2015年03月04日

三船美優「そういう人だったんですね」

美優「想いを込めたのに…」



P「え?」



美優「バレンタインのチョコレートは、大切な一個だけじゃないんですか…」





P「いえ、その」



美優「そういう人だったんですね」



美優「……ごめんなさい」タッ



P「三船さん、待って下さい!?」ダッ



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―2月上旬 事務所―



P「分かりました。…12日ですね。…はい、こちらこそよろしくお願いします。失礼いたします」ピッ



P「ハァ……」



ちひろ「溜め息なんてついて、どうしたんですか?」



P「それが、12日から14日まで事務所を離れないといけなくなりました」



ちひろ「出張ですか?」



P「ええ。他のプロダクションが開催するイベントのアドバイザーとして泊まり掛けで現地へ」



ちひろ「……突然ですね」



P「現地入りするはずのPが病気で行けなくなり、急遽代理で」



ちひろ「なるほど」

ちひろ「14日には帰って来れるんですか?」



P「終わる時間が遅いので、恐らく無理ですね……」



ちひろ「そうですか……14日どうしましょう?」



P「ウチのはあまり大きなイベントではないので、皆にお任せしようかと」



ちひろ「それも有りますが、14日は」



P「バレンタインデーですか。当日受け取れないのは少し残念ですが、仕方ありませんね」



ちひろ「貰えるあてがあるんですね」ニコッ



P「あ、ええ……何人かに当日の夜は空けておくよう言われたので……」



ちひろ「ええっ!?でしたら、お仕事を他の方に……」



P「プライベートを理由に断れませんよ。先方には僕が行くと伝えてあるみたいですし」



P「今からこの事をレッスンルームにいるアイドルに伝えて来ます」ガタ



バタン

―レッスンルーム―



コンコンコン



P「失礼します」ガチャ



聖來「ん、プロデューサー?お疲れさまー」



奈緒「お疲れさま。どうしたんだ?」



P「少し話が、休憩中ですか?」



真奈美「ああ、丁度区切りがいいところだ。それで、用はなんだ?」



P「12日から14日に急遽出張が入ったので、その連絡を」



聖來「出張って、Pさん一人で?」



奈緒「その間Pさんこっちに居ないのか?」



P「泊まり掛けだからそうなるね」



奈緒「そうなんだ……」

真奈美「その間のイベントは私たちだけでやることになるのか?」



P「はい。よろしくお願いします」



真奈美「ああ、任せてくれ」



聖來「14日の夜はこっちに居るの?」



P「遅くまで向こうに居るから14日には帰ってこれないと思う」



聖來「えー。チョコ渡すから空けておいてって言ったのに」



P「ごめん。この仕事は断れないんだ」



聖來「…まあ、仕事なら仕方ないよね」



奈緒「あ、あのさ!材料とかもう買っちゃったからさ、出張行く前に渡していい……よな?」



P「……それで良いなら、僕は構わないけど」



奈緒「じゃあ、そうするから!……材料無駄にするのも嫌だし」



聖來「奈緒と一緒に、アタシも渡そっかな」



真奈美「想いを伝えるなら後回しにするよりも早い方が良いだろうからね」



奈緒「想いって……アタシは別にそう言うつもりじゃ……」



真奈美「私は日頃の感謝の想いの事を言ったつもりだが、奈緒は違うのかな?」



奈緒「なっ!?違うぞ!違うっていうのは、アタシも伝えるのは感謝って事だからな!!Pさん笑うなよ!」



P「そんなに慌てなくても」ハハハ



奈緒「笑うなって!」

―その頃 事務所―



ガチャ



美優「おはようございます」ペコリ



ちひろ「おはようございます、美優ちゃん!」



美優「あら……ちひろちゃんひとり?」



ちひろ「はい。プロデューサーさんならトレーニングルームに居ます。すぐに戻ると思いますよ」



美優「それなら、ここで待ってても良いですか……?」



ちひろ「ええ。私、お茶いれますね!」



美優「いえ、自分でやるので……お仕事続けてください」



ちひろ「いえいえ、これもアシスタントの仕事の内ですから」



美優「ありがとうございます……」

ちひろ「……バレンタインの予定はどうなってますか?」カチャカチャ



美優「その……何も決まってません……」



ちひろ「ええっ!?ダメじゃないですか、ただでさえ競争相手が多いんですから」



美優「聖來ちゃん達が14日の夜に約束してるみたいで……私もその時に一緒に……」



ちひろ「美優ちゃん、それは無理なの」



美優「え?」



ちひろ「プロデューサーさん、急な出張が入って14日はこっちには居ないんです」



美優「そうなんですか……」シュン



ちひろ「プロデューサーさんの出張は12日からなので、その日までにチョコを渡しましょうよ!」



美優「はい」



ちひろ「その為には、ちゃんと二人の時間を作らないと駄目ですからね。他の人のついでなんてもっての他ですよ!」



美優「そうですよね……」

美優「11日にお仕事で一緒になるので、その帰りにでも……」



ちひろ「いいですね!後はどんなチョコを渡すかです」



美優「どんなチョコレートが良いんでしょうか……?」



ちひろ「そこは自分で考えないと!ちゃんと想いを伝えられる素敵なものを作りましょう」



美優「はい……頑張ってみます」



ちひろ「……それにしても、プロデューサーさん遅いですね」



美優「私、一旦トレーニングルームに行ってきます」



ちひろ「はい。入れ違いにならないように気をつけてください」



美優「はい」



ガチャ



美優「ちひろちゃん、話を聞いてくれて……ありがとうございます」



ちひろ「頑張ってくださいね」ニコッ



バタン

美優(約束はしなくても、大丈夫かな)



美優(どんなチョコレートにすれば、喜んでくれるのかしら……)



美優(あまり凝った物は作ったこと無いし)



美優(……真奈美さんに聞けば良いアドバイス貰えるかな)



美優(あ、このエレベーターにPさんが乗ってたりして……)



チーン



美優(良かった…心の準備ができてなかったから…)



美優(……髪の毛乱れてたりしないよね…服も変じゃない…よね?)

―トレーニングルーム―



聖來「なんでも良いは一番困るよ!ケーキがいいとか、クッキーがいいとか、無いの?」



P「って言われても…甘いものは何でも好きだから」



真奈美「とりあえず、保存は利いたほうがいいか。沢山受け取るだろうからね」



P「いえ、沢山は……そうですね、ある程度保存出来ると助かります」



奈緒「長持ちするのか……チョコとかあんまり作ったこと無いし、味の保証は出来ないからな!」



P「大丈夫、貰えるだけで嬉しいよ」



真奈美「貰って満足するんじゃなくて、ちゃんと味わって欲しいね」



聖來「そうだよ!アタシ、頑張って作るから!」



P「それは、言葉のアヤと言うか……全部大事に食べますよ」



奈緒「食べ過ぎて太ったりして」



真奈美「そうなったらトレーニングを一緒に見てあげよう」



P「気をつけますよ」ハハハ

P「すっかり話し込んじゃいましたね。打ち合わせが有るので僕はこの辺で」



真奈美「美優にも、この事を話しておくんだぞ」



P「わかっています。それでは、失礼します」ガチャ



バタン



P(太ったらトレーニングか……階段使おう)





聖來「木場さん、チョコレートどうしよう」



真奈美「菓子作りは料理とは違うから、私はあまりアドバイス出来ないよ」



聖來「ええー。当てにしてたのに……」



真奈美「向こうだとバレンタインは全く違うイベントだったから、こういう経験も無いよ」



奈緒「聖來は手作りチョコとかって経験無いのか?」



聖來「そりゃ、多少はあるけど……失敗したくないし」



真奈美「ところでふたりとも、休憩が長引いてるからそろそろレッスンを再開しよう」



「「はーい」」

ガチャ



美優「……失礼します」



聖來「お疲れさま―。って、美優さん?」



美優「お疲れ様です。Pさんがこちらに居ると聞いたんですが……」



真奈美「さっき出て行ったよ、すれ違わなかったか?」



美優「いえ……」



奈緒「入れ違い?」



美優「そうみたいですね……お邪魔しました」



真奈美「あ、少しいいか美優。Pの出張の事は聞いたかい?」



美優「はい。ちひろちゃんから」



真奈美「そうか、それなら良かった」



奈緒「あたしたち、チョコを出張の前日に渡す約束だけど美優さんは?」



聖來「予定決まってないなら一緒に渡す?」



美優「予定は……立ててます」



聖來「そうなんだ。ちょっと意外かも……悪い意味じゃないよ?」



美優「……分かってます。それでは、お邪魔しました」



バタン

聖來「怒らせちゃったかな」



真奈美「そんな一言で怒るような人じゃない。知ってるだろう?」



聖來「うん。でも、失礼だったかなって」



真奈美「まあ、そうかもしれないが、私も同じように感じたからなあ」



奈緒「美優さんがもう約束してるなんてなー」



聖來「あれ?Pさんの出張決まったのってさっきなんだよね、美優さん約束いつしたんだろ」



奈緒「確かに、ちひろさんに聞いたってことはPさんとは話してないだろうし」



真奈美「予定は立っていると言ってたんだ、私達が気にすることではないだろう。いい加減レッスンを再開するよ」



「「はい」」

美優(さっき、真奈美さんにアドバイス貰えばよかったかも……)



美優(でもPさんを待たせるのも悪いし……また次の機会に)



「…さん?」



美優(入れ違いに気をつけるように言われたのに……ちひろちゃんに呆れられちゃうかな)



「……三船さん?」



美優(大丈夫、そんな風に考える人じゃないもの)



P「三船さんっ」



美優「…!…Pさんっ!?」



P「どうしました、考え事ですか?」



美優「は、はい……少しぼーっとしていて」



美優(どうしてここにPさんが?……部屋にいるんじゃ…?)



P「怪我したら大変ですから、気を付けてくださいね」



美優「はい……気をつけます」



美優(追い抜いたのかしら?)



美優「……あ、階段を使ったんですか?」



P「え?…ええ。少しでも運動しようかなと思いまして」



美優「さっきレッスンルームに行ったのですが……姿が見えなかったので」



P「お手数かけてすみません。立ち話もなんですし、中で話しましょう」

゙チャ



P「戻りました」



美優「……」ペコリ



ちひろ「おかえりなさい、会えたんですね」



P「ええ、すぐそこで。三船さん、資料を用意するので奥で待っていて下さい」



美優「はい。分かりました」



ちひろ「美優ちゃん」コソッ



美優「はい?」



ちひろ「バレンタインの話、出来ましたか?」ヒソヒソ



美優「いえ……」



ちひろ「じゃあ、この後に…?」



美優「え?ええ…そうします……」



ちひろ「プロデューサーさん、用が有るので私、少し席を外しますね」



P「はい」



ちひろ「頑張って下さいね」ヒソッ



美優「は…はい」

P「当面のスケジュールはこんな感じです。変更が有ったら都度連絡をします」



美優「はい……」サラサラ



P「何か質問は有りますか?」



美優「えぇと……その……」



P「仕事に関係ない事でも、どんな質問でもいいですよ」



美優「……バレンタインの事なんですが、聖來ちゃんたちと同じように……先にお渡ししても良いでしょうか……?」



P「はい。構いませんよ」



美優「それと……Pさんは、どんなチョコレートが好きですか?」



P「どんなものでも好き。と、言うのは良くないらしいので。そうですね、生チョコレートと言うんですかね、それが気に入ってます」



美優「生チョコレート……ですね」カキカキ



P「作るのが大変でしたら、他のものでも良いですからね。頂けるだけでも十分嬉しいので」



美優「頑張って作ります……」



P「……はい。楽しみにしてます」

* * *



ちひろ「好きなものも聞けたんですか?やりましたね!」



* * *



真奈美「生チョコレートなら比較的簡単にできるよ。ただ、傷みやすいから温度には気を使った方がいい」



* * *



聖來「メッセージカードとか入れるとか?言葉だと恥ずかしくて言えない事も伝えられるし」



* * *



奈緒「レシピ通り作っても上手くいかないんだよなー。その度に食べてるから体重計が怖かったり……」



* * *



留美「気温も低いからそこまで気にしなくても大丈夫よ。どうしても気になるなら保冷バッグを使えばいいんじゃない?」

―出張前日 スタジオ―



「おつかれさまでしたー」



美優「お疲れ様でした」



P「お疲れ様です。レコーディング、いつもより時間かかりましたね。何か悩み事でも?」



美優「すみません……すこし、気がかりな事があって……」



P「いえ、時間内には終っていますし、その分良い物が録れたので。それで気がかりな事ってなんですか?」



美優「えぇと…その……個人的な事なので、大丈夫です」



P「分かりました。僕で良ければ話し相手になるので、いつでも言ってください」



美優「ありがとうございます」

P「日が有ると暖かいですね」



美優「そうですね」



P「僕は事務所に戻りますが三船さんはどうします?」



美優「その…寄り道をしたいのですが……」



P「ええ、構いませんよ」



美優「Pさんに少し用が有ってですね……」



P「僕にですか?なんでしょうか?」



美優「明日からPさんは出張なので、少し早いですが……」ガサゴソ

美優「Pさん!」



美優「Pさんへの想いを込めて…手作りしました。私にはこれくらいしかできませんが…喜んでいただければ…」



P「あっ、ありがとうございます!」



美優「Pさんの喜ぶ顔が見られたので安心しました。こんな近くで笑顔がみられるのは…嬉しいことです」



P「その…なんて言えばいいのか……」



P「今貰えるとは思ってなかったので、ビックリしてしまって……えっと、とても嬉しいです」



美優「……///」モジ



P「お返しはちゃんとしますので、期待していてください」



美優「はい、楽しみにしてますね」

P「ところでこの箱、少しひんやりしてるような……?」



美優「保冷剤で冷やしていたので……そのせいかもしれません」



P「そんなわざわざすみません。もしかして、今日気がかりだったことってこれのことですか?」



美優「はい…すみません」



P「少し溶けてたりしても気にしませんから、安心してください」



美優「はい……傷みやすいので、早めに召し上がっていただけると……」



P「分かりました」



美優「では私はこれで失礼します。出張、お気をつけてください」



P「はい。ありがとうございました」

―その夜 事務所―



P「メールチェック終わりっと。後は……」



ちひろ「プロデューサーさんお疲れ様です。アイドルの皆さん今夜渡すんだ―って張り切ってましたよ」コトッ



P「お疲れ様です。なんだか、僕も緊張してしまって」



ちひろ「特別な日ですからね、チョコレートだけじゃなくて、しっかりキモチも受け止めてあげてくださいね」



P「ええ」



ちひろ「そういえば、美優ちゃんからは受け取りましたか?」



P「はい。一度帰って家の冷蔵庫に仕舞いました。なんだか、その美優ちゃんというのにも慣れましたね」



ちひろ「プロデューサーさんが言い出したんじゃないですか、下の名前で呼べば距離が近づくって」



P「いえ、まさかちゃん付けとは思わなくて」



ちひろ「どうせならと思いまして。それに、美優ちゃんからもちひろちゃんと呼ばれててなんだか嬉しいんですよ」

ガチャ



聖來「戻りましたー」



ちひろ「お疲れ様でーす」



P「お疲れ様」



聖來「あ、Pさん!えーっと、会議室でいい?」



P「え…?ああ、いいよ。行こう」ガタ



バタン



ちひろ「あまり聞き耳を立てるのは良くないんでしょうけど……」ソローリソローリ

* * *



『ちょっと気合を入れて大きなハートのチョコレートを用意したんだ!Pさんに渡すなら、ハートの形がいいから♪』



『ハート?それって……』



『ふふっ、Pさんになら私のハートあげてもいいなって思ったからね♪深い意味はないけど!』



『なら、こっちのハートはセイラのダンスに奪われてるからおあいこかもね』



『……///それはPさんのおかげっていうか……』



「ちひろさん?」トントン



ちひろ「はいぃっ!?」



奈緒「どうしたんだ?ドアに張り付いて」



ちひろ「それはえーっと……そんなことはさておき、奈緒ちゃん、チョコレートの準備はいいですか?」



奈緒「えっ?一応、持ってきてるけど……」



ちひろ「今、聖來ちゃんがプロデューサーさんにチョコを渡しています。終わったら奈緒ちゃんの番ですよ」



奈緒「う、うん!心の準備しておく…!」

ガチャ



聖來「それじゃあ、来月、期待してまってるからね!出張頑張ってね!」



P「分かってるよ。ありがとう、セイラ」



奈緒「早っ!?」



P「奈緒、お疲れ様」



奈緒「お、おつかれさま」



ちひろ「奈緒ちゃんもPさんに用が有るみたいですよ」



P「ん?奈緒の用事は何?」ニヤニヤ



奈緒「え、あー。分かるだろ?」



聖來「分かる?今日は何か特別な日だっけ?」ニヤ



奈緒「あぁ、もう。だから……」



ちひろ「皆の前で話しにくいことなら会議室を使ってくださいね」



奈緒「い、行くぞPさん!」

『ほ、ほら、Pさん受け取れよ』



『これは何?』



『何って…い、言わなくても分かるだろ!あぁ、もう!バレンタインのチョコだよバカー!』



『ありがとう、奈緒。もちろん、最初から分かってたけど、つい』



『うぅ…またアタシに恥ずかしい思いさせやがって…。Pさんのせいだからな!忘れないからな!』



『奈緒は照れてる方が可愛いから、奈緒のせいでも……』





聖來「ねえねえちひろさん。もしかして、アタシの時も聞いてた…とか?」



ちひろ「そんなこと……ない、ですよ?」メソラシ



聖來「嘘を付くならもう少し分かりにくくしようよ……」



ちひろ「すみません。その…気になって……ですが、途中から奈緒ちゃんが来たので聞いてないですよ!」



聖來「いや、良いんだけど……アタシも同じ事してるわけだし……」



「聞き耳を立てるのは良くないな、ふたりとも」



「「き、木場さん!」」



真奈美「この様子だと聖來は渡したみたいだね」



聖來「うん。今奈緒が渡してるから、最後は木場さんだよ」



ガチャ



奈緒「だからぁ!味の保証はしないって!」



P「どんな物でも奈緒から貰ったことに変わりないよ」



奈緒「だから…そういうこと言う……///」



真奈美「オホン。明日にも響く、手早く済ませよう」



P「木場さん、お疲れ様です」



真奈美「お疲れ様。今日のレッスンの内容は追ってメールするとして、約束のものを」ゴソゴソ



真奈美「P、料理ならいくらでもするが、お菓子作りはそこそこでしかなくてね。まぁ、食べて判断してみてくれ」



P「ありがとうございます、木場さんの手作りなら美味いに決まってますよ」



真奈美「自分では納得している、ぜひ感想を聞かせてくれ」

真奈美「まさか私がバレンタインに手作りとはね…。まぁ、それだけPには感謝しているということさ」



P「こちらこそ、木場さんにはお世話になりっぱなしで……」



真奈美「勘違いから始まった関係とはいえ、毎日充実しているよ。礼を言う」



P「木場さんのプロデューサーで良かったと、改めて思います」



真奈美「これからもよろしく。さて、時間も遅いから帰ろうか、特に奈緒はギリギリなんじゃないか?」



奈緒「げ、本当だ」



真奈美「Pは明日の準備も有るだろうし、私が車で送ろう」



P「ありがとうございます」



奈緒「ありがとう、木場さん」



聖來「私も乗ってっていい?」



真奈美「構わないが、遅くなるかもしれないよ?」



聖來「アタシ23だよ?大丈夫だって」



真奈美「それもそうか。私達は先に上がるよ。それじゃあ出張後に会おう」



「「おつかれさまでしたー」」

―その後 P宅―



P(これが聖來から、奈緒から、木場さんから……どれから開けよう)



trrrrtrrrr



P「出張するはずだったPさんか?どうしたんだろう」



ピッ



P「はい、Pですが……はい、その件については……」



P「ええ、ええ…分かりました、明日の早くにそちらに伺います。時間は……」



* 十数分後 *



P「医者から許可が降りたらこちらに…?……はい……はい」



P「確認したいことが有ればこちらから電話します。それでは、失礼します」



ピッ



P(長引いたな。朝も更に早くなったし、冷蔵庫にしまって帰ってきてからゆっくり食べよう)



* * *

―P出張最終日(予定)14日 朝 事務所―



ちひろ「事務所の電気が付いてる。誰か居るんでしょうか?」



ガチャ



ちひろ「……おはようございまーす」



P「おはようございます」



ちひろ「プロデューサーさん!?どうしたんですか?」



P「それが、担当だったPが完治して、代役の僕は必要なくなったので帰ってきました」



ちひろ「でしたら、決まった時に連絡下さればよかったのに」



P「向こうを出たのが遅く、タイミングが無かったので……これ、今回の出張の領収証です」



ちひろ「はい、確かに……夜行バスということは、もしかしてさっき着いたんですか?」



P「はい。荷物を置いたりしに一度家には帰りましたよ?」

ガチャ



聖來「おはよーございまー……Pさん!?」



真奈美「ん?Pがいるのか、明日まで顔出さないはずじゃなかったか?」



P「おはようございます。それが、――――というわけで」



真奈美「なるほどね、それじゃあ今日のイベントは?」



P「同行します」



聖來「やった!」



真奈美「こうなるなら早めに渡すんじゃなかったな。手渡し会にPも参加したらどうだい?」



P「裏方に徹しますよ」



聖來「ねえ、Pさんもうチョコレート食べた?」



P「ううん、今から」



聖來「今から?」

P「この通り、持ってきてるんだ」



聖來「アタシがあげたやつだ、じゃあ残りの2つは木場さんと奈緒の?」



P「うん。この保冷バッグには三船さんのも入ってるよ」



真奈美「あー、生チョコレートと言っていたな」



聖來「ねえ、一回アタシの返してもらっていい?」



P「いいけど、どうして?」



聖來「ふふふっ……いいから」



P「?」



聖來「ハッピーバレンタイン♪渡すなら、やっぱり当日がいいから!」



P「ありがとう」」

真奈美「それなら私も改めて、ハッピーバレンタイン」



P「ありがとうございます」



真奈美「……それでひとつ提案なんだが、私の贈ったもの、ブラウニーなんだが量も多めだし分けて食べないか?」



P「いいんですか?」



真奈美「PのものだからPが決めてくれ。ただ、一人で食べるよりきっと美味しいと思うよ」



P「そうしましょう」



聖來「木場さんの手作りブラウニー美味しいんだろうな……私も貰っていいんだよね?」



P「勿論、ちひろさんもご一緒にー」



ちひろ「はーい、お茶の準備してきますね」

* * *



聖來「木場さん、お店出せると思うよ?」



真奈美「そう言って貰えるのは嬉しいが、その予定はないよ」



P「紅茶の香りもちょうど良くて、味も僕好みで、毎日でも食べたいくらいです」



真奈美「……勘違いされるからその言い回しは控えるように」



P「え?」



真奈美「……ま、まあ、気に入ったんならたまに作ってくるよ」



ちひろ「そういえば、美優ちゃん珍しく遅いですね。時間はまだ余裕が有りますけど……」

―その頃 事務所すぐ近く―



美優(ぼーっとしてて乗り過ごすなんて、今日はPさん居ないから頑張らないといけないのに)



美優(Pさんは一緒に入れた手紙、読んでくれたかな)



美優(読んでくれたとしたら、どんな顔して会えばいいんだろう)



美優(変な内容じゃないし、大丈夫よね…うん…大丈夫)



美優(それに会うのは明日以降だし)



美優(……ビルに着いたけれど時間は…大丈夫……)



美優(エレベーター遅いな……)



美優(最近練習で作ったチョコレート、食べ過ぎてしまったし、階段で……)



美優(またいつ肌を見せる仕事が来るか分からないから、普段からダイエットしないと)



美優(もう事務所だから、息を整えて……)



ガチャ

美優「おはようございます」



「「「おはよう(ございます)」」」



P「おはようございます」



美優「っPさん!?どうして…出張だったんでは…?」



P「それが――――という訳で」



美優「そうなんですか。……おかえりなさい」



P「ただいまです」



真奈美「私が作ったお菓子を皆で食べていたんだ。美優の分も残してあるよ」



聖來「すっごく美味しいよ!」



美優「え?…ありがとうございます」



美優(あれ、このブラウニー、Pさんに渡すって……)

美優「とても美味しいです……」



美優(Pさんの机の…確か聖來ちゃんが用意していた……どういうことなんでしょう?)



聖來「そーだ、美優さんもアタシたちと同じ事すれば?」



真奈美「そうだね、せっかくバレンタインデー当日に会うことが出来たんだし」



ちひろ「チョコもありますから…ね?」ニコッ



美優「……?」



美優(今日のイベントでファンの方に配るものは事務所に置いて有るけど…それのことかしら?)



聖來「やっぱり当日に渡すのが一番だよ」



美優(でも2人のはイベントで配るものと違うし……もしかして、2人は今日Pさんと会えるかもしれないから準備を?)

美優「いえ…それは……」



美優(私は2人と違って準備してないから……)



ちひろ「恥ずかしがらないでください、簡単でいいですから」



美優「恥ずかしいワケでは……」



美優(せめて、残ったチョコレートを持ってきてれば……)



真奈美「ほら、Pがエスコートしてやれ」



P「え?あ、はい」



聖來「美優さん、Pさんへ二度目のキモチの手渡しだよ♪」



美優(二個目を用意してないんです……)



P「美優さん、こうして当日に会えたので。もう一度、僕にチョコレートをください」

美優「想いを込めたのに…」



P「え?」



美優「バレンタインのチョコレートは、大切な一個だけじゃないんですか…」



P「いえ、その」



美優「そういう人だったんですね」



美優「……ごめんなさい」タッ



P「三船さん、待って下さい!」

P「どうして三船さんが謝るんですか?」



美優「……チョコレートを持ってきてないんです」



P「大丈夫です」



美優「私、Pさんが今日帰ってくることも……チョコレートがそんなに好きな人だって知らなくて……」



P「え?」



真奈美「?」チラ



聖來「?」チラ



美優「やっぱり、男の人は、胃袋を掴めとよく聞きますし、沢山貰える方が嬉しいんですか?」



P「えーっと……」



ちひろ「あの……美優ちゃん、誤解が有るみたいなので……とりあえず、Pさんの話を聞いて下さい」

その後三船さんに、食べるためにチョコレートを持ってきていたこと、せっかくなのでそれを渡しなおしていることを説明すると、耳まで真赤に染め上げて小一時間奥のソファーで顔を伏せていた。



チョコレートの箱の中に入っていた感謝の想いを綴った手紙を読み、その状態の三船さんに真面目なトーンで返事を言うと、慌てふためいてトイレに行くと行って給湯室に消えていった。



それを見ていた聖來とちひろさんは、学校を終えて事務所に来た奈緒に同じドッキリを仕掛け、見事成功。



木場さんは半日ほど三船さんと一緒に給湯室の大掃除をしていた。



その後のイベントは大成功。皆の表情がいつにも増してとても晴れ晴れしていた。



今回のいざこざで三船さんとのコミュニケーション不足を痛感したので、お詫びということでお互いの予定が会う10日後の24日にディナーに行くことにした。



予約時間は少し遅めで、その後に落ち着いたバーで日付をまたぐくらいまでゆっくりするつもりだ。



感謝の想いを込めたプレゼントを持って……



お わ り



23:30│三船美優 
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