2014年02月26日

P「お、千早。いいカメラ使ってるな」千早「えっ」

P「えっ?」

千早「えっ?」

P「自分で選んだんじゃないのか?」


千早「価格ドットコムで評判がよさそうだったのを買ってきました」

P「それ、ソニーのCyber-shot RX100M2だろ。……ちょっと見せてみ」
P「Pモードで撮ってるのか、これはちょっともったいないぞ」

千早「プロデューサーモードですか? そんなモードはなかったような………」

P「そっちじゃない、『プログラムオート』のPだ。全自動ってことだよ」

千早「ああ、それならマニュアルに書いてありました」

P「それそれ。PモードのほかにもA、S、Mモードがあるだろ? ちょっと慣れてきた人はAモードを使うんだよ」

千早「どう違うんですか?」
P「露出を自動的に決めてくれるのがPモード、絞り値を自分で決めて撮るのがAモード、シャッタースピードを自分で決めて撮るのがSモード、露出を全て自分で決めるのがMモードだ」

P「Mモードは無理に使う必要はないな。俺はいつもAモードで撮影しているよ。露出を変えたいと思ったらEv値を変えればいいんだ。オーバー・アンダー気味になりそうなときは、ブラケット撮影で枚数を撮って……」

千早「あ、あの……露出って何でしょうか」

P「フィルムを光に晒すことだよ。デジタル全盛の今はCMOSセンサーだけどね。ほら、シャッターを押すと幕が開いて、奥にきれいなのが見えるだろ? あれがセンサーだ」

千早「あ、本当ですね」
P「どのくらいセンサーを光に晒すか、それが露出だ。たとえば千早が今撮ってた春香の横顔。なんだか写真全体が暗めだろ?」

千早「言われてみれば、そうかもしれません」

P「これは背景の壁が白いから、カメラが露出オーバーだと判断して全体的に暗くするような露出にしているんだよ。雪景色なんかを撮るときも同じ現象が発生するから、覚えておいて損はないぞ。この場合の解決方法は二通りあるんだ」

P「まずは一つ目。Ev値をプラスにして撮るんだ、これで画面全体が明るくなる。雪景色を撮るときはこの一つ目が有効だ」

P「そして二つ目。測光範囲をスポットにして撮るんだ。こうすると、春香の横顔だけに合わせた露出をカメラが考えてくれるから、ちょうどいい露出になる」

千早「本当ですね、すごいです」
P「この際だから露出を決める要素を覚えておくといい。今までで一番わかりやすかったから、フォトカノから説明を引用するぞ」

千早「フォトカノって何ですか?」

P「露出とはな、蛇口でバケツに水を貯めることに似ているんだ。蛇口の締め具合、つまり蛇口から水を出す勢いは絞りに例えられる」

P「蛇口を開ける時間、バケツに水を貯める時間はシャッタースピードに例えられる。適正露出を得るっていうのは、バケツに少なすぎず多すぎない水を貯めることなんだ」
千早「なるほど、そうなんですか。あの、フォトカノって……」

P「ここで引用を終わるが、これだけじゃ説明不足でな。デジタルカメラはISO感度を自由にいじれるんだ。フィルムの頃はISO感度は固定だったんだけどね。補足すると、バケツの大きさをISO感度に例えることができる」

P「ISO感度っていうのは、センサーの光の感じやすさだ。数字が高くなればなるほど少ない光で撮影できる」

千早「じゃあ、高いほうがいいんですね」

P「暗い所で撮るときはね。ISO感度は高くなると、ノイズが酷くなるんだ。目安としては、晴天で64〜200、曇天で100〜400、室内で400〜1600ってところかな。まあ、よくわからないうちはオートでいい」

P「俺はどんなシーンでも極力800以下で撮るようにしてるよ。最近はファッションショーで屈辱ながらも3200で撮ってしまったが、ゆくゆくはどんなシーンでもぶれずに撮れるようになりたい」

千早「はあ、そうですか」
P「とはいっても、RX100M2は開放F1.8の明るいレンズだから心配はいらないだろう。せっかく明るいレンズだし、せっかくだから被写界深度のことも覚えておくといい。ほら、千早が今撮ってた春香の横顔。背景があまりぼけてないだろ?」

千早「ぼけ、ですか? そういうのは一眼レフカメラじゃないとできないものだと……」

P「そんなことはないぞ。このクラスのコンパクトなら、ぼけくらい朝飯前だ。というか、テクニックを熟知すればスマホでもぼけは作れる」

千早「それはすごいですね。ぜひ教えてください」

P「ぼけを大きくするテクニックはコツは4つある。1つ目は、絞りを開放すること。2つ目は、被写体とカメラを近づけること。3つ目は、被写体と背景を遠ざけること。4つ目は、できるだけ望遠域で撮ること」

P「知識だけ突っ込んでもしょうがないし、実際にやってみようか。春香!」
春香「何ですか、プロデューサーさん!」

千早「春香、その……撮っていい?」

春香「ええっ私を!? ……じゃあ、かわいく撮ってね☆ミ」

千早「一つ、絞りを開放すること……すみませんプロデューサー、絞りってなんでしたっけ」

P「あれっ説明してなかったか? 悪い悪い……まずは、カメラをAモードにしてくれ」

P「絞りっていうのは、ここにF2.8って出てるこの数字のことだ。このカメラの場合、開放するとF1.8になる」

P「絞りは開放すると被写界深度が浅くなるんだ。被写界深度が浅いと、ピントの合う範囲が狭くなる。逆に絞ると被写界深度が深くなり……」
千早「ピントの合う範囲が広くなる、と」

P「そうそう。ちなみに画面全域にピントが合ってることを『パンフォーカス』と呼ぶんだ」

P「ちなみに、パンフォーカスって和製英語だから海外で使うなよ。英語だと『ディープフォーカス』っていうからな。これから海外レコーディングもあるけど、気をつけてな」

千早「まあ、たぶん使わないと思いますけど……それで、どうやって開放するんですか?」

P「液晶の横についてるコントロールホイールを回すんだ。鏡筒根元にあるコントロールリングを回して絞るようにカスタムすることもできるぞ」

千早「あ、F1.8になりました」
P「よしよし、次は二つ目、被写体とカメラを近づけるんだ」

千早「わかりました。春香、ちょっとこっちに寄っ……」

P「そいつは違うぞ千早。写真っていうのはな、足で撮るものなんだ。千早だって、グラビア撮ってるときカメラマンに『こっち来て』とか『離れて』とか、言われたことないだろ?」

千早「ファッション誌の取材の時は、頻繁に場所を変えましたけど…」

P「それは背景を変更したいか、太陽の高度の変化で光の取り方を変えてみたくなったか、もしくは千早を気遣って気分転換しようとしたんだろうな」

P「ファインダーを覗いたカメラマンがモデルに位置変更の指示をすることはない。グリップを握り、ファインダーを覗いてシャッターに手をかけたら、後はもう撮るか撮らざるか、それだけなんだよ……」

千早「そ、そうなんですか。では、私が春香に寄りますね」
千早「じゃあ三つ目、被写体と背景を遠ざけること、ですか」

P「そうだな。これは事務所内だときついから、近所の公園に行ってみようか」


〜近所の公園〜


千早「公園に来ました」

P「よし、じゃあ背景までの直線距離が長い方を向こうか。さて、最後の一ついってみよう」

千早「できるだけ望遠域で撮る、ですね」
P「その通り。広角の写真っていうのは、ぼけないんだよ」

千早「その、プロデューサー」

P「ん、どうした」

千早「絞りが、F4.9になってしまったのですが」

P「ああ、問題ないぞ。ワイド時とテレ時で開放F値が違うのは普通だ」

千早「ああ、そうなんですか」
P「ワイドからテレまで開放F値が同じレンズは『通しレンズ』と呼ばれていてな。ま、これは一眼の話だ」

千早「とにかく、これでぼけるんですね」

P「ああ、撮ってみろ」

千早「春香! いくわよーっ!」

春香「いえーいっ!」

千早「」カシャッ!
P「どうだ?」

千早「すごいですプロデューサー! ぼけてます!」

春香「千早ちゃん、どう? どんな感じなの?」

千早「ほら、春香も見て!」

春香「わっ、すごい! でもなんていうか、照れるね……」

P「とっても可愛く撮れてるな。二人ともさすがだ」

春香「」///

千早「プロデューサーのおかげです。ありがとうございます」

P「ああ。まあ、俺はプロデューサーじゃないんだけどな」

はるちは「「は?」」
本物のP「あれ、弟じゃないか。なんでこんなところに。なんで春香も千早もいるんだ?」

はるちは「えっ? えっ?」」

P弟「いやぁー、久々に東京に来たからサプライズで兄貴に会いに行ったら、この子がうちのカメラ使ってるからさ。つい声かけちゃって」

兄P「なんだよ、そんなことなら一本連絡くれればよかったのに。というかお前、いつ就職したんだ?」

P弟「去年の秋からソニーの工場で清掃アルバイトしててな。俺もソニー勤務だぜ?」

兄P「お前、まだ定職にもついてないのか! いい加減お袋に迷惑かけるのやめろよ!」

P弟「そのお袋から伝言だよ。『正月くらい帰ってこい』ってさ」

P弟「……兄貴の事務所が今スゲー売れてるのは知ってるけどさ。お袋、寂しがってたぞ」

兄P「……」

はるちは「「……………………」」
P弟「んじゃ、俺は用事あるから。じゃな、兄貴!」

兄P「お、おう……お前、そろそろちゃんとしろよ!」

P弟「兄貴はマジメすぎんの!」

兄P「……あいつは本当にどうしようもないな」

兄P「さて、春香、千早。なんか、弟が迷惑かけたみたいでごめんな」

千早「いえ、弟さんには、写真の撮り方を教わっていました」

兄P「写真の撮り方? あいつ、そんな趣味あったかな」

春香「それより弟さん、プロデューサーさんにそっくりでしたね。双子なんですか?」

兄P「ああ、亜美真美たちと同じ一卵性の双子だよ。中身的には、亜美真美たちみたいには似てないけどな」
春香「へぇ〜……似ない双子って、普段亜美真美を見てると信じられないけど、いるところにはいるんですね」

千早「そうですか? 私は弟さんと話していると、プロデューサーと同じような優しさを感じました」

P「そりゃあいつに言うと喜ぶだろうな。まあそれはさておき、事務所に帰ろうか」

はるちは「「はい!」」





終わり?



17:30│如月千早 
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