2015年08月04日

梅木音葉の場合


※R-18

※地の文有り

※モバP×音葉





※エロだけでいいんじゃ! という方はCTRL+Fで●04まで飛ばすことを推奨







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●01





今朝、事務所に出勤すると、俺の担当アイドル・梅木音葉が声をかけてきた。



「プロデューサーさん。私、明日は久しぶりにオフなんですよ」



俺は音葉の担当プロデューサーだから、音葉のスケジュールは誰よりも正確に把握している。

音葉もそれを知っている。なのに、あえて音葉は俺に告げた。



「プロデューサーさんは、明日も仕事のようですね……残念です。

 プロデューサーさんの指揮で、私たちもだいぶ忙しくなりましたから……」







翌日が休み、というときのアイドルのテンションは、

彼女たちの心理状態を把握する重要なバロメータだと思う。



今日さえしのげば休める、と少しだけ気力を回復させる者。

プレッシャーからか、仕事し足りなさそうな顔を見せる者。

気が早くて、半分休みに突入したかのように気が抜ける者。

他にも色々ある。



「プロデューサーさんは、今日は遠くまで外出する予定はありませんね。

 それなら私は、仕事が終わったら貴方を待っています。

 “いつも”より遅くなるようでしたら、連絡くださいね……」







音葉の反応には、他のアイドルと違った特別な意味がある。



「貴方を待つの、苦じゃありません。どうせ、明日の朝まで浮ついた気分ですから……。

 ああ、これは失言でしたね。ちゃんと、仕事も真剣にやります。貴方が見ていない時でも」



音葉が、細い首をかしげ、やや垂れた目から秋波を投げかけてくる。

そんな音葉の流し目は、グラビアの仕事で何度もさせたのとほぼ同じだ。

仕草、髪型、紅潮させた肌、頬の緩め具合、くちびる……仕事のために教え込んだ技術が見える。



ただ、今ここで俺に向かって音葉が見せる表情は、

外見は営業スマイルと似ていても、内に含む意味はまったく違う。



俺は、音葉の声がどれだけ甘くなれるか知っている。

音葉が人目から隠しているところがどれだけ可愛いか知っている。

柔らかさも、味も、匂いも、記憶に刷り込まれて、ふとした瞬間に思い浮かべてしまうほど。



音葉を見ていると、このまま手を伸ばして無茶苦茶にしてしまいたくなる。

そういう欲望が不意打ちに巻き起こってうるさく騒ぐ。奥歯を食いしばって、それを抑え込む。

音葉と向かい合っていると、そういう葛藤で神経が削れる……自業自得なんだが。



しかし、今日は何とか耐えられそうだ。この我慢が夜までで済むと思えば……。







「では、のちほど……私、楽しみにしています」



去り際の台詞、音葉は声を半オクターブ上げてきた。



わざとらしい声遣いは、音葉が俺に念押しする合図だ。





●02



仕事が終わったのは、ほとんどのアイドルが事務所から帰ったあとだった。



「遅かったですね……学生の子とか、貴方の顔が見られなくて寂しがっていました」



俺が車にキーを差し入れると、音葉は断りもせず助手席側のドアを開けた。

音葉を隣に乗せたまま発車。事務所が立つ都心を抜けて、さらに車を小一時間走らせる。



「貴方の運転する車の助手席も、すごく久しぶりな気がして……。

 カレンダー上では、そんなに日数が空いていないはずですが、待ち遠しかった」



不夜城を抜ける。

明かりは徐々に減って街灯だけになり、道路にも車が少なくなる。



「駆け出しの頃は、プロデューサーさんの車に乗せてもらうこと、今より多かった気がします。

 あの頃は、今と違って営業車でしたが……こんなに道路も空いてませんでしたっけ」



音葉の声は小さなつぶやきで、エンジン音にかろうじてかき消されない程度だった。







「プロデューサーさんは、仕事中とそうでないときで、アクセルの踏み方が違いますよね」



音葉は、しばしばこういう物言いをする。



足音が違うとか、キーボードを叩く勢いが違うとか。

音を通して俺を見透かしている素振りをする。



「ドヴォルザークみたいですって? それは気後れしてしまいます……。

 それに、あの人が聞き分けたのは汽車の音らしいですし」



アクセルの踏み方なんて、安全運転を心がけていれば、そんなに変わるものじゃない。

そのはずなんだが、音葉には違いが分かるのだろうか。



「ここまでくると静かですから、貴方の思いまで聴こえそう……」



フロントガラス越しの夜道に、音葉のはにかんだ微笑が見えた気がした。



●03





かつて、音葉からこんな言葉をもらったことがある。







最初に、プロデューサーとしての俺を信頼してくれた時。



『私、本当はアイドルなんて、って思ってた……。

 でも貴方となら、頑張れる……だから、一緒に美しい旋律を奏でたい……』







音葉がアイドル活動で、歌以外の仕事にも楽しみを見出してくれた時。



『今までは、ただ歌うことしか知らなかった……でも、貴方のおかげで、

 それだけではない、ということを知った……大事なのは、心から楽しむこと、そうでしょう……?』







アイドルとして、より輝かしい高みが見えた時。



『貴方の声が、私を太陽へと導いてくれる……。

 プロデューサーさんとの思い出の音を刻みましょう……。

 貴方との絆は……アイドルとしての、私の楽譜だから……」



その頃は、純粋にプロデューサーとアイドルとして、上手くやっていた。







『プロデューサーさん……内緒話がしたいんですが、少し近くに寄っていただけませんか?』



あの瞬間、俺と音葉の距離が、もう一歩分でも遠かったら、俺の内心が露呈することもなくて、

二人は普通のプロデューサーとアイドルのままだったろうか。



『ふふ……やっぱり、勘違いではなかったんですね……聞こえました。貴方の、息遣いが』



いや、音葉に責任転嫁するそんな言い方は間違っている。



『貴方が望むなら、私も――』







結局のところ、俺は自分の意志で音葉の肌に触れたんだ。



●04



プロデューサーとアイドルという立場では、俺は音葉をリードしている。

プロデューサーは、担当アイドルについての責任者であり、音葉もそれを理解している。

意見をぶつけあうことが合っても、基本的には俺を立ててくれる。







ただ、今のこのほとんど寝に帰るだけの殺風景な家では、俺と音葉の立場は逆転する。

背広も衣装も私服も脱ぎ捨てて、15cm以下の最近接距離で触れ合う瞬間、

音葉は俺から何かを聞き取り、すべてを読み取ってしまう。







「プロデューサーさんも、今日ずっと私の肌が恋しかったんですよね……?」



吐息の湿り気が届く間合いは、音葉に筒抜けの領域だ。



「朝、貴方に話しかけて、明日はオフだって言った時の息遣いなんか、露骨でしたよ。

 聞いた瞬間、前にこうしてた夜のこと、思い出したんでしょう……」



日常会話の距離感でさえ、音葉はこの調子なのに、

心臓の鼓動まで伝わりそうなほど肌を合わせてしまえば、

俺は音葉への欲望をすべて引きずり出される。



「別れ際に、声を高くしたら……プロデューサーさんったら、嬌声を連想しましたね。

 この間のオフからけっこう経ってますから、溜まってしまったんですか」



音葉の囁きが耳殻を掃いてくる。

アイドルの肌の柔らかさと、肌の下に息づく体温を押し付けられる。

雄の本能を煽ってくる感覚に、思わず溜息が出る。



俺の溜息を捉えた音葉は、してやったりと言わんばかりに笑った。



「……それとも、普段から私の声でそんなことを考えているのか。

 それは、ちょっと困りますね……」



音葉があまりに確信めいて言い方をするせいで、

俺自身より音葉の方が俺の内心を分かってる気がしてしまう。

考えるより先に、音葉の言葉に頷いてしまいそうになる。







「いいですよ……私に触れても。その代わり……」



音葉から流し込まれる声音と体温に、脳味噌を蕩かされていく。



「私にも……貴方の音を感じさせてください」





●05



ベッドの上で腕を絡めた音葉の肌は、薄い汗に濡れていた。



「興奮しているようだ、ですって……貴方のせいですよ、プロデューサーさん」



音葉の背中側に回って、俺の手にも少し余るほど豊かな胸に手を伸ばす。

肩口から膨らみを覗き込み、指と手のひらで熱っぽい感触を味わう。



「貴方は……私の色を塗り替えて、私の中に、あっさり入り込んでしまうから……」



指と手のひらをほんの少し動かしただけで、凝り立っている先端が感じ取れる。

音葉の乳首を指先で挟むと、彼女の肩甲骨がびくりと跳ねる。



「やっぱりもう興奮しているって……貴方が、それを言いますか?」



寒くもないのに、音葉の吐息が一瞬だけ白く曇って消えた。

音葉の近くにいると、自分まで音色が見える錯覚がする。



「貴方が、仕事終わりに迎えに来てくれてから……貴方の一歩一歩の足音も、

 声も、吐息も……私には見えるんです、聞こえるんです。私に、触れたいって……」







気づいた時には、既にかなり盛り上がっていた音葉の乳首が、

俺の指に捩られる度、刺激へ張り合うように固くなっていく。



「車のドアを開けてくれた時、キーを入れて回した時……。

 それからも、サイドブレーキ、アクセル、ハンドル、ブレーキ……気づいてますか?

 貴方の出す音の、何から何まで……私をここに連れてきて、抱いてしまうって言ってました」



ニプレスでも誤魔化しきれないほどいきりたった乳首を軽く弾いてやると、

音葉は上半身だけでなく腰までをがくんと揺らした。反応が一段広がった。



「そうでしょう……? 私を、車に乗せたら、もう……絶対に抱くつもりだったって、

 露骨だから、貴方の色なんて、私にはお見通しです……」



音葉は俺の内心をそこまで察していて、澄ました顔で助手席に座っていたのか。

大した役者だ。さすがアイドルと言うべきか。



●06



「そんな、先っぽばっかり……そこ、弄ってたら……そんなに、好きなの……?」



執拗に音葉の乳首を愛撫し続けると、音葉の声音もいっそう火照ってくる。



「……触ってもいいって言いましたし、いいですけどね……。

 私も、この姿勢は嫌いじゃないです……耳のすぐ後ろから、貴方が聞こえるから……」



そのくせ、音葉はちょっと生意気を言い出した。

あくまで、俺がせがむから触らせてあげている、という体にしたいらしい。



最初に“明日はオフだ”と告げてきたのは音葉だってのに。

脂ぎった欲望をぶつけようとしていた俺の車に、自分から乗ったくせに。







「んあぁっ、ふあぁ……っ、そんな、つよ、んんっ……!」



押し殺した嬌声には、日本クラシック界のホープの面影が見え隠れする。

男と身体を重ねていても、根はお嬢様のままなのか。



「そこ、ばかりじゃ、私……寂しく、てっ――んっ、んんっ!」



音葉のくちびるから漏れる声は、少しずつ色気づいてきたけれども、

まだまだ歌姫の粋から逸脱していない。



「い、いけずな人……ん、んっ、あっ……」



自分の吐息を音葉に聞かれてると思い、さらに音葉の吐息をずっとうかがっていると、

それら二つが意識の中で二つながらに混じって、一緒になってしまう気がする。



でも、まだ音葉との夜は序の口だ。



●07



「さっきは……好き勝手やってくれましたからね……。

 出してください。ほら、案の定こんなにして……」



胸をしつこくいじめすぎて止められた俺は、今度は逆に音葉に対して無防備を強いられる。

アイドルの狂おしく眩しい肢体に中てられ勃起したペニスを、音葉の顔のすぐ前に晒している。



「私の胸を弄ってて、こんなに興奮したんですか……。

 そんなにいい思いしたのなら、私も同じくらいのこと、貴方にシてもいいですよね……?」



ペニスの先端にくちびるを軽く寄せて、音葉は俺を見上げてくる。



「私は、貴方の感じる声が聞きたいです。感じる色が見たいです。ずっと、ずっと……」



普段は歌を紡ぎ、マイクに語りかける音葉のくちびるが、今は淫らに開かれる。



「だから、私が良いって言うまで……出してはいけませんよ?」







火照りきった粘膜に、呼気を浴びせられたあと、鈴口を音葉の舌先でなぞられる。

たった一舐め。ほんの一瞬、俺の下肢が引き攣ってしまう。音葉が察するには、それで十分。



「このえぐい味も、久しぶりですね……やり方、思い出すまで待ってください」



音葉は舌技が鈍ってしまったようなことを言った。

が、その根も乾かぬ内にペニスを口内の肉洞に収めながら、粘膜を絡みつかせる。

油断していた俺が、危うく暴発させてしまいそうになる直前に、音葉が動きを止めて俺を目で咎める。



音葉め、さっきのを根に持ったな。

調子に乗って、音葉の胸ばかりいたぶったことへの意趣返しか。

それとも、音葉になかなか休みをやれなかったことへの恨み節か。







「もっと我慢して下さい、もっと噛み殺してください……それが聞こえると、たまらないんです」



音葉は、トーク番組はさほど得意でもないくせに、

今は口にペニスを咥えたり離したりの合間で、よく舌を回す。



音葉のフェラは、よく唾液を垂らすくせに、最小限の音しか立てないお上品なもの。



「ゆっくり味わいたいので、今は……静かな方がいいです……」



気取った奉仕でも、耐えるのは楽じゃない。

音葉は焦らず、ゆるゆるとした動きで弱いところをじっくりと責めてくる。

肌が触れ合う距離は音葉の支配下。俺が如何に余裕ぶろうと、音葉の耳にはお見通し。

弱点を絶妙の加減でくすぐられる。手のひらの上で転がされてる。



●08



「自分の息、荒くなってるのわかります……顔を上げなくても、私には見えてしまいます」



丹念に唾液をマーキングしつつ、舌とくちびるで亀頭より上を慰撫する。

それに時折、視線と台詞の挑発を投げかけてくる。



「噛み殺そうとすると、歯の間からすぅすぅと空気漏れしますよね……そんなに辛いですか」



音葉はピンと伸ばした人差し指で、茎を根本までなぞり、睾丸を爪先でつつく。



「鼻息がくすぐったいですよ、プロデューサーさんったら」



音葉は投げキスを放る指へするように、俺のペニスにくちづけを落とす。

閉まりきっていない水道の滴を思わせるリズムで触れては離れて、また触れる。







「……まだ、出してはいけませんよ?」



音葉がこちらを見上げながら、また口腔を使ってペニスを包む。

くちびるで悪戯されていた亀頭に、粘膜の熱さが襲い掛かる。

じゅる、ちゅ、つ、と音が――テンポが変わる。お嬢様面をいきなり捨ててきた。



音葉はペニスを頬張ったままなので、声は出さない。

目でこちらに釘を刺す――出しちゃダメって言いましたよね?――そんな。



「んくっ……じゅぷ、じゅぷ、ちゅ……くち、くちゅっ、んむっ……」



そこから、アイドルも女の子もへったくれもない音を立てる。

トロ火だと思っていたものが、実は沸騰寸前で、火力が上がって一気に湯だつ。

ペニスにバードキスして遊んでた口が、いきなりストロークをかましてくる。



「……じゅぷ、じゅぷ、ちゅ――んんっ、んううっ」



音葉のストロークが深くなる。

いつも歌声を奏でさせる喉に、男の欲望を無理矢理突っ込んでいる。



音葉は苦しげにえずき、眉を顰(ひそ)める。それでも動くのを止めない。

俺は膝が力み、慌てて射精を耐えようとするも、もう緩急についていけない。

引きずり出された性欲は、隠しようもなく、そろそろ音葉の口内に――



瞬間、音葉の指が俺の会陰をぐいと押し込んだ。

手加減なしの急襲に、俺は悶絶して、強引に射精を止められた。







「我慢してって言ったのに……私がここ、抑えてあげなかったら、出てましたよね……?」



音葉は、優越の悦びに満ちた眼差しで見上げてきた。

そういえば、会陰を抑えられると射精できない、ってのを前に教えたっけ。



娘がアイドルになって、こんなこと覚えさせられたのを知ったら、

あの梅木夫妻はどんな反応をするだろうか。



「もう我慢し切れませんか……? しっかりしてください、プロデューサーさんなんだから」



ぞっとしない妄想だった。



●09



「プロデューサーさん……それ、随分苦しそうですね」



音葉は、直前まで自分が咥えていたペニスを見ながら、白々しい台詞を吐いた。



「忙しくなって、私と仕事以外で会えなくて、寂しかったんですか?」



音葉は、俺とセックスするときは主導権を握りたがる。その理由は……なんだろう。



普段アイドル活動で俺に主導権を譲っているから、プライベートでは自分がリードしたくなるのか。

それとも例の“音が見える”感覚で、俺の反応が手に取るように分かるという自信のせいか。







「そうだ。あれつけてあげます……プロデューサーさん、鞄のここに入れてますよね。

 ……あ、数がそのまま……もしかして、前の私の休みから、ずっと……? ふふ……」



今も、音葉は勝手に俺の鞄を開けてコンドームを取り出している。完全に音葉のペースだ。

確かに俺も、さんざ焦らされて入れたいという気分にはなってはいるが……。



「これ着けると……本当に気持ちよくなるためだけにシてる、って実感させられますよね」



いつもマイクを握っている音葉の手で、フェラの熱冷めやらぬペニスにゴムが被せられる。

そんな動作をよどみなくやってのける音葉に、思わず苦笑してしまう。

手つきがアイドルらしくなさ過ぎておかしかった。

音葉がそれに慣れたのは俺のせいだが、棚上げした。







「こんな格好……服を着ていたって、誰にも見せないのに……貴方は、特別ですから、ね?」



音葉はベッドに身体を横たえて、俺が入れるべき場所を見やすいよう脚を広げていた。

女性にしては長身で、すらりと伸ばされた音葉の脚から目線を上げると、

シーツまで滴を垂らしてしまいそうな陰唇が目に入る。

結局、一度も直接触れられないまま、ここまで濡れたのか。



「私が、お口で意地悪しちゃいましたから……入れたいですよね、ここに。

 ……いいですよ、プロデューサーさんが、そうしたいなら、私は……」



明らかに自分が入れてもらいたそうな顔してるのに、音葉はこんな台詞をしれっと吐く。

だいたいその前の“寂しかったんですか?”なんてのも、面白い言い草だ。

この家の敷居を跨ぐ前は、音葉こそ寂しそうな顔していたくせに。



「でも……あまり激しくして、声を出させないでくださいね……デリケートなんですから」



音葉が“させてあげる”という態度なのが引っかかったが、

彼女とくんずほぐれつを続けて、俺は考えるのが億劫になっていた。

ただ目の前に許された極上の女体を貪ってやる――そんな蛮行に意識が傾く。



●10



「……あっ――わた、しっ……ん、あぁあんっ、ナカ、にっ……」



雌の熱と締め付けの中に、俺は正面からペニスを沈めていく。

正直な膣内の粘膜が、さわさわと俺を奥へ誘う。

焼き切れそうな衝動が意識に割り込んで、早くこの下に敷いた女に自分を叩きつけたくなる。



「プロデューサー、さんっ、私……こんな、色の、声、でっ……!」



切れ切れで、吐息の中に溶けそうな音葉の嬌声は、どんな色で映っているんだろう。

男を駆り立てる深紅か。それに淫猥さを重ねたマゼンタか。



何の根拠もないただの気分なんだが、音葉が見ている音色が、

一呼吸ごとに俺の網膜へべしゃりと塗りたくられる。

肌と肌がぶつかると、濁ったベージュの飛び散る音がする。



「あ……ふ、あっ、あぁうっ……声、出ちゃう……っ!」



焦らしに焦らされたペニスで、暴発しないよう音葉の膣内をそろそろ忍び歩きすると、

悩ましげな灰白色の声が、音葉のくちびるから溢れる。

また奥へと進めば、中の粘膜がゴムを物ともしない勢いで靡(なび)いてくる。

その感覚が伝わったか、音葉は足を突っ張らせて、シーツを引っかく音が転がる。







上体を倒す。音葉の表情がぐっと近くなる。ペニスはもう一歩奥まで音葉をえぐる。

下から見上げてくる潤んだ瞳に、ごそごそと蠢く俺の動きがちらついた。



ここまで来たら、もう声音も息遣いも筒抜けになってしまえ。

この俺の度し難い響きを音葉に叩きつけてしまおう。



「あっ……だ、ダメっ、です……それ、そんな、急に――あっ」



俺は音葉に覆いかぶさったまま、腰を小刻みにずらす。

侵入者の狼藉を、音葉の中は不規則な締め付けでたしなめる。

それは間違いなく逆効果だった。



「んぁあっ……そ、その色……お、おねがい、ま――待って、あっ、もっと、私、はっ……!」



限界は、思ったよりずっと早く来た。

ああ、音葉と会えなくて寂しがっていたのは、俺も同じだった。

そんな時に、さんざん音葉のくちびるで可愛いことをされていたから、

俺のペニスは張り切ってしまって、意識から独断専行する。



「あっ、ダメっ、プロデューサー、さんっ、もう少しで、いいから、だから……あっ、ああっ!」



音葉の中も俺に付き従って、粘膜をきゅうきゅうと悶えてさせたり、

いじらしく涎の水音を目立たせたりしたが、俺の方が先に一区切りついてしまいそうだ。



「あっ、あ、くぁあっ、んっ、ふぅああっ……!」



呂律が回らなくなった音葉は、手と足とを俺に巻きつけて、

短くパチパチときらめく嬌声を紙吹雪のように振りまいたかと思うと、

俺も身体全体を絡め取られた錯覚に陥って、そのまま抵抗破れ射精を迎えた。



●11



音葉は、ベッドと俺に仰向けの身体を挟まれたまま、俺の首に手を回してきた。

肌に加えて粘膜をこすり合わせていると、俺も音葉の皮一枚下の熱と揺らめきが掴めそうだ。



「……プロデューサーさん……私と貴方のユニゾン、ちゃんと合わせてください……」



音葉が耳元でぼやいてくる。

足の付根から肩口まで密着していて、表情は視界に入っていないが、

網膜の裏に恨めしげな目の音葉が浮かんで漂う。



「……聞いてますか、プロデューサーさんったら……」



射精の余韻が抜けず惚けていると、音葉は口調を黄色く尖らせ、

今度は両足で俺の下半身をかたかた揺さぶってくる。



「まぁ……でも、久々ですからね。これで打ち止め、なんて話は無いでしょう……?」







そりゃ、確かにこのままシてもいい。それも心地よかろうよ。

あの梅木音葉と、五感まで交じり合うようなセックスができるのだから。

実際、じくじくと燻っている音葉の中で、俺のペニスは気炎を取り戻しつつあった。



「貴方は、まだまだ足りないのでは……」



ただ、一度射精して雄の本能が落ち着きを見せると、

今夜ずっとこんな調子の音葉の口ぶりが気になってくる。



「お疲れですか……? ふふ、私は急かしたりはしませんよ、ですから」



音葉の“させてあげる”って振る舞いが、男として気になってくる。







「……何か、お気に召さないことでも……?」



俺が引っかかりを自覚した直後、音葉が小さくつぶやく。察しが早い。



音葉はさっきから“させてあげる”とは言ってくれたが、

では音葉自身は別にしたいとも思っていないのか。



「プロデューサー、さんっ」



身体を重ねているのも、あくまで俺の我儘を聞いているという体がいいのか。

音葉だって心待ちにしていたくせに。わざと言わないようにしてる。

もういい加減素直になってくれてもいいだろうに。







「……貴方も、私の音が見えたら、良かったのに」



音葉は手足をぎゅっと力ませて巻きつけてくる。

締め付けられる感触は、音葉の金髪をくすませた琥珀色か。



「なんて思いましたが……貴方は私のこと、わかっていて素知らぬふりしてますね」



やっぱり、こんなに近いと何でも音葉に筒抜けになってしまう。



●12



音葉は手足を俺にしがみつかせたまま、無言で俺の肩口に顔を埋める。

第一射から復活したペニスが、また音葉の中で我が物顔に存在感を誇示し、

それにあてられた音葉の粘膜が、そわそわと俺をくすぐってくる。



「…………」



それでも音葉はだんまりを決め込む。







膠着状態が退屈になったので、俺は音葉のうなじに腕を回し、

もう一本の腕と足腰で慎重に身体を起こした。



「ん、ン――あっ……」



身体の角度が変わって、体重移動がぐりぐりと音葉の膣内を押しやる。

ひしゃげた呻吟が、音葉の喉奥で閉じ込められて不満気に鳴る。



「ふ、不意打ち、やめてください……変な声の出し方、してしまいますから……」



目線を泳がせるごとく、音葉の声がたたらを踏んだ。



俺は音葉の背中に片腕を回す。

音葉がそうしているのに負けないぐらいの力で抱き寄せる。

さらにセットの崩れた音葉の金髪を、もう一方の手の指で撫でる。



「あ――頭、撫で、てっ……んん……っ」



こうして胸と胸を密着させれば、お互いの心拍も重なりそうで――とは言えない。

音葉の胸の存在感が大きすぎて届かない。俺は改めて音葉のスタイルに感嘆する。

でも、肺の伸縮するリズムぐらいは一緒になっただろうか。



「こんな時に……頭撫でながら言う台詞が、胸のことですか……?」



不満気な台詞を吐きながら、音葉は胸の膨らみをもそもそと擦りつけてくる。

さっき俺の手でオモチャにした乳首の固さが肌をくすぐる。



「プロデューサーさんに褒められれば、嬉しいですが……。

 こんなやり方されると、貴方の褒め言葉が、全部下心に見えてしまいます……」



音葉がそんなことになったら困る――のだが、こう頭を撫でながらだと……

音葉のスタイル見てるとプロデューサーを忘れて興奮してしまう、とか、

仕事で一息ついたときの笑顔を目の当たりにするとそのまま抱きしめたくなる、とか、



「あたま、撫でながらなんて、ずるいです……っ」



日頃、音葉の前で押し殺してる欲望が垂れ流しになってしまう。

何せ抱き合っている間は筒抜けだから、開き直ってしまう。







「私だって……私、だって……貴方と一緒にいたら、貴方のこんな近くにいたら……」



飽きずに頭を撫でていると、音葉は俺に恨めしげな言葉を零してくる。

その時の音葉の中は、息遣いと同じテンポで軽く収縮して、抽送の続きをせがんでいる。

音葉の足腰は先走って、俺に絡ませたまますりすりと肌をこする。



「でも……私、そんな色を口に出したら……一度そうしてしまえば、タガが外れて戻せなくなります……。

 自分でも止められなくなります。そうなった後は……貴方も、ご存知でしょう……?」



音葉の声音は、玉虫色のふらふらした懇願。



「貴方に導いてもらったこの歌姫が、いやらしい声を抑えきれなくなって……

 台無しになってしまいます……貴方の前で、私は……」



音葉は内心を晒すことをためらっている。

音葉の心中は、アイドルに似つかわしいとはいえないから。



でも、その押し隠したものが音葉の望みなら、今はさらけ出してもいいじゃないか。

ここには、俺と音葉しかいないのだから。



「分かっています……貴方はもう、私の浅ましい声を知っています……」



俺は、音葉のそういうところが聞きたい。見たい。

後生大事にぶらさげたプロデューサー面をかなぐり捨てても、だ。



「でも……いけません。それは、ダメなんです……っ」

●13



何だか……“いつも”より音葉の往生際が悪いので、

俺は対面座位の姿勢のまま、音葉の奥底へぐいぐいと差し込む。



「ふ――うっ、お、おく……っ、あっ、んうぁあっ、あああ……っ!」



音葉から漏れる音声は、ぬるぬるてらてらと二人の間を扇情的に彩る。







音葉、焦れったくて辛いだろう。

俺は一度出してしまったからいいが、お前は生殺しのはず。



「……ダメ、ですっ、とにかく、私に、これ以上、声を出させないで……」



音葉はいつになく聞き分けが悪い。

だがここで退いて、せっかく俺の仕事終わりまで待ってくれた音葉を、不完全燃焼のまま帰せと。



それはあり得ない。



「な、ナカもっ……そとも、こすれるっ、こすれっ……あ、んあああっ!」



音葉が身体を捩(よじ)る。

逃れようとするつもりか……いや、違う。手足が絡んだままだ。

台詞と裏腹に、もっともっととねだられてる気しかしない。



音葉は――自分が乱れてしまうのが、恥ずかしいのか。

それを俺に晒すのが、嫌なのか。



「それは……貴方に、見せるのは……それ、は……」



俺の目に晒すのが嫌だったら、体を許したりしまい。

音葉の体は、むしろ欲しいって言っている。



「でも、声……っ、止まらなく、なったら、私……っ」







さっきから音葉は、声のことを気にしてばかりだ。

声を出すとそんなにまずいのか。



一理ある。勢いに任せて嬌声をばらまいてたら、歌姫の命である喉が嗄れてしまう。

そうなれば炎症が治まるまで、アイドルの仕事ができない。



「だから、もう……あっ! う、はぅああっ! うっ動かしたら……私、わたしっ」



それがどうした。

それはプロデューサーとして先刻承知のこと。



だから、次の日が音葉のオフになる夜までお互い焦れながら待つわけだ。







「ぎゅっ、ぎゅってされたら、擦れて、こすれっ、あ、あっあっ……!」



今朝、顔を合わせたそばから俺に流し目を浴びせたのは音葉だ。

俺の魂胆を全部見透かしつつ、それに乗ったのも音葉だ。



「これ、以上っ、貴方に、あなたにされたらっ……」



ペニスを少しでもずらすたびに、貪欲に中をひくつかせるのも音葉だ。

力づくでも引き剥がせないほど、俺にきつく抱きついてくるのも音葉だ。



「あっ……ああ、ううっ、んぅうっ……うああ、あ、あっ――!」



何をそんな意固地になっているか分からないが、もう音葉には折れてもらおう。

ただでさえ音葉と過ごす時はあっという間なのに、意地を張られたまま夜が過ぎたら口惜しい。



俺が腰を細かく無造作に使っていると、その何度目かで、音葉の身体ががくんと跳ねた。



漏れ出る息遣い、身体に奔るリズムの色が変わる。

言葉が出ないからこそ変化が際立つ。



「プロデューサー、さん……私、わたし……っ」



音葉から溢れだす音色は、俺でさえ見えるほど鮮やかになり、

それで音葉が折れてくれたと分かった。

●14



「あっ、ふあっ、ああっ、い――いい、ですっ、そこ、されると――っ!」



挿入した時は、俺が音葉を組み敷いていたはずが、

今や位置関係が逆転して、俺が音葉に馬乗りにされている。

音葉は細い足を広げて屈み込み、俺に跨って上体をぐらぐらと右往左往する。



音葉がパンパンと打ちつける動きは奔放で、

手足を絡ませていると近過ぎて見えなかった音葉の身体も、俺の目前で好き放題に躍る。

胸の双丘は汗を浮かせながら震える。“そこ”に当たると、腹も背中も露骨に動揺する。



「気持よく、なり過ぎて……あっ、う――もっと、すごいの、きちゃい……ます……っ!」



音葉の中が刺激でざわめいて騒がしい。ペニスに吸い付いて貪欲に催促してくる。

執拗に腰を揺すってくる。上から嬌声をばら撒いてくる。



「うあっ、はああっ、あっ、――私、止まらないっ、止まらないんですっ……」



音葉が止められないのは、声か。腰か。手足か。

抽送に水音がこびりついてねちねちと糸をひく。

今夜は二射目も、ほどなく持って行かれそうだ。



「あうっ、ふうああっ、あ、あっ――んあああっ!」



下から腰をつかってがんがんと応じてやると、中への刺激が尻と腿まで波及して、肌の上からでも見える。

表面に浮く汗がが尋常じゃなく増えて、音葉の首や肩が振られるたびに飛沫の匂いが届く。



「やあっ、んあぁあっ! はああっ、あっあっ」



開きっぱなしの音葉のくちびるから、喘ぎにまぎれて唾液が垂れる。

音葉のウエストのくびれたあたりが、感じているのに合わせてへっこんだり戻ったりする。

勝手に喘ごうとする喉のせいで、肺やら横隔膜やら、身体の内側まで引っ張りまわされてるのか。







いつ果てるとも知れない抽送が、いつしかテンポを乱して、リズムの流れから脱落する。

音葉は、快楽半分、苦悶半分の表情をぶらさげ、覚束ない呼吸のまま宙を舐める。

背中は反りがだんだんきつくなり、おとがいが吊り上がって、首も苦しげに筋を浮き沈みさせる。



「あっ、おっ……な、ナカっ、されてっ……い、イク、もう……い、ひっ、うううっ……!」



無理な体勢で、音葉の淫声も音飛びする。

腰のグラインドが細かい痙攣になり、ウエストがへっこんだままぷるぷると震える。

息を吐きっぱなしらしい。往生間際、断末魔が音葉をいじめて、無様な音色を絞り出させる。



「うあ……んっ、う、んんっ、んあぅうっ、おっ――おお゛っ、おお゛ぉおっ……!」



音色が濁る。音葉の口から俺へぼたぼた落ちる。

色は原色がムチャクチャに混ざっていて前衛芸術じみていた。



俺は音葉の姿に圧倒され、意識が飲み込まれ、身体まで磔にされて、

なすすべもなく射精に追い込まれた。



●15



意識が戻ると、窓の外は明るくなっていた。

重い体に鞭打って起き上がろうとしたが、身体がまだついていかない。

ベッドで唸っていると、すぐ隣りの音葉が目を覚ましてしまう。



「あ……おはよう、ございます……プロデューサー、さん」



音葉の声はカラカラにかすれて、見事なハスキーボイスと化していた。

それを聞いた瞬間、俺は頬が緩んで仕方がなくなった。

アイドル・梅木音葉のこんな声音を、俺以外の誰が見られるだろう?



「な、なんで笑うんですか……貴方のせいですよね?」



俺はしばらく湧き上がる笑いを止められなくて、

そのまま音葉の機嫌を損ねてしまい、朝から平謝りに謝る羽目となった。







「笑い事じゃないですよ……私、いつもこうなりますから……」



声がかすれた音葉は、哀れにも態度まで弱々しくなって、

スラリと洗練されたスタイルも縮こまってしまっている。



「歌であれば、私も、喉がもつように、コントロールして、歌いきりましょう……。

 でも、これは……コントロールできませんから……」



数時間ステージで歌いっぱなしのコンサートをこなせる音葉の技量も、

喘ぎ声による喉の酷使については、どうにもならないようだ。



「私……貴方にされると、いつも声がこうなってしまって……。

 だから、オフの前の日しか……で、できないじゃないですか……」



音葉は恨めしげな目線を俺に投げてきた。



「……オフの前の日だけじゃ、寂しい……だから、声を出さなければと思って、

 私、頑張ったのに。貴方が私に意地悪するから……台無しです……」







抱かれると翌朝に喉がダメになってしまうから、翌日に仕事の無い日にしかできない。

それなら、抱かれていても声を抑えて喉が痛むのを防げば、翌日が仕事の日でも――



「……だって、これからもっと忙しくなったら、貴方と……」



ああ、だから音葉は、あんなに頑張って声を抑えようとしてたのか。



「……黙ってないで、何とか言ってくださいっ」



音葉は、また俺からそっぽを向いてしまった。







俺の内心で、音葉のいじらしい努力に協力してやりたい気持ちと、

音葉のハスキーボイスをまた聞きたい気持ちがぶつかりあった。

それはしばらく決着がつかず、おかげで俺は仕事に遅刻してしまった。







(おしまい)





読んでくれた人どうも



20:30│梅木音葉 
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