2014年02月10日

モバP「11月11日の、以心伝心の温もり」

――事務所、夜

 ガチャ


P「ふぅ、ただいま」

泉「あ、P。遅かったね」チラ

P「うん? ああ、泉か。お疲れ様」

泉「お疲れ様。はい」コト

P「おお、外は寒かったからな。温かいお茶は身にしみるよ」ゴク

泉「ふふ、Pったらおじいさんみたい」クス

P「大人と言え、大人と。…それと今は泉一人だけか?」

泉「さっきまで亜子とさくらと居たんだけど、先に帰ったよ。明日も仕事だからって」

P「はは、ちゃんとやってくれてるようで何よりだ」

泉「もう…みんなPのアイドルなんだから、当然でしょ?」

P「その言葉が聞けるなら俺も幸せもんだな、と……泉は帰らないのか?」

泉「うん、少しPと話がしたくて」

P「俺と? 泉も仕事終わりで疲れてるだろうに、明日でもいいんじゃ?」

泉「ううん、今日がいいの。駄目かな」

P「…まあ本人が良いなら大丈夫だろ。ただし少しだけだぞ。明日も仕事なんだから」

泉「ありがと。あ、お腹すいてない?」ポン

P「う…よくわかったな。夜食は本当は良くないんだけどなあ…」

泉「あっさりしたの、作ってあげる。それでどう?」

P「はは、そう言われちゃ文句は言えないな。俺も手伝うよ」

泉「だめだよ、P。給湯室狭いし。ほら、休んでていいから」

P「あー…悪いな。じゃあ頼むぞ」

泉「ふふ。美味しいの、作るから待っててね」ニコ

 スタスタ…

P(……あんな顔の泉は、滅多に見られないな)




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1384170198



P「その間に、うちのアイドルのニュースでも見てるか」カチカチ

P(『双葉杏、一ヶ月一万円生活をぶっちぎりで優勝』…共演者に申し訳なかったな、あれは)カチ

P(『複数の男女の愛憎を描くドラマに佐久間まゆが出演! 彼女の素顔に迫る』…素晴らしい演技だったな、一話の撮影。俺もドキドキした)

P(『ワインの消費量増加へ柊志乃がキャンペーンガールに』…普段から飲んでるからな、あの人は…一体どこにあれだけのワインを飲み込む胃があるのか)

 トタトタ…

泉「お待たせ、P。出来たよ……って、仕事?」

P「いや、ニュース見てだだけだ。…いい匂いだな」

泉「冷蔵庫にあったものだからバリエーションはないけど、どうぞ」

P「ありがとう――んぐ、やっぱり美味いな」

泉「その顔を見れば美味しいのはわかるよ」クス

P「はあ、仕事終わりにこれは最高だ。毎日食べていたいぐらいだよ」モグ

泉「ふふ、子供みたい。量はないから、ゆっくり食べてね」

P「まさか泉の料理がまた食べられるとは思ってなかったな……と、そうだ。話ってなんだ?」

泉「あ、あー……特にこれと言ってあるわけじゃなくて…ごめんね」

P「…はは、そういうのもアリだな。まあそういう時もあるから、適当に話そうか」

泉「……うん、そうだね。隣、座るね?」





P「今日の仕事はどうだった?」モグモグ

泉「いつもどおりかな。ニューウェーブでの仕事が多いからテレビでも役割ができてきてるし、前ほどあたふたはしなくなったよ」

P「最初の頃は緊張していたのがまるわかりだったしな」

泉「言わないでよ、もう…」プイ

P「はは、あれから一緒にやってきて、今じゃ先輩風吹かせるぐらいに上手くなってる。流れを見てきた俺にとって、これほど嬉しい事はないぞ」

泉「……やっぱり、嬉しい?」

P「勿論!」

泉(迷いなく…)

P「お前にとっちゃ俺はただの仕事の上司なんだろうが、俺にとっちゃ泉は娘みたいなもんだ。成長を見れて悲しいわけがないだろ」

泉「アイドルじゃないんだ?」

P「泉はそう見られたいか?」

泉「…ごめん、意地悪だったね。ふふ、私も嬉しいかな」

P「だからまあ、こうして何気なく話すのも悪くないもんだぞ。昔を知っているから、今の泉がよく見える」

泉「それは私もだよ。最初はちょっと無愛想かな、って思ってたけど、初めての仕事を終えたら喜んでくれたり、一緒になってレッスンしてくれたり……ほんと、優しいんだなって思う」

P「優しいって…そうか?」アセ

泉「そういう所。打算的じゃないっていうのかな、この世界って狡猾でいなきゃいけないのに、そうならなくても生きていけるのは、Pのおかげだね。みんなもそう思ってるよ、絶対」

P「…泉がそう言うなら、そうなんだろうな」ナデ

泉「無意識にアイドルを撫でるのも、優しさ?」

P「泉はどう思う?」

泉「最高の優しさだと思う。…ふふ」





 ――十数分後

泉「片付け終わったよ。…お粗末さま、結局全部食べたね」

P「せっかく作ってくれたんだから…と思ったんだけど、いつのまにか全部なくなってたよ」ハハ

泉「プロデューサーは言葉が上手いね」クス

P「おいおい、嘘じゃないぞ?」

泉「知ってるよ。Pの事だから」

P「以心伝心、ってやつか?」

泉「だといいね。……じゃあ、私の考えていることはわかる?」

P「泉の考えている事? あー、そうだな……なら、少し目を瞑ってくれないか?」

泉「え? め、目を?」ビクッ

P「ああ。駄目か?」

泉「だ、駄目じゃないけど――うん、わかった。……はい、瞑ったよ」

P「じゃあ、少し待ってろよ――」

 ガサガサ……


 シュル

泉「っ!?」ピクッ

P「――もういいぞ、泉」

泉「……マフラー?」モフ

P「今年の冬は寒いらしいから、俺なりに調べて買ってみたんだ。……大義名分もあるしな」

泉「それって…」

P「誕生日おめでとう、泉。…今までよく頑張ったこれたな。これからも、11月11日を二人で祝えるように、俺も頑張るよ」

泉「……P」

P「なんて、柄じゃないか。まあ、泉だけじゃない、ニューウェーブ全員、まだまだ大きくなれるから、覚悟しとけよ」ナデ

泉「……ふふ、Pこそ、忙しくて音を上げないようにね」

P「はは、望むところだ」





泉「……ありがとね、P。マフラー、大事にするから」

P「そう言ってくれると買ったかいがあったもんだ――と、もうこんな時間か」チラッ

泉「楽しい時間が早く過ぎちゃうなんて、神様も意地悪だね」スクッ

P「だからこそ楽しいと思えるんだよ。短いとわかっているから、こんなに楽しんでいられる」スク

泉「Pの誕生日でもないのに楽しいだなんて、変な話だね」クス

P「泉は楽しくなかったか?」

泉「そんなことないよ、そんなことない。すごく嬉しかった」フル

P「なら変でも何でもないじゃないか。――以心伝心、そういうことだろ?」

泉「……今夜はずっと寒いね」ギュ

P「そりゃあ大変だ。風邪を引かないように家まで送るよ」スッ

泉「……ふふっ」カツカツ

P「……はは」スタスタ


 ガチャ


 [おわり]
短いけど泉誕生日おめでとう。ジューンブライド泉いいよね

17:30│大石泉 
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