2015年07月02日

紗南「悪役のイメージが薄れてる?」麗奈「そうよ」

【モバマスSS】です



――――プロダクション、ラウンジ



麗奈「つ、疲れた……これだから休日の買い物は……」





紗南「ごめんねレイナちゃん。でも買い物に付き合ってくれてありがとう!」



麗奈「いいわよ。アタシも買いたい物あったし。で、アンタはこれからどうすんの」



紗南「そりゃもちろん早速遊ぶよ! やっと買いに行けた新作ゲームだもん!」



麗奈「あっそ。じゃあ適当に飲み物でも持ってくるわ」



紗南「わーありがと! じゃ、あたしはその間に準備をと」ゴソゴソ



紗南(えへへ! 今日はお休みだし張り切って楽しむぞー!)



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紗南(とりあえずジュースはレイナちゃんが取りに行ってくれたから、お菓子はその辺に置かれてるのを側に寄せて)



紗南(ソファーもテレビの前に寄せて……おもっ!)



紗南(……これで、良し! さーて遊ぶ準備は出来た! あとは……)



麗奈「炭酸飲料があればいたずらして渡そうかと思ったけど、残念なことに冷蔵庫にはフルーツの飲み物しかなかったわ……」



紗南「そりゃ残念だったねー。ま、あたしは簡単にレイナちゃんのいたずらには引っかからないけどね!」



麗奈「はいはい。とりあえずアンタにはオレンジジュースよ紗南」ポイッ



紗南「おっと! よしあたしナイスキャッチ☆ さて遊ぶぞー!」ストッ



麗奈「で、あんなに嬉しそうにしてたけど、今回はなんのゲーム買ったのよ」ゴクゴクッ





紗南「うーんと、簡単に言うと悪魔の力を持った主人公達を操って悪魔をスタイリッシュに倒してくゲームかな」



紗南「すごい色んなアクションが出来て楽しいんだよ! あとでレイナちゃんもやる?」



麗奈「気が向いたらね……それにしても悪魔ねぇ、あんまり小さい子が集まってる時にはやらないほうがいいんじゃない?」



紗南「んー、そこまで怖くないゲームだけど……そうだね、注意しとく。それにしても……」チラッ



麗奈「なによ」ゴクゴクッ



紗南「いやー、さっきのレイナちゃんの言葉、すっごいお姉さんぽいなーって。マーチングバンドに参加した影響?」



麗奈「ぐぬっ……しまった。そういえば、うまくやればこれもいたずらに使えそうだったのに……このレイナ様としたことが!」



紗南「ふふ、いい傾向じゃない? そういえばさっき買い物してた時にゲーム売り場で見た女の子も可愛かったよね」





麗奈「女の子……? ああ、あのアタシが主役のゲームのPV見てた」



紗南「そうそう、幽体離脱フルボッコちゃんのゲームの店頭PV見ながらフルボッコちゃんのマネしてた……なんだっけ」



紗南「ええとたしか、『悪い子はまとめてフルボッコにしちゃうぞ!』だっけ?」



麗奈「違う違う。『いたずらしちゃうような悪いヤツらは、みーんなまとめてアタシがフルボッコにしてあげる!』」ビシッ



麗奈「こうよ! ……はっ!?」カァァ///



紗南「おー、さすがは本人、決まってるね! さっきの子にも見せてあげれば良かったのに」パチパチ



麗奈「さ、紗南! アンタわざと!」///



紗南「さてなんのことかなー? でも、最近のレイナちゃんって本当に年下からすごい慕われてるよね」





麗奈「そりゃ魔法少女やフルボッコちゃんやってりゃね。ただ最近はそのせいで悩みもあるのよ」



紗南「よし、ゲーム始まった……って悩み? レイナちゃんが? 意外だなー」カチカチッ



麗奈「よーし紗南、ゲーム機のコンセント引っこ抜くわよ?」



紗南「わわっウソウソごめん! でも本当にレイナちゃんがいたずらのこと以外で悩んでるのってなんか珍しいような」カチカチッ



麗奈「アタシはね、世界征服を目指すワルなのよ? なのに最近は正義のヒロインみたいなイメージが強いらしくて……」



紗南「あー、たまに悪者なお仕事もしてる割には、ちっちゃい子からのファンレターとか完全にヒーローへの応援系だもんねレイナちゃん」



麗奈「そうなのよ! そりゃそういうファンレターも貰って嬉しいわよ? でもそうじゃないの!」



麗奈「そもそも紗南が言ったみたいに、最近はこれぞ悪役!って感じの仕事のほうがたまにってどう考えてもおかしいでしょ!?」





紗南「うーん、でもレイナちゃんって初めてあった時からそんなに悪役って感じがしな――」



麗奈「……なるほど、やっぱりコンセント引っこ抜かないと」



紗南「あぁまって! せめてセーブさせて!」カチカチカチッ



麗奈「……フンッ、冗談よ。まったく、紗南はわりと容赦がないわね」



紗南「そ、そうかな、レイナちゃんと話してると面白くてつい……でも、結局悩みっていうのは悪役のイメージが薄れてること?」



麗奈「そうよ……どうにかしたいわ、ホント」



紗南「どうにかしたいって言っても、その辺りはプロデューサーさん次第のとこもあるし、レイナちゃんが悩んでも仕方ないんじゃ?」カチカチッ



麗奈「そうなんだけど、せめてこのプロダクションのちびっ子達にはアタシが威厳ある悪役だと再認識させたいのよ!」





麗奈「アタシが悪役らしい笑みの練習して、これだ! って思う笑みを見せても小春や千佳がなんて言うと思う!?」



紗南「んー……王子様みたいとか、かっこいいとか?」カチカチッ



麗奈「その通りよ! かっこいいはともかく王子様みたいっておかしいでしょ!?」ドンッ



麗奈「もっと怯えなさいよ恐怖しなさいよ! というかせめて驚きなさいよ! アタシは世界を獲るワルなのよ!?」ドンドンッ



紗南「でも相手を怖がらせる笑顔って難しいよね。あたしが今やってるゲームの悪魔みたいに人から離れた姿も合わされば簡単かもだけど……」



麗奈「悪魔ねぇ……努力しなくても名前からして相手を怖がらせられるなんて羨ましいわ」



紗南「でも主役のキャラみたいにかっこいいって思われる悪魔もいるから、笑顔がかっこいいって思われてるならある意味成功かも?」カチカチッ



麗奈「……それでも複雑ね。かっこいいだけじゃワルとは言えないもの……ハァ」





紗南「そっかぁ……誰か笑顔だけで相手を怖がらせることが出来る人でもいれば、アドバイス貰えそうなのにね」カチカチッ



麗奈「でもそんなヤツ、うちのプロダクションにいた?」



紗南「皆笑顔は可愛かったりかっこよかったり眩しかったり素敵だったりするけど、怖いと思うような人は思いつかないかな」



麗奈「でしょ? だから悩みが解決しないのよ。もっとこう、悪者らしい雰囲気を出せるようになりたいのに……」



紗南「……あっ! でも噂でなら怖い顔出来る人聞いたことあるよ!」



麗奈「え? 誰よ」



紗南「ちひろさん!」



麗奈「ちひろ……? でもあの人大体いつも笑顔じゃない。怖いなんて思ったことないわよ?」





紗南「それがさ、なんでもちひろさんに迷惑かけたり機嫌を損ねた人には相当怖い顔見せるって噂なんだ」カチカチッ



紗南「それこそ鬼や悪魔なんかより恐ろしい表情してて、それなのに笑ってるんだって!」



麗奈「なるほどね。で、実際その怖いちひろの顔を見た人間はいるの?」



紗南「そこまでは……所詮噂だから話が大きくされてるだけかもしれないし……」カチカチッ



麗奈「ふーん……でも、ちひろね。盲点だったわ、あの人なにしてるかイマイチわかんないし」



紗南「そうだよねー。ちひろさんっていてくれると色々助けてくれるんだけど、メインのお仕事ってなにしてるんだろ?」



麗奈「案外プロデューサー達やアタシ達アイドルの監視とか」



紗南「ええー? そんなことする必要あるのかなぁ」





麗奈「分かんないわよ? 悪者らしくなるために色々勉強してるけど、実はちひろみたいなのがすごいことしてる黒幕だった!」



麗奈「なーんてオチの作品時々あったし、ちひろがそういうヤツの可能性も0じゃないわ」



紗南「流石にそれはちょっと考え過ぎだって。ちひろさんってなにしてる人か分かんないけど……」カチカチッ



麗奈「それがすでに目眩ましってことよ。……なんか、こう考えてるとちひろに色々聞いたほうが役に――」



???「私がどうかしましたか?」



二人「「うわあぁ!?」」ギュッ



???「そんなに驚かれなくても……」



紗南「ち、ちひろさん!? い、いつからあたし達の後ろに!?」





麗奈(ぜ、全然気配を感じなかったわよ!?)



ちひろ「つい先程からです。ラウンジに置くものがあったので寄ってみたら、お二人がなにかお話をされていましたので」



麗奈「お、置くもの……? あ、その手にあるのって、新しいお菓子……?」



ちひろ「はい。少し前にあるお仕事を片付けましたら、そのお相手から頂いたものでして。なかなか美味しいお煎餅ですよ、食べます?」



紗南「え、あの、その」



麗奈「……置いとけば、芳乃辺りが食べるんじゃないの?」



ちひろ「それもそうですね。では早速そのようにしましょう。……ところで、私になにか聞きたいことがあるのでは?」



紗南「べ、別にそんなことは!」





ちひろ「変ですねぇ、先程のお二人の会話の中に私の名前が聞こえたような気がしたのですが……」



麗奈「そうよ、ちょっとちひろに聞きたいことがあるわ!」



紗南「ッ!? ちょ、ちょっとレイナちゃん……!」ヒソヒソ



麗奈「なによ」ヒソヒソ



紗南「あたしさっき自分で言ったこと訂正する! これ偶然にしてもちひろさんのタイミングどう考えても良すぎるよ! まずいって!」ヒソヒソ



麗奈「アタシは逆にこれでちょっとちひろの噂話が本当なんじゃないかって感じたわ。だから確かめるのよ!」ヒソヒソ



紗南「だ、だけどそれが嘘だったらすごい失礼なこと聞いちゃうわけだし……やめたほうが……」ヒソヒソ



麗奈「でもアタシはもっとワルに思われたいのよ! そのためには悪魔にだって話を聞いてやるわ!」ヒソヒソ





紗南「で、でも……」



ちひろ「あの、お二人とも……? なにもないのでしたら、私はこれで失礼しますが……」



麗奈「ま、待って! ちひろに一つ質問があるわ!」



ちひろ「はい、なんでしょう?」



麗奈「相手を怯えさせたり怖がらせられる笑顔のやりかたって知ってる!?」



ちひろ「……はい?」



紗南「あ、えっと! 噂でちひろさんの笑顔が怖いって話があって、それで悪役らしい笑みをしたいレイナちゃんが興味持って!」アセアセ



紗南「だからレイナちゃんに悪気はないんですちひろさん! あっ、でも悪役らしくなりたいってことだから違うのかな……けど……」アセアセ





麗奈「そこまでフォローしなくてもいいわよ紗南……」



ちひろ「フフッ、なるほど、質問の事情は分かりました。ですが、私の笑顔が怖いなんて噂話は一体どこで……?」



紗南「あたしもいつから流れてる噂なのかは詳しくないです……でも、プロダクションにいるとスタッフさんとかから時々聞こえて……」



ちひろ「…………そうですか。それにしても相手を怖がらせる笑顔なんて、また変わったことをしようとしますね麗奈ちゃん」



麗奈「アタシは世界征服も目指すワルなアイドルよ! それくらい出来ないと今のままだと色々問題あるの!」



ちひろ「ふむ……ですが、私ではあまりお役には。相手を怖がらせるつもりで笑みを浮かべたことなんて一度もありませんし」



紗南「そうなんですか?」



ちひろ「はい。私が笑顔を浮かべる時は、いつも慈しんだり、労おうとしたり、相手へのお礼の気持ちが強いですから」





麗奈「でも、火のないところになんとかっていうし……本当はそうじゃない笑顔をしたこともあるんじゃないの?」



ちひろ「そうじゃない笑顔というのがよく分かりませんが……ただ、自分の感情のみに従った笑みということでしたら、実は何度か」



麗奈「ほらやっぱり! で、そういう笑顔する時はどういう気持ちなのよちひろは」



ちひろ「どういう気持ちと言われましても普通に……これが悪役らしい笑みという麗奈ちゃんの希望に叶うとは思えませんよ?」



麗奈「いいから! 試しにちょっとやってみせなさいよ!」



紗南「な、レイナちゃん!」



ちひろ「分かりました……ですが、一つだけ。なにを見てもお二人だけの秘密にして、他言無用と約束してもらえますか?」



紗南「な、なんでですか?」





ちひろ「だってほら……恥ずかしいじゃないですか、あんまり人に見せたくない顔をするんですから」



麗奈(……あれ、これもしかしたらちひろの意外な弱みを握れちゃう……? やった!)



麗奈「いいわ、約束してあげる! 誰にも言わないわよ! 紗南もいいでしょ?」



紗南「えっ!? あ、うん! 絶対誰にも言わないって!」コクコク



ちひろ「ありがとうございます。……では、お望み通り見せましょう」



麗奈「ちなみに今ちひろの感情はなによ?」



ちひろ「それは流石に言えません。ですが、お二人の態度は可愛らしいなぁとも思っていますよ、だから――」



ニコッ

http://i.imgur.com/F5rP4ap.jpg



二人「「ひぃ!?」」ギュウ



ちひろ「こんな風に笑えちゃいます。……分かりました?」



二人「」



ちひろ「あら、頷くか返事をしていただかないと」



麗奈「わ……分かった! 分かったからもうやめて……!」



紗南「……ひええ……」ガタガタ



ちひろ「……フフッ、そうですか。麗奈ちゃん、これで悪役らしい表情は出来そうですか?」スッ



麗奈「……ど、どうかしらね! た、楽しみにしとくといいわ!」





ちひろ「ええ、そうさせてもらいます。さて、質問に答えましたので私はこれで失礼します」ペコッ



ちひろ「……約束、守ってくださいね? それでは」スタスタ……



麗奈「――言った所で、見てないヤツは信じないわよあんなの……」



紗南「……こ、怖かった……怖かったよぉ……」



麗奈「紗南、ごめんね付きあわせて」ナデナデ



紗南「グスッ…………うん、もう大丈夫……」



麗奈「それにしても、噂話は事実だったようね。最初に見たヤツはちひろになにをしたのよまったく……」



紗南「……それで、レイナちゃんどうするの? 一応アドバイスみたいだったけど……」





麗奈「こんな思いした以上とりあえず試してみるわよ! 要するに自分に素直になって笑えばいいんでしょ!」



紗南「た、多分……」



麗奈「だったら簡単じゃない! そしてアタシの素直な笑顔っていうのはきっと悪役に向いてるってことよ!」



紗南(それはないかなー……?)



麗奈「紗南、今なんか酷いこと考えたでしょ」



紗南「え!? そ、そんなことないよ……?」



麗奈「まぁいいわ、紗南、まずはアンタに試すわ! とくと見なさい、これがレイナ様の悪役らしい笑みよ!」



ニコッ

http://i.imgur.com/eBinq3O.jpg



紗南「――……レイナちゃん」



麗奈「ふぅ、こんなもんかな……で、なによ」



紗南「さっきのちひろさん見た後だと、すごく可愛くて全然恐くない」



麗奈「……うん、分かってた。しばらくは、悪役らしくは振る舞えそうにないわ……」



――そしてこの後しばらく、麗奈と紗南は夢でちひろを見ては飛び起きる満足に眠れない日々が続くのであった。



〈終〉





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