2015年07月06日

高垣楓「シアワセ」

・モバマス・高垣楓さんのSS

・超短い

・誕生日に間に合わなかった(前後半年は誤差)

・雰囲気オンリー





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1434703131







 私は、幸せです。

 私は、貴方に出会えて、幸せです。

 私の今は、貴方と歩み、色を帯びました。



 私は、しあわせ。













   ――シアワセってどんなだろう シアワセってどこにある

   ――きっとみつかるシアワセは きみのまわりの シアワセ









楓「Pさん?」



P「ふぁい?」



 いつもの居酒屋で、Pさんと私と。いつものとおり杯を交わす。

 Pさんは肉じゃがの芋をほおばっていました。



楓「あ、ごめんなさい」



P「いへいへ、ひょっひょあって……んぐ……あ、お待たせです」



楓「物入れたまましゃべるのは、めっ、ですよ……ふふっ」



 6月14日。特別な日に、特別なことは何もなく、ただこうして日々を過ごす。

 そんな、しあわせ。



P「で、どうしたんです?」



楓「いえ。なーんか、いつもどおりで」



P「それはまあ、楓さんのリクエストですから」



楓「それがいいなあって、思ってます」



P「でも、なんでまたいつもの居酒屋って?」



楓「それは、ですね」





 今までどおりなら。

 きっとファンのみんなの祝福がいっぱいあって。アイドル仲間のお祝いをいっぱい受けて。

 そしてPさんは、きっとこの日のために特別な場所を用意して、私を祝ってくれる。

 それはとても幸せなことと、十分にわかってる。



 けれど。



楓「Pさんにプロデュースしていただいて、もう5年じゃないですか」



P「ああ、もうそうなりますね」



楓「なんか、山あり谷ありでしたし」



P「そうですか? 順調だと思いますけど」



楓「私すっかり『だじゃれ温泉お姉さん』から抜け出せなくなってますし」



P「それは楓さんが望んでやったことでしょう? 僕はもっとこう、ミステリアスな雰囲気を売りにしたかったんですよ?」



楓「それは、えっと……なんか恥ずかしかったんで」



P「もう路線変えられませんから。甘んじてその評価受けてくださいね」



P「あ。しらたきうめぇ」



 Pさんはしらたき結びをつまみ。私はもう一杯日本酒を味わい、語る。





楓「毎年毎年、ファンの皆さんからたくさんの祝福をいただいて」



P「そりゃあ楓さんの人徳でしょう」



楓「事務所のみんなからも、いっぱい祝われてるじゃないですか」



P「みんな楓さんが好きなんですよ」



楓「……ですから、たまには」



P「たまには?」



楓「なにもないのも、いいかな、って」



P「なにもない、ですか……」



楓「ええ。なにもない、いつもどおりで」



P「いつもどおりねえ……」



 なにもない。それがどんなに貴重でかけがえなのないことか。

 私もPさんも、知っている。



 Pさんは箸を止め、私を見つめた。そして。



P「それもまた、楓さんらしいですね」



 そう言って笑った。





 そのとき「焼き物おまちー!」と声がかかり。

 ちょうどのタイミングで、焼き鳥が運ばれてくる。



P「お、きたきた。さ、食べましょうか」



 Pさんは軟骨を手に取り、私に勧めた。



楓「よくおわかりですね」



P「そりゃあ、ね。だてに長いお付き合いじゃないですから」



 今日もまたPさんと私と。いつもの飲み会が、続く。



 私たちアイドルはハレの化身。非日常に降り立ち、歌い舞う。

 それは、さながら祝祭。

 だから、こうして日常を運んでくれるPさんが、いとおしい。



P「どうしてなにもないのが、いいんです?」



楓「んー。だって、日常ってとても大事じゃないですか?」



P「ふーむ」



楓「私は、そんな気がするんです」



 それはたぶん、Pさんといるから。

 Pさんとの何気ないやりとりが、私の日常。





楓「Pさん」



P「ん? なんです?」



楓「私、幸せですよ?」



P「そっか。幸せですか」



 私とPさんは、手酌の酒を互いにあおる。



P「そりゃあ、よかった」



楓「ええ。ほんとに」













   ――シアワセっていってると ほんとにシアワセになるんだね









P「でも楓さん。こうしてるときよく『しあわせー』って、言ってますよね」



楓「そうですか?」



P「ええ。てっきり口癖かと思ったこともあったんですよ」



P「でも、決まってここで呑んでるときだけなんですね」



楓「まあ、そうでしたか」



『しあわせ』って言葉が、好き。声に出すだけで、温かい気持ちになれるから。

 ため息を吐くたびに、しあわせが逃げていくと言うけれど。

 声に出しても、しあわせは逃げない。



楓「だって、声に出せばほんとうに、しあわせって気持ちになれるじゃないですか」



楓「私も、Pさんも」



P「……なるほど。ほんとですね。うん、僕もしあわせだ」



 ほら、ね。

 しあわせって言葉を口にするごとに、みんなにしあわせを、おすそ分け。



楓「Pさんにもおすすめしますね?」



P「しあわせ、って、言うことですか?」



楓「ええ」



P「そっか。うん、そうですね」



 時間が過ぎる。私たちはただいつもどおりに過ごし、語らい、笑う。





P「楓さん」



楓「はい?」



P「ほんと、僕はしあわせです。ありがとう」



楓「さっそくですか?」



P「ええ。いいと思ったことは即実行です」



楓「ふふっ……いい心がけですね」



P「そうですかね」



楓「そうですよ」



 そんななにもない時間に、ふと挟み込まれる隙間。



P「でもほんとに、僕はしあわせですよ……楓さんが僕に、人生を預けてくれて」



楓「……」





P「僕と一緒に、歩いてくれて」





  ――すてきなことば おぼえたよ





P「結婚してくれて、感謝してます」





  ――それはね『シアワセ』









楓「……私のほうこそ」



楓「Pさんとともに生きていけること、とてもしあわせですよ」



 ファンのみんなの祝福があって。アイドル仲間の、事務所の祝福があって。

 私たちは『なにもない』普通の時間を、こうして穏やかに過ごしていける。



 それはかけがえのない、しあわせ。



P「これからもこうして、なにもないしあわせ、感じていきましょう。ね」



楓「お願いしますね」



P「はい。任させました」



 夜も更ける。私たちのささやかな宴は、続く。



P「しあわせですか」



楓「ええ、しあわせですよ」



 6月14日の、とある場所で、とあるふたりのいつもの風景。





  ――それはね

  ――『シアワセ』







(おわり)





21:30│高垣楓 
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