2015年07月09日

麗奈「仁奈の願い事が叶ったですって?」紗南「うん」

【モバマスSS】です





――――プロダクション、エントランス前





麗奈「仁奈の願い事が叶ったですって?」テクテク



紗南「うん、なんでもちひろさんのお陰で短冊に書いた願い事が両方叶ったって、今日すごい寮で喜んでたよ」テクテク



麗奈「ああ、そういえば妙に嬉しそうにはしゃいでたのはそういう理由だったの。というかまたちひろなの?」テクテク



紗南「うん、またちひろさんみたい」テクテク



麗奈「……まったく、相変わらずのトンデモね。案外アタシの世界征服の夢もちひろに頼めば叶いそうな気すらするわ」テクテク



紗南「あははそんなまさか……冗談と思えないのが怖いや」テクテク





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ウィーン



麗奈「けどまあ、そんなことしなくてもいずれはアタシの力で――」



???「イヤーッ!」スタンッ



麗奈「ひっ!?」



紗南「うわぁ!?」



???「おっとすみませぬ……っておや、麗奈殿に紗南殿ではありませんか、おはようございます」ペコッ



麗奈「お、おはようって……あ、あやめアンタ! 危ないじゃない、いきなり降ってくるなんてっ!」





あやめ「本当に申し訳ない! 今エントランスでちひろ殿から頼まれた作業をやっていたものでして」



紗南「えっ、ここでなにかやってるの?」



あやめ「ええ。昨日の七夕で飾った短冊を片付けている最中なんです」



紗南「なるほど……って、もしかしてあの大量の短冊一人で片付けてるのっ!?」



あやめ「まさか! ちゃんともう一人モバP――」



ちひろ「あやめちゃん? さぼってちゃ駄目ですよ、まだ短冊は1万枚以上飾られたままなんですから」



あやめ「あ、ちひろ殿! いえ決してサボっているわけでは」





ちひろ「……ってあら、麗奈ちゃんに紗南ちゃん、おはようございます。もしかして、お二人にあいさつを?」



あやめ「はい。もう済みましたので今から作業に戻ります」



ちひろ「では次は、モバPさんが作業されているのとは反対側の竹に飾った短冊の回収をお願いします」



あやめ「分かりました。ではお二人とも、わたくしはこれで……イヤーッ!」シュバッ



麗奈「……相変わらず動きが人間離れしてるわねあやめ。しかももう一人作業してるのってモバPだったの」



紗南「いつ見てもアクションゲームのキャラみたいな動きですごいなー二人共」



ちひろ「おかげでこういった作業もすぐに終わらせてくれますから本当に助かっています。ところでお二人はレッスンをされに?」





麗奈「まぁそんなところよ。というかちひろ、モバPはともかくあやめはアイドルなんだから雑用頼むのおかしくない?」



ちひろ「それはそうなんですが……今回はスタッフの皆さんやプロデューサーさん達にも短冊に願い事を書いてもらいましたから」



ちひろ「アイドル皆のと合わせると短冊の枚数がとても多くて、飾る時もあのお二人に手伝ってもらわないといけなかったんですよ」



紗南「だから片付けもしてもらってるってこと?」



ちひろ「そういうことです」



麗奈「あやめも大変ね……そういえば願い事といえばちひろまたなんかしたでしょ」



ちひろ「さて、なんのことでしょう?」





紗南「えっと、今日仁奈ちゃんがちひろさんのお陰で願い事が叶ったって喜んでたんだけど、ちひろさん何したのかなって話してて」



ちひろ「あぁ、今朝急に休暇調整したいと仁奈ちゃんのプロデューサーさんから連絡が来たのはそれが理由だったんですね」



麗奈「……あれ、ちひろ知らなかったの?」



ちひろ「はい、仁奈ちゃんの願い事が叶ったという話は今聞きました。単純に体調に関わることだからと……そうですか、叶ったんですね」



紗南「うーん、ちひろさんは何もしてないってことなの? だったらなんで仁奈ちゃんはちひろさんのお陰なんて言ってたんだろう?」



ちひろ「それは恐らく――」





――――ちひろ、回想



ちひろ(これでアイドルの皆からの短冊はほとんど集め終わって、あと短冊を貰っていないのは……ここから近い子だと仁奈ちゃんですか)



ちひろ(珍しいですね、こういうことには積極的な子だと思っていたんですが……まぁとにかく様子を見に行きますか)



仁奈「――……やっぱりお願いごとはひとつじゃないとだめでごぜーますよね……でも……」



ちひろ「失礼します。仁奈ちゃん、短冊の方はどうですか?」



仁奈「わあぁ!? ち、ちひろおねーさん急に出てこねーで欲しいです! びっくりするですよっ!」



ちひろ「ご、ごめんね。ただ、仁奈ちゃんがあんまりにも短冊を持ってこないから気になりまして」





仁奈「た、短冊でごぜーますか?」



ちひろ「はい。もう願い事のほうは書けましたか?」



仁奈「あ、えと……も、もちろんですよ! あとはもうちひろおねーさんに渡しに行くだけだったですよ! ほんとでごぜーます!」



ちひろ「あら、そうなんですか。じゃあ丁度良かったんですね。それじゃあ短冊のほう、お預かりしますよ」



仁奈「わ、分かってるです、ちょっとまってくだせー。えっと、えっと……」ジーッ



ちひろ(あら?)



仁奈「……決めたです! ちひろおねーさん、こっちを受け取ってくだせー!」





ちひろ「この短冊ですね? 願い事は……」



--[あたらしいキグルミがいっぱいほしーです! 市原仁奈]



ちひろ「ふふっ、仁奈ちゃんらしい。これでいいんですね?」



仁奈「もちろんですよ! 仁奈のおねがいごとはそれだけでごぜーます」クシャ



ちひろ「……今、握りつぶしたのは?」



仁奈「えっ!? な、なんのことだかわからねーですよ……」プイッ



ちひろ「……ふむ」パチンッ





仁奈「あ、あれ……!? 短冊が仁奈の手から消えたです!?」



ちひろ「駄目ですよ、遠慮しては。仁奈ちゃんくらいなら願い事が何個もあっていいんですからね?」シュッル



仁奈「そ、それは仁奈のもう一つの短冊! だ、だめですちひろおねーさん! 見ないでくだせー!」



ちひろ「さて、仁奈ちゃんのもう一つの願い事は……」



--[パパにあいたい。 市原仁奈]



ちひろ「……仁奈ちゃん?」



仁奈「な、なんで見ちゃうんですちひろおねーさん……仁奈、それはお願いする気ないですよ……」





ちひろ「どうしてですか。この願い事も仁奈ちゃんにとっては大切なことなんでしょう?」



仁奈「だ、だってパパはお仕事で忙しいですよ? 仁奈、パパにはめーわくかけたくねーでごぜーます……」



仁奈「パパに会えねーのは寂しいですけど、ここにはいっぱいお姉ちゃんがいるから大丈夫なんでごぜーます……」グスッ



仁奈「だ、だから……仁奈はキグルミがいっぱいほしくて……お願いごとは一つだけでごぜーますから、それで……だから……」ポロポロ



ちひろ「そんなことを考えていたんですか……」



仁奈「ア、アイドルのお仕事頑張ってることは、パパに、つ、伝わってるから……そ、それでいいんでごぜーます……」ポロポロ



仁奈「に、仁奈はそれで……それで……うぅ……うぅー……!」ポロポロ





ちひろ(……やれやれ、仁奈ちゃんのパパさんは極悪人ですね。こんないい子を泣かせてしまうなんて)ナデナデ



仁奈「……ちひろおねーさん……?」グスッ



ちひろ「一つ、仁奈ちゃんは勘違いしていることがあります」



仁奈「……え?」



ちひろ「別に、願い事は一つじゃなくてもいいんです。叶えたいことがあるなら、それを全部書いても問題ありませんよ♪」



仁奈「そ、そうなんでごぜーますか……!?」



ちひろ「はい。それに仁奈ちゃんみたいな可愛くていい子にお願いされたら、きっと織姫も願い事を聞いてくれますよ」ナデナデ





ちひろ「それに、七夕は年に一度織姫と彦星が出会う日。そんな日に会えない人に会いたいという願い事はぴったりだと思います」



ちひろ「だから、遠慮しないで短冊に願い事を二つ書いてください。せっかくの願いも形にしないと叶えることも出来ませんからね」



仁奈「ほ、本当にいいんでごぜーますか……仁奈、お願いごとを二つ書いてバチが当たったりしねーですか……?」



ちひろ「もしそんなことで仁奈ちゃんを不幸にしようとする人がいるなら、私が消してあげますよ。だから、ね?」ニコッ



仁奈「ちひろおねーさん……分かったでごぜーます! 仁奈、お願いごと二つかいてみるです! ちょっと待っててくだせー!」カキカキ



ちひろ「ふふっ、慌てなくてもいいんですよ」



仁奈「んしょ…………これで……出来たーっ♪ ちひろおねーさん、見てくだせー!」





ちひろ「はいはい。さて、仁奈ちゃんの願い事はと……」



--[新しいキグルミいっぱいほしーです! あと、パパとあいてーです・・・。 市原仁奈]



ちひろ「はい、確かに。じゃあこれを皆と同じように笹に飾って構いませんね?」



仁奈「いいでごぜーますよ! えへへ♪ もしお願いごとが叶ったら、それはちひろおねーさんのお陰でやがりますね!」



ちひろ「さて、どうでしょう? 私はなにも……」



仁奈「そんなことねーです! ちひろおねーさんがいてくれたからでごぜーます! ありがとうごぜーますですよ!」ニコニコ



ちひろ「……ふふっ、願い事、叶うといいですね」ナデナデ





――――ちひろ、回想終了



ちひろ「……ということがあったんですよ」



麗奈「ふーん、まあ事情は分かったわ。……それにしてもなんか意外ね」



ちひろ「なにがでしょう?」



麗奈「いやなんか、ちひろにしては妙に優しいというか、ねぇ?」



紗南「うん、てっきり最初の短冊もらった時点ですぐに話が終わっちゃうんだと思ってた」



ちひろ「……別に私も、仁奈ちゃんが本当に願い事が一つだけでいいのなら気にしません。でもそうじゃないのなら注意しますよ」





ちひろ「こういうことは、一度嘘をつき始めるとずっと引きずりますからね。そうすると後々どんな影響が出るか分かりません」



ちひろ「皆さんはアイドルです。こんなことで精神に影響が出て仕事で問題を起こされても困りますから、それを防ぐのも私の仕事です」



麗奈「……ちょっと感動して損した」



紗南「やっぱりちひろさんはちひろさんだったかー」



ちひろ「あれ?」



あやめ「――お話中のところ申し訳ありません」シュタッ



ちひろ「あ、はい。なんでしょうあやめちゃん」





あやめ「頼まれていた七夕飾りの片付けが終わりました。飾りはまとめてちひろさんの部屋に運び込んでおくのでよかったのですよね?」



ちひろ「あ、運びこみまで終わったんですね。本当にありがとうございます」



あやめ「いえ、この程度のことでしたらいつでも! ……は困りますが、たまにでしたらどうぞ! モバP殿もそう仰っていました」



ちひろ「そうですか、それでは後のことは私がやりますので」



あやめ「あ、ただその前に一つ気になったことを聞いても良いでしょうか?」



ちひろ「ええ、どうぞ?」



あやめ「片付けをしていて思ったのですが、ちひろ殿の短冊はどこに……」





麗奈「あれ? なかったの?」



あやめ「はい……あれだけの数ですから、もしかしたら見落としている可能性もないことはないのですが……」



紗南「ちひろさんの短冊かー、あたし結構気になるかも!」



麗奈「どうせ碌でもない願い事でも書いてるんでしょうけどアタシも知りたいわね。ちひろの願い事ってなんなの?」



ちひろ「それはほら、あの大きな短冊に書いた『みんなでトップアイドルになれますように!!』が私の願い事……」



麗奈「でもちひろはアイドルじゃないでしょ? さっき嘘は駄目みたいなこと言ってたくせにっ」





紗南「そーだよちひろさん! 本当は別にこっそりお願いしたことあるんじゃないの?」



あやめ「わたくしも七夕の準備と片付けをしたのですから、ちひろ殿の願いを知る権利くらいあると思うのですが!」



ちひろ「……ふぅ……皆さん、一ついいことを教えましょう。『好奇心は猫をも殺す』、なんていうことわざを知っていますか?」ニコニコ



麗奈・紗南「「ひっ!?」」ギュッ



あやめ「やはり駄目ですか……まぁ、ちひろ殿ですからそう言うと思っておりました」



ちひろ「そもそも私の願い事なんて対して面白くないですよ。だから教えたくはありません」プイッ





麗奈(……お金のことね)



紗南(お金のことなんだろうなぁ)



あやめ(お金のことでしょうか)



ちひろ「……なにか」



あやめ「いいえ、なんでもありません。では麗奈殿、紗南殿、共にレッスンに参りましょうか」



麗奈「ん? 今日はあやめも一緒だっけ?」



あやめ「ええ、なんでもマスタートレーナー殿がまとめて最高のご指導してくださるとか」





麗奈・紗南「「えっ」」



あやめ「さて、ではレッスン場へ向かいますかお二人共」



麗奈「あ、ま、待って! やめて、今日が地獄の特訓の日だなんて聞いてないわよっ!」



紗南「スキップ! このイベントスキーップ!」



あやめ「諦めましょう、参りますよ」



麗奈・紗南「いやーっ!」ズルズル



ちひろ(……あんなに嫌がるなんて、マスタートレーナーさんのレッスンは相当激しいみたいですね)





ちひろ(しかし、それもアイドルにとっては必要なこと。頑張ってください、麗奈ちゃん! 紗南ちゃん!)



ちひろ(……しかし、本当に良いことを聞きました。仁奈ちゃんの願い事は叶ったんですね、良かった……)ゴソゴソ スッ



ちひろ(私のこの願い事は……飾っていれば、叶ったんでしょうか……?)



--[皆がずっと元気でいてくれますように。 千川ちひろ]



ちひろ(……やっぱりないですよね、この願いは皆と一緒に頑張りませんと。それにさすがに、これを見られるのは恥ずかしいですし)クシャ



ちひろ(――さてと。飾りをまとめてもらいましたし、私は七夕送りをしに行きますか)



〈終〉





23:30│モバマス 
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