2015年07月27日

モバP「なっちゃんという同級生」

※キャラの独自解釈あり



スレタイの「なっちゃん」はオリキャラではないです



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1434111292





P「くっ、この、そら!」カチカチ



凛「………」カチカチ



P「うおおっ! ……だー、また負けた!」



P「凛はスマブラ強いなあ」



凛「でも今のはこっちも危なかったよ。どうする? リベンジする?」



P「当然。次こそ俺のCFが華麗に勝利を――」





ちひろ「おっほん! 二人とも、もう始業時間は過ぎていますよ?」



P「え?」



凛「本当だ。ちょっとゲームに集中し過ぎたね」



ちひろ「親睦を深めるのは結構ですけど、やることはきっちりやってくださいね」



凛「はい」



P「すみません」



P「さて、凛もレッスンに行ったし、俺も仕事頑張るか」



P「今日は……そうだ、スカウトをやるんでしたね」



ちひろ「ええ。うちももう少しアイドルを増やしたいと考えているので。プロデューサーさん、金の卵を見つけてきてくださいね」



P「任せてください。こう見えても俺、女の子を見る目には自信があるんです」



ちひろ「見る目があっても説得できなかったら意味ないですよ?」



P「そこはケセラセラの精神で」



ちひろ「前向きなのはよろしいですが、給料には響きますからね」ニッコリ



P「………」



数時間後・原宿





P「突然すみません。わたくしこういう者なのですが、よろしければアイドルを――」



P「あ……そうですか。はい、お時間取らせて申し訳ありませんでした」



P「……はあ」



凛「あ、いた。本当にスカウトやってるんだ」



P「凛。どうしてここに?」



凛「レッスン終わって暇だったから、様子を見に来たんだけど……その顔だと、あまりうまくいってないみたいだね」



P「ただいま絶賛10連敗中」



凛「うわあ」



P「ま、覚悟はしてたから。いきなりアイドルに興味ありませんかって言われて、簡単にうなずく人なんてそうはいないし」



凛「それはそうだけど」



凛「ねえ、私も一緒にいていい?」



P「いいけど、疲れないか?」



凛「飽きたら帰るから」



P「なら、好きにしたらいい。……よし、頑張るぞ!」



1時間後





P「………」キョロキョロ



P「おっ。凛、あの女性は何歳だと思う。俺は23」



凛「私は25」



P「よし、では早速――」







P「25だった。ついでにスカウトも断られた」



凛「これで私の3勝2敗だね」



P「くそう、次こそは」





凛「……って、なんか趣旨変わってない?」



P「ちゃんと美人にしか声はかけてないから大丈夫だ。スカウトという目的は忘れていない」



凛「前から思ってたけど、プロデューサーって子供っぽいよね」



P「楽しいことが好きなのは否定しない……っと」



P「あそこの人、よさそうじゃないか」



凛「ここからじゃ後ろ姿しか見えないよ」



P「いや、しかしあのスタイルとオーラ。きっと美人に違いない。行ってみよう」テクテク



凛「すごい自信……」テクテク







P「すみません。ちょっとよろしいでしょうか」



女性「はい?」クルッ



凛「(うわ、ほんとに美人だ)」



P「わたくしこういう者なのですが、アイドルに興味はおありで……」



P「……あれ?」



凛「? プロデューサー、どうしたの?」



P「いや、その」



女性「アイドルですか。ふふ、プロデューサーのお仕事、頑張ってるみたいですね」



P「……なっちゃん?」



凛「なっちゃん……? プロデューサー、知り合いなの」



女性「はい。P君の高校時代の同級生の」









女性「なっちゃんこと、鷹富士茄子(かこ)です♪」

事務所に戻って





P「とりあえず、そこにかけてくれ」



茄子「ふふっ。なんだか社会人みたいな振る舞いですね」



P「みたいじゃなくて、一応れっきとした社会人なんだが」



茄子「そうなんですよね。私の記憶の中のP君は、気ままな不良学生のままだから……うーん、やっぱり違和感があります」



凛「プロデューサー、不良だったんだ。もしかして髪染めてたりとか?」



P「それはやってないが……まあ、結構自由に生きていた覚えはある」



凛「今も割と自由だよね。暇を見つけては遊んでるし」



茄子「なんだ、やっぱり変わってないんですね」



P「人間、そう簡単には変わらないもんだ。ましてまだ高卒3年目だしな」



茄子「あら? 私はP君に出会って、いろいろと変化があったと自覚していますけど」



凛「……そのあたりも含めて、プロデューサーがどうやって鷹富士さんと知り合ったのか聞きたいんだけど」



凛「そもそも、こんなきれいな人プロデューサーにはもったいないよ」



P「付き合ってるわけじゃないんだからいいだろ。友達になることすら許されないのか」



茄子「仲いいんですね。アイドルの子と」



P「これは単に遠慮がないだけと言うんだ」



茄子「仲がいいから遠慮もなくなるんじゃないですか? ……ええと、私達の馴れ初めのお話でしたっけ」



P「確か最初に会話したのが高2の時だから……もう4年前か」



4年前





P「……数学の授業は眠くなるな」



P「腹が痛いふりして保健室にでも……いや、それは昨日使った手だ。さすがに連続はばれる」ブツブツ



教師「ではこの問題を……鷹富士、前に出てやってみろ」



茄子「はい」



スタスタ



P「(俺の後ろの席から立ち上がったその女子は、黒板の前に立ってすらすらと解答を書いていく)」



教師「正解だ。戻っていいぞ」



茄子「はい」



スタスタ



P「(席に戻ったそいつは、再びシャーペンを手に取って先生の解説を聞き始める)」



P「すごいなお前。俺、今の問題全然わからなかった」



茄子「………」



P「……聞こえてる?」



茄子「……授業中です。話しかけないでください」



P「お、おう。すまん。じゃあ休み時間にでも」



茄子「休み時間になっても、私にはあなたと会話する理由が特にないのですが」



P「………」



P「(そいつはかわいらしい見た目をしていたが、とにかく愛想がない奴だった)」



P「(別に俺に対してだけじゃない。男女問わず、全員に対して線を引いたコミュニケーションしかとろうとしない)」



P「(最低限の最低限しか会話をしない。当然ながら、校内で友達はいないようだった)」



P「(噂に聞いた話じゃ、とんでもない幸運の持ち主だとかなんとか)」



翌朝





P「(少し寝坊したせいで、電車に乗りこむのがギリギリになってしまった)」



P「結局最後尾の車両にしか乗れなかったか。ここだと駅に降りた後が遠いんだよなあ」



P「……ん?」



P「(満員電車の中。隣に立つ女子に見覚えが)」



P「鷹富士だよな。おはよう」



茄子「……おはようございます」



P「いつもこの車両に乗ってるのか」



茄子「そうですけど」



P「ふーん」



茄子「………」



P「(会話が途切れてしまった。何か話すことはないだろうか)」



P「えっと……鷹富士はさ、好きな食べ物とかあるのか」



茄子「………はあ?」



P「い、いや。なんとなく気になったから」



茄子「無理に話をつなげようとして、何か楽しいですか」



P「黙ったままいるよりは、楽しいな」



茄子「そうですか。私は楽しくないです」



P「……そっすか」



茄子「できれば、今後も話しかけないでもらえると助かります」



P「(取りつく島もない)」



さらに翌朝の電車





P「おっす」



茄子「………」ギロ



P「睨むなよ」



茄子「どうしてわざわざ私と同じ車両に?」



P「後ろの席のやつとは、ある程度話せる仲になっておきたいと思ってさ」



茄子「理由は」



P「授業中や休み時間に暇を潰せるだろ」



茄子「……はあ」



P「心の底からウザそうだな」



茄子「理解しているなら、私が今何を望んでいるかもわかりますよね」



P「わかるが、俺に従う理由はない」



茄子「………」



P「(その後、適当に話を振ってみたがすべて無視された)」



さらにさらに翌朝の電車





P「ひとつ聞きたいんだけどさ」



茄子「………」



P「鷹富士は、何をしている時楽しいんだ?」



茄子「なんですか、いきなり」



P「いつもつまらなそうな顔してるから、気になった」



茄子「………」



茄子「もし」



P「もし?」



P「(その日初めて俺と視線を合わせた鷹富士は、どこか寂しげな表情で口を開いた)」





茄子「もし、何もかもが望んだ通りになるほどの幸運にまとわりつかれたら、あなたはどう思いますか」



P「幸運? それって、お前について噂になってる……」



茄子「あれは本当です。私は生まれつき、異常についているんです」



P「ついてる……それって、たとえば商店街の福引きで一等を必ず引けるとか?」



茄子「たとえがえらく庶民的ですね……でも正解です。私は福引きを引けば大当たりを引けます」



P「いいことじゃないか。うらやましい」



茄子「……そう思いますか?」



P「違うのか」



茄子「なんでもいい方向に転んでしまうこと、それがわかってしまうこと。結構、いやですよ」



茄子「こうなればいいなと思えば、それが実現してしまう。困ったことがあれば、何かが起きて解決してしまう」



P「(自分の運について語る鷹富士は、いつになく饒舌だった)」



茄子「たとえば、今朝の電車はいつも以上に混んでいますよね」



P「そうだな」



茄子「このままだと、学校前の駅で人混みを抜けてホームに降りるのが大変そうですよね」



P「押し潰されるの覚悟で進まなくちゃならんだろうな」



茄子「ええ。でもそうはなりません。私にはわかります」



P「え?」



P「(それからしばらくして、急に俺達の周りの客だけが次々と駅で降り始めた)」



P「(そして、俺達が降りる駅に着いた時には、ちょうど出入り口へ続くように通路ができあがっていた)」



茄子「ラッキーだと思いましたか?」



P「あ、ああ……」



茄子「些細なことですけど、これも私の幸運が引き寄せた結果です。他にも、宝くじを買えば大金を手に入れることもできるでしょう」



P「……そうか。つまり鷹富士には、結果が見えてしまっているんだな?」



茄子「ええ、そういうことです。人生で努力しようがしまいが、なぜか運が私の味方をする。何をしてもうまくいくことが決まっている」



茄子「そんな状態で、何を楽しめっていうんですか」



茄子「結末が見えているミステリー小説を読み続けるようなものですよ。味気なくて、あっけなくて、つまらない」



P「鷹富士……」



茄子「なんですか。何か言いたいことでも?」



P「いや……」





P「とりあえず、駅着いたから降りようぜ」



茄子「………」ハァ



P「なんだよそのため息」



茄子「別に、なんでもないです」



P「(その後、何日かの間は鷹富士と並んで電車に揺られる日々が続いた)」



P「(いくらか話題を提供してみたものの、すべて無視か軽く流されるだけで効果はなし)」



P「(仲良くなる方法とか、まったく思いつきもしない)」



P「(運が良すぎる女の子。でも、当の本人はそれを気に入っていない様子)」



P「(どう接すればいいのか考えていくうちに、なんかだんだん疲れてきた)」







P「今日、いつもより混んでるな」



茄子「そうですね。でも、私達が降りる頃には空いていますよ」



P「(鷹富士の言った通り、だんだんと俺達の周りだけ人がいなくなっていく)」



P「(数日前と同じ。これも幸運というやつなんだろうか)」



P「………」



P「着いたな。駅」



茄子「ええ」



P「………」



茄子「……? あの、ホームに降りないと」



P「………」



茄子「あなたがそこをどいてくれないと、私も降りられないのですが」



P「なあ、鷹富士」







P「学校、サボるか」



茄子「はあ? ……ああ、ドア閉まっちゃった」



P「この電車、終点は横浜の中華街だよな。よし、とりあえず何するかは横浜についてから考えよう」



茄子「な、なにを勝手な……どうして急にサボるだなんて」



P「なんかいろいろ考えすぎて疲れた。朝からこんなんじゃ、学校行っても勉強に身が入らん」



茄子「身が入っていないのはいつものことでしょう。居眠りばかりしているくせに」



P「まあそれはそれとしてだ」



茄子「………」



P「鷹富士は、学校サボったことあるか?」



茄子「……いいえ。サボりどころか、皆勤中ですが」



P「ならちょうどいいじゃないか。サボって遊ぶのはなかなか楽しいぞ」



P「どうせ皆勤賞とか興味ないタイプだろ?」



茄子「………」



終点到着





P「あ、ナナ先生? 今日ちょっと体調が悪いから欠席します」



P「あと鷹富士も欠席します」



担任教師『え? ちょ、ちょっと待ってください。どうして鷹富士さんのことまでPくんが知ってるんですか』



担任教師『というか、そっち雑音がすごいんですけど。明らかに今屋外にいますよね? 体調不良じゃないですよね?』



P「……明日はちゃんと学校行くから!」



担任教師『あ、ちょ』ブツ







P「とりあえず先生への連絡は済んだ」



茄子「かなり強引に見えましたけど」



P「まあいいじゃないか」



P「それと、駄菓子屋のおばちゃんに神奈川の名所を聞いた結果」



P「江ノ島を推されたので、今日はそこで遊ぼうと思う」



茄子「江ノ島? 横浜市内じゃないですよ?」



P「でも、せっかくおばちゃんが教えてくれたんだし。俺一度行ってみたかったんだよな」



P「鷹富士は行ったことあるのか?」



茄子「ないですけど……」



P「よし! じゃあ目的地は江ノ島で決まりだ。どの路線に乗ればいいか調べないとな」



茄子「……楽しそうですね」



P「楽しいさ。他のクラスメイトが教室で座っている間に、こっちは遠出して観光できるんだからな」



茄子「……子どもみたい」



P「高校生は子どもだ」

















凛「不良じゃん」



茄子「不良ですね」



P「昔のことだし、時効だ時効」



凛「でも意外というか、昔の鷹富士さんって……」



茄子「ひねくれ者でしたね〜」



P「ついたあだ名が氷の女王だからな。本当に愛想がなかった」



P「今はめちゃくちゃ態度が柔らかくなったな」



凛「……それで、江ノ島に行った後はどうなったの?」



P「ああ。駅に降りた後、近くの店で自転車を借りたんだが」



茄子「残り一台だったので、二人乗りすることになったんですよね」



P「嫌がるなっちゃんを無理やり後部座席に乗せてな」



P「でも、自転車走らせて景色見ているうちに、だんだんなっちゃんの機嫌もよくなってきて」







P「おお、海だ海! でっかい海が見えてきた」



茄子「いちいちはしゃがないでください。うるさいです」



P「そんなこと言って、実はそっちもちょっと興奮してるだろ」



茄子「し、してませんよ」



P「顔が少しだけにやけてるぞ?」



茄子「これは、その。あなたのバカさ加減に呆れてですね」



茄子「だいたいおかしいです。教室で座っているよりも、必死に自転車こいでる方がしんどいですよ」



P「楽しいからいいんだよ」



P「学校を休んで、クラスメイトの女子とこっそり出かける。なんかワクワクしないか?」



茄子「……不良」



P「そんなに言うなら、お前は別に来なくてよかったんだぞ?」



茄子「だって、あなたがサボろうって無理やり」



P「あの時、次の駅で降りて引き返せば授業には間に合った。でも鷹富士はすぐに引き下がった」



P「本当は、ちょっとだけ楽しみだったんじゃないのか?」



P「今も表情柔らかいし」



茄子「………」



茄子「……バカじゃないですか。ふふっ」



P「おお、鷹富士が笑った」



茄子「わ、笑ってません」



P「いーや、笑った」



茄子「笑ってませんってば」



P「お、おい、肩を揺らすな! バランス崩れるだろ!」



その後、いろいろと見て回って





P「食べ物買ったら福引券がついてきた」



茄子「二回分ですか」



P「あそこでやってるみたいだな。よし、ひとり一回ずつ引いてみるか」



茄子「……いいんですか?」



P「何が」



茄子「私、一等引いちゃいますけど」



P「ああ、もしかして俺が当てる可能性がないって言いたいのか? そこは気にしなくていいぞ」



福引きのおっちゃん「大当たり〜〜!」カランカラン



茄子「一等の温泉旅行ペアチケットです」



P「すごいな。マジで当てやがった」



P「じゃあ次は俺の番だな」







福引きのおっちゃん「はい、4等ね。この中から好きなもの選んでくれ」



P「ふむ……じゃあこのおもちゃの銃もらうよ」



おっちゃん「またごひいきに!」







茄子「残念でしたね」



P「いいや、残念じゃないさ。この銃結構かっこいいし、よくできてる」



P「それに……おーい、そこの坊や!」



男の子「?」



P「温泉旅行のチケットと、俺が持ってる銃。どっちが欲しい?」



男の子「んーとね! こっちの銃!」



P「そうかそうか。じゃあこれは君にあげよう」



男の子「ほんと!?」



P「うん、本当」



男の子「ありがとうお兄ちゃん!」







P「というように、あの子にとってはお前の1等よりも俺の4等の方が価値があったわけだ」



P「何が幸運で何が不幸かなんて、はっきり白黒つくだけのもんじゃない」



P「満員電車の中で、たまたま出口までの道が都合よくできること」



P「道ができなかったから学校をサボることにして、江ノ島で遊ぶこと」



P「どっちがいいのか、わからないだろ」



茄子「……それは、屁理屈じゃないですか?」



P「屁理屈でもなんでもいい。結局は、楽しんだもん勝ちってこと」



P「俺は楽しいことが好きだ。鷹富士もそうじゃないのか?」



P「気の持ちよう次第で、楽しいかどうかなんていくらでも変わるぞ」



茄子「……私も、楽しいことが好きです。そっちの方がいいに決まってます」



茄子「でも、楽しいことを見つけるのが苦手なんです。わくわくすることを見つけるのが、うまくできないんです」



茄子「どうしたらいいんでしょう」



P「そうだなあ……」



P「とりあえず、俺の近くにいてみるか?」



茄子「え?」



P「俺は楽しいことを見つけるのが得意だからな。俺のそばにいれば、おこぼれをわけてやるくらいはできるぞ、多分」



茄子「………」ポカン



P「どうした」



茄子「おこぼれって……ぷっ」



茄子「ふふっ……バカじゃないですか?」



P「………」



P「あれだな」



P「さっきは自転車に乗ってたから、よく見えなかったんだけど」



P「鷹富士、笑うとやっぱりかわいいな」



P「元が美人だから、なおさら」



茄子「そうですか?」



P「そうやって笑ってれば、友達もたくさんできるだろうな」



P「俺とかな」



茄子「もう友達面ですか」



P「あれ? まだ駄目だったか」



茄子「……いいえ」





茄子「友達でかまいませんよ。P君」



P「それじゃ、これからよろしく。なっちゃん」



茄子「なっちゃん?」



P「友達だし、あだ名で呼んでもいいだろ?」



茄子「それはいいですけど、なっちゃんってどういう由来で……」



P「え? 普通に名前の頭文字をとって」



茄子「……ひょっとして、私の名前を『なす』だと思ってます?」



P「違うのか?」



茄子「確かに野菜のなすと同じ漢字ですけど、私の名前は『かこ』と読むんです」



P「な、なんだと! マジか、ずっと間違えて覚えてた」



P「うわー、そうなのか。いいと思ったんだけどな、なっちゃんって」



茄子「………」



茄子「別にいいですよ。なっちゃんでも」



茄子「あだ名なんて、原型とどめてないものもよくありますし」



P「そうか? なら……せっかく考えたんだし、なっちゃんで」



茄子「はい」















凛「ああ。それでそういうあだ名になったんだ」



凛「さっきからずっと疑問に思ってたんだよね」



茄子「P君の失礼な勘違いを後世にまで残すことができました」



P「え? ちょっと待て、そんな理由であだ名をOKしたのか」



茄子「もちろん冗談です♪」



茄子「単純に、あだ名をつけてもらったのがうれしかっただけですよ」



凛「それで、仲良くなった二人は……」



P「俺とつるむようになってから、なっちゃんはよく笑うようになってさ。そうなったら、いろんな人と仲良くなるのも時間の問題だった」



茄子「3年生になって、P君とは別のクラスになってしまったんですけど……それでもちょくちょく一緒に遊びましたね」



P「そして卒業。俺は高卒でプロデューサーになって、なっちゃんは大学進学」



茄子「その後は、あまり連絡もとらなくなりましたね〜」



茄子「P君はたまにしか電話してきてくれませんし」



茄子「私の方からかけようとも思ったんですけど、仕事が忙しいのかもと思って尻込みしてしまいました」



茄子「でも……」キョロキョロ



茄子「事務所でゲームができるくらいには、暇があるみたいですね?」



凛「(あ、スマブラ出しっぱなしだ)」



茄子「友達に電話をかけるくらいの時間はあったみたいですね? うふふ」



P「……あー、ひょっとして怒ってる?」



茄子「すこーしだけ、おかんむりです。男の人は、ただおしゃべりするだけってあんまり好きじゃないのかもしれないですけど……女の子はそれでも十分楽しいんですよ?」



P「以後気をつけます」



茄子「よろしい♪」



ちひろ「プロデューサーさん。帰って来てましたか」ガチャ



ちひろ「あら? そちらの方は」



P「スカウトしてきた女性です。まだアイドルをやるかどうか決まってはいませんけど」



ちひろ「そうですか。実は私の方も、ひとりアイドル志望の方をお連れしていまして――」







??「ウサミン星からやって来ました! 安部菜々、17歳です、キャハっ! 目標は歌って踊れる声優アイドルです!」







P「………」



茄子「………」



ちひろ「プロデューサーさん? どうかしましたか?」



P「……な、ナナ先生?」



凛「ナナ先生って、さっきの話で出てきた……」



菜々「えっ、なぜナナが教師だったことを……って、あれ? ……もしかして、Pくん?」



P「はい。学生時代に散々担任の手を焼かせたPです」



菜々「………」





菜々「………お、終わった」ガーン



P「ぶわはははは!! じゅ、じゅうななさいって、それさすがに無理ありすぎ! あっはははは!」



凛「プロデューサー、笑い過ぎじゃない?」



菜々「」



P「だ、だってさ。高校時代の先生がさ、事務所に来て、キャハって……ぶっ、ぶふっ!!」



茄子「はーい、笑いすぎですよ。P君」スパーン!



P「あいでっ」



凛「(いつの間にハリセンを?)」



茄子「お久しぶりです、安部先生。会えてうれしいです」



菜々「……ああ、よく見たらあなたは鷹富士さんじゃないですか。あはは、まさかいきなり二人にナナの正体がばれるなんて……」



茄子「そう落ち込まないでください。先生は確かに若く見えますし、17歳でも全然イケますよ?」



菜々「……そうでしょうか」



茄子「そうですよ。ね、P君」



P「え? いや確かにびっくりするほど若作りだけど、さすがに10歳以上サバ読むのは」



茄子「P君?」ニッコリ



P「できますね。はい、俺がプロデュースすればそのくらいお茶の子さいさいです」



凛「(鷹富士さん、意外と押しが強い?)」



茄子「そういうわけです。これから一緒にがんばりましょう♪」



菜々「は、はい……そうですよね。頑張りましょう!」



ちひろ「……プロデューサーさん。事情を説明してほしいんですけど」



P「あ、はい。それはもちろん。……ところでなっちゃん、今一緒に頑張ろうって」



茄子「ええ。私もスカウトされた身ですし、アイドルに挑戦してみようと思います」



P「いいのか? 大学生活との両立もあるんだぞ」



茄子「なんとかします。それに」



茄子「P君のそばにいれば、楽しいこととたくさん出会えますから」



茄子「こうして、高校時代の先生と一緒に人気アイドルを目指したり、とか」



P「……なっちゃんは楽しいことが好きだな」



茄子「P君がそうしたんですよ?」



P「そうだったな」



P「よし、では改めて」



P「鷹富士茄子さん。安部菜々さん。これから私が、あなた達のプロデュースを担当させていただきます。よろしくお願いします」



茄子「はい、よろしくお願いします」



菜々「なんだかいろいろ複雑ですけど……精一杯頑張るので、よろしくお願いしますっ」







ちひろ「……よくわかりませんが、にぎやかになりそうですね」



凛「うん。でもいいんじゃないですか」





凛「なんだか、楽しくなりそうだし」





おしまい





17:30│鷹富士茄子 
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