2014年02月19日

P「島村、渋谷、本田、そろそろ支度しろ」

1月20日/朝/事務所

凛「ん、もうそんな時間?」

未央「うっし、今日の収録も張り切って行こーう!」


卯月「今日も頑張ろうね!二人とも!」

P「あと、俺は送り届けたら一度事務所に戻らなきゃならん。帰りは和久井さんにお願いしてあるからそっちで連絡取ってくれ」

凛「事務所戻ったら待ってた方がいい?」

P「いや、明日の予定だけ確認して帰宅で構わん。俺は姫川と川島さんを送った後三船さんのところまで車飛ばさなきゃならんからな」

凛「美優さんって…泊まりの仕事じゃん。結構遠いよ。間に合うの?」

P「撮影には間に合わなくていい。宿で先方に挨拶して帰る」

未央「それ、何時に帰れるの…?」

P「知らん、姫川次第だ」

友紀「なんであたしだけなのー?!」

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P「まだいたのか姫川、早く行け」

友紀「もう出るよー!瑞樹さん、いこっ!」

瑞樹「そうね、少し余裕もって出ましょうか」

P「川島さん、くれぐれも姫川から目を離さないでくださいね?」

友紀「だかr」

瑞樹「ほら、いくわよ友紀ちゃん」グイグイ

バタン

卯月「ねぇねぇ、明日はオフだから終わったらみんなでご飯食べに行こうよ!」

未央「いいねぇ、何人か誘ってみようよー!」

凛「私は朝からレッスンだけどね…」

P「あと…安部、安部はどこ行った?」
菜々「あっ、はーい、ナナは給湯室ですよー!」

P「あぁ、そこにいたのか。新春イベントの映像が回ってきてるから、先に確認しといてくれ」

菜々「はーい、見終わったら机の上においときますねー!」

P「あぁ、頼む」

凛「あ、私も見たいな」

卯月「私も私もー!」

未央「二人ばっかりずるいー!あたしも見たいぞー!」

P「置いておくから時間が空いたら見るといい。それよりもう出るぞ」

NG「はーい」
1月20日/朝/営業車内

凛(助手席)「ねぇプロデューサー」

P「…何だ」

凛「今年は新年会ってしないの?去年はしたじゃん」

未央(後部座席)「あー、やってたねぇ」

卯月(後部座席)「そういえば忘年会もやってないよね?」

P「…クリスマスパーティはしただろう?」

凛「プロデューサーほとんどいなかったじゃん」

P「いなかったんじゃない…酔いつぶれた姫川を三船さんと…女子寮に運んでたんだよ」

未央「あー、友紀さんさっさと始めちゃってたもんねぇ」

卯月「シーズンオフは仕事も少ないーってね」

P「もどってきたら今度は高垣さんと片桐さんだ…。今度は木場さんと和久井さんに手を借りるハメになった」

未央「だから大人が少なかったんだ…」

凛「それなら尚更ちゃんとみんなで集まれる日作ろうよ」

卯月「それいいね!やりたいね!」

P「もうお前らも名前の売れたアイドルだからな、なかなか全員ってわけにはいかないだろう」
未央「私たちも長い付き合いだもんねぇ」

P「2年少しを長いと感じるならそうなんだろうな」

未央「つっめたいなぁ…」

卯月「でも、みんなで盛り上がったりすることで事務所の団結も強まると思います」

P「そんなことしないと結束できないのか?」

凛「そんな言い方しなくても…」

P「…いや、すまない。悪かったよ、島村」

卯月「あっ、いえ、そんな」

P「まぁなんだ、アイドルたちが相談して集まったりするのには俺は関知しない。日程調整でなんとかなるなら申告しろ」

未央「うーん…」

凛「ねぇ、プr」

P「ほれ、着いたぞ、忘れ物のないように降りろ」

未央・卯月「はーい」

凛「………」
1月20日/昼前/事務所

P「…っと、プリンタのトナー切れてんな」

ちひろ「おはようございまーす。ごめんなさい、予定より遅くなっちゃいました」

P「千川さん、おはようございます。ちょうどいいところに」

ちひろ「何ですか?超得ショップならお休みですよ?」

P「違います。プリンタのトナー切れちゃったんですけど、予備どこです?」

ちひろ「あぁ、ちょっと待ってくださいねー」パタパタ

弾んだ声「おっはようございまーす!」

控えめな声「おはようございます」

P「ん?――あぁ、おはよう」

弾んだ声「いやぁ今日も寒いねぇ、手袋が手放せないよ」

控えめな声「そうですね、春が待ち遠しいです」
ちひろ「あら、おはよう、美嘉ちゃん、智絵理ちゃん」

美嘉「あっ、おはようございます、ちひろさん」

智絵理「おっ、おはようございます」

P「あんまり見ない組み合わせだな」

美嘉「そう?結構仲良しだよ?」

智絵里「美嘉さんとは莉嘉ちゃんと3人でお買い物行ったりしてますよ」

ちひろ「あらあら、それは仲良しね」

P「ん?緒方は今日仕事入ってたか?」

智絵里「あ、いえ、こないだ実家に帰っていたのでおみやげを持ってきたんです」

ちひろ「あら、わざわざありがとう」

美嘉「智恵理ちゃん気が利くよねー、アタシより年下なのに」

P「確かに、俺が高校生の頃はそんな気は回せなかったろうなぁ」

ちひろ「プロデューサーさんの高校生の頃、かぁ」

智絵里「どんな高校生だったんですか?」

P「ん?……別に楽しい話はない。部活やって家に帰る、それだけの高校生活だ」

美嘉「部活?」

智絵里「何の部かt」

怒った声「だからそれはもう説明したじゃん!」

智絵里「ひっ」

苛立った声「説明になってないって言ってんだよ!」


<ガチャ
P「帰れ」

美嘉「開口一番にそれ?!」

ちひろ「何ケンカしてるの?加蓮ちゃん、奈緒ちゃん」

加蓮「奈緒が終わったことをグチグチ言うから」

奈緒「加蓮がアタシのクーポン勝手に使ったのが悪いんだろ?!」

P「事情は分かった。出口はそっちだぞ」

加蓮「何で挨拶もなしに帰宅を促すの?!」

奈緒「そうだよPさん!DTBのDVD貸してやっただろ!」

P「…今は関係ない。緒方が怯えてるだろ」

智絵里「あぅ、いえ、そんな」

加蓮「あ…ご、ごめんね、智絵里」

奈緒「お、おう…すまんかった」

美嘉(かわいい)

P「にしても神谷も北条も今日はオフだろう?」

奈緒「凛がごはん食べに行こうって言うから」

加蓮「奈緒からその話聞いてね」

P「NGの連中とか?それ、晩飯じゃないか?」

なおかれん「えっ」
>>8 知ってる名前は出てくるかもしれないよ

P「今朝車の中で言ってたぞ」

加蓮「ちょっと奈緒、どういうこと?」

奈緒「え、だってほら」

加蓮「…『今日ごはん食べに行かない?』…なにこれホントに女子高生のメールなの?」

美嘉「しかもこれじゃお昼なのか夜なのか全然わかんないじゃん」

智絵里「えっと、これ、なんて返信したんですか?」

奈緒「『おk、加蓮にも言っとく』って」

加蓮「何でちゃんと聞かないのよ」

奈緒「う、ぐぬぬ」

ちひろ「まぁまぁ、せっかくだからゆっくりしていったら?」

美嘉「そうだよ、ゆっくりしていきなよ」

P「姉ヶ崎、お前はもうそろそろ出ろ」

美嘉「わかってるよー。…そろそろその呼び方やめない?」

P「わかりやすいだろう」

奈緒「そうだよ姉ヶ崎」

加蓮「姉ヶ崎ってなんかほんとにいそうだよね」
フレデリカ「でも妹ヶ崎はたぶんいないよねー」

奈緒「『いもがさき』だもんな!」

美嘉「ちょっと莉嘉のこと変n……」

一同「……………」

奈緒「ふふふフレデリカさん?!?!?」

加蓮「いつの間に…」

フレデリカ「チエリちゃんがその赤い箱出すとこからかなー」

ちひろ「ほぼ最初からね…」

美嘉「心臓に悪いよ…」

智絵里「フレデリカさんも今日はお休みじゃないんですか?」

フレデリカ「うん、休みだよー」

P「事務所に何しにきたんだ?」

フレデリカ「何にもー、ただ暇だったんだー」

P「お前らは事務所を集会所かなんかと勘違いしてないか…」
美嘉「…あ、そろそろ出なきゃ!プロデューサー、ちひろさん、行ってきます!」

ガチャ

バタン

フレデリカ「プロデューサー、送ってあげないの?」

P「そうしてもやりたいが、今日中に仕上げなきゃいけない書類もたまっててな」

加蓮「プロデューサー、夏くらいから働きっぱなしじゃない?」

P「それが社会人だ」

奈緒「社畜の間違いだろ」

P「言ってろ」

智恵里「じゃ、じゃあ、私そろそろ帰りますね」

フレデリカ「えー、せっかく来たんだしゆっくりしていきなよー」

P「宮本も短大はどうしたんだよ…」

フレデリカ「それg」

正体不明の声「短大はどうしたんだい、フフッ」

P「どこですか高垣さん」
楓「バレてしまいましたか」ガタガタッ

P「うぉ?!」バッ

ちひろ「つ、机の下に…」

楓「プロデューサーが戻ってくるまで席を温めておこうかと思いまして」

P「そこは森久保の席です」

加蓮(公認だったんだ…)

フレデリカ(しゃべってたのにー)

ちひろ「楓さんは午後からレッスンですよね?いつからいたんですか?」

楓「それが、レッスンの時間を間違えてしまいまして、10時ごろからここで待ってました」

P「…ずっと、ですか」

楓「はい」

ちひろ「え、でも鍵は?瑞樹さんが施錠して出発したはずじゃ…」

楓「午前のレッスンは留美さんたちだったので」

加蓮「あぁ、和久井さん合鍵持ってるもんね」

楓「留美さんに『楓、あなたのレッスンは午後からよ、しっかりなさい』って怒られちゃいました」

奈緒「プフッ、似てる」

P「それでわざわざ内側から鍵かけてここに潜んでたんですか」

智絵里(プロデューサーさん、何で気付かなかったんだろう…)
加蓮「手が込んでるね」

フレデリカ「じゃあさ、みんなでごはん食べにいこーよ、みんな時間あるんでしょ?」

智絵里「じゃ、じゃあ私もご一緒してもいいですか?」

フレデリカ「だめなわけないじゃん、ほらほら早く準備ー」

奈緒「何食べる?」

加蓮「マックにしよーよ」

P「北条、ジャンクフードは控えろって言っただろ。何度も言わせるな」

加蓮「いいじゃん、年明けからは行ってなかったんだから」

フレデリカ「アタシはデザートのあるところがいいなー」

智絵里「じゃあ…向かいの通りを行ったところの洋食屋さんにしませんか?」

ちひろ「あ、瑞樹さんに教えてもらったんでしょ?」

智絵里「はい、ごちそうになりました」

奈緒「瑞樹さんのチョイスに間違いはないだろうな」

楓「焼き鳥たべたい」

P「あんた話聞いてたのかよ」
>>14
なにそれ面白そうだから書いてよ

奈緒「…Pさんも行かないか?」

ちひろ「行ってきたらいいんじゃないですか?」

P「…いや…こっちのめどが立たないと動けませんよ」

ちひろ「次回のPMFの書類でしょう?別に急ぎじゃ…」

P「今日は夕方からもう戻ってこれませんから」

加蓮「いいじゃん、行けないって言ってんだから」

智絵里「プロデューサーさん、忙しそうですし…」

奈緒「…うん…」

楓「今日はお姉さんのおごりです」フンスフンス

フレデリカ(お姉さん…?)

加蓮(お姉さん……?)

ちひろ(あ、ASKUL頼むの忘れてた)
1月20日/昼過ぎ/事務所

ちひろ「行けばよかったじゃないですか」

P「だから、今日はこいつ仕上げて三船さんとこの現場行かないと」

ちひろ「確かにあの監督さんとは事務所的には初めてですけど…」

P「確実に1クールに1つ枠のある大河を押さえておけばもう少し仕事が入りやすくなるかな、と」

ちひろ「そんなこと言って、三船さんに気に使ってるんでしょう?」

P「…どうでしょうね」

ちひろ「三船さんの性格くらいもう分ってるでしょうに」

P「ずいぶん突っかかるじゃないですか」

ちひろ「あなたにそろそろ成長してほしいからですよ」

P「…善処します。ご迷惑をおかけしてるのは自覚してますから」

ちひろ「あぁもうぅ!そうじゃなくてぇえ!」

prrrrrr

P「…ん?あぁ失礼」

ちひろ「大事なとこで」ボソッ

P「Pです」

美嘉『プロデューサー!!どうしよう!?』

P「どうした、遅れてるのか?」
<タダイマー アレチエリチャンハ?

美嘉『違うの!パパが倒れたって莉嘉から電話で、ママも莉嘉も今病院で、でも仕事がどうしよう?!』

P「分かった、今タクシーか?」

<エキマデオクッテキマシタ アラソウナンデスカ

美嘉『パパに何かあったら、アタシ、莉嘉も、どうしよう!!!』

P「そうだな、で、今タクシーの中か?」

<プロデューサードウシタノ? ワタシモヨクワカラナイノ

美嘉『タクシーだけどパパが櫻井記念病院に!!!』

P「分かった、タクシーの運転手に代われ」

<ナオーキョウハナンカモッテナイノー? PSPシカネーヨ

美嘉『は?!何言ってんのこんな時に!!!』

P「いいから代われ」

<カエデサンナニノンデンノー? チャチャットオチャイレテキマシタ ンフッンフッ

美嘉『なんなの?!こっちが大変な時に!!!』

P「分かってるから代われって言ってんだよ、いいから早く早く代われ!!」

<Pサンガメズラシクオコッテル メズラシクナクナイ?
美嘉『…ッ、わかったよ…」

受話器越し声『ゴソゴソ…お電話代わりました、○×タクシー運転手です」

P「お世話になります、オフィスセンカワのPと言います」

<プロデューサーイツモオコッテンジャン ソウカ?

運転手「オフィスセンカワ…、あぁ、はい」

P「すいませんが後部座席でおろおろしてるうちのアイドルの行き先を櫻井記念病院に変更をお願いしたいんですが」

<カエデサンソロソロジカンデスヨ チャチャットオチャノンジャイマスネ

運転手『えぇ、聞こえてましたよ、すぐに向かいます』

P「よろしくお願いします。このまま通話を切って城ヶ崎に携帯を渡してください」

<2カイメハチョット… !?

運転手『あぁ、どこかで見たことがあると思ったら姉ヶ崎さんですね。わかりました。それでは失礼します』

P「えぇ、失礼します」

ピッ

P(さて…)
奈緒「か、楓さん、そんな落ち込まなくても…」

加蓮「そうだよ、1回目でもそんなに面白くなかったから」

楓「ぶぅ」

フレデリカ「膨れちゃったー、カエデさんかわいいねぇ」

ちひろ「プロデューサーさん?今の電話は…?」

P「姉ヶ崎は仕事に行けません」

ちひろ「え、それはどういう…」

P「宮本」

フレデリカ「んー?」

P「すまん、力を貸してくれ」

加蓮(あれ?)

フレデリカ「…どしたのいきなり?」

P「姉ヶ崎が仕事に行けなくなった。代役を頼みたい」

フレデリカ「うん、いいよー」

加蓮(軽っ)

奈緒(まだ何の仕事かも聞いてないのに)

楓(自分のことを棚にあげたな、ンフッ)

奈緒(こいつ…直接脳内に…ッ?!)

フレデリカ「何の仕事なの?」

P「雑誌のモデルだ、早く支度してくれ」

フレデリカ「モデルならさ、カエデさんのほうがよくない?」

P「いや、その…高垣さんは今からレッスンだからな」

奈緒(美嘉のモデル…仕事…あっ)

加蓮(むしろちょっと見たいけどね)

楓「……ちょりーっす」

奈緒「それ違うアイドルだよ楓さん」

フレデリカ「じゃどーやって行くの?」

P「俺が送っていく。千川さん、しばらく空けます」

ちひろ「はいはい、お帰りは何時ごろですか?」

P「宮本次第ですが、後ろはおそらく姫川と川島さんの回収と時間帯が被りますから夕方以降ですね」

ちひろ「了解しました、気を付けて行ってくださいね」

フレデリカ「はーい、行ってきまーすっ」

ガチャ

バタン
加蓮「……ねぇ、奈緒」

奈緒「……ん」

加蓮「プロデューサーって、あんな物言いもするんだね」

奈緒「…は?」

加蓮「いーっつも偉そうにしてるくせに、都合の悪いときばっか『力貸してくれ』ーだなんて」

奈緒「…っ!かr――」
楓「加蓮ちゃん」

加蓮「え?」

奈緒「楓さん?」



楓「――貴方は彼のこと、何も知らないのね」
奈緒「――!」ゾワッ

加蓮「え、それっt」

生意気な声「フッフーーン!!カワイイボクの出勤ですよ!!」バターン

楓「…もう行くわ」

加蓮「え、ちょっと楓さん!」

生意気な声「あっ楓さんおh…あれ、え、何で怒ってるんですか、ひゃぁ!髪をぐしゃぐしゃにしないでください!天使の羽がもげちゃいます!!」

加蓮「……何なの、一体」
1月20日/夕刻/某球団二軍本拠地前

P「川島さん、姫川、お疲れ様でした」

友紀「ただいまー!…あれ、フレちゃんじゃん、どしたの?」

フレデリカ「やっほー」

瑞樹「Pくん、ありがとう。…何かあったの?」

P「些細なことです」

フレデリカ「人のオフをつぶしておいてササイはないんじゃないのー?」

友紀「…オフ?」

P「…悪かったとは思ってる。手当に関しては千川さんと――」

フレデリカ「そんなのどうでもいーよ、その代わりちょっとお願いきいてほしーな?」

P「…却下だ」

フレデリカ「つれないなぁ、最後まで聞いてくれてもいいじゃん」

P「会社から手当はつく、それでいいだろう」

友紀「ねーねープロデューサー!今年のキャッツのセカンドは案外テラウチががんばるかもよ!」

P「いきなりなんだ、今日はテラウチに会ったのか?」

友紀「んーん、カワイコーチ!それとキョースケと、サネマツとー」

瑞樹「ハシモト君には彼が高校生の頃に会って以来だったわねぇ…月日が経つのは早いわ」

フレデリカ「ちょっとプロデューサー、アタシの話はまだ終わってないよー!」

P「なんでそんなに元気なんだよお前ら…」
1月20日/夕刻/事務所隣接駐車場

P「ほれ、姫川起きろ」

友紀「んぁ?んんぅー…」

瑞樹「ちょっとはしゃぎすぎちゃったのよね」

フレデリカ「あはっ、ユキちゃん子供みたーい」

P(姫川の方が年上なのに)

友紀「んんぅ、うるさぁい」ゴシゴシ

P「川島さん、合鍵持ってます?」

瑞樹「えっと、あら、そういえば早苗に渡したんだったわ」

P「そうですか、じゃあ鍵渡しますんで最後の戸締りお願いしますね」スッ

瑞樹「ちょっと待って、私明日オフなのよ。すぐ終わるからちょっとだけ待っててくれないかしら?」

P「いえ、この後三船さんの現場に…」

瑞樹「いけずねぇ。ちょっとだけ、ね?」

P「…わかりました。それなら上がりますか」
フレデリカ「じゃあアタシユキちゃん連れて帰るねー」

P「すまんな、宮本、ありがとう」

フレデリカ「いいっていいって、恩は返してもらうけどねー」

友紀「んふぅ、今年ナカイは外野で使うんだーい…」

フレデリカ「ほら、ユキちゃん、しっかり立ってよ――じゃあねプロデューサー」

P「あぁ、お疲れ」

瑞樹「それじゃ、お願いねP君」

P「早めにお願いしますね」

瑞樹「女を急かすなんて、なってないわね」

P「………」
1月20日/夕刻/事務所

P(千川さんはもういないか…)

瑞樹「ねぇP君、せっかく二人きりなんだし、ちょっとだけいいかしら?」

P(!?二人きり!?しまった?!)

瑞樹「失礼ね、変な顔しちゃって。取って食ったりしないわよ」クスッ

P「あ、いえ、別に」

瑞樹「そっちに掛けて、テーブル越しならいいでしょう?」

P「は、はい」

瑞樹「――単刀直入に言うわね、P君」

P「っ、はい」

瑞樹「…もう少し、なんとかならない?」

P(単刀直入ってこれでいいのか?)

P「言ってる意味がわかりません」

瑞樹「トボけたってだめよ、何を隠してるの?」

P「だから、言ってる意味がわかりません。今日の仕事、気に入りませんでしたか?」

瑞樹「そうじゃないわよ。あなたの采配は完璧よ。そこじゃないの」

P「だったら、何ですか」



瑞樹「――気に入らないわ」




P「担当を変えろっても、ここにプロデューサーは僕しかいません」

瑞樹「……ふぅ……」

P「――誰かから、何か聞きましたね?」

瑞樹「こっちの質問には答えないくせに」

P「だからお答えしています。『言ってる意味がわかりません』」

瑞樹「あぁ言えばこう言うんだから」

P「お互い様です」

瑞樹「安心して。私が聞いたのは多分貴方が隠してることじゃないわよ」

P「そんなに僕に隠し事をさせたいんですか」

瑞樹「P君」

P「はい」

瑞樹「あなたのことを知ってもらうには、この事務所のアイドルは少し幼い子が多いわ」

P「今日の川島さんは、随分わかりにくい物言いをしますね」

瑞樹「分かりやすく喋るのは得意なんだけどね」

瑞樹「でも、わかりにくいのは貴方の方よ」

瑞樹「今日だって美優のところに行くのは汚い打算や狡い戦略のためじゃないんでしょう?」

P「川島さん」

瑞樹「何かしら」

P「どんな意図かは知りませんが、そういう言われ方をするのはひどく心外です」

瑞樹「…えぇ、そうね。ごめんなさい。言い過ぎたわ」

P「僕はね、川島さん」

P「この事務所のアイドルには大きくなってもらいたい」

P「そのための土台や箱づくりをするのが僕、あるいは千川さんの役目です」

P「その役割を自覚していること、それに向けて動いていること、そんな気持ちを極力表に出さないようにしていること」

P「川島さんはそのことがわかりにくいと仰っているのでしょう」

瑞樹「そう、ね」

P「そんなの、見せたくないでしょう?」

瑞樹「そうなの?」

P「学校の先生に『俺はお前たちのことを想っているからこそ叱るんだ』なんて言っちゃう人、いませんでした?」

瑞樹「あぁ――その先はいいわ、理解したもの」

P「そういうことです」
瑞樹「…ふぅ…」

瑞樹「言いたいことはわかったわ」

瑞樹「でも、それと現状は別よ」

P(誤魔化せなかったかー)

P「それに関しては理解者がいると思っています」

瑞樹「理解者?」

P「ええ。川島さんも、その一人になってもらったつもりですが?」

瑞樹「…は?」

P「僕の考え、嘘偽りなく全部言いましたよ?」

瑞樹「………」

瑞樹「…ふぅ。全く、この子は」

P「子ども扱いですか」

瑞樹「そこまで聞かされたら、仕方ないわよねぇ…」

瑞樹「いいわ、フォローはしてあげる」

P「いや、別にフォローしてほしいとかじゃないんですけど」

瑞樹「するっていってりゅのよ!」

P(噛んだ)
瑞樹「こうなったら仕方ないわね、お姉さんがひと肌脱いであげるわ」フンス

P「は、はい…あの、もう行っていいですか」スッ

瑞樹「そうね――ね、P君」

P「なんですか」

瑞樹「あなたの名前、事務所に入る以前にも聞いたことがあるんだけど」

P「あぁ、僕は業界でも有名人ですからね。【鋼の社畜】と言えば僕です」

瑞樹「【ちひろの手先】とも呼ばれてるわ」

P「そっちは心外です」

瑞樹「そっちじゃなくて――いえ、今はいいわ」

P「それにしても、流石は川島さんですね。あ、鍵閉めますね」

瑞樹「あら、珍しく褒めてくれるの?」バタン

P「ええ、正直自分の信条や信念なんかアイドルの皆は知らないし、別にそれでもいいかと思ってやってきましたから」

P「…実は今ちょっとだけうれしいんですよ」

瑞樹「なに言ってるのよ。そんなことくらい――」



瑞樹「――わかるわ」




1月20日/夜/某県撮影班宿舎(旅館)/監督の部屋

P「うちの三船は如何ですか?うまくやっていますか?」

監督「あぁ、彼女の雰囲気なら問題ないだろう。年齢以上の色気がある」

P「困りますよ?彼女はうちの大切なアイドルです」

監督「ははっ、センカワさんとこの子に変な気を起こすことはないよ」

P「おや、他の事務所ならいいと?」

監督「ははは、こんな年寄にそんな気概はないよ。嫁さんだけで精一杯さ」

P「年寄とは随分じゃあないですか」

監督「三船君やほかの若い演者をみてればそうも思うさ。P君、君はいくつになる?」

P「確か監督の息子さんと同い年だったはずですね」

監督「おや、誰かから聞いたかね」

P「えぇ、局にいる知人から。単純にお話のタネになればと思いまして」

監督「本当にそれだけかい?」

P「ご想像にお任せします」

監督「…食えないね、君は」

P「ええ、僕は女性が好きですから」
監督「はっはっは、言うじゃないか」

P「…さて、遅くまでお邪魔してしまいましたね」

監督「残念だな、車でなければ一杯つきあってもらったのに」

P「それなら次回もうちのアイドルを使ってもらわなければいけませんね」

監督「狡いね、君は」

P「…最近よく言われます」

監督「そうだ、三船君のところに顔を出していくんだろう?」

P「えぇ、そのつもりです」

監督「彼女、少し緊張していたようだからね、声をかけてくれると彼女も喜ぶだろう」

P「…ご迷惑を?」

監督「そうじゃない。ただ彼女の本来の顔が見たいだけさ」

P「そのあたりは…私ではどうでしょうね」

監督「さぁ、どうだろうね」

P「――それでは、失礼させていただきます」

監督「あぁ。気を付けてな」パタン

P(思ったより気さくな人だったな)
1月20日/夜/某県撮影班宿舎/三船美優の部屋

トントン

落ち着いた声「はい」

P「Pです。三船さん、今大丈夫ですか?」

スッ

美優「Pさん、遠いところわざわざありがとうございます」

P「いえ、撮影お疲れ様でした」

美優「今お茶を入れますね」

P「あ、いえ、お構いなく」

P(二人きり、か…)

美優「すいません、さっきまで温泉に行っていまして」

P「…お休みのところ、申し訳ありません」

美優「い、いえ、そんなこと…」

P「如何でしたか、今日の撮影は」

美優「実は、今日何度か失敗してしまいまして…」

P「緊張していたそうですね。監督さんも少し心配されてましたよ」

美優「そう、ですか…」

P「安心してください。後ろ向きなことは何も仰ってはいませんでした。むしろ評価は上々です」

美優「それを聞いて安心しました」

P「三船さん」

美優「はい?」

P「この仕事は貴方にとって大事なものとなるでしょう。なぜか分かりますか?」
美優「…事務所初の時代劇だから、ですか?」

P「事務所の話じゃありません。三船さんの話です」

美優「私、ですか…」

P「確かに、主役級よりは1枚落ちる仕事です。

P「ですが、何度台本を読んでもこの役を演じている姿は三船さんしか思い浮かびませんでした」

美優「そんな、私なんかが…」

P「いいえ、貴方でないと出来ません」

美優「じゃあ…」

P「大和撫子」

美優「…え?」

P「慎ましやかで凛として清楚、一歩引いて男性を立てることも忘れない女性のことです。…だいぶ自己解釈も混じってはいますが」

美優「そ、そんな、私なんかが…」

P「そうですね、今の三船さんには足りないものもあります」

美優「…足りない、もの」

P「そうです。それが何なのかはこの仕事を通じて探してみてもいいんじゃないでしょうか?」

美優「………」

P「――さて、そろそろ帰らないと」

美優「えっ、もう、ですか?」

P「定時は過ぎてますから」

美優「…ふふっ」

P「…なんですか?」

美優「プロデューサーさん、ずるいですね」
P「またそれですか…」

美優「誰かに言われたんでしょう?」

P「えぇ…あー、監督さんに、ね」

美優「プロデューサーさん、私、この仕事がんばってみます」

P「そうでないと困ります」

美優「そうですね、ふふっ」

P「さて、お邪魔しました」

美優「はい、お気をつけて帰って下さいね」

P「ええ、それでは、失礼します」スッ

パタン

美優「大和撫子、か」

美優「…本当に、ずるい人」
1月20日/真夜中の5分前/事務所前

P(あー、結局こんな時間かー)

P(PMFの申請書類と演出表もまだできてないし、来週の休暇はまた流れるんじゃないかこれ)

カチャ、ガチッ

P(…ん?あれ?)

ガチッガチッ ガチャ ガチャッ

P(鍵、開いてる…?千川か?)

キィ

P「お疲れ様です…?千川さん?いるんですか?」

冷静な声「遅かったわね。いえ、まずはお帰りなさい」
P「……和久井さん?」

留美「P君、ちょっとここで待ってて」スッ

P「え、え、何ですか?」

留美「いいから待ってなさい」

P「…はい」

キィ ガチャ バタン

P(仮眠室?誰かまた事務所で飲み会でもしてたのか?)

キィ ガチャ バタン

寝ぼけた声「ん、お帰り、プロデューサー」

P「あ、姉ヶ崎?」

留美「この子、ずっとあなたのこと待ってたのよ」

P「――ッ!和久井さん!!」

留美「何かしら」

P「何かしらじゃないだろ!未成年をこんな時間まで引っ張って!何考えてんだ!」
美嘉「ち、違うよプロデューサー!アタシが留美さんに頼んだんだよ!」

P「お前もお前だ!親御さんが…、親御さんが…ん?」

P「いやいやちょっと待て!親父さんが倒れたのにこんなとこで何やってんだ早く戻れ!!」

P「和久井さん、車出してください!あ、いやこんな時間だからやっぱ俺が!」

美嘉「ちょ、ちょっと落ち着いてよプロデューサー!!」

留美「…珍しいものが見れたわ…」

P「これが落ち着いていられるか!ほら早く支度しろ!」

美嘉「あ、あのね、プロデューサー…」

P「何だトイレなら早くしろ!」

美嘉「ばっ、ばばば馬鹿じゃないの?!」

留美「…プッ」

P「だったらなんだ、ほらコート持って来い!」

美嘉「うちのパパ…ぎ、ぎっくり腰だったんだって…」

P「ぎっくり腰だと?!そりゃ大変……え?なんだって?」

美嘉「ぎ、ぎっくり腰です」

P「」
留美「プッ…プフッ…」

美嘉「えっと、だから、その、ごめんなさいっ!」

美嘉「それと…あの、ありが、とう」

P「あ、ああ、いやそれは宮本に言ってやってくれ。あいつが助っ人してくれたんだ」

美嘉「フレデリカさんが?」

P「あぁ、よくやってくれた。お前の仕事をこれからそっくり渡してやりたいくらいだ」

美嘉「う、そ、それは困る…」

P「大体、うろたえすぎなんだよ。まともに会話もできないから運転手に代わってもらおうってのにケータイを離しもしない」

美嘉「だ、だから!ごめんって言ってるじゃん!」

留美「ほら、P君も憂さ晴らしはもういいでしょう?」

P「和久井さん…僕はちょっと怒ってるんですよ?」

P「事情があったとはいえ、未成年をこんな時間まで」

留美「あら、お母様には許可は取ってきたわ」

P「…そんな簡単に許可下りました?」

留美「そ、それは…」

美嘉「ママ、留美さんの『わくわく☆花嫁クッキング』毎週見てるからね」
P「あぁ、ファンだったのか」

留美「改めてそんなタイトルの番組が日本中で垂れ流されていると知って死にたくなったわ…」

P「好評ですよ?ファンレターだってジャカジャカ来てましたし」

留美「それが複雑だって言ってるのよ…」

美嘉「ママ、お父さんは倒れたって慌てて家出たから夕飯の用意できてなくってさー、ちょうど凛ちゃんから一緒にごはん食べようって電話があったから莉嘉と一緒に出てきたんだ」

留美「そこに居合わせた私が事務所の鍵を開けるように頼まれたのよ」

P「和久井さんも一緒に夕飯食べに行ったんですか?」

留美「何?年増が若い子と一緒にご飯食べちゃいけないの?」

P「そんなこと言ってません」

美嘉「留美さん、プロデューサーの代わりに仕事してくれてたんだよ」

P「え…?」

P「…あっ、PMFの…」

留美「P君、来週休暇の予定してるんでしょう?ちひろさんから聞いたわ」

P「それは…」

留美「私がやったんじゃ細かい見落としや記載漏れがあるかもしれないから、あとの見直しはお願いするわ。明日以降に」

P「…ありがとうございます、和久井さん。手当は千川さんと相談して――」

留美「ねぇ、P君」

P「え、はい」

留美「そうやって冷たいフリするのはもういいんじゃないかしら」

P「それは――」

美嘉「ねぇプロデューサー」

P「…何だ」
美嘉「今日、アタシが電話した時、代役立てる前に病院に向かわせたよね?何で?」

P「何でって何だ」

美嘉「だーかーらー!もし代役見つかんなかったらー、とかあるじゃん」

P「どうにでもなる」

美嘉「案外いい加減なんだね」

P「どのみちあの状態でお前に仕事なんかできるわけないだろ」

美嘉「う…、まあ、そうなんだけどさ」

P「その話はもういいだろ、ほら、早く帰るぞ」

留美「私も送ってもらえる?」

P「女子寮の方が近いですけど、構いませんよ」

留美「何言ってるの、用事が済んだんだから一秒でも早く美嘉ちゃんを送り届けないと」

美嘉「そんなに気を遣わなくても」

P「いや、確かにその通りですね。送って行って車に二人きりなのも親御さんの心象を悪くするかもしれません」

留美「あら、じゃあ美嘉ちゃんを送った後は送り狼になるのかしら?」

P「冗談でしょう?」

留美「……流石に傷ついたわ」

P「僕だって妙な疑いかけられて傷つきました」
美嘉「そういえば、プロデューサーって彼女とかいないの?」

P「そんなのつくる暇なんかないんだよ」

留美「機会はあるのに」

P「どこに転がってるんですかそんなの。大体……」

美嘉「大体、何?」

P「……作ったとして、お前らにかける手間が多すぎてどうせ会う機会なんかない」

留美「アイドルを作物みたいに言わないでほしいわ」

P「大切に育てる、って意味では同じです」

美嘉「出荷するの?」

P「仕事に行かせるのがそれに近いな」

留美「でも過去に恋人くらいいたんでしょう?」

P「…僕の話はもういいでしょう。夜更かしは肌に悪いですよ」

留美「最悪ね」

美嘉「プロデューサー、今のはないよ…」

P「…いいから早く出てください。僕だって早く帰りたいんですよ…」
1月21日/深夜/車内

留美「いつの間にか日付変わっちゃったわね」

P「ええ、和久井さん朝から仕事なのにすいません」

留美「P君が謝ることないわ。私が好きでやったことだもの」

P「そうですか」

留美「……………」

P「……………」

留美「……………」

P「……………」

留美「……………」

P「……………」

留美「…会話を盛り上げようって気持ちはないの?」

P「彼女みたいなこと言うんですね」

留美「あら、昔の彼女にそんなこと言われたの?」

P「そんなこと」

留美「はいはい、関係ないわね」
P「和久井さんも今日はつっかかってきますね」

留美「『も』とは?」

P「三船さんのところに出る前、川島さんにありがたいお話をしていただきました」

留美「どんな話?」

P「概ね、『アイドルにもっと優しく接しろ』ってことでした」

留美「同感だわ」クスッ

P「態度が悪いと思われてるなら少し見直してみようかと思います」

留美「貴方が冷たいなんて思ったことはないわ」

P「さっきの話ですか?」

留美「今日、若い子たちと一緒に食事に行った、って話はしたでしょう?」

P「ええ」

留美「凛ちゃんと未央ちゃんがね、あなたが冷たい、って言ってたわ」

P「告げ口してもいいんですか?」

留美「あぁ、名前を出すつもりはなかったんだけど、口が滑ったわ」

P「安心してください。僕は『何も聞いてません』」

留美「でもね」

P「はい」

留美「それを聞いた奈…Nちゃんとうd、ゴホン、Uちゃんが怒り出しちゃって」

P「隠す気あります?もういいですよ」

留美「それでね」

 奈緒『お前らPさんが普段どんな仕事してんのか知ってるのかよ!』
 
 卯月『プロデューサーさんはそんな嫌な人じゃないよ!」


留美「…ってね」

P(島村が…?意外だな、コメントは普通だけど)

留美「それから、今日事務所で楓と加蓮ちゃんがひと悶着起こしたそうよ」

P「何ですかそれ」

留美「加蓮ちゃんが言うには」


 楓『――貴方は彼のこと、何も知らないのね』


留美「…って言われたって」

P「はぁ」

留美「楓が見たこともないくらい冷たい目をしてたそうよ」

P(なにそれすげぇ怖い)

留美「それで、加蓮ちゃん」

 加蓮『楓さんとプロデューサー、付き合ってるんじゃない?』


P「子どもか!!…あ、子どもだった」

留美「あんまり真剣な顔で言うから、ほかの子たちも考え込んでたわ」クスクス

P「馬鹿馬鹿しいですね」

留美「可愛いじゃない、女子高生ってのはああいう風にあるべきじゃないかしら」

P「和久井さんも高校時代は色恋にキャーキャー言ってたってことですね?」

留美「…ごめんなさい、私はそんな可愛い女子高生ではなかったわ」

P「深い意味はないんですが…」

留美「何?」

P「羨ましいですか?北条や本田達がそういう高校生活を送っていることが」

留美「そうね、私にもこんな高校生活があったんじゃないか、って思うとなんだか複雑な気分よ」

P「和久井さん」

留美「何よ、馬鹿にするの?」

P「最近、そう思えるようになってきたんですが」

留美「何の話?」

P「僕は、自分の学生時代のことが嫌いでした。いえ、今でもそんなにいい思い出じゃありませんが」

留美「………」
P「でも、自分のやってきたこと、打ち込んできたこと、必死になったこと。それは全部嘘じゃありません」

P「自分しか知らないことです。自分で認めてあげないと…それは、何て言うか、冷たいでしょう」

留美「年上に説教かしら」クスッ

P「ええ、忘れてくださって構いません」

留美「自分の言葉を忘れろ、なんてそれこそ冷たくないかしら」

P「本心から言ってませんので」

留美「忘れていい、って方を?」

P「捉え方はお任せしますよ」

留美「ほんと、冷たいわね」

P「ありがとうございます」

留美「捨て鉢になってない?」

P「ありがとうございます」

留美「拗ねないでよ」

P「…別にそういうわけじゃ」

留美「でも、そうね」

留美「冷たいのは、私も一緒だったのかもしれない」

P(俺も冷たいって言ってるじゃないか)

キィッ

留美「――っと、着いたわね」

P「はい、また、明日」

留美「ええ、また明日」

パタン

ブロロロロロロ

留美(生意気ね)

留美(でも、やっぱり彼は――)

1月21日/朝/事務所

留美「じゃあ、行ってくるわね」

P「ええ、帰りは時間見計らって迎えに行きますので」

留美「助かるわ」ガチャ

バタン

ちひろ「プロデューサーさん、何か今日はいつもと違いますね」

P「そうですか?いつも通りです」

ちひろ「なんだか昨日から今日の短い間に成長したみたいです」

ちひろ「もしかして、ついに…?」

P「ちひろさんが心配するようなことは何もありません」

ちひろ「なーんだ、つまんないの」

P「素が漏れてるぞ千川」

ちひろ「P君もたまには素で接してくれていいのに」

P「わかって言ってるだろ?」

ちひろ「私にくらいはいいじゃないの」

P「そうなると『何でちひろさんには親しくしてるの?結婚するの?』みたいな憶測が飛び交うだろ」
ちひろ「す、凄まじい童貞力だわ…」

P「千川…貴様言ってはならんことを言ったな…!!」

ちひろ「『名前で呼ぶのは彼女だけ』キリッキリッ」

ちひろ「…なんて童貞こじらせた発想しかひねり出せないP君には言われたくないわよ」

P「お前はどうなんだよ」

ちひろ「一度も戦に出たことのない兵と一度も侵入を許したことのない城を同じ土俵に上げないでくれる?」

P「攻め込む価値がないからだろうが」

ちひろ「は?」

P「あ?」

ちひろ「あまり調子に乗らないでくれる?」

P「図に乗ってるのはそっちだろ?」

ちひろ「無職のあなたを拾ってあげた恩を忘れているようね…?」

P「は?『立ち上げ間もない若い芸能事務所で、決まった営業先を回っていただくだけのカンタンなお仕事です』なんてフレーズで超絶ブラックに引き込んだクセにどの口でほざきやがる」

ちひろ「ふん、『芸能事務所』に下心むき出しなのが履歴書から滲み出てて笑えたわよ」

P「雇用主がお前だなんて知ってたら誰が応募なぞするか。この業突張り」

ちひろ「言ったわね…」

P「お前もな…」

<ガチャ
ちひろ「そんなだから一度だって彼女が出来ないのよ!このファンタジスタ童貞!」

P「ブーメランぶっ刺さってんぞ守銭奴!一生札束にでも抱かれてろ!!」

ちひろ「なにそれ素敵、じゃない、準魔法使いが偉そうな口きかないでちょうだい!」

P「何ちょっと札束にときめいてんだこの売女!俺が魔法使いならお前を塵も残さず消し飛ばしてやるわ!」

ちひろ「なら時間の問題じゃない、レベル20にも満たない童貞がこの私に逆らうなんt――」



 若々しい?声「あ、あのぅ…」
Pちひろ「何だよ!!!!」


菜々「あの、小さい子たちもいますんでそういうのはナナ的にはちょっと…」

P「」

ちひろ「」

菜々「えっと、その、なんて言っていいのか…」

P「」

ちひろ「えっと、菜々ちゃん?いつから…?」

菜々「ナ、ナナが聞いてたのは無職の〜、ってところからですけど…」チラッ

ちひろ「はっ」バッ

加蓮「お、おはようございます…」

凛「あの、その…」

奈緒「あ、アタシは止めたんだよ?!」

薫「ちひろさん、もう怒ってない…?」

雪美「Pも…ちひろも…怖かった…」

ちひろ(ジーザス)

奈緒「な、なァPさん、どうせそのうちバレることだったんだし、な?」

P「」

奈緒「ぴ、Pさん…?」

菜々「た、大変です!ぷ、プロデューサーが息してません!!」

1月21日/昼/事務所

菜々(結局、放心状態のプロデューサーは仮眠室に放り込みました。ベッドに横たえた後も何かうわごとを唱えていたようですけど)

加蓮「え、何?奈緒知ってたの?」

凛「だからあんなにプロデューサーの肩持ってたんだ…」

奈緒「あー、いや、そういうわけじゃないんだけど…、まァ、Pさんとは趣味も合ったし…」

凛「つまり、女の子への接し方が未だによくわかってない、ってことでいいの?」

加蓮「いや、でももう2年だよ?そんなにそこそこの付き合いなのに」

薫「えー、せんせぇいつも優しいよー?」

雪美「P、疲れた時はいつもやさしい…」

奈緒「凛や加蓮にだって、アタシたちがほんとに忙しい時はフォロー入れてくれてたんだぜ?」

凛「言われてみればそんなことも…」

加蓮「あったようななかったような…」

ちひろ「あの人はね、この事務所で働く前からずーーっと女性に縁がなかったの」

菜々「ちひろさん、プロデューサーさんと付き合い長いんですか?」

ちひろ「ここで一緒に働くことになったのはほんとに偶然なんだけど…」

菜々(明らかにブラック臭のする求人コメントで吸い寄せられたのが偶然Pさんだった?偶然?)

ちひろ「付き合いそのものは中学2年の時に同じクラスになったのが最初かしらね。高校の時も同じ学校だったわ」

加蓮「そういえばPさんの学生時代ってどんなだったの?」
奈緒「確かにそれは気になるな」

ちひろ「今とはちょっと違うかしらね。同じ部活だとか趣味だとかの男の子とばっかり喋ってたわ」

凛「今とどう違うの?」

ちひろ「今ほどぶっきらぼうじゃなかったわ。ただし話し相手は男子ばっかだったけど」

加蓮「それじゃ彼女なんかできないよね」

奈緒「彼女と仲良く手組んであるいてるPさんなんて想像できないけどな」

薫「えー、せんせぇたまに手ぇつないでくれるよー?」

雪美「おんぶも…してくれる…」

菜々(プロデューサーさん…まさかあなた…)

凛「菜々?どうしたの変な顔しちゃって」

菜々「え?!いや、ナナはいつも通りですよ!キャハッ☆」

加蓮「あっはい」

奈緒「う、うん」

凛「そ、そう」

ちひろ「あ、でもね、実は全くモテなかったわけじゃないのよ」

奈緒「え?!何だよそれ?!」

加蓮「ちょっと想像できない…」

ちひろ「プロデューサーさん、部活のエースでね、地区内では無敵みたいな存在だったのよ」

ちひろ「各部のエースとか、人気あるでしょ?」

凛「確かに騒いでる子たちは多いね」

加蓮「そうだね、あんまり興味湧かないけど」

奈緒「ところでPさんって何部だったんだ?」

ちひろ「それは――」




元気な声「プロデューサー!いるぅーー?!」
薫「ユッキおねぇちゃんだ!」

菜々「友紀さん、おはようございます。今お茶入れますね」スッ

友紀「あぁ、ありがとう菜々ちゃん!――ってあれ、どうしたのちひろさんまで」

加蓮「実はプロデューサーの昔の話をちひろさんから教えてもらってたんだ」

奈緒「おい、加蓮!」

加蓮「いいじゃん、別に。友紀さんも一緒に聞こうよ!」

友紀「あー、うん、そっか、じゃあみんな聞いたんだ」

凛「あれ、友紀さんも知ってるの?」

友紀「…うん、ちょっとかわいそうだよね」

凛「ちょっと友紀さん、そんな言い方しなくてもいいじゃん」

友紀「あー、うん、でもね、残念だなぁとは思うんだ」
奈緒「ま、まァ多少機会に恵まれなかっただけでさァ」

友紀「機会、って言ってもそんなの普通の人にはなかなかないよ?」

加蓮「…そうなの?」

凛「いや、どうだろ?」

奈緒「個人差っていうか、縁もあるからなァ」

ちひろ「縁、だなんて奈緒ちゃん大人みたいね」クスクス

奈緒「ちゃ、茶化さないでくれよ!」

凛(こうして見ると、さっきまでプロデューサーと言い争いしてたのが別人みたい)

友紀「個人差、個人差だけど、プロデューサーは努力してあそこまでになったんだよ?最後があれじゃ、流石に気の毒だよ…」

凛(ん?)

加蓮(ん?)

雪美(そういえば…)

薫(どーてー、ってなんだろ?)

奈緒「えっと、友紀さん、何の話してるんだ?」

友紀「え、何って」






友紀「プロデューサーが昔キャッツにドラフト指名されたことでしょ?」
奈緒「えええええええ?!」

友紀「え、その話じゃないの?」

凛「えっと、つまり、どういうこと?」

ちひろ「プロデューサー、プロ野球にスカウトされてたの」

加蓮「えっ、なにそれすごいじゃん」

ちひろ「高校で甲子園に出てね、1回戦で負けちゃったけどそこそこの評価はあったみたいよ」

友紀「プロデューサー、すごかったんだよ!あたしテレビで見たもん!負けたけど!」

凛「じゃあ、なんで無職になった挙句、ここでプロデューサーなんてやってるの?」

ちひろ「プロデューサーさん、ドラフト指名蹴っちゃったのよ」

加蓮「プロの誘いを断った、ってこと?」

友紀「うん、ドラフトって言っても2種類あってね、そのうちプロデューサーが指名されたのは育成選手の方だった」

奈緒「ちょっと問題になったやつじゃないか、それ?」

友紀「そう、本当は支配下選手としての話だったのに話が違うし、そもそも育成選手の立場ってすごく不安定なんだ」

凛「お給料が安いってこと?」

友紀「それもあるけど、使えないと判断されたらすぐ切られちゃったり、プロの厳しい世界の、さらに厳しいところなんだよ」
友紀「うーん、でも、自分が歌ったり、踊ったりできなくなったら、アイドルできなくなって、事務所にいられなくなる、って言うのと同じかなーっとも思うんだ」

加蓮「あ……」

凛「確かに……」

ちひろ「あら、そんなこと気にしてるの?」

奈緒「え?」

ちひろ「そうなっても、黙ってないのが一人いるわよ」

ちひろ「…聞いてるんでしょう?」

<キィ
P「お前の、そういうところも嫌いだ」

薫「せんせぇ!」
雪美「P…大丈夫…?」

ちひろ「全く、ドア越しに盗み聞きなんていい趣味してるわね」

凛「プロデューサー!起きて平気なの?」

加蓮「もうちょっと横になってた方がいいよ!」

P「…お前と違って病気になったわけじゃない」

加蓮「む……」

奈緒「またそんな言い方する…」

友紀「え、なになに、プロデューサーどうしたの?」

P「…なんでもない。なんでもないんだ…」

ちひろ「ねぇP君、みんなが歌えなくなったら、どうする?」

P「女優転向待ったなしだな」

ちひろ「みんなが踊れなくなったら?」

P「バラエティにでもねじ込んでやるか」

ちひろ「……だそうよ?」
凛「ねぇ、プロデューサー」

P「なんだ」

凛「その、プロデューサーが後悔してるから、私たちにそうさせようとしてるの?」

P「どういう意味だ?」

凛「だから、プロデューサーは不完全燃焼で終わっちゃったから、私たちには後悔しないようにやらせてあげたい、って思ってくれてるのかなって」

P「…どうなんだろうな」

菜々「どうして悩むんですか?」

P「俺の場合、確かに不完全燃焼だったけど、後悔してるか、って言われたらわからん」

P「そもそも俺のやってたこととお前らがやってることの毛色が違いすぎてピンとこないな」

友紀「そうかなー、根本的な部分ではおんなじじゃない?アイドルと野球って」

加蓮「それは友紀さんが野球の仕事ばっかやってるからじゃ…」

友紀「違わないよ。一生懸命準備して、自分を高めて、最高の舞台目指すんでしょ?一緒じゃん!」

奈緒(友紀さんらしい答えだ…)
P「あー、とにかく、聞いてくれ」

P「現時点で、俺に至らない点はいくつもあるだろう。そこも認めて、少しずつ改善していこうと思うが…」

P「何にせよ、俺はお前らのアイドル活動を全力でサポートしていくつもりだ」

P「それ以上に、何か必要か?」

菜々「必要です!」バン

P(く、くそっまとめが強引過ぎたか…!)

薫雪美「!」ビクッ

加蓮「ちょっと菜々、二人がびっくりしてるじゃん!」

菜々「Pさんもっとはナナ達と仲良くすべきです!」

奈緒(聞いてない…)

P「いや、だから、それは少しずつ、な?」

菜々「少しずつ少しずつって、そうしてもう二年もそのまんまじゃないですか!」

P「あっはい」

奈緒「確かに、Pさんには多少の荒療治は必要かもなァ」

凛「正直、今のままじゃ彼女もできないよ…」

ちひろ(え、そこなの?)

友紀「よし!じゃあ分かった!!」

友紀「プロデューサー、これからみんなのこと名前で呼びなよ!」

菜々「あ、それいいですね!親近感倍増です!」

P(アカン)
ちひろ「確かに、アイドルの活動を本格化させて2年、何も進歩なかったものねぇ…」

P「千川…お前…」

ちひろ「あら、『ちひろ』って呼んでくれません?プロデューサーさん?」

P「千川、さんはアイドルじゃありませんから」

ちひろ「つれないですねぇ」

加蓮「じゃあアイドルなら呼ぶんだね?」

P「いや、でも、ほら彼女でもあるまいしそんな…」

奈緒(漲る童貞力…)

凛(これ童貞とかそういう問題じゃ…」

P「第一、そんなの嫌がる奴もいるだろうし」

菜々「少なくともこの事務所にはいないんじゃないですか?」

薫「かおるもせんせぇにかおるって呼ばれたいよ!」

雪美「名前…呼んでほしい…」
P「でもほら、公私混同に繋がらんとも言い切れんしな」

奈緒「Pサンが公私混同?ないない」

友紀「むしろ今までがガッチガチすぎたんじゃないの?」

ちひろ「観念したら?いい加減女々しいわよ?」

P「ぐ、ぐぬぬ…」

薫「ねぇねぇ、せんせぇ」

P「…何だ」

薫「ところで、どーてー、って何?」

P「」

菜々(それからのことを少しお話しします)

菜々(薫ちゃんの無垢なる刃が無慈悲にもプロデューサーさんの胸を刺し貫きました)

菜々(まさに虫の息といった様相のプロデューサーさんは一呼吸おいてから)

P『ドウテイ、ってのはな…未だ見つからぬ答えを探し続ける求道者を指すんだ』

P『その探求の長い旅路のことから転じて【道程】と書き、探求者やあるいは一部の学者のことを表すようになったんだ』

菜々(正直必死過ぎて引きました)

菜々(雪美ちゃん以外全員の白い目プロデューサーの全身に突き刺さっていたことは言うまでもありません)

菜々(当然、薫ちゃんは大人の喋る難しい単語のほとんどを理解できていませんでしたが、それが逆に【ドウテイ】なるものを高尚なものであるよう錯覚させていたようです)

菜々(小さい子や若い子って、難しい単語や言葉をすぐに使いたがるじゃないですか?)

菜々(ええ、そうです)


薫『ねぇねぇ、かおるのせんせぇね、ドウテイなんだよ!すごいでしょ!』


菜々(プロデューサーにとっては、皆の天使である薫ちゃんが、世界一凶悪なテロリストに見えたのではないでしょうか)

菜々(ところでそのプロデューサーさんですけど、名前で呼ぶことにはやはり抵抗はあったみたいです」

菜々(でも、アイドルの子たち一人ひとりに説明して、名前で呼んでもいいか確認したそうです)

菜々(顔面は真っ赤だったそうです)

菜々(しかしそのあたりは律儀と言うか、愚直と言うか。プロデューサーさんの美徳であるのは間違いないんですけど)

菜々(さて、それでは最後に、そんな日常にも慣れてきた、最近の事務所の様子をご紹介してお別れしましょう)
2月12日/朝/事務所

P「聖來、芽衣子、準備は出来たか?」

聖來「ちょ、ちょっと待って!わんこがケージに入るの嫌がっちゃって」

芽衣子「あはは、もう抱っこして連れて行きなよ」

P「お前といい優といい、なんでいつもペット同伴なんだ…」

聖來「いいじゃんいいじゃん、とりあえず下で礼子さん待ってるし、いくね!」

芽衣子「それじゃプロデューサー、行ってきます!」

<パタン

P「ふぅ…」

ちひろ「だいぶ、慣れてきたみたいですね」

P「えぇ、違和感というか、引っかかるものはまだありますけど」

卯月「でもみんな、前よりプロデューサーさんがとっつきやすくなったって言ってますよ!」

P「島m、いや、卯月もそうなのか?」

卯月「私は、前と変わりません。プロデューサーさんがいつもみんなに見えないところで頭下げたり走り回ったりしてるのは知ってますから」

P「プロデューサーの仕事だからな」

瑞樹「そういう素直じゃないところは変わらないわね」

P「事実です」
楓「プロデューサー」

P「なんですか楓さん」

楓「もっとお近づきになりたいので飲みに行きましょう」

P「クリスマスのときみたいなことは御免ですから」

ちひろ「いいじゃないですか、たまには私以外とも飲みに行ってみたら」

卯月「あれ、ちひろさんはプロデューサーさんと一緒に行くんですか?」

ちひろ「そんなしょっちゅうは行かないけどね」

P「千川さんはよほどのことでもない限り酔わないし、一人で帰らせても平気だから手もかからん」

瑞樹「それもどうなの…」
ちひろ「ひどいですよねぇ」

楓「じゃあちひろさんと飲みに行くときは私も連れて行ってください」

ちひろ「いいですよ」

P「勝手に返事をするな」

楓「じゃあ、明後日の仕事終わり、どうですか?」

ちひろ「ええ、いいですね、ちょうどその日はみんな早めに仕事終わりますし」

P「だから勝手に進めないでください」

楓「ダメですか?」

P「PMF本番まで1週間切りましたからね、最終確認で僕はちょっと遅いんです」

楓「なら事務所で待ってます」

P「…、わかりましたよ、もう…」

卯月「やりましたね、楓さん!」

楓「ええ、楽しみ」

瑞樹「さて、P君、私たちはもう出ましょ?」

P「おっと、もうそんな時間ですか。すいません川島さん先に行って車出してきます」

瑞樹「もう、『瑞樹』って呼んでって言ってるのに」

P「聖來とかぶってるんでダメです。早く降りてきてくださいね?」

<バタン

瑞樹「…わからないわ」
ちひろ「…卯月ちゃん、ちょっとさっきのは危なかったわよ?」

楓「少し焦りました」

卯月「あはは、自分で言って、しまったと思いました」

ちひろ「多分平気だけどね。プロデューサーさんの中ではもう終わってるイベントのはずだから」

瑞樹「当日放送の収録はとっくに終わってるものね」

卯月「泰葉ちゃんたちの放送、楽しみです!」

ちひろ「みんなで見ましょうね。せっかく調整したんだから」

瑞樹「P君が調整したのに、ほんとに気付かないのかしらね?」

ちひろ「だってそんなイベント、プロデューサーさんには仕事以外用事の関わりがないですから」

楓「意外ですけどね」

瑞樹「さて、私もそろそろ出るわ。…楓ちゃん、卯月ちゃん、準備お願いね?」

卯月「任せてください!」

楓「ちょこっと準備しときます、フフフ」

瑞樹「助かるわ。じゃあ行ってきます!」

<バタン

ちひろ「…さて、あの唐変木に見つからないように、ね?」

卯月「はい!念のため会議室にプロデューサーさんを近づけないでくださいね!」

楓「ふふっ、なんかドキドキしちゃう」

<バタン
ちひろ「ふふっ」

ちひろ(私の分は、後でいいかしらね)



おわり



20:30│モバマス 
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