、うちの面倒みてくれはりません?』
『えっ……』
『どうぞよろしゅう申しあげます』
『あっ、いや頭は下げなくて良いよ』
『えっ、そうなんどすか?』
『ははっ、でもその気になってくれたんだな』
『えぇ、うち決心がつきましたわぁ』
『こちらこそ宜しく、一緒に頑張っていこう』
------
P(慎重なのは相変わらずなんだな……)
紗枝「きっと、Pはんにも迷惑かけてしまいますし……」
P「はぁ……そんな事考えてたのか」
紗枝「す、すんまへん……わがまま言うて」
P「良いんだよ、そういうのは言ってもらわないと困る」
紗枝「…………」
P「完璧にこなすのもそりゃ大事だけど、だからって失敗しては駄目って事はないさ」
紗枝「そうなんですやろか……」
P「ま、そりゃ人前に出てるんだから完璧を望む人もいるだろうけどな」
紗枝「やっぱり……」
P「でも、俺はそうは思わない。紗枝には紗枝の良さがある。それは失敗しようが変わらないよ」
紗枝「Pはん……」
P「大体15歳なのに考えがしっかりしすぎなんだ、もうちょっとゆるくいっても良いんだぞ」
紗枝「そないな事言われても……」
P「こうして見てると年相応なのにな」 ナデナデ
紗枝「も、もう! 子供扱いせんといておくれやす!!」
P「ははっ、紗枝が怒るのは久しぶりに見たよ」
紗枝「Pはんはいっつもそうやってうちの事を子供扱いするんやから!」
P「そりゃそうだ、年下だしな」
P「ま、ようは気にするなって事だ。自分がやりやすいようにやれば良い。紗枝ならきっと結果はついてくるさ」
紗枝「Pはんはほんまにいけずなんやから……」
P「……元気は出たか?」
紗枝「ふふっ、おおきに、Pはん……」
紗枝「あっ、Pはん……」
P「今度は何だ?」
紗枝「ううん、今日は星の綺麗な夜や思いましてなぁ」
P「あぁ、確かに空が澄んでるからよく見えるな」
紗枝「織姫と彦星は会えたんですやろか?」
P「大丈夫だ、晴れてるから」
紗枝「雨が降ったら会われへんのどすか?」
P「一応そう言われてるよ」
紗枝「それやったら晴れてて良かったどすなぁ……」
P「そうだな、これだけ綺麗なら絶好のデート日和だと思うよ」
紗枝「……Pはん? うちが織姫やったらPはんは彦星になってくれはりますやろか?」
P「……それはちょっと困るな」
紗枝「えっ……」
P「年に一度しか会えないのはごめんだよ」
紗枝「ふふっ、Pはんってちゃんと考えとるんどすなぁ」
P「普段から何も考えてないみたいな言い方だな……」
紗枝「そんな事ありまへんえ、Pはんはうちの事ようわかってくれとるなぁって……」
P「なんだそりゃ……ところで、紗枝はお願いはしてきたのか?」
紗枝「えぇ、ちゃんと笹に括りつけてきましたえ」
P「どんなお願いをしてきたんだ?」
紗枝「気になりますやろか?」
P「そりゃね、人のそういうのって聞きたくなるよな」
紗枝「ほんなら、Pはんにはうちの願い、教えたろかな……?」
------ 翌日……
P「今日も見事に晴れたな」
紗枝「うち、晴れ女なんどす。えへへ」
P「なるほどね、道理で紗枝といると雨が降らないわけだ」
紗枝「今日も晴れといて欲しかったさかい、昨日てるてる坊主を作ってたんどすえ」
P「相変わらず準備が良い事で」
紗枝「Pはん。今日なにしはるんどすか?」
P「特に何もないさ、好きな時に東京に帰るくらいだよ」
紗枝「じゃあ、鴨川の方に寄って行っても宜しいやろか?」
P「えっ? 昨日行ってなかったか?」
紗枝「また少しだけ見てみたくなったんどす」
P「少し離れてるけど、まぁそれくらいなら大丈夫だよ」
紗枝「ほんなら、少し寄って行きましょか」
------ 鴨川
P「着いたけど、ここに何かあるのか?」
紗枝「えへへっ、昨日うちが織姫でPはんが彦星って話しまへんでしたか?」
P「したけど、それがどうかしたのか?」
紗枝「ほんなら、初めて会えたここは天の川なんやなって……」
P「紗枝もロマンチックな事言うな」
紗枝「Pはんはそういうのは嫌いどすか?」
P「そもそも彦星ってガラじゃないからな……」
紗枝「そう言う事やないんやけど……」
P「でも、確かにあれから1年だもんな」
紗枝「なんにしろ、ここで会えたのは運命どすか?」
P「俺はそうだと思ってるよ」
紗枝「ふふ、心がほっこりするわぁ」
P「……あぁ、とびっきり綺麗な織姫に会えたんだから!」
紗枝「あっ……」
------
『……一つ、聞かせてもろても宜しいどすやろか?』
『あぁ、かまわないよ』
『なんで、うちに声をかけはったんどすか?』
『それは……とびっきり綺麗な織姫に会えたんだから!』
『えっ……お、織姫どすか?』
『あぁ……えっと、今日は七夕だからさ、そんな風に感じてね』
『……ふふっ、変なお人ですなぁ』
『ま、まぁそれは否定はできないけど……』
『でも、そう言われると嬉しゅうおすなぁ……』 ニコッ
------
ギュッ
P「あっ、おい! 紗枝!!」
紗枝「Pはん、もっと、お傍に来ておくれやす」
P「これ以上にないくらいに接近してるけど……」
紗枝「やっぱりPはんといると、ほっこりするわぁ」
P「あー、えーっと……そ、そうか……」
紗枝「Pはん……」
P「ん?」
紗枝「うち、あの時Pはんに出会えてほんまに良かったどすわぁ」
紗枝「Pはんには、ぎょーさん感謝しとるでぇ。これからも仲良ぅしてなぁ?」
P「……こちらこそ、宜しくな紗枝」
紗枝「えへへっ……」
------
P「さて、ここからまた長旅だな……」
紗枝「また、明日から忙しゅうなりそうどすなぁ」
P「ははっ、そうだな。仕事もいっぱい入ってきてるしな」
紗枝「心配ありまへん、うちももうあいどるやさかい」
P「期待してるよ」
紗枝「…………」
P「どうしたんだ、俺の顔に何かついてるか?」
紗枝「ふふっ、なんや嬉しそうな顔してはるなぁって……」
P「紗枝の方こそずっと笑ってるけど何かあったのか?」
紗枝「さぁ……ご自分で考えておくれやす」
P「意地悪な事言うね」
ギュッ
紗枝「ちゃんと答えられるまで手繋いでても宜しいやろか?」
P「……まったく」
紗枝「なぁ、Pはん……」
P「ん?」
紗枝「また来年の七夕もうちと一緒に星でも見たってやぁ」 ニコッ
おわり
ここまで読んで下さった方、ありがとうございます
七夕と言えば紗枝なので思いついたまま書きました
時間的に間にあわなかったけど
このスレはHTML化依頼を出しておきます
11:30│小早川紗枝