2015年09月01日

加蓮「蓮華の残火」

前作 モバP「余命ドッキリ」

・これはモバマスssです

・地の文がかなり多いです

・2日以内に完結させます

・モバP「余命ドッキリ」の続きになりますが、読んでいなくても大丈夫かと思います







SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1440698201







ガヤガヤガヤ





沢山の人の間を、縫うように抜けて先へ進む。

行き交う人々に揉まれ、熱気にフラつく。

汗も酷いし、息も切れそう。





それでも、前へ。





抜け切ったら、文句を言わなきゃ。

身体が弱いっていつも言っているのに。

こんな人混みの中を引っ張り回すなんて。

さっきから頭がクラクラしている。





そんな事を考えながらも、心の何処で嬉しいと感じていた。

こんな風に、無理やり手を引いてくれる人なんていなかったな、と。

身体の弱かった私を心配するあまり、周りの人は必要以上に気を遣いすぎていて。

卑屈になり過ぎかもしれないけれど、皆私を対等に扱ってくれていないように感じていた。





自分だって分かっていた。

自分の体調、体質の事なんて自分自身が一番良く理解している。

そのせいで色んな人に迷惑を掛けてしまっていた事も。

そのせいで沢山の楽しみを逃してしまった事も。





そして今は、私だけでなく…





ぶんぶんと頭を振り、暗い思考を叩き出す。

今はそんな事は考えてられない。

まずはなんとか無事にこの人混みを抜けて落ち着ける所へ。

その為にも。





繋いだ手を、更に強く握り締めた。



















八月も中旬。





熱気も更に増し、シャツの袖をこれでもかと捲り上げる無意味な行動の目立つ夏真っ盛り。

つい数週前まで、まだまだ寒いだの布団を仕舞うには早いだの言われていたのが嘘のよう。

昨晩の雨の湿気と相俟って、暑さは容赦無くビルを溶かそうとしている。

今日も今日とてセミは、飽きなど来ないと言う様に街を騒音で埋めていた。





まとわりつく様な夏の塊を駆け抜け、汗だくになりながらも涼しい涼しい事務所へ走っていたのは今日の午前。

アイドルとしてそこそこ売れ始めていた私は、変装用の帽子の暑さに恨みを向けつつ駅から猛ダッシュ。

そっちの方が目立つなんて考える程度の正常な思考力もこの熱気にやられていた。





まるでお城の様な事務所の自動ドアへ駆け込み、鬱陶しい暑さと一旦御別れ。

まるで先程とは別世界の様な冷たい空間にほっと一息。

周りの目を気にしつつ、シャツの胸元をパタパタと扇ぐ。

見れば私の後に入ってきたスーツ姿の男性や制服姿のアイドルも同じ事をしてして、少し笑ってしまう。













自分の所属している部署へ向かう為、エスカレーターに乗り込む。

ありがたい事に乗員は私一人。

これまた冷房の効いた箱の中で、先程以上に大きくシャツ内へ冷気を送り込む。





「あー、暑つかった…なんでこう夏って言うのは暑いのかな…」





思わず口に出してしまう。

周りに誰も居なくてよかった。

考えても無駄な事なのは分かっているけれど、そう思ってしまうのだから仕方ない。





どうせなら過ごしやすい秋か春あたりがずっと続けばいいのに。

あ、でもそれだとクリスマスも私の誕生日も来ないのか。

そんな馬鹿げた思考で時間を浪費していると、エレベーターのパネルは目的のフロアを示していた。





ウォォオン





静かにエレベーターの扉が開く。

走ったおかげで予定の時間よりかなり早く到着してしまったけれど、その分プロデューサーとお喋りしていればいい。

出来ればだけれど、どうせなら他のアイドルはまだ来てないといいな。

なんて、少し黒い願望を頭から叩き出す。









そう言えば、今日は近くの神社でお祭りをやるって聞いたし。

どうせならプロデューサーでも誘ってみようかな。

帽子をちゃんとかぶるって言えば、断られない…はず。





うーん、でも。





かなり暑いけど、体調は大丈夫か?とか。

日焼けと脱水症状に気を付けろ、とか。

こまめに水分補給しろ、とか。

そんな小言を言われるんだろうな。

もうそこまで身体弱くないのに。





でも、私の事をそこまで心配してくれるのは素直に嬉しい。

時々鬱陶しく感じてしまう時もあるけど、やっぱり嬉しい。

出来ればもう少しその心配性を治して欲しいけど。

さーて、その心配性の誰かさんは…





「…でも…どうし…なんです…?」





部屋の内からは、ちひろさんとプロデューサーの会話が聞こえてきた。

正確には、会話しているのが分かった。

内容は分からないけど、ちひろさんが何か尋ねてるみたいだ。





「一般的…胃…です…」





それに応じるプロデューサー。

い?位?何の会話なのか全く想像がつかない。

何かの順位?こないだの人気ランキング?





そう言えばそもそも、私が部屋に入らない理由も無かった。

何の会話なのかは、直接聞けばいいだけ。





「おはよーございます」





何時もと同じ様に挨拶をしながら部屋へ入る為、私はドアノブへ手を掛ける。

それと殆ど、同時だった。















「俺、もう長くないんです…」





呼吸が、止まるかと思った。

















冗談抜きで、身体も思考も一瞬止まっていた。

ドアノブへと掛けた手は動かせず、足も微動だにしない。

先程までの暑さも、少し強い冷房の寒さも、全てが吹き飛んだ。





「……え?」





ようやく動いた口からでたのは、扉の向こうにいる二人には聞こえていないであろう程度に小さな間の抜けた声だった。

頭は未だに回りきらない。

もしかしたら、考えたくないだけかもしれないけれど。





プロデューサーが発した言葉を、もう一度反復してみる。

分からない筈がない。

言葉の意味を、推測してみる。

理解出来ない筈がない。





つまり…





もう、黙って立ち竦んでなんていられなかった。











大きな音がたつのも気にせず、私は勢いよく扉を開く。

部屋の中で驚いているちひろさんを無視し、挨拶も無しに詰め寄る。





「ねぇ!どういう事?!」





誰かに聞かれているとは思っていなかったのか、プロデューサーは物凄く驚いていた。

確かに盗み聞きなんていい事では無いけれど、今はそれどころじゃ無い。

困ったような表情をして少し俯いてしまうプロデューサーに叩きつけたのは、一番肝心な疑問。





「ねぇ、長くないってどういう事なの?!」





二人はなかなか口を開いてくれない。

その状況が既に返事の様なものだと理解は出来ている。

それでも、きちんとした説明が欲しかった。





「い、何時もより来るの早いな、加蓮…」





確かに少し早いけど、こんな状況で何言ってるの?

話を無理矢理逸らそうとするプロデューサーを睨む。

やはり、私に聞かせるつもりの内容ではなかった様だ。

再び俯き、黙ってしまう。





何とも言えないモヤモヤが胸に立ち込める。

早く聞かせてほしい。

けれど、聞きたくない。

そのせいで急かす事も出来ず、苦しい空気を吸い続けた。











「…落ち着いて、聞いてくれるか?」





ようやく、ゆっくりと。

プロデューサーは顔を上げた。

その表情は当然ながら明るくは無い。





やっぱり、言わないで欲しい。

いや、だからってまだ決まった訳じゃ…



















「胃癌、なんだ…あと一年もないって、医者が…」





息が、止まった。



















聞き違いでも、勘違いでも無い。

頭の中では、沢山の思考が飛び交う。





癌について詳しい訳じゃないけれど、とても重い病気だとは知っている。

末期になると、もうどうしようも無い事も知っている。

でもそれが、まさか身近な人が患っているなんて思いもしなかった。





どうして黙っていたの?だなんて言えない。

言える筈が無い。

でも、だからって…

落ち着ける筈も、無い。





「ほんと…なの?ドッキリとかじゃ…」





実はよくありがちなドッキリで。

後ろでは誰かがドッキリと書かれたプレートを掲げていて。

プロデューサーかちひろさんが笑いながらネタばらししてくれて。

少し涙目で怒りながら、私はプロデューサーをぽこぽこと殴る。





もしそうなら、どれだけ幸せか。





最悪、夢オチでもいい。

聞き違いでもいい。

何でもいいから、否定して欲しくて…





二人は俯き無言のまま。





それが、返答だった。















誰も口を開かない。

沈黙が部屋を支配し続けている。

そんな状況が辛く、何かを言おうと頭を回す。

けれど、口から出たのは音を伴わない空気だけだった。





「申し訳無いけど、お前たちのプロデューサーとして働けるのも今年の末までだ…まぁ、引き継ぎ先は決まってるから、仕事に関しては心配しないでくれ」





違う、そんな事はどうでもいい。

仕事に関しては、正直全く考えていなかった。

そんな事を考える余裕なんて、今の私には無い。





「プロデューサーは…どうなるの?」





一番の疑問。

私が今、一番応えを知りたくて。

私が今、一番応えを聞きたくない疑問。

それをなんとか、言葉に出来た。





再びの沈黙。

きっと、答え難い質問だったんだろう。

私から聞いておきながら、自分の胃が痛くなってきた。











「なんとかギリギリまで仕事させて貰えるよう頼んだからな。そしたら残りは…そうだな、のんびり過ごすよ」





嘘だ。





今だって、とても辛そうな表情をしてる。

多分、のんびり過ごす余裕なんて残っていない。

その証拠に、ちひろさんはずっと俯いたままだった。





「プロデューサー…」





何か言いたい。

けれど、言葉は見つからなかった。

こんな時、どうすれば…













「…な、なーんつってな。ドッキリだよ、ドッキリ」





重い空気を打ち破ったのは、そんなプロデューサーの言葉だった。

さっきまでの苦しそうな表情なんて嘘だったかの様に、明るく笑う。

けれど、ちひろさんの表情は晴れないまま。





もう、いてもたってもいられなかった。





バタン!と。





勢いよく扉を開け、私は部屋を飛び出したーー













丁度来ていたエレベーターに乗り込み、下のフロアへ。

行く宛も思い付かず、ロビーのソファに沈み込む。





…はぁ、と一息。





一体今まで、プロデューサーはどういう気持ちで私に注意してきたんだろう。

あれ程何度も体調に気を付けろという小言を素気無くし続けてきた私を、どんな気持ちで見てきたんだろう。

本当は、自分の方がよっぽど辛かった筈なのに。

そう思うと、胸が痛くなる。





まだ現実を受け入れ切れていないからか、不思議と涙は出てこなかった。

周りには人がいるから、有難いと言えば有難い。

けれど、こんな状況でしっかりと理解をして冷静で、少なくとも取り乱さずに座っていられる自分に悲しくなる。





なんだか、何も考えたくない。

思考放棄して現実逃避したい。

何かがあるわけじゃないけど、取り敢えずこの苦しさから逃れたい。

泥に沈んでいく様に、思考と意識を投げ出す。





その、直前だった。





私はふと、とある歌詞を思い出した。













歌い慣れた、私の歌。

彼が私に与えてくれた、初めての歌。

諦めていた私の夢を叶えてくれた彼からの、大切な歌。





神様がくれた時間は溢れる。

あと、どのくらいだろう?





悲劇のヒロイン気取りなわけじゃないけど、この歌は私だからこその歌だと思っている。

私の事を理解しきり、私の魅力を最大限に引き出そうとして作られたこの歌。

歌う度に、今の私は別にそこまで病弱じゃないんだけどなと思ってしまう。

けれど、それでも過去の経験からこの歌詞は痛い程に分かる。





明日が絶対来るとは限らなくて。

また明日ね、が痛くて。

夢を諦めるくらいには弱った心で送る日々。

それが、今のプロデューサーなんだって。





あんなプロデューサーの目なんて、初めて見た。

これからプロデューサー自身がどうなるのかを聞いた時の目。

まるでもう何も考えられないかの様な、空っぽな目。

もしかしたら、初めて会った時の私もあんな目をしていたのかもしれない。





だとしたら、今の私は…

今の私に、出来る事は…













ぶーん、ぶーん。





ポケットの中で、先日替えたばかりのスマホが震えた。

ディスプレイに表示されたのは、ラインの通知。

パスワードを入力し、アプリを開く。

トーク欄の一番上に表示されていたのは、プロデューサーの名前。





すぅ、はぁ…





深呼吸をして、心を落ち着けた。

十秒ほど指を迷わせ、覚悟を決めてトークを開く。





『今何処にいる?さっきの件、ちゃんと説明したいんだ』





投げ出したくなる気持ちをなんとか抑えた。

ここで逃げ出してどうする?

それで私は、後悔しない?

現実と向き合うのが怖いからって、それでいいの?





大きく息を吸い込み、指を動かす。

後悔はもうしたくない。

勝手に諦めて、逃げたりなんてしない。





だから…少しだけ、わがままに付き合ってもらってもいいよね?

















「すまないな、待たせちゃったか?」





「ううん、ついさっき着いたとこ。そんなに走らなくてもよかったのに」





日も暮れ始めの夕刻。

長い影を伸ばし、プロデューサーは此方へ片手を挙げた。

風が吹き、日は傾いているとは言えやはりまだまだ暑い。

パタパタとシャツを扇ぎ、袖口で汗を拭う。





待ち合わせ場所はとある神社の入り口。

人が沢山通る鳥居前だったけれど、お互い直ぐに気付けた。

なんで神社なのに人通りが多いかと言えば、今日はお祭りをやっているから。





「ほら、折角来たんだから色々まわろう?」





もしかしたら、プロデューサーは既に色々と無理をしている状態なのかもしれない。

実は、暑い中走って来たのもかなり辛かったのかもしれない。

今も痛みに耐えて、こうして笑顔を向けてくれているのかもしれない。





我儘に付き合って貰っちゃってごめんね。

でも、大切な時間を少しでも無駄にしたくないから。

まだ割り切れてなんていないけど、それでも。

二人の時間を、素敵なモノにしたいから。





今はアイドルとプロデューサーなんて関係は忘れて。

出来る限り明るく、笑顔で。





私は、手を伸ばした。













「いやー、祭りなんて久しぶりだったなぁ」





射的や金魚すくい。

焼きそばにたこ焼き。

祭りの王道とも言える露店を一通り巡り、神社の奥の階段で一息つく。





参加し始めた時間自体が遅かったからか、少しずつ人足は減り始めていた。

勢いで誤魔化していた疲れを取る為に、スカートが汚れるのも構わず石段の上に座る。

数段しかない石段は、あまり座り心地の良いものではなかったけれど。





「ひっぱりまわして悪かったな。ついテンションあがっちゃって。暑かっただろ?」





「夏だから。暑くて当然だよ」





さっきまではナチュラルに手を握れていたのに、今更になって恥ずかしくなり目を逸らす。

暑いと言うより、なんだか暖かいって感じだったな。

握っていた手の温もりが、まだ残っている気がする。

これもまた、夏だからなんて言われたらそれまでだけど。





どうせなら、浴衣で来たかったな。

前に撮影で着た事はあったけど、その時はカメラマンさんもいたし。

それ以前に、仕事とプライベートじゃ全然違うし。

なんて、少し贅沢と我儘が過ぎるかな。

あの時もあの時で楽しかったし。













「…な、なぁ、加蓮。今日の事なんだけど…」





ふと、プロデューサーは此方へ声を掛けた。

さっきまでの明るいトーンとは違い、苦しそうに発した声。

まるで悩んだ末に絞り出した様な、そんな声。





見れば、お腹に手を当てていた。

やっぱり、痛いのかな。

こうやって普通に会話してるだけでも辛いのかな。





…逃げるのも、ここまでかな。

そろそろ、向き合わなきゃいけないみたい。

でも、それなら。

あと、ほんの少しだけ…





「ね、ねぇプロデューサー」





出来る限り明るく、私は言葉を遮る。

不自然だと思われたっていい。

兎に角、あと少し。







「さっきの射的の景品にさ、線香花火があったよね?」





「あぁ、残念賞だったけどな。簡単そうに見えて難しいもんだよ」





そう言って抱えたビニール袋をガサゴソと漁り、中から線香花火の入った細長い袋を取り出す。

結局景品に当たったものの落とす事が出来ずに貰った残念賞だったけれど、今はお菓子やぬいぐるみよりもありがたい。





「せっかくだし、ここでやっていかない?線香花火なら、多分何も言われないと思うよ?」





「構わないけど、時間は大丈夫なのか?」





一体高校生を何だと思ってるの?

まったく、プロデューサーはいっつもそうやって心配して…

そこまで考えて、言葉を飲み込んだ。





「…もちろん、大丈夫だよ。ライターはある?」





「あるよ、ほい」





カチッ、カチッ





何度か失敗し、3度目に要約火を出す事に成功。

なんでこう、最近のライターは固いんだろう。

いや安全面を考えての事なんだろうけど、手が疲れてたら着けられないんだろうな。





ジュッと音がして、線香花火の先端に着火する。

競うわけでも無いけれどスタートを殆ど同時にしたくて、素早くライターをプロデューサーへ返す。

なんとなく意図を読み取って貰えたのか、プロデューサーも素早く手に持った線香花火へ火をつけた。











パタパチ、パタパチ





小さいながらも鮮やかに、線香花火が光を散らす。

大きな打ち上げ花火よりも、こっちの方が私は好きかな。

なんでだろ?





「花火なんて、これも懐かしいなぁ…」





「おっさんくさいよプロデューサー。他のアイドルと花火とかってしなかったの?」





「大学以来してなかったからなぁ。時間ってのはほんと早いもんだ」





時間は早い、かあ。

今のプロデューサーには、それが嫌と言うほど理解出来てるんだろうね。





…私が先に泣きそうになっちゃって。

線香花火をつまんでいる反対の袖で、スッと目元を拭う。

辛いのはプロデューサーなんだって分かっている。

それでも、だったら。

私の気持ちは、どうすればいいの?









「…ほーんと、なんで楽しい時間って一瞬なんだろうね」





ぽとっ、と。

先程まで精一杯輝いていた線香花火が降っていった。

そのまま光は衰え、地面に飲み込まれてゆく。





どうして、輝いているものは直ぐに消えちゃうの?

とうして、輝いている時間は直ぐに終わっちゃうの?

どうして…私の大切なモノは、直ぐに…





「…どんなに。どんなに時間が短くてもさ、その煌めきが無かった事になっちゃうわけじゃないだろ?」





「それは…そうだけど…」





誰かの記憶に残っていればいい?

そんなのは小説の中のヒロインだけで充分。

線香花火は儚いから良いだなんて言うけれど、それは人の命とは違う。

儚い方がいいなんて、そんな筈は無い。

そんな事は、プロデューサーだって分かってるでしょ?













「まだ…時間はまだあるんだから。これから沢山の夢を叶えてけるさ。全部終わって振り向いてから、その一瞬が儚いかどうか確かめればいいんじゃないか?」





「…プロデューサー…私は…」





プロデューサーの持っていた線香花火も、既に光を失っていた。

それでも確かに、綺麗だった。

さっきまでの短い時間、しっかりと輝いていた。

時間の長短なんて、関係無くて…





「時間が限られているからって焦る必要は無い。ゆくっりでいいんだ。大切に、精一杯やればそれでいいんだよ」





…ふふっ。

やっぱり、プロデューサーは変な人だね。

ほんと。

おかしくて、涙が出そう。





そして、うん。

そんな人だから、私は…















「そうだ、プロデューサー…」

「あ、そうだ加蓮…」





声がかぶる。

目が合い、お互いに笑ってしまう。

まったく、こんな時までプロデューサーは。

なんて、私が言えた事でもないけど。





「実はね、私ーー」

「俺、実はなーー」





祭りの喧騒と、蓮華の香りが流れる。





夏の夜の物語は、もう少し続きそうだった。









おわり





20:30│北条加蓮 
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