2015年05月12日

伊織「いつも隣にいてほしい」

伊織「それではお願いします。」



上司「了解」



伊織「お先に失礼します。」





上司「はい、お疲れ様」



私がアイドルを引退して5年、今年で24歳になる



765プロもなくなり今では普通のOLをしている。



仕事も私生活も楽しく充実していた。

アイドルをやめたことに後悔もない



たったひとつの心残りを除いて



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今日からGW

特に用事もないのでやよいを誘って買い物に出かけることにした。



伊織「ひさしぶりね、やよい」



やよい「久しぶりー!伊織ちゃん!元気だった?」



伊織「うん、私は元気よ、やよいは?」



やよい「私も元気!」



伊織「服を見ようと思うから付き合ってくれる?」



やよい「うん!私も夏服が欲しかったから」



今では二人ともただのOLなので

電車に乗って都心にあるデパートに向かうことにした。

伊織「仕事は最近どう?」



やよい「お店に後輩も入ってきて毎日楽しいよー!」



伊織「さすが、やよいね」



やよい「伊織ちゃんは?」



伊織「私も楽しいわ、周りがいい人ばかりで」



たわいもない会話をしながら

デパートを見て回っているとピンク色のドレスが目にとまった。



やよい「あっ、あれ!伊織ちゃんが最後のライブの時に

    着たドレスに似てる!」



伊織「そうね、ちょっと懐かしいわ」



5年前の私が19歳の時、

765プロ最後のライブ、

私達がアイドルを引退したライブの時を思い出した。

春香「みんなー!これで765プロ最後のライブだよ!絶対成功させようね!」



全員『おー!!!!』



みんなで全力を出し切った最後のライブは大成功だった。



P「みんな本当によくやってくれた!ありがとう!」



春香「プロデューサーさん、ありがとうございました!」



美希「ハニー!大好きなの!」



P「お前たちのプロデューサーでよかったよ…」



そういってプロデューサーが泣いたのがすごく印象的だった。

この後もみんなで気がすむまで話して、泣いた。

みんな解散して帰る中、私は忘れ物をしたと言って楽屋に戻った。

するとプロデューサーが一人で残っていた。



伊織「ねぇ…」



P「おお、伊織か、どうした?」



伊織「ちょっと忘れ物があって」



P「なんだ?一緒に探すぞ」



伊織「携帯のストラップがなくなっちゃって」



P「じゃあ探そうか」

さっきまで10人以上入っていた広い楽屋を二人で探す。



伊織「今日で最後なのね…」



P「そうだな」



伊織「あんたはこれから何するの?」



P「知り合いのツテで仕事を紹介してもらったんだ、営業マンだよ」



伊織「ピッタリじゃない」



P「伊織はどうするんだ?」



伊織「私も働くわ、親元を離れて一人暮らしをしたいから」



P「そっか、なんかあったら連絡しろよ、心配だから」



伊織「うん、ありがと…」



P「よし」

P「おっ!あった!」



伊織「ほんと!」



P「これだろ!」



伊織「そう、これ!」



P「見つかってよかったな」



伊織「よかったわ、大事にしていたやつだから」



P「それって初めての仕事が終わった後に俺が伊織に買ったやつだよな」



伊織「かっ、勘違いしないでよね!

   別にあんたからもらったから大事にしてるってわけじゃないんだから」



P「でもまだ持っててくれるなんてうれしいよ」



私はまた照れ隠しで本心でないことを言ってしまった。

P「お腹すいてないか?」



伊織「すいた」



P「ご飯でも食べていきますか?」



伊織「なんで敬語なのよ、気持ち悪いわね…」



P「いかない?」



伊織「しょうがないわね…、いってあげてもいいわよ」



そっけない返事とは裏腹に顔がにやけてしまう。

でもあいつの顔もにやけていた。



P「何か食べたいものはありますか?」



伊織「パスタ」



P「かしこまりました」



車に乗ってお店に向かった。

P「俺、実はぺペロンチーノ好きなんだ…」



伊織「なんで深刻なトーンで話してくるのよ」



P「伊織は何が好きなんだ?」



伊織「私はカルボナーラかしらね」



P「じゃあそれ頼もうか」



しばらくして注文したものが運ばれてきた



二人でたわいもない会話をしながら食事をしたら時間はあっというまに過ぎてしまった。



P「じゃあそろそろ帰ろうか」



伊織「そうね」



その日は何も言わずに帰ってしまった。また今度でいいと思ってしまった。

その時はこの距離感が心地よかったから

結局あれから5年あいつと会うことはなかった。

今でも思い出すたびに、あの時好きと言っておけばどうなっていたかと考える。



やよい「そういえばプロデューサー元気にしてるかな?」



伊織「さあ?元気にしてるんじゃないかしらね、あいつのことだし」



やよい「伊織ちゃんも連絡取ってないんだね」



伊織「なんかきっかけがなくてね…」



陽が落ちるまで買い物を楽しんだ後、やよいと別れて帰宅した。



家に帰った後も昼間に会話に出たあいつのことが気になっていた。



伊織「ちょっと連絡してみようかしら…」



五年ぶりにプロデューサーにメールを打ってみた。

するとすぐに返信がきた。

伊織『久しぶり、元気?』



P『久しぶり!元気すぎるくらい元気!そっちは!?』



伊織『私も元気、昨日やよいとあんたの話になって気になったから』



P『やよいも元気だった?』



伊織『やよいも元気よ』



P『そっかー、よかった!久しぶりご飯でも食べに行くか?』



伊織『いいわよ』



つい五年前と同じように、にやけてしまった。

今日は久しぶりにあいつと会う日、待ち合わせの30分も前に着いてしまった。

しばらく経つとあいつがやってきた。



P「ひさしぶり!」



伊織「ひさしぶり」



目が合うと顔が赤くなる

あいつはあまりにも変わっていなかった。



さっそくレストランに向かう。

P「今、伊織はなにしてるんだ?」



伊織「普通に会社勤めよ」



P「そっか、一人暮らし?」



伊織「うん」



P「えらいなー」



伊織「私もう24歳よ、普通よ」



P「ははっ、普通か」



伊織「あんたは?」



P「俺も普通の営業マンだ、この間なんか売上1位だったんだぞ」



伊織「すごいじゃない」



P「伊織に褒められるとうれしいな」



そう言って笑うあいつの顔を見ると嬉しくてこちらもにやけてしまった。

P「今日はイタリアンだよ」



伊織「私パスタが好きなの」



P「知ってる、ここカルボナーラが有名なんだ」



会話をしながら、ついこいつが私をどう思っているのか考えてしまう。



P「おいしいね、これ」



伊織「にひひっ、とってもおいしい」



私はあなたじゃないからすべてを同じように感じられないからこそ隣で笑っていたい。



だから私は言おうと思う。



この食事が終わったら、もう少し距離が縮まるはずだから、、、、、



終わり



08:30│水瀬伊織 
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