2015年07月31日

藍子「この幸せをいつまでも」

7月25日は担当アイドルである高森藍子ちゃんの誕生日ということで、SSというものを書いてみようと思います。私の考える高森藍子のイメージとみなさんのイメージが乖離している場合もあるかもしれませんが、その点はお許しください。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1437801315



「はじめまして、プロデューサーさん、ファンのみなさんが優しい気持ちになれるような、微笑んでくれるようなアイドルを目指したいと思っているんです。よろしくお願いしますねっ。」





これは、プロデューサーさんと初めて会った時の、最初の一言。この言葉をあの人に伝えてから、もう一年が経とうとしています。



この一年は、平凡だった私の人生を目まぐるしく変えていきました。



それまでの私は、家族がいて、友達がいて、公園をお散歩している時に出会う、近所のおじいさん、おばあさんがいる。そんな小さな世界で、皆が笑顔で――幸せでいてくれれば、私も笑顔に、幸せになれたんです。



だけど、あの人と仲間たちが、もっと大きな世界を教えてくれました。そこは、キラキラと輝く、その場にいる人の全てが笑顔になれる素敵な世界――。



「おーい。あーちゃんやーい」



「きゃっ……!!」



突然かけられた声に、思わず驚いてしまいました。気がつけば、目の前には未央ちゃんがいて、私の顔を心配そうにのぞき込んでいます。



「あーちゃん大丈夫? 心ここにあらずって感じだったけど」



「すみません。ちょっと緊張してるみたいです……」



今日は、私たちのユニット――『ポジティブパッション』のライブがあります。それだけなら、いつもは「ファンのみなさんの笑顔をみられるっ」て期待で一杯なんですけど……。



「まっ、自分のバースデーライブも兼ねてるとなったら、緊張しちゃうのもわかるかな?」



……そうなんです。今日はポジティブパッションのライブというだけでなく、私のバースデーイベントも兼ねていて、このイベントに合わせて事務所にもたくさんのプレゼントやバースデーカードが送られてきました。



「もちろん嬉しい気持ちが一番強いんですけど、いただいたものに見合うだけの笑顔を、私はみなさんに返せるのかなって、ちょっとだけ不安になっちゃって……」



「それなら声を出しましょう!!! 大きな声を出せば、緊張も不安も吹き飛びます!!! ボンバー!!!」



ライブ前のウォーミングアップをしてくると言って控室を離れていた茜ちゃんが、勢いよく扉を開けて戻ってきました。



「そうそう、茜ちんの言う通り!! 私たちは『ポジティブパッション』なんだから、ファンの前じゃ元気な姿を見せないとね」



確かに、茜ちゃんと未央ちゃんの言う通りです。私はファンのみなさんを笑顔にしたい。そのためには、緊張や不安に負けてなんていられません。たくさんのものをいただけるということは、ファンのみなさんが私たちにそれだけ期待してくれているということ。つまり、私たちに対する信頼の証です。私たちのことをずっと応援し続けてくれたみなさんを信じないで、何を信じると言うのでしょう。



最初から、何も不安に思うことなんてなかったんです。未央ちゃんと茜ちゃんが側にいて、ファンの皆さんとあの人が信じてくれるなら――。



控室に、控えめなノックの音が響きます。きっと、あの人が来たのでしょう。



「そろそろ舞台袖に移動するぞ。準備はいいか?」



少しだけぶっきらぼうに、プロデューサーさんが入ってきます。いつもはもっと朗らかなんですが、ライブ直前には緊張のせいでいつもこんな感じになってしまいます。



「アイアイサー!! この未央ちゃんに任せておきたまえ!!」



「全開で行きますよー!! ボンバァァァァァァッ!!!」



「はいっ、みなさんを笑顔にしてきますっ」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



舞台袖に行くと、ファンのみなさんのざわめきが聞こえてきます。振り切ったつもりでも、やっぱり不安に呑まれそうになってしまいます。



ここは、さっきの茜ちゃんのアドバイスに従いましょう。



「未央ちゃん。茜ちゃん。それと、プロデューサーさん――円陣を組んでもらえませんか?」



いつもは私と未央ちゃん、茜ちゃんの三人で組む円陣に、今日はプロデューサーさんが加わります。みんな、快く私のお願いを聞いてくれました。



「みんな――私、まだちょっとだけ怖いんです。『みんなの足を引っ張っちゃったらどうしよう』、『ファンのみなさんを笑顔にできなかったらどうしよう』って、心のどこかで思っちゃう。だから――」



みんなの顔を見て、手を出します。



「――ほんのちょっとだけ、みんなの勇気を私にくださいっ!!」



差し出した手に、すぐに二つの手が重ねられました。



「なーに水臭いこと言ってんの!! ちょっとと言わず、どーんと持って行きなって!!」



「このやり取り、青春ですね!! 熱血ですね!! ボンバァァァァァァッ!!!」



未央ちゃんは、ニュージェネレーションズとして、私たちの中では一番早くデビューしていました。だからでしょうか……ユニットを組んだばかりの頃は、ポジティブパッションのリーダーとして、私たちを引っ張ってくれていました。



茜ちゃんは、いつも元気いっぱいで、あふれ出すほどの情熱を身体全体で表現している、そんな子です。その情熱は、見ている人の心にまで火をつけ、燃え上がらせるすごいものです。茜ちゃんのどこまでもまっすぐな情熱には、私も未央ちゃんも助けられました。



最後に、これまでよりも大きな手が添えられました。



「……今日の主役はお前だ。思いっきり楽しんで来い」



――プロデューサーさん。私の世界を変えてくれた人。

普通の女の子だった私に、きれいなドレスとガラスの靴を与えてくれた魔法使い。

私がお仕事で失敗した時や悩んでいる時には、いつも話を聞いて、答えをくれた人。



彼と、未央ちゃんと茜ちゃんが傍にいてくれるのなら――。



「――ありがとうございますっ!! 『ポジティブパッション』ファイトー――」



「「「「――オーッ!!」」」」



――私たちにできないことなんて、ないんですっ!!



「燃やせ友情! パッションはミツボシ☆☆★――」



最初の曲は、未央ちゃんの『ミツボシ☆☆★』。軽快なテンポで、会場のみなさんの心をつかみます。スポットライトに照らされてステージの上を踊る未央ちゃんは、本当のお星さまみたいです。



「楽しくなくちゃダメよ グッタリはまだ早い――」



次の曲は、茜ちゃんの『熱血少女A』。未央ちゃんがみなさんの心をつかみ、少しずつ高めてくれたボルテージを、一気に最高潮に持っていきます。この曲を歌っている時の茜ちゃんはまさに炎のようで、会場全体が燃え上がっているような錯覚をしてしまいます。



――その後も会場の熱気は下がることなく、数曲を歌ってから、ついに私の番がやってきました。



これまでの曲とは違った、少しゆったり、ふわふわとしたイントロが流れます。



――『お散歩カメラ』。私がアイドルになって、初めてもらった私だけの歌。



「今日は天気がいいから 右手にカメラ 持って出かけよう――」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



以前、まだ『ポジティブパッション』を結成して間もないころに、プロデューサーさんに聞いたことがあるんです。



――「私がいてもいいんですか?」って。



未央ちゃんも茜ちゃんもとても元気で素敵な子で、一緒にユニットを組むのが私でいいのかなって思ったんです。ユニットの名前からしても、きらりちゃんや友紀さんの方がいいんじゃないかって。



そんなことを聞いたら、ほんの少しだけですけど、プロデューサーさんに叱られちゃいました。



「藍子は自分のことをわかってない」「もっと自信を持て」とか、そんなことを言われたんです。その時のプロデューサーさんは、とても悲しそうな顔をしていました。



「俺は、未央と茜と一緒にユニットを組むなら、藍子しかいないと思ってた。きらりや友紀は、『太陽』にはなれても『お日様』にはなれないからな」



「『太陽』と『お日様』って、一緒じゃないんですか?」



私の疑問に、プロデューサーさんは首を横に振ります。



「全然違う。『太陽』はギラギラとみんなを照らす――そこに手加減はない。照らされてる側が火傷しても、お構いなしに熱を発し続ける。だけど、『お日様』はやさしくみんなを照らす――やさしく、包み込むように」



プロデューサーさんの言いたいことが、少しずつ分かってきました。だけど、やっぱりまだ疑問があります。



「だけど、それなら尚更、友紀さんやきらりちゃんの方が良かったんじゃないですか? 私だけイメージがずれているような気がしますけど……」



「その考えも全然違う。例えば、藍子が言うように未央、茜、友紀でユニットを組んだとしよう。その場合、ライブはどうなると思う?」



「……すごく盛り上がると思います。三人ともとても元気な人たちですし」



「それは間違いない。だけど、俺はこうも思うんだ。盛り上がり過ぎてオーバーヒートを起こすんじゃないかと」



「あっ……」



確かに、そうかもしれません。三人とも、ライブ中にどこまでもテンションを上げて、無理をしてしまいかねない人たちです。





「もちろん、そういうユニットが必要な場面もある。複数のユニットが参加するような大きなライブだと、火付け役としては最適だしな。逆に、時間の短いミニライブでもいいだろう。だけど、単体のユニットで大きなライブを開く時には、やっぱりその懸念は消えないんだ」



「……」



「だから、『ポジティブパッション』にはお前が必要なんだよ。藍子は盛り上がる中でも視野を狭めず、冷静に立ちまわれるからな」



……そっか。プロデューサーさんは、私が思うよりもずっと、私たちのことを見てくれていたんですね。



「……最後にもう一つだけ。『ポジティブパッション』は、未央の『ミツボシ☆☆★』で道を照らして、茜の『熱血少女A』でその道を走り出し、辛くなってきた頃に藍子の『お散歩カメラ』でペースを落とす。そういう構成になっている」



そこで、プロデューサーさんは、この話をしてから初めて、私に笑顔を見せてくれました。



「――藍子には、未央と茜と、何よりファンを癒す『お日様』っていう大事な役目があるんだ。これは、絶対に藍子にしかできないことだ」







――今、私はプロデューサーさんの言葉の意味を実感しています。



『ミツボシ☆☆★』と『熱血少女A』からアップテンポな曲が続いたことで、ファンのみなさんの中には、疲れで表情が曇っている人もいるようでした。



でも、『お散歩カメラ』でペースが和らいだことで、笑顔を取り戻してきています。これが、私がアイドルになってやりたかったこと。私の歌で、ファンのみなさんに笑顔と幸せを届けたいという、私の願い――。



やがて、曲が終わって、最後のMCの時間になりました。この機会に、私はファンのみなさんにあることを聞こうと思います。



「――みなさん、今日は私たちのライブに来てくださって、本当にありがとうございますっ」



湧き上がる歓声。本当に、この人たちには感謝の気持ちしかありません。

だけど、今回はそれ以外にも、言わなくてはならないことがあります。



「私は以前、ある人からこう言われました。私はこのユニットの『お日様』で、未央ちゃんと茜ちゃん、そして、みなさんを癒すのが役目だと。それは、私にしかできないことだと――」



さっきの歓声が嘘のように、会場が静まり返ります。未央ちゃんと茜ちゃんも、真剣な表情で、私の言葉を聞いてくれています。



「――私は、その役目を果たせていますか? みなさんをやさしく照らして、癒すことが……笑顔にすることができていますか?」



一瞬の静寂。そしてその直後に起こる、今日一番の歓声。未央ちゃんと茜ちゃんも、勢いよく私に抱きついてくれました。舞台袖に目をやると、プロデューサーさんが笑顔で親指を立てています。



この瞬間、私は確信しました。私は確かに、みんなの『お日様』になれているのだと。そして、未央ちゃんや茜ちゃん、プロデューサーさん、ファンのみなさんもまた、私にとってのお日様なのだと。



ファンのみなさんに笑顔と幸せを届けたい――。

それが私の願いで、私の幸せ。

だから、私は今、とても幸せです。



――どうか、この幸せがいつまでも続きますように。





12:30│高森藍子 
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