2015年08月05日

モバP「おかしいな」

P「おかしいよ、絶対これ、ホントおかしい。うんおかしー」



千川ちひろ「……もう。なんなんですかさっきから、ぶつくさぶつくさ」



P「いえねちひろさん。おかしいんですよ。ありえないぐらいおかしい」





ちひろ「はいはいおかしいのは分かりましたから、何がどうなんです?」



P「それがね……」



ちひろ「ええ」



P「Pグッズが不人気なのはおかしいんですよ」





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ちひろ「………………はい?」



P「PグッズですよPグッズ。プロデューサー、すなわち俺をあしらったグッズ」



P「なんでかな。おかしいな。大人気になって然るべしなのに需要がないんです」



ちひろ「……意味がわかりませんが」



P「え? PグッズですよPグ」



ちひろ「はい止め。私が言いたいのは、それが何ではなくて何でそれ、です」



P「おかしな事言いますねPグッズですよ? アイドル達に大人気(予定)の……」



P「需要を満たすために作ったに決まってるじゃないですか」

ちひろ「えっと……、今プロデューサーさんの机周りに並んでるのがPグッズですよね」



P「そうです。文房具からマグカップ、抱き枕、ポスター、シーツ、Tシャツ、フレグランスなど」



P「随所に俺をあしらったPグッズです」



ちひろ「どれどれ。……うわぁ。無意味に良く出来てる。本当に技術の無駄遣い」



P「ははは、褒めないでください」

P「ちなみに今ちひろさんが持ってる抱き枕の絵はスタジオで写真撮影したものです」



ちひろ「しかも半裸て……。色目たっぷりとか。うわぁ」ドンビキッ



P「どうぞ抱きしめてみてください」



ちひろ「うわぁ」ギュウウ



P(抱き枕)『はは、そんなに強く抱きしめなくても、俺はどこにもいかないぜ』



ちひろ「うわぁ」ガスガス



P「ちひろさん、サンドバックじゃありませんよ」



ちひろ「果てしなくどうでもいいですけど、良く出来てますね」ガスガス



P「良いモノに手間暇は惜しまない主義ですから」

ちひろ「他のグッズもデザインはともかく良質な物ばかりじゃないですか」



P「ええ。ですからアイドル達が奪い合い必須」



P「闇に出回ると高値で取引されるプレミア商品なはずなのに」



P「おかしいな。なんで誰も欲しがらないんだろうか」



ちひろ「…………え?」



P「ですから、おかしいなと。まったくもっておかしい」



ちひろ「とりあえずプロデューサーさんは『おかしい』という単語を禁止します」



ちひろ「だんだんむかっとしてきました」



ちひろ「それで、誰も欲しがらないってどういうことです?」

P「いえね。これが事務所に届いて真っ先にアイドルたちに公開したんですよ」



P「その時取り合いになるといけないから希望する商品を一つ紙に書いて提出さして」

   

P「後日抽選会を催して当たった人にプレゼントする方式をとったんですけどね」



P「ないんですよ。一つも。申し込みが」



ちひろ「ええ」



P「初めは希望が多すぎて一つに絞れないから躊躇してるのかと思い、複数応募もOKにしたのに」



P「ないんですよ。一つも。申し込みが」



ちひろ「ええ」

P「おかしいな……。てっきり争奪戦になると……、あ、ごめんなさい。おかしいって言っちゃいました」



ちひろ「いいんですよ。……大丈夫。大丈夫ですからね。プロデューサーさんは大丈夫ですから」グスッ



P「え? なんでハンカチで目をぬぐってるんです? この一瞬でなにか悲しい出来事が?」



ちひろ「大丈夫だからね」ズビッ

ちひろ「もう! あなたたちはどうしてプロデューサーさんを邪険に扱うんですか?」



ちひろ「こんなに可哀そうな人なのに!」



渋谷凛「どうしてって……」



北条加蓮「言われても……」



神谷奈緒「なあ……」



凛「というか事務所について何? いきなり」



ちひろ「Pグッズの件です」



奈緒「ああ、あれ。ちひろさんも知ったんだ」



加蓮「忘れかけてた」



凛「忘れてた」

ちひろ「なんですかその態度は。そこそこ優秀なのに発作的に始まるプロデューサーさんの奇行ですが」



ちひろ「普段他より少しでもお世話になってるあなた達ぐらいはノッてあげてもいいじゃないですか」



加蓮「他のアイドルより古株ってだけだけどね」



奈緒「なんだっけ、欲しいグッズをアンケートしてプレゼントだっけ?」



P「大々的な抽選会を催して進呈式を行うつもりだ」



凛「発表は発送をもって代えさせてもらうって事でいいんじゃない」



ちひろ「どうして抽選に参加してあげないんですか?」



奈緒「どうしてって言われても……」



加蓮「ねえ……」



凛「いらないからだけど」



P「えっ」



奈緒「うわ、ばっさりだな。でも正直同感だよ」



P「えっ」



加蓮「うん。いらない」



P「えっ」









P「えっ」

凛「プロデューサーは思いがけない言葉を聞いた風だけど冷静に考えてよ」



凛「普通はいらないよ」



加蓮「有名でもアイドルでも特別容姿が優れてるわけでもない人のグッズとか」



奈緒「キャラっていうか、人物だし。プロデューサーっても普通のおじさんだろ」



加蓮「765プロみたいなでっかい事務所のPならともかくさ」



奈緒「渋カッコPでもない普通のおじさんのグッズとか相当マニアックだし」



凛「正直魔除けにもいらない。あっても邪魔なだけ」

ちひろ「あ、あなたたち!」



ちひろ「確かに無駄の塊、ザ・不用品、こっちがお金欲しいぐらいの物だけど」



ちひろ「とりあえず貰うだけ貰っておいて後で捨てるとか方法はいくらでもあるでしょう」



ちひろ「大人をたてるということを覚えておくのも処世術の一つよ」



凛  「そう言われても……」



奈緒 「一体どうしろってのさ……」



加蓮 「うん……」



ちひろ「見て見なさい、プロデューサーさんの落ち込んだ顔…………、あれ?」



P  「はい?」

ちひろ「あれ? あの……、プロデューサーさん?」



P「なんでしょう」



ちひろ「落ち込んでないんですか? あれだけコケにされたのに」



P「うーん……、まあ」



P「実際俺もいりませんしね」



ちひろ「はれ?」

P「普通は一般人のグッズとかいりませんよ。結婚式の引き出物でさえ扱いに困りますし」



ちひろ「え? あの、だって……、じゃあ、なんで作ったんです?」



P「そりゃ俺はプロデューサーですから決まってるでしょう。アイドルグッズの試作ですよ」



ちひろ「ほわ?」



P「制作時の注意点とか、工程のチェックとか、出来具合、価格設定とか、その他諸々」



P「考えてばかりもアレなので試しに作ってみようと思ったんですよ」



ちひろ「試しにって、そのためわざわざ撮影を?」



P「撮影にどれだけの時間と労力と費用がかかるか知っておいた方がいいでしょう?」



P「金は結構かかりましたが投資と考えれば必要な事です」



P「アイドル達に発表したのも自分たちがグッズになるって想像しやすいようにですし」



P「欲しいモノを提出させることはどんなグッズを出したいかの意識調査です」



P「そういった意味で需要を満たすつもりだったんです」



P「まあ一つも要望がなかったのは少々気になりますけど」



P「こんなグッズを押し付けられることを考えれば、妥当かな」



ちひろ「そうだったんですか……、てっきり私はトチ狂ったのかと」



P「ひどいですね。俺もそこまでナルシストじゃありませんよ」



凛「……ふーん。そんな意図があったんだ。ま、何かあると思ってたけどね」



奈緒「さすがに人気が出ると思って自分のグッズ作っちゃうわけはないよな」



加蓮「わたしは安心した。内心、おかしくなったのかと心配してたもん」



P「おいおい。そこは信じてくれよ」



皆「ドッ(失笑)ハハハッ」

ちひろ「あ、それならなんであんなに、おかしいおかしい呟いてたんですか?」



P「いや。ひょっとしたら一人ぐらい欲しがる子がいるかと思ったんですが」



P「きっちりゼロなので、自分の人望の無さがおかしいな、と」



P「まあ仕方ありません。さて。それじゃあこのグッズも片づけるとするかな」



ちひろ「もうです?」



P「ええ、実は要望の締切はついさっき終わったんですが」



P「万一にも欲しがる子がいてはと待ってたんですけど、無いようなので片します」



ちひろ「そうですか。ちょっともったいないですね」



ちひろ「写真の入った物ってやはり捨てにくいですから。要らない物でも躊躇しますよね」



P「え?」



ちひろ「ん?」



P「あの」



ちひろ「はい」



P「捨てませんよ」

P「何勝手に処分する方向に舵をきってるんですか」



P「片づけると言っても捨てるわけじゃありませんよ」



ちひろ「え……、じゃあどうするんですかそのゴ、いえ、Pグッズ」



ちひろ「まさか持って帰って自宅に飾るんですか?」



ちひろ「自分グッズに囲まれて陶然とするんですか? ひぇぇ、狂気を感じます」ガクブル



P「俺をサイコ扱いしないでください」



ちひろ「じゃあどう……あ! 私は絶対にいりませんからね! 親から注意されてるんで」



P「そんな押し付けるようなことしませんよ」



P「全部まゆにあげます」



凛「!」



奈緒「!」



加蓮「!」



ちひろ「それはあれですか? 嫌がらせ的な意味で」



P「ではありません。まゆが欲しがってるからあげるだけです」



P「俺もこんな物欲しがるのが不思議なんですけどね」



ちひろ「何でだろう。壊してストレス発散するのかな」



P「悲しい予測はやめてください。でもあながち外れではないかもしれませんね」



ちひろ「何でです?」



P「いや。こんな物が同じ種類複数あっても邪魔なだけですから」



P「壊すぐらいの用途しか思いつきませんからね」

凛「…………、プロデューサー、複数って?」



P「ん? ……ああ。最初は一種類一個で発注するつもりだったんだが」



P「どこで知ったのかまゆが欲しいって言ってきたんだ」



奈緒「…………」



P「だから同じのもう一個作ってあげたんだよ」



加蓮「…………」



P「まゆもマニアックだよな。お金を払うから、って頼みこんできて驚いたよ」



凛「…………」



P「むしろ言い値で買います、なんてジョークも言ってくるんだから」



ちひろ「あ、分かった。呪うのに使うんですよきっと!」

凛「そうなんだ……。でも、なんでコレもあげるの?」



P「ああ。もしグッズが残る事があればそれも欲しいってあらかじめ言ってきたんだ」



P「ほんと、何でこんなもん欲しいんだろうな」



ちひろ「ですねえ。一万円くれるからって条件でも躊躇しますよ」



ちひろ「……ん? いや待てよ。廃品回収の手間を差し引いて……、一万円なら……」



ちひろ「プロデューサーさん今なら一万円で引き取ってあげますよ!」



P「結構です」



ちひろ「ちぇっ」

P「さて何から手をつけるか。デカ物はそのまま運ぶとして、小物はまとめるか」



P「ダンボールっと……、割れ物もあるから結構慎重にしないと」



ちひろ「私は無言で大人しく応援してますね」



P「つまり何もしないってことですか」



ちひろ「特別に妄想する事を許可します。頭の中の私に励ましてもらってください」



P「わーい。ちひろさん(妄想)は優しいなー、顔を見る度お金をせびってこない!」



ちひろ「あ、出演料は別途頂きます。一回色々こみこみで19万8000円です」



P「わーい。ちひろさん(現実)は厳しいなー」



凛「…………」



奈緒「…………」



加蓮「…………」



凛「…………」



奈緒「…………」



加蓮「…………」



P「ちょっとちひろさん! ガムテープで俺(ポスター)の目を隠さないでください」



ちひろ「えー、だってぇ」



P「だってじゃありません」

凛「…………」



奈緒「…………」



加蓮「…………」



P「ちょ、梱包用のヒモで抱き枕に何をして、え? 亀甲縛り!」



P「すごい! 上手! 何その無駄な技術!」



ちひろ「へへへ」



凛「…………」



奈緒「…………」



加蓮「…………」



ちひろ「よいっ、しょっ、っと」バリバリ



P「あ、こら。Tシャツを勝手に開けないでください。そしておもむろに着ないで」



ちひろ「うえぇ、きついです」ミチミチ



P「ははは。太った太った」



ちひろ「服の上から着たからです! もうっ!」



凛「…………」



奈緒「…………」



加蓮「………あ、そうだった!」



凛「!?」



奈緒「!?」



加蓮「いやー、まいったなー。どうしようかなー」チラッチラッ



P「ん? どうした加蓮」



加蓮「あ、んーん。なんでもないのゴメンゴメン気にしないで…………、コマッタナ―」



P「何だよ言えよ。俺に出来る事なら手を貸すぞ」

加蓮「いやー、どうしようかなー、でもなー……、よし。この際しょうがないか」



P「うん」



加蓮「実は手帳用のボールペンを無くしちゃってさ」



加蓮「すぐ必要でちょっと、いやかなり困ってたんだよねー」



P「なんだそんな事か。俺の机を漁っていいぞ。何本か使ってないやつがあるから」



加蓮「まあそれも良いけど、それがベストだけど、ワガママ言えば新品がいいかなーって」



P「新品か。あいにく使い古しばかりだな。明日まで待ってくれれば買っておくが」



加蓮「いやいや。プロデューサーにそこまでさせられないよー。……でも困ったな―」



P「うーん。今ここにある新品のボールペン……。あるにはあるが」

加蓮「あ。そうだよPグッズにボールペンがあったじゃない!」



加蓮「ちょっと見せて。どれどれ」ガサゴソ



P「だがこれは俺の全身写真入りだぞ。こんなもん日常使いにはならないだろ」



加蓮「アハハ、本当だ。格好つけたポーズで写ってる」カチッカチッ



P「よしとけよしとけ。俺が恥ずかしい」

加蓮「でも意外と配色のセンスは悪くないし、使ってる時は手で隠れるから」



加蓮「仕方ないからコレ、使おーかな、仕方ないから」ウキウキ



加蓮「別にさ、問題ないよね? わたしがこれを貰っても?」カチッカチッ



P「加蓮が大丈夫なら俺は構わんが」



ちひろ「捨てる時は気をつけてね。勝手に戻って来る呪いのアイテムかもしれないから」

P「やめてくださいちひろさん。想像して怖くなるじゃないですか」



ちひろ「これは失礼。プロデューサーさんの怨念がこもってそうでつい」



加蓮「あはは、大丈夫。呪いとか信じてないから」カチッカチッ



加蓮「それに捨てないし」ボソリ

P「へ?」



ちひろ「ほ?」



加蓮「んーん。なんでもないよ。じゃあコレ、貰っとくね」



P「あ、ああ。ペンとしての実用性はちゃんとしてる筈だからな」



加蓮「あはは、そうだね。それ大事、うん。大事」カチッカチッ



凛「…………」



奈緒「…………」



加蓮「あ!」



凛「!」



奈緒「!」



P「どうした?」

加蓮「一応さ、もう何本か貰っておいていいかな?」



加蓮「こういうのは、何本あっても困らないし……」



P「ああ。でもデザインは同じのしかないぞ」



加蓮「いいよん。へへ、じゃあいただきます」ゴッソリ



凛「あ……」



奈緒「あ……」



ちひろ「全部取っちゃうんですか。物好きですね」



加蓮「まあ、一応だから」



ちひろ「このボールペン折るとスッキリしそうですもんね」ウンウン



P「コラっ」



ちひろ「てへっ(真顔)」



凛「…………」



奈緒「…………」

P「さて……、よし。これでペン以外の小物は全部ダンボールに入ったが」



P「どうするかな。きっちり梱包するとまた出すのが面倒だし……」



奈緒「…………」



凛「ふーん。出来は悪くないんだ」



奈緒「!」

P「うおっ、いつの間に傍にいたんだ」



凛「別に。プロデューサーが気付かなかっただけでしょ」



凛「それより、ちょっと見せてよ。その、なんだっけ。Pグッなんとか」



P「いいけど早くな」



凛「ふーん」ガサゴソ



凛「まあ……、抱き枕とかは論外だけど……、一見それっぽくないのもあるね」



P「全部が全部俺を表装してたら流石に気味悪いからな」

凛「これとか、飴色のガラス瓶でグッズって感じもしないし」



P「ああそれか。その香水は調合に苦労したんだぞ」



凛「へー、これ香水なんだ。まったく何か分からず、たまたま手に取っただけで」



凛「香水だなんてまったく分からなかったけどさ」



凛「あ、そうだ。ちょうどいいし一応どんな品物なのか詳しく聞いておこうかな」



凛「ちょっとそういうのに興味が無い訳ではないし」

P「詳しくっても、単に俺が好きな匂いになるよう配合してもらったんだよ」



凛「ふーん」プシュー



P「キツすぎない柑橘系で残り香が爽やかになるようにさ」



凛「うん」クンクン



P「女性向けじゃないから凛の好みには合わないんじゃないか?」



凛「まあ、悪くないかな」クンクン



P「そうか。実際グッズになる時はアイドルをイメージした香りを調合する事になるな」

ちひろ「私はてっきりそれ、プロデューサーさんの体臭を再現したものかと思いました」



ちひろ「あ! それだと香水じゃなく殺虫剤になっちゃいますよね。あはははは」



P「それではこれをちひろさんに飲みほしてもらいましょう」



P「そーれ、いっき、いっき、いっき」グイグイ



ちひろ「キャー、やめてやめて、ごめんなさいってば」キャッキャッ



凛「それでもいいけどね」ボソリ

P「どうだ。少しでも参考になったか?」



凛「うーん……」クンクン



P「どうした難しい顔して唸って」



凛「プロデューサー、これちょうだい」



P「へ? 欲しいのか?」



ちひろ「勇気ありますねえ。変な液体が混ざってるかもっひいええええ、冗談れす冗談」



P「ちひろさんのほっぺたは柔らかいですね」グググッ

凛「いや。まだよく分からないから持って帰って確かめようかなって」クンクン



凛「知的好奇心をみたすためで決して気に入ったから欲しいって訳じゃないから」クンクン



凛「あくまでも研究。だから、変な勘違いは止めてね」クンクン



加蓮「とかなんとか言って。本当は欲しくてたまらなかったんじゃないの?」カチッカチッ



凛「は? いや、いいからそういうの。研究用だって言ってるじゃん」



加蓮「ま、どうでもいいけどねー」カチッカチッ



凛「…………」



加蓮「…………」カチッカチッ



ちひろ「ひへへへへへふへ。ほほははあふへふへ」



P「ははは、よく伸びるなー」グググッ



奈緒「…………」



ちひろ「ほっひほほほひははほっひはっへ」グググッ



P「あ、何すふ、ははひへふはははひ」ビーンッ



ちひろ「ほっひははひひははひへふははい」ビヨンビヨン



P「ほひ! はふは! ひひほ!」グニョングニョン



ちひろ「はひほー!」

奈緒「あの……」



P「っぷは」バチンッ



ちひろ「っぷは」パンッ



ちひろ「ふぅ……。イタタ。跡に残ったら責任とらせてふんだくりますからね」



P「はいはい。…………どうした奈緒?」



奈緒「あの、その……、あ」



P「おう」

奈緒「あ…………、あた」



加蓮「まさか奈緒も何か欲しいって言ったりして」カチッカチッ



凛「そんなはずないよね。普通はこんなのいらないよ。私のは研究用だし」クンクン



加蓮「わたしも急場しのぎの仕方なくだしい」カチッカチッ



奈緒「あ……」ガックリ

P「…………」



P「奈緒。もしよかったらどれか持ってかないか?」



P「クリアファイルとかなら写真は使ってないし、何とか普段使いできそうだが」



奈緒「……い」



P「ん?」



加蓮「……」カチッカチッ



凛「……」クンクン



奈緒「い、いらないよそんな変態グッズ! いらないに決まってるだろ!」ダダタッ



P「あ……、走って行ってしまった」



ちひろ「よっぽどだったんですねえ」



加蓮「……」



凛「……」



P「変態グッズ……」



ちひろ「あい」



P「…………まさか事務所を飛び出していくほど嫌がるとは」



ちひろ「やっぱり、ば……、いえなんでもないです」



P「ちょ、言いかけて止めるのはナシですよ」



ちひろ「だってツネられたくないですもん」



P「ならどうすればいいんです? 直接攻撃しか通用しなさそうなちひろさん」



ちひろ「仕方ない。とっておきの秘密を教えて差し上げましょう」



ちひろ「実は私は紙のお金が最大の弱点です。特に諭吉さんに足腰立ちません」



P「ふふふ。良い事聞いたぜ。さっそく銀行へ行って定期を……」



加蓮「…………」



凛「…………」



P「なんて。変なノリに付きあわせないでください」



ちひろ「慰めてあげたんじゃないですか。げんきん出してください」



P「ちひろさん……。あれ?」



加蓮「…………」チラッ



凛「…………」チラッ



加蓮「…………」ウンッ



凛「………あのさプロデューサー」



P「ん?」

――数時間後 路上



P「さて仕事も終わったしとっとと帰るか」トコトコ



P「あー、陽が随分長くなったけど流石にもう暗いな」トコトコ



P「ん?」



奈緒「あ……」ハタッ



P「おお奈緒じゃないか。いきなり飛び出していって驚いたぞ」



奈緒「うん……ごめん」



P「まあいいさ。これから帰るなら送っていこうか?」



奈緒「い、いいよ。そんな。まだ時間は早いし」

P「そうか。それで、どうしたんだこんな道端に突っ立って」



奈緒「べ、別に特に何も」



P「そうか」



奈緒「…………」



P「…………」



奈緒「………あ」



奈緒「あのさ」



P「ん?」



奈緒「どうしたんだ? その。P、グッズ……」



P「ああ。社用車にまとめて明日まゆに届けてやるつもりだが」



奈緒「あ、そうなんだ。うん。まあ、なんとなく聞いた……」シュン



奈緒「……じゃ。じゃあ」



P「そうだ奈緒」



奈緒「え?」



P「お前、コレいらないか?」スッ

奈緒「コレって、なに?」



P「ハハハッ。俺を全面に印刷したポスターだ」



奈緒「え!」



P「実は全部片したと思ってたんだが、コレだけ忘れててな」



P「車はちひろさんが峠を攻めるってんでしまえなくてさ」



P「事務所に置いておくのもなんだし」



P「持ってきたんだが結構かさばってな。困ってたんだ」



P「押し付けるようで悪いんだが、奈緒が貰ってくれると嬉しい」



奈緒「そ、そ、そうなのか。ったく仕方ないな」



奈緒「何時も世話になってることだし、それで役立つってなら」



奈緒「貰ってもいいかな、って。思う。よ」



P「そうか。助かる」



奈緒「あ、でも! そういうんじゃないから!」カアァァ



P「分かってるよ。仕方なく貰ってくれ」ホレッ



奈緒「お、おう」モライッ

奈緒「じゃ、じゃ、じゃあ。貰ってくけど。ホントそういうんじゃないから」カアァァ



奈緒「じゃ、じゃあ。さいな。さよなら!」ダダダッ



P「気をつけてな!」



奈緒「うーん!」ダダダタッ



P「……おうおう流石若いな。もうあんな遠くまで走って行ってしまった」



P「……しかし、凛と加蓮の言った通りだったな」



P「『奈緒はこれが趣味なはず。渡してあげて』って」



P「何であんな物が欲しいかは不思議だが。まあ奈緒が満足してるならいいか」



P「ん? なんだ奈緒が立ち止まった」



奈緒「違うんだからなー!」



P「はいはい」バイバイ



P「…………行ったか。顔が赤くなって息上がってたし案外体力ないんだな」



P「さて俺も本格的に帰るか」ビービービービー



P「おっと携帯が……。ん? グッズを作ってもらった業者からか」ピッ



P「はい、もしもし」



業者『あ、もしもし。お世話になってます』



P「はいこんばんは。どうかされましたか?」



業者『ええ。Pさんが制作したグッズについてお客様から問い合わせがありまして』



P「問い合わせ? お客様?」



業者『はい。結構な件数が溜まってまして取り急ぎご連絡した次第なんです』

P「…………は?」



P「ちょ、ちょっと待ってください。俺は別に販売するために作った訳じゃないですよ」



P「なのにお客様とか、何かの間違いじゃないですか?」



業者『え? かなりの数の注文が入って生産が追い付かないぐらいなんですが』



P「えっと、Pグッズですよね?」



業者『はい。Pグッズです』

P「そんなもん誰が好き好んで注文するんですか?」



業者『えっと、お客様の個人情報は直接言えないんですけど』



業者『かなり若い声の女の子から落ち着いた感じの女性までかなり幅広く注文頂いてます』



業者『中にはダース単位で注文してくる方もいらっしゃいますよ』



P「え?」

P「ダース単位って…………」



業者『はい』



P「…………何のために」



業者『さあ』



P「……」



業者『……』



業者『それで、ご注文いただいたほとんどの方から問い合わせがございます』



P「はい」



業者『Pグッズの第二弾はいつになった発売するんだ、と言った内容ばかりでして』



P「え」

業者『こちらとしてもなるべく早く需要を満たしたいと思っておりますので』



業者『もし構想があれば是非とも当店で制作を、とお電話差し上げた訳です』



P「は、はあ。とりあえず予定はありませんが。その時はまたお世話になります」



業者『ぜひご一考ください。それでは失礼いたします』



P「はい」ガチャリ



P「…………」



P「…………」



P「…………おかしいな」



おわり



14:30│モバマス 
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