2015年09月01日

小梅「学校であった怖い話…」

※キャストに関してはただの嫁ステマなので元ネタとの繋がりはないんよ



 ホラーですが、元ネタのゲームBGMを脳内再生できるならちょっと怖く感じられるかも…レベルです







 ─某月某日 聖靴学園ロケ地



幸子「ええっと…ここですかね…失礼しまーす…ちひろさんに言われて…」ガラガラ





小梅「い、いらっしゃい…」



輝子「フヒ…」



美玲「ん? ようやく主役がきたのか?」



乃々「代わりにもりくぼが帰っていいですか………だめ…そうですか…」



梨沙「ちょっと、普通は呼び出した方が先にスタンバッてるモンじゃない?」



菜々「まぁまぁ、梨沙ちゃん…」





幸子「何ですかこのメンツ…」



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1440855871



──────────



幸子「皆さんこんにちわ。ボク、ちひろさんに言われてこの…教室? に来たんですけど…」



小梅「えっと、今日は…『学校であった怖い話』の撮影…」



幸子「帰ります」



梨沙「今更何言ってんのよ…」



幸子「だってこんなの聞いてないですよ!? ボク、怖い話なんて知りませんし…」



小梅「さ、さっちゃんは…進行役…の人だから…聞いて、アクションする、ひと…」



幸子「あっ、この企画考えたのプロデューサーさんでしょう! なんでカワイイボクがリアクション芸人の扱いなんですか!?」



美玲「そうなのか? ウチはなんか怖い話をしろってちひろに言われて来たんだけどな」



乃々「私もそうですけど…うぅ…ガチ勢がいるなんて聞いてないですけど…」



小梅「?」

──────────



幸子「進行役と言われてもですね…正直何をしたらいいのか…」



小梅「せ、説明書…台本…? そこに、ある…よ…」



 『学校であった怖い話 舞台設定』



 『あなた(幸子)はとある小〜高校までエスカレーター式の学校にある新聞部の一員です』



幸子「まぁ…エスカレーター式の学校には通ってますけど…」



 『ある日、地域や学校で異なる“七不思議”に目を付けたあなたはアイドル仲間から異なる学校に通う人を集め、その学校であった怖い話を記事にすることにしました』



幸子「やめましょうよ…」



 『あなたは集まってくれた人から怖い話を聞く順番を指定していって下さい』



 『※怖い話は各アイドルそれぞれが知っている話なので、台本等はありません』



幸子「七人…? 一、二…六人しか居ませんけど…ボクは入ってないんですよね?」



輝子「わ、私はここにいる、居るよ…フヒヒ…」



幸子「数えてますよ、忘れるワケないじゃないですか…もしかしてウメちゃんの…」



菜々「まぁ、後で来るんじゃないですか? …あ、カメラ廻るみたいですね」



幸子「まだ揃ってないですけど、いいんでしょうか…」



小梅「あ、後の一人…誰が来るんだろう、ね…ふふ………」

──────────



 ─十分後



美玲「ん〜〜〜、待ってるのつまんないぞッ! もう始めないか?」



菜々「そうですね。ようは幸子ちゃんが怖い話を七つ聞くっていう企画ですし」



乃々「あ、もりくぼもそれでいいですけど…」



 カンペ『始めちゃってください』



幸子「…いいんでしょうか?」





幸子「(誰から話を聞きましょうか………)」



幸子「(まずウメちゃんは最後、絶対です。最初に怖いのを聞いてしまうと後がどんな話でも怖くなりそうですし)」



幸子「(美玲さん梨沙さんは怖い話を“仕入れ”てそうですね…)」



幸子「(乃々さんしょーちゃん菜々さん…だと明るく話してくれそうな菜々さん…)」

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幸子「それじゃあ…菜々さんお願いします…」



菜々「はーい!まずは自己紹介♪ 安部菜々です!キャハッ♪」



幸子「………」



菜々「こ、怖い話しにきたんですもんね…アハハ…。 それで、実はですね…ナナ…」



幸子「(怖い話来ませんように来ませんように)」



菜々「じゅうななさいなんです!」



幸子「……………」



菜々「おわりでーすっ♪」



幸子「………それ“怖い話”にカテゴライズされますけどイイんですか?」



菜々「えっ?」



幸子「TVのテロップとかに『恐怖!安部菜々17歳だった!』とか出るんじゃ…」



菜々「あっ! 駄目です! やっぱり駄目! ノゥ!」

──────────



菜々「しょうがないですね…じゃあ、とっておきの話をしましょうか」



菜々「学校に『二宮金次郎』の像がありますよね?」



輝子「(な…無かったぞ…)」←15歳



小梅「(無くなってたなぁ…)」←13歳



梨沙「(聞いたこと無いんだけど)」←12歳



美玲「(知らないぞッ!)」←14歳



乃々「(そんな像知らないんですけど…)」←14歳



菜々「あっ、な、なんですかこの“自爆した”感…」

──────────



菜々「ちょっと反応が予想外でしたが…実はあの像、夜な夜な…」



幸子「(歩き回る七不思議をどこかで聞いたことがありますね…)」



菜々「ジェット飛行しながら薪を武器に悪の秘密結社と戦っているんですよ!キャハッ♪」



幸子「どうしてそうなっ…あ、いえ…そうなった理由に心当たりが…」



─────



??「クシュッ …む、風邪でも引いてしまったか…?」



???「寒くなったらみんなで鍋を囲むといいそうでございます」



??「ライラが食べたいだけだろう…」



─────



幸子「………で、それで終わりですか?」



菜々「お気に召しませんか?」



幸子「そんなギャグみたいな話で終わるならイイですけど…」



菜々「うーん、じゃあこの話をしましょう…ある学校に、モテモテの女学生がいたそうです」



菜々「いつも下駄箱にはラブレタが一杯入っていたのですが、ある朝登校するといつも下駄箱をあけると落ちてくるラブレターがない…」



菜々「代わりに人魂が………ばーーーーーーん! ………終わりです」



幸子「……………あの、気を使ってくれてるんでしょうか…?」

──────────



菜々「うぅ…ナナもこの冷たい視線に耐えられそうにないです…あのゲームは凄いですね…」



菜々「これ、同じの六つやる予定だったんですけど、もう普通の怖い話をしますね…」



幸子「(なにかのお約束だったんでしょうか…?)」



菜々「アルコールランプの怪って知ってる人いますか?」



小梅「あ、き、聞いた事、あるよ…プロデューサーさんが…教えてくれた…」 ※劇場第296話参照



菜々「ありゃ〜………どんな話でした?」



小梅「理科室の13番アルコールランプを付けると、寿命が…縮む…って…」



菜々「………あれ? それだけですか?」



小梅「ち、違うの…?」



菜々「小梅ちゃん、肝の部分を知らないみたいですね♪」



菜々「幸子ちゃんは、なんでアルコールランプを点けたら寿命が縮むと思います?」



幸子「13っていう数字は縁起が悪いから…とかじゃないんですか…?」



菜々「そんな単純な話じゃないんですよ〜ふふっ、ナナが教えちゃいます♪」

──────────



 『安部菜々 理科室の13番アルコールランプ』



菜々「まず最初に…寿命が縮むのって、確かめられませんよね?」



幸子「むー、そう言えばそうですね」



菜々「しかも火を点けたら、ただ寿命が縮むだけ…そんなの誰も試そうとしないんじゃないでしょうか?」



幸子「そうですね、ハイリスクで…リターンないです」



菜々「そんな確かめたりも出来ない怪談が何故広まったのか…幸子ちゃん、解りますか?」



幸子「つまり…こういうことですか? “何かが起こってしまったから、遊び半分でも確かめられない、誰もやろうとしない話にして誰かが流した”」



菜々「ふっふっふ…そう、これは真実を語ることすら憚れる恐怖のお話…!」

──────────



菜々「事の始まりは…ある学校で先生が業者にアルコールランプを注文した所から…」



菜々「アルコールランプは燃料こそ買う必要がありますけど、本体はそんなに数が要らないんですよね〜、たまに生徒が割っちゃったりして補充される位で」



菜々「その先生も1ダース…12個ですね、注文したんです」



菜々「それで注文したアルコールランプが届いたんですが、どうもおかしい…13個入ってる…?となった訳で」



菜々「勿論、数が多いのは変ですから、業者の人に確認してみた所…」



 『いやー、12個しか出してないはずですけど…なんだったらそのまま使っちゃって下さい』



菜々「こう言われたら先生も『あぁ、そうですか』としか言えなくて、学校にはアルコールランプが13個あるようになったんです」

──────────



菜々「ところで皆さん、学校の理科室には机って何個ありました? あの黒い机ですよ」



輝子「じゅ、10個くらいじゃ、ない…?」



幸子「ボクの学校では3脚×4列で12脚ですかね…?」



菜々「幸子ちゃん、良かったですね♪ このお話の学校とピッタシカンカンですよ!」



幸子「やめてくださいよ…ただでさえ近寄り難い理科室が更に怖くなるじゃないですか…」(涙目)



菜々「そう…その学校も12個と先生の机で合計13個ですね…先生も丁度いいやって気持ちがあったんでしょうか?」



菜々「でも、机12個を全部使う事って…無いですよね…?」



輝子「そうだね…フヒ…私のクラスは…私入れて31人…素数…」



幸子「そ、それだと4×8のグループになるんじゃないですかね!」

──────────



菜々「理科の実験は、先生が準備しておく事になってたから…使っても10番目のアルコールランプまでだったんです」



菜々「ところがある日、4番のアルコールランプが燃料切れをしちゃって…仕方が無く準備室の奥から出してきたのが、13と書かれた…一つだけ使われた跡の無いランプ…」



菜々「縁起悪いなー、なーんて思いながらも、そのランプを使う事にしたんです」



菜々「授業が始まり、生徒達がそのランプに火を点けると………!」





菜々「………火が点きました!」



幸子「…もういいですか?」



菜々「ご、ごめんなさい! …いや、特に目に見えて何か変な事が起こった訳じゃないんですよー」



小梅「ば、爆発したり…しないの…」



菜々「しないですよぅ…」

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菜々「授業は粛々と進んで、終了のチャイムが鳴った後…皆が片づけを始めてからですね、他の班が異常に気付いたのは」



菜々「13番のアルコールランプを使った班の生徒達が、片付けもせずにジーっとアルコールランプの火を見つめてるんです」



幸子「え、な…なんでですか…」



菜々「そこで先生が『さっさと片付けろ』とアルコールランプの蓋を閉じると、生徒達は我に返ったように片づけを始めました」



菜々「周りの生徒達が『何やってたんだよ?』と聞いても、その班の生徒達は『いや、なんかボーっとしちゃって』と言うだけでその出来事は終わるはずでした」



菜々「その日の放課後の事です…部活の時間帯も終わり、残っている生徒も次々と下校して、先生が見回りを始めました」



菜々「すると、理科室の鍵が開いているんです」

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菜々「理科室や視聴覚教室なんかの特別教室はその学年のクラスに掃除が割り振られていたので、鍵の閉め忘れが稀にあったんですけど…今回ばかりはそんなケアレスミスではありませんでした」



菜々「ドアを開けると…そこには机を囲む四人の生徒」



菜々「四人とも虚ろな視線でアルコールランプの火を“じいっ”と見つめてました」



梨沙「うへぇー…なんかキモいわね…」



菜々「異様な雰囲気を感じ取った先生は、なるべく生徒を刺激しないように優しく語りかけました」



 『お前達…こんな時間に何をやってるんだ…?』



菜々「すると生徒の一人が、アルコールランプの火から目を逸らさず…」



 『先生…綺麗でしょ…ほら………この………緑色の火………』



菜々「勿論先生の目には普通の火にしか見えなかったんですが…」

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 『今日はもう遅いから、帰りなさい』



菜々「先生はなるべく、なるべく刺激しないように生徒達を諭してアルコールランプの火を消し、生徒達を家に帰しました」



菜々「意外にも生徒達は素直に従い…抜け殻になったようなフラフラとした足取りで理科室から出て行きました…」



菜々「先生は彼らを見送ると、彼らの親に電話をし…アルコールランプについては省いたんですけど、とにかくフラフラと体調がおかしいようだから…と告げ、病院で診察を受けるように促しました」



菜々「それから次の日…彼らは学校を休み…その次の日も、その次の日も学校に来る事はありませんでした」



 『あいつらのあの様子は一体何だったんだ…?』



菜々「明らかな異常が見て取れましたからね、先生もそんな事を考え始めました」



 『アルコールランプの火を緑だって言うなんて…』



菜々「気になった先生は、アルコールランプを調べてみる事にしたんです」

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 『………無い?』



菜々「理科準備室から13番のアルコールランプは忽然と姿を消してました」



 『…まさか!』



菜々「どんな方法を使ったにせよ、放課後に鍵を開けてまでこのランプに執着した…あの生徒達が浮かび、急いで彼らが入院している病院へ向かったんです」





菜々「病院についた先生は面会時間を過ぎているからと制止する受付の声も聞かず、階段を駆け上り…彼らが入院している部屋に走りました」



菜々「扉を開けると………そこには思った通り、アルコールランプを囲む生徒達が居ました」

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 『お、おい…お前ら…お前ら!一体何をやってるんだ!』



菜々「すると生徒達はゆっくりと先生の方に振り返りました」



 『う、うわぁっ!』



菜々「こちらを振り向いた生徒を見て、先生は驚きました」



菜々「………その8つの瞳全てが、緑色に濁っていたんです」



幸子「」ビクッ



 『ほら、先生…綺麗だろ…緑の…火…』



菜々「ぼそぼそと呟くように生徒の一人がそんな事を言い、アルコールランプに火を付けました」

──────────



菜々「途端にアルコールランプから凄まじい火が上がり、一瞬で部屋全体を包み込んでしまったんです」



菜々「先生は火が上がった瞬間に後ろに飛び退いたので少しの火傷で済んだのですが、部屋の奥に居た生徒達はどうやら助かりそうにもありませんでした…」



菜々「先生の叫びにも似た助けを呼ぶ声…そして…」



 『あぁ、綺麗…』



 『綺麗だなあ…』



菜々「部屋の中から火に飲み込まれた生徒達の声…」



菜々「先生も、ここにきて“あのアルコールランプは呪われていた”事を悟ります」



菜々「何故なら…」





菜々「先生の目にも見えたからです、生徒を包むとても綺麗な緑の炎が…」

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菜々「その後ですか? 病院の火はなんとか消し止められたんですが…生徒達は皆死んでしまったそうです」



菜々「先生も精神をおかしくしてしまったみたいで…」





菜々「抉ってしまったんですよ、自分の目玉を…」





菜々「そうそう、例のアルコールランプなんですけど………」



菜々「焼けた病室からは見つからなかったみたいです。どこに行っちゃったんでしょうかね?」



菜々「ふふふ…もしかすると………みんなの学校に紛れ込んでいるかもしれませんよ………!」





菜々「…どうですか? 中々怖いですよねっ!」

──────────



幸子「ふ、フーーー……べ、べつに怖くはないですねっ!フフーン!」



美玲「…ビビってるの見え見えだぞッ!?」



幸子「ああああアルコールランプ廃止されててよかったぁあー…(残念ながらアルコールランプはもうボクの学校にないので全然平気ですね!フフーン!)」



乃々「本音と建前が逆ですけど…もりくぼの学校にもアルコールランプはもう無いので…しょーりぃー…」 グッ



小梅「お、面白かったー…」ポフポフ(拍手)



輝子「わ、私も部屋にキノコ置いて…じぃっと…見てたりするけど…駄目か…」



梨沙「別の意味で怖いわ」



輝子「そ、そうか……フヒ…」



小梅「涼さんにも………教えてあげよう…ふふふ………」

──────────



幸子「も、もう終わりですよね! じゃあお開…」



菜々「次はどなたが話しますか?」



幸子「続けるんですかぁ…」(絶望顔)



輝子「さっちゃん…し、仕事だからな…しょうがない…」



幸子「んぐぎぎ………」





幸子「(誰から話を聞きましょうか………)」



幸子「(まだ心臓がちょっとアレなので…次は勝手知ったるしょーちゃんに頼みましょうか…)」



幸子「じゃ、じゃあ次、しょーちゃんお願いできますか?」

──────────



輝子「ぉ、ぉぉ…わ、私、か…いいよ………き、キノコノコー…星輝子…15歳…」



幸子「しょーちゃん大丈夫ですか? トーク苦手なんじゃ…」



輝子「さっちゃんに…話を聞かせるだけ、だからな…だ、大丈夫…フヒ…」



幸子「(カメラ意識しない感じで話すんですかね…?)」



輝子「あ、あの…これ、この話…別に、見た話でも…いいんだよね…?」



幸子「あ、これ絶対怖い奴じゃないですかもう嫌ですよ(問題ないと思いますよ!)」



小梅「さ、さっちゃん…さっきから本音が…漏れてるよ…?」



輝子「私は、当事者じゃないけど…事件を目で見たからな…」



──────────



輝子「み、皆…トイレ、は…使うよね…?」



幸子「それはアイドルに対するネタ振りですか?」



菜々「アイドルはトイレなんて行きませーん!」



輝子「そ、そっか…一人になりたい時とか…いいよ…」



幸子「使うって…そういう使い方ですか…」



輝子「私は…よく篭るぞ…フヒ…ぼっちだからな…」



幸子「そういう心に来るのはやめましょう」



輝子「フヒ…ごめん………」

──────────



 『星輝子 学校のトイレ』



輝子「学校のトイレって、怖い話がつきものだよね…」



輝子「ウチの学校は、1フロアに二つと、教員用のトイレがあって…ウワサもたくさん、あったんだ…」



輝子「放課後…二階の東側トイレを使うと、水の代わりに…血が流れる…とかな…フヒヒ…」



幸子「ヒッ」



輝子「三階の西側トイレからは手が、出てくる…とか…」



輝子「三階東側は、怖いぞ…女子トイレの窓に黒い影が張り付いてて…」



幸子「うううぅ…」



輝子「放課後に捕まって警察に連れていかれてたからな…」



幸子「いろんな意味で怖すぎますよ!? 三階なんですよね!?」



梨沙「窓から覗いても意味ない辺り報われないわね…」

──────────



輝子「とまぁ、どのトイレにも、なにがしか…怖い話があったんだけど…」



輝子「一階の西側だけには…怖い話が、無かったんだ…つい、最近まで…」



幸子「最近ということは…」



輝子「事の発端は、ちょっとしたイタズラから…」





輝子「トイレって、壁に音が出るやつ、付いてるよね…」



菜々「(今時の学校って付いてるんですか…)」



輝子「アレを、ちょっといじって、水が流れる音じゃなくて、女性の悲鳴にするってイタズラ…」



幸子「た、タチが悪いですよ!」



美玲「アレってそんな簡単に弄れるのか…?」



梨沙「この前麗奈が爆発音にする細工してたから出来るんじゃない? 忘れて自分でかかってたけど」

──────────



輝子「フヒ…唯一…怪奇現象とかの噂が無い、トイレだから…怖がりの子にも、この階のトイレは人気だったし…」



輝子「まぁ、効果は、バツグンだな…フヒヒ…」



輝子「お昼にイタズラが10人以上に炸裂して、仕掛け人の…そうだね、み、御手洗さんにしよう、トイレだからな…」



輝子「御手洗さんは、満足して…放課後に仕掛けを回収することに、したんだ…」



菜々「午後の授業中に悲鳴上がったら大惨事になるんじゃ…」



輝子「フヒヒ…実際、そうなったんだろうね…放課後、すぐに御手洗さんが先生に呼び出されて…説教三時間コース…」



梨沙「いや、解除させてから説教しなさいよ…」

──────────



輝子「そ、それで…御手洗さんは説教が終わってから…トイレのアレを元に戻しに行ったんだけど」



輝子「トイレのドアを開けた瞬間、今度は…御手洗さんが驚くことになった…」



輝子「機械の周りに、夥しい数の手形がついてたんだ…」



輝子「そしてその、血のような赤い手形の上には、同じく赤い文字で、こう…書いてた…」



 『私ノ声ヲ返シテ』



幸子「」



梨沙「幸子が声を…」



美玲「おおおお、おい幸子ッ! 進行役だから頑張れよッ!」

──────────



輝子「フヒヒ…さ、さっちゃん…コレを見て、先生と御手洗さんは…どうしたと思う…?」



幸子「イタズラですよ…そうに決まってますよ…やられたからやりかえされたんですよ…」



菜々「(貼られたら貼り返せ…ビッ○リマンみたいですね)」



輝子「そうか…そうだね……その二人も、そう思ったんだろうね…」



 『ロクでもないイタズラなんてするからこうなるんだ、壁の掃除もお前がやるんだぞ』



 『えぇ…マジですか…』



輝子「だけどイタズラをしたのは自分だから…し、しょうがなく…御手洗さんは、掃除し始めた…」



輝子「暫く…壁の文字を拭いたりして消していたんだけど、不意に…」



 『きゃあああああああああああああああああ!!!!!!!!!』



幸子「フギャーーーーーーーーー!!!!!」

──────────



輝子「イタズラの、アレを作動させちゃったのか、悲鳴が響いた…」



幸子「」ブクブク



輝子「御手洗さんは、驚いたけど…まぁ、自分で仕掛けたイタズラだからね…」



 『ぐっ、先にコレの電池だけ抜いておこうっと…』



輝子「御手洗さんは、落ち着いて電池を抜くと…また掃除を始めたんだ…」



輝子「放課後に、誰も…居ない…トイレの掃除…」



輝子「当然静まり返ってる中…一人で…」



輝子「こういう時って…本当に、何でもないような音とかが、気になるよね…」

──────────



輝子「ふいに、御手洗さんが手を止めた…」



 『………?』



輝子「何か、聞こえた気がする…ってね…」



輝子「空耳か…勘違いか…」



輝子「掃除を続けると…やっぱり何か聞こえる…フヒヒ…」



輝子「そしてついに…音の発生元を見つけた………」



輝子「それは、さっき電池を抜いたはずの…レコーダー…」



輝子「御手洗さんが、ポケットをまさぐると…電池はある…」



輝子「それに気づいた時“声”は、ハッキリと…レコーダーから、聞こえた…」

──────────



 『声ヲ返シテ』



 『ヒイッ!?』



輝子「飛び上らんばかりに、驚いた御手洗さんは、すぐにトイレのドアまで…後ずさったんだけど…」



輝子「いきなり何かに…後ろ、ドアのほうから頭を掴まれて、壁に叩きつけられた…」



 『な、何!?』



輝子「ビックリして振り返ると…そこには…」





輝子「首から上が無い女の人が、今、まさに手を首に…!」





 『声を、返せ…!』

──────────



輝子「翌朝、トイレが大騒ぎになっていて…私は隠してたキノコが見つかったのかと…ヤジウマ…」



輝子「トイレの中には、変わり果てた御手洗さんが居た…」



輝子「先生が、御手洗さんに近づくと…あの、音を鳴らすヤツ…アレが反応したんだけど…」



 『声ヲ返しテ…』



輝子「消え入りそうな、小さい声なのに…凄い、憎しみが籠った声が聞こえて」



 『ぐ、ぐごぇ、ぐえっ』



 “ごぎっ”



輝子「おぞましい、断末魔と、鈍い、音…」



輝子「トイレの中がそのまま…冷凍庫に入れられたのかと思う位、寒気が走って…私も、皆、逃げたよ…」

──────────



輝子「そこからは…警察が調査に入って…怪奇現象とかは、ない…」



輝子「えっと、解ったのは…まず、壁に御手洗さんの、血の跡があって、頭をぶつけた、っていうのと…」



輝子「凄い力で、首を絞められて、喉が潰れていた…みたい…首の骨が折れたのが、死因…」



菜々「へ、変質者が凄い怪力で、とか、そういうのは無いんですか?」



輝子「それには…おかしい所が幾つかあって…」



輝子「ま、まずね…結構な人が聞いた、音が出る奴からの声は…確認できなかった…」



輝子「というか…電池が入ってなくて、御手洗さんの、ポケットに入ってたから…鳴るはずが…ない…」

──────────



輝子「あ、あと…御手洗さんの、遺体には…首に手の痕がくっきり残ってた…」



輝子「警察でも解らなかったみたいだけど…扼殺されると、こう、手の痕が残るよね…」



輝子「それとは別に…首を絞めて、殺されると、なんとか線…というのが、残るらしい…」



小梅「吉川線…だね…後ろから、縄とかで首を絞めると…残りやすい、よ…」



美玲「コウメ…なんでそんな詳しいんだよ…」



輝子「苦しいから、引っ掻いたりするんだね…そ、それで…その痕がその子にも残ってたんだけど…」



輝子「“手の痕の上に”傷ができていた…って…」



輝子「これは…人には出来ないね…フヒヒ… あ、終わり、だよ…トーク、下手で…ゴメン」

──────────



乃々「キノコさん怖いぃ………幸子さんが気絶してますけど…」



小梅「………?」パタパタ



乃々「あ、あの…小梅さん…幸子さんから何か出てるんですか…」



小梅「………」



美玲「オイ!無言で視線を上にズラしていくなよッ!?」





 ─しばらく おまちください─





幸子「…うぅ…もう辞めたい…」



幸子「と言っても撮ってる都合上、ここで辞める訳にもいかないんですよね…はぁ…」





幸子「(次は誰にしましょうか…)」



幸子「(仕入れた話ですと、しょーちゃんみたいな事にはならないでしょう…仕入れた話しっぽいのは…美玲さん、梨沙さん、乃々さん…この中で比較的安全そうなのは…)」





幸子「じゃあ、次は美玲さんお願いします…」

──────────



美玲「ウチか?」



幸子「はい、お願いしますね」



美玲「よし、それじゃあ、三話目はウチが話してやるッ! えーと…早坂美玲、14歳だぞッ!」



美玲「そうだな…幸子、ウチの格好見てどう思う?」



幸子「………独特の変わったセンスをしてますね!」



美玲「まぁ、ウチは普通のお嬢様やギャルのファッションは苦手だから、その話は置いといて…」



美玲「この爪、格好いいだろ! ふふんッ!」



美玲「そんなワケでウチは“爪”に関する話だぞッ!」



美玲「幸子、爪はいいぞ。 なんたって着けるだけで強そうだしなッ!」

──────────



 『早坂美玲 爪』



美玲「爪と言っても、ウチのコレみたいなでっかい奴じゃなくて、普通の爪の事だからな…」



美玲「爪ってさ、割と霊的な話が多かったりするんだ。夜に切ると親の死に目に会えないとかなッ」



菜々「朝に切ると出征前の兵士が形見に置いていったみたいで“縁起が悪い”って言いましたねー…」



梨沙「じゃあいつ切んのよ…」



美玲「他にも中国に日本の藁人形に似た呪いで人の爪を使うのもあるんだぞッ」



幸子「へぇ…それは知らなかったですね…」



乃々「呪いたい人の爪って…そんなに簡単に手に入るんですか…」



輝子「まぁ…確かにそこまで執念が、あったら…呪いも成功しそうだね…フヒ…」

──────────



美玲「ま、ツメの話はまず置いといて…三年生に居た男子生徒の話なんだけどな…」



美玲「そいつは頭も良い方だったし、陸上部に所属してて運動も出来た。ルックスは…評価は人に依るけど、まぁ、女子からの人気は悪くなかった」



美玲「でも………一つだけ悪い所があったんだ。 幸子、なんだと思う?」



幸子「残ってるモノと言えば…性格が悪かったとかですか?」



美玲「んー、半分正解だぞッ! 性格も悪くはなかったんだ。友達も多かったみたいだし…」



輝子「う、うらやましい………フヒ………」



美玲「でも一つだけ悪い癖みたいなのがあってな…」



幸子「癖?」



美玲「小さい動物を苛める癖があったんだ」



幸子「最悪じゃないですか」



乃々「いぢめ…よくないです………」

──────────



美玲「苛めるというか…そいつは小さい動物を見ると追い掛け回す癖があったんだ。子供の頃からな」



美玲「流石にそこに“何で?”って聞かれても解らないぞッ! ………前世が犬とかだったんじゃないか?」



美玲「追いかけられた動物は猫でもなんでも、大体は逃げるモンだからな…逃げるとそいつは余計に追い回す」



美玲「陸上部に入ってたって言ったろ? そのせいで足が速くなったのかもしれないなッ!」



美玲「そんなに追っかけ回すのが好きなら犬でも飼って遊んでやればよかったのにな」





美玲「そんなある日…そいつは下校中に一匹の猫を見つけた」



美玲「近寄ると猫は人に慣れていないのか、逃げて行ったんだけど…さっき言った悪い癖が出たんだ」



美玲「そいつは猫を追いかけまわし始めた」

──────────



美玲「追いかけ回すっても、猫の機動力とか、ルート選択に人が着いていけるはずもないから…普段はある程度追いかけた所で塀を飛び越えたり、穴を潜られたりで逃げられてたんだ」



美玲「でもその日は学校の裏山が舞台でさ。歩きにくいのはあったけど追いかけ回すのは難しくなかったんだ」



美玲「小一時間も追いまわした所で、猫が森の切れ目から飛び出した」





美玲「………そこは車道でさ、急に飛び出した猫に車は対応できなかった」



美玲「猫は車に轢かれて…即死だったみたいだな」



乃々「いーやーぁー…」



美玲「そいつは裏山に猫を埋めて…まぁ、事件があってからは小動物を追い回すのをやめるようにしたんだ」

──────────



美玲「それから暫く経って…そろそろ受験のシーズンに入る三学期、ふとした時にある事に気付いた」



美玲「左の腕に何本も赤い線が走ってる…って」



幸子「え…ボ、ボクも憶えが…」



美玲「あぁ、それはあんま怖い事じゃないぞッ! 寝てる間に引っ掻いただけだ、多分な!」



菜々「知らんうちにこんなとこ切れてる…ってなると凹みますよねー…」



美玲「ダニとかが原因の事もあるから布団を干したり色々するといいぞ…布団がフカフカだと気持ちいいぞッ!」



美玲「っと、脱線脱線…そいつの腕に何本か赤い線が走ったようになって、少し腫れてたんだ」



美玲「痒いから引っ掻いたのに腫れて更に痒くなるとか地獄だよな…」

──────────



美玲「そいつは『珍しい事もあるもんだな』ってあんま気にしなかったんだ。実際、次の日には消えてたし」



美玲「なんで『珍しい事』と思ったのかって言うと…そうだな…」



美玲「ところで皆、爪の手入れはキチンとしてるか? ま、アイドルだからなッ! 当然してるだろ?」



幸子「当然ですよ! ボクはカワイイので!」ドヤァ



美玲「…噛んだりするクセがある奴とかいないよな…?」



梨沙「いないんじゃない? …子供じゃないんだから!」



美玲「ま、そいつは爪を噛むクセがあって、見ると深爪ってレベルの感じだったらしいぞッ!」



幸子「えっ!?」



美玲「いや、一応指の先から爪が出ないレベルの深爪でも、寝てる時に引っ掻いて傷が出来る事はあるんだ、無意識だから力加減とか出来ないみたいだし…」

──────────



美玲「ま、それでも深爪で引っかき傷ってのはそれなりに珍しいからな…頭にハテナが浮かんだけど、それ位であんま気にしてなかったみたいだ」



美玲「それから一週間位して、ふと『腕が痒いな』と思ってふと腕を見てみると…」



美玲「今度は両腕に何本も赤い線が走っていた」



幸子「」ビクッ



美玲「『これはちょっとおかしい』何か痒くなる物があるのか…アレルギーとかな!」



美玲「布団を干して、部屋を綺麗にして、木綿の服を着て…毛布も柔らくてチクチクしない奴に変えて…」



乃々「ストレスの可能性もあると思うんですけど…ストレスは…よくないです…」



美玲「まぁ、それは否定できないけど…人が何をストレスにするかなんて解んないしな!」



美玲「でもそいつは受験勉強に疲れてたってワケでもなかったし、残った高校生活を楽しむために結構遊んでたみたいだし、そこまでストレスは多くなかったんじゃないか?」

──────────



美玲「次の日、腕に真新しい傷は無かった」



幸子「よ…よかったじゃないですか! めでたしめでたしですよ! 終わりですよね!ね!」



美玲「腕には…だぞ」ニヤ



美玲「代わりに引き受けたように、そいつの足に何本か赤い線が走っていて…流石に怖くなったんだろうな、そいつは徹底して引っかき傷が増えないようにしたんだ」



美玲「噛んでボロボロだった爪をキレイに整えて、風呂に入って傷口を消毒して…後一つ“引っ掻けない様に”ある事をしたんだ、幸子、なんだか解る?」



幸子「むーん………ボクなら手袋とかしますけど…」



美玲「んー…そっちか…惜しかったなッ! そいつは腕と足に包帯を巻いて寝たんだ。厚い服を着てても服の下をボリボリやっちゃ意味ないからな!」

──────────



美玲「結果、どうなったと思う…? ま、怖い話をしに来てるんだから解るだろ…」



幸子「き、傷が治ってメデタシメデタシ…」



美玲「増えていたんだ、傷が、包帯の下に」



幸子「ううぇぅ…」



美玲「もう何がなんだか解らなくなってさ、そいつは最後の手段とばかりに友達に頼みこんだんだ」



 『お前の家に今日泊めてくれ。そして、寝てる間、俺を見ていてくれ、引っ掻いたりしてるようだったら起こしてくれ』



美玲「頼まれた方は寝られないから迷惑な話だよな…ま、そいつの友達はイイ奴だったから引き受けてくれたんだ」



美玲「夜中にそいつが寝て、それを友達がずっと見守る…男同士だからある意味ホラーだなッ! で、どうなったと思う?」



幸子「な、何か起こると怖いですし…何もなかったらそれはそれで怖いですし…」



小梅「よ、夜中にいきなり飛びあがって…気が狂ったように…体を掻き毟り始めた…?」ニコニコ



美玲「なんでそんな怖い発想が出来るんだよッ!?」



幸子「友達のトラウマ確定じゃないですか…」

──────────



美玲「ま、まぁ…続けちゃうと“何もなかった”んだ、本当に」



美玲「友人は『体なんて掻いて無かったよ』と言うし、包帯の下に新しい傷は増えてなかった」



美玲「こうなると次は“自分の部屋の何か”で体を引っ掻いてるか…痒みの原因があるか…」



美玲「そいつは友人に丁寧に礼を言うと、家に帰って、親に布団をどうにかして貰おうと理由を考えながら風呂に入ってた」



美玲「風呂から上がった時、丁度そいつの母親が帰ってきて、そいつを一目見るなりこう言ったんだ」



 『アンタ“それ”どうしたの…?』



美玲「そいつが母親の指差した背中を鏡で見た時、全身から血の気が引いていっただろうな…」



美玲「そいつの背中は真新しい引っ掻き傷で一杯だった………」



幸子「ヒイッ!」

──────────



美玲「人が完全に“どうしようもない”って思ったら次にやるのは…」



幸子「…神頼みですか?」



美玲「そうだなッ! …そいつは近所の山…学校の裏山にある寺にお祓いをして貰う事にしたんだ」



美玲「ホントに効果があるのかは解らないけど…こういうのは“お祓いをして貰った”っていうのが大事なんだろ?」



美玲「母親が訝しむのを尻目に、急いで服を着てそいつは山の方に駆け出した」



美玲「山の入り口まで走って、登り始めようとした時…」

──────────



 ずく… ずく…



美玲「急に、引っ掻き傷が疼き始めたんだ…」



菜々「は、走ると血行が良くなりますからねー!」



幸子「で、ですよね!」



美玲「ま、理由はそんなトコだろ! そいつも走ってきたからって決めつけて山を登り始めた」



  ずく… ずく…



 『痒い…』

──────────



美玲「寺へ続く石階段、これを登れば有名ではないけど近所にある唯一のお寺に着く…」



 『痒い…痒い…』



美玲「でも…何故か石階段を上る度に傷口が疼く…」



 ずく… ずく…



 『痒いよ…』



美玲「階段の中腹まで来た時、そいつは我慢できなくなって、体を掻き始めたんだ」



美玲「ところが、幾ら掻いても体の痒みが消えない…それどころか、更に痒くなって来たんだ」



 『か、痒い!痒い痒い痒い痒い痒い!!!』



美玲「と…のたうち回っていたそいつには、辺りを見回す余裕なんて無かったんだろうな…」



美玲「………気付いた時、足は階段を踏んでいなかった。そいつは階段から転落して、死んじゃったんだ」





美玲「結局、受験から来るノイローゼで精神をおかしくして、誤って階段を踏み外したって警察に判断され、事故としてこの話は終わったんだぞッ!」



幸子「うぅ…」



美玲「ま、これも“落ちた時に石で切った”と判断されたようだけど…そいつの体は“全身を無数の獣に掻きむしられたような傷跡が埋めていた”んだって!」



美玲「そいつは…“何”に引っ掻かれていたんだろうな…?」





美玲「…ウチの話はこれでおしまいッ! 次は誰だ?」

──────────



幸子「爪ネタとか言ってたから美玲さんらしいネタであんまり怖くないと思ってたのに…」



美玲「な、なんだよッ…ビビれよ…………がおー!」



幸子「思いっきり怖いじゃないですか…聞いてるだけで体がむず痒くなるのに怖くて掻けないですよ…」



乃々「もうもりくぼは帰ってゆっくりヌルいお風呂に浸かっていたいんですけど…むずむず…いーやーあー…」



小梅「か、かゆ…?」



輝子「う、うまー…フヒ…」



梨沙「変な薬でもやってましたって脳内で無理やりオチつけなきゃ暫く深爪しそう…」



美玲「こ、怖かったか!ふふんッ! そうか! 凄いだろっ!」





幸子「(次は誰にしましょうか…)」



幸子「(乃々さんか梨沙さんか…明るい話になりそうなのは…梨沙さんですかね…?)」



幸子「それでは続けましょうか…嫌ですけど…次は梨沙さんお願いします…」

──────────



梨沙「ようやくアタシの出番? まぁ、真ん中をセンターと考えると目立つアタシを配置したくなるのも解るけど♪」



幸子「ウメちゃんの体重みたいに軽い話がいいです」



梨沙「小梅そんな軽いの?」



小梅「さ、35キロ…この前、ふ、増えた……ふふ…レッスンの…成果かな…」※特訓前34キロ



梨沙「軽ッ!」※38キロ



輝子「わ、私も…35キロだぞ…フヒヒ…」



梨沙「142'sは栄養足りてないんじゃない? …って、体重の話はどうでもいいのよ、怖い話でしょ?」



梨沙「あ、的場梨沙11歳! 見ててねパパ! 教えてもらった話するからね!」



幸子「(ここまで父親が好きっていうのが怖いという事でオチたりしませんかね…)」





梨沙「これはアタシが体験したりした話じゃなく、パパから聞いた話なんだけど…」

──────────



梨沙「皆はキャンプとかしたことある? なんかインドア派が多そうだけど…」



美玲「ウチはこの前やったぞッ!フフンッ!」



幸子「無人島でならありますよ」(遠い目)



小梅「よ、よく、するよ…心霊スポットで…」



乃々「もりくぼは…森でならしたことありますけど…」



輝子「き、キノコ取りに…よく、行く…」



菜々「飯盒炊爨は必須知識じゃないんですか?」



梨沙「割とアクティブだったわ」

──────────



梨沙「アタシの話は山のキャンプ、という話なんだけど…皆の学校は登山遠足とかある?」



幸子「キャンプ? 日帰りで山登りならあったと思いますけど…」



小梅「そうだね…」



梨沙「ウチの学校、戦前からある由緒正しい学校なのに、登山遠足すらないのよ。 というのも、これからする話が原因で中止になってそれっきり、みたい」



幸子「???」



梨沙「あぁ、アタシ、パパが通ってた学校に行ってるの。羨ましいでしょ!」

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 『的場梨沙 山間宿泊学習』



梨沙「事の発端は五年生が行く宿泊学習。近所の山までバスで行って…まぁ、小学生だから半分以上登った所にある…旅館? じゃないわね、なんて言うのかしら」



菜々「あぁ、青年の家ですね! 菜々も泊まったことありますよ!」



梨沙「あ、そういう名前なの? まぁ、そんな感じの施設に泊まって、次の日に山頂を目指して登山。 自然と触れ合う学習みたいね」



梨沙「宿泊する日は何事もなく進んで、いざ、山登りの時間になったのよ」



梨沙「今じゃちょっと考えられないけど、当時は生徒が多かったのもあったのかしら? 登山ルートが3つあって、いくつかのクラスで分かれて山頂を目指す、という形だったみたい」



梨沙「その内の…ここではAグループ、としておきましょ、Aグループは運動部なんかで構成された比較的体力のあるグループで、森道を進むグループだったの」



梨沙「その日、山の天気は晴れで崩れそうな雰囲気も無い絶好の登山日和」



梨沙「生徒も先生も歌なんか歌いながら登山を楽しんでいたみたい」

──────────



梨沙「ところが、登山ルートの半分を超えたあたりから急に天気が崩れ始めたの」



幸子「山の天気と秋の空は変わりやすいと言いますからね」



菜々「あれ、昔は“男心と秋の空”だったのがいつの間にか女心になったんですよねー」



梨沙「天気が、というより…霧が出てきたみたいね」



梨沙「大した霧じゃなかったみたいだけど、大事を取って一旦止まることにしたみたいね」



 『はい、はい…ええ、30分ほど様子を見て、はい』



 『全員、止まれー。 視界が悪いため一時待機する、点呼取るぞー!』



 『動いたりしないように、霧の中動くと遭難するかもしれないからな』

──────────



梨沙「点呼を取って、他のルートを進んでいる教師たちに無線連絡を入れたわ」



梨沙「ルートが違うと言っても、同じ山だから天気が崩れているグループが他にもあるかと思ったけど、どうやらこのグループだけが霧に覆われたみたいね」



梨沙「暫くその場に留まっていると…霧は晴れるどころか深まってきたわ」



梨沙「もう5メートル先の物が見えないくらい。 幸子ならこういう時どうする?」



幸子「むー…点呼を細かくとって“皆が居る”って安心したいです…」



梨沙「そうね。 …グループを引率している先生もそうしたわ」



 『霧が深くなってきた、5分置きに点呼を取るぞー!』



 『1…2…3…4…5…6…7…8…9…』



梨沙「五分経ったわ」

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 『1…2…3…4…………』



梨沙「5番の子の応答が無くなったの」



幸子「ヒッ!?」



梨沙「5番…そうね、ここでは“田中くん”として…」



 『おい、5番!? 田中!! おい!』



 『〜〜〜! 6番以降、居るか!?』



 『はい!6!』『7!』…



梨沙「田中くんの後ろはちゃんといたみたい。 一人だけ座る場所を探して逸れたとか…?」



梨沙「とりあえず、先生は他のグループに連絡をして、呼び出しを続けたみたいね」



 『こちらAグループ、霧に巻かれて生徒が逸れました』



 『皆慌てるな、絶対その場を動くな! おーーーい! 田中ーーーーー!』





梨沙「呼びかけても呼びかけても何の返事も無かったみたいね、その内、五分が経ったわ」

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 『…駄目だ、再度点呼をとる! 5番を空けて6番から続けろ!』



 『1…2…』



梨沙「“3番の応答がない”」



幸子「」



梨沙「最初の点呼で全員が応答したということは、比較的皆は近い位置にいるはずよね?」



梨沙「それが音も声もなくいなくなる…これは尋常なことではないわよね」



梨沙「…と言っても、このグループに何があったのかはここまで」



梨沙「無線で連絡が来たのはこの“3番の子もいなくなった”という報告までだったの」

──────────



梨沙「他のグループは直ぐに警察に連絡を入れ、宿泊先に引き返すことにしたわ」



梨沙「宿に戻った引率の先生たちは、警察と協力して山を捜索する事になったの。 ま、そりゃそうよね」



梨沙「ところが、警察と山岳救助隊が、Aグループが通った道をなぞってもAグループはおろか、霧の出ている場所すらなかったわ」



梨沙「霧は自然現象だから消えてもしょうがないけど、人が十人以上も消えるのはね」



梨沙「結局、陽が落ちるまでAグループは見つからなかった」



梨沙「…地元の人たちはしきりに“神隠し”とか“天狗様”とか口走っていたみたい」



梨沙「でもそんな非科学的な事で片付けられないのが警察よ」



梨沙「山狩りに近い人数を投入して、ついに三日目、居なくなったAグループを見つける事が出来たの」



幸子「は、はっぴーえんどですよね…? ですよね…?」

──────────



梨沙「驚いたことに、行方不明になっていた人たちは全員、決められたルート上にちゃんといたの」



梨沙「ただ、捜索隊が見つけるのはちょっと難しかったみたい」



梨沙「行方不明になっていた人たちは、全員“樹の上で枝に突き刺さって死んでいる”姿で見つかったの」



幸子「あばばばば」



輝子「さ、さっちゃん…そろそろ色が戻らなくなるんじゃないか…」



梨沙「百舌って鳥を知ってる? スズメに似た鳥なんだけど。 カエルとか、虫とかの獲物を捕らえると木に刺す“はやにえ”という習性があるみたいね」



梨沙「と言っても、死んでいた人たちはお腹や胸を“足より太い”枝が貫通していたから、百舌なんかじゃないわね。クマでも無理じゃないかしら」





梨沙「…このグループに、一体何が起こったのかは結局、誰も何も解らないまま」



梨沙「それからウチの学校では登山遠足が無くなった…というワケ」

──────────



梨沙「………これは蛇足なんだけど。 百舌の“はやにえ”ってなんでそうするか知ってる?」



幸子「??? 食料を保存するためとかじゃないんですか?」



小梅「み、見せしめの、処刑…?」



梨沙「小梅、ホント容赦ないわね………。 実は理由は未だに解ってないらしいのよ」



梨沙「はやにえにした獲物を食べる事ももちろんあるみたいだけど、食べられないことの方が多いらしいわ」



幸子「む…そうなんですか…?」



梨沙「今回の事件もさ、そんなもんなんじゃない?」





梨沙「何かが“意味なんてなく、ただそこにいたから木に刺した”」





梨沙「…コレで半分が過ぎたわね。 この話もルートの半分以降で何かあったわけだけど…続けるんでしょ? 次は誰?」

──────────



菜々「あぁ、また幸子ちゃんが真っ白に…」



輝子「だ、大丈夫だ…さっちゃん…私も、よく山に行くけど…刺されてないからな…」



輝子「………空気だからか…フヒ……」



幸子「んぐぐ…悲しい結論に達しないで下さいよ!」



乃々「キノコさん、幸子さん戻すの上手ぅ…」







幸子「(次は誰にしましょうか…)」



幸子「(と言っても七人目が来ていない以上、乃々さんかウメちゃんですね…)」



幸子「それでは続けましょうか…乃々さんお願いします…」

──────────



乃々「うぅぅぅ……いーやーあー………もりくぼは怖いの苦手なんですけど…」



幸子「ボクだって苦手ですよ…」



乃々「でも…やります…はい………あ、もりくぼは森久保乃々ですけど…14歳です…」



乃々「もりくぼは怖い話苦手なんですけど…少女漫画を読むのが好きで…たまに怖い話もあったりするんですけど…」



乃々「そういうのからちょっとした好奇心で…友達に怖い話を聞いたんですけど…」



乃々「好奇心はもりくぼを…じぇのさいどぉー……」



幸子「虐殺レベルですか………」



乃々「それくらい…苦手…」

──────────



乃々「…もりくぼは、ネガティブなので…よく後悔とかするんですけど…」



乃々「今でも、凄く後悔してるお話、します…」



乃々「あの、皆さんの学校には、焼却炉とか…ありますか…?」



 ※現在はダイオキシン等の問題からほぼ撤去されております



菜々「ありましたねー…絶対一年に一回は焼き芋を作ろうとして失敗する生徒がいて…」



小梅「プ、プロデューサーさんが言ってたけど…まだ、あるんだね…私の学校には…無いけど…残念…」



輝子「な、なかったな…」



乃々「もりくぼが通う学校には珍しくあって…そう、珍しいものがあると…それに付随する噂みたいなのも、出ますよね…」

──────────



 『森久保乃々 誘う焼却炉』



乃々「噂は、凄い単純で…夜の12時に学校の焼却炉を見ると…引きずり込まれる、っていうものだったんですけど…」



小梅「プロデューサーさんの…話と…同じかな…」



乃々「そうかもしれません…でも、誰もが『そんなの嘘に決まってる』って思ったんです…」



幸子「そ、そもそもオバケなんていないですからね! 当然ですよ!ふふーん!」



乃々「な、なんでかと言うと…その焼却炉はもう使われてなくて…色々と危ないということで…蓋が溶接されて、開けられなかったからなんですけど…」



梨沙「もうそれ撤去しちゃえばいいじゃないの」

──────────



乃々「そもそも開きもしないから、確かめるのむーりぃー…」



乃々「…そんな中、一人の男子生徒が、その噂に興味を持って…焼却炉について調べ始めました…」



乃々「あ、も、もりくぼがなんで知ってるのかといいますと…もりくぼは、新聞部に入っていて…幸子さんと同じですけど…その調べていた人が、新聞部の部長だったんです…」



幸子「(そういえばそんな設定でしたね…)」



乃々「もりくぼは新聞の片隅に…ポエムを書くだけの部員だったので…あまり興味がなかったんですけど…」



乃々「ある日、新聞部で調査をするとかで…焼却炉の前に集合になったんです…」

──────────



─────



 『本当に溶接されてるんだな』



 『なんでも、煙突の方にも鉄筋みたいなもので網目状に封鎖されてるんだって』



 『登って落ちたら大惨事だしねー』



 『うぅ…帰りたい…』



乃々「そんな事を言い合いながら…写真を撮ったり…煙突に登るための梯子をギシギシさせてみたり…調査とは言いますけど、遊び八割くらいで…やってたんです…」



 『これ、中どうなってるんだろうな?』



 『昔のゴミとか残ってたりして』



 『いやいや、実は実験生物を閉じ込めておく檻として今も…』



 『どうやって入れたんですか…』



 『可能性があるなら考慮して追及するのが正しい新聞部のありかたって奴だよ…どれどれ』



乃々「開かない事が解ると、中身が気になるのが人間というものですよね…部長が、何の気なしに焼却炉に耳をあてがったんです」

──────────



 『部長ーなにやってんのー?』



 『実験生物の声でもするんですか?』



 『しっ…!静かに! ………おいおい、ウソだろ…?』



乃々「部長の顔が青ざめていくのが解って、部員達も“何事か”と焼却炉に耳をあて始めました…」





乃々「幸子さんは…何が聞こえたと思います…?」



幸子「な、何も聞こえませんよ何も聞こえませんよボクは何も聞こえませんよ…」



乃々「そうですよね…焼却炉が使われなくなってからゆうに10年以上経ってる訳ですし…」

──────────



乃々「静まり返った焼却炉…近くにいる部員の呼吸の音しか聞こえないような…」



幸子「怖くない怖くない怖くない…」



乃々「張りつめた空気の中、必死で焼却炉から聞こえる音を聞き取ろうとした時…」



 『うわあああああああああああああああああ!!!!!!!!』



 『おわぁ!?』

 『キャー!?』

幸子「フギャーーーーーーー!」



乃々「部長がいきなり叫び声をあげて…もりくぼはショック死するかと思ったんですけど…」



 『あはははははははは!引っかかった引っかかった!』



 『………は?』



 『え?』

──────────



 『何も音なんてしてないって。 いやー、奇麗に皆騙されたなー』



 『ちょっ…勘弁してくださいよ部長…』



 『何考えてるんですか…危うく昇天する所だったんですけど…』



 『ホント、死ねばいいのに』



 『あれ、一人すっげえ辛辣』



乃々「と、部長の悪戯だったわけなんですけど…あれ…幸子さん…?」



輝子「さ、さっちゃん…本当にこのパターンに…弱いな…」



幸子「こわくないこわくないあばばばば…」



乃々「結局、部長の悪ふざけって事で皆白けてしまったのか…その日は解散することになったんですけど…もりくぼはちょっと気になることがあって…最後に残った部長に尋ねてみたんです…」

──────────



─────



 『あの………』



 『おぉ、森久保さんか…悪かったな、驚かして』



 『部長、随分顔色が悪いんですけど…大丈夫ですか…』





 『………森久保さんはさ…何か、聞こえた?』



 『……………』



乃々「黙るしかなかったです…いえ、はい…実はもりくぼにも聞こえたんですけど…」

──────────



 『そうか、聞こえたか』



 『…実はこの焼却炉が人を…って噂。ある事件が原因でそう呼ばれるようになったんだ。知ってるか?』



 『いえ………』



 『胸糞悪くなる話だから割愛するけど…森久保さん、聞こえたのは“赤ん坊の泣き声”だっただろ…?』



 『………』



 『あれは…“子供が親を呼ぶ時の泣き声”だ………ほんっと、嫌になるな』



乃々「もりくぼはなんでこの焼却炉が呪われたのかという理由は知らなかったんですけど…部長が言ったその一言で大体察しました…」



乃々「“この焼却炉で、人…それも赤ん坊が生きたまま焼かれた”って…」



梨沙「うっげ…」



美玲「なんだよそれ…なんでそんなことできるんだよ…」



幸子「ひぃぃ…」

──────────



乃々「その夜…」



幸子「もう終わったんじゃないんですかぁ…」



乃々「もう日付も変わろうかという時間に、ふと目が覚めたんです…もりくぼは早寝早起きですけど…早すぎ…」



乃々「もう一度布団を被って寝ようとしても…“誰かが呼んでる”気がして…無意識にもりくぼは学校の方へ向かいました…」



乃々「ふらふら…ふらふら…もりくぼは蝶々みたいに…気づくとそこは学校の裏庭…」



乃々「…の前に、ふと気がついたんです…焼却炉の前に誰かがいる…誰だかわかりますよね…?」



幸子「…部長さん…?」



乃々「はい、そのとおりです…」

──────────



乃々「もりくぼは…ふらふら出てきたので…パジャマ姿が恥ずかしかったので…隠れました…」



乃々「思えばこの時のもりくぼは…洗脳が解けたかのように意識がはっきりしていました…」



乃々「それに対し、部長は何かに操られているかのようにふらふらと焼却炉の方へ歩いて行きました」



乃々「部長が焼却炉の前に着くと、突然、溶接されているはずの焼却炉の蓋が開いたんです…」



乃々「え? って思ったその瞬間…凄まじい子供の泣き声が聞こえてきて…あの、ライブの時の歓声より凄かったですけど…」



乃々「部長は…その、焼却炉から出た腕のような形をした炎に…一瞬で引き込まれて行きました」



乃々「部長が引き込まれたと同時に焼却炉の蓋が閉まって…煙突から煙が出てきた時、もりくぼは怖くなって逃げました…」

──────────



乃々「次の日、学校に行くと部長が行方不明になった、って学校中の噂になってて…」



乃々「もりくぼも、先生に昨晩の事を話してみたんです…」



乃々「でも焼却炉の蓋は変わらず溶接されてて…“夢でも見たんだろ”“不謹慎だ”って怒られたんですけど…」



乃々「結局………解決はむーりぃー…ってなって…誰もこの話をしなくなったんですけど…」



乃々「もりくぼがそんな事を先生に言ったから、皆怖がって焼却炉に近づきもしなくなりましたし…」





乃々「でももりくぼは思うんです…あの焼却炉にいた、赤ん坊は…親を見つけるまで…ずっと誰かを呼び続けるんじゃないか、って…」



幸子「………」



乃々「………実はもりくぼ、未だに聞こえるんです。赤ん坊の泣き声…」



幸子「ひいっ!?」



乃々「絶対行きませんけど………」

──────────



乃々「……………あ、終わりですけど…」



小梅「の、乃々さん…どこの学校、通ってるんだっけ…」(キラキラ)



菜々「っはー………やっぱり実体験混じると噂程度の怖い話とは一線を画しますねー…」



梨沙「………後悔って何の話?」



乃々「あ…あの…焼却炉で部長を見かけた時…もりくぼは正気だったので…」



乃々「恥ずかしがってないで、出て行って…無理にでも止めておけば…部長は死なずに済んだんじゃないかって…」



美玲「そんなの言ってもしょうがないだろ…ノノは蓋が開くなんて思ってなかったわけだしさ…」



小梅「でも、その時は止められても…きっと数日の間に、同じことになっちゃうんじゃ…ない、かな…」



乃々「ぅー………まぁ、私の話は以上ですけど…次の方…どーぞぉー…」

──────────



─────



小梅「わ、私の、番…だね…七人目の人…来ないから………何かあったのかな…ふふ…」



幸子「うぅ…絶対怖いですよ…手加減してくださいね…お願いですよ…」



小梅「で、でも…良かったね………七不思議のお話って…ぜ、全部しちゃうと…不吉な事が起こるって…よくあるから…」



幸子「なんでそんな事をやらせるんですか…」



小梅「ふふ…六つで終わって、正解…なのかも…ね…」



小梅「私も…最後に相応しい、とっておきの話を、するね…」ニコニコ

──────────



小梅「“自殺の名所”って…あるよね………あれって、なんで出来るか、さっちゃん…解る…?」



幸子「いきなり重い………ええと、ふらっと行きやすいとか…危ないって解りやすいとか…」



小梅「ふふ…樹海、とか…岬とか…ふらっと行ける場所じゃない所にも…名所は、ある…よ…」



幸子「樹海はそのせいで山梨県の自殺者ワーストなんですよね…全く…」 ※山梨出身



小梅「駅とかも…自殺者が出やすい場所と、出にくい場所とかあるけど…」



幸子「そういえばそうですね…柵みたいなのがある所は少ないでしょうけど…」



梨沙「なんかライトの色とかで工夫してるって聞いたわよ?」

──────────



小梅「く、クイズじゃない、から…私の考え、言うね…」



小梅「“そこで人が死んでるから”だと思う…」



小梅「これは…呪いとかじゃなくて…“ここなら死ねる”というのと…“ここで死んだ人がもう居る”というのが…大きいんじゃないかな…」



輝子「…一人ぼっちは、寂しいもんな…フヒヒ…」



菜々「輝子ちゃん、チョコ菓子食べながらその台詞は色々と危ないから…」



輝子「き、キノコだから…セーフ………だめか………」

──────────



小梅「死者が、一人ぼっちは寂しいから、道連れを求めてるのか…それとも、生きている人が…一人で死ぬのが怖いのか…ふふふ…どうなんだろう、ね…?」



小梅「それでね………この学校にも…あるんだよ…“自殺の名所”…」



 『白坂小梅 首吊り桜』



小梅「さっちゃんは…この学校の生徒さんだから、知ってるよね…?」



幸子「し、知りませんよ!」



小梅「そう…でも、昔の話、だから…しょうがないのかもね…ふふ…」



小梅「この学校にはね…昔、大きな桜が植えられていたの…」



小梅「とても立派な樹で…樹齢百年は越えていたって…」

──────────



小梅「今から、三十年以上も昔…一人の女の子が、桜の木で首を吊って死んでいるのが見つかったの…」



小梅「遺書には、世を儚んで死ぬ、って…誰を恨む事無く独りで…」



小梅「悲しい事だけど…長い学校の歴史には、そういうこともあるって…その時は話題にもなったけど…何か月もせずに人の意識からは消えて行った…」



小梅「その自殺から丁度一年後…また、桜の木で首を吊っている生徒が見つかったの…」



幸子「の、呪いとかですかぁ…?」



小梅「どう、だろうね…? その生徒は親の不仲が原因で、って遺書に残してて…確かにそのとおりだったみたい…」



小梅「そこから、更に半年後…また桜の木で首を吊った生徒が出て…更に五ヶ月後…四ヶ月後…」



小梅「それぞれ…死に到る理由は、様々で…失恋、苛め、厭世感…」

──────────



小梅「“何故皆この桜の木で?”という疑問から…付近の立ち入りを禁止したりもしたけど…柵も乗り越えて生徒は首を吊った…」



小梅「そこに至って、ようやく…学校側も“この桜の木はおかしい”って思ったんだろうね…」



小梅「ふふ…さっちゃんなら…どうする…?」



幸子「………木を切ってしまえばいいんじゃないですか?」



小梅「そう、だね…真っ向から問題解決する…いい方法だね…」



小梅「ふふ…こういう時…木を切ると…大体、関係者が事故に会う、とか…あるよね…」



幸子「あっ…」



小梅「工事を担当した人が…思い切り斧を振りかぶって…桜の木に打ち付けたその時…!」



幸子「コワクナイコワクナイコワクナイ…」

──────────



小梅「桜の木は、倒れたよ…」



幸子「怖がらせるのやめて下さいよ…菜々さんもやりましたけど迫力が違うんですよ…」



小梅「ご、ごめんね……でも、何もなく、あっさりと…桜の木は倒れたの…」



小梅「でもね…桜の木が、倒れてから…たったひと月後…」



小梅「桜の木があった場所で、生徒が一人…死んでいるのが見つかったの…」



幸子「ヒイッ!?」



小梅「首にはロープが巻きついていて…体育用具室にあった…脚立を蹴った痕があった…」



小梅「桜は、もう…ないのに、ね………?」

──────────



小梅「死因は縊死…警察の、鑑識が調べても、司法解剖が行われた後も…覆らなかった…」



小梅「“凡そ3M程度の高さからロープを括り、首を吊った”」



小梅「近くには、生徒が首に巻いていたロープを結ぶ先なんて、何も無いのに………」



梨沙「誰かがロープで殺したってのは無いの?」



美玲「それは調べたらすぐ解るって聞いたぞッ! 首に残る痕とか…」



梨沙「他の場所で首吊ったのを持ってきたとか…」



輝子「そ、それはそれで、怖いな………」

──────────



小梅「せ、折角だから…見に、行ってみる…? 校庭…」



幸子「え」



菜々「あ、そういえばこの学校のお話なんでしたっけ…」



乃々「もりくぼは留守番でいいですけど…」



美玲「幸子、どうするんだ? 取材してるのは幸子なんだから、決めていいぞッ!」



幸子「い、いや、ボクは…」



小梅「………」



幸子「そ、そうですね…解りましたよ、行きますよ…」



小梅「」パァァァァ

──────────



─────



小梅「つ、ついたよ…ここが、例の場所…」



菜々「話を聞いたばかりだと不気味に感じますね〜…」



梨沙「確かにどっかにロープ掛けられそうなトコは無いわね〜」



乃々「ね、帰りましょ…良くないと思うんですけど…ここ…」



幸子「」



小梅「?? さっちゃん、どうしたの…?」



幸子「い、いえ…別に…」





幸子「(………桜が)」



幸子「(…桜が見える…)」

──────────



小梅「そ、それじゃあ、戻ろっか…あ、さっきの話の続き、だけど…」



小梅「あそこ、見える…? 小さな、お堂…」



小梅「近くの神社から、神職の人を呼んで…鎮めて貰ったって…」



小梅「ふふふ………呪いというものが、あるなら…そうだね…」



小梅「鎮めたのは…“自殺者の呪い”なのか…“切られた桜の呪い”なのか…」



小梅「鎮められてない方、は…また、人を呼ぶかも、ね…」



小梅「“首吊り桜”の話は、終わり、だよ… ………どうしたの? さっちゃん…オバケでもみたような顔…」



幸子「…だ、大丈夫ですよ、ボクはカワイイですからね…」



小梅「そう…? じゃあ、戻ろっか…七人目が、来てるかもしれないし…」



幸子「………」



幸子「(もう桜は見えない…なんだったんでしょうか…? 驚かされすぎて幻覚でも見たんでしょうか…?)」

──────────



─────



幸子「七人目の人は結局来なかったですね…」



幸子「………もう来ないなら解散でイイんじゃないでしょうか? ね? いいですよね?」



 コンコン



幸子「………」



 コンコン



幸子「七人目がどなたか知りませんが空気を読んで下さい!」



 コンコン



幸子「解りましたよ…出ればイイんでしょう…うぅ…」

──────────



 ガチャ



モバP「おー、幸子。明日の仕事についてだけどな? お前にまだ連絡入れてなかったと思って」



幸子「ふーーー…なんだ、プロデューサーさんじゃないですか!」



モバP「『なんだ』って…まぁいいか。明日はちょっとした劇というか…そんなのをやって貰う事になってな」



幸子「はいはい、今日の仕事に比べればなんだってマシですよ…」



モバP「???」



モバP「幸子、今日仕事入ってたっけ…?」



幸子「ちひろさんに言われて急に入ったんですよ」



モバP「ふーん…で、な。 明日の仕事は“学校であった怖い話”っていう昔のゲームを基に…」



幸子「へ?」

──────────



モバP「あぁ、大丈夫だ。142'sの面々が居るから」



幸子「い、いや…それ、今日やりましたよ…というか、今…」



モバP「ん…あぁ、確かにこの部屋は明日使う予定の部屋だな…セットもしてあるみたいだし」



幸子「プロデューサーさんが日付間違えてるんですよ! 本当にしょうがないですね!フフーン!」





幸子「皆も何か言ってやって下………え?」



モバP「??? 誰か居るのか?」ヒョイ

──────────



幸子「な、なんで誰も居ないんですか…」



モバP「いや、明日だからだろ…流石にこの部屋に前日入りとかしないぞ、普通…まぁ、輝子とかならどこに座っててもなんかありえそうだけどな」



幸子「ほ、ほら! か、カメラ置いてますよ!」



モバP「明日使うからな」



幸子「」



モバP「幸子がこの部屋に居たのはビックリだけど…ちひろさんに聞いて下見でもしてたのか?」



幸子「フ…」



モバP「で、明日は小梅とか輝子、乃々辺りは幸子が進行役としてひっぱってくれよ?」



幸子「フギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」



 ギュウウウウウウウウウウ



モバP「うおおおおぉ!? …なんだいきなり大声出して」

──────────



幸子「い、いやです!明日のお仕事キャンセルして下さい!」



モバP「何を急に」



幸子「なんでもです!お、お願いですから…明日まで一緒に居て下さい! や…ひぐっ」ボロボロ



モバP「」



幸子「お、お化けを煽るような、し、仕事取るから…怒ったんですよ…!お化けが!ぐすっ…」



幸子「ボク、死んじゃうんだぁ…桜に連れて行かれちゃうんだ…ひっく…」



モバP「幸子…お化けなんて居る訳ないだろ」



幸子「じゃあボクが今まで見て、話してたのは一体何だったんですか!」

──────────



モバP「うーん… あ!もしかしてアレか…?」



幸子「な…なんですか…ボクもうこの部屋嫌ですよ…」



モバP「ほら、アレだよ! アレ、見てみ」



幸子「」チラ



 『ドッキリ大成功!』





ちひろ「………」



小梅「ご、ごめんなさい…」



輝子「………………」(心の底から悪い事をしたと思っている顔)



乃々「も、もりくぼは…やめましょって…こんなのよくないと思うって言ったんですけど…あうぅ…」



美玲「う、ウチも悪いなって思ってたぞッ! ホントだからなッ!」



梨沙「あんなに驚くなんて、ちょっと…わ、悪かったわよ…」



菜々「最年長の私が止めておけば…」

──────────



幸子「……………」



モバP「……………」



幸子「……………ボクアシタノシゴトイヤデス」ギュー



モバP「何故締め直す」





小梅「さ、さっちゃんが現実逃避を…」ヒソヒソ



梨沙「小梅、言わないであげなさいよ…恥ずかしいのよきっと…」ヒソヒソ



輝子「な、無かった事にして…プロデューサーと…一緒に居たいんじゃないか…」ヒソヒソ

──────────



モバP「幸子は弄ってる時が一番輝いてるからなぁ…」



幸子「もっと別の方向で輝かせてくださいよ!」



小梅「あ………さっちゃん…」



幸子「むー…全く… …なんですか?」



小梅「あの…校庭に、あったのは…作り物、だから…大丈夫…」



幸子「でしょうね、もう…皆見えてたんでしょう?」



小梅「ふふ…私が、作ったんだよ…」



幸子「アレを!?」



小梅「わ、私が…CG担当…で、ホログラフィー…は、晶葉ちゃん…」

──────────



梨沙「あー…アレね…よくもまぁあんだけの物を作るわね、小梅…」



乃々「もりくぼは直視できませんでしたけど…むーりぃー………」



美玲「気持ち悪かったぞ…」



菜々「ホラー映画で見慣れてるからですか? 迫力ありましたね〜!」



幸子「???」



輝子「結局アレは、なんだったんだ…? 亡者がくっついてたような…」



幸子「え? え??」



小梅「じ、地獄を描いた、絵を…参考にした…ふふ…」

──────────



幸子「だ、だってボク…え?」





幸子「ぷろでゅーさーさんやっぱりぼくだめですよもういやですよこわいのやですからね」ガクガク



モバP「足ガックガクだな幸子…ほれ、おぶってやる」クル



幸子「うぅぅううぅうぅ……… …? プロデューサーさん、背中に何か…」



 『ドッキリ大成功!』



幸子「反省したように見せかけてえええええ!!!!! んがーーーーーーーーー!!!!!!」





小梅「(輝いてるなぁ…)」

輝子「(輝いてるなぁ…)」

梨沙「(輝いてるわねぇ…)」

乃々「(眩しいくらいですけど…)」

美玲「(輝いてるなぁ…)」

菜々「(幸子ちゃん輝いてますね…)」





おわれ



17:30│白坂小梅 
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