2015年04月07日

幸子「手と手のつなぎ方」

幸子「日曜の街はすごく混んでいますねー」



幸子「けど、プロデューサーさんも幸せものですね! このボクの買い物に付き合えるなんて!」



幸子「さて、まずは服からですね。あっ、はぐれないように手をつないでもいいですよ」





幸子「ボクは優しくてカワイイですからね。プロデューサーさんが迷子になったら大変ですから」



幸子「……なんですかその顔は。今度のライブ? まったく誰に聞いているんですか」



幸子「レッスンも欠かしていませんし、大丈夫に決まって……えっ?」





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〜in事務所



小梅「……幸子ちゃん、明日ライブだね。私達はレッスンだから……」



輝子「カ、カワイイ幸子ちゃんを見に行けないのが残念……フヒヒ」



幸子「――あ、はい。そう、ですね」



輝子「……なんかぼけっとしてる。も、もしかして疲れてる?」



小梅「……うん、レッスンのときも集中、出来てなさそうだった」



幸子「そんなことありません。いつも通りカワイイボクですよ?」



小梅「……そう?」



輝子(……ライブ前日なのにテンション低い)



小梅(いつもなら『カワイイボクのライブを観られるなんて、ここが天国だったんですね!』みたいに言ってるのに)



輝子「さ、幸子ちゃん。何かあったなら親友に相談したら……」



幸子「いえ、大したことじゃないですから。明日に備えて今日は帰りますね」



小梅「……お疲れ様」



輝子「お、おつかれ」



幸子「お疲れ様です」



バタン

輝子「……ね、ねえ小梅ちゃん。幸子ちゃん、変じゃない?」



小梅「うん……。輝子ちゃんがカワイイって言ってるのに……全然乗ってこなかった」



輝子「や、やっぱり……なにかあった、かも」



小梅「……心配、だね」







〜ライブ会場in楽屋〜



幸子(いつもだったら狭い楽屋が、今日は嫌味なくらい広く感じます)



幸子(どうもそわそわして落ち着かない。浮き足立っている、というやつでしょうか)



幸子(……ボクらしくないですね。いつも通りやればいいんですよ)



幸子「プロデューサーさん、お茶くだ――」



シーン



幸子「いつも通り……出来るんですか?」





幸子『今度のライブの日、どうしても外せない仕事が入った?』



幸子『一人で大丈夫かって……大丈夫じゃなくてもやるしかないでしょう』



幸子『このボクを誰だと思ってるんですか! 一番カワイイ輿水幸子ですよ!』





幸子「……じっとしているから、変なことを考えるんです」



幸子「会場の様子を見れば、氣が引き締まるでしょう」





スタッフ「ライトの固定はしっかりしておけ! コードに足引っ掛けるなよ!」



スタッフ「了解っす!」



スタッフ「マイクのチェックはいいかー! ちゃんと確かめておけー!」



幸子(スタッフの方も作業を頑張っていますね)



幸子(ステージも大きいし、客席もかなりの数です)



幸子「ここで歌って、客席を人で埋め尽くす……。考えただけでワクワクしますね! プロ――」



幸子「……っつ。馬鹿ですか……ボクは……」ギュッ





スタッフ「輿水さん! そろそろ衣装に着替えて待機お願いします!」



幸子「……」



スタッフ「輿水さん?」



幸子「あっはい! 準備ですね、わかりました!」



スタッフ「お願いします! いいステージにしましょう!」



幸子「……はい」



〜in楽屋〜



幸子(どうしてボクは着替えもせず、机に突っ伏しているんでしょう)



幸子(どうして、自信を持って応えられなかったんですか?)



幸子(ライブ前に不安になるなんて、何度もあったのに)



幸子(その都度乗り越えてきたのに!)



幸子「……プロデューサーさん」



幸子(わかってます、今まで乗り越えられたのはプロデューサーさんのお陰です)



幸子(いつも手をつないで欲しいと言えば、つないでくれました)



幸子(父親みたいに、大きな手で優しく手をつないでボクを励ましてくれた)



幸子(……だけど、今はいない。プロデューサーさんがいないとボクは一人――)





ギュッ



幸子「!? プロデューサーさん!」ガバッ



輝子「……じゃない。ご、ごめん」



小梅「……幸子ちゃん、大丈夫?」



ギュッ



幸子「……輝子さん? 小梅さん? どうして……」



輝子「ち、ちひろさんから……親友がライブに行けないって聞いて……」



小梅「幸子ちゃん、一人で不安かも、って思って。レッスン切り上げてこっちに来たの」



幸子「……ボクのために?」



輝子「ト、トモダチだからな。し、親友の代わりには、わ、私達じゃ役不足だけど……フヒヒ」



小梅「幸子ちゃんは一生懸命レッスン……してた。だから……きっと上手くいく」



幸子「……ボクに出来るんでしょうか」



輝子「い、いつもいいステージだった……。だから、今日もいつも通り……」



幸子「けど、いつもプロデューサーさんに……」



小梅「……引っ張ったのはプロデューサーさんでも……その先で頑張ったのは、幸子ちゃん……だよ」



幸子「ボクに……」



輝子「出来る。わ、私達のリーダーで」



小梅「……一番カワイイ、から」





幸子(……そっか。プロデューサーさんの手が安心したのは、人を想っていたからなんですね)



幸子(ボクには、プロデューサー以外にも、こんなに想ってくれる人がいるんです)



幸子「……間違いが二つあります」





輝子「な、なに?」



幸子「一つは、プロデューサーさんの代わりになれない、ということなら役不足ではなく役者不足です」



小梅「……そう、なんだ」



幸子「……もう一つは!」グイッ



小梅「えっ」



輝子「わっ」



ダキッ



幸子「役者不足なんかじゃ……絶対にないです!」ギュウウウ



輝子「……フヒ、フヒヒヒヒ」



小梅「……えへへ」



幸子「さあ、いじけていた輿水幸子はもういません!」



幸子「ここにいるのは、お二人が信じる一番カワイイリーダーの輿水幸子です!」



幸子「ボクがいるなら、地獄の1丁目からでもファンが来ますよ!」



輝子「フヒヒ……さ、幸子ちゃんは、やっぱりこうでないと……」



小梅「……うん。私達、客席から応援……する、ね」



輝子「今日はシメジ君もいるよ……フヒヒ」



小梅「あ、あの子もいるから3人……?」



幸子「二人と1キノコの応援ですね! すごく嬉しいです!」



小梅「いや……あの子もいr」



幸子「二人と1キノコで す ね! あ、ボクはそろそろ着替えないといけないので失礼します!」



ドタンバタンゴスンガチャバタン



小梅「……行っちゃった」



輝子「こ、怖がりなのも幸子ちゃんらしい……フヒヒ」



小梅「……うん」



輝子「いつも通り、だね」



小梅「……うん」



〜ライブ後in楽屋〜



ガチャ



幸子「あ、プロデューサーさん、お疲れ様です! どうしたんですか、そんなに慌てて?」



幸子「ライブの結果? フフーン! プロデューサーさんが見られなかったことを後悔する結果でしたね!」





小梅「……うん、幸子ちゃん、すごく可愛かった」



輝子「フヒヒ……残念だったな、親友」



幸子「フフン、どうですかこの評判。えっ……大きくなった? 背は142センチのままですよ? そういう意味じゃない?」



小梅「プロデューサーさんは……偉い人とお話?」



幸子「それじゃあ、着替え終わったら合流しましょうか。後でたっぷりライブの話を聞かせてあげますね!」

バタン



輝子「し、親友……ほっとした顔だった」



小梅「うん……よかった、ね」



幸子「……あの、お二人共。今日は本当にありがとうございました」ペコッ



幸子「情けないですが、お二人が来るまで不安で仕方ありませんでした」



幸子「ですが、もう大丈夫です。手をつながなくても、輝子さんと小梅さんの気持ちは思い出せますから」







小梅「……プロデューサーさん……も?」ニコニコ



輝子「フヒヒ……幸子ちゃん、親友と手をつなぐの好きだもんな……」ニヤニヤ



幸子「か、からかわないでくださいよ! それに! ボクは決めました!」



小梅「……何を?」

幸子「プロデューサーさんとの手のつなぎ方です!」



幸子「思い返すとプロデューサーさんは、ボクを子ども扱いにしていました! 」



幸子「迷子にならないようにとか、不安だからとか、スカイダイビングにビビってるとか!」



幸子「ボクの強がりに優しく答えてくれて、ボクはそれに甘えていました!」



幸子「だから! その手から離れて、プロデューサーさんから『手をつなぎたい』と思えるようにボクは成長します!」



幸子「引っ張られるんじゃなくて、二人で肩を並べて歩けるように、ボクは成長します!」





輝子「二人で肩を並んで歩く……フヒ、いいな、それ」



小梅「うん、素敵……だね」



幸子「え、ええと……ま、まあカワイイボクならすぐにでもそう出来ますけどね! ええ、すぐにでも出来ますけどね!」



輝子(照れてる)



小梅(照れてる)





小梅「……けど、どんなつなぎ方がいいのかな」



輝子「フヒヒ……そ、そりゃあ指と指を絡める……こ、恋人つなぎ」



幸子「ななななに言ってるんですか輝子さん!」



小梅「……けど、肩を並べて歩くって……そういうこと」



輝子「さ、幸子ちゃんなら、リア充でも祝福するから……フヒヒ」

ガチャ



小梅「あ、おかえり……なさい。幸子ちゃん……今のうちに予行演習、する?」



幸子「しませんよ! しませんから!」



輝子「フヒ、フヒヒ……幸子ちゃん、顔真っ赤」



小梅「あ、あの子が幸子ちゃんの手を……」



幸子「ひぃ! ボクの手に何をしようとしてるんですかぁ!? 」

幸子「プロデューサーさんも笑ってないで何とかしてくださいよぉ!」







おわり



22:30│輿水幸子 
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