2014年01月20日

モバP「落ちる雨粒の行方」

あ、新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
野球シリーズはもうちょっと待ってて下さい。
あっちは割と時間がかかるので…。
事務所


卯月「あ、お疲れ様でーす」

P「お、お疲れ様」

ちひろ「お疲れ様です」

卯月「最近レッスンがハードな気がしますよー…」

P「それだけ期待されてるってことだからな」

ちひろ「ほどほどに休んで下さいね」

卯月「はいっ! ありがとうございます。あ、ちょっと飲み物貰いますねー」

ちひろ「どうぞ」

卯月「はい。ありがとうございます」
卯月「お二人はお茶とか飲みますかー?」

P「あ、俺が淹れるよ」

ちひろ「そんな悪いですって」

P「ちょっと練習しとかないとなって思ってるんで、卯月はどうだ?」

卯月「えーと…、淹れてくれるなら是非」

P「出来ました」

ちひろ「…意外に上手ですね」

卯月「心が籠ってるって感じがします。胸がホッとする感じで」

P「そこまで言ってくれると嬉しいな」

ちひろ「そう言えば、知ってますか卯月ちゃん」

卯月「何をですか?」

ちひろ「プロデューサーさんには、卯月ちゃん達がトップアイドルになる姿が見えてるそうですよ」

P「そんな大それたことじゃ…」

卯月「それ、結構言ってますよねー」

P「そうかもな」

ちひろ「よっぽど大事に考えてるからなんでしょうね。羨ましい限りです」

P「…羨ましいんですか?」

ちひろ「えーと、今のはナシの方向で」

卯月「ちひろさんもアイドルやってみますか?」

ちひろ「いやー、私はいいですよー事務員で」

卯月「またまたー、満更でもないって顔してますよ?」

ちひろ「そ、そんなわけないじゃないですかっ!」
卯月「…くぁ」

P「眠いなら寝てもいいぞ」

ちひろ「あ、でも、今、仮眠室杏ちゃんが占拠してますよ?」

P「今日は割とハードだったからな。起こすのも悪いし…」

卯月「あ、ソファとかでもいいんですけど…」

ちひろ「そう?それじゃ、せめて枕だけでも…」

卯月「よく持ってますね…」

ちひろ「備品で新しく買ったんですよー。やっぱり気持ちよく寝て欲しいですし」

卯月「そうなんですね。それじゃ、ありがたくお借りしまーす」

ちひろ「はーいどうぞー」
卯月「……」スー

P「そう言えばなんですけど」

ちひろ「はい?なんですか?」

P「ソファとかで寝ると変な夢とか見ませんか?」

ちひろ「まぁ、眠りが浅くなっちゃいますからね」

P「ですよねぇ。本当は床で寝たいんですけどそういう訳にはいきませんしね」

ちひろ「スーツ汚れちゃいますしね」

P「あと、色々な問題がありますから」

P「今思い出しましたが、夢を見てる時は体と魂が分離してるらしいですよ」

ちひろ「えーっと…幽体離脱的な感じですかね?」

P「そんあ感じじゃないですかね?」
ちひろ「それって帰ってこれないと大変ですね」

P「まぁ、そんな失敗はないとは思いますけど」

ちひろ「でも…例えば、魂が酔っぱらっちゃって間違えて違うとこに…なんて」

P「それは怖いですね。気づいたら知らない所にいるって感じですかね」

ちひろ「そう聞くと、夢見たくなくなるんですけど」

P「ははは。すみません。迷信かもしれませんけどね」

ちひろ「そうですねぇ。あ、そう言えば、この仕事なんですけど…」

P「はい。あ、舞台ですね。舞台とか出られるようになったんですね…あいつら」

ちひろ「ちょっと感慨深いですね」

卯月「……ん? ここどこかな」

「…おや、どちら様…でしょうか」

卯月「あ、はい。えっと…ここは?」

「…私の部屋ですね」

卯月「あぁ、そうですよね、きっと」

卯月(随分リアルな夢だなぁ…誰だろうこの人。優しい感じがするけど…)

「懐かしい…匂いがします」

卯月「そ、そうですか?」

卯月(変な匂いとかするのかなぁ…)スンスン

「あ、変な匂いがするわけでは…ないですから」

卯月「それは良かったです…」

卯月「そう言えば、ここはどこなんですか?」

「ここですか…? ここは、都内のマンションの一室ですね」

卯月「はぁ…」

卯月(あれ、これ夢だよね? 夢だよね?)

卯月(ほっぺ抓ってみよう…)ギュ

卯月「……?」

卯月(痛くない…ってことは夢なんだ)
「どうかされましたか?」

卯月「あ、いえ、なんでもないですあはは…」

「あっ、そう言えば、何もお出ししないで…すみません」

卯月「あ、いえいえお気遣いなく」

卯月(…どこかで聞いたことのある声かも)

「…っと」

卯月「だ、大丈夫ですか?」

「平気ですよ。いやぁお恥ずかしい。私、昔事故で足と目をやってしまいましてね」

卯月「そうなんですか…」

「…はい。これどうぞ。いつも他の人に淹れて貰っていて美味しいか分かりませんが…」

卯月「…美味しいですよ。何だか心が籠っていて」

「それは良かった。あ、そうだ。そこに…植木鉢がありますよね」

卯月「えーと、これですか」

「恐らく、そうですね…。そこには花が植えてあるんですよ」

卯月「綺麗に咲くといいですね」

「えぇ」ニコッ
卯月「えーと、話したくないならいいんですが…」

「どうして、目と足をやってしまったかですか?」

卯月「は、はい…」

「私はですね。大分昔の話になるんですが…余り大きくない事務所でプロデューサー業をしていたことがあるんですよ」

卯月「え! そうなんですか?」

「えぇ…。どうかしましたか?」

卯月「私…実はアイドルをやってるんです!」

「それはそれは、随分と…奇遇ですね」

卯月「はいっ! 島村卯月って知ってますか?」

「…えぇ。知ってますよ。とても懐かしい響きです」

卯月「えっ?前にも私みたいな名前のアイドルさんがいたんですか?」

「いえ、私の記憶だと…そんなことはないですけれど」

卯月(あ、それじゃ、昔のサイン会に来てくれたのかな…)

「あ、話が逸れましたね。実は、そのアイドルに舞台の仕事が来たんですよ…」

卯月「舞台ですか? 私も来週から舞台に出るんですよー」

「いいですね。それは」
卯月「まぁ、舞台での練習が始まるってことなんですけどね。見栄張ってすみません…」

「似たようなものでしょう。話を戻しますが、その舞台の装置を確認している時に、彼女が奈落を知らず足を…」

卯月「奈落ってなんですか?」

「舞台の穴とでも言うんでしょうかね…」

卯月「あぁ、何となく分かりました」

「彼女を引っ張り上げた瞬間にこう…体がクルンと入れ替わるように私の体がね…」

卯月「なるほど…」

卯月(落ちちゃったってことかな…?)

「あ、彼女のことは恨んでいませんよ…。ただ、残念なことが一つ」

卯月「なんですか?」

「昔、スカウトした時に見えたあの光景が実際のものにならなかったのが残念です」

卯月「え…」ドキッ

卯月(そんなわけない…よね?)
卯月「ちょ、ちょっと聞いていいですか?」

「なんでもどうぞ?」

卯月「もしかしてなんですけど…本当にもしかしてなんですけど」

卯月「…プロデューサーさんですか?」

「…さぁ?」

卯月「さぁ?って答えて下さい…」

「……」

卯月「ひ、人違いだったら謝りますから…!」

「…そうだな。久しぶりだな卯月」

卯月「え、本当に?どうして…?」

卯月(どういうこと?)

P「久しぶりに…その懐かしい声を聞いたよ。どうした…泣いているのか?」

卯月「な、泣いてなんかいませんよ!」

P「そうか。それは良かった…」

卯月「…ちょっと待って下さい。え、もしかして、そうすると…奈落に落ちそうになったのは…」

卯月「――私、なんですか?」

P「……」
卯月「わ、私を助けようとして、Pさんは、こんな怪我をして…」ポロポロ

卯月(やだよ…こんなの…)

P「あれは、事故だ。気にするなって言ったんだけどな」

卯月「誰にですか?」

P「卯月に。あ、いや、分からないけど、キミじゃない島村卯月に」

卯月「…え?」

P「いや、何でもないよ」

卯月「と、とにかく、私、何でもしますっ!」

卯月「身の回りの世話から何もかも」

卯月「どんなことをしろと言われてもしますからっ…ひっく」

卯月「やだよぉ…こんなの。誰か…」ボロボロ

P「そうだな…それじゃ、話し相手になってくれないか?」

卯月「はい…?」

P「好きだったろ? 話すの」

卯月「う…は、はい。だ、大好きです…っく、えっぐ」

P「あー、折角の可愛い顔が台無しだな…」

卯月「だって、こんなことって…」

P「――そうだな。会った時からの話をしようか…」

卯月「…っ、は、はいっ!」
P「こんなことが…あった気がするな」

卯月「そ、そうでしたよね…っ」

卯月(私は泣いちゃいけないのに…)

P「どうかしたのか?」

卯月「い、いえ、花粉症なんですよっ」

P「そうか…季節外れの花粉症だな」

卯月「そうなんですっ。本当に…」

P「そうだな…」
卯月「それでですね。凛ちゃんったら…」

P「……」チラッ

卯月「どうかしましたか?」

P「俺はよく見えないが、あの花が咲いてないかい?」

卯月「花…え?あ、咲いてます。咲いてますよっ」

卯月「綺麗な…花が。咲いてます…」

P「もうそんな時間か…。楽しかったよありがとう」

卯月「え…。そんな嫌ですよ…」

卯月(そんなもう会えなくなるみたいな言い方…)

P「それじゃあな」

卯月「さ、最後に一つだけいいですか?」

P「……どうかしたか?」

卯月「わ、私は…ずっと、ずっと…Pさんのことが――」
事務所

P「卯月、起きてくれー」

卯月「……はい?」

P「いや、レッスンが」

卯月「え、あ、私が見えるんですか?」

P「そりゃな」

卯月「あ、ああ、あ……」ポロポロ

P「う、卯月!?」

卯月「…っく、えっぐ、よがった、…っほ、本当に…」

ガチャ

泰葉「だから…」

周子「いや、やっぱりさー…あ、これ、修羅場だ」

泰葉「…ですね」

バタン

P「…前にもこんなことがあった気がするな」

卯月「…ひっく、えっぐ」ボロボロ

P「一体どうしたんだよ…。ほら、よしよし」ナデナテ
P「落ち着いたか?」

卯月「…はい」

P「とりあえずお茶でも飲むか?」

卯月「…はい」

P「ほら、どうぞ」

卯月「ありがとうございます」

泰葉「で、どうかされたんですか?」

周子「Pさんに何かされた?」

卯月「ち、違いますよっ…」

卯月「えーっとですね…、その何というか…」

周子「うーん?」
卯月「――って言うことなんですよぉ」ジワァ

P「大丈夫か?」

卯月「は、はい…もう平気です」

頼子「…こんばんは」

P「お、こんばんは頼子」

頼子「はい…。それで、何をしたんですか?」チラッ

P「え?」

頼子「女の子は泣かせちゃ…ダメじゃないですか」

P「まぁ、色々あってな」

頼子「…そうなんですか」

周子「残念ながら、昼ドラ的な展開じゃないけどね」

泰葉「だけど、なんなんでしょうねその夢」

P「怪我をしてボロボロになった俺と話した夢か…」

卯月「あと、話し方からして大分未来な気もします」

頼子「無数に枝分かれした一つの結果…という感じですかね。空から落ちた雨粒が同じ道を辿らないと同じです」

P「どういうことだ?」

頼子「よくある平行世界って奴ですよ」

周子「あー、同じ世界がもう一個あるってヤツ?」

頼子「えぇ、そうですね」
泰葉「つまり、怪我をしてプロデュースを出来なくなってしまったPさんとお話ししていたんですね」

卯月「なるほどー。でも良かった…」

P「心配掛けてごめんな」

卯月「だからぁ、そんな風に言われると…」グス

P「あぁ、ごめんごめん」

周子「しっかし、凄い夢見たね。悪夢にもほどがあるし」

泰葉「夢で良かったですね」

頼子(Pさんに会えるならそれでもいい気がしますけど…)

頼子「…あぁ、なるほど」

P「どうかしたのか」

頼子「いえ、枕が…」

周子「お、新品になってる」

P「ちひろさんが持ってきたんだよ」

頼子「いえ、確かにそれもそうなんですが…位置が」

周子「位置? 頼子は抱き枕派なの?」

頼子「いえ、普通の…ではなくてですね方角的な話です」
P「北枕か?」

周子「なにそれ?」

泰葉「北側に枕を置くことじゃないんですか?」

P「あ、そう言えばソファから枕落ちた時に枕を反対向きにしちゃったかも」

周子「卯月どんだけ寝相悪いの…」

卯月「そ、そんなことないと思うんだけど…」

泰葉「その口ぶりからしてまた何かあるんですか?」

P「まぁ、ちょっとな」

ガチャ

杏「…あれ?まだ朝じゃない?おやすみ」

バタンッ

周子「杏いつから寝てんの?」

P「数時間前からだな。帰る頃には持って帰るから平気だろ」

泰葉「そう言えば、ちひろさんはどちらに?」

P「何か買い物に行くって言ってたから少ししたら帰ってくるだろ」

泰葉「そうなんですね」

P「そう言えば、皆レッスンだろ? 遅刻するなよ」

周子「あ、そうだった。行ってきまーす」
事務所

P「ふぅ…」

頼子「お疲れ様です」

P「ん?あぁ、そう言えば、頼子はレッスンって訳じゃないのか」

頼子「はい。元々踊ったりするお仕事は余り入ってこないので」

P「取ってこようか?」

頼子「いえ…そこまで得意ではないので」

頼子「ただ、求められれば喜んで」

P「まぁ、皆で出る時はよろしくな」

頼子「…はい」
P「しかし、卯月は大丈夫かな」

頼子「平気でしょう。私が来た時には、そこまで辛そう…という感じではありませんでしたし」

P「思いっきり泣いてたんだけどな」

頼子「安心して泣いてしまったのでしょう…」

P「人一倍感受性は高そうだからちょっと不安なんだよな」

頼子「心配…ですか」

P「まぁな。いや、勿論、頼子がこういう目に合っても心配するけどな」

頼子「そ、そんなこと分かってますよ」

頼子「誰にでも優しいのがPさんですものね…」

P「含みがある言い方な気がするな」

頼子「何か思う所があるからでしょうね…うふふ」

頼子「でも、ちょっと安心しました」

P「何がだ?」

頼子「私も心配してくれることですかね」

P「何を当たり前なことを。あ、だからってトロッコ問題とかはナシな」

頼子「分かってますって」
頼子「…こんな夢を見ました」

P「…ん?どうしたいきなり」

頼子「夏目漱石のある小説の始まりの一節ですよ」

P「そうか。覚えてないな」

頼子「所詮は夢のお話しですからね」

P「夢の話か」

頼子「えぇ、だからたまたま私達の現実とは離れた別の現実がある世界に行くこともありそうですね」

P「まぁ、ゼロじゃないよな」

ちひろ「ただいま帰りましたー」

P「あ、お帰りなさい」

頼子「お帰りなさい」

ちひろ「えーと、他の方はレッスンとお仕事ですかね」

P「あ、そう言えば、迎えに行かなきゃな」

頼子「そうですか。行ってらっしゃい」

P「駅まで送ろうか?」

頼子「いえ、平気です。まだ、事務所にいようと思うので」

P「そうか。それじゃ行ってくる」

頼子「はい。行ってらっしゃい」

ちひろ「あ、頼子ちゃんお茶でも飲みますか?」

頼子「あ、お願い…します」
車内

楓「かみのみー」

蘭子「や、やみのまー?」

楓「いえーい」

蘭子「い、いえーい?」

P「楓さん、お酒とか飲んでないですよね?」

楓「勿論、素面です」

蘭子「い、一緒にいましたし…」

P「ならいいんだけどな…」

P(素であのテンションなのか)
P「そう言えば、二人に聞きたいんだけどさー」

楓「なんでしょう?」

蘭子「ふむ?」

P「夢で俺が出てきたりすることはあるか?」

楓「そりゃ…」

蘭子「ありますけど…」

P「そうなのか」

楓「えぇ、お酒を一緒に飲んでる夢ですね」

P「それ、夢なんですかね…。この間も飲んだじゃないですか」

楓「いえ、夢でもあったんですよ」

P「そうなんですか」

楓「えぇ」

楓(二人っきりでお酒を飲むなんて夢以外じゃ、そうそうなさそうですし…)
楓「蘭子ちゃんは…」チラッ

蘭子「えっ!?」ビクッ

楓「どんな夢を見たの?」

蘭子「わ、私は…その、えっと…なんて言うか」モジモジ

蘭子「い、一緒に、いる夢?」カァァ

P「今も一緒にいるんだけどな」

蘭子「ち、違うのっ!」

蘭子「そのえーとね、えーと…」カァァ

P「無理には言わなくていいからな」

蘭子「うぅ…」

楓(きっと二人きりで何かしてたのかな…?)

楓(寝ても覚めてもキラキラな恋をしていますって感じかな?)
楓「逆に聞きますけど、夢に誰かアイドルが出てきたことありますか?」

蘭子「……!」ピクッ

P「俺の話ですか?」

楓「えぇ、だって不公平じゃないですか」

蘭子「……」コクコク

P「そうですねぇ…見ますよ。皆といる夢とか」

楓「皆とですか?」

P「えぇ、ちひろさんに怒られる夢とか、凛と一緒に散歩したりとか、楓さんと一緒にお酒飲んだり、蘭子と絵描いてましたね」

楓「飽きない夢ですね」

蘭子「流石に疲れそう…かな?」

P「まぁ、一日でじゃないからそうでもないけどな」
事務所

P「お疲れ様です」

楓「お疲れ様です」

蘭子「おつか…や、闇に飲まれよ!」

ちひろ「ちょっと、キャラが怪しくなってきましたか?」

蘭子「なっ…、わ、私は魔王であるぞ! …キャラじゃないもん」

ちひろ「そうでしたねー」

蘭子「むむむ…」

頼子「あ…どうも、お疲れ様です」

楓「お疲れ様です」

ガチャ

周子「ただいまー」

卯月「…ふぅ」

泰葉「疲れましたね」

P「三人共帰ってきたのか」

卯月「は、はい」

P「それじゃ、杏起こして皆送るよ。丁度いいし」
車内

杏「ぐー…」

P「口で言ってるのバレバレだぞ?」

杏「ぐーすぴー」

泰葉「Pさんに構って貰いたいんですね。ふふっ」

杏「はぁ?違うしー」

周子「しかし、送るって言ったけど、流石に一回に全員は運べないよね」

P「まぁ、そこまで車が大きい訳じゃないからな」

泰葉「私達からで良かったんですか?」

P「楓さんと蘭子と卯月は、ちひろさんと仕事関係の調整をしてるし、頼子は自分で遠いから電車で帰るって言ってるしな」

周子「なるほどね…。あ、そうだ今日ウチ来る?」

泰葉「いやー…今日はちょっと明日早いですし」

周子「そかそか」

杏「杏が行ってあげようか?」

周子「いやーいいかな」

杏「ま。寝るだけだしね杏は」
事務所

P「お疲れ様です」

ちひろ「あ、お疲れ様です」

P「いえいえ、あ、三人送りますよ」

ちひろ「お願いします。その間に私もお仕事片付けておきますから」

P「はい。よろしくお願いしますね」

車内

楓「流石にお酒は飲めそうにないですね」

P「まぁ、運転してますし」

蘭子「……」ポケー

卯月「蘭子ちゃん眠いの?」

蘭子「ふわ…? あっ、い、いや平気です」

P「寝ててもいいぞ?」

蘭子「それじゃ…おやすみ…」

楓「とは言ってもすぐ着きそうなんですけどね」

P「一番最後に送りますよ。先に楓さんと卯月を送ります」

卯月「はーい」
蘭子「……ん」

P「お、起きたか」

蘭子「ここ…どこ?」

P「蘭子のマンションだな。寝てたから起こせなかったんだよ」

蘭子「…ごめん」

P「いや、いいけどな。最近仕事増えてきたし」

蘭子「…うん」

P「それじゃ、また明日な。部屋の前まで送って行こうか?」

蘭子「大丈夫…かな。おやすみ」

P「あぁ、おやすみ」
事務所

P「ただいま帰りました」

ちひろ「あ、お疲れ様でした」

P「残りどれくらいですか?」

ちひろ「そうですねぇ。そこまでないですよ?」

P「分かりました。それならちゃちゃっと終わらせましょう」

ちひろ「はい」



P「えーと、そっちはどうです?」

ちひろ「終わりました」

P「こっちも終わりました」

ちひろ「それじゃ、戸締りして帰りますか。電気代勿体ないですし」

P「そうですね。いやー、ちょっとずつ帰れる時間が早くなってきて嬉しいですね」

ちひろ「えぇ、そうですね。流石に朝帰りは辛いですから」

P「送っていきますね」

ちひろ「あ、どうもありがとうございます。いつもすみません」

P「いえいえ、何かあってからだと嫌ですし」

ちひろ「なにもないですけどね」

P「まぁまぁ」
P宅

P「ふぅ…。今日は早いな」

P「なにしよう…」

P「お、そうだ」ピポパ

P「まだ、起きてるといいけど…」

卯月『は、はいっ!島村卯月です!』

P「お、こんばんは。今大丈夫か?」

卯月『は、はいっ。私何かしちゃいましたか?』

P「いや、そういうわけじゃなくてさ」

卯月『えーと…どういうことですか?』

P「話すの好きだろ?」

卯月『は、はい。えーと…もしかして、そういうことですか?』

P「まぁ、世間話でもってな」
卯月『そう言えば、前もこんなことありましたね』

P「こんなこと?」

卯月『こうやってお話したじゃないですか』

P「あぁ、そうだったけな」

P(あぁ、絡新婦の時か…)

卯月『あの時何だか様子がちょっと変だったから心配だったんですよね』

P「心配掛けてたらごめんな」

卯月『いえいえ。こちらこそすみません』

卯月『また、こうして話せて嬉しいです…』

P「卯月?」

卯月『あ、ごめんなさい。ちょっと…。ダメですね。夢の内容を引き摺ってちゃ』

P「夢か…。そうだな。俺は卯月の近くにいるから」

卯月『…はい。ありがとうございます』

P「まぁ、実際に、そういう場面に遭ったら俺は間違いなくその俺と同じことをするけどな」

卯月『…ですよねー。私も気を付けますから、Pさんも気を付けて下さい』
P「――そろそろ止めるか」

卯月「そうですね。私も学校ありますし」

P「それじゃあな。明日からも頑張ろう」

卯月「あ、ちょっといいですか?」

P「なんだ?」

卯月「…ずっと、私のそばにいてくれますよね?」

P「あぁ、何を今更」

P「これからもいるよ」

卯月「そうですか。ありがとうございます」

卯月(きっと、勘違いしてるんだろうなぁ…)

卯月(まぁ…らしいけど)アハハ

P「それじゃあな」

卯月『はい。それじゃ、わざわざありがとうございましたー』
卯月「……ふふっ」

卯月「一緒にいる…か」

卯月「うーん。あ、そうだ。起きてるかなー?」ピポパ

凛『…どうしたの?』

卯月「あ、凛ちゃん起きてる?」

凛『もう寝るとこだけど』

卯月「あ、ごめんね」

凛『別にいいけど。どうかしたの?』

卯月「えっと、ちょっと話したいことがあって…」

凛『…なに?』

卯月「大したことじゃないんだけど…」

凛『Pさんの話?』

卯月「よく分かったね。流石凛ちゃん」
凛『まぁ、ね』

凛(そこまで言い辛そうにしてたら分かるって)

凛『それで?』

卯月「うん…私、やっぱりPさんのことが好きみたい」

凛『うん。知ってるよ』

卯月「えぇ!? な、なんで知ってるの?」

凛『見れば分かるから』

卯月「うぅ…Pさんも気づいてるかな?」

凛『それは分からないけど。話はそれだけ? 切るよ?』

卯月「うん。ありがとね。おやすみ」

凛『おやすみ』
凛の部屋

凛「…そんなの誰が見ても分かるじゃん」

凛「…なんか癪だな」ピポパ

P『…ん? 凛か?』

凛「あ、ごめん。起こしちゃった?」

P『いや、そんなことはないけど』

凛「一つ聞いていい?」

P『ん?どうした?』

凛「Pさんはさ、店に入ってから、メニューを中々決められない人?」

P「なんだその質問は? まぁ、割とすぐ決めるよ」

凛「そうなんだ。ありがと」

P『その質問に一体なんの意図があるんだ?』

凛「一緒にご飯行った時にいつまでも決めなかったらやだなって」

P『あぁ、そういう話か。そりゃ、相手を待たせたら悪いし』

凛「うん。そういうこと。おやすみ。ごめんね」

P『別にいいけど早く寝ろよ』



凛「決める時は決めてくれるんだね」

凛(いつがその時か分からないけど)

終わりです。
見て下さった方ありがとうございました。

解説です。

今回は、『北枕』及び、『枕返し』が主なネタです。

北枕:諸説ありますが、釈迦が入滅する際に北側に枕を置いて寝たことからこの名がついています。
    日本では死を忌むことから遺体を安置する際にのみ使うそうです。

枕返し:枕返し自体は枕を返すこと座敷童みたいなのが返したりかえさなかったりしています。
     民俗学的には、夢を見ている間は文中の通り魂が肉体から抜けでているそうです。
     また、枕を返すことは寝ている人間を死に近づけると意味しており、『大鏡』にもそんな記述があったりします。
勿論これ以上登場人物を増やす気はないですが、もしかしたら、一度限りとして誰か出すかもしれません。
コメントなどで良く見るアイドルは確かに使ってみたいと言う気もしますから。
全く別件なんですけど、こういうSSを加筆修正して、文章にして、挿絵付けて何個か話を付け加えたら、

モバマスのオンリーとかで五部くらいは捌けるんですかね?
あ、もう一つ参考にしたものがあります。

夏目漱石「夢十夜」です。

頼子が言った通り、「こんな夢を見た」から始まる小説です。

卯月の中に出てくるPはその話に登場する人物を組み合わせた感じです。

17:30│島村卯月 
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