2015年07月03日

緒方智絵里「シンデレラ・ストーリー」


P「おう智絵里、面白いもんがあるからちょっとこっち来てみ」



智絵里「なんでしょうか…?これ、ブログですか?」





P「そうそう。有名なブロガーなんだけど、この前の智絵里のライブについて記事書いてくれててさ」



智絵里「わあ…それは嬉しいですね。どんな感じ書いてもらってますか?」



P「まあ結構長いんだが…簡単にまとめると『智絵里ちゃんのどこまでも前向きな姿勢に励まされました!』って感じかな」



智絵里「前向き、ですか…」



P「まあ、智絵里が違和感を持つのはわかるよ」



智絵里「そうですね…私は前向きなんて大層なものじゃないですし…」



P「前向きって言うとどうしても明るいイメージがあるもんな」



智絵里「Pさんならよくご存じですが、私、暗いですもんね」



P「明るくはないわな…でも智絵里が前向きだって意見には俺も賛成だけどな」



智絵里「えっ…?」



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P「智絵里は、ステージに立つのはまだ怖いか?」



智絵里「怖くはないですけど…不安はたくさんありますね」



P「それでもお前はステージに立つんだろ?不安も全部飲みこんで」



智絵里「…」



P「それは、やっぱり前向きなことだと思うんだよなあ」



智絵里「そういうものなんでしょうか…」



P「たぶんな」



智絵里「たぶん、ですか…」



P「怖いな、不安だな、って思いを抱えながら物事に立ち向かうってのは立派な勇気だろ。少なくとも」



智絵里「そう、ですね。ありがとうございます」



P「それにお前にはアイドルの才能があると思う」



智絵里「そんな、私なんて」



P「いや、これは断言できるよ。智絵里、初めてのライブは覚えてるか?」



智絵里「なんとなくは…」



P「あの時俺は本当にびっくりしたよ。お前がこんなに本番に強い人間だとは思わなかったからな」



智絵里「ステージに立つのは好きですからね…親にも先生にも見捨てられてきた私を、私なんかを、みんなまっすぐ見てくれて…」



P「その辺なんだよな、智絵里の強さは…」



智絵里「私なんて、弱い人間ですよ」



P「弱いからこその強さっていうかさ…ずっと弱い立場にいたからこそ誰より貪欲になれるというか」



智絵里「いえいえ、私のことを見つけてくれたPさんが凄いんですよ」



P「『この子は何か持ってるな』とは思ってたけど、想像以上だよお前は」



智絵里「そんな…」



P「ウチの事務所じゃ出世頭だしな。何よりステージ上であんな良い笑顔をするアイドルはなかなかいないぞ」



智絵里「ステージだけが私の生きられる場所ですから」



P「ストイックなのはいいが…程々にしとけよ。人生を捧げるにはお前はまだ若いんだから」



智絵里「…わかってますよ」



P(こういう危なっかしさもコイツの魅力なのかもしれないが)



智絵里「私がアイドルとして成功するのは、復讐ですから…」



P「まだその考え方やめてないのか」



智絵里「やめないですし、たぶん、やめられないんですよ」



P「あんまり幸せな動機じゃあないと思うが…」



智絵里「元々幸せな生まれじゃないので、仕方ないですよ」



P「俺としては心配なんだよなあ、お前のそういうところ」



智絵里「大丈夫ですよ、何の復讐もできてなかった無力な頃よりは楽しいですから」



P「結果的に成功はしてる以上、俺が偉そうに口を挟むつもりないんだが…『親に復讐してやる』なんて動機でアイドルやってる子は他にいないもんだから、どうにもなあ」



智絵里「ふふ…おかしいですかね…?」



P「すまんが、正直俺には理解できねえんだよ」



智絵里「いいんですよ。理解してほしいとも思ってませんからね」



P「でも復讐ならもう充分じゃないのか?4回の総選挙でずっと上位なんだ。立派な功績だろ」



智絵里「いえいえ、まだですよ。もっと目に物を見せてやらなくっちゃ駄目なんです。私を無視してきた連中に…」



P「…」



P「その『復讐』で気分が晴れるなら俺も強くは反対はできないが…でもやっぱりなんだかなあ」



智絵里「気分が晴れるとか晴れないとかじゃないんです…こうしなくちゃ生きていけないというか」



P「プロデューサーとしては否定しちゃ駄目なんだが…俺個人としてはもっと幸せな理由で頑張ってほしいというか」



智絵里「ふふ、Pさんは優しいですね…でも駄目なんです、私。こういう生き方しかできないんです」



P「智絵里は、それで満足なのか?」



智絵里「どうなんでしょうね…」



P「そうか…」



智絵里「少なくともPさんには感謝してますよ…こんな私を認めてくれた最初の人ですから」



P「お前の怯えた態度の下に強い意志を感じたからな…執念とでも言うべきか」



智絵里「執念…」



P「なあ、智絵里の執念の源ってのはやっぱりアレなのか…」



智絵里「アレですね…」



P「親御さんとは、未だにうまくいってないのか?」



智絵里「…」



智絵里「未だにも何も、一生うまくいかないですよ。あんな人たちとは」



P「親をそんな風に言うもんじゃねえよ」



智絵里「だって…」



P「とはいえ…俺もお前の親御さんに会った時は驚いたよ。お金の話しかしなかったからな…」



智絵里「でしょうね…」



P「俺の親なんか未だにめっちゃ電話かけてくるからな…もう俺30近いってのに」



智絵里「普通そういうものなんですかね…?」



P「うーん…智絵里みたいなところは珍しいかな。ウチ事務所の子らはたいてい親御さんがかなり心配してたりだし…」



智絵里「…」



P「おっと…気分を害したなら悪い。他と比べるものじゃねえしな」



智絵里「いえ、お陰で決心が固まりました」



P「決心って…お前まさか変なこと考えてないよな?」



智絵里「Pさんがご心配なさるような考えていませんよ」



P「いや流れ的にビビるだろうが…で、何を決心したんだ?」



智絵里「私、これからもアイドル活動全力で頑張ろうって」



P「ど、どういうことだ…?いや俺としてはありがたいんだが、なぜその結論に…」



智絵里「ですから、復讐ですよ。復讐。こんな私でも輝くことができるんだって証明してやるんです」



P「…」



智絵里「あんまり数は多くはないかもしれないですが、私みたいに虐げられて自信を無くした子もいると思うんですよね。そういう子たちの支えになれたらな、って…」



P「智絵里お前…」



智絵里「こんな自信の無い私でも、辛い境遇に生まれた私でも、堂々と生きていいんだって…それを証明するのが私の復讐です」



P「お前…そんなこと考えてたんだな…」



智絵里「変、ですかね…?」



P「いや、変じゃないさ。むしろ素晴らしいことだ」



智絵里「良かった…」



P「…俺はな、正直お前をアイドルにして正解だったのか迷うことがあったんだ」



智絵里「…どういうことでしょう?」



P「もちろんビジネス的にはどう考えても正解だぞ?でもお前があんまり復讐復讐って言うもんだからさ、そんな道に連れ込んだのは間違いだったのかってさ…」



智絵里「…すみません、ご心配かけて」



P「いやいや、いいんだよ。お前の本当の考えも聞けたことだし。そういう復讐なら、俺も応援するよ」



智絵里「ありがとうございます…悔しいんですよね、たまたま不遇な環境に育ったからって、それだけで一生閉ざされた人生しか歩めないなんて」



P「そう、だな…」



智絵里「だから私は強く、美しく、輝いてやりたいんです。誰にも私たちを不幸だなんて言わせない」



P「お、おう…」



智絵里「私たちを見下してきた人間に見せつけてやるんです。私たちはこんなにすごいんだぞって…」



P(やっぱちょっと怖いわコイツ…)



智絵里「たぶん、童話のシンデレラも私と同じように考えてたと思いますよ」



P「と、言うと?」



智絵里「彼女は母親を初めとした自分を蔑んだ連中を、見返してやりたかったんですよ。だから得体の知れない魔女の提案にも乗った」



P「童話なのにルサンチマン全開でちょっと嫌だな…」



智絵里「女の子はそういうものですよ。そして…あの童話は王子様と結ばれて終わりでしたが、物語にはきっと続きがあるのだと思います」



P「ほう」



智絵里「彼女、シンデレラは弱い者を痛みを知っているんです。あの後彼女は弱者を救済する法案を出すよう尽力したんじゃないかって」



P「なるほど…」



智絵里「とは言え、シンデレラ一人では国は動かせません。王子の助力が必要になってきます」



P「そりゃあ、そうだが…」



智絵里「もう言いたいことはわかりますよね?」



智絵里「私はシンデレラになりたいんです。そして、国を、人を助けたいんです」



智絵里「だから、ね?」



智絵里「手を、取ってくれますか?」

おわり



17:30│緒方智絵里 
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