2015年10月19日

智絵里「魔法少女」かな子「ショコラ・ティアラ!」


ーー柵に閉ざされた、とある館の奥。



ーーさらに柵と記念碑と、茂みと霧を越えた奥の奥。





ーーそこには、三匹の豚の彫刻と共に、はるか昔に封印された黒魔女がいて。



ーー人々の欲望を手繰り寄せながら、復活の時を待ち望んでいた。



ーーそして。



ーー今日もまた一人、魔女の甘い罠に囚われた人間が……餌として館に訪れる。





ゴロゴロゴロ



ピシャアアアッ





モバP「とときィン……かな子ォゥ……10連ガチャアアア……!!」ヨロヨロ



黒魔女ちひろ(以下ちひろ)「おやおや……よく来てくれましたね」ニコニコ



ちひろ「小梅ちゃん、この方に紅茶でも出してあげなさい」



小梅「う、うん……!」トタトタ





トポポポポポ



カチャ





小梅「ど、どうぞ……!」





ちひろ「……さて。わざわざこんな辺境の館に、ようこそおいでくださいました」ペコ



ちひろ「はるばるこのような所にいらっしゃった理由など、大方予想はつきますが……」



ちひろ「貴方は、一体どのような望みを持ってこの館に?」ニコ







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モバP「……」グビィ



モバP「……ジュエルぅ」ギョロリ



モバP「ジュエル、じゅえる、ガチャ、かな子! とときん!!」



モバP「もっと! もっとだ!! もっとジュエルがなきゃSSRが引けない!!」バサアッ



モバP「ハロウィンガチャ! 期間限定!! もう時間がないんです!!」



モバP「金はある! よこせ!! スタージュエル!! もっとガチャを引かせろオオオオオッ!!!」バサッバサッバサアッ





ちひろ「ひぃ、ふぅ、みぃ……」ペラッペラッ



ちひろ「これはまた、すごい大金を……」ペラッペラッ



ちひろ「……ふふっ。その心意気、気に入りました♪」ニコッ



ちひろ「たくさんありますから、いっぱい食べて下さいね」スッ





ジャラララララララララ





モバP「ーーーーーーっ!!!」バッ





ボリッ



ガリガリ



ムシャア





モバP「うはっ! ほし、ホシぃ!!」ジュウウウウウウウウ



モバP「スター、スター!! うぼえっ、SSRぅ!!!」ボダッボダッボダッ







小梅「ふわぁ……!!」キラキラ



ちひろ「ふふっ……さあ、小梅ちゃん」







ちひろ「たっぷり……遊んできてね」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





〜10月31日 美城学園〜





マストレ「よーし三村! 次、跳んでみろ!!」



かな子「は、はいっ!! うぅぅわああああああああ!!」ドタドタドタドタ





ドンっ





ガシャーン





かな子「あうっ」ベチーン!





マストレ「何をやっている三村ァ!!」クワッ





男子A「見ろよアレwwベチーン! だってよwww」



男子B「デブが無理すんなwww」



男子S(明らかにワンサイズ下のGパン試着させて更衣室の入口をガンガン叩きたい)





かな子「うう……」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





マストレ「今日はここまでっ!!」



「ありがとうございました!!」





かな子「はぁ……今日も皆に笑われちゃった……」



「かな子ちゃん! 大丈夫?」



かな子「あっ……智絵里ちゃん」



智絵里「さっき、転んだ時にすごく大きな音が出てたけど……大丈夫? ケガしてないかな?」オロオロ



かな子「う、ううん! 大丈夫だよ! 転んじゃっただけでケガはないよ!」



智絵里「そうなんだ……良かった……」ホッ





かな子(ーー私、三村かな子! 美城学園に通う女子高生です♪)



かな子(ーークラスメイトで親友の智絵里ちゃんと一緒に楽しい高校生活を過ごしているんだけど……)



かな子(ーー私はスポーツもダメダメで、その……スタイルだってあんまり良くないって皆に笑われていて……)



かな子(ーーでも、そんな私でも、たった一つだけ得意な事があるんです!)





智絵里「わ、私もさっきの体育の授業、全然ダメで……うう……」



かな子「智絵里ちゃん……」



かな子「……よし!」ゴソゴソ



智絵里「?」



かな子「じゃーん! 今日はハロウィンだから、かぼちゃのクッキーを作ってみました!」



智絵里「かぼちゃ?」



かな子「うん! かぼちゃの優しい甘味が、とっても心を落ち着かせてくれるんだよ♪」



智絵里「わあ……!」



かな子「一緒に食べよう? 嫌な事は、美味しいお菓子を食べて忘れちゃおうよ!」



智絵里「い、いいの?」



かな子「うん! 美味しい物は友達と一緒に食べると、もっと美味しくなるんだよ♪」



智絵里「そっか……じゃあ、いただきますっ」パクッ



かな子「召し上がれ♪」





かな子(ーー私の、たった一つの長所……それは、美味しいお菓子を作ること!)



かな子(ーー食べる人の事を考えて、美味しくなるように心をこめて)



かな子(ーーそして、大好きな家族や友達と一緒にお菓子を食べる)



かな子(ーーそしたら、今日一日の嫌な事が全部なくなって、とっても幸せな気持ちになれるの!)





かな子(ーーえっ? スタイルが良くならない理由はそれじゃないかって?)



かな子(ーー……)







かな子(ーー美味しいから大丈夫だよ!)





智絵里「……おいしい……!」ホワァ



かな子「えへへ、良かった♪ それじゃあ私も!」パクッ



かな子「……ん〜、あま〜い♪」ニコニコ



智絵里「も、もう一枚もらってもいいかな?」



かな子「うん、いいよ! どうぞ……」チラッ





かな子「……あれ?」





???「……」グデー





智絵里「? かな子ちゃん、どうしたの?」



かな子「えっ? あ、ええと……」



かな子「……あの道の端っこに、何かいるなー……って」ピッ



智絵里「あの道……」チラ





???「マホーショージョサガスノメンドクサーイ」ダラー





智絵里「ホントだ……何か言ってるように聞こえるね」



かな子「……ちょっと近くで見てみる?」



智絵里「う、うん……」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





かな子「……これは……ええと……」



智絵里「……白猫?」





???「きゅっぷい」





かな子「こんな人みたいな顔した猫、見た事ないけど……」ヒソヒソ



智絵里「私達の前を歩いてた人達は、みんな知らんぷりしてたね……」ヒソヒソ





???「ん……お?」ムクリ



かな子「あ、起きた」



???「ん、おはよ。もしかして君たち、杏のこと見えてるの?」



かな子「見えてるって……」



智絵里「は、はい。見えてます……?」





???「おけおけ、まずは第一条件クリアね。キミ達何かお菓子持ってない? 手作りのやつ」ヨッコラセ



智絵里「手作りのお菓子……かな子ちゃん?」



かな子「えっ? さ、さっきのかぼちゃクッキーでいいのかな……?」ゴソゴソ



かな子「これで良ければ……」スッ





???「ありがと。いただきます……」パクッ



???「……」モグモグ



???「!!!」カッ





ガバッ





かな子「うひゃっ!?」



智絵里「わっ!?」





???「文句なしの合格だよ! ここで寝ていて正解だった!」



???「キミさ、名前はなんて言うの?」



智絵里「かな子ちゃんの事?」



かな子「わ、私? 私は三村かな子だけど……」



???「オッケー、三村かな子ね」





???「杏はね、杏ベぇって言うんだ」



杏ベぇ「杏ね、かな子ちゃんに頼みたいことがあるの」











杏べぇ「杏と契約して、魔法少女になってよ!」











かな子「……魔法……」



智絵里「……少女……?」



「「…………」」











「「ーーーーーえええええええええええええええっ!!?」」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



かな子(ーー杏ベぇ(アンベェ)と言っていた猫ちゃん…?は、私に『魔法少女になって』と言いました)



かな子(ーーあんまり突然のことだったから、何を言っているのか分からなくて……)



かな子(ーーだから、とりあえず私の家に連れて行って、そこで智絵里ちゃんと一緒にお話を聞くことにしました)



かな子(ーーあと、『飴が舐めたい』と杏ベぇが言っていたので、とりあえず一番簡単なべっこう飴を作りました)





〜三村宅〜





杏ベぇ「んー、うまうま」コロコロ



かな子「えっと……杏ベぇちゃん?」



杏ベぇ「おっと、ゴメンゴメン。魔法少女の説明だったね」ゴロン







杏ベぇ「『魔法少女』ってのはね、悪の手先と戦う正義の味方のことだよ」



杏ベぇ「と言っても別に、敵とか使い魔とかと殴り合えってわけじゃない」



杏ベぇ「杏の言う『魔法少女』って言うのは、美味しい魔法のお菓子を生み出して悪者とか傷ついた人の口にぶち込んで」



杏ベぇ「まあ、そんな感じで『暴力を使わずに』世界を平和にしていく子達のことだよ」





かな子「な、なるほど……」



かな子(ぶち込むって言った……)



智絵里(ぶち込んだ後どうなるのかな……?)





杏べぇ「説明終わり。何か質問ある?」コロコロ



かな子「特に無い、かな……? 魔法少女がどんなものかは、大体わかったよ……」



かな子「本当に楽しそう。暴力を使わずに世界を平和に出来るなんて、すごく素敵だなって思う」



杏ベぇ「ん、分かってくれて良かった良かった」



杏ベぇ「いやー、魔法少女の素質がある子を探すのに待ち伏せ戦術を使って良かったね。歩き回るの疲れるもん」ゴロン



杏ベぇ「魔法少女確定の逸材が一人に、候補者一人……もう杏はこれで営業しなくていいよね」ゴロンゴロン





かな子「わかった、けど……」





杏べぇ「……ん?」



智絵里「かな子ちゃん……?」



かな子「私なんかで……本当にいいの?」



杏ベぇ「『なんか』って?」





かな子「だって私、全然動けないよ? スタイルだって良くないし、その……太った魔法少女なんて、見苦しいだけじゃないかな……?」



かな子「魔法少女ってみんな、ちっちゃくて細くて可愛い子がなってるし……」



かな子「どっちかって言うなら、私なんかより智絵里ちゃんの方が向いてるんじゃないかな……?」チラ





智絵里「えっ? わ、私? そんなこと無いよ……!」オロオロ



杏ベぇ「……言いたいことはなんとなく分かったよ。ま、確かに智絵里ちゃんにも素質はあるね。あとはお菓子作りがどれだけ出来るか……にもよるけどさ」



かな子「でしょ? だったら、私より智絵里ちゃんを……」







杏ベぇ「でもさ」







杏ベぇ「杏は『かな子ちゃんだからこそ』魔法少女になって欲しいんだよ」



杏ベぇ「……さっきのクッキーで、杏の意志は既に固まった。『この子しかいない』って思ったんだよ」









かな子「……クッキーで? それってどういうーーー」キャアアアア



かな子「ーーーえっ?」バッ



智絵里「悲鳴……!?」バッ





杏ベぇ「おっと。……今どこにいる? お、すぐ近くにいる? 珍しいじゃん」ボソボソ



杏ベぇ「うん、そうそう。確定と候補1人ずつ。見学させていい? オッケーありがとね。それじゃ」ボソボソ





杏ベぇ「……ふぅ」



智絵里「だ……誰と話してたんですか?」



杏ベぇ「現役魔法少女の一人だよ。たった今起こった事件を解決しに行ってる」



杏ベぇ「今向こうに掛け合って、2人の見学を許可してもらったんだけどさ……」ヨッコラセ



杏ベぇ「安全な所で見せてあげるからさ。魔法少女がどんなものか、一度見てみてくれない?」





杏ベぇ「説明するより、見た方が分かると思うよ。杏がかな子ちゃんを選んだ理由」





かな子「……」





〜美城学園・屋上〜





シュンッ



かな子「テレポートなんて使えるんだね……わっ!」ドテッ



智絵里「かな子ちゃん大丈夫?」ポテッ



杏べぇ「ケガは無いみたいだね。あとアレが今回の敵」ピッ



ちえかな「「……?」」スッ



ちえかな「「!!?」」







モバP(タイラントっぽいものと化してる)「ドドギィィィィィィ!!」



「きゃああああああああっ!?」



「ゾンビだあああああっ!!?」





菜々(タイラントっぽいものと化してる)「ウ゛ッザミ゛ィィィィン!!」ギャハァ



みく「ナナちゃん!?」





ガブッ





みく(タイラントっぽいものと化してる)「ニ゛ャア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」



卯月「みくちゃあああん!?」





ガブッ





卯月(タイラントっぽいものと化してる)「ガンバリ゛マ゛ズゥゥゥゥゥゥゥゥ」



美穂「卯月ちゃーん!?」







小梅「ふふ……ハッピー……ハロウィン……感染が……連鎖して……みんな、ゾンビになあれ……」ニコニコ





かな子「な……何……あれ……」



智絵里「ひどい……!」



杏ベぇ「安心しなよ、魔法少女がもうすぐ到着するからさ。……ほら」





「そこまでです!」スタッ





小梅「えっ……?」





「人々に不幸を振りまくことは、この私が許しません!」キッ



「この魔法少女アップル☆アイリが!」











十時愛梨「世界の平和を守ります!」ビシッ













かな子「あれが、魔法少女……?」



智絵里(大きい……)



杏べぇ「そだよ。そして今から見せるのが魔法少女の戦い方。よく見ててね」





小梅「な、なあに……? 誰だか……知らないけど……人類総ゾンビ化計画の邪魔……しないで……」



小梅「あの人が……復活するための……絶望エネルギー……?は、どうでもいいけど……せっかく……私の夢を……叶えてくれる……人に……出会ったんだから……」



小梅「じゃ、邪魔、するなら……やっちゃえ、モバPゾンビ……!」





モバP「ア゛イ゛リ゛ィィィィッィイ゛イ゛イイイイ゛!!」ゴッ





愛梨「……」スゥッ



愛梨「ーーバター、アップル、グラニュー糖」トン



愛梨「ラム酒とレモンと伸ばしてパイシート」トントン



愛梨「ビスケット砕いて投げキッス」トントントトンッ



愛梨「オーブン余熱、タイマーセット」スッ



愛梨「チンと鳴ったら仕上げはシナモン!」set







愛梨「ーーーお菓子の魔法『アップルパイ』」



愛梨「ーーーーー召し上がれっ!!」







カッ







モバP「ア゛イ……?」ヒュッ





スパアアアアアアアンッ





モバP「ウワアアアアアアアアアアッ!?」ヒュウウウウウウ





ドサッ





小梅「あの女の人が何か唱えたら……指先にアップルパイが出てきて……」



小梅「それが物凄い速さで飛んできて……モバPゾンビの顔に当たって……ふっ飛ばした……?」





かな子「あれは……アップルパイ!?」



智絵里「あの巨体を50mは飛ばした……!」



杏ベぇ「それだけじゃないよ。あのお菓子を食べた人は……ほら」ピッ





モバP(正気)「う、ううん……俺はいったい何を……?」ペロ



モバP「お、何だこの顔についてるのうめえ」モグモグ



モバP「やめられない止まらない!」ポチャッ





智絵里「か、怪物が人間に戻ってる……!」



かな子「すごい、これが魔法少女の力なんだ……!」



杏べぇ「そーだよ」







杏べぇ「杏と契約して得る力は、つまり『治癒』『沈静』『状態異常からの回復』」



杏ベぇ「お菓子を通して、身体により起こるあらゆる悲劇から人を救う」



杏ベぇ「少なくとも、傷を残さずに平和を守ることが出来る。そんな魔法だよ」







小梅「な……何なの……」ワナワナ



小梅「み、みんなやっちゃえ……!」ビッ





菜々「ミ゛ミ゛ミ゛ーン!!」ガバッ



愛梨「『レモンパイ』!!」ヒュン



パアンッ



菜々「ぷはっ!? あ、あれ?」ポッテリ





みく「ンニャアアアアアア!!」グワッ



愛梨「『チェリーパイ』!!」ビュッ



スパアンッ



みく「うにゃっ!? あ、ナナちゃんが元に戻ってる!」ムチッ





美穂「やった、皆がもとに戻っていってる!」





愛梨「あと一人! 行きますよ! 『ピーチパイ』!」カッ



ヒュッ



卯月「……」







ベチャッ







愛梨「決まりまし……あれ?」



愛梨「……ええっ!?」







卯月?「……ぴにゃあ」







かな子「あれ? 効いてない!?」



智絵里「食べさせたら元に戻る筈じゃ……」



杏ベぇ「……しまった。愛梨の時に出てくるなんて……」



智絵里「ど、どういうこと……?」





卯月?「ぴにゃ、ぴにゃ」モグモグ





杏ベぇ「さっきも話したと思うけど、愛梨たち魔法少女の使う魔法は、悪を解消し人を救う魔法」



杏ベぇ「つまり、『悪』でないものには効果が無いんだ」



杏ベぇ「あれは『悪』じゃなく、『悪の力』を受け入れてなお『悪』に染まらなかった、生物として正しい『欲』の形。ナチュラル・ボーン・ビースト」



杏ベぇ「つまり……」







杏ベぇ「『無邪気な獣』なんだ」







卯月(ぴにゃ)「ぴにゃああああああああっ!!」





    N  B  B

ーーー『無邪気な獣』Count.1



ーーー『ぴにゃこら太』





かな子「つまり……どういうこと?」



智絵里「元々『悪』じゃないから更生させようがないってこと?」



杏ベぇ「その通りだよ智絵里ちゃん」



杏ベぇ「こうなったらもう、目的は『更生』じゃなくなる。獣に説教しても、それがナチュラルな生き方なんだから変えようがない」



杏ベぇ「だから、NBB相手には目的を切り替える。『更生』ではなく『御馳走』。つまり浄化するためにお菓子を食べさせるんじゃなく、ただ単に満腹になるまでお菓子を食べさせるんだよ」



かな子「なるほど……!」



杏ベぇ「……だけど」





愛梨「い……いっけぇ!『カスタードパイ』!」ヒュッ



卯月(ぴにゃ)「ぴにゃっ!」パシッ



モグモグモグモグモグ



卯月(ぴにゃ)「……ぴにゃっ」ゲフッ



卯月(ぴにゃ)「ぴにゃ、ぴにゃっ!」モットモット





愛梨「……ハァ、ハァ……」



愛梨「……も、もうダメ……」クッ



愛梨「……あっつうぅい……!!」ヌギッ





智絵里「ひゃっ……!?///」



杏ベぇ「……やっぱり……! 愛梨の魔法は強力だけど、使うごとに体に熱が溜まっていくデメリットがあるんだ! 長期戦に向いていない愛梨じゃ、もう戦えない!」



かな子「ど、どうするの!? あの怪物は誰も倒せないの!?」





杏ベぇ「……方法は二つだよ。一つは、他の魔法少女の助けが来るのを待つこと。デメリットは、言うまでもないよね」



杏ベぇ「……もう一つは……」







杏ベぇ「かな子ちゃん」



杏ベぇ「君が契約して魔法少女になり、あの怪物に『御馳走』してやることだ」





かな子「私が……魔法少女に……?」



杏べぇ「そうだよ」



智絵里「かな子ちゃん……!」





かな子「……でも……」



杏ちえ「「?」」



かな子「私で、いいのかな?」





かな子「ううん、助けなきゃいけないってことは分かってるの。助けを呼んでる間に多くの人が困っちゃうなら、私がやらなきゃいけないって思うのは分かってるの」



かな子「でも……」





かな子「私、笑われたりしないかな?」



かな子「魔法少女になってみんなの前で戦ったら、『なんだあいつ』って、馬鹿にされないかな?」



かな子「……怖いの」



かな子「だって私、かわいくないもん……!!」







智絵里「……」



杏ベぇ「……ま、無理強いはしないよ。杏もそーゆー無理矢理なの性に合わないしね」



杏ベぇ「残りはあのNBB一匹。被害が広まったとしても、後続に頑張ってもらえば助けられないわけじゃない」



杏ベぇ「いいと思うよそれで。なりたいなりたくないは人の自由なんだかーーー」











智絵里「ーーーそんなことありませんっ!!!」





杏ベぇ「ーーーら?」



かな子「ち、智絵里ちゃん?」



智絵里「……」ツカツカツカ



智絵里「……」ギュッ



かな子「……?」







智絵里「私、かな子ちゃんが可愛くないなんて思いません」



智絵里「すごく優しくて、ほわほわしてて……笑った顔がすごく幸せそうで、可愛いなっていつも思ってるんです」



智絵里「……それに」





智絵里「私……かな子ちゃんにはいつも助けられてるんです」



智絵里「私が失敗しちゃったときも、くじけそうになったときも」ジワ



智絵里「いつも、美味しいお菓子で励ましてくれたから……」ゴシ



智絵里「……そんなかな子ちゃんの優しさの詰まったお菓子があったから、ずっと前を向いて行けたんですっ」





かな子「智絵里ちゃん……」



智絵里「さっき……杏ベぇちゃんは言ってました。魔法少女は『人を傷つけずに平和を守る』って」



智絵里「ーーーだったら!」



智絵里「かな子ちゃんに資格がないわけないんですっ! かな子ちゃんこそ、魔法少女になっていい、優しい心を持ってる人なんですっ!」



智絵里「誰もかな子ちゃんのこと、馬鹿にするわけがないんですっ。かな子ちゃんのお菓子を食べたら、皆がかな子ちゃんのことをバカにしないで認めますっ!」



智絵里「かな子ちゃんは優しい心を込めて、お菓子を作れる人だから……美味しいお菓子は優しい人にしか作れないんだから……!」



智絵里「美味しいお菓子は、それを証明してくれるから……!!」

















智絵里「ーーーーー美味しいから大丈夫ですっ!!」

















かな子「ーーーーーーーーーーっ!!」



杏ベぇ「……」フッ



杏ベぇ「……親友がここまで言うんだからさ。自信もってみても、いいんじゃない?」ニヤリ



かな子「……っ」ポロポロ



かな子「う、んっ……ありが、とう、智絵里、ちゃん……!」グシグシ



かな子「わたし、魔法少女になる……」



かな子「魔法少女に、なって……!」











かな子「ーーーかわいい魔法少女になって、みんなを幸せにしてみせる!!」











杏ベぇ「……いいよ。さあかな子ちゃん、おいで」ニッ



杏ベぇ「杏の手をとって。そう、それでいい」ギュ



杏ベぇ「ーーーさあーーー」















杏ベぇ「ーーーーーパーティーの時間だよ」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





小梅「……ど、どうしよう……」



卯月(ぴにゃ)「ぴにゃっ、ぴにゃあ!」オカシクレクレ



小梅「こんなの……ゾンビじゃない……ただの穀潰しの役立たずが……一匹だけ残っちゃって……」



小梅「せめて……誰か噛んでくれれば……またゾンビ計画を進められるのに……!!」





卯月(ぴにゃ)「ぴにゃ、ぴにゃ!」クレクレ



卯月(ぴにゃ)「……ぴにゃあ」クレナイナラ・・・・・・





ガシッ





美穂「きゃああああああっ!?」グイッ



卯月(ぴにゃ)「ぴにゃああああああああっ!!」ニンゲンヲタベテヤルー!





小梅「や……やった……!」



美穂「やめて卯月ちゃん! 正気に戻って!」



卯月(ぴにゃ)「ぴいいいいいにゃあああああああ!!!」イタダキマース!







「そこまでですっ!!」







卯月(ぴにゃ)「……ぴにゃ?」クルッ



小梅「えっ……?」クルッ





「人を不幸にすることは、私が絶対許しません!」



「皆まとめて……」











かな子「この魔法少女ショコラ☆かな子が幸せにしてみせますっ!!」キラーン













小梅「な……何なの……折角……でくの坊が……やる気になったのに……」ギロ



小梅「あ……あんなやつ……食べちゃえ……!!」ビシッ





卯月(ぴにゃ)「ぴにゃああああああああっ!!」





かな子「……」スウッ







かな子「ーーかぼちゃ、小麦粉、バターは無塩」



かな子「わたをとったらレンジでチン」



かな子「バターは室温でやさしく溶かして」



かな子「小麦粉、卵と一緒に練っちゃう!」



かな子「オーブンで焼いたら出来上がり!」



かな子「かぼちゃの甘みがとってもやさしい!」set







かな子「ーーーお菓子の魔法『かぼちゃクッキー』」



かな子「ーーーお腹いっぱいーーー」



かな子「ーーーーー召し上がれっ!!」







カッ







卯月(ぴにゃ)「!」クワッ



卯月(ぴにゃ)「ぴにゃっ!」バクッ



卯月(ぴにゃ)「ぴにゃ、ぴにゃぴにゃぴにゃぴにゃぴにゃぴにゃぴにゃぴにゃぴにゃーーー」バクバクモグモグ



卯月(ぴにゃ)「ぴにゃあああああああああああーーーーーーーーーーっ!!♪」ドドドドドドドド







ドカーン









智絵里「……煙が……!」ゴオッ



杏べぇ「『やったか!?』は禁句だからね」ジイイ







シュウウウウウウ……







卯月(ぴにゃ?)「……」シュウウウウウ





杏ベぇ「……」ゴクリ



智絵里「……」ドキドキ











「……お」







卯月「お腹、いっぱいですー……♪」ドプゥゥゥゥゥン







智絵里「……っ!!」パアッ



智絵里「やった! やったよかな子ちゃん!」



杏ベぇ「すごい才能だ……これで杏の給料は急上昇、高等遊民間違いなしだね!!」







かな子「えへへ……」テレテレ





かな子(ありがとう、2人とも)



かな子(ありがとう、智絵里ちゃん。智絵里ちゃんが信じてくれたから……私、ちゃんと魔法少女できたよ)



かな子(ありがとう、杏ベぇちゃん。杏ベぇちゃんのおかげで……私、魔法少女になれたんだよ)





かな子(ありがとう……)



かな子(ほんとうに、ありがとう……!!)ニコッ





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





美穂「す、すごい……卯月ちゃんまで、もとに戻すなんて……」



小梅「お、おぼえてろー……!」スタコラサッサ



美穂「……主犯格っぽい人が逃げてく……」





愛梨「あっつーい…!」ヌギヌギ



美穂「わ、わーーーーっ!? 誰だか分かりませんけど脱いじゃダメですよーーーーーっ!?」アタフタ





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





〜翌日〜





ベテトレ「貴様らアッ!! なんだその体型はアッ!!」



菜々「な、ナナ達にも……」ムッチャーン



みく「よく分からないにゃ……」モッチャーン



美穂「……」アセッ ←1人だけゾンビ化を免れていたため体型はそのまま



卯月「頑張ります!」ムッシャムッシャ



ベテトレ「特にお前だ島村ァ!! そして今食うなァ!!」



美穂「……卯月ちゃん。それどこのお菓子?」



卯月「これですか? これはかな子ちゃんが作ってくれたお菓子です!」モッシャモッシャ



みく「へー……みくにも一個」スッ



ベテトレ「だから食うなァ!!」バシッ



ベテトレ「安部! 前川ァ! 島村ァ! 今日は体育の時間中地獄のトレーニングを課してやるからなァ!!」



「「「そんなーー!?」」」







美穂(……かな子ちゃん、か)



美穂(すっごく美味しそうだったな、あのお菓子)



美穂(本人の所に行ってみれば、私にもくれるかな……?)











ベテトレ「前川ァ!!」ビシビシ



みく「ウ゛ニャアアアアアアアアア」



美穂(……食べたら私もああなるけど、それでも食べた方がいいのかな……?)





〜かな子のクラス〜





美穂「お、お邪魔しまーす……」ガラガラ





「すごーい! 美味しー!」モグモグ



「かな子ちゃん、こんなにお菓子作り上手だったんだ―!」モッチリ



「ううー、やめられない止まらないー!」ポッチャー



智絵里「えへへ、すごく美味しいよね……!」ニコニコ ←なぜか周りより太ってない



杏ベぇ「うへえ……仕事で成果を残したらさらにノルマを積まれるなんて聞いてないよー……杏にももっとちょーだーい」モグモグ





美穂「うわあ……!」





美穂(教室に入った時……目に入ったのは、お菓子を囲んで楽しそうにしている……ちょっと肉付きのいい女の子たち)



美穂(そして、その中心にいる……)





かな子「まだまだあるよ♪ みんなのために作ったから、いっぱい食べてね♪」





美穂(笑顔で皆にお菓子を配る、食べてる姿がとっても素敵な女の子がいました)









美穂「あっ、あのっ……!」



かな子「? どうしたの?」



美穂「え、えっと……私、かな子ちゃんの話を聞いて、会ってみようかなって、思ったんだけど……」



美穂「かな子ちゃんのお菓子、すっごく美味しそうだなって……」



かな子「! それじゃあ美穂ちゃんも、一緒に食べよ?」スッ



美穂「えっ!? い、いいんですか!? 私なんかが、その、かな子ちゃんとは初対面なのに……」モジモジ



かな子「そんな事関係ないよ。私……お菓子で皆が幸せになってくれたら、それだけで嬉しいもん!」ニコッ



美穂「……そう、なの?」



かな子「そうだよ! 何にも遠慮することなんてないよ! 初対面でも、美味しいお菓子があればあっと言う間に仲良くなれるよ!」







かな子「ーーーそうーーー」























「ーーーーー美味しいから大丈夫だよ!」





〜fin〜





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