2014年02月04日

モバP「二宮飛鳥をスカウトする」

タイトル通りの話ですが

SS形式に地の文をちょこちょこ混ぜていく試みをしているので
文章ガタガタになっていますがが容赦を


また、話の流れ上必要な設定は無難に足してありますがそれもご容赦を


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1388332419

今はもはや有名になったCGプロのプロデューサー。
彼は病的と言えるまでのワーカーホリックで今日もその病気を全うしていた
世間一般では安息日とされる日曜つまり今日は彼にとっても同じく休日であるにも拘らず、
休日を利用して仕事に勤めていた。

P「ここが静岡か――」

彼は目の前の空気を大きく吸い込み、

P「…良い景色だ」

そう呟いた彼の眼と鼻の先には漆黒の世界が広がっていた。
「それ」は女性物の下着であるにも拘らず、挑発的にも前面から背面にかけてチャックを取り付けられており
布の到る所にはベルトのような装飾がされていた。いわゆる「パンク」な下着である。


飛鳥「…キミはいきなり人のスカートの中にに頭を突っ込んで何をしているのかな?」


P「……」

P「これは仕事!仕事なんですぅぅぅぅぅ!!!!」


14時23分 静岡 プロデューサー、痴漢現行犯逮捕の瞬間であった。


警官「もう、こんな事をするんじゃないぞ」

そのように私を「注意」した警官の視線は彼の左手にある数枚の写真に注がれていた。

P「…また本日中にお世話になると思うのその時はよろしくお願いします」

そう私は反省の言を返して、ボロ汚い交番を後にした。
腕時計は15:06分を指示しており、少し前に捕まったというのに破格の時間で交番を出所(?)できたのは
私が猥褻な行為を働いた彼女が特に事を荒立てようとしなかった事、
そして日ごろの行いが良かった事と渋谷凛の秘蔵ブロマイドのおかげであろう。
…彼女らには感謝しなければならない、そう思った私はすぐさま行動に移した


…プルルルルル ピッ


凛『もしもし? プロデューサー?』

P「ああ、凛、俺だよ」

凛『プロデューサーから電話がかかって来るってことは…お仕事の話かな?』

P「いや、違う。」

凛『…? じゃあ何の用事?』

P「いや、その…デビューしたころからお前には助けて貰ってるからな…ちょっと感謝の電話をしたくなって」

凛『――! あ、ありがとう…でも、お互い様だよ、私だって私をここまで育ててくれたプロデューサーには感謝してるから』

P「凛…」

凛『だからその、』

凛『…こちらこそいつもありがとう。プロデューサー……感謝してるよ』

P「…ああ、俺もありがとうな」ピッ


熱くなる目頭を押さえ、電話を切った。今度は他の感謝するべき相手の所へ向かわねば


・・・・・・回想・・・・・・

ちひろ「プロデューサーさんってホント外道ですよね」

P「悪魔がいきなり何を言いだすんですか」

ちひろ「いえ、なんというか…」

ちひろ「女の子の心の隙間に侵入するのが上手いというか、しかもそれを無意識でやってるのがまた、外道ですね」

・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

P「まだ僕は女の子の隙間に挿入した事も無いのにちひろさんは一体何を言ってるんですか…」

飛鳥「キミの方が何を言ってるのかボクにはさっぱり分からないのだけれど…」

P「おっと…スマン、少し考え事をしていた」

飛鳥「本当に変な人だね君は」

P「面目ない…」

出所(?)から数時間後、私はこの女性…二宮飛鳥とファミレスにて雑談をしていた
彼女とこうして話せているのは、街中でまた彼女を発見した後もう一度彼女のスカートの中への侵入を試みたのだが
警戒されていたらしく、侵入する動作を取る前にすぐさま発見されてしまった。
その結果、正面から彼女に話しかけに行くことになったのだが、これが功を奏した。
正面から堂々と謝罪の言葉を投げかけた結果、話せる相手だと判断され、非日常を求めるとか何とかで変質者ぶりに好奇心を持たれ、
現在近くのファミレスにて私のおごりで食事を取り付ける事が出来、現在に至るというわけである。


飛鳥「また、猥褻な事を考えていたのかい?」

P「とんでもない!僕は潔白純潔の使徒とも言える存在です。猥褻な事を考えるなんてとてもとても」

飛鳥「ボクのパンツを見たくせに?」

P「…交番で多めにみてくれたおかげで前科は付きませんでした。本当に感謝してます」

P「誓ってもう猥褻な行為などしませんよ僕は」

飛鳥「まあ、ボクもパンツを見られるくらいどうとも思わないからそんなに感謝しなくても良いさ」

P「ホっ…!」ガタッ

P「ホントですか!じゃあもう一度パンツを見せて貰えないでしょうか!」バン!

飛鳥「鳥でさえ3歩までは自分のした事を忘れないというのに…君は鳥以下かい?」

P「パンツを見せて頂く為ならば畜生界にも堕ちる所存です」

飛鳥「純白純潔の使徒は何処へ行ったのだろうか…」

P「あなたの為ならば堕天も厭わない」

飛鳥「ああ、分かった。キミはボクとは違うベクトルで『痛いヤツ』だね」


飛鳥「まあ、いいや」

P「?」

飛鳥「本題なんだけどさ、」

飛鳥「キミは何でいきなりボクのパンツを覗いたのかな?」

P「それは、前に言ったと思うけど」

飛鳥「ええ?」

P「それが仕事だからだよ」

飛鳥「一体何処にそんな仕事についてる人がいるのさ…」

P「一応公務員に知り合いがいる」

飛鳥「…出来れば真面目に答えて欲しいな」

P「一応本当の話なんだが…まあ、じゃあ真面目に答えるか」

P「男が女子のパンツを覗きたいと思う事に理由なんかないのさ」

飛鳥「……それだけ?」

P「それだけ」

飛鳥「警察にしっかり絞らせた方が面白かったかなぁ…」

P「そんなひどい」


飛鳥「…それじゃあ次の質問なんだけど」

P(…いかんな)



女子中学生との会話は男性として非常に魅力的であるし、自分語りが嫌いなわけではないのでこのまま雑談が進んでも大いに満足だろう
しかし私はあくまでアイドルのスカウトしようと静岡まで来ているのである。
このまま彼女の質問に答えているだけでは当然ながらスカウト成功とはいかないだろう。
会話の流れを変える必要がある


P「……会話ってのはさ、よく、キャッチボールなんて言われるよね」

飛鳥「…うん?」

P「そう、会話はキャッチボールなんだよ。ただ相手に頷くだけだったり質問をするだけでは会話が成り立ってるとは言えない」

飛鳥「確かにそうかもしれないね。」

P「だから俺からも質問をしていきたいんだけど…良いかな?」

飛鳥「うーん…ボクが思うには今この雑談は会話じゃなくて変質者への尋問だと思ってるんだけど…」

P「ひどい」

飛鳥「まあ、良いよ。好きにしなよ」

P「やったぜ」


さて、会話の流れは変えることには成功したが、彼女に何を質問しようか?


スカウトするにあたって、アイドルに興味があるか?と言う質問と、
彼女のような未成年の子の場合…家庭環境を質問するのが一番良いのだが…
アイドルに興味があるか?という質問はもっと彼女の趣味を聞いてから行った方が効果的な勧誘が出来るだろう。
そして、趣味などを聞くにしても、いきなり「キミの事がもっと知りたいんだ」等とのたまっては警戒されるだろう
そして、いきなり家庭環境について質問など警戒どころの騒ぎではなくなる。だから――


P「そうだな…じゃあ質問なんだけど…」

飛鳥「なんだい? 何でも聞いてよ」


――だから、もっと簡単でとっつきやすい会話から踏み込んでいかなければならない。
だから私は最も定番の会話であるとされる、今日の天気の話から始めてみようと思い、口を開いた。







P「――お嬢さん、今穿いてるパンツの色、何色?」


飛鳥「…黒だけど」

P「しまったこれは確認済みだった」


飛鳥「キミは頭がおかしいのか、それともただの変質者なのかどっちなんだい?」


P「冗談はさておき」

飛鳥「置いておけない冗談もあるから気をつけた方が良いよ?」

P「今日はいい天気ですね」

飛鳥「このタイミングでその話をするのかい!?」

飛鳥「…あと、もう18時半だから日が落ちてるよ?」

P「月が綺麗ですね」

飛鳥「月も出てないよ?」

P「ご趣味はなんですか?」

飛鳥「ここはお見合いの場か何かかい?」


飛鳥「なんかもう、疲れて来たから答えるよ…趣味は…そうだね、主なのはヘアアレンジだね」

P「ヘアアレンジ?」

飛鳥「うん。ボクの髪に黄色い部分があるでしょ? これエクステなんだ」

P「へぇ、道理で髪の質感が違うんだな。最初は染めてるのかと思ってたが」

飛鳥「染めたりもしてみたいんだけどね…」

P「なんか不都合でもあるのか?」

飛鳥「うん。まずうちの学校だと女子は明るい茶色までしか染めちゃ駄目なんだ」

飛鳥「それに…ボクの親は凄く真面目でね」

飛鳥「進学校へ行けとか、大学まで出ろとか…言ってる事は正しいんだけど、まともな道しか行かせてくれないんだ」

飛鳥「ボクはイラストレーターとか漫画家とかだって憧れてるんだけど、断固反対されたんだ」

飛鳥「『真面目に生きろ』とか『○○君を見習いなさい』ってね。ボクは本気だし真面目に言ってるのにね」

飛鳥「そんな親への反抗心で髪を弄り始めたんだ。…ものすごく怒られたけど、反抗ってのはそうでないとね」

P「へぇ…、結構お堅い家庭に生まれたんだな」

飛鳥「うん、特に父さんは堅い人だよ。母さんはそうでもないけど」


P「趣味はこんな所か?」

飛鳥「他にもラジオを聞いたり、漫画を書いたりもしてるよ」

P「ほほう、このご時世にラジオとは珍しいね」

飛鳥「テレビとかにあまり出ない人のトークとかは聞いてて面白いし、テレビに出てる人のもトークは面白いからね」

飛鳥「それにテレビと違って純粋にトークで勝負してるからヤラセとかが見え隠れしないし、ね」

P「なるほどな」

飛鳥「漫画については――…」

P「ふむふむ」


私は話に相槌を打ちながら彼女をどうスカウトするのかについて思考を巡らす。
成り行き任せの話だったとはいえ、趣味、家族について偶然にも聞きだす事が出来た。
おそらく、アイドルになってみないか?という提案をすれば彼女は快諾するであろう。
しかし、問題なのは親である。話を聞く限りお堅い親である為に、娘をアイドルにするなんて以ての外であろう。
とはいえ、そこは私の腕の見せ所、そういったお堅い親を説得するためのテンプレート的な殺し文句をいくつか頭の中で挙げ、
どの説得方法が良いかを脳内でシュミレートする。


飛鳥「ていう漫画が好きなんだけど…って聞いてるかい?」

P「勿論聞いてるとも、うん」


おっと彼女にも集中しなければ失礼か、そろそろ正体を明かしてスカウトの体勢に入るかな
といっても、自分からわざわざ正体を明かさなくても、次に来る彼女の質問がその起点となるだろう


飛鳥「それじゃ、次はボクからキミへの質問いいかな?」

P「おう、スリーサイズは上から順に72・55・78だぞ」

飛鳥「それは、聞いてないよ…コホン」

飛鳥「キミは普段何をしている人なんだい? あ、職業の話だよ?」

P「…ふむ」ゴソゴソ

内心、来た!これで勝てる!と思いながらも態度に出さないように、鞄の中から名刺入れを出す。

P「紹介が遅れたな、俺はPと言うもので、アイドルのプロデュース、スカウト、マネジメントなど幅広くやっている者だ」

P「これが、名刺だ。良ければ受け取ってくれ」スッ


―――決まった。俺カッコイイ…
と思い、心の中で渾身のドヤ顔を披露した私だったが、


飛鳥「……」


彼女からの反応は冷たいものであった


P「あ、あれ? おかしいな。もっと良い反応を期待してたんだけど」

飛鳥「……」


これは、セクハラをしすぎたせいで不信感を持たれてしまったのだろうか?
自分の軽率なこれまでの行いを悔やむ。


飛鳥「……」

P「あのー?もしもーし? 飛鳥さん?」


だがしかし、自分の懸念は杞憂に終わった。


飛鳥「へ、へえー、アイドル事務所のスカウトだったのかー」ドギマギ

飛鳥「ど、道理で他の人とは違うオーラを出してるとおもったよ」ソワソワ



長いフリーズの溶けた彼女は、自分の髪を弄りだしたり、指の先をせわしなく動かしたりと落ち着かない様子になった。
おそらくスカウトと聞いて、意識をしだしたのだろう。
なにこの小動物かわいい、お持ち帰りしたい。自分の家の方に


飛鳥「そ、それで?アイドルのスカウトさんがボクに何の用なのさ」ソワソワ


このせわしない動きを見せている彼女を観察するのも一興だが、焦らしても仕方が無い
早速スカウトの体勢に入る

P「単刀直入に言うと、君にティンと来た! アイドルやってみないかね君!」

飛鳥「!!」

飛鳥「…っ、……」モジモジ

私がスカウトの言葉を投げかけると彼女は驚いて一層せわしなく動き出した。
予想はしていたんだろうが、実際にアイドルにならないかと言われて気分を悪くする年頃の女子は居ないだろう
彼女はクールに振る舞うだけでも精一杯といった所だ。

飛鳥「即答は、出来ないね。ボクはやってみたいけど…ほら、いきなりだし色々と事情があるだろう?」

ようやく落ち着きを取り戻した彼女はそう言った
しかし、今までとは違い口元は綻び、喜びを隠せないでいる。
まあ、即答はそれはできないだろうし、落ち着かせる意味等も含めて
鞄の中に入れてあるパンフを取り出し彼女にアイドルについての説明を始めるとしよう

P「それもそうだな…」ゴソゴソ

P「まあとりあえずこれ、うちの事務所のパンフレットだ」

P「良ければうちのアイドル事務所について説明したいんだけど…良いかな?」

飛鳥「構わないよ。ボクも興味があるしね」

繰り返し述べるが彼女は冷静を装っている(つもり)だが、
口元はへの字型からUの字型に綻んでおり、喜びを隠し切れていないカワイイ


P「それじゃ、パンフレットを空けて貰って…」

飛鳥「…」ペラリ

P「…企業理念とか、緑の事務員さんの甘言が書かれてる1ページ目はまあいいか」

飛鳥「…読み飛ばしていいものなのかい?」

P「まあ、ここら辺はちっちゃい事業だった時から変わってないからただの建前見たいになってるからな」

P「大事なのは3Pからのやって貰う内容とかだな」

飛鳥「ふむ」

飛鳥「最初の方は…地域イベントにアイドルとして参加したり、舞台のエクストラか」

P「それと、レッスンだな。ここら辺からまずは地道に知名度を獲得していくんだ」

飛鳥「やっぱりアイドルといっても最初から大舞台に立てるわけではないって訳だね」

P「ここら辺の活動は部活とかやってないなら部活代わりにできるんだが…部活とかには入ってるか?」

飛鳥「特には入ってないよ…イラスト部とかがあるわけじゃなかったからね」

P「んじゃ、部活代わりに活動できるな」


P「あと、出身地は静岡で合ってるよな?」

飛鳥「それはそうだよ、わざわざ静岡に遊びに行く奴なんて中々居ないと思うよ?」

P「そうなるとだな…事務所の場所が東京にあるからこの場所からだと少し不都合があるから」

P「出来れば近くの女子寮に引っ越して来てほしい」

飛鳥「え…」

P「無理にとは言わないぞ? 別に週末だけ通って活動するってのも一つの方法としてあるからな」

P「ただ、本気で活動するなら来た方が良いとは言っておく」

飛鳥(…もし、引っ越すとなると今居る中学を転校しなきゃいけないよね)

飛鳥(親とも別れなくちゃいけない…)

飛鳥(でも…東京に住めて、アイドルの活動が出来る、か)

P「もし引っ越すんだったら全力でサポートするから、東京での暮らしは毎日新鮮で非日常なのを約束しよう。少なくとも君が中学生で居る間はね」

飛鳥「……うん、どうするのか決めたよ」


P「! じゃあ、引っ越すか、引っ越さないか…どうするんだ?」

飛鳥「ボクは引っ越したい、引っ越して真剣にアイドル活動に打ち込んでみたい」

P「! そうか、良くこっちを選んでくれたな。中々出来る事じゃない…凄いぞ」

飛鳥「ボクは学校や自分の家だけじゃなく、自分の居場所が欲しいんだ 分かるかい」

飛鳥「ただ、ボクの親が認めてくれるかは別だけどね」

飛鳥「さっきも言ったと思うけどボクの親はいわるゆ「お堅い」親だからね」

飛鳥「引っ越しどころかアイドルになる事を認めて貰うことすら怪しいよ」

P「そこは大丈夫だ」

飛鳥「?」

P「そういった親を説得するのもこの仕事の役割だからな」

P「それじゃ、家まで案内して貰えるかな」


それから数分後、軽く打ち合わせをしながら彼女の家を目指した。
彼女が言うには後少し歩けば着くそうである

P「…って感じでとりあえず、門前払いだけは避けたいから家の中へ入れてくれるように誘導してくれ」

飛鳥「うん、分かったよ」

P「そこからは俺が真剣に親御さんにぶつかるから、飛鳥も親に熱意を見せていてくれ」

飛鳥「うん、頑張るよ」

飛鳥「あ、ここをまっすぐ行けばもうボクの家だよ」

P「良い感じの住宅街だな、富裕層が住んでそうだ」

飛鳥「まあ、実際それなりにお金持ちな人が住んでる所だからね」

飛鳥「…そういえばキミは少し前から急に真面目になったね。どうしたんだい?」

P「ん? ああ、スカウトの体勢に入る時は真面目にするって決めてるんだ」

P「いつまでも不真面目にスカウトしてたらスカウトされてると思われなかった事もあるし」

P「酷い時は警察呼ばれたりもしたからね。スカウトする時は真面目が一番!」

飛鳥「ついさっき警察に絞られた人が言うセリフじゃないよね、それ」

P「まあ、警察呼ばれた時は逆に婦警さんをスカウト出来たりしたから良かったんだけどな」

飛鳥「…全く反省してないんだね」

飛鳥「さて、着いたよ。そこの黄色い家がボクの家さ」


P「んじゃあ、行くか打ち合わせ通りにな」ピンポーン

…ガチャ

飛鳥母「はいどちらさまでしょうか…?」

飛鳥「ただいま、お母さん」

飛鳥「ちょっと大事な話があるからこの人を家に入れてあげて欲しいんだけど」

飛鳥母「あら、おかえり…この人はだれ?」

P「大事な話ですので、図々しいお願いではございますが中で話させて頂けないでしょうか」

飛鳥母「……主人と話してくるので少々お待ち下さい」

ガチャリ



飛鳥「…警戒されちゃってるけど大丈夫かい?」

P「家に上げて貰えればどうにかするさ」


ガチャ

飛鳥母「ええと、お待たせしてすみません。ではリビングへどうぞ」

P「ありがとうございます。失礼します」

飛鳥「ただいまっと」


娘が連れてきた人物を無碍にするわけにもいかないのだろう。とりあえず家に上げて貰える事になった。
連れて行かれたリビングにはテーブルと座布団、そしてお茶菓子が用意されていた。


P「…」

飛鳥「…」

飛鳥母「…」

飛鳥父「…」


そして一通りの人物が席に着いた。


まず初めに口を開いたのは飛鳥の父親であった。

飛鳥父「それで、御用件はなんですかな」

真面目で厳格そうな人だ、一つ対応を誤れば娘をアイドルになどさせては貰えなくなると感じさせられる風格を持っていた。
だが、こちらもスカウトのプロである。細心の注意を払い適切な言葉を繰り出す。









P「お義父さん!娘さんを僕にください!!」

飛鳥「ブフゥー!」ブフォ!

飛鳥父「貴様ぁ…!」


飛鳥がむせた。父親がキレた。


飛鳥父「貴様…娘は今いくつだと思っている?」ユラリ

飛鳥父「まだ14だぞ…? そんな年端もいかない娘に手を出すとは…」

飛鳥父「この性犯罪者が!! 叩き殺してくれる!!!」

飛鳥母「あ、あなた落ち着いて!性犯罪者は言い過ぎです!」

飛鳥「そうだよ!性犯罪者なんかじゃ…うん?性犯罪者? ……性犯罪者かもしれないけど、とりあえず落ち着いて!」

飛鳥母「そうです落ち着いて下さい!」

飛鳥父「ええい、放せ!こいつを叩き殺してやる!」


荒れ狂う父親を必死で止める娘と母親。
この光景を見て私は、ドラマのワンシーンみたいだ…等と思っていた。
必死に怒る父親も、必死に止める娘も、必死に止める母親もすべてが様になっていた。
特に母親は、飛鳥に似て非常に整った顔立ちをしており、もし、女優になっていれば名を馳せていたかもしれないと思った。







P「……お母さんも僕に下さい!」

飛鳥父「……舐めとるのか貴様はぁ!!」ゴッ!




止める者のいなくなった拳は深々と私に刺さった。
薄れゆく意識の中、家族を思う父親の拳の重さを私は初めて知ることになった。
そうして、私の視界は一時霧がかかったように閉ざされることになる


・・・・・・走馬灯・・・・・・

ちひろ「Pさん!Pさん!」

P「なんですかちひろさん」

ちひろ「この幸せの壺を100万円で買ってくれませんでしょうか?」

P「いきなりなんですか」

ちひろ「お願いします!コレが売れないとノルマが達成できないんです!」

P「なんですかノルマって…絶対買いませんからね!」

ちひろ「そこをなんとかお願いします!95万円に負けますから!」

P「だーめーでーすー」

ちひろ「うう…じゃあ仕方ありません…せめてこの絵の方を3万円で買って貰えないでしょうか…」グスッ

P「はぁ…(3万円なら良いか…)うーん…でもなぁ…」

ちひろ「と、まあこのように額の高いものを見せてから安いものを買わせようとすると、さっきよりは安いか…という心理が働いて、買ったりしちゃうんですよね」

P「うぇ!?」

ちひろ「悪質な販売方法の一つですよ勉強になりましたか?」

P「危うくだまされる所でしたよ」

ちひろ「それじゃ、勉強代としてスタドリ1ダース買ってくれますか?」

P「まあ…実物が付くしいい勉強になったんで買わせていただきますかね」

ちひろ(ちなみに役立つ物を付ける、もしくは物の方に勉強代だの付加価値を付けるというのも常套手段なんですけどね)

・・・・・・走馬灯終了・・・・・・


・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

P「うう…あのときの俺騙されてるよ… ……ハッ!」ガバッ

飛鳥母「あ、気を取り戻されましたか?よかった…」



飛鳥「…というわけだからね。この人はアイドル事務所のスカウトだよ」

飛鳥父「つまり、先ほどの発言は恋人としての発言ではないと」

P「イタタタ…そういう事です…誤解を招く表現をして申し訳ない」

P「職業病で、良いと思った素材はスカウトせずにはいられないのです」

飛鳥母「あらあらまあまあ…」


先ほどの暴動からどうにか飛鳥の仲裁により、場を収める事が出来ているようだ。彼女には感謝しなければいけないだろう。
そして、一旦場が荒れた後のおかげか、スムーズに受け入れて貰え、けがの功名になっていた。
そうした状況に付け込ませて貰って、私はアイドルの仕事や契約等の説明に入った


P「……とまあ、大体は説明した通りの活動内容になっています」

P「契約内容としてはこれこれこういう契約になってますね」

飛鳥父「うむ…、しかし、娘にアイドルと言う不真面目な活動をさせるのはなぁ…」

P「アイドル活動自体不真面目なものでは無いですよ? 学校に通いながら部活のようにアイドル活動は出来ますし」

P「成績だって落とさせません! 仮に失敗したとしても将来が狭まる事はありませんよ?若いんですし大学卒業するまではどれだけ失敗しても大丈夫です!」

P「こう言った経験は失敗しても成功しても娘さんの人生を輝かせるスパイスになってくれますよ!」

飛鳥父「そうか…確かに言われてみればそうかもしれん。少しばかり私の視野が狭かったみたいだな」

飛鳥父「娘がどうしてもやりたいというなら、…止めたりはしない」

飛鳥「! ボクは家や学校以外に自分の居場所を見つけたいんだ、だからアイドル、やってみたいな」

P「良かった。話はまとまった見たいですね」


P「それじゃあ次の話なんですが…」

P「さっきも説明しましたが、事務所の本拠地は東京ですので…」

P「女子寮や事務所の付属施設を利用する料金は一切かかりませんので、出来れば女子寮に入って貰えると良いんですが」

飛鳥父「…それは、いくらなんでも無理だ不安が多すぎる」

P「この女子寮は未成年の子には厳しい門限を設けています」

P「そして朝夕二食は食堂でご飯が提供され、お昼は望めばお弁当が付くようになっています」

P「また、セキュリティも高水準である為に、強盗に押し入られる可能性がある一軒家の方が危険であるほどです」

P「不安な点などございません!」

飛鳥父「…飛鳥は良いのか? 今の学校の友達ともお別れしなくちゃいけないんだぞ?」

飛鳥「うん、ボクはもう決めたからね」

飛鳥「それに、自分が本当に真剣に打ち込めるものを見つけられた気がするんだ」

飛鳥「ボクは本気でアイドルになりたいんだ」

飛鳥父「…そうか」


飛鳥父「…Pさん」

P「…はい」

飛鳥父「うちの娘をどうかよろしくお願いします」

P「はい、お嬢さんを立派なアイドルにして見せます」


・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

P「それじゃあ、説明は以上になります」

P「一応望むのであれば、うちの事務員さんは有能なので今日にでも転校できるようになります」

P「まあ、今日は日曜日なので早くても月曜に転校となりますが」

飛鳥「早い方が良いんだけど、一応、クラスの皆にもお別れを言いたいから冬休みに入るまで待って貰えるかな?」

P「わかりました。冬休みはいつからですか?」

飛鳥「今週の水曜からだね」

P「では、うちの事務員を通して、冬休み明けに向こうの学校に通えるようにしておきますね」

P「出発は何日にします? もう少し私はこっちに居る予定がありますので来週の土曜日までなら私の車で送れますが」

飛鳥父「下手に新幹線に乗るよりは送って貰った方が良いぞ」

飛鳥「じゃあ、木曜日にお願いしたいんだけど」

P「かしこまりました」


・・・・・・
・・・


P「では、夜分遅くに失礼しました」ガチャ

P「それではまた、木曜日に」

飛鳥母「ええ、気をつけてお帰り下さい」バタン



色々と決めごとをした後、私は二宮家を後にした。


P「…よし、将来有望な子がスカウト出来たぞ」


グッとガッツポーズをし、予約をしていたホテルに向かう
明日からは仕事としてスカウト活動を1週間行う予定だ。
疲れを取る為にさっさと寝て明日に備えよう
そんな事を考えながらプロデューサーは夜の街に消えていった。



…そして日は巡って木曜日、大体めぼしい子のスカウトは行えたので、
飛鳥の上京に合わせてスカウトを打ち切る事にした。



・・・・・飛鳥の家の前・・・・・・

飛鳥「父さん母さん、それじゃあ行ってくるね」

飛鳥父「ああ、頑張ってな」

飛鳥母「身体に気をつけてね?」

P「それでは、大切な娘さんを預からせていただきます」

飛鳥父「娘に何かあったら承知しないからな」

P「ええ、それでは」


ブロロロロロ…

上京前に良くありそうな会話を交わした後、車を走らせる。
助手席に座っている飛鳥は、両親に向かって手を振り続けていたが、
通路の角を曲がり両親が見えなくなった所で手を振るのを止めた。


飛鳥「……」

P「…泣いてるのか?」

飛鳥「泣いては、無いよ」

飛鳥「ただ、自分を育ててくれた両親の顔が見えなくなって、ようやく…もうしばらく会えないんだなって思って」

飛鳥「急に実感がわいて、悲しくなってしまったのさ」

飛鳥「頭では分かっていても、顔が見えなくなるまで実感が湧かないなんてね」

P「そうか」ゴソゴソ

私はポケットからポチ袋を出し飛鳥に渡した

飛鳥「…これはなんだい?」

P「中に5000円程入ってる。ちょうど事務所から飛鳥の実家までの電車代だ」

P「もし、どうしても辛くて続けられないって思ったら逃げだして良いからな」

飛鳥「…まあ、受け取っておくけど使う機会は無いだろうね」

P「ほう?」

飛鳥「今まで真面目に打ち込めるものが無かったボクが初めて打ち込めるものを見つけたからね」

飛鳥「ボクの本気見せてあげるよ」

P「それは楽しみだ」



おわり
以上です

ガタガタの文章でしたが読んで頂いてありがとうございました。
ついでなので飛鳥の画像貼っておきますね

http://i.imgur.com/DtEQFwo.jpg

01:30│二宮飛鳥 
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