2015年11月18日

五十嵐響子「ポッキーの日」

五十嵐響子ちゃんと吉岡沙紀ちゃんがいちゃつくやつです。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1447237723



 今日はいわゆるポッキーの日だ。





 きっとどこのコンビニでもスーパーでも、たくさんの赤いパッケージが我が物顔で陳列されているんだろう。



 このイベントが流行りだしたのは最近だけど、バレンタインとはまた別の意味で女の子のイベントであることは間違いないよね。

 アイドルとして褒められることじゃないけれど、お菓子を食べていい大義名分があるんだから。



 その証拠に、一昨日くらいからかな子ちゃんがすごく張り切っていたし。

 きっとプレッツェルから作るんだろう。お菓子作りが得意な子たちは、今日は作るのも食べるのも楽しめる日だ。





 私はあんまりお菓子作り得意じゃないんですけどね……あはは。

 どうにも、味は美味しく出来るのにデコレーションでおかしくなっちゃう。

 その点、かな子ちゃんや愛梨さんはすごいなぁ。見た目も完璧だから。



 だから私は既製品です。事務所に行く前にちょっとだけコンビニに寄ろう。

 大々的に陳列された赤いパッケージを一つ取って、お試しで期間限定のも一つ取って。



 きっと事務所に着く頃にはポッキーでパーティーが始まってるんだろうな。



 足取り軽く、私、五十嵐響子は事務所に向かいます。楽しくなればいいなっ。





 事務所の階段を上がるにつれて、女の子のはしゃいだ声が大きくなる。

 次第に甘い匂いも濃くなってきて、ほら、やっぱりもうパーティーが始まってる。



 きっとドアを開ければ、爆弾みたいにチョコレートと、コーヒーや紅茶の混ざった香りが飛び込んでくるに違いない。



 起爆スイッチを押す気分で、ドアを開けた。



「おはようございますっ」



「おはようっす響子ちゃん! こっち、こっちに来てくださいっす!」



 事務所に入るなり、ソファーに座ったままの沙紀さんが大きく手招きした。



「沙紀さん、どうかしたんですか?」



「あの人がいない今しかチャンスがないから、早く来て!」



 珍しく沙紀さんが焦ってる。あの人って誰だろう? 

 チャンスがないっていうのもよくわからないけれど。





「さぁどうぞ座って座って!」



「は、はぁ……」



 沙紀さんは自分の座るソファーの空いている方をぽふぽふ叩いて私を促す。どうしたんだろう?



 促されたまま沙紀さんの横に座れば、がっしり肩を掴まれて。



「いいっすか」



「えっ、ええっと……」



「これからポッキーゲームをやるっす」



「はっ、はいぃ!?」



「プロデューサーがどっかに行ってる今がチャンスだから!」



「ちょっと意味が……」



「いいからっ!」



 ほら! と、沙紀さんはポッキーを咥えた口を突き出している。





 まだよくわからないけど、おそるおそる顔を近づけた。



 そうしたら、沙紀さんのヘーゼルの目がキラキラ見えて、もう恥ずかしくって。



 私は目を瞑って、ポッキーにかじりついた。



 さくさく、かりかり。



 ポッキーをかじる音が頭のなかで響く。

 目を瞑ってるから沙紀さんの顔がどこまで近づいたかなんてわからない。



 どきどきが止まらないよ……!



 顔がどんどん赤くなるのがわかる。くちびるまであと何センチ? あわわわっ。



 もうダメだっ。恥ずかしすぎる! 



 ゆっくりうす目を開けたら、沙紀さんの顔が、あの大きなヘーゼルの瞳が、視界いっぱいに飛び込んできた。



 沙紀さんと、目が合った。





「うきゅっ!?」



 私の出した声じゃない。今のすっとんきょうな声は間違いない。沙紀さんの声だった。



 声に続いてぼんっ! って擬音がするくらい沙紀さんの顔が真っ赤になって、パキッと音がした。



 沙紀さんがポッキーを噛み砕いた音だ。どちらともなく、ゆっくり顔を離していく。

 

 かりかりかりかり、急いだように沙紀さんは口の中のポッキーを咀嚼して、私は口先にポッキーを余したままそれを眺めていた。





「響子ちゃん、ずるいっす……」



「!?」



「そんな表情、いじらしすぎる……」



 はぁはぁ肩で息をする沙紀さん。



 慌てて私もポッキーを食べて、どきどきうるさい胸を静めようとする。



「こんなの、アタシの完敗っす……」



「あ、あはは……」



 わけもわからずポッキーゲームをしたら、わけもわからないまま勝ってしまった。苦笑するほかない。





「ごめんね響子ちゃん、今日はほら、ポッキーの日だから」



「そう、ですね、あはは……」



「だから、アタシどうしても響子ちゃんとポッキーゲームしたかったんす……」



「あ、あのっ、謝らないでくださいっ。私もポッキーゲームやってみたくなかったわけじゃないから……」



「ほ、ホントっすか?」



「すっごく恥ずかしかったけど、初めての人が沙紀さんでよかったなって」



 本当に、すっごく恥ずかしかった。



「……」



 返事を待ってたら、なんだか沙紀さんがぷるぷるしだした。





「あのっ、沙紀さん……?」



「もう……」



「もう?」



「もう、辛抱たまらんっす!! 響子ちゃん、もう一回! もう一回やろう!」



「へぁっ!?!?」



「次は絶対勝つっす……勝って、響子ちゃんと……響子ちゃんと……」



 ええっ!? なんか怖いよっ!

 沙紀さんの目がぐるぐるしてる気がする。ら、ライオンに狙われたうさぎってこんな気持ちなのかな……?





「あぁっ!! 沙紀テメェなにしてんだ!!」



「チッ! 見つかったっす!」



 どたどた慌てた足音と一緒にプロデューサーが来た。

 プロデューサーの声がした途端、沙紀さんが正気を取り戻して一安心といったところだけど。



 でもなんで怒ってるんだろ。



「沙紀! お前……」



「遅かったっすねプロデューサー!」



「お前、今日は抜け駆け禁止だって言っただろ!!」



 あっ。



「へへーん、なにが抜け駆け禁止っすか! 早いやつが勝つ! 自然の摂理ってやつっす!」



「お前……お前ーッ!!」



「響子ちゃん、めちゃめちゃかわいかったっす……いじらしくて……震えるたびにサイドテールがさらさらして……」



「ちくしょう……ちくしょう……」





「ふふふ、あははははっ! 大勝利っす!!」



「沙紀、これだけは教えてくれ……」



「なんすか負け犬プロデューサー」



「くちびるは、くちびるは柔らかかったか……?」



「ウッ」



 沙紀さんがサッと顔を逸らした。



「お前、その感じだと……ふふ、フハハハハッ!」



「……響子ちゃん、かわいすぎて……」



「とんだヘタレだったようだなっ!!」



「うっ! うるさいっすよ!」





「へへへ、見てろよ沙紀、そこでじっくりと響子の表情をな……」



「ううう、うううーっ!!!」



「唸っても無駄だぜ。……さぁ響子、俺とポッキーゲームを!」



 え、ええっ!? プロデューサーとポ、ポポポ、ポッキーゲームなんて、そんな、そんなっ。

 あの、あのっ、と、とりあえず……



「お、男の人とはちょっと……」



 まだ、まだそんな勇気ないからっ!





 ポキッ







 急に固まったプロデューサーに、沙紀さんがニヤニヤしながら近づいていく。



「おやおや〜? どうしたんすかプロデューサー」



「今、確実に心が折れた」



「あははははっ! ポッキーゲームだけに、ポキッっと折れちゃったんすか!! ひーっ! 笑いが止まらんっす!」



「お前なー! 俺がなー! 響子をなーっ!」



「負け犬の遠吠えが聞こえるっす! 今度はアタシがポッキーゲームに勝つのをそこで見てるといいっす!」



「ううう、ヴヴヴーっ!!!」



「唸ったって無駄っすよ! さぁ、今度こそまたポッキーゲームを!」



 ま、また目がぐるぐるしてるよぉっ!

 そ、そのっとりあえず……



「に、二回戦目は無しでっ!」



 だってなんだか怖いんだもん!





 ポキッ







 今度は沙紀さんが固まった。



 プロデューサーは、なにか哀れなものを見る目で沙紀さんに近づく。



「なぁ、沙紀も心折れちゃったの?」



「そうっす」



「ポッキーゲームだけに、ポキッって?」



「その通りっす」



「……うん、わかるぜ沙紀。でもな、いくら女の子同士ったって、二度目は欲張りすぎだよな」



「うぅ、ううう〜っ!」



「ドンマイ、来年に賭けような。ほら、ちひろさんがあったかいコーヒーを持ってきてくれたから」



「うう……」





 私、当事者のはずなのになんで置いてきぼりになってるんだろ……



 プロデューサーの言うとおり、ちひろさんがコーヒーを三つ淹れてきていて、私も一つ受け取った。



「もう、本当に男の人ってバカだと思わない? 響子ちゃん」



「あはは…」



「まぁ、今日は沙紀ちゃんも大概だったけれど……」



「そ、そうですね」



 今日何度目の苦笑だろう。



 沙紀さんのほうを見れば、いつもカッコいいあのひとが、両手でマグカップを持って、コーヒーを啜っている。



 な、なんか悪いことしちゃったかな。

 

 でも、いつもの沙紀さんとあまりにギャップがあるから、なんかその……

 かわいい。





「あの、沙紀さん?」



「うぅ……?」



「その……ポッキーゲームはだめですけど、ほら、かな子ちゃんたちがパーティーやってますから」



「誘ってくれてるんすか……?」



「そうですっ、パーティーを楽しみましょう?」



 そう言って手を差し出したら、沙紀さんにがっしりその手を掴まれて。



「行くっす! もうめっちゃ楽しむっす!」



「あっずりぃぞ沙紀! 俺も、俺も行くっ!」



 プロデューサーも復活して。





「響子ちゃんに絶対あーんしてもらうっす〜」



「てめっ、そういうのは男の特権だろ!」



「二人ともっ! 喧嘩するならどっちにもしてあげませんからっ!」



「「ごめんなさい(っす)」」



「あははっ、わかってくれたら良いんですっ」



 なんとか二人が仲直りしてくれて、これで私も安心してパーティーを楽しめる。



 いろいろあったけど、ポッキーの日が楽しくなりそうで良かったなっ!

おわり!



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