2015年07月23日

P「隣の楓さん」

前作 高垣楓「プロデューサーの家が……」

・モバマスのSS



・書き溜めありなのでさくっと終わる予定





・基本的に

 Pの家が焼けたよ! 楓さんの隣の部屋に住む事になったよ! 部屋が中の扉で繋がってるよ!

 これだけ把握してれば読めると思います。



それでは始めて行きます。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1437053307



/夜・CG事務所内



P「……」カタカタ



P「……」フム



<ヴーッ ヴーッ



P(おっ、LINE)



楓『今日は、お帰り遅くなりそうですか?』



P『いえ、10時前には帰れると思いますよ』



楓『私もそれくらいになりそうです』



P『わかりました』



楓『では、また後程』



P『はい、また』



楓『 ヾ(@´∀`)ノ 』



P(かわいい)

ちひろ「あら、メールですか?」



P「ん、ああすいません、業務中に」



ちひろ「いえ、もう定時は過ぎてますし、少しくらいいいんじゃないですか? でも、何かいい知らせだったみたいですね」



P「特にそういうわけじゃないんですが……どうしてです?」



ちひろ「違いました? なんというか、嬉しそうな表情をしてましたので」



P「マジですか」



ちひろ「ええ。微笑んでるっていうか、ニヤついてるっていうか。あっ、ひょっとして彼女とか!」



P「……いやいや、そんな人いないですって」



ちひろ「あっ、今間がありましたよ? 本当はひょっとして」



ガチャ

加蓮「ただいまー。はぁ、今日も疲れた」



奈緒「まあ今日は特にハードだったしなぁ」



凛「ふふ、でも加蓮も体力ついたよね」



P「おお、3人ともお帰り。マストレさんのレッスンお疲れさん」



ちひろ「あ、逃げた」ブー



加蓮「? 何の話?」



ちひろ「プロデューサーの彼女疑惑についての話です♪」



P「ちょっ」



凛「……ふーん」(低音)



加蓮「へぇー、彼女ねぇ……」



奈緒(怖ぇよ二人とも……まあ確かに気になるけどさ)

奈緒「実際どうなんだ? Pさん」



P「あのな、よく考えてみろって。こんなのに彼女がいるわけないだろ」



凛「私は、そんなことはないと思うけどな。ね、加蓮」



加蓮「そうそう。Pさんがいい人なのは、私達はよく知ってるよ?」



P「ははは、ありがとな二人とも。まあでも、ほら。今はアイドル達の魔法使い役で精一杯だからな」



奈緒「いやPさん、それはちょっとクサいだろ……」



P「ええい言うな、自分でも恥ずかしいんだ」



加蓮「あはは、締まらないのもPさんらしいね」



P「うるさいっ。あー、そうだ。三人とも帰りだよな。少し待ってられるか?」



加蓮「別に大丈夫だけど、どうして?」



P「もう時間も時間だ、送って行くよ」

凛「それは嬉しいけど、そんなことしたらプロデューサーの帰りが余計遅くなるんじゃない?」



奈緒「あー、そういえば家遠いんだっけ?」



P「ん、あー、まあそれは気にしないで大丈夫だから」



凛「ふーん……? それなら、お願いしようかな」



P「おう。それじゃ、宿題でもして待っててくれな」



加蓮「もー、折角忘れてたのに宿題のこととか思い出させないでよー」



奈緒「ま、大人しくやっとくか。おバカアイドル呼ばわりは御免だし」



凛「私は分からないところがあったら二人に聞くからよろしくね、先輩」



奈緒「こういう時だけ先輩扱いかよ……」



P(危ない危ない、一応火事のことは彼女らには内緒だからな……)



P(……しかし嬉しそうな表情をしてた、か。自分じゃわからないもんだなぁ)

/夜・Pの部屋



P「ふーっ、ただいまーっと」ガチャ



P(住み始めて一ヶ月くらいになるか。前のとこより随分広くなったから戸惑ったけど、なんとか慣れてきたなぁ)



P(広いのもそうだけど、何より住みやすくていいとこだ)



チラッ



P(あの扉に関しては……まだっちょっと慣れないけども)



トン トン トン



P(お、早速)



P「はい、どうぞ」



楓「Pさん、おかえりなさい」ガチャ



P「ただいま帰りました」

楓「少し遅かったですね」



P「ああ、プリムスの子らを送ってきましたから」



P「この時間じゃ、一人歩きさせるのもどうかと思ったので」



楓「凛ちゃん達、まだ女子高生ですものね。何かあったら大変ですものね」



P「ええ、うちの大事なアイドルですし、何より心配ですから」



楓「今度直接そう言ってあげたら、きっと喜びますよ」クスクス



P「そうですかね?」



楓「ええ、きっと。ところで、早速ですけど……どうですか?」クイッ



P「いいですよ。今日はどっちにしますか?」



楓「じゃあ私の部屋でもいいですか? こないだはそちらでしたし」



P「了解です。部屋着になっちゃうので、少しだけ待ってて下さいね」



楓「はーい。それじゃ、準備しておきますね」パタン



P(楓さんの部屋と、扉一枚で繋がった部屋で暮らし始めて、1ケ月)



P(部屋に戻ると楓さんに出迎えられ、時にはこちらが出迎えて、そして一緒に晩酌をする)



P(そんな日々が、いつのまにか『日常』になりつつあった)

/夜・楓の部屋





楓「今日も、お仕事お疲れさまでした」



P「楓さんも、撮影お疲れさまでした」





「「乾杯!」」





P「ぷはぁ……月並みだけど、仕事後の一杯は美味いなぁ」



楓「はぁ、おいし……」



P(吐息一つで随分と艶っぽいなぁ)



P(風呂上りなのか髪も湿って、頬も上気してて……)ドキドキ



楓「? どうしました?」



P「いや、いやいや、何でもないですよ。さ、グラス空きましたしもう一杯どうぞ」



楓「あら、ありがとうございます♪」

楓「プロデューサー、今日も残業お疲れ様でした」



P「いえいえ。これくらいなら、もう慣れっこですね」ハハハ



楓「こうして隣で暮らすようになってきて少し分かるようになりましたけど……今は、少し忙しめなんですか?」



P「そうですねぇ、ここしばらくよりは少し。今はプリムスのライブが控えてますから」



楓「そういえば凛ちゃん達、今度ライブでしたね。それも、武道館で」



P「ええ、武道館決まった時は思わずガッツポーズでしたね。一般のチケットなんか、10分しない内に完売したみたいですよ」



楓「あら、さすがはトライアドプリムスですね。奈緒ちゃんが緊張する緊張するって言ってた気持ちも、分かる気がします」



P「あはは、奈緒らしいなぁ。まあ、そういうとこが奈緒のいいとこだとは思いますけど」



楓「緊張したり、照れてる奈緒ちゃんって可愛いですものね。こう、なんというか、撫でまわしたくなるというか」



P「わかりますけど、それ奈緒に言っちゃだめですよ。あいついじけるから」



楓「ええ、勿論。照れてる奈緒ちゃん、見たいですから」グッ



P「ははは、まあほどほどにしといてやって下さいね」



楓「はぁい。でもこの時期となると……今は三人とも、仕上げのレッスンで大変でしょうね」



P「ええ、今日もマストレさんのとこでレッスンです。随分しごかれたみたいですけど」



楓「加蓮ちゃん、大丈夫でした?」



P「加蓮もどんどん体力ついてますから、あれくらいなら。もう最初のころとは別人みたいですよ」



楓「ふふっ、そうでしたね。加蓮ちゃんだけじゃなく、三人ともとても変わりましたものね」



楓「私もまだまだ、学ぶ身ですけど……なんだか、妹の成長を見守ってる姉のような気分になっちゃいます」



P「あ、それはちょっとわかります。あんな事務所ですから、仕事だけの関係って感じでもないですし」



楓「ですね。そんな『妹』達のライブですから。今度は私も、見に行きますよ」



P「そりゃあきっと、彼女らも喜びますよ。僕も、彼女らの為にも頑張るとしますかね」

楓「ふふっ……でも、それだともう少し先になっちゃいそうですね」



P「え、何がですか?」



楓「家具を買いにいく約束が、です。Pさん、引っ越してきてからずっと忙しそうですから」



P「あー。引っ越してきた直後にミステリアスアイズのCD発売で、次はプリムスのライブですからねぇ」



楓「そういえば私達のCDも、Pさんが越してきた頃でしたね」



P「仕事があるのは嬉しいですけど、おかげでまだまだ部屋が殺風景なままですよ……あ、待てよ。えーと」



P「今週末なら、一応予定空きますね。事務方の仕事も、2、3日もすれば落ち着くと思いますし」



P「本当に直前になると、また忙しいと思いますけど……どうですか、今週末あたり」



楓「えっと……週末なら、確かに私も空いてますけど。でも、それってPさんの貴重な休日なんじゃ」



P「休日とはいえ部屋にいるだけってのも、少し勿体ない気はしますし。まぁ……その、なんというか」



楓「?」

P「部屋でダラダラしてるなら、楓さんと買いものに行った方が楽しいかな、と」



楓「……ふふっ。それじゃあ、今週末に行きましょうか」



P「ええ、お願いします」



楓(二人でお出かけなんて、初めてかも……)



楓「……あっ」



P「どうしました?」



楓「いえ、お酒が切れてしまったので……もうちょっと飲みたかったんだけどな」シュン



P「ウィスキーでよければ部屋にありますけど」



楓「あ、いただきます。ウィスキーも大スキー、なんて」フフッ



P「……断っておきますけど、南極の氷は出てこないですよ?」



楓「あら、残念」

/週末の朝・楓の部屋



楓(今日の服、どうしよう)



楓(折角Pさんと出かけるのに、いつも通りの服装なのも勿体ないし)



楓(あ、変装用に一応ウィッグも用意しておかないと)



楓(……)



楓(……)



楓(プロデューサーとのお出かけなんて初めて……楽しみね)

/昼・Pの部屋



P(さて、そろそろ約束の時間だけど、どうだろう)



トン トン トン



楓『はい、どうぞ』



P「そろそろ時間ですけど準備の方、は……」



P「……」



楓「あの、どうでしょうか? あまりこういう服は着ないんですけれど……」



P(いつものオフショルダー服ではなくワンピースで、しかも変装用にロングのウィッグと伊達眼鏡、そして麦わら帽子)



P(おおお……なんというか、これは)



P「その……イイですね」



楓「……そうですか?」



P「ええ、いつもと違う雰囲気ですけど、とても」グッ



楓「ありがとうございます。お出かけ用に、一生懸命選んだ甲斐がありました」ニコッ



P「あー、でも、これじゃウィッグとか、変装の意味があんまりないかもしれませんね」



楓「あら、どうしてですか?」



P「一目で楓さんだとは分からないと思いますけど……これはこれで、人目を惹いちゃうでしょうから」



楓「……ふふっ♪」

/昼・家具店



<イラッシャイマセー



P「おお、こんな近いところにお店があったんですね。知らなかったなぁ」



楓「家具店兼インテリア雑貨屋さんという感じなんですけど、いろいろ揃ってて便利ですよ。デザインも、なかなかいいですし」



P「確かに、ぱっと見た感じ洒落たものが多いですね。ひょっとして楓さんの部屋のも?」



楓「ええ、当たりです。とりあえず、何か欲しいものありますか?」



P「そうですね、とりあえず机とライト、ベッドは買っておきたいかなぁ」



楓「今は床に布団をそのまま敷いてらっしゃいますけど、ベッドの方がいいんですか?」



P「ええ。今までベッドだったからなんとなく慣れなくて。やっぱベッド買うかなと」



P「まあとりあえず最低限それが欲しいってくらいなんで、お店の中を適当に見て回ってもいいですか?」



楓「ふふっ、他に何か欲しいものみつかるかもしれませんしね」



P「ええ、そういうことです」



楓「それじゃ、行きましょうか。私が案内しますね」

/暫く後・家具店内



楓「大分みてまわりましたけど、どうですか?」



P「とりあえず机と卓上ライトはいいのが見つかりました。他にもいい小物があって、どれを買うか迷うくらいですね」



楓「私も、ここに来るといつもそうなっちゃいます。見てるだけども楽しいですよね」フフッ



P「本当に。ガリレオ温度計とかミニ天球儀とか、特に意味もないけど欲しくなっちゃうなぁ」



楓「アメリカンクラッカーとか、ちっちゃなサボテンとか」



P「ああ、そういうのもいいですよねぇ。なんかワクワクしちゃいます」



楓(喜んでもらえたみたいで、ここに連れてきてよかった)フフッ



P「ん、でもそういえばベッドの方ってまだ見てないですよね?」



楓「あ、はい。入口から順に回ると最後の方なんです。ほら、あの辺り」



P「おお、ホントだ。ベッドが並んでる。んじゃとりあえず見てみますか」

楓「あ、でもベッドは本当に大切ですから……店員さんにアドバイスしてもらうのも、いいかもしれないですね」



P「それもそうですね、寝つき難かったら嫌ですし。あ、すいませーん」



店員「はい、何かお探しでしょうか」



P「引っ越したので、新しいベッドを買おうかと思っていまして」



店員「ベッドでございますか。どのようなものがいいかなど、ご希望はありますでしょうか?」



P「そうですねー、睡眠時間が短いときもあるので、眠りやすいのがいいんですが……」



P「あー、あと一応、予算はこれくらいなんですが」

店員「そのくらいでとなりますと……そうですね、ご予算を多少上回ってしまいますが、こちらなどいかがでしょうか」



店員「当店でも、人気のベッドになっております。寝付きやすいと、評判もいいようですよ」



P「えっと」



楓「あら」



店員「? あの、何かございましたでしょうか」



P「あ、いえ、ダブルベッドではなく、シングルを捜しているので」



店員「シングルでございますか? ご夫婦でしたら、ダブルの方がよろしいかと思ったのですが……」



P「あ、いえ、その」



楓「すいません、私達夫婦じゃないんです」



店員「えっ」

P「なんというか……その、会社の同僚で」



店員「それは大変申し訳ありません! その、随分仲が宜しいようでしたので、てっきりご夫婦かと……!」



P「いえいえ。それじゃ、シングルのベッド見せてもらっていいですか?」



店員「はい、ご案内します!」



P「楓さん? 行きましょう」



楓「あ、はい」



楓(夫婦、か)チラッ



楓(傍から見れば、そう見えるのかしら……)



楓(もしそうなら、それは――)

/昼・とある路



P「ふう、とりあえずいいベッドを見繕えたし、これで大丈夫かな」



楓「気に入るものがあってよかったですね」



P「……夫婦に間違えられたのは、ちょっとびっくりしましたけど」ハハ



楓「そう、ですね」



P「でも、案内してくれてありがとうございます。本当に助かりました」



楓「気にしないでください。これも……」



P「お隣さんのよしみ、ですか?」



楓「はい♪」



P「うーん、でも、なんか僕のものにだけ付き合ってもらって申し訳ないなぁ」



楓「私は楽しかったですし、気にしませんけど……それなら」



P「お、何かありますか?」



楓「ええ。もしよかったら、アクセサリー見るの、付き合ってもらってもいいですか?」

/昼・アクセサリー店



P「ここも知らなかった……」



楓「男の人向けのアクセサリーは、あまり取り扱ってませんからね」



楓「高いお店じゃないので、事務所の子達も、けっこう見にきてるみたいですよ」



P「そうなんですか?」



楓「奏ちゃんに凛ちゃん、あと海ちゃんとか。高校生の子達に人気みたいです。お洒落したい年頃ですものね」



P「奏や凛はわかるけど、海もか。少し意外だなぁ」



楓「みんな結構、気を使ってますから。今度、見てみてあげて下さい」



P「ええ、そうしてみます。楓さんはとりあえず何を見たいですか?」



楓「そうですね……えーっと……」

楓「Pさん、これ、どう思いますか?」



P「指輪……うーん、楓さんにはもう少しシックな感じの方が似合いそうな気がしますが」



楓「なるほど。確かにデザインはいいけど、少し派手かもしれませんね。色合いといい、大きさといい」



P「ええ。それに楓さんは手も細くて綺麗ですから、アクセサリで飾るよりはアクセントにするくらいのものの方がいいかと」



楓「……」



P「ん、ああ、すいません。ついプロデューサー目線になってしまって。そんなこと、楓さんのがよくご存知ですよね。元モデルですし」



楓「いえ、むしろ嬉しいです。その、ちょっと恥ずかしいですけど」



P「いやまぁ、その、本当のことですから」



楓「……ふふ。私、もう少し見ててもいいですか?」



P「ええ、勿論」



P(まいったな……こっちも恥ずかしくなってきた)



P(……ん、あのネックレス。楓さんは指輪を見てるみたいだけど)



P「店員さん、すいません」コソッ

/夕方・喫茶店



楓「お酒も出してるカフェって罠ですよね……今から飲みたくなっちゃいます」



P「飲むつもりですか……」



楓「ふふっ、冗談です。お酒は、帰ってからの楽しみにしておきます」



楓「でも本当に、私の方にも付き合ってもらっちゃって、ありがとうございます」



P「いやいや、僕のに付き合ってもらったお礼みたいなもんですし、気にしないでください」



楓「ふふっ。お陰様で、今日は楽しかったです。ちょっとハプニングもあったりしましたけど……」



P「それは僕もです。楓さんの珍しい格好も見られましたしね」ハハ



楓「ワンピースなんて仕事以外で着たの、久しぶりです。いつもの服よりむしろ丈は長いんですけど、なんだか恥ずかしくて」



P「本当に似合ってますよ、驚くくらい。今度そういう服を着る仕事を取ってくるのもアリかな……いや、でも」ブツブツ

楓「……もうっ」ムギュッ



P(いきなり頬を掴んで引っ張られた)



P「か、かへではん、いはいです」



楓「今は仕事の話は無し、です。折角のお出かけなんですから」スッ



P「りょ、了解です」ヒリヒリ



楓「……ふふ。今日は家具選びでしたけど、今度また、こうしてPさんとお出かけするのもいいかもしれませんね」



P「色々ありますから、頻繁には無理ですけど。偶になら……うん、いいかもですね」



楓「はい、その時は是非また一緒に」



P「ええ。あ、そうだ楓さん、」







「あれ、Pさん?」







P「……ん?」クルッ



加蓮「あっ、やっぱりPさんだ」



奏「こんなところで会うなんて珍しいわね」



P「おお、加蓮に奏。二人は遊びに来たのか?」



加蓮「うん、そう。今日はレッスン休みだったし、息抜きに奏に付き合ってもらおうと思って」



奏「そういうこと。あら、そちらの女性って……」



加蓮「あ、ちひろさんが言ってたPさんの彼女? でもこないだはいないって……」



奏「違うわ加蓮。よく見てみて」



加蓮「え? ……あ、もしかして楓さん!?」



楓「あら、バレちゃった」

加蓮「うわー、一瞬わからなかった! 楓さん珍しい格好してるね。可愛らしいワンピースに眼鏡なんて」



楓「変……かしら?」



奏「ううん、とても似合ってるわ。ちょっと驚いたけど。でも、二人はどうしてここに? Pさんも楓さんもオフよね?」



加蓮「あ、そういえば。楓さん、ウィッグまでつけてるし。もしかしてホントに2人は……」



楓「えっと、それは」チラッ



P「あー、実はこの間、この辺に引っ越してな。まだ慣れてないから、休日利用して楓さんに便利な店とかを案内してもらってたんだ」



奏「楓さんの家、この近くだものね」



加蓮「ていうかPさん引っ越してたんだね。だからこの間も送ってくれたんだ」



P「家が近くなった分、少し余裕ができたからな」



奏「ふぅん」

P「とまぁ、そういうわけなんだ。二人は、もう出るところか?」



加蓮「うん。これからちょっと服見て、晩御飯食べて帰るつもり」



楓「加蓮ちゃん、ライブ頑張ってね。私も見に行くから」



加蓮「ありがとう楓さん! 凛と奈緒にも伝えておくね」



P「二人とも、ハメ外し過ぎるなよー」



奏「わかってるわ。それじゃあね」フリフリ



カランカラン



P「……思わぬところで出会っちゃいましたね。危ない危ない」



楓「事務所からも、そう遠くないですからね。そういえば、何か仰ろうとしてませんでした?」



P「あー。夜、飲みますよね? その時にでもまた」



楓「そうですか? それじゃあ、楽しみにしておきますね」



P「そうしていただけると」<オマタセイタシマシター



楓「あ、飲み物来たみたいですね。それじゃあ頂きましょう?」



P「楓さん、キャラメルマキアートなんて飲むんですね」



楓「ふふ、実はこの間、765さんの美希ちゃんに教えてもらって……」

/夜・Pの部屋



P「それじゃ」



楓「今日も」





「「乾杯!!」」





P「いやー、今日は結構暑かったですし、冷酒が美味しいですねぇ」



楓「沢山歩きましたし、余計かもしれませんね」



楓「今日買ったベッドが来るの、明後日でしたっけ?」



P「ええ。明後日からあのベッドで寝られると思うとちょっと楽しみです」ハハハ



楓「私もベッド買い換えようかしら……何だか見てたら、羨ましくなってきちゃいました」



P「もし本当に買いかえるなら、今度は僕が付き合いますよ」



楓「あら。それじゃあ、その時はお願いしますね」フフッ

楓「うふふふっ♪」



P「楓さん、今日ペース早いですね……徳利3本空いたんですが」



楓「なんだか楽しくって、つい。でもそういうPさんだっていつもより早いですよ?」



P「まぁ、僕も何となくお酒が進むというか……まあ、お互い様ですね」



楓「お酒も進みましたし、そろそろ聞いてもいいですか?」



P「何をですか?」



楓「奏ちゃんと加蓮ちゃんにあった時に言いかけたことを、です」



P「ああ、そういう約束でしたしね。まあなんというか、お礼を渡そうと思って……」ゴソゴソ



楓「今日のですか? そんな、気にしないで良かったのに」



P「いえ、今日だけじゃなくて。部屋を教えてもらった時も、その後もです」



P「『お隣さんのよしみ』とはいえ、よくしてもらいましたから。だから、そのお礼です。はい、これです」

楓(縦長のケース……何かしら?)



楓「開けてもいいですか?」



P「勿論」



楓「……まぁ、綺麗なネックレス。それに、これ」



P「ええ。シュガーメイプル……サトウカエデの葉を模した飾りのネックレスです」



楓「私の名前に因んだものをわざわざ……ふふっ」



P「デザイン自体もシンプルで、楓さんに似合いそうだったので。どう、ですかね?」



楓「嬉しいです。とっても。デザインも好きですし、何よりPさんが私の為に選んでくれた事、それ自体が」



楓「これ、あのお店ですよね? 全然気づきませんでした」



P「楓さんが指輪を見てる途中にこっそりと。楓さん、夢中でしたからね」



楓「……Pさん、お願いがあるんですけど、いいですか?」



P「なんですか?」



楓「このネックレス、つけてください」



P「……わかりました。それじゃ今後ろに」クイッ



P(後ろに行こうとしたら袖を引かれた)



楓「前からじゃ、ダメですか?」

P(顔が近いしなんか目閉じてるし……これは流石に緊張するな)



楓「Pさん?」



P「あ、今付けます。失礼して……と」



楓「こうやってプレゼントまで頂けて、本当に嬉しいです」



P「楓さんに似合いそうでしたから……そう考えると、本当はプレゼントしたかっただけかもしれませんね」



楓「それでも、です。こうしてPさんにプレゼントを貰えたことが、嬉しいんですから」



P「そう言ってもらえてなによりですよ。はい、できましたよ」



楓「どうですか?」



P「ええ、似合ってます。よかった」ホッ



楓「ふふ、大切にしますね」ニコ



P「そうしてもらえたら、嬉しいです」



P(正直めっちゃドキドキした……楓さん、反則ですよ)



/しばらく後・Pの部屋



P「そろそろお開きにしますか。時間も時間ですし」



楓「そうですね……明日は確か、私は夜中まで収録の予定でしたよね?」



P「ええ。僕は明後日出張なので、次こうして飲むのは明々後日ですかね」



楓「そうですね……ふふ」



P「どうしました?」



楓「いえ、いつのまにか『普通』になったな、と」



P「?」



楓「こうやってお酒を互いの部屋で飲んだり、お出迎えしたり。そういうことが、です」



P「ああ、そうですね。まだちょっと慣れないところもありますけど」ハハ



P(楓さん、目がトロンとしてる。結構飲んだし、流石に酔いが回ったかな)

楓「ねぇ、Pさん。私、こうして一緒にお酒を飲むの、好きなんですよ?」



P「それは……僕もです。楓さんと飲むお酒は美味しいですから」



楓「そうですね。私もPさんと飲むお酒は美味しいです。でも、それだけじゃなくって……」



P「それは、どういう……?」



楓「私達は、どんな場所へ行っても、プロデューサーとアイドルです。それは、私がアイドルである以上、当たり前の事です」



楓「けど、ここは、ここに居る時だけは……Pさんと高垣楓という、一人の人間同士でいられますから……」



P「……」



楓「だから、だから私は――……」



P「楓さん?」



楓「……」スゥ



P「寝てる、か」



P(正直、楓さんが寝ちゃってよかった)



P(あの先を聞いてたら……なんというか、ヤバかった気がする)

P「とりあえず部屋に運ぶかな……よっ、と」



P(腕に抱えた楓さんは、とても軽かった。大して鍛えてない自分でも、簡単に持ちあがるくらいに)



P「ベッドに寝かせて……と」トスッ



楓「……」スヤスヤ



P(寝ている楓さんは、いつにも増してあどけなくて。自然と、彼女の頭を撫でていた)



P「それじゃおやすみなさい楓さん。いい夢を」





バタン

/翌朝・楓の部屋



楓「……ふぁ。もう朝……」



楓「あれ、寝間着じゃない……」



楓(そっか、昨日はPさんの部屋で寝ちゃったんだ……アクセサリも、つけたまま)



キラッ



楓(サトウカエデのネックレス……昨日貰ったのよね。なんだか、夢みたい)



<ゴソゴソ カチャカチャ



楓(あら、Pさん起きたのかしら)



トン トン トン



P『はい?』



楓「おはようございます、プロデューサー――」



楓(昨日もらった、このネックレスはきっと私の大切な宝物になる)



楓(宝物にしたいと、そう思った)



おわり



20:30│高垣楓 
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