2015年08月11日

大西由里子「ひな×ひな?」荒木比奈「その表記はやめるッス」

※モバマス

※主要登場キャラ 荒木比奈、大西由里子、喜多日菜子



※上記3名を含むアイドル8名 及びアシスタント1名に大小の風評被害

※百合成分は皆無









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●01 【アウト】







「じゃーん♪ ユリユリの入室だじぇ〜! ……って、あれ。比奈センセしかいないんだね」

「……ああ、ユリちゃんじゃないスか。お疲れッス」



「おーおー、比奈センセなんかお悩みかなー? アンニュイな顔しちゃって。

 この間の本が校了したから燃え尽きちゃったの?」

「それはそれでアレなんスけど、実は……喜多ちゃんのコトで」







「――喜多ちゃん? ああ、日菜子ちゃんのことね!

 みんな日菜子ちゃんって呼ぶから、とっさに思い浮かばなかったわー」

「私って、名前が“比奈”じゃないスか。だから、日菜子ちゃんって呼ぶと自分の名前呼んでるみたいで。

 喜多ちゃんならともかく……私だと、一人称が自分の名前って許されないかなーなんて」







「へぇ? ちなみにユリユリは」

「文句なしにアウトっスね」

「ちょっ、オイ!」







●02 【ぴゅあぴゅあ】



「――で、日菜子ちゃんがどうかしたんだっけ。あの子有望でいい子っしょ。いろんな意味で。

 というか、比奈センセって日菜子ちゃんと結構話してるイメージあるんだけど」

「ニガテとか、そういうわけじゃないんスよ。むしろいっぱい話したいっス。

 私は、喜多ちゃんと話してると……なんか、こう、郷愁を感じるんスよね」







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『アイドルと言ったら……つまりシンデレラですよねぇ……シンデレラってことはお姫様ですよねぇ…

 つまり日菜子の前に王子様が現れちゃうわけですよぉ……むふ……むふふふ……』

『プロデューサーさんと過ごしていると、その……色々妄想しちゃったり……

 式は海の見える教会がいいなぁとか……むふふふ♪』

『日菜子姫のお披露目パレードですよぉ〜!

 アイドルとして皆から人気が出ちゃって、プロデューサーとしては嬉しい悲鳴ですかぁ?

 でも日菜子の白馬の王子様はただひとりだから、大丈夫ですよぉ〜♪』



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「……ってな感じで、古き良き時代の少女っていうか……夏休みの太陽のごとく、懐かしくて眩しいんス」

「あーわかるわかる。もしかして、昔の比奈センセもあんな感じだったとか」

「いやー私は……喜多ちゃんの年頃には、もうぴゅあぴゅあじゃなくなっちゃってて、へへ……」







(あれ? 確か日菜子ちゃんって、けっこうアレな妄想もしてたような……)







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『観覧車ですよぉ……密室に二人っきりですよぉ! これは何が起こってもおかしくないですよねぇ〜!

 何がって……ナニがでしょうねぇ……むふふ……プロデューサーさんは何を妄想したんでしょうねぇ〜?』

『あ、安心してくださいね。日菜子、今日は丸一日な〜んにも予定ないんですよ。

 ということは今夜は…むふ、むふふぅ〜♪』

『……日菜子、本気になってきました。これ以上は妄想じゃ済まないかも。だ、だめです、アァッ……オホン』



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(……比奈センセが言うほど、日菜子ちゃんってぴゅあぴゅあ……かぁ?)











●03 【比奈は激怒した】







「――で、比奈センセはなんでそんな溜息ついちゃったりしてるんだっけ。

 日菜子ちゃんを見てると、眩しさのあまり目が潰れちゃうとか?

 そんなんじゃ、うちの事務所で目を開けてられないよ」



「いや私としては、喜多ちゃんにはずっと眩しくキラキラしてて欲しいんス。

 なんだけど、最近ちょっと喜多ちゃんの様子がおかしくなることが多くて……」

「様子がおかしい? 例えばどんな感じよ」

「それは――」







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『あっ、喜多ちゃん。お疲れっス――いやなんか、ホントにお疲れのようで。大丈夫っスか?』

『え? 日菜子、今日も調子は上々ですよっ。主に妄想力が……♪』



『じゃあ、その手に持ってるドリンク剤のケースは何スか? そんなに本数持ってて。

 プロデューサーを見てりゃわかるっスが、ドリンク剤は所詮付け焼き刃っスよ。

 無闇に頼ってると、イベントの後とかでバーンアウトするのがクセになってしまって――』

『あ、これ日菜子が飲むものじゃないです。プロデューサーさんに、と思って……』



『おお……差し入れとか、喜多ちゃんってば気が利くんスね。

 もし喜多ちゃんが“日菜子のために、いつもお疲れ様です♪”とか言いながら渡したら、

 プロデューサーさんもドリンクの効果が倍ぐらいになった勢いで頑張れるハズっス』

『そうですねぇ♪ だから値段少しぐらい上乗せしてても、損はさせてないですよねー』







『……え? 売ってるんスか? 喜多ちゃんが、プロデューサーさんに?』

『はぁい♪ ちひろさんが売り残した分も、日菜子が持ってくと買ってくれるんですよ。

 プロデューサーさんはいつも以上に元気になって、日菜子はお小遣い稼ぎ、一石二鳥ですね♪』



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「おのれ千川ッ! あんないい子に搾取の片棒を担がせるか! 鬼! 悪魔!! ちひろぉお!!!

 必ずあの邪知暴虐のアシスタントを除いてくれるわ!」

「ちょ、ちょっと落ち着くんだよ比奈センセ」



「これが落ち着いていられるっスか!? 確かに世の中キレイ事ばかりで回ってるわけじゃないっス、

 けれど、あの純粋な喜多ちゃんにあんなえげつない真似させるなんて……っ!」

「日菜子ちゃんが売り子やるほうがきっとさばけるっぽいから、あざとさも増してる気がするわー」







●04 【二度○す】







「まぁそれはいいんスよ。今は喜多ちゃんもそんな搾取はやってないっス」

「じゃあ一件落着だと思うんだけど」

「それが、そうもいかなくて……今度は……」







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『あっ、喜多ちゃん。お疲れっス――いやなんか、具合悪そうに見えるんスが、大丈夫っスか?』

『あ、荒木先輩……日菜子、最近妄想ぱわーが奮わなくて……』

『何か、悩みでもあるっスか……? 私で良ければ、話してみるとイイっス』



『……日菜子の妄想する王子様って、つまるところ日菜子の頭のなかにしか居なくて……

 日菜子も、きっとずっとシンデレラ――お姫様になれないままなんじゃないかと思うんです……』

『えっ』







『荒木先輩……大人は……大人は、みんな汚いんです……ニコニコとした面をぶら下げて、

 結局やることは金の奪い合い、搾取の応酬なんです……ちひろさんはプロデューサーさんから毟り取る。

 そのプロデューサーさんも日菜子たちアイドル――偶像――を隠れ蓑に、ファンから吸い上げて……』

『ちょ、それってアイドルとしていろいろマズイ発言なんじゃ』

『日菜子が憧れてた王子様は、舞踏会ではキラキラした笑顔をしてても、それが終われば……。

 一度そう考えちゃうと、日菜子もいずれ奪うか奪われるかの渦に飲み込まれる、とか思ってしまって……』



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「遅れてきた中二病か! ちひろぉおお! お前は喜多ちゃんを二度○したんだッ!」

「おっおおお落ち着くんだよ比奈センセ、この流れでその発言は洒落にならないから!」



「中二病だって、エクステつけるとか小難しい哲学書読むとか背伸びした音楽聞くとか、

 そういうのなら可愛いじゃないっスか……なのに、そっちにイカれたら……」



「ユリユリは、中二病とか麻疹だと思えば気にしなくてもいいと思うんだけどなぁ。

 なーに、かえって免疫力がつく的な」

「これ放置してたら、免疫がアナフィラキシーショック起こすレベルになるっスよ!」



●05 【アウト その2】







「……で、その後も……ぴゅあぴゅあだった喜多ちゃんが、

 いろんな色に染まってしまって、もうドリームペイントどころの話じゃなくなってるんス」

「ああ、そういえばいろいろあったねぇ」







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『むふふ……日菜子の妄想も世界レベルじゃないといけませんよね……♪』

『……社会に絶望するよりはマシっスかね……ここから純粋さを取り戻してくれれば』

『むふふ♪ もうお姫様のドレスもただの飾り、この日菜子ワールドで世界を埋め尽くしてあげますっ!』

『ちょっ、ナニしてるんスか喜多ちゃぁあああんっ!』







『王子様がガラスの靴を持ってきたら、日菜子はソレを履いてこう言うんです……“その靴をお舐め、豚”って。

 王子様を一瞬で雄豚に叩き落とすとか、ゾクゾクしませんか……♪』

『それはお姫様じゃなくて女王様っス! それもいかがわしい方の!』







『王子様よりも……お姫様のふかふかなお山の方がいいかも……』

『清良サン早く来てくれえええ!!』



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「……もう、私が目を細めて見ていた頃の喜多ちゃんは、戻ってこないんスかねぇ……」

「ウチの事務所、キャラ濃い人には事欠かないからなぁ。ユリユリが普通に見えてくるぐらいだし」

「いやそれはないっス」

「ちょっ、オイまたか!」







●06 【希望的観測】







「ユリユリとしてはねぇ、比奈センセが言うぴゅあぴゅあのママ、ってのも良くないと思うんだけど」

「喜多ちゃんなら何だかんだで許されるっス。私はそう信じてるっス」

「えーでも、あのまま年食ったらさぁ」

「いや、きっと喜多ちゃんなら……っ!」







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『プロデューサー。この衣装、胸元がキャベツに似てません?』

『王子様、私のことを助け出してください。なんて♪』

『今日の私はいにしえの巫女か、戦国の世の姫か……秘めたる想いで人を惑わし舞い踊ります……』

『プロデューサー、空ってどうして青いのですかい? ……ふふ♪』



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「――って感じでまとまってくれると思うんスよ」

「ちょっと希望的観測が過ぎると思うな。ユリユリとしては……」







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『歌って踊れる声優アイドル目指して、ナナはウサミン星からやってきたんですよぉっ! キャハっ!』

『ナナ、電波がビビッと来ました!』

『ナナは永遠の17歳なので! 誕生日でも歳は17歳です!』



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「――というコースだったり……あるいは」

「ゆっゆゆユリちゃん、もういいからソレ以上は」

「あるいは、たぶん……」







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『はぁ〜い♪ アナタのはぁとをシュガシュガスウィート☆ さとうしんことしゅがーはぁとだよぉ☆』

『はぁとはざんねんな子じゃないもん! もう、ぷーんぷん!』

『プロデューサーもハートカモン☆ え、投げたくないとか言わないよねぇ☆』



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「――って感じに向かうと思うんだけど」

「…………」



「……ひ、比奈センセ? ユリユリはこの例を挙げたの、他意はないんだよ……ないんだヨ?」

「……喜多ちゃん……ぴゅあぴゅあの喜多ちゃんがぁ……」

「マジ凹みの沈黙だったんかよ!?」





●07 【きっと、たぶん、おそらく】







「だいたいねぇ、比奈センセは日菜子ちゃんを理想化し過ぎだよ」

「……いいじゃないスか。喜多ちゃんはアイドルだから。ファンの人たちと一緒っス」



「比奈センセが日菜子ちゃんのファンだってのはわかったけど、センセはただのファンじゃないでしょ。

 同じアイドルでしょ。同僚でしょ。ライバルでしょ。そうだよね?」

「……まぁ、確かにそうっスね……」

「あー、ユリユリ一つ大事なのを忘れてた……」







「比奈センセ、日菜子ちゃんの友達でしょ!」

「……あっ」

「友達ならね、日菜子ちゃんに比奈センセのぴゅあぴゅあノスタルジィを押し付けるの、イクナイ!」







「ついでに言うとさ、比奈センセも日菜子ちゃんにそこそこ影響与えてるんだよ?」

「うわっ、喜多ちゃんが私みたいなのに染まっちゃったら……」



「日菜子ちゃん、最近マンガ描き始めたんだよ。知ってた?

 これゼッタイ比奈センセの影響でしょ」

「……そうっスかね」

「もー比奈センセったら、目に鱗張り付いてるんじゃないのー?」



「日菜子ちゃんはしっかりしてるよ。その妄想ぱわーは清濁を併せ呑む器だよ。

 ユリユリたちからも、取るべきところは取って、捨てるべきところは捨ててくれるハズ!」

「……そうっスよね。前に喜多ちゃんの絵を見た時、尋常じゃない才能があったっスから、

 そんな喜多ちゃんが私の影響でマンガを始めてくれるなら、光栄なぐらいっス!」







「……ん? ちょっと待つっス。“ユリユリたちからも”……ってコトは」







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『飛び散る汗、絡みあう筋肉…妄想が捗るわー!

 アイドルばっかりだけど、あたしの脳内変換にかかればそんなこと問題なし! ほら!』

『ユリユリだって、セクシーなアイドルになりたいじぇ!

 男の子たちの視点を釘づけ。みんながまわりに寄ってくる。

 そして……集まった男子たちがなかよくなるのを見て楽しむ。そんなアイドルに……なんかヘン?』

『プロデューサー! 言いたいことはいろいろあるかもだけど、まずはソレくわえてみて、クルものがあるから!』



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「……比奈センセ? ソノ目線ナニかな? カナ?」

「だ、大丈夫、うん。きっと、たぶん、おそらく、問題ないっス」

「震え声じゃねえか♪」







(おしまい)







16:30│モバマス 
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